fc2ブログ

2022年10月03日 (月) 22:30:00

業況判断DIが3期連続で悪化した9月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査から▲3ポイント悪化し+14となりました。悪化は2020年6月調査以来、実に7四半期ぶりです。また、本年度2022年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+0.8%の増加が見込まれています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業の景況感、3期連続悪化 9月日銀短観
日銀が3日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は前回の6月調査から1ポイント悪化し、プラス8となった。資源高と円安を背景とした原材料コストの増加が景況感を下押しし、3四半期連続で悪化した。大企業非製造業は新型コロナウイルスの影響が緩和したことから2四半期連続で改善し、プラス14となった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値だ。9月調査の回答期間は8月29日~9月30日。回答基準日の9月12日までに企業の7割台半ばが答えた。
大企業製造業の業況判断DIはプラス8と、QUICKが集計した市場予想の中央値(プラス11)を下回った。中国のロックダウン(都市封鎖)が6月に解除されたことを受けて自動車産業を中心に景況感が改善した業種もみられたが、幅広い業種が原材料高の影響で悪化した。先行きは円安が業績の追い風になることなどから、プラス9と足元から小幅の改善を見込んでいる。
資源高と円安を背景とした原材料高が続くが、販売価格に価格転嫁する動きも進んでいる。大企業製造業の仕入れ価格判断DI(仕入れ価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」の割合を引いた値)はプラス65と、6月調査と並んで1980年5月以来の高水準にある。販売価格判断DIも6月から2ポイント上昇してプラス36と、仕入れ価格判断DIと同じ約42年ぶりの高水準だ。
企業の消費者物価見通しも上昇しており、全規模全産業の1年後の見通し平均は前年比2.6%上昇と、調査を始めた2014年以降で過去最高だ。3年後見通しは2.1%、5年後見通しは2.0%と、どれも2%台となっている。
大企業非製造業の業況判断DIはプラス14と市場予想(プラス12)を上回った。7月から8月にかけて新型コロナの感染が拡大したが、厳しい行動制限措置がとられなかったことで改善の動きが続いた。宿泊・飲食サービスや不動産、通信などで改善がみられた。
企業の事業計画の前提となる22年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=125円71銭と、6月調査(118円96銭)から円安方向に修正された。ただ、足元の円相場は1ドル=144円台後半で推移しており、修正された想定レートよりも大幅な円安・ドル高水準にある。


とても長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo


先週水曜日の9月28日に日銀短観予想を取りまとめた際にも書いたように、業況判断DIに関してはほぼ横ばい圏内の動きであり、胆管のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIが6月調査kラ▲1ポイント悪化、逆に、大企業非製造業は1ポイントの改善となりました。加えて、先行きの景況感も明確に改善する方向にあるとはいい難く、総じて停滞色が強い内容と私は受け止めています。製造業では半導体をはじめとする部品供給制約の緩和が、また、非製造業では新型コロナウィルス感染症(COVID-19)感染拡大の落ち着きが、それぞれ好材料となっている一方で、原材料価格や資源価格の高騰が重荷になっている印象です。もちろん、欧米先進国での中央銀行による利上げや金融引締めによる景気後退懸念は引き続き強まっていますし、中国のゼロコロナ政策に基づく上海などにおけるロックダウンの可能性も不透明感を増しています。これらの要因を総合的に勘案すると、先行きも明るいとはとても思えません。

photo


続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。経済学的な生産関数のインプットとなる資本と労働の代理変数である設備と雇用人員については、方向としてはいずれも不足感が広がる傾向にあります。DIの水準として、設備については、明らかに、不足感が広がる段階には達したといえます。また、雇用人員については足元から目先では不足感が強まっている、ということになります。ただし、何度もこのブログで指摘しているように、賃金が上昇するという段階までの雇用人員の不足は生じていない、という点には注意が必要です。我が国人口がすでに減少過程にあるという事実が、かなり印象として強めに企業マインドに反映されている可能性があると私は考えています。ですから、マインドだけに不足感があって、経済実態としてどこまでホントに人手が不足しているのかは、私には謎です。賃金がサッパリ上がらないからそう思えて仕方がありません。加えて、COVID-19の感染拡大の動向に起因する不透明感は設備と雇用についても同様です。

photo


日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。日銀短観の設備投資計画のクセとして、年度始まりの前の3月時点ではまだ年度計画を決めている企業が少ないためか、3月調査ではマイナスか小さい伸び率で始まった後、6月調査で大きく上方修正され、景気がよければ、9月調査ではさらに上方修正され、さらに12月調査でも上方修正された後、その後は実績にかけて下方修正される、というのがあります。その意味で、本日公表の9月調査では2022年度の設備投資計画は+16.4%増と、6月調査から大きく上方修正されました。やや大きすぎるように私には見えるのですが、COVID-19パンデミック以降に大きく抑制されていた設備投資の反動増という面が強い、と私は考えています。ただ、最後の着地点がどうなるか、これまた、COVID-19とウクライナ危機の動向に照らして不透明です。

繰り返しになりますが、今回公表された9月調査の結果は、6月調査から大きな変化はなく、停滞色の強い内容と考えるべきです。ただし、設備投資だけはCOVID-19パンデミック以来、抑制を続けていた反動と人口減少に伴う人手不足から、かなり大きく増加する、という結果になっています。また、図表は引用しませんでしたが、仕入価格判断DIや販売価格判断DIは引き続き歴史的な高水準に達しています。採算の改善に向けて、販売価格の引上げ努力は今後とも続くものと考えるべきです。
Entry No.7648  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2022年10月02日 (日) 13:00:00

今年の紅葉の見ごろやいかに?

photo


先週9月29日に、気象協会から「2022年紅葉見頃予想」第1回が明らかにされています。上の画像はその気象協会のサイトから引用しています。
紅葉の見頃は、秋(9~11月)の気温が低いと早まり、高いと遅れるそうで、今年は気温が高かったことから、全国的に平年並みか遅めと予想されています。関西の代表である京都の嵐山は11月下旬の27日、という予想となっています。
Entry No.7647  |  普通の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2022年10月01日 (土) 22:00:00

コーヒーの日のコーヒーの旬を知る!!!

photo


60歳を過ぎても、まだまだ知らないことがいっぱいで、今年初めて知ったのですが、今日10月1日はコーヒーの日だそうです。そして、もっと知らなかったのですが、コーヒーには旬があるそうです。上の画像はそのコーヒーの旬に関して、ウェザーニュースのサイトから引用しています。
私はコーヒーにつけ、何につけ、特段、グルメでも何でもないので、こだわりなく、適当なブレンドコーヒーを楽しんでいます。私と違って、こだわりある方は、その昔は、ブルーマウンテンだったのかもしれませんが、今ではいっぱいいろんなブランドがあるんだろうと思います。海外生活は南米チリとインドネシアの首都ジャカルタでそれぞれ3年間ですから、その周辺の地域の馴染みあるコーヒーを楽しんでいます。
Entry No.7646  |  普通の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2022年10月01日 (土) 09:00:00

今週の読書は経済書や海外ミステリをはじめとして計6冊!!!

今週の読書感想文は以下の通り経済書やミステリをはじめとして計6冊です。
来週から本格的に大学の後期授業が始まりますので、これからは読書ペースがやや落ちるかもしれません。なお、今年の新刊書読書は、1~3月期に50冊、4~6月期に56冊、従って、今年前半の1~6月に106冊、そして、7~9月で66冊、10月に入って今週が6冊ですので、今年に入ってから178冊となりました。10月中か、11月早々には200冊に達することと思います。

photo


まず、前田裕之『経済学の壁』(白水社)です。著者は、日経新聞のジャーナリストを長く務めています。本書では、第Ⅰ章で大学などのアカデミズムにいる経済学者と官庁や民間シンクタンクなどのエコノミストを比較するという、ハッキリいって、無意味な議論を展開した後、第Ⅱ章で経済学について、これまた、それほど意味があるとも思えない自説を持ち出しています。まあ、こういった思い込みの部分を書きたいのも本書を執筆する動機としてあったのかもしれません。そして、第Ⅲ章から経済学の各流派についての概観が始まります。経済学には経済史と経済学史という学問分野があり、本書は経済学史のような体系的な解説ではありませんし、もちろん、大学での講義の教科書として使えるハズもないのですが、いろんな経済学の流派について、ミクロ経済学とマクロ経済学に分けて並べています。私でも明確に認識していない学派についても詳細に特徴つけていて、その意味では、なかなかに参考にはなります。主流派に属するニュー・ケインジアンと異端とみなされるポストケインジアンなんて、一般には理解されにくい部分もそれなりにキチンと解説がなされています。その意味では、決して学術書ではありませんが、経済学の主流派とそれ以外の学派を概観するのには役立ちそうです。ただ、惜しむらくは、世間一般で注目を集め始めている現代貨幣理論(MMT)が抜け落ちています。理由はよく判りません。最後に、数年前に話題になったところで、ノーベル賞経済学者のカーネマン教授が『ファスト & スロー』を出版した際の目的として、オフィスでの井戸端会議での会話の話題提供を上げていた気がするのですが、本書も同様に、オフィスでの井戸端会議や飲み会の際に経済学の知識をペダンティックに示すためにはとても有益な役割を果たすと思います。

photo


次に、日本経済研究センター[編]『使える!経済学』(日本経済新聞出版)です。編者、というか、おそらく、日本経済研究センター(JCER)のスタッフがインタビューするか、講演会に招くいた際のお話を取りまとめていて、主として、マイクロな経済学をビジネスに活用している例が収録されています。一部に慶應義塾大学の例がありますが、ほとんどが東京大学です。そうなのかもしれません。因果推論や構造推計、あるいは、マーケット・デザインを基にしつつ、ダイナミック・プライシング、オークション理論、マッチング理論、などなどの経済学がビジネスにどのように応用されているかの実例がよく判ります。繰り返しになりますが、かなりマイクロな経済学の応用がほとんどで、マクロエコノミストの私に理解が難しい最新分野なのですが、それなりに、経済学の応用について理解が深まった気がします。ただし、こういった経済学を活かしたエコノミストのコンサルティング活動について、2点だけアサッテの方向から指摘しておくと、第1に、行動経済学も含めて、こういった分野の経済学は、厳密な再現性を求める科学としての経済学ではなく、ビジネスに応用されることは、ある意味で、本来の目的であり、とても相性がいいと私は考えています。第2に、こういったコンサルティング活動は、基本的に、コンサルタントを雇える大企業に有利な結果をもたらす、という点です。典型的にはダイナミック・プライシングとかで、消費者余剰をすべて企業のものにすることを目指す場合があったりします。もちろん、マッチング理論などはいろんな意味で有益ですし、経済学が保育園の待機児童の解消に応用されている例もあったりするのですが、基本、コンサルタントを雇える大企業にコンサルティング活動は向かいます。ですから、コンサルタントを雇えない消費者にも利益になるような経済学のビジネスへの活かし方も考慮されるともっといいんではないか、と私は考えています。

photo


次に、ジェフリー・ディーヴァー『ファイナル・ツイスト』(講談社)です。著者は、セカイでももっともうrているミステリ作家の1人ではないかと思います。私もこの作者の作品のファンで、リンカーン・ライムのシリーズ、キャサリン・ダンスのシリーズなどの作品はほぼほぼすべて読んでいます。本書は、新しく始まったコルター・ショウのシリーズであり、『ネヴァー・ゲーム』、『魔の山』に続く第3巻です。邦訳の出版前は、このシリーズはこの第3回で終了、とウワサされていたのですが、どうも、シリーズ第1期の終了、ということらしいです。ということで、本書では、ショウの父親の死の謎に迫ります。1906年のカリフォルニア州法に関する文書、コードネーム「エンドゲーム・サンクション」をショウとともに、ショウの父をしに至らしめた民間諜報会社「ブラックブリッジ」が追います。この文書の桁外れの内容が明らかにされるとともに、この文書に絡んだトリックも、作者のディーヴァーらしいツイスト=どんでん返しで明らかにされます。このショウのシリーズは、ディーヴァーらしいどんでん返しの要素が少なく、特に、前作の『魔の山』にはほとんどなかったのですが、本書では、「アッ」とびっくりのどんでん返しが用意されています。私も読み終えて、「何だ、そうだったのか」と独り言をいってしまいました。このシリーズの先行きは、私はよく知りませんが、この作者のファンであれば本書は必読といえます。

photo

photo


次に、佐藤千矢子『オッサンの壁』(講談社現代新書)と小島慶子『おっさん社会が生きづらい』(PHP新書)です。著者は、毎日新聞のジャーナリストとTBSアナウンサーからエッセイストやタレントになった女性です。ということで、本日10月1日付けの「朝日新聞」朝刊から天声人語に女性執筆者が初めて加わった、とありました。メディアのコラムでも男性の執筆陣で運営されていたことが明らかなわけです。私なんかはまごうことなくオッサンなわけです。ですから、これらの女性が感じるオッサン社会の生きづらさなんかは、ほとんど感じたことはないどころか、逆に、生きづらさを増幅させているところがあるんではないか、と反省しています。日本のビジネス社会では、おそらく、1990年のバブル崩壊くらいまで男性社会であり、しかも、年功序列が色濃く残っていましたから、年配男性=オッサンの天下だったわけです。女性は明示的に差別され、中年男性=オッサンを中核労働者としてメンバーシップ的に正規職員として雇用され、企業に無限定に奉仕させて働かせつつ、家庭は専業主婦がやりくりする、という世界だったわけです。ここで「家庭」には家事は当然、育児、場合によっては老親の介護まで含まれます。そして、子育てが一定ラクになった段階で、主婦層がパートなどの形で、あるいは、学生がアルバイトとして非正規の縁辺労働者として労働市場に参入するわけです。年功序列は当然のように年功賃金に基づいており、子育て期に年功賃金が支給されることから学校教育の費用については、中央・地方の政府ではなく家庭が学費を負担する、というシステムが出来上がっているわけです。ですから、現在の非正規雇用のように年功賃金でなくなってフラットな賃金プロファイルがドミナントなシステムに移行すれば、教育費は中央・地方の政府が負担すべきです。やや脱線しましたが、オッサン社会の弊害は、単に、女性進出やダイバーシティの推進を阻害しているだけでなく、あらゆるところで見られる気がします。

photo


最後に、万城目学『べらぼうくん』(文春文庫)です。著者は、私の母校である京都大学出身の小説家です。私自身も著者のデビュー作である『鴨川ホルモー』から始まって、最新作の『ヒトコブラクダ層ぜっと』まで、おおむね読破しているつもりです。独特の「万城目ワールド」といわれる世界観が私は好きだったりします。その小説家がご自分の半生を振り返るエッセイです。なぜか高校時代を終えた浪人時代から書き始めて、京都大学の学生だったころの海外旅行の経験、年齢的にバブル期ではなかったハズですが、海外旅行が通常生活に入り込んでいる世代だという気がします。そして、大学を卒業して就職して工場勤務となった後、離職して『バベル九朔』の作品そのままに、ビル管理人をしたりしています。というか、実体験が『バベル九朔』の作品として結実した、ということなのでしょう。なかなかに、興味ある作家の半生を知ることが出来るエッセイなのですが、最初に書いたように、私はこの作家の作品の世界観が好きなのですが、私の読解力がないせいなのか、このエッセイからは世界観の出どころのようなものは読み取ることができませんでした。私は三浦しをんなどは小説もエッセイもどちらも大好きなのですが、この万城目学の作品、というか、出版物としては、こういったノンフィクションのエッセイよりも、フィクションそのもの、というか、かなりファンタジーも入った小説の方が私は好きです。
Entry No.7645  |  読書感想文の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2022年09月30日 (金) 17:00:00

コロナ前水準を回復した鉱工業生産指数(IIP)ほか商業販売統計と雇用統計をどう見るか?

本日は月末閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から+2.7%の増産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+4.1%増の12兆5210億円でした。季節調整済み指数では前月から+1.4%増を記録しています。さらに、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.5%を記録し、有効求人倍率は前月を+0.03ポイント上回って1.32倍に達しています。まず、とても長くなってしまいますが、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

8月の鉱工業生産2.7%上昇 コロナ前水準に回復
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は99.5となり、前月比2.7%上がった。3カ月連続で改善し、新型コロナウイルス禍前の20年1月(99.1)を上回った。コロナ感染拡大を受けた中国・上海市でのロックダウン(都市封鎖)が6月に解除されて以降、生産の回復が続く。
経産省は基調判断を「生産は一進一退」から「生産は緩やかな持ち直しの動き」に引き上げた。QUICKがまとめた民間エコノミスト予測の中心値は前月比0.2%上昇だった。
全15業種のうち10業種が上昇した。生産用機械工業は半導体製造装置などが伸びて6.1%上がった。鉄鋼・非鉄金属工業は3.6%、無機・有機化学工業・医薬品を除いた化学工業は2.7%それぞれ伸びた。上海のロックダウン解除を受け、部品などの供給制約が緩和された影響が大きい。
低下は5業種で、電子部品・デバイス工業が6.3%下がった。モス型半導体集積回路(メモリ)などの生産が鈍った。自動車工業は1.1%、無機・有機化学工業は1.6%のそれぞれマイナスだった。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は9月が前月比2.9%、10月は3.2%の上昇を見込む。ただ、エネルギー価格高騰といったコスト増によるインフレの進行や、米欧の利上げに伴う景気減速の懸念もあって先行きは不透明だ。経産省の担当者は「企業の生産マインドは弱気が続いている。海外景気の下振れの影響などを注視する必要がある」と説明した。
8月の小売販売額4.1%増 行動制限なく百貨店など好調
経済産業省が30日発表した8月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比4.1%増の12兆5210億円だった。6カ月連続で前年同月を上回った。3年ぶりに新型コロナウイルス禍での行動制限がない夏休みを迎え、外出機会の増加で百貨店などが好調だった。
百貨店は前年同月比24.7%増の3869億円だった。夏・秋物の衣料品に加え、高額商品も堅調だった。コンビニエンスストアは5.2%増の1兆720億円。スーパーは0.5%減の1兆2908億円だった。
家電大型専門店は1.7%減の3635億円だった。6月下旬に気温が急上昇した影響で、エアコンなどの季節家電の需要は8月に一服したとみられる。
小売業販売額を季節調整済みの前月比で見ると1.4%増加した。基調判断は「緩やかに持ち直している」で据え置いた。
8月の求人倍率1.32倍、8カ月連続上昇 失業率は2.5%
厚生労働省が30日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は1.32倍で、前月に比べて0.03ポイント上昇した。8カ月連続で前月を上回った。持ち直しの傾向が続くものの、新型コロナウイルス流行前の水準には届いていない。
総務省が同日発表した8月の完全失業率は2.5%で、前月比0.1ポイント低下した。4カ月ぶりに改善した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。倍率が高いほど職を得やすい状況となる。コロナ禍で2020年9月に1.04倍まで落ち込み、その後は上昇傾向にある。感染拡大前の20年1月の1.49倍とは開きがある。
景気の先行指標とされる8月の新規求人数は83万8699人で、前年同月比15.1%増えた。3年ぶりの行動制限がない夏休みへの期待から宿泊・飲食サービスが51.1%増加した。生活関連サービス・娯楽も28.9%増だった。新規求人倍率(季節調整値)は2.32倍で、前月を0.08ポイント下回った。
8月の就業者数は6751万人と前年同月から12万人増えた。2カ月ぶりに増加した。


とてつもなく長くなりましたが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

photo


まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は前月と比べてわずかに増産という予想でしたが、実績の+2.7%増は予想レンジの上限である+2.0%増を超えて、少しサプライズだったかもしれません。ただし、引用した記事にもある通り、増産の主因は中国の上海における6月からのロックダウン解除をはじめとする海外要因が大きいとされています。経済産業省の解説サイトでは「部材供給不足の影響の緩和が継続」と明記しています。特に、6月からの上海のロックダウン解除に起因するペントアップであると考えるべきであり、どこまでサステイナブルな回復かは不透明です。しかしながら、それはそれなりに大きな増産でしたので、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「一進一退」から「緩やかな持ち直しの動き」に引き上げています。また、先行きに関しては、製造工業生産予測指数によれば9月も+2.9%の増産、10月も+3.2%の増産が、それぞれ、見込まれているのですが、上方バイアスを除去すると補正値では9月は▲1.2%の減産との試算を経済産業省で出しています。足元の9月は減産の可能性があるとはいえ、6~8月統計では3か月連続で増産に転じたわけですから、基調判断は上方改定しています。8月統計から産業別に生産の増加への寄与度を見ると見ると、プラス寄与では、生産用機械工業+0.59%、鉄鋼・非鉄金属工業+0.20%、などが上げられ、逆に、マイナス寄与では、電子部品・デバイス工業▲0.41%、自動車工業▲0.18%、などとなっています。先行きについては、ペントアップ生産のサステイナビリティとともに、加えて、米国の連邦準備制度理事会(FED)をはじめとして、先進国ではインフレ抑制のためにいっせいに金融引締めを強化しており、ウクライナ危機も相まって外需の動向が懸念されます。新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の足元での感染拡大は落ち着きつつあるように見受けられますが、国内要因はともかく、生産に強い影響を及ぼす海外要因を考えると、生産の先行きは不透明といわざるを得ません。


photo


続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。ということで、上海のロックダウン解除などを受けて生産が回復を示している一方で、小売販売額は新型コロナウィルス感染症(COVI D-19)の足元での新規感染が落ち着きつつある中で、8月の夏休みには行動制限もなく、外出する機会に恵まれて小売業販売額は堅調に推移しました。上のグラフを見ても理解できる通り、季節調整していない原系列の前年同月比で見た増加率も、季節調整済み系列の前月比も、どちらも伸びを高めてきています。そして、季節調整済み指数の後方3か月移動平均で判断している経済産業省のリポートでは、8月までのトレンドで、この3か月後方移動平均が0.0%の横ばいで、基調判断を「緩やかな持ち直しの動き」で据え置いています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていません。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。ですから、サービス業へのダメージの大きな新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響、さらに、足元での物価上昇の影響は、ともに過小評価されている可能性が十分あります。特に、後者のインフレの影響については、7月の消費者物価指数(CPI)のヘッドライン前年同月比上昇率は+3.0%に達しており、名目の小売業販売額の+4.1%増は物価上昇を上回っているとはいえ、単純にCPIでデフレートするのは適当ではありませんが、それでも、実質の小売業販売額はやや過大評価されている可能性は十分あると考えるべきです。

photo


続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月からわずかに改善して2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、前月から改善の1.30倍と見込まれていました。実績では、失業率は市場の事前コンセンサスにジャストミートし、有効求人倍率は市場予想より改善しています。いずれにせよ、足元の統計はやや鈍い動きながらも雇用は底堅いと私は評価しています。ただし、休業者について見ると、1月から3月にかけて、季節調整していない原系列の休業者数の前年同月差が、3か月連続で増加した一方で、逆に、4~6月には3か月連続で減少した後、直近で利用可能な7~8月統計では再び増加しています。産業別では特に医療・福祉で休業者が増加しており、詳細は把握しきれていませんが、ひとつの懸念材料である可能性は否定できません。また、一致指標の有効求人倍率や先行指標の新規求人数・新規求人倍率が改善を示している一方で、5~7月の3か月連続で2.6%で横ばいを記録していた失業率が8月統計では▲0.1%ポイントの低下とはいえ改善を示したことは、遅行指標の特徴なのかもしれない、と私は考えています。その意味からも、改善ペースは緩やかながらも、雇用は底堅いと評価すべきと受け止めています。

photo


最後に、本日、内閣府から9月の消費者態度指数が公表されています。前月から▲1.7ポイント低下し30.8を記録しています。指数を構成する4指標すべてが低下を示しています。すなわち、「耐久消費財の買い時判断」が▲2.5ポイント低下し23.2、「暮らし向き」が▲2.1ポイント低下し29.0、「雇用環境」が▲1.7ポイント低下し35.4、「収入の増え方」が▲0.6ポイント低下し35.4となっています。最初の2項目の「耐久消費財の買い時判断」と「暮らし向き」については、いく分なりとも物価上昇の影響が見られると私は考えています。ない、統計作成官庁である内閣府では、消費者マインドの基調判断を「弱含んでいる」で据え置いています。私は、この消費者態度指数の動きは新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大とおおむね並行しているのではないか、と考えていたのですが、さすがに、この9月統計では消費者マインドは物価上昇と連動性を高めつつある、と受け止めています。ということで、消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。
Entry No.7644  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2022年09月29日 (木) 15:30:00

食品値上げで家計負担はどれくらい増えるのか?

やや旧聞に属する話題なのですが、ちょうど1週間前の9月22日に帝国データバンクから「『食品主要105社』価格改定動向調査」の結果が明らかにされ、その中で、食品値上げに伴う家計負担額の推計がなされています。家計負担は平均で年額7万円、当然ながら、低収入世帯での負担感が高いと結論されています。pdfの全文リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


まず、上のグラフは、リポートから 食品値上げ 家計負担額推計 を引用しています。今秋の値上げ率は月平均で18%に達すると帝国データバンクでは推計していて、上のグラフを見れば明らかな通り、平均的な家計で、加工食品で2,560円、酒類・飲料で1,285円をはじめとして、月額で5,730円、年額では68,760円の負担増加になると試算しています。総務省統計局による家計調査では年間消費支出額が約333万円ですので、2%ほどの支出増になる計算です。

photo


次に、上のテーブルは、リポートから 収入階層別 食品値上げによる影響 を引用しています。これも見れば明らかな通り、低所得家計よりも高所得家計の方が負担額は大きい一方で、消費支出額に占める負担割合は低所得家計の方が高い、という結果となっています。すなわち、逆進的な効果があります。いわゆるエンゲル係数というのがあって、所得が低いほど食品に対する支出がすべての消費支出に占める割合は大きい、という経験則です。この点からして、当然と言えば当然の結果が示されています。

最後に、リポートでは「政府による物価高対策の恩恵を実感するには、しばらくの時間が必要」と、特に根拠なく結論しています。しかし、私は、繰り返し主張してきた通り、市場メカニズムに介入して供給企業に補助金を出して価格を抑制するのではなく、家計に対して所得に応じた必要な支援を行うべきだと考えています。この試算結果からも明らかな通り、企業に補助金を出して価格を抑制するのは高所得世帯に有利なだけで、むしろ、必要なのは低所得世帯への支援であるのは明らかです。
Entry No.7643  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2022年09月28日 (水) 11:30:00

9月調査の日銀短観予想やいかに?

来週月曜日10月3日の公表を控えて、シンクタンクから9月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業/非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下のテーブルの通りです。設備投資計画は来年度2022年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、可能な範囲で、先行き経済動向に注目しました。短観では先行きの業況判断なども調査していますが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミックやウクライナ危機といった経済外要因の動向次第という面があり、シンクタンクにより大きく見方が異なることになってしまいました。それでも、景況感が低下するのは明らかだという予想です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
6月調査 (最近)+9
+13
<+14.1>
n.a.
日本総研+8
+12
<+13.9%>
先行き(12月調査)は、全規模・全産業で9月調査対比+3%ポイントの上昇を予想。供給制約の緩和により生産活動が正常化に向かうほか、国内の旅行支援策の実施や水際対策の緩和に伴い、サービス業を中心に景況感が改善する見込み。ただし、海外経済の減速や原材料価格の上昇が引き続き製造業の景況感の重石に。
大和総研+10
+12
<+14.9%>
大企業製造業では、半導体不足の緩和による生産拡大を見込む「自動車」の業況判断DI(先行き)が上昇するとみている。大企業非製造業については、「全国旅行支援」による旅行需要の回復の後押しや、水際対策の更なる緩和によるインバウンドの増加への期待感から、「対個人サービス」、「宿泊・飲食サービス」、「小売」といった業種で業況判断 DI(先行き)が上昇すると予想する。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+10
+13
<+14.6%>
製造業・業況判断DIの先行きは、横ばいでの推移を予測する。自動車生産の回復が緩やかにとどまることに加えて、海外経済の減速や半導体市場の調整が重石となろう。(略) 一方、非製造業・業況判断DIの先行きは2ポイントの改善を見込む。対人接触型サービス消費持ち直しへの期待から、宿泊・飲食サービスや対個人サービス(遊園地・テーマパークや美容室等)中心に改善するだろう。
ニッセイ基礎研+11
+12
<+6.3%>
先行きの景況感は方向感にばらつきが出ると予想している。まず、製造業・非製造業ともに、原材料・エネルギー高の継続や値上げによる需要減少に対する懸念が燻る。さらに、製造業では利上げによる欧米の景気後退、中国での都市封鎖再発、国内での冬場の電力不足などへの懸念も加わり、先行きにかけて景況感の悪化が示されそうだ。一方、非製造業ではコロナの感染縮小や水際対策の緩和などに伴う人流のさらなる回復への期待が反映され、先行きにかけて、景況感の小幅な回復が示されると見ている。
第一生命経済研+12
+7
<大企業製造業+21.4%>
9月の短観は、大企業・製造業が前回比+3ポイントと小幅改善すると見込まれる。6月に上海ロックダウンが解除されて、需要のリバウンドが生産回復に寄与している。しかし、その先では米利上げが世界経済を減速させる懸念も控えている。2022年度計画全体の変化にも目配りをしておく必要がある。
三菱総研+12
+12
<+14.5%>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業が9月時点から▲1%ポイント低下の+11%ポイント、非製造業は+2%ポイント上昇の+14%ポイントと予測する。製造業は、米欧の利上げ加速に伴う外需の減速懸念から悪化を見込む。一方、非製造業は、本格的な経済活動正常化への期待から改善を見込む。水際対策緩和等を背景にインバウンド需要回復が見込まれることも押し上げ要因となろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+11
+15
<大企業全産業+17.4%>
日銀短観(2022年9月調査)の業況判断DI(最近)は、大企業製造業で、前回調査(2022年6月調査)から2ポイント改善の11と、4四半期ぶりの改善が見込まれる。円安と資源価格高によるコスト上昇が多くの業種で企業収益を圧迫する一方、供給制約の緩和で自動車や機械類を中心に景況感の悪化に歯止めがかかり、改善に向かうとみられる。先行きは、加工業種を中心に供給制約の緩和継続が期待され、2ポイント改善の13となろう。
農林中金総研+12
+14
<+14.5%>
先行きに関しては、引き続き、一次産品価格の高騰による収益圧迫への警戒が強いほか、欧米諸国での利上げ加速による景気鈍化懸念やゼロコロナ政策を続ける中国経済の足踏み、欧州のエネルギー危機への警戒が不安材料ともみられるが、非製造業ではウィズコロナへの移行、インバウンド需要の回復などへの期待も根強いと思われる。以上から、製造業では大企業が10、中小企業が▲3と、今回予測からともに▲2ポイントの悪化予想と見込む。一方、非製造業では大企業が14、中小企業では1と、今回予測からともに+1ポイントと改善を予想する。


極めて大雑把に見て、6月調査からの変化として9月調査の短観では、大企業製造業・非製造業ともに業況判断DIは横ばい、ただ、直感的には製造業がわずかに改善、非製造業がわずかに悪化、加えて、設備投資計画もほぼ横ばいながら、やや上方修正、というように私は受け止めています。また、先行き業況判断は改善方向にある、といえそうです。ただし、設備投資計画については、6月調査から9月調査への修正幅は小さくても、昨年度からの設備投資の伸びは全規模全産業で+10%超とかなり大きいわけですから、ここ2年余り新型コロナウィルス感染症(COVID-19)もあって設備投資に積極的でなかった企業が、改めて、人手不足や先行きの将来見通しも明るくなり、旺盛な設備投資意欲を示している雰囲気が伝わってきます。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから業況判断DIの推移を引用しています。

photo
Entry No.7642  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2022年09月27日 (火) 11:30:00

8月統計の企業向けサービス価格指数(SPPI)は+2%近い高い上昇率が続く!!!

本日、日銀から8月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.9%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも+1.5%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、18カ月連続上昇 8月1.9% 日銀
日銀が27日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は107.1と前年同月比1.9%上昇した。上昇幅は7月から縮小したものの、18カ月連続のプラスとなった。堅調な移動需要を背景に国内航空旅客輸送などが上昇した。
宿泊サービスや情報通信なども上昇した。宿泊サービスは新型コロナウイルス感染拡大のなかでも行動制限がなかったことが影響した。情報通信ではソフトウエア開発などでシステムエンジニア職の人件費上昇が押し上げ要因となった。
調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは100品目、下落したのは18品目だった。


コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1枚目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

photo


上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の最近の推移は、昨年2021年3月にはその前年2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響の反動もあって、+0.7%の上昇となった後、2021年4月には+1.1%に上昇率が高まり、本日公表された今年2022年8月統計まで、18か月連続の前年同期比プラス、17か月連続で+1%以上の上昇率を続けていて、6月統計と7月統計では+2%に乗せました。ただし、最新の8月統計では+1.9%とやや上昇幅を縮小させつつも、高止まりしている印象です。基本的には、石油をはじめとする資源価格の上昇がサービス価格にも波及したコストプッシュが主な要因と私は考えています。ですから、上のグラフでも、SPPIのうちヘッドラインの指数と国際運輸を除くコアSPPIの指数が、最近時点で少し乖離しているのが見て取れます。もちろん、ウクライナ危機の影響に加えて、新興国や途上国での景気回復に伴う資源需要の拡大もあります。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく8月統計のヘッドライン上昇率+1.9%への寄与度で見ると、石油価格の影響が強い運輸・郵便が+0.67%、土木建築サービスや宿泊サービスなどの諸サービスが+0.60%、リース・レンタルが+0.35%、損害保険や金融手数料などの金融・保険が+0.13%、などとなっています。また、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、特に、運輸・郵便が+4.1%の上昇となったのは、エネルギー価格の上昇が主因であると考えるべきです。もちろん、資源価格のコストプッシュ以外にも、リース・レンタルの+4.6%、広告の+1.8%の上昇などは、それなりに景気に敏感な項目であり、需要の盛り上がりによるディマンドプルの要素も大いに含まれている、と私は受け止めています。ですので、エネルギーなどの資源価格のコストプッシュだけでなく、国内需要面からもサービス価格は上昇基調にあると考えていいのかもしれません。
ただし、やや細かな点ですが、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率が6~7月の+2.0%から8月には+1.9%にやや上昇ペースが鈍っている一方で、石油価格の影響の強い国際運輸を除くコアSPPI上昇率は5~7月の+1.3%から8月には+1.5%に上昇ピッチが上がっています。単なる計測誤差である可能性が十分あるとは思いますが、インフレの主たる要因が、石油をはじめとする資源高から、その国内への波及によるホームメード・インフレに移ってきている可能性が無視できない、と私は考えています。

photo


最後に、企業向けサービス価格指数(SPPI)を離れると、昨日、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し中間報告」OECD Economic Outlook, Interim Report September 2022 が公表されています。副題は Paying the Price of War となっています。上のテーブルはOECDのサイトから Table 1. OECD Interim Economic Outlook GDP projections September 2022 を引用しています。今年2022年はそれほど大きな修正ではありませんが、来年2023年の成長率見通しは大きく下方修正されています。同じサイトには Summary が12点上げられているのですが、そのうちの3点目は、"Global growth is projected to slow from 3% in 2022 to 2¼ per cent in 2023, well below the pace foreseen prior to the war. In 2023, real global incomes could be around USD 2.8 trillion lower than expected a year ago (a shortfall of just over 2% of GDP in PPP terms)." と指摘しています。直接的な要因はインフレ抑制のための金融引締めなのですが、その大元の原因であるロシアのウクライナ侵攻が世界の経済減速をもたらしている、という主張です。
Entry No.7641  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2022年09月26日 (月) 11:30:00

今年2022年のノーベル経済学賞やいかに?

photo


ノーベル財団から今年のノーベル賞の授与日程がすでに明らかにされています。以下の通りです。
10月3日
生理学・医学賞
10月4日
物理学賞
10月5日
化学賞
10月6日
文学賞
10月7日
平和賞
10月10日
経済学賞


そして、10月のノーベル賞ウィークを前に、9月21日、クラリベイト引用栄誉賞 Cralivate Citation Laureates 2022 が明らかにされています。経済学分野は以下の通り8人となっています。レイヤード男爵とオズワルド教授が英国人であるほかは、すべて米国人となっています。分野としては、国家発展における政治経済制度の分析、幸福の経済学、互恵主義や利他主義などの社会的協力を含む経済行動の分析、です。

nameaffiliationmotivation
Daron AcemogluInstitute Professor, Department of Economics, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MassachusettsFor far-reaching analysis of the role of political and economic institutions in shaping national development
James A. RobinsonReverend Dr. Richard L. Pearson Professor of Global Conflict Studies, and Institute Director, The Pearson Institute for the Study and Resolution of Global Conflicts, Harris School of Public Policy, University of Chicago, Chicago, Illinois
Simon JohnsonRonald A. Kurtz (1954) Professor of Entrepreneurship of Economics and Professor, Global Economics and Management, MIT Sloan School of Management, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Massachusetts
Richard A. EasterlinUniversity Professor Emeritus of Economics, University of Southern California, Los Angeles, CaliforniaFor pioneering contributions to the economics of happiness and subjective well-being
Richard Layard/LordCo-Director, Community Wellbeing Programme, Centre for Economic Performance, London School of Economics, London
Andrew J. OswaldProfessor of Economics and Behavioural Science, University of Warwick, Coventry
Samuel BowlesResearch Professor and Director of the Behavioral Sciences Program, Santa Fe Institute, Santa Fe, New Mexico; Professor Emeritus, Department of Economics, University of Massachusetts, Amherst, MassachusettsFor providing evidence and models that broaden our understanding of economic behavior to include not only self interest but also reciprocity, altruism, and other forms of social cooperation
Herbert GintisProfessor Emeritus, Department of Economics, University of Massachusetts, Amherst, Massachusetts; External Professor, Santa Fe Institute, Santa Fe, New Mexico


今年のノーベル経済学賞は誰でしょうか?

なお、本日、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し中間報告」OECD Economic Outlook, Interim Report が公表されるとアナウンスされています。10月早々にIMF・世銀総会があって、IMFの「世界経済見通し」が公表されるハズなので、それほど注目はしていませんが、何かの機会に取り上げるかもしれません。取り上げないかもしれません。
Entry No.7640  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2022年09月24日 (土) 09:00:00

今週の読書は経済所や歴史書をはじめとして計5冊!!!

今週の読書感想文は以下の通り、経済書、歴史書、教養書と新書の計4冊です。ややボリュームのある本が多かった気がします。ただし、いわゆるシルバー・ウィークでお休みが多かったので、新刊書読書だけでなく文庫本も何冊か読んでいて、葉室麟「いのちなりけり」のシリーズ、すなわち、『いのちなりけり』、『花や散るらん』、『影ぞ恋しき』上下を再読していたりします。
なお、今年の新刊書読書は、1~3月期に50冊、4~6月期に56冊、従って、今年前半の1~6月に106冊、そして、7~8月で45冊、先週までの9月で16冊、今週が5冊ですので、今年に入ってから172冊となりました。

photo


まず、河野龍太郎『成長の臨界』(慶應義塾大学出版会)です。著者は、BNPパリバ証券のチーフエコノミストです。とても包括的に金融と経済について論じています。出版社から受ける印象ほど学術書ではありません。一般のビジネスパーソンでも十分読みこなせると思います。著者は、日銀の異次元緩和をはじめとする金融緩和の継続に疑問を呈したり、あるいは、財政では赤字財政を批判して財政再建を目指すべき議論を提起したりと、アベノミクスにはかなり批判的な意見を持っていたエコノミストであり、本書でも同様の議論が展開されています。特に、星・カシャップのラインに沿って、緩和的な金融制作や財政政策が日本のように長期にわたって継続されると、というか、正確には完全雇用を超えて緩和策が継続されると、本来は市場から淘汰されるべき企業がゾンビのように生き残ってしまったり、あるいは、企業単位でなくても本来は採算性の高くない設備投資が実行されたりして、逆に、生産性に悪影響を及ぼして不況が長引く可能性を指摘しています。ですから、日本経済の現状を人で手不足で完全雇用を達成している状態と考えていて、この状態ではむしろ構造政策により生産性を引き上げるべき、との見方が示されています。完全雇用なのに賃金が上がらない理由についてはやや根拠薄弱です。また、利子所得のために金利引上げなども志向しています。私も判らなくもないのですが、明らかにバックグラウンドとなるモデルに混乱を生じている気がします。例えば、自然利子率と潜在成長率の議論が少し判りにくかったりします。加えて、というか、何というか、政策提言がややアサッテの方向になってしまっています。すなわち、3年ごとに社会保障負担を減らすのと同時に消費税を+0.5%ポイントずつ引き上げる、というのが目を引く政策となっています。ゾンビ仮説に立つのであれば金利引上げも選択肢になりそうな気がするのですが、さすがに、日本経済の現状を考慮すれば現実的ではない、ということなのでしょう。そして、経済が停滞しているのは企業の成長期待が低いからであり、企業の成長期待が低いのは消費が伸び悩んでいるからであり、と、ここまでは私も著者に賛成します。そして、何人かの論者は、消費が伸び悩んでいるのは年金が少ないために老後に備えて貯蓄に励んでいるためである、という議論がある一方で、さすがに、著者はこの年金増額論は却下、というか、触れてもいません。私は消費が伸び悩んでいるひとつの要因は非正規雇用という不安定かつ低賃金な雇用にあると考えています。そして、この論点も著者は無視しているように見えます。いずれにせよ、経済に関する流行の議論が網羅されている一方で、日本経済のバックグラウンドにある構造、あるいは、モデルについての理解が少し私と違うと感じました。

photo


次に、アダム・トゥーズ『世界はコロナとどう闘ったのか?』(東洋経済)です。著者は、ロンドン生まれで、現在は米国のコロンビア大学の歴史学の研究者です。英語の原題は Shutdown であり、2021年の出版です。出版年からも理解できるように、それほど新しい情報が盛り込まれているわけではなく、むしろ、2020年のパンデミック当初の時期に、ワクチンはなく、特効薬もない段階で、隔離を含むソーシャル・ディスタンスを取るしか感染拡大防止の決め手がない段階で、外出禁止といったロックダウンだったり、対人接触の多いセクターごとシャットダウンしたりといった措置と経済活動との間のトレードオフについて、歴史研究者らしくたんねんにコロナ危機に見舞われた世界を経済の面に焦点を当てつつ俯瞰しています。その差異、どうしても国別とか、地域別の記述になっていて、トランプ政権下の米国、さまざまなアプローチを取った欧州、そして、何よりもパンデミックの発祥の地となった中国、加えて、インドやロシアなども加えられています。米国では、何といっても、科学的な見方に対して根拠なく独自路線を取るトランプ政権に対応が危機を拡大させていたと考えるべきです。欧州についてはスウェーデンのように社会的な集団免疫の獲得を目指しつつも、結局、通常対応にせざるを得なかった例もあれば、イタリアのように感染拡大に歯止めが効かなかった国もあります。そして、何よりも、経済活動との関係が焦点とされています。本書では、コロナ危機における経済問題を供給面からのショックと捉えており、対人接触の多いセクターが本書のタイトル通りに「シャットダウン」されることによる経済停滞、と考えています。ですから、日本の例を上げると飲食店とかとなりますが、感染拡大を防止するためにシャットダウンされたセクターの産業としての活動が停止し、経済的な活動が停滞する、というのをどのように解決するか、の観点からの記述が多くなっています。逆に、米国やブラジルのように、感染拡大防止を軽視して経済活動を継続し、危機を深めた例もあったりするわけですから、トレードオフの関係にある感染拡大防止と経済活動の両立が、米国、欧州、中国をはじめとするアジアで、どのように進んだか、に着目されています。そして、アジアについては、中国にもっとも大きな紙幅が割かれており、次いでインド、韓国についても初期段階ではコロナ封じ込めに成功した例として取り上げられていますが、我が日本は経済規模ほど言及がありません。日本国内では日本は感染者も死者も世界的な標準からすれば少なく、何か、xファクターがあるのではないか、という議論を見かけましたが、世界的な視野ではほとんど注目されていなかった、という事実が明らかになった気がします。まあ、そうなのかしれません。

photo


次に、平野啓一郎『死刑について』(岩波書店)です。著者は、我が母校の京都大学在学中に『日蝕』で芥川賞を受賞した小説家です。本書は、弁護士会での講演録をもとに加筆修正されて単行本として出版されています。そして、著者の基本的な立場は死刑反対、というか、死刑廃止論です。もちろん、被害者感情から死刑存置論にも十分配慮しながら、死刑に反対し廃止する議論を展開しています。その論拠は基本的に3点あります。私なりの言葉で表現すれば、第1に、冤罪があり得るからです。人間が裁判で判断する限り、事実の誤任はあり得ます。第2に、犯罪の結果について自己責任だけを問うことにムリがある可能性です。すなわち、死刑になる犯罪は、少なくとも日本では殺人だけであり、殺人といった重大犯罪に至る経緯については、加害者の生育環境などの考慮すべき事情があり、こういった事情を含めて犯罪の結果をすべて自己責任として負わせることに対する疑問です。第3に、基本的人権との関係で、自然人を殺すということの是非です。著者の主張によれば、人間としての存在を否定されることは絶対的にあるべきではなく、「xxの犯罪を犯した場合」といった相対的な基準で人間存在を抹消されることは許容できない、ということです。私は、ほぼほぼ、この著者の見方に賛成であり、死刑は廃止されるべきであると考えています。ただ、経験はありませんし、あまり考えたくもないですが、もしも、私の身近で大切に考えている人が、殺人事件の被害者として殺された場合、すなわち、私が被害者の遺族となった場合、いかなる心情に達するか、という点では、この死刑反対論を変更しない、という万全の自信があるわけではありません。その点はビミョーなところです。そして、講演録という観点からはムリあるものの、巻末の資料として世界各国での死刑制度の導入につて取りまとめてあります。どうして、世界の多くの国では死刑制度がないのか、についても私は知りたい気がします。最後に、さらに外れた感想で、本書からは完全にスコープ外となりますが、人が死ぬ、ないし、殺されるケース、しかも大量に死者が出るケースとしては戦争があります。戦争については、死刑以上に、というか、死刑と比較するのが論外であるくらいに、絶対に反対と私は考えています。おそらく、死刑存置論者でも、戦争だけは反対、という人が多いのではないか、と私は考えています。日本国憲法第9条はこれを体現している、と考えるべきです。

photo


次に、ミチオ・カク『神の方程式』(NHK出版)です。著者は、米国の物理学研究者であり、統一理論の有力候補であるひも理論の専門家であるとともに、ポピュラー・サイエンス・ライターとしても何冊かの科学書を出版しています。英語の原題は The God Equation であり、2021年の出版です。ということで、タイトル通りに、物理学の統一理論を物理学史もひも解きながら一般向けに判りやすく解説しています。ただ、統一理論だけでなく、その基礎をなす系の対称性にも焦点が当てられています。西洋の古典古代であるギリシア・ローマから始まる物理学史ですが、もちろん、主としてニュートンの古典力学から始まり、マクスウェルの電磁気学、アインシュタインの相対性理論、さらに量子力学などなど、専門外の私でも名前を聞いたことがある理論が並びます。そして、それらを統一する理論の筆頭としてあげられているのが10次元のひも理論です。宇宙の始まりとされるビッグバン、素粒子やブラックホールとワームホール、あるいは、未だに正体不明なダークエネルギーやダークマター、さらには、宇宙の始まりのビッグバンと最後の姿はどうなるのか、などなど、興味は尽きませんが、ともかく難解です。本書でも前半部分はニュートンやアインシュタインなど、知っている名前が並んで理解が進みますが、おそらく、私だけではなく、量子力学あたりから難解さが増します。ここが経済学とは違うところです。経済や経済学の場合、通常のビジネスパーソンであれば、経済活動に常時接していますし、そうでなくても、お金を払って買い物をするのは小学生でも体験します。しかし、物理学については日常の生活では意識することはありません。ただ、それだけにこういった専門書や教養書で読書する意義はあります。最後に、本書で指摘されている重要ポイントのひとつは、物理学の発展と経済活動が密接に関係しているということです。ニュートン力学の完成とともに産業革命の基礎が築かれ、ファラデーとマクスウェルによって電気力と磁気力をの研究が進むと電気の革命が幕を開け、アインシュタインの相対性理論や量子力学の発展から現在進行中のパソコンをはじめとするコンピュータや通信技術の革新が始まった、などが示されていて、ひょっとしたら、本書でいうところの「神の方程式」によって統一理論が解明されれば、またまた経済活動も新たな段階に進むのかもしれません。

photo


最後に、週刊文春[編]『少女漫画家「家」の履歴書』(文春新書)です。『週刊文春』に「新・家の履歴書」という連載があるらしいのですが、2004年から2021年までに掲載された連載の中から、少女漫画の黄金期である1970年代までにデビューした漫画家の「家」に関する記事を取りまとめています。もちろん、タイトル通りに「家」の履歴書をメインにしつつも、幼いころからの半生を振り返り、家とともに執筆していた漫画を振り返る形になっています。収録されているのは12人であり、掲載順に、水野英子、青池保子、一条ゆかり、美内すずえ、庄司陽子、山岸凉子、木原敏江、有吉京子、くらもちふさこ、魔夜峰央、池野恋、いくえみ綾となっています。ついつ、敬称略にしてしまいましたが、私なんかからすれば、それぞれに「先生」をつけたくなるような大御所ばかりです。魔夜峰央先生を除いてすべて女性であり、それなりのご年配の方々です。スポットを当てている「家」については、漫画家になる前に家族と暮らしていた家の場合もありますし、漫画家として油が乗り切っていて名作をモノにしていた時期の家、あるいは、現在住んでいる家、といったいくつかのバリエーションがあり、一定していません。しかし、漫画家ですので、間取りや何やをイラストで間取り図として、とても判りやすく美しく示してくれていて、その当時の生活や作品執筆作業などについて想像力をかき立てられます。少女漫画家に限らず、漫画家の「家」で有名なのは、何といっても、手塚治虫先生をはじめとするキラ星のような漫画家が住んでいた「トキワ荘」でしょうが、少女漫画家に限定しても萩尾望都先生と竹宮惠子先生が暮らしていた「大泉サロン」も有名です。収録された12人の中では水野英子先生が「トキワ荘」に住んでいたことがあるそうで、「トキワ荘にいるだけで絵が月ごとに上達しました」ということだそうです。そうかもしれません。単なる住まいとしてだけではなく、漫画執筆の作業、集合住宅での同業漫画家との切磋琢磨、あるいは、アシスタントたちとの共同作業などについても、とてもいきいきと活写されています。私自身はそれほどではありませんが、少女漫画ファンには大いに訴えかけるものがありそうな気がします。
Entry No.7639  |  読書感想文の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑
 | BLOG TOP |  OLDER ≫