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2018年12月09日 (日) 14:29:00

先週の読書は経済・金融の専門書や話題の海外ミステリをはじめ計7冊!

昨日に米国雇用統計が割り込んで、読書日が1日多くなったこともあり、先週の読書は計7冊です。経済や金融の専門書に歴史分野などの教養書、さらに、話題の海外ミステリなどなど、盛りだくさんに以下の通りとなっています。今週もすでに図書館回りを終え、経済書や金融専門書など数冊を借りてきています。

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まず、馬奈木俊介[編著]『人工知能の経済学』(ミネルヴァ書房) です。経済産業総研(RIETI)に集まった研究者による研究成果であり、タイトルといい、馬奈木先生の編著であることからも、かなり期待したんですが、さすがに、せまいAIだけの研究はまだ成り立たないようで、かなり広くICT技術の進歩に関する経済学の論文集と考えるべきです。特に、最後の第Ⅳ部のAI技術開発の課題に含まれているICT技術と生産性については、まだ、生産工程にAIがそれほど実装されているわけではなく、チェスや囲碁といったボードゲームやクイズ番組でチャンピオンを破ったからといっても、特定の産業の生産性が向上するわけではありません。もちろん、AIならざるICTばかりが取り上げられているわけではなく、ドローンや自動運転技術の開発なども含む内容となっています。英国オックスフォード大学のフレイ&オズボーンによる有名な研究も着目されており、AI導入に伴う雇用の喪失についての結果は、極端であると結論しています。また、第Ⅱ部のAIに関する法的課題といったタイトルながら、選択理論においてはゲーム理論のナシュ均衡をはじめとして経済学の思考パターンが応用されており、タイトル通りの狭義AIだけでなく、AIをはじめとする幅広いICT技術の経済学と考えた方がよさそうです。

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次に、ジョナサン・マクミラン『銀行の終わりと金融の未来』(かんき出版) です。著者にクレジットされているジョナサン・マクミランとは架空の存在であり、実は2人の人物、すなわち、マクロ経済学者と投資銀行家という意外な組み合わせと種明かしされていますが、誰かは明記されていません。英語の原題は The End of Banking であり、2014年の出版です。ということで、本書の定義する「バンキング」とは、信用からマネーを作り出すこと、と定義し、産業経済時代には小口の短期的な流動性高い預金から大口の貸付を行って資本蓄積を進める必要あったものの、デジタル経済時代には、本書でいうソーシャルレンディング、我が国では一般にクラウド・ファンディングと呼ばれる手法により、金融機関に小口の預金を集中させることなく資金調達が可能となっており、本書で定義するバンキングなしの金融活動は可能であるし、望ましい、と結論しています。そして、そのひとつの方法としてナローバンキング、すなわち、投資行為なしに決済だけを業務とする銀行・金融機関などを提唱しています。私はなかなか理解がはかどらなかったんですが、現時点の金融システムは、ある程度は、政府や中央銀行がデザインしたものも含まれるとはいえ、それなりに資本制下で歴史的な発展を遂げてきたものであり、政府や中銀の強力な規制により著者の目論むようなバンキングのない金融システムを構築する合理性が、単に、金融危機の回避だけで説明でき、国民の納得を得られるのか、という疑問は残りました。さらに、その上で、金融機関による決済業務の重要性について、キチンとした分析ないし説明がなされるべきではないか、と思いますし、自己資本比率の引き上げによりマネーの創造の上限を抑制できるわけですから、自己資本比率の引き上げとの違いについてももう少し詳しい議論の展開が求められるような気がします。とても良い目の付け所なんですが、少し、そういった点で、手抜きではないにしても、説明不足あるいは不十分な考察結果のような気がします。

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次に、スティーブン・レビツキー & ダニエル・ジブラット『民主主義の死に方』(新潮社) です。著者は2人とも米国ハーバード大学の研究者であり、英語の原題は How Democracies Die となっていて、2018年の出版です。タイトルからも明らかな通り、最近におけるポピュリズムの台頭を民主主義の危機と受け止め、特に米国トランプ政権が多様性を認め寛容な米国民主主義に対する大きな挑戦をしている点を、いかに米国の伝統的な民主主義を守るか、という観点から考察を進めています。そして、ひとつのゲートキーパーとして、以前は政党やその指導者が過激勢力を分離・無効化、ディスタンシングし、インサイダーが査読していたのが、シチズンズ・ユナイテッド判決以降に少額寄付も含めて外部からの政治資金が膨大に利用可能となり、その昔の大手新聞やメジャーなテレビなどの伝統的なメディア以外のCATVやSNSなどの代替的なメディアで知名度を上げる道が開かれた点をあげています。トランプ政権の戦略について考察を進め、司法権などの審判を抱き込み、主要なプレーヤーを欠場に追い込み、対立勢力に不利になるようなルール変更を行う、の3点の戦略で典型的な独裁政権と同じと結論しています。さすがに、あまりに刺激的と著者が考えたのか、授権法によるナチスの独裁体制の確立やイタリアにおけるファシスト政権などを引き合いに出すことはためらっているように見えますが、戦後のマッカーシーズムはいくつかの点で参照されており、米国的な寛容な民主主義を取り戻すための一考にすべきような気がします。

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次に、氏家幹人『大名家の秘密』(草思社) です。著者は我が国近世史を専門とする歴史学者だそうですが、国立公文書館勤務とも聞いたことがあります。私は詳細を知りません。本書は上の表紙画像に見られる通り、江戸期の大名家、特に、水戸藩と高松藩の藩主について記した小神野与兵衛『盛衰記』を中心に、その後年に『盛衰記』について徹底的に検討を加えて削除と加筆をほどこした、というか、主君に対するやや冒涜的な内容を徹底的に批判した中村十竹『消暑漫筆』、加えて、『高松藩 盛衰記』などの類書を読み解いた結果を取りまとめています。私は、フィクションの時代小説ながら、かつて冲方丁の『光圀伝』を読んだことがありますので、光圀とその兄の間で子供を交換した、などの水戸藩と高松藩の歴史については、それなりに把握しているつもりでしたが、なかなか、高松藩の名君藩主の動向など、興味深いものがありました。基本的に、戦国期を終えて3代徳川家光くらいからの文治政治下では、武士は戦闘要員たる役割を終えて役人化している中で、さすがに、大名=藩主だけは役人が成り上がるのではなく、代々家柄で決まるものであり、圧倒的に家臣団から超越した存在ですから、現在の公務員の事務次官とは大きく異なるわけで、もっと大胆、というか、当時の時代背景もあって独善的に決断を下していたものだと私は想像していたんですが、名君とはこういう思考パターン、行動様式を持つのかと感心してしまいました。そして、部下たる侍も武士道や忠義一筋、といったステレオ・パターンと異なり、かなり実務的、実益本位の面があったというのも、薄々知識としては持っていたものの、歴史書に触れて感慨を新たにした気がします。第3章の子流しと子殺しについては、必ずしも大名家をフォーカスしたものではなく、ややおどろおどろしい世界ですので、読み飛ばすのも一案か、という気がします。

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次に、鹿島茂・井上章一『京都、パリ』(プレジデント社) です。著者は明治大学の仏文学者と京都の建築史の専門家で『京都ぎらい』がベストセラーになった井上先生です。共著というよりは、対談を収録しています。タイトル通りに、パリと京都だけでなく、フランスと日本を対照させた文化論なども展開しています。私が印象的だったのは第5章の食文化で、食べ物、というか、食文化については京都ではなく大阪、パリではなくローマ、というのがおふたりの共通認識で、なかなか参考になりました。また、鹿島先生が最近のフランス語の変化について判りやすく、ガス入りの水がかつての eau gazeuse から eau pétillante が主流になった、とのことで、私が大昔に読んだスタンダールの『赤と黒』にムッシュ95という人が登場し、どうしてこんなあだ名かというと、95をquatre-vingt-quinze(4x20+15)というその時点、というか、今現在そうである表現ではなく、nonante-cinq(90+5)という昔ふうの表現をするそうで、フランス語とは数の数え方という基礎的な表現ですらかなり短期間に変化する言語である、という印象を受けた記憶があり、それを思い起こしてしまいました。もっとも、ベルギーではまだ90をnonante-cinqで表現する、ということはEU勤務の経験ある友人から聞いたことがあります。といったことを早くも始まった忘年会でおしゃべりしていると、日本でも100年ほど前に「ひい、ふう、みい」から「いち、に、さん」に変更されたんではないのか、と反論されてしまいました。それはともかく、第2章から第3章にかけては、フェミニストにはそれほど愉快ではない論点かもしれませんし、かなり「下ネタ」的な内容もあったりするという意味で、品位に欠けると見なす読者もいるかも知れませんが、私が読んだ範囲でも、井上先生の『京都ぎらい』はかなり斜に構えた本でしたので、そういった観点で文化論とかいうのではなく半分冗談のつもりで軽く読み飛ばすべき本なのかもしれません。

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最後に、A.J.フィン『ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ』上下(早川書房) です。著者はエディタから本作品で作家デビューを果たしています。英語の原題は日本語訳そのままに、2018年の出版です。ということで、主人公のアナ・フォックスはアラフォーの精神分析医であるものの、夫と娘の生活と離れて暮らし、広場恐怖症のためにニューヨークはハーレムの高級住宅街の屋敷に1年近くも閉じこもって暮し、古いモノクロ映画のDVDを見て、ワインを浴びるほど飲み、そして、隣近所を覗き見して場合により一眼レフのデジカメに収める、という生活を送っています。そして、そのご近所で1人の女性が刺殺されるのを偶然にも見てしまいます。いろんな物的証拠が主人公の精神異常性を指し示していながら、実は、最後にとても意外な殺人犯が明らかになる、というストーリーです。決して、本格推理小説のような謎解きではありませんが、ミステリの範疇には入りそうな気がします。私は精神状態の不安定な主人公の動きの中で、デニス・ルヘインの『シャッター・アイランド』と同じプロットではなかろうか、と考えながら読み進んだんですが、最後の解説ではギリアン・フリンによる『ゴーン・ガール』との比較をしていたりしました。『ゴーン・ガール』では妻が夫を殺人犯に仕立てようとする中で、最後のどんでん返しは、何と、この夫婦が仲睦まじく夫婦生活を再開する、というところにオチがあったんですが、本書はそういったオチはありません。ただひたすら意外などんでん返しが待っていて、サイコパスの犯人が明らかになるだけです。その分、やや『ゴーン・ガール』から見劣りすると受け止める読者もいそうな気がします。実は、私もそうです。出版社の謳い文句ながら、ニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストに初登場で1位に入る快挙を成し遂げ、その後も29週にわたりランクインした、とか、英米で100万部以上の売り上げを記録した、とか、早くも映画化されて来年2009年の封切り、とか、宣伝文句に大いに引かれて借りて読んでみたんですが、少し、私の期待するミステリ小説とは違っているかもしれません。なお、どうでもいいことながら、上巻巻末に主人公などが見ているモノクロの古いフィルム・ノワールのリストが収録されていますが、加えて、本書で言及されている処方薬の効能書きなんぞも必要ではないか、と私は感じてしまいました。
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2018年12月08日 (土) 09:12:00

11月米国雇用統計は完全雇用に近い水準を示しFEDの利上げをサポートするか?

日本時間の昨夜、米国労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+155千人増と、市場の事前コンセンサスだった+190千人程度の増加という予想をやや下回って伸びが原則したものの、失業率は前月と同じ3.7%を示し、約半世紀ぶりの低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を10パラ引用すると以下の通りです。

Economy added disappointing 155,000 jobs in November
U.S. employers added a disappointing 155,000 jobs in November as hiring slowed amid worker shortages, the country's trade fight with China and wild stock market swings.
The unemployment rate was unchanged at a near half-century low of 3.7 percent, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 199,000 jobs were added last month. Also, employment additions for September and October were revised down by a modest 12,000.
Many analysts expected hiring to slow in November after robust job gains of well over 200,000 the prior month. That total was likely inflated by a rebound in the Carolinas after Hurricane Florence idled workers and curtailed payrolls in September.
Other crosscurrents were also at work last month. Winter storms in the Northeast and Midwest likely reduced employment by about 20,000, Goldman Sachs estimated. Meanwhile, Capital Economics expected a modest bounce-back in job growth in the Florida panhandle after Hurricane Michael tempered October advances but the research firm reckoned the bump would be offset by the effects of the California wildfires.
More broadly, monthly job increases have been surprisingly strong this year, averaging more than 200,000, despite a historically low unemployment rate that's leading to widespread worker shortages.
Some economists expect the brisk pace to slow. The 10 percent tariff the Trump administration slapped on $250 billion in Chinese imports has dinged business confidence and the recent truce between the two nations came after Labor's November jobs survey.
Business optimism also may have been dampened by the stock market's mid-November sell-off and the sputtering global economy. Initial jobless claims, which largely reflect layoffs, have drifted higher in recent months.
Average hourly earnings rose 6 cents to $27.35, leaving the annual gain unchanged at a nine-year high of 3.1 percent.
Employers are likely to continue to bump up wages as they increasingly struggle to find qualified workers. That could lead the Federal Reserve to raise interest rates faster to head off a run-up in inflation. The Fed is expected to raise its key short-term interest rate later this month for the fourth time this year.


とても長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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まず、非農業部門雇用者の伸びですが、10月実績の237千人から減速し、市場予想の190千人程度も下回って、155千人にとどまりましたが、それでも労働市場がほぼ完全雇用にあるわけですから、労働の供給サイドでは人手不足で、雇用者の伸びが鈍化するのは当然、との受け止めもありますので、USA Today のように失望感を示すエコノミストは少ないように私は受け止めています。また、失業率も3か月連続で3.7%を記録し、1969年以来ほぼ半世紀ぶりの低い水準にあります。米国連邦準備制度理事会(FED)の連邦公開市場委員会(FOMC)のカレンダーでは今月12月の17~18にFOMCが開催される予定となっているところ、今年2018年内4回目の利上げが決定されるとの見方が有力となっており、先物市場では75%近い折り込みとなっています。ですから、注目はむしろ来年2019年以降の利上げペースとなっており、従来は、FEDでは2020年まで金融引き締めを続けて、政策金利であるFFレートを3.5%くらいまで引き上げるシナリオを描いてきたわけなんですが、金利上昇によるドル高が貿易摩擦の激化の中で、想定以上に輸出の伸びを鈍化させる可能性もあり、トランプ政権の圧力も勘案して、FEDがどのような判断を示すかに注目が集まっています。ただ、クリスマス商戦を見る限り、米国景気はまだまだ拡大を続ける方向にあることも確かですので、金融政策の舵取りが難しくなってきていることも事実です。

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最後に、その物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、9月は前年同月比で+2.8%の上昇と、このところ2か月連続で+3%超の上昇率が続いています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いていて、10年振りに近い+3%超の賃金上昇ですから、12月FOMCでの追加利上げは賃金上昇からも十分に正当化されると私は考えています。他方で、繰り返しになりますが、トランプ政権からの風圧もかなり強く、FEDによる金融政策の舵取りも難しそうです。
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2018年12月07日 (金) 23:12:00

自然災害による供給制約を脱して上昇した景気動向指数と名目賃金上昇続く毎月勤労統計!

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも10月の統計です。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月差+0.9ポイント上昇の100.5を、CI一致指数も+2.9ポイント上昇の104.5を、それぞれ記録しています。ともに2か月振りの上昇ですまた、毎月勤労統計のうち、名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+1.5%増の27万1333円に上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の景気動向指数 2カ月ぶり上昇 基調判断は据え置き
内閣府が7日発表した10月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が104.5と2カ月ぶりに上昇した。前月からの上昇幅は2.9ポイントで、1989年3月以来の大きさだった。9月に相次いだ自然災害の制約が解消され、消費や生産、輸出など幅広い分野で数値が上向いた。
景気の基調判断は「足踏みを示している」と前月から据え置いた。「改善」に上方修正されるには、指数の月々の変動をならした「3カ月後方移動平均」が3カ月以上連続して上昇する必要がある。9月には「改善」から「足踏み」に24カ月ぶりに判断が変更された。
一致指数の算出に使う9つの統計のうち、速報段階で公表されている7つのなかで6つがプラスに寄与した。寄与度が大きかったのは生産関連で、自動車やスマートフォン部品などの生産が増えた。数カ月後の景気を示す先行指数は2カ月ぶりに上昇に転じた。
10月の名目賃金、前年比1.5%増 増加は15カ月連続、毎月勤労統計
厚生労働省が7日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、10月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比1.5%増の27万1333円だった。増加は15カ月連続。基本給の増加が続いた。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.3%増の24万4509円だった。残業代など所定外給与は1.9%増。ボーナスなど特別に支払われた給与は6.8%増だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は0.1%減だった。名目賃金は増加したが、消費者物価指数が上昇し、実質賃金を押し下げた。
パートタイム労働者の時間あたり給与は2.0%増の1136円。パートタイム労働者比率は0.05ポイント上昇の30.98%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べると長くなってしまいました。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は、毎月勤労統計のグラフとも共通して、景気後退期を示しています。

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まず、中身に入る前に、今日の公表から景気動向指数は、内閣府のお知らせ通り、2015年=100に基準年を改定されています。従って、上のグラフも従来のものに比べて、少し印象が異なるかもしれません。ということで、9月の自然災害に起因する供給制約や物流の停滞から復旧が見られ10月のCI一致指数は大きくジャンプしました。引用した記事にもある通り、前月差上昇幅+2.9ポイントは1989年3月以来の大きさを記録しています。プラスの寄与度で見て大きい順に、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、投資財出荷額(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、耐久消費財出荷指数となっています。これまた、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府の基調判断は2か月連続で「足踏み」となっているんですが、上方改定されると仮定すれば1ノッチ上の景気判断は「拡大」ですから、3か月連続で3か月後方移動平均がプラスに転じなければならず、10月統計はまだ1と月目なもので最短で12月統計を待って「拡大」に戻るかどうかが基調判断変更の基準となると私は受け止めています。いままでも、何回か、このブログでお示ししたように、現在の景気拡大局面が来年2019年1月まで継続すれば、米国のサブプライム・バブルに対応する戦後最長の景気拡大期間72か月を超える計算です。もちろん、単純に景気が拡張しているか後退しているかどうかの2項判断ですから、景気拡大の実感乏しいのは広く認識されている通りであり、私自身は主として賃金上昇が鈍いことが大きな要因のひとつを考えています。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。ということで、景気に敏感な製造業の所定外時間指数は自然災害による供給制約からの復旧ととともに鉱工業生産指数(IIP)に連動して10月は上昇しており、賃金もそれなりに上向きと私は見ています。2番目のパネルの季節調整していない原系列の賃金指数の前年同月比のプラス幅も、3番目の季節調整済みの系列の賃金指数も、ともに上向きです。季節調整していない名目賃金指数の前年同月比上昇率が+1.5%ですから、消費者物価(CPI)上昇率とほぼ均衡しています。さすがに、世上いわれているように人手不足がここまで進んでいますので、正規雇用の増加とともに、それなりに賃金上昇の圧力は大きいと私は受け止めています。
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2018年12月06日 (木) 19:52:00

来週月曜日に公表予定の7-9月期2次QE予想は下方修正か?

月曜日に公表された法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日の12月10日に今年2018年7~9月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期以降の景気動向を重視して拾おうとしています。もっとも、2次QEですので法人企業統計のオマケの扱いも少なくなく、明示的に先行き経済を取り上げているシンクタンクは決して多くありませんでした。その中で、みずほ総研と第一生命経済研と伊藤忠経済研は長めに、ほかのシンクタンクもそれなりに、それぞれ引用してあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.3%
(▲1.2%)
n.a.
日本総研▲0.5%
(▲2.1%)
7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率▲2.1%(前期比▲0.5%)と1次QE(前期比年率▲1.2%、前期比▲0.3%)から下方修正される見込み。
大和総研▲0.4%
(▲1.8%)
2018年7-9月期GDP二次速報(12月10日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲1.8%と、2四半期ぶりのマイナス成長となった一次速報(同▲1.2%)から下方修正されると予想する。
みずほ総研▲0.5%
(▲1.9%)
今後の日本経済については、良好な雇用環境を背景に消費が底堅く推移するほか、省人化投資ニーズの顕在化により、設備投資も堅調な推移を見込んでいる。ただし、中国経済の減速やIT需要のピークアウトを受けて、輸出の伸びは減速し、景気回復のテンポは鈍化する見通しだ。
また、当面のリスクとして、貿易摩擦の激化に注意が必要だ。現時点では、日本経済への影響は限定的なものにとどまっているが、米中間の貿易摩擦が更に高まった場合、日本に間接的ながら景気下押し圧力として働く可能性がある。また、米国が自動車への追加関税を強行した場合、自動車の輸出低下に留まらず、関連産業への波及、雇用を通じた消費への影響がでる恐れも十分にある。そのほか、不確実性の高まりが企業の投資マインドの下押し材料になる懸念もあり、その点でも留意が必要だろう。
ニッセイ基礎研▲0.4%
(▲1.5%)
12/10公表予定の18年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.4%(前期比年率▲1.5%)となり、1次速報の前期比▲0.3%(前期比年率▲1.2%)から下方修正されると予測する。
設備投資は前期比▲0.2%から同▲1.5%へと下方修正されるだろう。
第一生命経済研▲0.5%
(▲2.1%)
設備投資が足元で変調をきたしているという評価は妥当ではないだろう。人手不足に対応した合理化・省力化投資の拡大、インバウンド対応等による建設投資需要の増加、根強い研究開発投資需要など設備投資を取り巻く環境は良好である。日銀短観等の各種アンケート調査でも18年度の設備投資計画は非常に強く、企業の設備投資意欲の強さが示されている。7-9月期の減少は一時的で、10-12月期は再び増加する可能性が高い。設備投資は先行きも景気の下支え役として貢献するだろう。
伊藤忠経済研▲0.4%
(▲1.7%)
7~9月期のGDPが本予測の通り修正されたとしても、自然災害による一時的なマイナス成長という評価は変わらず、10~12月期には個人消費や輸出の持ち直しによりプラス成長に転じよう。実際に10月の小売販売や輸出数量指数、訪日外国人数など、個人消費や輸出の関連指標は復調している1。前期比マイナスに転じた設備投資は循環的なピークが近づいている可能性が高いものの、今年度補正予算での追加を受けて公共投資は増加に転じるとみられるほか、前回より小規模ながらも年明け後は消費増税を控えた駆け込み需要が出始めよう。そのため、今後の景気は、消費増税までは緩やかな拡大が続くと見込まれる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.5%
(▲2.1%)
12月10日に内閣府から公表される2018年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比▲0.5%(年率換算▲2.1%)と1次速報値の同▲0.3%(同▲1.2%)から下方修正される見込みである。
三菱総研▲0.4%
(▲1.6%)
2018年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.4%(年率▲1.6%)と、1次速報値(同▲0.3%(年率▲1.2%))から下方修正を予測する。


上のテーブルを見れば明らかな通り、各シンクタンク軒並み1次QEの前期比年率▲1.2%から下方修正の予想で足並みがそろっています。その要因は、今週月曜日に公表された法人企業統計、特に設備投資ではなかろうかと私は想像しています。おおむね、上のテーブルの線はいいところで、私は▲2%に達するまで下方修正されることはないだろうと直観的にみていますが、web上にオープンな情報ではなくニューズレターでちょうだいしている某証券会社のエコノミストの中には、▲3%を超える大幅な下方修正を示唆している予想もありました。ひょっとしたら、証券会社の予想は何の営業かによってポジション・トークをしている場合があったりするんでしょうか。私にはよく判りませんが、債券営業のサポートをしているエコノミストは経済見通しを悪い方向で出して金利は上がらず債券価格は上昇との方向を示唆するのに対し、株式営業サポートのエコノミストは景気上向きの予想を出して株価上昇の方向を示唆する、というジョークを聞いた記憶もあります。あまり上品なジョークではないんですが、当たっているのかいないのか、何ともビミョーなところです。
ということで、最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。

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2018年12月05日 (水) 21:12:00

来年2019年後半に景気後退の可能性はあるか?

昨日、12月4日付けで第一生命経済研から「2019年の経済展望」と題するリポートが明らかにされています。

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そのリポートの中の pp.5-6 で、2019年秋以降の景気後退局面入りの可能性を示唆しています。10月1日からの消費税率引き上げは、引き上げ幅が+2%ポイントで、家計負担も年2.2兆円にとどまる上に、私が報道で接する限りでも、(1)キャッシュレス決済によるポイント還元、(2)プレミアム付商品券、(3)住宅購入支援、(4)自動車購入支援、などの増税対策も実施されることから、全体としての家計負担はさらに小さくなる一方で、東京オリンピックの建設需要のピークは大会開催の1年前の2019年夏ころになる可能性があり、加えて、米中貿易摩擦やその結果としての中国をはじめとする新興国経済の減速などにより、我が国経済も下振れリスクとして影響を受ける可能性を示唆しています。なお、上のグラフはリポートから消費増税前後の家計の負担額と東京五輪前後の経済成長率を引用しています。
何度もこのブログでも主張している通り、景気拡大局面は後半戦に入っている可能性が高く、もっとも早ければこのリポートが示唆するくらいのタイミングで景気転換点を迎える可能性は無視できないと私も考えています。そして、早期の景気後退局面入りを回避するためには、適切な政策対応もさることながら、我が国企業の賃上げがもっとも効果的な気がします。ひいては、賃上げはデフレ脱却や国民にとっても実感ある景気拡大に多いに資するんではないか、と私は期待しています。
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2018年12月04日 (火) 23:54:00

ユーキャン新語・流行語大賞2018はカーリング女子の「そだねー」が大賞受賞!

昨日、ユーキャン新語・流行語大賞2018 が発表され、カーリング女子の「そだねー」が大賞を受賞しました。下の画像は、ユーキャン新語・流行語大賞2018のサイトをキャプチャしているんですが、大賞受賞のカーリング女子ロコ・ソラーレを代表してマリリン本橋麻里さんが登壇しているようです。私自身は、どちらかといえば、同じカーリング女子でノミネート30語に入っている「もぐもぐタイム」にも親しみを覚えるんですが、人口に膾炙したのは「そだねー」かもしれません。一昨日に取り上げたヒット商品番付でも指摘した通り、「チコちゃんに叱られる!」の決め台詞の「ボーッと生きてんじゃねーよ!」がいいセン行ったみたいです。今夜は遅くなったので適当に切り上げておきます。

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2018年12月03日 (月) 23:41:00

内部留保は積み上がるものの労働分配率が高まらない法人企業統計!!

本日、財務省から7~9月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は8四半期連続の増収で前年同期比+6.0%増の358兆8846億円、経常利益も9四半期連続の増益で+2.2%増の18兆2847億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで製造業が+5.1%増、非製造業が+4.2%増となり、製造業と非製造業がともに伸びを示し、全産業では+4.5%増の11兆2784億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資は前期比▲4.0%減となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月期の設備投資、8四半期連続増 生産能力増強などで 法人企業統計
財務省が3日発表した2018年7~9月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比4.5%増の11兆2784億円だった。増加は8四半期連続。製造業で自動車向け素材の生産能力増強や建設機械向け投資が堅調だった。全産業ベースの経常利益は前年同期比2.2%増の18兆2847億円で、9四半期連続の増益だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で4.0%減と5四半期ぶりに減少した。
設備投資の前年同期比の動向を産業別にみると、製造業は5.1%増加した。化学産業で自動車向け素材の生産能力を増強したほか、建設機械向け投資も寄与した。非製造業は4.2%増加した。オフィスビルの再開発や通信設備投資などの分野が増加した。
「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額の内訳は、製造業が季節調整済み前期比5.3%減、非製造業が3.3%減だった。
全産業ベースの経常利益は、製造業が1.6%減と2期ぶりにマイナスとなった。情報通信機械業で研究開発費が増加したほか、金属製品業で原材料や燃料などのコスト増が響いた。非製造業は4.6%増だった。情報通信業で端末の販売価格が上昇した。
売上高は6.0%増の358兆8846億円と8四半期連続で増収となった。製造業は4.3%増だった。車載向け半導体部品や半導体製造装置、建設機械の販売が増加した。非製造業は6.6%増だった。販売価格が上昇した卸売業や小売業、大型工事が増えた建設業などが増加した。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計した。今回の18年7~9月期の結果は、内閣府が10日発表する同期間のGDP改定値に反映される。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルで季節調整済みの系列の売上げと経常利益を見て、やや私も戸惑ったんですが、この7~9月期は広く認識されているように、豪雨、台風、地震など相次ぐ自然災害が経済活動を阻害して、先月公表された7~9月期1次QEでもGDPはマイナス成長を記録し、そのほか鉱工業生産指数などの経済統計も同様の傾向にあったんですが、法人企業統計では経常利益こそ前期から低下したものの、売上げは伸びており、売上げと経常利益で乖離が生じています。同様に、下のパネルに見られる通り、設備投資は経常利益と同じ方向、つまり、前期から減少を記録しています。基本的に、統計に表れていないながら、売上げについては原油高などの価格転嫁が進み、実質ベースでは売り上げも低下している可能性があるのではないか、と想像しています。繰り返しになりますが、価格の統計からはこの事実は読み取れませんので、単なる私の想像です。いずれにせよ、季節調整済みの統計を見ている限りでは、売上げが伸びたのは謎として除外すると、経常利益と設備投資は前期からマイナスを示しているんですが、基本的に、7~9月期は自然災害による停滞が見られただけであり、緩やかな回復基調が継続していることは企業活動についても同じであると、私は受け止めています。ただ、このブログで何度も繰り返しましたが、景気循環の拡大局面が後半に入っていることも事実ですので、それなりに注意する必要はいうまでもありません。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下し上向く気配すらなくまだ下落の気配を見せていますし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞し底ばっており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけは、グングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善の重要なポイントである賃上げ、あるいは、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。ですから、経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

最後に、本日の法人企業統計を基に、いわゆる2次QEが来週月曜日の12月10日に内閣府から公表される予定となっています。1次QEでは季節調整済みの系列の前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%の成長率が、私の直感的な印象ながら、設備投資を中心に2次QEで下方修正される、と予想しています。これまた、直観的に何の根拠もなく、下方改定幅はかなり大きく、▲2%近くか、ひょっとしたら、▲3%を下回るかもしれないという気がします。
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2018年12月02日 (日) 21:14:00

SMBCコンサルティングによる2018年ヒット商品番付やいかに?

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一昨日の11月30日、SMBCコンサルティングから年末恒例の2018年ヒット商品番付が明らかにされています。上のテーブルはSMBCコンサルティングのサイトから引用しています。世間の流行に疎い私ですので、すべてをよく知っているわけではありませんが、私自身の率直な感想としては、今年の番付は全体としてかなり小粒な印象です。新語・流行語大賞と照らし合わせると、『君たちはどう生きるか』が番付に入っていません。これは私にはよく理解できないところです。また、高刺激食品は強炭酸とか、辛い食べ物のたぐいなんでしょが、私はは苦手です。今年のヒットで私の目についたのは、「ボーッと生きてんじゃねーよ!」の決め台詞の「チコちゃんに叱られる!」がいいセン行くんではないかと期待しています。私は土曜日朝の再放送で見ることが多いです。
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2018年12月01日 (土) 11:28:00

今週の読書は何と経済書と経営書ばかり計8冊!!

先週末にアップした先週と先々週の読書感想文は、めずらしくも、ほとんど経済書らしい経済書がなかったんですが、今週の読書はその反動で10冊近く経済書・経営書ばかりでした。日銀関連の話題の本を含めて、以下の通り計8冊です。

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まず、白川方明『中央銀行』(東洋経済) です。著者はご存じの通り白い日銀のころの総裁であり、私の実体験から知る限り、今世紀初頭の速水元総裁に次いで、日銀総裁として2番めに無能だった人物です。もちろん、上から目線バッチリで、ほとんどのトピックについて自分が正しかった旨を主張しています。しかし、私が見ていた限りでは、リーマン証券が破綻した後の Great Recession の際、金融政策が後手に回り、市場はもちろん政府・国会などからの要求が激しくなると金融緩和策を繰り出し、「追い込まれ緩和」といわれたのは記憶に残っています。デフレを人口動態に起因する事態と「発見」しながら、藻谷浩介『デフレの正体』の著作を引用するでもなく、2012年の民主党から自民党への政権交代の直前から円安が急速に進んだのは、アベノミクスの金融緩和策への期待ではなく、ギリシアなどにおける欧州債務危機の後退から、円の安全資産としての安全性が低下したからである、といった主張には唖然としてしまいました。民主党政権下で当時の菅総理の辞任を受けての代表選で、野田候補以外はリフレ的な主張をしていて、暗澹樽気持ちになったというのは正直でいいとしても、市場や政府や国会から日銀無能説の大攻勢を受けていた中で、共産党の参議院議員だけが日銀の理解者だった、なんてことは、思っても著書に書くべきかどうか迷わなかったんでしょうか。唯一、中央銀行の独立性とは目標の独立ではなく、手段の独立、すなわち、オペレーショナルな独立性である、と記している点はやや意外でした。ただ、最後の方の p.672 で著者ご自身も認めているようで、日銀白川総裁の5年間の任期中に何と2度の政権交代があり、総理大臣が6名交代した、と記していますが、そのもっとも大きな原因を作った人物を1人だけ上げようとしたら、それは当時の日銀白川総裁その人であった、という事実にはご本人はまったく気づいていないようです。さらに、付け加えるとすれば、2012年12月の第2時安倍内閣成立から国政選挙で与党が連戦連勝なのは、これもその最大の功労者は現在の日銀黒田総裁である、という点は忘れるべきではありません。米国クリントン大統領の選挙キャンペーンのスローガンであった "It's the economy, stupid!" はかなりの程度に普遍的に成り立つわけです。

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次に、大村敬一ほか『黒田日銀』(日本経済新聞出版社) です。上の表紙画像に見えるように、7人のマクロ経済学や金融の専門家が、6年余りに及ぶ黒田日銀を評価しています。7人の中には翁教授のように日銀出身で旧日銀理論に立脚する著者も含まれていますが、1人を除いて、6人は黒田日銀に好意的な評価を下しているように私は読みました。典型的なのは第1章と第2章であり、典型的に評価するポイントは為替の円安誘導であり、逆に、量的緩和が物価目標を2年程度では達成できずに、金融緩和が長期化している点には懸念あるものの、実は、その昔の西村清彦『日本経済見えざる構造転換』でいつの間にか構造改革が進んでいたと主張されていたように、量的緩和は出口に向かい、ステルスでテイパリングが進められている可能性も指摘されています。その点を評価しているのは翁教授などの旧日銀理論の信奉者だという気もします。そして、いまだに物価目標2%が達成されていない原因は根強いデフレマインドである、ということになります。そして、本書で何人かの論者が指摘している黒田日銀への批判のうち、私も同意するのは、黒田日銀の市場との対話がコンセンサス形成ではなく、サプライズによる政策効果を狙っている可能性であり、その方向性が間違っている可能性が強い、という点です。もう1点、ETFを通じた日銀の株式買い入れやJ-REIT購入による株価や不動産価格に対する歪みを懸念する意見もありますが、私はこの方は大きな心配はしていません。パッシブに購入している限りは株価形成などに歪みをもたらすことはありませんし、サイレントな株主になって、ガバナンスに悪影響を及ぼす可能性は否定しませんが、リスク資産購入による政策効果のベネフィットの方が大きいものと考えるべきです。6年経過しても物価目標を達成できないながら、少なくともデフレ状態からは脱却していますし、それなりの景気拡大効果のある金融政策運営ですから、本書のような黒田日銀の評価は極めて正当なものと私は考えています。

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次に、奥村綱雄『部分識別入門』(日本評論社) です。著者は横浜国立大学の研究者であり、専門は数理経済学です。本書で詳しく解説されていますが、部分識別とは、私の知る限りでは、モデルの組み方ではなく、あくまで、モデルのパラメータの推計に関する新しい方法論であり、従来のパラメータ推計が標本を基に何らかの分布を前提とするのに対して、部分識別とは標本ではなく全母集団情報を対象にして何らの分布を前提とせずにパラメータ推計を行います。というと、ノンパラメトリック推計なのか、という疑問が出るんですが、従来のパラメータ推計が確率変数に対して何らかの信頼区間は置くとしても、ほぼほぼ決定論的な数値を得るのに対して、部分識別ではパラメータの値そのものでなか卯、その存在するバウンドを求めるという作業になります。別の角度から、従来のパラメータ推計では前提となる仮定を緩めることにより一般化を図るのに対して、部分識別では弱い前提から強い前提を加えることでバウンドの範囲を狭めようとします。ただ、本書の著者が少し説明不足であるのは、操作変数法を用いたりする場合は別として、一般にパラメータを推計するなり、パラメータのバウンドを推計するなりは、因果関係ではなく相関関係の有無や強さの測定になります。この点はやや説明不足を感じました。基本的に、本書では教育の効果の例を出しての解説を進めているんですが、私が強い興味を感じたのは第5章の政策効果の測定です。単純に、フードスタンプを用いる家庭の子供の栄養状態は、フードスタンプに頼る必要のない家庭の子供より悪くなるのは当然ですが、単純なOLSに頼ると、フードスタンプを用いるとかえって子供の栄養状態が悪化するように見えかねません。この問題が部分識別では見事にクリアされています。また、家庭内暴力(DV)被疑者逮捕の効果の比較に関して、ランダム化比較実験(RTC)、操作変数法、部分識別の3つの手法による政策効果の把握が試みられており、単純なオツムの私なんぞから見れば、かなり説得的です。ただし、最後に、完全な学術書ですから、グラフによる直観的な説明は優れている印象はあるものの、数式はバンバン登場しますし、とても難易度は高いと考えるべきです。その意味で、一般的なビジネスパーソン向きとはいえません。その意味で、著者の講演スライドが大阪大学のサイトにあるのを発見しましたので、それを見てから読むかどうかを決めるのも一案かという気がします。

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次に、木内登英『トランプ貿易戦争』(日本経済新聞出版社) です。著者は、ご存じ、最近まで日銀政策委員をしていた野村総研のエコノミストです。私は、チーフエコノミストやシニアエコノミストという肩書は知っていましたが、エグゼクティブエコノミストという肩書はこの著者で初めて知りました。ということで、本書のタイトル通りに、米中間の貿易戦争について取り上げています。基本的に、自由貿易を外れる貿易戦争、関税率引上げや輸入制限などに対しては、通常、エコノミストは批判的であり、本書も同様です。ただ、本書の米中貿易戦争に対する分析は、かなり多くのエコノミストの緩やかなコンセンサスの通り、というか、ハッキリいえば、特段の新しい発見のないありきたりな内容ともいえます。すなわち、米中間の貿易戦争に突入したのは、おおむね米国サイドの要因であり、2017年中は特段のアクションなかった米国トランプ政権が、2018年になって急に中国の貿易不均衡にセンシティブになり、関税率引上げなどの行動に出た背景は、核ミサイルをはじめとする北朝鮮問題で米朝間の直接対話に道が開かれ、中国の北朝鮮に対する影響力への期待が薄れ、それだけ強気に出ることが可能になった、という点が強調されています。そして、製造業の復権に強い期待をかけるトランプ大統領が、最先端技術分野で中国が米国を凌駕する恐れも中国への強硬姿勢の背景とされています。同時に、かなりバブリーな中国経済の現状に対しても、米国の関税引き上げに伴って経済にショックを生じて、景気が下り坂となれば、実体経済に加えて金融面からも大きなマイナスの影響を生じる可能性が指摘されています。そして、その対中強硬姿勢の理論的な支柱として、『米中もし戦わば』の著者であるナバーロ教授の存在を重視しています。本書でも指摘されている通り、かつて、日本に対しては口先介入を含めて「円高カード」を切って、かなり高圧的に経済交渉を持たざるを得なかった時期があり、私個人も1990年代半ばの日米包括経済協議の外交交渉に巻き込まれた経験があります。その日本の果たすべき役割について、自由貿易の利益を粘り強く米国に訴える、というのはやや寂しい気もしますが、そういった対応策は別にして、背景を含めた現在の米中貿易戦争、そして、それに伴って生じ得る中国経済の何らかの困難、などについて、コンパクトに理解するには役立つ読書だった気がします。

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次に、バーリ・ゴードン『古代・中世経済学史』(晃洋書房) です。著者はオーストラリアのニューカッスル大学教授であり、専門はキリスト教経済思想や古典経済学だそうです。英語の原題は Wconomic Analysis before Adam Smith であり、もっとも最初の出版は1975年だそうです。原題からも理解できる通り、アダム・スミスが経済学の創始者であるという、我々エコノミストの常識を真っ向から否定していて、古典古代から経済学の歴史を説き起こしています。よく間違われるんですが、私は大学のころは経済史のゼミにいて、経済史は経済の歴史ですので、かなり大昔にさかのぼっても何らかの経済活動がある以上は経済史は成り立ちます。一般には、マルクス主義的な経済史では古典古代の奴隷制から始まって、中世の封建制ないし農奴制、近代の資本制、さらに、革命を経て社会主義や共産主義が来る、ということになっていたわけです。他方、経済学史は経済学の歴史ですから、アダム・スミス以前は経済学が近代的な科学として成り立っていなかったので、本書のようなアダム・スミス以前の経済学史については、意味がないと考えられているわけです。しかし、私の暴行の京都大学経済学部の経済学史の口座を持っていた出口先生の言葉を訳者あとがきで引いていて、「経済生活の知的反省」と考えれば、スミス以前の経済学も考えることは出来るのかもしれません。私は、たぶん、古典古代からの経済学のテーマとしては、勤労はほぼほぼ一致した重要性が与えられるとして、貨幣と利子に関する考察、さらに、狭い範囲ながら交易の考察が含まれるべきと考えますが、本書ではそれぞれの時代の知識人の経済学的な活動を編年体で構成しています。もちろん、価値と価格の問題など、とても興味深いテーマも含まれています。全般的には、私のような不勉強な人間には、かなり判りにくい内容です。

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次に、小島寛之『宇沢弘文の数学』(青土社) です。著者は大学の学部で数学を修めた後、大学院では経済学に転向して宇沢教授に師事した経済学者です。専門は数理経済学のようです。ということで、タイトルは数学となっているんですが、私は宇沢先生の経済学の方がいいように感じました。唯一、数学的な理解が深まったのは、数学の言語性と数学能力が人類の innate と宇沢先生が表現したような先天的な形質かもしれない、という点かと思います。演繹的な数学と帰納的な統計の対比もなかなか興味深いと感じました。その一方で、数学ではなく宇沢先生の経済学は、典型的に、倫理感を重視し、本書にもある通り、その昔のシカゴ学派のベッカー教授のような合理性は、必ずしも肯定されません。合理的に薬物の乱用に走るのはあくまで非合理、という考えです。ですから、いつも称しているように、官庁エコノミストにして左派、という私の考え方にはとても親和性があります。著者は、冒頭に、経済学は数学の応用分野ながら、現実の説明力に乏しい、と記していて、まあ、多くの人が感じているところではないかという気がします。そして、宇沢先生の力点は市場が完結しているわけでも、市場化が効率化を意味するわけでもない、という点にあるんですが、その市場の解決策として宇沢先生は社会的共通資本を持ち出すわけですが、そこにおける政府の役割が私にはハッキリしません。単に、人間関係や流行りの絆とか、単なる文化的な共通認識で市場の不完全性を正すことができるとは私にはとても思えません。最近の日産・ルノーのカルロス・ゴーンの事件も、人間としての欲望丸出しで、ベッカー的な合理性ある犯罪なのかもしれませんが、こういった資本主義、というか、現代経済の歪みを正すのが社会的共通資本であるというのは、マルクス主義に対する空想的社会主義のように私には見えます。理想論は大いに共鳴するところがあるものの、もう少し地に足つけた議論も必要ではないでしょうか。

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次に、山本勲『労働経済学で考える人工知能と雇用』(三菱経済研究所) です。著者は、日銀から慶應義塾大学の研究者に転じた経済学者です。私も面識ありますが、労働経済学が専門だったりします。タイトルにあるような人工知能という狭い範囲ではなく、技術革新というもう少し広い視野から雇用を考えています。すなわち、技術と雇用が代替的であって、新技術の採用とともに雇用が減少するケースもあれば、保管的であって雇用が謳歌する場合もある、ということになります。そして、1980年台の英国サッチャー政権や米国レーガン政権の発足などとともに、格差が拡大した事実については、スキル偏向型技術革新仮説について、スキルに対するプレミアムの見方を、中間層の没落と貧困層と高所得層の増加という二極化を説明できない、などの理由から否定し、routinization 仮説=定型化仮説に基づく非定形化した業務への高報酬とする説を支持しています。そして、英国オックスフォード大学の研究者の成果も取り上げられており、AIに代替される雇用についても、Autor ほかによる AML タスクモデルの観点から疑問を提示しています。100ページ足らずのボリュームで、本というよりもパンフレットのような出版物ですが、それなりの内容を含んでいる気がします。

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最後に、服部泰宏・矢寺顕行『日本企業の採用革新』(中央経済社) です。著者2人は神戸大学大学院の同級生らしく、阪神方面で経営学の研究者をしています。タイトル通りの内容なんですが、もう少し詳しく展開すると、2016年卒業生の採用から、人手不足が顕著になり、いわゆる売り手市場が現出したことから、いくつかの企業で採用に関する革新が生まれ、その革新の謎解きをしています。ただ、「革新」は経済学では通常シュンペーター的な新機軸を指していて、英語では inovetion であるのに対して、上の表紙画像に見られる通り、本書では regeneration を使っています。経済学を大学時代に専攻していて、官庁エコノミストを自称する私には見慣れない「革新」だという気がします。本書の著者もそれには気付いているようで、第3章では、経営課題としては新規顧客の獲得や顧客との関係強化が上げられる場合が多く、採用が経営課題として認識されているのでなければ、何らかの確信をもって採用活動を変革しようとするインセンティブは小さい、と指摘してます。それはともかく、本書では採用の革新を募集活動の革新、選抜の革新、募集と選抜の革新、革新の対外発信、他企業との協力の5カテゴリーに分類しています。その上で、採用活動の従来系について、入学偏差値の高い大学の卒業生であって、頭脳明晰かつ明朗闊達な人材を採用する、そのために、早い時期から時間をかけて多くの志願学生から選抜する、という点が重視されてきたところ、このパターンから外れるユニークな採用を2016年スつ行政に対して実施した3社のケーススタディを実施しています。ただ、私が疑問に感じているのは、いつもながらの経営学のケーススタディですから、取り上げられたサクセス・ストーリーの裏側に死屍累々たる失敗例がいっぱいあるんではないか、という点です。そして、いつもの通り、その疑問には答えてくれていません。加えて、採用の革新例として、広く報じられた2社の採用革新、すなわち、ドワンゴの受験料徴収と岩波書店のコネ限定を冒頭に取り上げていますが、人手不足下の売り手市場に対応したものではないんではないか、という気もします。
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2018年11月30日 (金) 23:39:00

大きな増産を記録した鉱工業生産指数(IIP)と小幅に悪化したものの完全雇用に近い水準が続く雇用統計!!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP) が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から11月の消費者態度指数が公表されています。鉱工業生産指数と雇用統計は10月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から+2.9%の増産を示し、失業率は前月から+0.1%ポイント上昇したものの2.4%と低い水準にあり、有効求人倍率も前月から▲0.02ポイント低下の1.62倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。消費者態度指数は前月から▲0.1ポイント低下して42.9を記録し、まだ反転の兆しも見えません。まず、3つの統計を取り上げますので長くなりますが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

10月の鉱工業生産、2.9%上昇 基調判断を上方修正
経済産業省が30日発表した10月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月に比べて2.9%上昇の105.9だった。QUICKがまとめた民間予測の中心値(1.2%上昇)を上回った。経産省は10月の生産の基調判断を「緩やかな持ち直し」に上方修正した。
生産指数は15業種のうち13業種で前月を上回った。業種別に見ると、コンベヤや水管ボイラなど汎用・業務用機械工業が最も上昇に寄与した。電子部品・デバイス工業はスマートフォン向けに使われるアクティブ型液晶パネル(中・小型)の生産が好調だった。自動車工業は国内向けの普通乗用車や小型乗用車の生産が増えた。
出荷指数は前月比5.4%上昇し106.6。在庫指数は1.4%低下の101.2、在庫率指数は7.4%低下の97.4だった。
同時に発表した、メーカーの先行き予測をまとめた11月の製造工業生産予測指数は前月比0.6%の上昇となった。12月の予測指数は2.2%上昇だった。
10月求人倍率8カ月ぶり低下 1.62倍、なお高水準
厚生労働省が30日発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は前月を0.02ポイント下回り1.62倍だった。8カ月ぶりに低下したが、水準そのものはなお高い。総務省が同日発表した10月の完全失業率(季節調整値)は前月比0.1ポイント悪化し2.4%だった。よりよい条件を求め、自発的に職を探す人が増えている。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.01ポイント下がり1.13倍だった。
求人倍率が下がったのは、9月の自然災害で滞った求職活動が再開され、求職者が増えたため。新規求職の申込件数は前年同月から3.0%増え42万2089件だった。
10月の完全失業率(季節調整値)は2.4%で3カ月ぶりに悪化した。完全失業者数(同)が8万人増えて168万人になったことが影響した。特に男性で自発的に仕事を辞め、よりよい条件の職を探す動きが活発になった。15~64歳の男女合計の就業率は前月から0.1ポイント上昇し77.4%。女性の就業率は70.5%で、いずれも過去最高を更新した。
人口が減る一方、働く人の数は増えている。就業者数は6725万人と、2カ月連続で過去最多を更新した。高齢者や主婦に加え、アルバイトで働く若者が増えた。
求人があっても職種や年齢などで条件があわない「ミスマッチ失業」は3%程度とされる。失業率が3%を下回ると完全雇用状態にあるといえる。潜在的な労働力の掘り起こしがいっそう重要になってくる。
11月の消費者態度指数、前月比0.1ポイント低下の42.9
内閣府が30日発表した11月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は、前月比0.1ポイント低下の42.9だった。内閣府は消費者心理の判断を「弱い動きがみられる」に据え置いた。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。一番上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、真ん中は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。そして、一番下のパネルは、後述のように、今回の統計では基準改定がなされていますので、旧来の2010年基準指数と新しい2015年基準指数を並べてプロットしてみました。どちらも、2015年=100となるように基準化されています。

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まず、このブログでは注目していませんが、9月確報の公表時点から統計の基準が2015年基準に改定されています。すなわち、生産や出荷などの指数の基準年が2010年=100から2015年=100になったわけです。ウェイト算定年次はもちろん、業種分類や採用品目が変更されています。この基準改定に関する詳細は経済産業省のホームページに関連情報がアップされていますが、概要だけ軽く触れると、付加価値額ベースの生産指数の10,000分比のウェイトで、食料品・たばこ工業(613.9→1313.8)が倍増したのをはじめ、汎用・業務用機械工業(571.9→728.6)がウェイトを増加させている一方で、電気・情報通信機械工業(1121.1→839.3)や電子部品・デバイス工業(818.6→580.8)が低下を見せています。食料品のウェイト倍増というのは、なかなか想像できませんでした。ただ、食料品・たばこ工業は速報時には算入されませんので、確報時に大きく修正される可能性が高まった可能性はあり、その点は注意が必要です。
そして、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+1.2%の増産でしたから、軽くこれを上回りました。基本的には、9月の豪雨・台風・地震といった自然災害に伴う供給制約や物流の停滞からの自然な復旧であると私は受け止めています。要するに、俗にいうところの「挽回生産」なわけです。従って、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を前月の「生産は緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」から「生産は緩やかに持ち直している」に上方改定しています。ただ、製造工業生産予測調査を見ると、11月生産は10月統計公表時の▲0.8%の減産から上方修正されたとはいえ、本日の11月統計公表時でも+0.6%の増産にとどまっていますので、プラスの上方バイアスを持つ製造工業生産予測調査のクセを修正すると、▲3.1~▲1.1のレンジで減産となる可能性が高いと推計されています。そうであっても、7~9月期GDPはマイナス成長でしたが、10~12月期GDPはプラス成長に回帰する可能性が高いと私は受け止めています。

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失業率、有効求人倍率、正社員有効求人倍率がそろって前月から悪化した結果を示していますが、依然として雇用指標はかなり完全雇用に近い水準にあり、そろそろ賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

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消費者態度指数の4つのコンポーネントについて、前月差で少し詳しく見ると、、「暮らし向き」が▲0.6ポイント低下、「雇用環境」が▲0.2ポイント低下した一方、「収入の増え方」は+0.5ポイント上昇、「耐久消費財の買い時判断」は前月と変わらず、となっています。収入が増えながら暮らし向きが悪化する、というのはよく理解できないところですし、自然災害による生鮮食品価格も落ち着きに向かっているわけですから、なおさらです。消費者態度指数は今年2018年1月の44.6から今年はほぼ一貫して低下を続けているわけですが、12月の冬のボーナスの後に反転する可能性はあるんでしょうか。
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