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2020年06月01日 (月) 16:00:00

法人企業統計調査で設備投資増加の謎???

本日、財務省から1~3月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高はほぼ3年ぶりの減収で前年同期比▲6.4%減の347兆8257億円、経常利益は2四半期連続の減益で▲4.6%減の18兆5759億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで▲3.5%減の11兆6303億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比▲4.2%減となっています。なお、設備投資についてはソフトウェアを含むベースです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月期の設備投資、4.3%増 法人企業統計、売上高や経常利益は減少
財務省が1日発表した1~3月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比4.3%増の16兆3525億円で、2四半期ぶりに増加した。発電所への投資があった電気業が39.2%増、駅周辺の再開発投資をした運輸・郵便業が12.3%増となるなど、非製造業全体が6.2%増と2四半期ぶりに増加したことが寄与した。
製造業も0.6%増と2四半期ぶりに増加した。医療機器向けの業務用機械が大幅に伸びた。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となるソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、前年同期比で3.5%増、季節調整した前期比は7.2%増だった。
全産業の売上高は3.5%減の359兆5572億円と、3四半期連続の減収だった。新型コロナウイルスの感染拡大で宿泊業などサービス業が17.5%減、資源価格の下落で卸売・小売業が9.4%減となり、非製造業全体で5.9%減となったことが影響した。製造業は電気機械などが好調で2.9%増だった。
全産業ベースの経常利益は32.0%減の15兆1360億円と、4四半期連続の減益となった。減少率は2009年7~9月期(32.4%減)以来の大きさだった。新型コロナの影響でサービス業など非製造業が32.9%減、自動車や鉄道車両といった輸送用機械など製造業が29.5%減となった。
財務省は今回の法人企業統計の総括判断について「今期の経常利益は新型コロナの影響により厳しい経済全体の傾向を反映している」とした。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や投資動向を集計した。今回の結果は内閣府が8日発表する1~3月期GDP改定値に反映される。今回は新型コロナの影響で企業事務が遅れ、調査票の回収率が低下しているため、7月末をめどに同調査の確報値を公表する。同様の措置は11年3月の東日本大震災発生後以来2度目。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月ないし10~12月期を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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上のグラフを見ても明らかな通り、季節調整済みの系列で見て今年1~3月期には、経常利益が大きく落ちた一方で、売上高と設備投資が増加を示しています。極めて予想外と私は受け止めています。売上については、特に製造業で増加しており、これは季節調整していない原系列の統計で見ても同じです。原系列の統計で見て、製造業の中で増収の寄与が大きいのは電気機械と輸送用機械となっています。他方、経常収益は季節調整済の系列で見て前期比2ケタ減、季節調整していない原系列なら前年同期比で▲30%を超える減少となっています。産業別でーたは季節調整していない原系列しかないながら、製造業でいえば、輸送用機械や化学、非製造業ならサービス業や卸売業・小売業など幅広い業種でマイナスとなっていて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響が見られると私は受け止めています。それにしても、売上や設備投資が1~3月期に上向いたのは不思議です。特に、設備投資増は謎で、逆に、この反動もあって、4~6月期には売上も経常利益も設備投資もそろって大きく減少に転ずるのは確実です。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。ソフトウェアを含むベースに今回から再計算しています。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、一番上のパネルで労働分配率が上昇しているのは景気後退期に入ったひとつのシグナルです。雇用保蔵が始まっているのでしょうが、リーマン・ブラザーズ破綻後のような「派遣切り」などを招かないような対策が必要なことはいうまでもありません。繰り返しになりますが、真ん中の設備投資比率の上昇は謎です。一番下の利益剰余金はややペースが鈍化しているように見えますが、1~3月期までは、COVID-19の影響をものともせずに右肩上がりを続けています。

本日の法人企業統計を受けて、来週月曜日の6月8日に1~3月期GDP統計2次QEが公表される予定となっています。基本的に、設備投資を中心に上方改定されるものと私は考えていますが、いずれにせよ、日を改めて2次QE予想として取り上げたいと思います。
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2020年05月31日 (日) 11:00:00

いよいよ九州南部が梅雨入りし近畿地方の梅雨入りも近づく!!!

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昨日の5月30日に、九州南部が梅雨入りしました。昨年より1日早く、ほぼ平年と同時期の時期だそうです。いよいよ、近畿地方の梅雨入りも近づいてきました。昨年は異例の年で、関西よりも関東の方が早くに梅雨入りしてしまいましたが、例年であれば、九州南部の梅雨入りからほぼ1週間後に近畿や関東も梅雨入りします。なお、上の画像は昨日のウェザーニュースのサイトから引用しています。
気象庁の1か月予報は毎週木曜日の午後に更新されるんですが、5月28日に明らかにされた最新予報では、この先1か月の平均気温は関東以南で平年より高くて、近畿以西は降水量も多いとの結果が示されていました。気温が高くて降水量が多いということは、要するに、蒸し暑い、ということなのでしょう。その先は本格的な夏になります。大学教員にはそれなりの夏休みがあるとはいえ、すでに還暦を超えた年齢的な条件もありますし、久し振りの京都の夏を耐えるべくがんばりたいと思います。
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2020年05月30日 (土) 11:00:00

今週の読書は経済書をはじめとして計3冊!!!

図書館が活動を再開し始め、私も読書が進むようになっています。今週の読書は、以下の通り、経済書を始めとして、京都本まで含めて計3冊です。

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まず、トマ・ピケティ『不平等と再分配の経済学』(明石書店) です。著者はご存じ、『21世紀の資本』で世界的に著名になったフランスのエコノミストであり、不平等や格差にまつわる経済学を展開しています。本書のフランス語の原題は L'Économie des Inégalités であり、最後の訳者解題にもあるように、邦訳タイトルの「再分配」は原題には含まれていません。この邦訳書は今年2020年に入ってからの出版ですが、原書は1997年から何度か改版を重ねています。本書は原書2015年版だそうです。従って、著者の端書きでは、本書ではなく、とまでかいてはありませんが、『21世紀の資本』を参照されたい旨が明らかにされています。ということで、第1章なんかは私のやっている計測に関する分析で、不平等の変化の計測を試みています。ただ、本書の中心は第2章の労働と資本の分配における不平等、第3章の労働の中における不平等であろうと考えられます。第4章最終章の再分配は、まあ、付け足し的な印象です。著者も明記しているように、単純に資本所得と労働所得=賃金の間の不平等であれば、資本家と労働者の階級の間のマルクス主義的な階級闘争にもつながりかねないわけですが、労働者間での不平等も決して無視できるわけではありません。私も当然そうですが、著者も現在の不平等は社会的に許容されるレベルを超えていると考えていて、それを解決するための財政による所得の再分配が置かれています。特に、第3章の労働所得の不平等に関する現状把握やそれに基づく分析は読み応えがあります。

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次に、諸富徹『資本主義の新しい形』(岩波書店) です。著者は、私の母校である京都大学経済学部の研究者です。本書では、私はよく理解できなかったネーミングなんですが、資本主義の「非物質主義的転回」という言葉を設定して、サービス化の進展や無形資産の活用などをそこに位置づけています。そして、なぜか、サービス経済化のための産業政策が必要であると指摘してみたり、最後はそのラインに低炭素化経済の流れを位置づけて、穴だらけ、とはいなないものの、やや強引な理論展開をしていたりします。私は環境経済学的に、環境グズネッツ曲線を推計した紀要論文を書いた経験もありますが、先進国でエネルギー集約的な産業からサービス化が進んでいる背景で、例えば、鉄鋼業が典型的なところで、新興国や途上国にそういった炭素消費型の産業が移転しているという点は忘れ去られています。まあ、本来の経済発展が進めば不平等の度合いは最初は不平等化が進む一方で、転換点があって後に不平等化が後退する、というのがオリジナルな「発見」だったわけで、それ自体はかなりの程度に自律的な方向性を持っていた可能性があると考えられます。しかし、少なくとも産業構成の変化とそれを背景にした低炭素化は、先進国から新興国や途上国に炭素多消費型産業を移転した結果であることは、本書でもそうですが、都合よく忘れられています。先の例でいえば、もちろん、技術革新などによって、鉄鋼業で低炭素化が図られていることも確かながら、それだけではないと私は考えています。すなわち、日経新聞の記事「19年世界粗鋼生産、3年連続過去最高に」などで指摘されているように、世界全体で鉄鋼の生産は増加している一方で、先進国の生産が減少していて、その分、先進国で低炭素化が進んでいる面を忘れるべきではありません。それを「産業政策」的にバックアップすることは意味ないとはいいませんが、Appleのようなファブレス化が進んで、実体的に中国で生産されて、中国で二酸化炭素排出が増加しているのをもって、Apple本国である米国の二酸化炭素排出が減るのが望ましいことなのかどうか、もう一度考えるべき段階に達しているような気がしてなりません。

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最後に、西川照子『京都異界紀行』(講談社現代新書) です。著者は、民俗学を専門とするジャーナリスト、編集者のようで、本書は、私が年に何冊か読む京都本です。タイトル通り、我が国の古典古代である平安時代を中心に、怨霊にまつわる場所の紀行本です。私なんぞの中途半端な京都人は知らない場所が満載です。本書では、京都の3大怨霊として、菅原道真、平将門、崇徳天皇を上げ、多くは神社仏閣なんですが、京都の異界を紹介しまくっています。多くは観光名所でもあったりするんでしょうが、別の顔を持つ観光名所も少なくないような気がします。ひとつは、私が東京で暮らしていた城北地区に「縁切榎」というのがあって、和宮が中山道を通って降嫁された際には、晒で巻いて隠した、といわれるくらいに、まあ、「由緒」あるものです。ただ、私が知る限り、「縁切り」とはいえ、例えば、喫煙や飲酒も含めて、悪癖と縁を切るとか、に効用あると宣伝されていて、DV夫との「縁切り」などはあるんでしょうが、決して表に出てきません。京都では、私の大学への通学路にあった安井金比羅宮が縁切りのご利益あると昔からいわれていますが、モロに「あの人を殺してほしい」といった願文があるそうで、さすがは京都らしく極めてダイレクトだと感じてしまいました。恨み、つらみを基にした怨霊が発信源なわけですから、それなりに、おどろおどろしい内容が含まれていrたりして、それはそれで読み応えがありました。
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2020年05月29日 (金) 18:00:00

新型コロナウィルスの影響で急速に悪化する経済指標のうち、大きな懸念は休業者急増の雇用統計!!!

本日は月末最終の閣議日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から消費者態度指数が、それぞれ公表されています。消費者態度指数が5月の統計である以外はすべて4月統計です。まず、鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から▲9.1%の減産を示し、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲13.7%減の10兆9290億円、季節調整済み指数でも前月から▲9.6%減を記録しています。失業率は前月から+0.1%ポイント上昇して2.6%、有効求人倍率は前月から▲0.07ポイント低下して1.32倍と、雇用も悪化しています。いずれも新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響によるものと考えられます。ただ、5月の消費者態度指数は4月から+2.4ポイント上昇して22.4となり、5か月振りで前月を上回りました。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

コロナ、生産・雇用直撃 鉱工業過去最大の9.1%低下
新型コロナウイルスの感染拡大による影響で生産や雇用、消費指標が大きく落ち込んだ。経済産業省が29日発表した4月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比9.1%低下し87.1だった。比較可能な13年1月以降で最低の水準を記録した。有効求人倍率は約4年ぶりの低水準で、小売業販売額は前年同月比13.7%減の10兆9290億円だった。
4月の鉱工業生産は過去最大の下げ幅だった。経産省は基調判断を「生産は急速に低下している」に下方修正した。
15業種中14業種が低下した。自動車は前月比33.3%低下した。国内外で需要が低迷し、部品調達の停滞や工場の稼働停止も影響した。自動車メーカーの減産などが波及し、鉄鋼・非鉄金属工業も14.3%低下した。航空機部品を含む輸送機械工業は25%低下した。
一方、半導体製造装置などの生産用機械工業は2.5%上昇した。大きく低下した3月から戻った要素が大きい。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、5月は前月比4.1%の低下、6月は同3.9%の上昇を見込む。輸送機械工業などを中心に増産が予想されている。経産省は「先行きを見通すのは難しく、少なくとも6月までは低い生産水準で推移するだろう」と分析している。
雇用指標も悪化した。厚生労働省が29日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.32倍で前月から0.07ポイント低下した。16年3月以来、4年1カ月ぶりの低水準となった。景気の先行指標となる新規求人は前年同月比で31.9%減と09年5月以来、10年11カ月ぶりの下げ幅となった。
総務省が29日発表した4月の完全失業率(季節調整値)は2.6%で前月から0.1ポイント悪化した。就業者数(同)は前月に比べ107万人減少し、1963年1月以来の下げ幅となった。完全失業者数(同)は178万人で6万人増えた。
新型コロナウイルスの感染拡大で求職活動をしておらず、失業者と統計上みなされていない人は多い。失業率は今後、跳ね上がる可能性がある。
4月の休業者数は597万人と過去最大になった。前年同月比で420万人増えた。リーマン・ショック直後の休業者数は100万人程度で、異例の伸び幅になっている。景気悪化が長引けば、企業は休業者を雇い続けるのは難しくなる。
5月の消費者態度指数、前月比2.4ポイント上昇の24.0
内閣府が29日発表した5月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比2.4ポイント上昇の24.0だった。内閣府は消費者心理の判断を「急速に悪化している」から「依然として極めて厳しいものの、下げ止まりの動きがみられる」に上方修正した。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。


いくつかの統計を取り上げていますのでとても長くなってしまいましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生産はわずかに▲5.4%の低下にとどまるとの見込みながら、レンジでは▲10.5%~▲1.8%でしたので、まあ、何とかギリギリ2ケタ減産には達しなかった、という受け止めをすればいいんでしょうか。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を先月の「生産は低下している」から「生産は急速に低下している」に下方修正しています。4月実績の2ケタ近い減産に続く5~6月の製造工業生産予測指数を見ると、5月はまだ前月比で▲4.1%の減産が続くとはいえ、マイナス幅はやや縮小し、6月は+3.9%の増産に転じるという見込みが示されていますが、もともとが大きな信頼性を寄せられる統計ではない上に、現在の経済社会の状況からして、少なくとも6月から増産に転じるという先行き見通しは、やや怪しいといわざるを得ません。ただ、私の住む関西圏に続いて、東京都をはじめとする首都圏においても、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止を主眼とする非常事態宣言が解除されましたし、徐々に経済社会が正常に戻るとすれば、確かに、生産については足元の5月が底という可能性も十分あります。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期であり、このブログのローカルルールは上の鉱工業生産指数と同じです。消費の代理変数となる小売販売額を見ると、繰り返しになりますが、季節調整していない原系列の前年同月比は▲13.7%減の10兆9290億円、季節調整済みの系列で見て前月比▲9.6%減を記録しています。広く報じられている通り、私の実感としても、食料品をはじめとしてスーパーは人出あったように感じられましたが、百貨店は食料品売場などの一部を除いて閉店を余儀なくされたケースもあり、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、スーパーは3月+2.6%増に続いて、4月も+3.6%の増加を示した一方で、百貨店は3月▲32.6%減のあと、4月はとうとう▲71.5%減となっています。ただ、全体として増加したスーパーの4月統計でも、食料品は+12.3%の増加を示した一方、衣料品は半減の▲52.6%減となっています。こういった業態別、あるいは、商品別の統計は、COVID-19の影響を強く示唆している、と私は考えています。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた部分は景気後退期であり、ほかと同じように、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、失業率は3月の2.5%から4月は2.7%に上昇するという見込みだったところ、2.6%で踏みとどまった、といったところかもしれません。ただ、引用した記事にもあるように、懸念されるのは休業者の急増です。すなわち、総務省統計局から「就業者及び休業者の内訳」なる追加参考表が明らかにされていて、休業者が今年2020年に入ってから急増し、1月194万人、2月196万人だった後、3月には249万人、4月はとうとう597万人に達しています。4月の休業者は1~2月の水準からほぼ+200万人の増加となっており、4月統計における完全失業者はまだ200万人を下回っているとはいえ、急増した休業者がもしも失業者に転じれば、失業率は一気に上昇しかねない、と考えるべきです。企業が雇用保蔵をしていたり、あるいは、COVID-19のために求職活動に乗り出せない人などが多いと見られますが、統計上の実績値としての失業率はまだ2%台半ばとしても、休業者の今後の動向によっては失業率が5%を上回る水準に達する可能性も十分あります。加えて、何度か書いたことがありますが、上のグラフに取り上げた雇用統計の指標について景気とのシンクロは、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人は倍率にせよ求人数にせよ先行指標、と多くのエコノミストに見なされています。ですから、休業者の急増と失業率の遅行性を考慮すると、先行きさらに失業率が上昇する可能性は大きいと考えられます。

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続いて、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影を付けた期間は景気後退期であり、このブログのローカルルールは上の鉱工業生産指数や商業販売統計や雇用統計と同じです。5月統計の消費者態度指数を4つのコンポーネントで前月4月との差を少し詳しく見てると、すべてのコンポーネントが改善を示し、「暮らし向き」が3.1ポイント上昇し25.0、「耐久消費財の買い時判断」が3.0ポイント上昇し26.3、「雇用環境」が1.8ポイント上昇し16.8、「収入の増え方」が1.5ポイント上昇し27.8となりました。消費に直結する「雇用環境」と「収入の増え方」の上昇幅が小さくて少し気がかりながら、引用した記事にあるように、統計作成官庁の内閣府が基調判断を「急速に悪化している」から「依然として極めて厳しいものの、下げ止まりの動きがみられる」に上方修正した気持はよく判ります。消費者態度指数のようなマインド指標のソフトデータは明らかにハードデータに先行しますから、生産動向と合わせて見て、この4~6月期がCOVID-19の影響を脱して、景気が底を打った可能性はあると私は考えています。ただ、もしそうであっても、V字回復ではなくL字に近い可能性の方が大きいと覚悟すべきかもしれません。
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2020年05月28日 (木) 11:00:00

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大により派遣スタッフの時給が低下!!!

明日の金曜日5月29日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる4月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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アルバイト・パートの時給の方は従来のトレンドから外れているわけではないんですが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響などにより、派遣スタッフの方は大きく低下に転じています。すなわち、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は+3%近い伸びで引き続き堅調に推移しています。詳細に見ると、三大都市圏の4月度平均時給は前年同月より+2.7%、+28円増加の1,075円を記録しています。職種別では「営業系」(前年同月比増減額+84円、増減率+6.7%)、「事務系」(+33円、+3.0%)、「専門職系」(+31円、+2.6%)、「製造・物流・清掃系」(+26円、+2.5%)、「フード系」(+1円、+0.1%)など5職種で前年同月比プラスとなり、唯一マイナスは「販売・サービス系」(▲2円、▲0.2%)だけでした。地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。他方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2019年7月統計から10か月連続でマイナスを続けており、三大都市圏の4月度平均時給は前年同月より▲1.6%、▲26円減少の1,607円を記録しています。職種別では、「営業・販売・サービス系」(前年同月比増減額▲14円、増減率▲1.0%)、「オフィスワーク系」(▲6円、▲0.4%)、「IT・技術系」(▲4円、▲0.2%)の3職種がマイナスとなり、プラスは「クリエイティブ系」(+41円、+2.3%)、「医療介護・教育系」(+21円、+1.5%)、の2職種にとどまっています。また、地域別でも、関東はプラスだったものの、東海・関西はマイナスを記録しています。アルバイト・パートと派遣スタッフで時給の動向が大きな違いが生じたのですが、2008~09年のリーマン・ショック後の雇用動向を見た経験からも、先行き、非正規雇用の労働市場は悪化が進む可能性があると覚悟すべきです。
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2020年05月27日 (水) 16:00:00

世銀による購買力平価の調査結果と世界経済の規模やいかに?

先週5月21日に貿易統計を取り上げた際にチラリと触れましたが、5月19日に世銀から Purchasing Power Parities and the Size of World Economies: Results from the 2017 International Comparison Program と題するリポートが明らかにされています。2017年の調査に基づく購買力平価とそれにより評価した世界経済の規模に関するリポートです。その前は2011年調査に基づいた同様のリポートが2015年に出版されていますから、購買力平価に関するリポートは6年ぶりといえます。
リポートでは、2017年の世界経済の規模は120兆ドル近くに達し、半分超が低所得国と中所得国で生み出されていル事実を明らかにしています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。世の中のニュースが新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に関係するものが多くを占める中、国際機関のこういったリポートに着目するのは、私のこのブログの特色のひとつでもあり、いくつか典型的なグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートp.4からFigure 1.3 Share of PPP-based global actual individual consumption for the six economies with the largest shares, 2017を引用しています。2017年購買力平価で評価した国別GDPを上位6国まで示してあります。もちろん、世界トップは米国でありシェアは18.6%、ついで中国の12.2%、インドの7.0%のトップスリーの後に我が日本が4位で4.4%を占めています。ただ、ドイツやロシアよりはまだ経済規模で上回っているようです。まあ、こんなもんだろうという気はしますが、こういった巨大経済圏はCOVID-19でかなり深い景気後退に陥っているように見えますので、この先についてはまだ何ともいえません。

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次に、上のグラフはリポートp.7からFigure 1.9 PPP-based actual individual consumption per capita and share of global population, by economy, 2017を引用しています。横軸に2017年購買力平価で評価した1人当たりGDPを取り、縦軸には人口を取ってプロットしています・横軸の1万ドル強のところに破線が縦に引かれており、世界の平均1人あたりGDPである$10,858が示されています。国単位の購買力平価GDPでは中国やインドの後塵を拝した日本ですが、1人当たりGDPという「豊かさ」の指標ではまだまだアジア各国を上回るポジションにあります。ただ、ドイツや欧州の小さな経済規模の国の中には我が国を上回る1人当たりGDPを示す国も少なくないのは事実です。

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次に、上のグラフはリポートp.9からFigure 1.12 Lorenz curves for the distributions of 2017, revised 2011, and original 2011 PPP-based GDP per capitaを引用しています。なかなか興味を引くグラフであり、1人当たりの購買力平価GDPでローレンツ曲線を描いています。45度線からローレンツ曲線が離れている面積が不平等指標であるジニ係数ですから、わずかとはいえ、赤い実線でプロットされている2017年調査結果は青い破線の2011年結果より不平等の度合いが改善していることが明らかにされています。グラフ右下に見えるように、2011年0.487から2017年には0.474となっています。また、リポートp.87には"the share of the global population living in economies where the mean GDP per capita is below the global average increased from 72.1 percent to 75.9 percent"と明記されていて、同じ期間に1人当たり購買力平価GDPが世界平均を下回る国の人口が減少しています。国連ミレニアム開発目標(MDGs)などの成果ではないかと私は受け止めています。

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最後に、上のグラフはリポートp.10からFigure 1.14 GDP price level index versus PPP-based GDP per capita (and PPP-based GDP), by economy, 2017 and 2011を引用しています。横軸が1人当たりGDP、縦軸が物価水準で各国経済規模のバブルチャートでプロットしています。大雑把に正の相関があり、右上がりの相関曲線が引けそうです。1人当たり購買力平価GDPで見た「豊かな国」ほど物価が高い、という当然の結果が示されています。2011年時点では、我が国は欧米主要国よりもかなり物価水準が高かったのですが、2017年調査結果では、まだドイツなどよりは物価が高いものの、米国を下回るレベルまで落ちているのが見て取れます。相対的に物価が下がっているわけで、デフレ傾向が続いていると考えるべきです。

英文で200ページを超えるボリュームですので、第1章を中心にした部分を取り上げています。このリポートを担当したのは、世銀で開発政策・パートナーシップ担当のマリ・パンゲストゥ専務理事です。今年2020年3月に就任したばかりですが、20年近く前に私が政府開発援助(ODA)のお仕事で家族とともにジャカルタにいたころ、インドネシア政府の大臣を務めていた記憶があります。
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2020年05月26日 (火) 16:00:00

4月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)はコロナ禍で上昇率が一気に縮小!!!

本日、日銀から4月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.0%と、先々月2月統計の+2.1%、先月3月統計の+1.6%から大きく縮小しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じく縮小し、+0.9%を記録しています。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業向けサービス価格、増税除き前年比0.8%下落 8年9カ月ぶり下落率
日銀が26日発表した4月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.1と、前年同月比で1.0%上昇した。上昇率は3月(1.6%)から縮小した。消費税率引き上げの影響を除くと同0.8%の下落で、下落率の大きさは11年7月以来8年9カ月ぶりの大きさだった。
新型コロナウイルスの感染拡大で訪日外国人客数が急減したり、国内で緊急事態宣言が発令されたりしたことで「宿泊サービス」の価格が大きく落ち込んだ。「テレビ広告」の下落率も大きかった。一方、航空機の減便で貨物輸送の需給が逼迫し「国際航空貨物輸送」や「国内航空貨物輸送」の価格は大きく上昇した。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。いずれも、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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引用した記事にもある通り、消費税を含んだベースの企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は、昨年2019年10月の消費税率引上げに伴って+2%に達した後、今年2020年に入って1月+2.1%まで+2%台を続けた後、先々月2月+1.6%、先月3月+1.0%、さらに、今月の4月統計では+1.0%まで上昇率が落ちました。引用した記事にもある通り、先月の3月統計では消費税の影響を除くベースの前年同月比上昇率が▲0.1%と下落に転じた後、4月統計では▲0.8%と下落幅を拡大しています。いうまでもなく、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による影響と考えるべきです。サービス物価はSPPIはもちろん、CPIのコンポーネントでも、人手不足に起因して堅調と考えられていましたが、雇用がかなり怪しくなり始めた印象もありますし、宿泊サービスのように需要が「蒸発」すれば、需給ギャップに従って価格が弱含むのは当然です。4月統計のSPPIのコンポーネントである大類別について、消費税の影響を除くベースの前年同月比▲0.8%に対する寄与度を見ると、景気に敏感な広告が▲0.63%、繰り返しになりますが、需要が「蒸発」した宿泊サービスをはじめとする諸サービスが▲0.14%と、ほぼほぼ、この2つの大類別で消費税を除くベースの前年同月比の下落幅の大部分を説明できてしまいます。大類別のコンポーネントでとてもなのは、同じく消費税の影響を除くベースで、運輸・郵便が+0.18%のプラス寄与を示している点です。引用した記事の2パラめで「航空機の減便で貨物輸送の需給が逼迫」との説明が日銀からあったような印象を受けますが、輸送に使う石油の国際商品市況における価格が、COVID-19の影響で大きく下落しているんですから、4月から何かの価格改定があったのか、ここまで上昇しているのは私には理解できません。もっとも、運輸サービスの価格動向は、4月統計の消費者物価指数(CPI)とは整合的です。すなわち、総務省統計局の冊子資料で見る限り、p.12で財の前年同月比上昇率+0.7&%に対して、運輸・通信関連サービスは+2.3%の上昇と、ヘッドライン上昇率を上回る上昇率が報告されています。SPPIの企業ベースの運輸サービスとCPIの消費者の支出先である運輸サービスは、どこまで重なっているか不明ながら、どちらも連動して価格上昇が観察されるわけですから、航空機の減便だけで説明できるとは思えません。従って、石油価格の下落は運輸サービス価格の引下げをもたらしていると考える根拠がある一方で、人手不足や他の要因から4月に何らかの価格改定があったのではないかと、私は想像しています。
最後に、上のグラフのうちの下のパネルを見ても明らかな通り、財貨の価格である企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価指数は、すでに、消費税率引上げ前の水準まで下げている一方で、サービス価格指数のSPPIは、まだ、消費税率引上げ前の水準までは戻っておらず、その点だけを見れば、PPIよりもSPPIの方が下げ幅が小さいともいえます。
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2020年05月25日 (月) 16:00:00

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により二酸化炭素の排出は減少したか?

さて、およそ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的な影響は、供給側で生産を減少させ、需要も全体としてはもちろん停滞し、石油価格などを通じて物価も下げる、という形で、日本経済には好ましくないものばかりなんですが、ひとつだけ考えると、ここまで経済活動が停滞し、人々が家に閉じこもると、二酸化炭素の排出は減っているんではないか、という気がします。強くします。ということで、4月冒頭までのデータを用いた分析結果が、5月19日付けの Nature Climate Change 誌"Temporary reduction in daily global CO2 emissions during the COVID-19 forced confinement" と題して掲載されています。もちろん、pdfの全文ファイルもアップされています。

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まず、上のグラフは論文から Table 2 Change in activity as a function of the confinement level と題するテーブルを引用しています。注目は、一番右下の列でいえばResults、行でいえばTotalのところであり、▲17%、レンジでは▲11 to ▲25のCO2削減という結果になっています。外出自粛で在宅が続きましたので、唯一家庭だけがプラスを記録していますが、これを別にすれば、上から電力、地上輸送、公的部門、航空はすべてマイナスです。

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次に、上のグラフは論文から Fig. 3: Global daily fossil CO2 emissions と題するグラフを引用しています。左のパネルはここ50年間の推移であり、右は1月以降のパートアップです。左の長期時系列は、まさに、いろんな経済指標と同じで、直近時点で大きな落ち込みを見せています。1月から4月7日までのグラフは世界的な外出自粛や経済活動の停滞に歩調を合わせているんだろうと私は受け止めています。

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最後に、上のグラフは論文から Fig. 4: Change in global daily fossil CO2 emissions by sector と題するグラフを引用しています。セクター別の1月から4月までのCO2排出の推移なんですが、上3つのパネルと下3つのパネルの縦軸のスケールが異なる点は注意が必要です。家庭が減少していないのを別にして、もっともCO2排出を減少させたのが地上輸送部門である点は、先ほどの Table 2 Change in activity as a function of the confinement level からも明らかなんですが、1~4月の時系列で見て、世界的には4月月初がCO2排出削減のボトムだったようです。私の実感では日本は5月ではないかという気がしています。この論文では5月データはまだ利用可能ではなかったようですが、その後のデータ更新とともに、我が国のCOVID-19封込め施策の遅れが明らかになる可能性がありそうな気もします。

これだけ世界経済が深い景気後退に陥っているのですから、CO2排出も減少しているのは当たり前なんでしょうが、改めてデータで確認することの重要性を実感しました。
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2020年05月24日 (日) 11:00:00

インテージのデータを基にした東洋経済の記事「コロナで『売れた』『売れなくなった』商品TOP30」やいかに?

かなり旧聞に属する話題ですが、ネット調査大手のインテージのデータを基にした東洋経済の記事「コロナで『売れた』『売れなくなった』商品TOP30」から、テーブル画像を引用すると下の通りです。ただし、連結して少し縮小をかけてあります。日曜日ですので、それだけです。

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2020年05月23日 (土) 11:00:00

今週の読書は話題のユヴァル・ノア・ハラリ教授の新刊書をはじめとして計3冊!!!

ようやく、今週に入って、新刊読書がはかどり始めました。もちろん、世間から遅れていることは明らかなんですが、もともとの私の人生がそうである上に、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大防止のために、非常事態宣言の上にも特定警戒都道府県に住んでいるもので、図書館サービスが順調でなかったのも響いた気がします。在宅勤務はそれなりに多忙を極め、読書ペースを維持するのがどこまで可能かは未知数です。取りあえず、今週の読書は以下の3冊です。

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まず、ユヴァル・ノア・ハラリ『21 Lessons』(河出書房新社) です。英語の原題は 21 Lessons for the 21st Century であり、2018年の出版です。なお、著者はイスラエルの歴史研究者ですが、もう私なんぞが紹介するまでもなく世界的ベストセラーを次々に上梓しています。私も、『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』は読みました。本書は5部21章構成で400ページ余りのボリュームながら、それなりにスラスラと読めた気がします。冒頭に著者自身が書いているように、『サピエンス全史』が過去の歴史を振り返り、『ホモ・デウス』が先行きの見通しを語っているのに対して、本書は今現在を対象にしています。ただ、2016年のトランプ米国大統領の当選などに象徴されるように、ポピュリズム的なイベントに対して批判的な見方を展開していることも事実です。これも自由主義のセットメニューと題して、国家レベルでも国際レベルでも、自由は経済と政治と個人の3分野でセットであって、ひとつだけを欠けさせるわけには行かない、という主張にも現れています。サンデル教授のように正義の分野まで哲学的に解明しようと試みているかのようですが、少なくとも歴史学の観点からは私は難しそうな気がします。実は、正義や倫理については経済学が早々に放棄しているのも事実です。では、歴史学者としてはどの観点かというと、私はこの著者の進歩史観に信頼感を感じています。ほぼほぼ私と同じ理解で、保守派は歴史の流れを押し止めようとし、保守派に対する進歩派は歴史を前に進めようとする。あるいは、歴史を逆転させようとするのは反動的である、などなどです。もっとも、米国の例を引きつつも、地球温暖化が進む歴史を押し止めようとするのが進歩派で、もっと温暖化の歴史を進めようとするのが保守派だとか(p.284)、テクノロジーの過度な進み過ぎには悲観的な味方をする場合とかはありそうです。私もAIを含めて、テクノロジーの過度な進展には悲観的だった時期があるのですが、今ではそれが人類の幸福に寄与する可能性のほうが大きいと考えています。最後に、p.61にある「最低所得保障」というのは、かなりベーシックインカムに近い制度のように私の目に映るんですが、そうなんでしょうか?

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次に、友原章典『移民の経済学』(中公新書) です。著者は、世銀などの国際機関で開発に関するコンサルをした後、今は国内の大学で研究者をしています。基本は、タイトル通りの経済学ですので、労働経済学の観点からの雇用に対する移民の影響とか、経済成長や財政に移民はどのような影響を及ぼすのかが定量的な研究成果をサーベイして示されています。ただし、本書でもやや批判的に示されていますが、研究者によって少なからぬ研究成果のバイアスが見られます。移民に関する経済学研究で著名であるとともに、自身もキューバから米国への移民であるボージャス教授(私は、スペイン語読みで「ボルハス」の方が馴染みがあったりします)は移民に関しては否定的な研究成果を示しがちである、などです。私は移民の経済学を展開するに当たって、2つの問題点があると考えています。ただ、この2点は基本的に同じコインの裏表であって、おそらく同じ問題だろうという気がします。すなわち、ひとつには経済学がまだ未熟な科学である、という点で、もうひとつは、経済学的な表現ですが、すべてを部分均衡により分析していて、移民のような広範な影響を及ぼしかねない重要な分析であるにもかかわらず、一般均衡的な分析ができない、もしくは、していないことです。「群盲象を撫でる」結果に終わっているわけです。幅広く十分な範囲から視覚を活用した観察が、現在の経済学の到達水準ではできない、ということだろうと思います。従って、本書のように、得する人と損する人という分析も、どこまで信頼性あるかはやや疑問です。部分均衡分析では得するように見えても、回り回って損する場合もあるからで、それは経済学的にはモデルの構築次第、すなわち、言葉を変えれば分析者の「思惑次第」ということにもなりかねません。結論がある程度決まっていてモデルを構築しデータを集める、ということも可能なわけです。最後に、私自身の移民に対する直感的で決して定量的でない意見は、ややネガティブというものです。おそらく、移民は経済学的には生産要素の多様性に大きく寄与し、従って、サプライサイドからは成長にも貢献します。ただ、日本は、韓国とともに、先進国の中で、文句なしの「人口大国」である中国に隣接しているという地理的条件から、どこまで移民を受け入れるかには覚悟が必要です。現状の数百万人を超えて、1000万人単位で中国からの移民を受け入れれば、もはや国家としてのアイデンティティをなくす可能性も視野に入れるべきです。でも、そこまでして企業は安い労働力を欲しがるんだろうな、という気はします。強くします。

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最後に、斉藤賢爾『2049年「お金」消滅』(中公新書ラクレ) です。著者は、専門分野はそれほど意味ないとしても、デジタルマネーやコンピュータエンジニアリングの研究者であり、何となくタイトルにひかれて読んでみましたが、とても興味深い論考でした。ひとつだけ注意すべきは、タイトルの「お金」とは、あくまでマネーであり、紙幣やコインという実態ある貨幣がなくなって、デジタルマネーに置き換わる、という主張ではありません。デジタルマネーまで含めてマネーが不要となる経済社会が実現する、というのが著者の主張の肝です。ということで、著者は、基本、エンジニアのようですから、経済学的な「希少性」という言葉はまったく出現しませんが、要するに、供給面では社会的な生産力が大きく拡大され、需要面では財やサービスに希少性がなくなり、別の表現をすれば、限界費用がゼロとなることから市場での価格付けが最適配分に失敗し、従って、市場における交換が社会的な欲求を満たすために行われなくなり、結果として、贈与経済に近い経済社会が出現する、それも、今世紀半ばにはそうなる、という近未来の将来社会の姿を描き出そうと試みています。一言で表現するつもりが、ついつい長くなりましたが、そういうことです。そして、19世紀的には多くのマルクス主義者がこれを「社会主義」と読んでいたような気がします。私は20世紀ないし21世紀のエコノミストですが、同じように、この本書で描写されている経済社会は現代的な意味でのマルクスのいう社会主義だと思います。ただし、著者が否定しているように、社会主義的な経済計画や中央政府からの司令に基づく資源配分が実行される経済システムである必要はサラサラありません。そして、本書のような社会主義経済ではマネーは確かに必要なくなりますし、著者はご自身で気づいていないかもしれませんが、まったく同じ意味で所得も必要ありません。ですから、本書で著者が強調しているように、ベーシック・インカムの議論はまったく意味をなしません。私は進歩派のエコノミストとして、著者の主張するような経済社会が、今世紀半ばに誕生するかどうかはともかく、そう遅くない未来に現れるものと期待しています。ただ1点だけ、本書のスコープのはるか外ながら、その際に金融資産、あるいは、実物資産、例えば土地や不動産がどのように評価されるのかは興味あります。生産されない資産は希少性が残る気がします。おそらく、生産される財とサービスに希少性がなくなるので、その生産要素たる資産には希少性が認められないと思うのですが、生産要素ではない資産はどうなるのでしょうか。
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