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2020年01月28日 (火) 23:30:00

ジワジワと上昇率を縮小させる企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から昨年2019年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。先月10月統計から消費税率引上げがありましたので、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は今月12月統計でも前月と同じ+2.1%を示しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じく+2.1%を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の企業向けサービス価格、増税除き0.4%上昇
日銀が28日発表した2019年12月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は105.0と、前年同月比で2.1%上昇した。消費税率引き上げの影響を除くと同0.4%の上昇だった。人手不足に伴い土木建築サービスや労働者派遣サービスの価格上昇が目立った。燃料費上昇による外国貨物輸送の値上がりも寄与した。
前月比の伸び率は横ばいだった。運輸・郵便などが上昇する一方、広告価格が下落した。
2019年の企業向けサービス価格指数(増税の影響を除く)は前年比0.7%上昇した。上昇は6年連続で、伸び率は18年(1.2%)から縮小した。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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先月統計から大きな変化はないんですが、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率+2.1%の内訳を大類別の寄与度で見ると、引き続き、労働者派遣サービスや土木建築サービスなどを含む諸サービスが+0.89%と大きな寄与を示しているほか、道路貨物輸送や鉄道旅客輸送などを含む運輸・郵便が+0.38%となっており、この2つの大類別は人手不足の影響がうかがえます。ほかに、ソフトウェア開発などを含む情報通信も+0.38%を示しています。これらの業種については、純粋な値上げというよりも、消費税率引上げの転嫁が進んでいる、と考えるべきなのかもしれません。ただし、消費税を除く上昇率が試算されているんですが、10~12月の各月統計で+0.4%となっており、5月統計まで+1.0%の上昇率を示し、消費税率引上げ直前の8~9月統計で+0.5%の上昇率だったのに比べれば、ジワジワと上昇率が縮小して来ていることも事実です。人手不足の影響によりサービス価格はそれなりに堅調であるものの、景気動向から方向感としては上昇率が縮小してきているのも認識すべきであろうと私は受け止めています。
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2020年01月27日 (月) 19:40:00

キャッシュレス決済に関するMMD研とビザ・ジャパンの調査

とても旧聞に属する話題ですが、ちょうど1週間前の1月20日にビザ・ワールドワイド・ジャパンとMMD研究所が共同で実施した「【第1弾】2020年キャッシュレス・消費者還元事業における利用者実態調査」の結果が明らかにされています。各社のニュースリリースは以下の通りです。


続いて、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのサイトから調査結果のTOPICSを7点引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」の認知・理解は進んでいるか?
    ⇒キャッシュレス・消費者還元事業の認知は約9割、内容の理解は約6割
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」を知ったチャネルは何だったのか?
    ⇒認知キッカケはテレビのニュース番組が最多。CMも含めると約5割がテレビ
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」でキャッシュレス決済での支払いは変化があったのか?
    ⇒「キャッシュレス決済の支払いが増えた」が約4割
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」が始まる前後(10月1日以前と以降)で支払い方法の種類に変化は?
    ⇒クレジットカードが9割近い利用率を維持、スマホ決済(QR・非接触)が増加
  • 最も利用している「キャッシュレス決済」は?
    ⇒ 最も利用するキャッシュレスは「クレジットカード」が52.0%、次いで「カード型電子マネー」が19.2%、「QRコード決済」が18.2%
  • キャッシュレス決済の利用が増えた場所は?
    ⇒キャッシュレスの利用場所TOP3は「コンビニ」、「スーパーマーケット」、「ドラッグストア」
  • キャッシュレス決済から想起すること、普及体感、期待は?
    ⇒キャッシュレス決済のイメージは「クレジットカード」、普及の体感は48.9%、期待は54.9%


いくつかグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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続いて、上のグラフは、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのサイトから 諸飛車還元事業前後の決裁利用 を引用しています、というか、前と後の2つのグラフを連結しています。見れば判ると思いますが、消費者還元事業前後の支払い方法として、当然トップの「現金」を別にしてキャッシュレス決済の中では、依然として、「クレジットカード」が高い利用率なんですが、消費者還元事業の前後で変化なく、変化の幅で見れば、「QRコード決済」は10%ポイントの増加を見せています。「クレジットカード」をはじめ、「カード型電子マネー」などの他のキャッシュレス決済は統計的に有意な差が出ているようには見えません。

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さらに、上のグラフは、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのサイトから 消費者還元事業後のキャッシュレス決済利用が多くなった場所 を引用しています。消費税増税に伴うキャッシュレス・ポイント還元事業は、基本的に、政府施策としては中小企業対象だったハズなんですが、政府施策ではない企業独自のポイント還元が少なくなく、むしろ、日用品を扱う大手チェーンストアでの利用が促進され、幅広くキャッシュレス決済を利用する人が増える方向にあることが見て取れます。

私は、エコノミストとして、高額紙幣とか現金決済は金融腐敗や、場合によっては、犯罪の温床になりやすいと危惧しています。スマホへの依存を強めたり、セキュリティ上の懸念は残りますし、実際に、セブンイレブンが大きくコケた例もあったりしますが、高額紙幣での現金決済をいかに減らすかについても、政府や日銀の積極的な取組が必要だと考えています。
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2020年01月26日 (日) 16:30:00

今週のお天気は大荒れか?

実は、4月から勤務する私大の研究室を見せてもらったり、不動産屋さんに新しい住まいの候補となる物件をいくつか見学させてもらうため、今週後半関西方面に出かける予定なんですが、東京も関西もお天気が大荒れのような雰囲気で、やや心配です。

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まず、上の天気図はウェザーニュースのサイトから引用しています。週明けの明日1月27日(月)は低気圧の接近に伴い、西日本の広い範囲で荒れた天気となるようで、特に、東シナ海を進む低気圧と大陸の高気圧との気圧差が大きく、沿岸部は東よりの風が強まる見込みとなっており、低気圧や前線に向かって暖かな空気が流れ込むため、1月としては記録的な大雨の可能性があります。取りあえず、今週前半の西日本のお天気ですから、私が行く週後半はここまで荒れたお天気ではない可能性もあります。

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次に、上の天気図もやっぱりウェザーニュースの別のサイトから引用しています。週明けの交通機関への影響予測なんですが、‹鉄道›、‹高速道路›、‹空の便›、の3部作から私が使う鉄道のみを引用しています。週後半の東海道新幹線への影響が気がかりですので、引き続きフォローしたいと思います。
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2020年01月25日 (土) 19:30:00

今週の読書はかなりたくさん読んで文庫本まで含めて計8冊!!!

今週は、データ経済におけるプライバシー保護や英国における階級分析の社会学をはじめとして、文庫本のシリーズ3巻まで含めると、以下の計8冊の読書でした。そろそろ、ペースを落とそうと思いつつ、なかなか巡り合わせがそうなりません。

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まず、日本経済新聞データエコノミー取材班[編]『データの世紀』(日本経済新聞出版社) です。データをいかにビジネスに生かして収益を上げるか、その際のプライバシーの扱いはどうなるのか、こういった疑問に関して、かなり否定的な見方を提供しています。日経新聞のジャーナリストのリポートらしくない気もします。本書の謳い文句なんですが、20世紀は石油の世紀であって、でも、産油国が我が世を謳歌したわけではなく、むしろ、石油をうまく利用した製品を生み出した先進各国の世紀だった一方で、21世紀のデータの世紀もデータを生み出した国が中心になるわけではなく、そのデータを上手く利用する国が国民に豊かな生活を提供するわけです。ということで、急遽設えられた雰囲気のある第0章のリクナビによる内定辞退率の提供問題から始まって、米国のGAFAが個人情報を収集・利用したビジネスで大きな収益を上げている事実を基に、経済学的な用語としてはまったく用いられていませんが、データ利用の外部性について、個人データを提供させられているサイドと、それを利用して実に効率的なビジネスを構築したサイドを対比させて、このままでいいのか、あるいは、個人情報や付随するデータをどのような利用に供するのが個人と情報企業の最適化につながるのか、考えさせられる部分が大きいです。それにしても、先週の読書感想文で取り上げた『デジタル・ミニマリスト』でも書いたんですが、FacebookやInstagramなどのSNSで嬉々としてアテンションと個人情報を提供している人達を見るにつけ、それはそれで幸福度が上がるのであればいいんではないか、ある意味で、データに関する前近代性をさらけ出しているような気がして、もはや意味のある個人データ保護がどこまで可能なのかに疑問すら生じます。例えば、リクナビ問題でも、就活学生サイドからすれば、個人情報を提供することなく採用に関する企業情報だけを得たいわけでしょうし、逆に、採用する企業サイドからすれば、企業サイドの採用に関する情報を開示することなく、就活学生の情報だけを得たいわけです。ただ、注意すべきは、情報企業だけでなく、自動車だって、電機だって、製品に関する情報は企業の方が消費者よりも圧倒的に持っているのは変わりありません。ですから、製造物責任のような制度を情報産業に対しても適用できるか、あるいは、外部経済の大きな産業に特有な独占の形成をいかに規制するか、その際、スティグラー的な「規制の虜」をいかに政府は克服するか、こういった問題を新たな産業でいかに国民本位に運営するかの問題と考えるべきです。すなわち、決して、本書のように、利便性と個人方法提供の間のトレードオフというわけではない、と私は考えています。

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次に、マイク・サヴィジ『7つの階級』(東洋経済) です。今日の日経新聞の書評欄で取り上げられていました。著者は、英国ロンドンスクール・オブ・エコノミクスの社会学の研究者です。明示的にクレジットとして上げられているこの著者の他にも、社会学や教育学の研究者が何人かで共著しています。ただ、エコノミストはいなかったように見受けられました。英語の原題は、上の表紙画像に見られるように、Social Class in the 21st Century であり、2015年の出版です。栄子くんBBCが2011年に調査した結果を2013年に取りまとめて公表し、それらを学術的な出版物として取りまとめた成果であると私は認識しています。結論からすれば、邦訳タイトルのように、英国には7つの階級が存在し、上流から順に、(1) エリート7%、(2) 確立した中級25%、(3) 技術系中流6%、(4) 新富裕労働者15%、(5) 伝統的労働者14%、(6) 新興サービス労働者19%、(7) プレカリアート15%、となっています。そして、超えらの階級における3つの資本の賦存、すなわち、第1に、フローの所得やストックの金融資産や不動産といった経済資本、第2に、オペラ鑑賞や美術館での美術鑑賞、ほかに読書などのハイカルなどの文化資本、第3に、学歴や人脈やクラブの所属などの社会関係資本、の3つの資本で階級を可視化しようと試みています。(1) エリートは3つすべての資本を多く持ち、(2) 確立した中流はエリートについで3つの資本を持ち、(3) 技術系中流は比較的裕福で社会関係資本がやや少なく、(4) 新富裕労働者は比較的裕福で文化資本が少なく、伝統的労働者は3つの資本すべてがやや少ないものの、バランスがよく、(6) 新興サービス労働者は年齢的に若いこともあって、経済資本が少ないながら、文化資本と社会関係資本は持っていて、(7) プレカリアートはすべての資本に恵まれない、ということになります。また、それぞれの個人の人生は登山に例えられて、山を登るように3つの資本を蓄積して、従って、階級を上昇させる、と考えられていますが、もちろん、同じ地点から登山を始めるわけではなく、前の世代から受け継ぐものに大きな違いがあり、登山を始めるベースキャンプの標高には大きな差があるのは当然です。マルクス主義的な階級観では、生産要素の所有もしくは雌雄が基礎にあり、その経済的な下部構造が上部構造の文化や意識を決定する、と大雑把に考えられています。土地を所有する貴族、資本を所有するブルジョワジー、自分の労働力以外の生産手段を保有しない労働者階級、ということになり、それぞれの下部構造が上部の文化や社会関係を規定します。本書の社会学的な分析では、経済資本は他の2つと並列のひとつの要素に過ぎません。この3つの資本を本書のように分けて理解するか、マルクス主義的な階級観のように、経済資本が他の2つの資本を規定すると考えるか、議論は決定していない気がします。少なくとも、マルクス主義のように経済資本から文化資本や社会関係資本への一方的な決定論も、本書のように3つの資本相互間のインタラクティブな関係を考慮の外に置いて各資本を独立に扱うのも、どちらも片手落ち、というか、やや深みに欠けるな気がします。

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次に、保阪正康『昭和史7つの裏側』(PHP研究所) です。著者は、編集者や在野の歴史研究家となっています。本書の「昭和史」というのはやや広すぎる表現なんですが、昭和20年くらいまでの戦争に関する歴史に焦点を絞っていると考えるべきです。その中で、タイトルにあるように、章立ての順に従って、(1)「機密戦争日誌」はいかに保存されたか、(2)「昭和天皇独白録」の正体、(3) 学徒出陣壮行会で宣誓した学生代表の戦場(江橋慎四郎へのインタビュー)、(4) 逆さまに押した判子と上司・東条英機(赤松貞雄へのインタビュー)、(5)「日本はすごい」と思っていなかった石原莞爾(高木清寿へのインタビュー)、(6) 本当のところが知られていない東条英機暗殺計画(牛嶋辰熊へのインタビュー)、(7) 陸軍省軍務局で見た開戦経緯(石井秋穂へのインタビュー)という構成になっています。なんだか、ほとんど第2章から第7章までのが取材対象者、というか、歴史の実体験者からの証言、的に構成されているんですが、私には疑問に思える部分も少なくありませんでした。当然ながら、いろんな歴史上のイベントが生じてから、まず、終戦という大きな不連続点を通過し、さらに、それなりの年月を経過した後のインタビューです。しかも、インタビューの対象が、東条英機の秘書だった赤松貞雄、あるいは、石原莞爾の秘書だった高木清寿など、傍で見ていた観察者ではなく、実際の当事者に近い存在ですから、どこまで脚色されているのかが判りかねます。その上、同じ帝国陸軍軍人ながら、開戦から本土決戦まで主戦派だった東条英機と、いわゆる「最終戦争」まで隠忍自重を主張した石原莞爾では、まったく方向性が異なるわけですし、陸軍関係者ばかりのインタビューで、海軍サイドの見方は欠けており、例えば、ホントに海軍が開戦に反対だったら太平洋戦争は始まらなかった、とか、中国で陸軍が華々しい戦績を上げているのを海軍は羨んでいた、などと主張されると、ますます信頼性が低下するような気がします。たしかに、組織的な隠滅工作が実施されて、戦争に関する史料が極端に少ないのは理解しますが、それをインタビューで埋めようとするのは、やや疑問です。主として、誘拐事件などで論じられるストックホルム症候群のような現象が取材者と取材先で生じるようなリスクも感じられます。細かな人間関係などのマイクロな開戦や終戦の理由ではなく、もっと歴史的な必然性を炙り出すような大きな流れを解明する歴史観が必要ではないでしょうか。もちろん、開戦や終戦のバックグラウンドとなる経済社会的な実情についても考えを巡らせるべきであろうと思います。

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次に、エドワード・スノーデン『スノーデン独白』(河出書房新社) です。6年前の2013年の衝撃的な情報漏洩事件の首謀者の自伝です。CIAとNSAという世界最強の米国諜報業界(IC=たぶん Intelligence Circle)を敵に回して、結局、ロシアから出られなくなった人物です。情報漏洩、あるいは、リークという意味では、いわゆる「パナマ文書」によるモサック・フォンセカからの流出と、本書のスノーデンからのリークが今世紀前半では「大事件」といえるんでしょうが、モサック・フォンセカが単なる民間の一会計事務所であるのに対して、スノーデン文書の方は米国諜報機関の赤裸々な活動実態を明らかにしているだけに、より興味をそそられる、というのも事実でしょう。スノーデン本人の生まれ育ちから、リークに至るまでとさらにリーク直後の事実関係を、おそらく、かなり正確に描写している気もします。ただ、スノーデン本人、すなわち、リークした側からすれば、「やった、やった」というカンジで過大に評価するバイアスがかかる一方で、CIAやNSAのようにリークされた側では「たいしたことではない、情報の価値は低い」などと過小評価するバイアスがかかるでしょうから、本書については、それなりに、眉に唾してハッタリをかまされないように気を付けながら読み進む必要があるかもしれません。私自身は昨年3月に定年退職するまで長らく国家公務員として政府に勤務しており、国家公務員でなければできない職業として、スパイと外交官と軍人がある、なんぞとうそぶいていた人間ですので、本書の情報リークに関しては、それなりにリークされた側にシンパシーを感じかねないバイアスがあるような気もします。例えば、007ジェームス・ボンドは、小説上の設定ながら、MI7に勤務する海軍将校であり、当然、国家公務員なんだろうと思います。ですから、私はスノーデン個人がどれだけの知性を持った人物か、加えて、どれだけの覚悟をもってリークしたのか、を読み取ろうとしましたが、なかなかに難しい課題だった気がします。リーク事件直後の直感的な受け止めで、スノーデンの知性は高くない、という印象は本書を読んでも否定されませんでした。ただ、覚悟については、それなりに理解が進んだ気がします。ルービック・キューブのシールにマイクロSDを隠して情報を持ち出すシーンや、リーク後の香港出発やロシアの空港でのやり取りなど、それなりにサスペンスフルな場面もありましたが、私にはそれほど印象的ではありませんでした。ただ、映画化されれば見に行くような気もします。

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次に、米澤穂信『Iの悲劇 』(文藝春秋) です。著者は、古典部シリーズなどで人気のミステリ作家です。この作品は、小市民シリーズのように、ある意味で、ユーモア・ミステリ、というか、ややブラックなユーモア・ミステリで、殺人などの深刻な犯罪行為は出て来ませんし、でも、かなり論理的で本格的な解決が示されるミステリ長編、ないし、連作短編集といえます。舞台と主たる登場人物は、市町村合併で巨大な市が形成された中で、とうとう、数年前に無人になった集落にIターンとして人を呼び戻すため、まだ使える家屋などを低廉な家賃で貸し出して、移住者を集めて定住化を促進しようとする市役所の支所で働く3人の公務員です。定時で帰宅してそれほど仕事熱心とも見えない課長と、やや社会人というには幼い新人女性にはさまれた男性が主人公に据えられています。別サイドには無人化した集落に移住を希望する人々が据えられ、でも結局、すべての移住希望者が去ってしまい、有名なミステリのタイトルよろしく「そして誰もいなくなった」で終わります。最初の方は、公務員3人のキャラがよく出ていて、それでも、仕事熱心と思えない課長の謎解き能力に驚かされたりもしますが、だんだんと読み進む上でタマネギの皮をむくように真実が明らかになっていきます。最終章に至るまでに、この作品の作者のファンであれば、ほぼほぼ全員が真相にたどり着くことと思います。また、各章で問題を起こしたり、あるいは、去っていく維持遺希望者も立派なキャラが立っていて、読み進んでも混乱をきたすことはありません。というか、私自身は、こういった限界集落のような田舎に移住したいとは思いませんから、この作品に登場するような移住希望者は、やっぱり、少し変わったところがあるんだろうと楽しく読めます。ただし、第5章だけは、ヤル気なし課長の守護神、火消し役としての面が明らかにされるほかは、後半は主人公と弟の間で延々と電話の会話がIターンの意味について考えさせられる、という意味で、この連作短編集の中で、それなりの重要性はあるものの、章として独立させる意味があるのかはやや疑問です。作者の力量からすれば、こういった課長の守護神=火消し役としての能力やIターンの意義に貸しては、個別にところどころに溶け込ませることも十分可能ではないかという気がします。まあ、こういった個別の章建てで論じてもらえば、私のような頭の回転の鈍い読者にも結論が見えてくる、という意味では意味あるかもしれませんが、やや冗長な章立てだっという気もしました。でも、この1点を別にすれば、とても秀逸なミステリだと思います。ここまで素晴らしいミステリは久々です。出来のいいミステリが多い作家であることはいうまでもありませんが、ひょっとしたら、本作が代表作といえるかもしれません。でも、やっぱり、クローズド・サークルの『インシテミル』かなという気もします。

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最後に、ハーラン・エリスン[編]『危険なヴィジョン 完全版』123(ハヤカワ文庫SF) です。編者は、米国のSF作家であり、よく「奇才」と称されたりしているんではないかと思います。本書では、SFをScience Fictionではなく、Speculative Fictionnと称していたりします。全3冊に渡る30編余りの短編で編まれており、アシモフやスタージョンをはじめ、キラ星のようなSF作家が作品を寄せています。第1巻巻末の解説にあるように、作家協会の会員が選ぶネビュラ賞やファン投票で決まるヒューゴー賞を受賞あるいは最終候補に残った作品もいくつか含まれています。全編書下ろしといううたい文句です。米国で原書が出版されたのは50年以上も前の1967年なんですが、さすがに、やや古いと感じさせる短編もある一方で、まだまだ輝きを失っていない作品も少なくありません。もちろん、米ソの冷戦の環境下で、また、そもそも海外SF小説ということで、ソ連の技術的な脅威を過大評価していたり、あるいは、やや残虐な場面が少なくないような気もします。短編作品ごとに付された編者の序文や著者のあとがきがウザい気もしますし、もちろん、短編ごとの統一感ないのは承知の上で読み始める必要があります。ただ、古さを感じさせる作品も含めて、ある意味で、いくつかある米国SF小説の黄金時代のうちのひとつの雰囲気を感じることが出来ると思います。読みようによっては、各巻1時間ほどで読み切ることも可能ですし、逆に、じっくりと時間をかけるだけの読み応えもあります。
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2020年01月24日 (金) 23:30:00

2019年12月の消費者物価(CPI)はエネルギー価格動向により上昇幅を拡大!

本日、総務省統計局から昨年2019年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し拡大して+0.7%を示しています。また、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.9%でした。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年12月の全国消費者物価、0.7%上昇 伸び率拡大
総務省が24日発表した2019年12月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合が102.2と18年12月に比べ0.7%上昇した。プラスは36カ月連続。材料費や人件費の高止まりを背景とした外食、宿泊料などの上昇に加え、損害保険大手が火災・地震保険料を引き上げたのも物価上昇に寄与した。
上昇率は19年11月の0.5%から拡大した。宿泊料などの上昇に加え、原油価格の上昇でガソリンや灯油の価格の下落幅が縮小したのも物価上昇につながった。一方、携帯電話の通信料は大手各社の値下げの影響で、引き続き物価の下げ圧力となった。
19年12月は生鮮食品を除く総合では387品目が上昇した。下落は112品目、横ばいは24品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
総務省は昨年10月の消費税率引き上げの影響を勘案したCPIの試算値も公表した。総務省の機械的な試算によると、消費税率引き上げと幼児教育・保育無償化の影響を除いた場合、19年12月の生鮮食品を除く総合の物価上昇率は0.4%となる。
19年12月の全国CPIで、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は102.1と18年12月比0.9%上昇した。生鮮食品を含む総合は102.3と0.8%の上昇だった。
あわせて発表した2019年平均の全国CPIは、生鮮食品を除く総合が101.7と18年比0.6%上昇した。上昇は3年連続。外食やエネルギー関連項目の上昇がけん引した。前の年と比べた上昇率は18年の0.9%から縮小した。生鮮食品とエネルギーを除く総合は0.6%上昇、生鮮食品を含む総合は0.5%上昇した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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ということで、昨年2019年の10月統計から消費税率の引上げと幼児教育・保育無償化の影響が現れており、これを含んだ結果となっていて、引用した記事にもあるように、その影響の試算結果が「消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響 (参考値)」として総務省統計局から明らかにされています。少し話がややこしいんですが、この参考値によれば、10月統計について、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIのヘッドライン上昇率+0.4%に対する寄与度が+0.37%となっていて、その+0.37%に対する消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響が合わせて+0.20%、分けると消費税率引上げが+0.77%、幼児教育・保育無償化が▲0.57%と、それぞれ試算結果が示されています。12月統計ではコアCPI上昇率が+0.7%と少し上昇幅を拡大しているものの、このコアCPI上昇率+0.7%のうちの+0.20%が制度要因といえます。実際に、統計局がExceelファイルで提供している消費税調整済指数では、10月と11月は消費税の影響を除くコアCPIの前年同月比上昇率はともに+0.2%でしたが、12月統計では+0.4%にやや加速しています。このコアCPI上昇率の加速の大きな要因はエネルギーであり、かなりの程度に、国際商品市況における石油価格に連動しています。ただ、やや話がややこしいのは、まだ12月統計でもエネルギー価格が下落している点です。すなわち、11月統計では前年同月比で見たエネルギー価格の下落は▲2.1%でしたが、12月統計では▲0.6%に下落幅を縮小させ、その分、コアCPI上昇率の上昇幅拡大に寄与しています。その寄与度差は+0.13%と統計局のリポートで示されています。この寄与度差+0.13%のうち、ガソリンだけで+0.14%に上っており、自動車に乗らない人にはやや実感が薄いかもしれません。また、このエネルギー価格の下落幅の縮小によるコアCPI上昇率へのプラス寄与については、2018年11月に国際商品市況で石油価格がピークを打っていますので、その1年後の2019年11月に物価上昇へのマイナス寄与がもっとも大きくなっているわけで、その後、というか、この先数か月に渡ってエネルギーは我が国物価にプラス寄与しそうです。従って、国際商品市況における石油価格や為替レートの動向にも依存しますが、この先、今年2020年年央くらいまでコアCPI上昇率は+1%近い上昇率を続ける、との見方がエコノミストの間で広がっていることも事実です。その後、消費税率引上げの物価押上げ効果も剥落し、コアCPI上昇率は減速する、との見立てです。金融政策よりもエネルギー価格の方が、我が国物価へのインパクト大きい、という点は変わりないようです。

年初早々に、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したとの報道があり、中東の地政学的リスクから石油価格の動向を私は懸念したんですが、その後、国際商品市況において石油価格が急騰したということにはなっていないようで、例えば、私が時折拝見しているみずほ証券の「マーケット・フォーカス 商品:原油 2020/1/9」では、中東リスクによる不透明感あるものの、「長期的な原油価格の変動要因としては地政学リスクよりも世界景気に軍配があがろう」と指摘していますし、私の知り合いも、米国内のシェール・オイルなどの裏付けあって、石油価格の高騰を招く可能性小さいと考えたからこその軍事行動である、との指摘も受けました。石油価格動向は私には極めて不案内で専門外なんですが、そうなのかもしれません。
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2020年01月23日 (木) 23:30:00

2か月連続で貿易赤字を記録した12月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から昨年2019年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲6.3%減の6兆5771億円、輸入額も▲4.9%減の6兆7296億円、差引き貿易収支は▲1525億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年12月の貿易収支、1525億円の赤字 通年は2年連続赤字
財務省が23日発表した2019年12月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1525億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1510億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比6.3%減の6兆5771億円、輸入額は4.9%減の6兆7296億円だった。
併せて発表した19年の貿易収支は1兆6438億円の赤字だった。通年ベースの貿易赤字は2年連続。輸出額は18年比5.6%減の76兆9278億円、輸入額は5.0%減の78兆5716億円だった。


いつもの通り、コンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが貿易赤字▲ 1510億円でしたから、実績の▲1525億円の赤字はほぼほぼジャストミート、何のサプライズもなかったといえます。また、季節調整済みの系列を見ても、12月の貿易収支は▲1025億円の貿易赤字となっており、2018年年央7月からほぼ1年半に渡って貿易赤字を続けており、黒字を記録した月は例外的ともいえ、2019年中では2月と6月だけで、前者2019年2月の黒字は明らかに中華圏の春節の影響だと私は考えています。この1年半の間、上のグラフの下のパネルに見られるように、季節調整済みの系列で見て、輸出入とも緩やかに減少のトレンドにあるように見えるのは、明らかに、米中間の貿易摩擦による関税率引上げに起因した世界的な貿易の停滞やひいては世界経済の需要低迷の影響であると考えるべきです。ここ1年半ほどのトレンドとして、日経新聞の記事「輸出入3年ぶりマイナス 米中貿易戦争で需要減」をはじめとして、年統計に注目した報道の通りといえます。このブログでは景気動向に私自身の興味があるものですから、出来る限り、high frequency という観点から、年統計よりも四半期統計、四半期よりも月次統計を重視していますが、報道では年統計に着目したものが多いので、ここでは、少しニッチを狙って四半期統計に着目したいと思います。すなわち、2018~19年の2年に渡って貿易収支は赤字を続けているわけですが、2019年の各四半期でも、季節調整していない原系列のベースながら、4四半期連続で貿易収支は赤字を続けました。特に、直近では2019年7~9月期▲5263億円、10~12月期▲2249億円となっており、ホントは経常収支ながら貿易収支だけから見て、2019年10~12月期の貿易収支の赤字幅が縮小していますからGDP成長率に対して外需はプラス寄与する可能性が高い、と私は考えています。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、輸出数量については前年同月比でまだマイナスとはいえ、12月統計では輸出数量の前年同月比のマイナス幅が大きく縮小していることも事実であり、先進国も中国も需要は回復に向かいつつあることから、我が国の輸出数量にもようやく底入れの兆しが見て取れます。
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2020年01月22日 (水) 19:30:00

世界経済フォーラム主催のダボス会議におけるOXFAMのリポートやいかに?

いくつかの報道に見られる通り、今週1月21日から24日までダボス会議が開催されています。その中から まあ、私の趣味に従って、昨年と同様にOXFAM のリポート Time to Care に注目したいと思います。ダボス会議の主催者である世界経済フォーラムのサイトにも言及がありますし、もちろん、pdfの全文リポートサマリーリポートもアップされています。このリポートでは、性差別経済が不平等の危機を拡大している "our sexist economies are fuelling the inequality crisis" と、特に以下の3点を例として強調しています。OXFAMのサイトから引用しています。

Time to Care
  • The 22 richest men in the world have more wealth than all the women in Africa.
  • Women and girls put in 12.5 billion hours of unpaid care work each and every day - a contribution to the global economy of at least $10.8 trillion a year, more than three times the size of the global tech industry.
  • Getting the richest one percent to pay just 0.5 percent extra tax on their wealth over the next 10 years would equal the investment needed to create 117 million jobs in sectors such as elderly and childcare, education and health.


下の INFOGRAPHICS は、全文リポートの p.8 から引用していますが、サマリーリポートの p.6 にもほぼほぼ同じものが掲載されています。

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男女間の性別の不平等をはじめとして、格差や不平等は単に不正義であるだけでなく、大きく経済を歪めていると私は考えています。何としてもこれらの不平等を是正し、経済を正常な状態に戻す方策を探る必要があります。その意味でも、OXFAM Japan が2018年9月限りで解散したのは誠に遺憾千万、残念この上ありません。
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2020年01月21日 (火) 19:30:00

IMF「世界経済見通し改定」やいかに?

本日1月21日から開催されたダボス会議を前に、昨日1月20日に国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update, January 2020 が公表されています。副題は、Tentative Stabilization, Sluggish Recovery? とされており、前半部分もさることながら、特に後半部分がよく中身を表している気がします。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、成長率の総括表をIMFのブログ・サイトから引用すると以下の通りです。

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見れば明らかなんですが、昨秋2019年10月時点の見通しから全般的に成長率については下方修正されています。今年2020年の世界経済の成長率は昨年10月時点の見通しから▲0.1%ポイント下方改定されて+3.3%と見込まれている上に、来年2021年も▲0.2%ポイント下方修正されて+3.4%と予測されています。この下方修正の要因は、リポートでは、"The downward revision primarily reflects negative surprises to economic activity in a few emerging market economies, notably India" と、インドに起因することを明記しています。広く報じられた通り、住宅金融のノンバンクであるデワン・ハウジング・ファイナンス(DHFL)のデフォルトによる金融混乱を指していると多くのエコノミストは受け止めていることと思います。ただ、同時に、IMFのブログ・サイトでは、"some risks have partially receded with the announcement of a US-China Phase I trade deal and lower likelihood of a no-deal Brexit" と、米中間の第1段階の貿易合意の発表、また、合意なきBREXITの可能性の低下などをリスク低下の要因として上げています。私が見た範囲では、全国紙各紙とも見通し下方修正の要因としてインドに軽く触れている一方で、もっと明るい話題というか、何というか、米中貿易合意とか、BREXTの方の注目度が高かった気がします。先行きについては、リポートでも、"On the positive side, market sentiment has been boosted by tentative signs that manufacturing activity and global trade are bottoming out" と、製造業と世界貿易の落ち込みがボトムアウトする兆候により市場センチメントが向上する、とする一方で、"few signs of turning points are yet visible in global macroeconomic data" と、世界のマクロ経済には転換点を示すデータはまだほとんどない、と先が長い可能性も示唆しています。
日本の成長率見通しについては、今年2020年が+0.7%成長と前回見通しから+0.2%ポイント上方修正された一方で、来年2021年は変わらず+0.5%と見込まれています。このあたりが潜在成長率近傍なのかもしれません。なお、今年2020年の成長率を上方改定した理由は、"healthy private consumption, supported in part by government countermeasures that accompanied the October increase in the consumption tax rate,robust capital expenditure, and historical revisions to national accounts" と、昨年2019年10月の消費税率引上げに合わせた政府経済対策にも部分的に支援されて消費が堅調であり、設備投資も伸びているとしています。ただ、最後のポイント、すなわち、過去にさかのぼっての国民経済計算統計の改定という理由は、まあ、わざわざこんなことを明記するんですから、統計の信頼性に対する苦情にやや近い気もします。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2019年度+0.8~+0.9
<+0.8>
+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.4~+0.5
<+0.4>
 10月時点の見通し+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.6~+0.8
<+0.7>
+0.4~+0.6
<+0.5>
 2020年度+0.8~+1.1
<+0.9>
+1.0~+1.1
<+1.0>
+0.9~+1.0
<+0.9>
 10月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.2
<+1.1>
+0.7~+1.1
<+1.0>
 2021年度+1.0~+1.3
<+1.1>
+1.2~+1.6
<+1.4>
 10月時点の見通し+0.9~+1.2
<+1.0>
+1.2~+1.7
<+1.5>


最後に目を国内に転ずると、本日、日銀「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しは上のテーブルの通りです。各セル下段の>< >内は中央値となっています。ただし、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、その他の情報とともに、引用元である日銀の「展望リポート」のサイトからお願いします。IMF見通しに従って、というわけでもないんでしょうが、日銀見通しも成長率については上方修正されていて、日銀自身も「展望リポート」1ページめのサマリーで、成長率については「2020年度を中心に、上振れている」と見ている一方で、物価の見通しについて「おおむね普遍」と自己評価しています。上のテーブルで明らかな通り、実は、やや下方修正という見方も成り立つような気がします。
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2020年01月20日 (月) 22:30:00

「中長期の経済財政に関する試算」の結果やいかに?

先週金曜日、1月17日に経済財政諮問会議が開催され、スマート化・グリーン化投資と関連人材投資を軸とした産業構造・経済構造の再構築などをはじめとする2020年前半の主要議題や来年度予算とともに、「中長期の経済財政に関する試算」、すなわち、財政収支と公債残高のGDP比の試算が2029年度まで示されています。

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見れば判ると思いますが、上のパネルが国・地方のプライマリ・バランスのGDP比、下が国・地方の公債等残高のGDP比となっています。報道では、プライマリ・バランス黒字化が目標の2025年度に達成できず、赤でプロットされている成長実現ケースでも2027年度に先送りされ、青のベースラインケースでは試算期間中の2029年度までではプライマリ・バランスは赤字のまま、という点が強調されていたように私は受け止めています。でも、上のグラフをよく見れば、プライマリ・バランス赤字を続けるベースラインケースでも、公債残高のGDP比は190%くらいで安定します。現代貨幣理論(MMT)を持ち出すつもりもありませんが、このあたりで十分ではないでしょうか。

なお、国際通貨基金(IMF)のサイトによれば、「世界経済見通し」World Economic Outlook の改定が本日1月20日のダボス会議で明らかにされる予定となっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。
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2020年01月19日 (日) 20:00:00

今年の花粉飛散予想やいかに?

つい先日までお正月気分だったんですが、早くも1月の終わりに近づき、2月に入れば花粉の季節となります。やや旧聞に属する話題ながら、東京都福祉保健局から先週1月16日に「令和元年度東京都花粉症対策検討委員会(第2回)検討結果」として、花粉の飛散開始日は2月14日から18日ごろ、また、今春の飛散花粉数は、例年の6割、昨春の6割程度、との報道発表資料が明らかにされています。参考資料の「飛散花粉の総数の予測」のpdfファイルから都内12地点平均の飛散花粉数の経年変化のグラフを引用すると以下の通りです。

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おそらく、3月中には私は関西に引っ越す予定なんですが、昨シーズンや平年の6割程度の飛散であれば、かなりラクそうな気もします。
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