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2023年01月26日 (木) 19:30:00

2022年12月統計に見る企業向けサービス価格指数(SPPI)は早くも上昇幅が縮小し始めたか?

本日、日銀から昨年2022年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+1.5%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも+1.2%の上昇を示しています。サービス物価指数ですので、国際商品市況における石油をはじめとする資源はモノであって含まれていませんが、こういった資源価格の上昇がジワジワと波及している印象です。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、12月1.5%上昇
日銀が26日発表した2022年12月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は107.7と、前年同月比1.5%上昇した。22カ月連続のプラスとなり、2001年3月以来の高水準だった。22年の年間ベースの指数は106.9と2000年(109.2)以来の高水準となった。
値上げの動きがみられたタクシーや、年末に出稿需要が旺盛だったインターネット広告が指数を押し上げた。廃棄物処理では物流費上昇などの価格転嫁が進んだ。
一方、宿泊サービスでは観光振興策「全国旅行支援」が指数上昇を抑えた。日銀は全国旅行支援の影響がなければ、12月の前年比上昇幅は1.8%だったと推計する。
22年の年間ベースの前年比上昇幅は1.7%と、消費増税が影響した14年(2.6%)以来の高水準になった。日銀は「消費税(の影響)を除いたベースで仮にみると、1992年(1.9%)以来の伸びになると思う」とする。ロシアのウクライナ侵攻、新型コロナウイルスからの経済再開、コスト転嫁の動きなどが影響した。
調査対象となる146品目のうち、価格が前年同月比で上昇したのは93品目、下落したのは21品目だった。


コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。企業物価指数(PPI)とともに、企業向けサービス物価指数(SPPI)が着実に上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、日銀公表資料にはありませんが、景気後退期を示しています。

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上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率の2022年中の推移は、2022年6月に上昇率のピークである+2.1%をつけ、その後も、7月と9月は+2.0%を記録しましたが、10月+1.8%、11月+1.7%、そして、本日公表された12月統計では+1.5%と、ジワジワと上昇幅を縮小させ始めているように見えます。もちろん、前年同期比プラスは2年近い22か月の連続となっていますし、石油価格の影響の大きい国際運輸を除くコアSPPI上昇率は昨年2022年9~11月に3か月連続で+1.5%まで拡大した後、12月にようやく+1.3%に上昇幅を縮小させたに過ぎません。すなわち、上昇幅が縮小し始めたと判断するのは早計かもしれませんが、他方で、少なくとも上昇率がグングン加速するという段階は脱したといえそうです。しかも、上昇率は日銀の物価目標に届かない+1%台半ばですから、私の見方からすれば高止まりしているとすら表現しかねます。もう何度も指摘されている点ですが、基本的には、石油をはじめとする資源価格の上昇がサービス価格にも波及したコストプッシュが主な要因と考えるべきです。もちろん、ウクライナ危機に起因する資源高の影響に加えて、新興国や途上国での景気回復に伴う資源需要の拡大というディマンドプルの要因も無視できません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づく直近2022年12月統計のヘッドライン上昇率+1.5%への寄与度で見ると、機械修理や労働者派遣サービスなどの諸サービスが+0.43%、石油価格の影響が強い外航貨物輸送、国際航空貨物輸送、内航貨物輸送などの運輸・郵便が+0.41%、リース・レンタルが+0.39%、などとなっています。また、寄与度ではなく大類別の系列の前年同月比上昇率で見ても、特に、運輸・郵便が+2.5%の上昇となったのは、エネルギー価格の上昇が主因であると考えるべきです。ただし、この上昇率も11月の+3.1%からはいくぶん縮小しています。もちろん、資源価格のコストプッシュ以外にも、リース・レンタルの+5.2%、広告の+1.7%の上昇などは、それなりに景気に敏感な項目であり、需要の盛り上がりによるディマンドプルの要素も大いに含まれている、と私は受け止めています。ですので、エネルギーなどの資源価格のコストプッシュだけでなく、国内需要面からもサービス価格は上昇基調にあると考えていいように私は受け止めています。また、引用した記事の3パラめで言及されている全国旅行支援の影響を見ると、2022年11月統計では諸サービスの中の宿泊サービスが前年同月比で+8.8%の上昇を記録していますが、12月には一気に+0.9%となっています。引用した記事でもインプリシットに寄与度が▲1%程度あるとの推計結果が指摘されています。
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2023年01月25日 (水) 15:00:00

伸井太一・鎌田タベア『笑え! ドイツ民主共和国』(教育評論社)を生協の書店に注文する

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今日は雪が融けずにキャンパうには近づけなかったのですが、今週に入って、伸井太一・鎌田タベア『笑え! ドイツ民主共和国』(教育評論社)を生協の書店に注文しました。先週末の朝日新聞の書評欄で紹介されていました。出版社の宣伝文句によれば、ドイツ語原文があるので語学学習も出来る、という方はそれほど評価しなかったのですが、図版資料約200点の方は大いに気に入りました。研究費というわけにもいかないので、私費での購入です。
旧ソ連や東欧の共産主義諸国が雪崩を打って崩壊した1989年から1990年代前半といえば、我が国ではバブル経済が爛熟し、さらにバブルが崩壊し、その後の景気後退期で、私の勤務していた役所でも経済対策の策定などで大忙し、加えて、1993年の冷夏長雨でコメが不作になって輸入米をみんなで食べる、といった時期だったのを記憶している40~50歳以上の人も少なくないと思います。実は、同じころ、私は南米はチリの日本大使館で優雅な外交官生活を送っており、旧ソ連や東欧の共産主義体制に関するジョークはいくつか聞き及んでいます。例えば、チリのタクシーの多くは旧ソ連製のラダだったので、ラダに置き換えられていたのですが、もともとは、上の本書の表紙画像にある旧東ドイツ製の自動車であるトラバントに関するジョークで、以下のような趣旨の小ネタがありました。
ロバ:
こんにちは、自動車くん。
トラバント:
こんにちは、ロバくん。
ロバ:
おいおい、私は君のことを「自動車」って格上げして呼んでるんだよ。君も私のことを「ウマ」くらいにお世辞をいえないものかね?


まあ、旧ソ連製のラダにせよ、旧東ドイツ製のトラバントにせよ、ロバがウマでないのと同じように、自動車かどうか怪しい、というジョークです。このジョークが収録されているのかどうか、未読の段階ですので不明ですが、表紙画像にトラバントが入っていますので、少なくとも、トラバントに関するジョークは豊富に含まれていそうな気がします。

本書は、来週には入手できるのではないかと期待しています。そのうちに、読書感想文をポストしたいと思います。未読ですので「読書感想文のブログ」に分類するのは心苦しく、「海外生活の思い出のブログ」に分類しておきます。
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2023年01月24日 (火) 21:00:00

いろいろあって大雪の中を2時間かけて帰宅する

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10年に1度の寒波による大雪の中、いつもは20分ほどの道のりを2時間かけてバスで大学から帰宅しました。上の写真は、我が家の近くの駐車場と道路です。疲れました。
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2023年01月24日 (火) 11:30:00

帝国データバンク「金利上昇による企業への影響アンケート」の調査結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ながら、ちょうど1週間前の1月17日に帝国データバンクから「金利上昇による企業への影響アンケート」の調査結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を3点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 今後金利が上昇した場合、自社の事業に「プラスの影響の方が大きい」と見込む企業は8.5%にとどまった一方、「マイナスの影響の方が大きい」は40.0%で最も高くなった。他方、「どちらとも言えない(プラスとマイナス両方で相殺)」としている企業は31.4%だった
  2. 「大企業」において、「マイナスの影響の方が大きい」とした企業は全体より4.4ポイント高くなった。業界別では『不動産』における「マイナスの影響の方が大きい」割合は54.8%と突出して高く、全体を大幅に上回った
  3. 金利上昇で見込んでいる具体的な影響について、「借入金の支払利息が増える【マイナスの影響】」が56.5%でトップ。次いで、「輸入価格の低下(物価高騰の抑制)【プラスの影響】」が38.3%、「利息が高くなり資金調達しづらくなる【マイナスの影響】」が30.7%で続いた


私自身は、金利上昇は企業にとってはメリットは小さい、というか、デメリットのほうが大きいと考えているのですが、私の想像にマッチした結果が示されていると思います。ということで、リポートからいくつか図表を引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから 金利上昇による事業への影響 を問うた結果です。大雑把に、マイナスの影響が40%、プラスの影響が10%、プラス・マイナスで相殺が30%、となっています。当然、金利上昇が金利負担を増加させるので、マイナスの影響はそこから生じます。他方で、相殺というのは、このマイナスの影響を為替の動向が打ち消すからだという回答が多いようです。プラスの影響は為替の円高化による輸入価格の低下や為替安定が上げられていますが、何と、金融政策の正常化を上げる企業もあります。地銀や信金・信組なのではないかという気はします。というのは、利ざやの回復が収益につながる、といった趣旨の信用金庫・同連合会の回答が示されているからです。

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続いて、上のグラフはリポートから 金利上昇による事業へのマイナスの影響 を規模別と主要業界別に問うた結果です。グラフの順は逆になりますが、右側の主要業界別では、借入れの大きな業界が並んでいるのではないかと私は受け止めています。左側のグラフでやや不思議なのは、規模別で大企業ほど金利上昇のマイナスの影響が大きいと回答している点です。金利負担という点から考えれば、規模の小さい企業ほどマイナスの影響が大きいと、私は単純に考えていたのですが、どうも違うようです。私の勝手な解釈ですが、一般的な論調が金利引上げ、というか、我が国でも先進各国にならって金融引締め、という方向に傾いているので、世間一般の議論を受け入れている割合を示している可能性があるかもしれない、と考えないでもありません。まあ、違っているかもしれません。謎です。

伝統的な経済学では、マクロ経済を構成する4主体のそれぞれの貯蓄投資バランスは、政府と海外がバランス、家計が貯蓄超過、企業が投資超過、と考えられてきました。家計の貯蓄を企業が投資するわけです。でも、バブル経済崩壊後の日本では企業までが貯蓄超過になって、その分、政府が大赤字になっています。ですから、ひょとしたら、貯蓄超過の企業において金利受払いはネットで収益をもたらしている可能性がある、のかもしれません。
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2023年01月23日 (月) 15:00:00

ニッセイ基礎研究所「重要なSDGsゴールは何?」を読む

先週金曜日の1月20日に、ニッセイ基礎研究所から「重要なSDGsゴールは何?」と題するリポートが明らかにされています。私は木蓮の「ミレニアム開発目標(MDGs)」のころからフォローしているのですが、確かに、SDGsになってゴールが17、ターゲットが169と発散気味になったと考えないでもありません。ということで、なかなかに、興味深い論点を提供していますので簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、ニッセイ基礎研究所のサイトから 経済主体別、重要視するゴールのランキング を引用すると上の通りです。私は、実は、私のような開発経済学にそれなりの興味を持つエコノミストでなければ、貧困や飢餓については日本国民一般の関心はそう高くないと考えていたもので、個人のレベルで貧困が2番めにランクされているとは考えも及びませんでした。そうなんでしょうか。それとも、リポート執筆者の勘違いかなにかの思い込みがあるのでしょうか。よく判りません。ただ、気候変動=地球温暖化については、それなりに日本国民の意識が高い点は理解していたつもりです。もっとも、地方公共団体ではそれほどではない、という事実は知りませんでした。
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2023年01月22日 (日) 15:00:00

今シーズンの花粉の飛散やいかに?

先週水曜日の1月18日にウェザーニュースから「花粉飛散予想」が、また、木曜日の19日には日本気象協会から「2023年 春の花粉飛散予測」が、それぞれ明らかにされています。いずれの予報でも、関西地方の花粉の飛び始めは2月中下旬であり、飛散量は例年と比べても、昨シーズンと比べても多くなる、との予想となっています。

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どちらでもいいのですが、ひとまず、日本気象協会のサイトから 飛びはじめ予想 の画像を引用すると上の通りです。関西に引っ越す前の2020年シーズン、あるいはそのずっと前から感じていたことなのですが、東京って九州とそう変わりなく飛散開始の時期が早くなっています。関西とは1週間から10日くらいのズレがあります。おそらく、私の住んでいる琵琶湖沿岸地域では、大阪よりもさらに数日くらいのラグがあって飛散が始まるのではないかと、直感的に想像しています。

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続いて、同じく日本気象協会のサイトから 花粉の飛ぶ量は? の画像を引用すると上の通りです。上が例年比、下が前シーズン比です。昨シーズンはすでに忘却の彼方なのですが、今シーズンは例年と比べても、昨シーズンと比べても、関西ではかなり花粉が多くなりそうな予想となっています。私はとてもヘビーな花粉症ですので、「花粉」と聞くだけで、とても憂鬱です。

最後に、我が家で購読している朝日新聞をはじめとする各種報道で新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染症法上の分類について、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」への変更を検討を開始したと報じられています。私は、実は、COVID-19前から花粉症がヘビーかつ通年性なもので、10年以上にわたって1年中マスクを着用していました。この観戦方上の分類変更により、少し前のマスク着用に対する同調圧力の真逆のマスク不着用の同調圧力が発生するのではないか、と危惧しています。日本社会は同調圧力が強いと評価されていて、多様性の受容に関して不寛容な部分も少なくありません。マスクについては、何とかならないものかと今から考え始めています。
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2023年01月21日 (土) 09:00:00

今週の読書は経済書のほかに新書4冊も含めて計6冊

今週の読書は以下の通りです。
まず、ロベール・ボワイエ『経済学の認識論』(藤原書店)では、古典派ないし新古典派への回帰を図るネオリベな経済理論を強く批判しています。井上智洋『メタバースと経済の未来』(文春新書)は、メタバースの基本を解説しつつ、メタバースで供給・消費されるデジタル財からなる経済について解説を試みています。中嶋洋平『社会主義前夜』(ちくま新書)では、いわゆる空想的社会主義のサン=シモン、オーウェン、フーリエの3人の思想や実践に焦点を当てています。牧野雅彦『ハンナ・アレント』(講談社現代新書)は、ナチスをはじめとする全体主義の恐怖を取り上げています。鈴木浩三『地形で見る江戸・東京発展史』(ちくま新書)は、徳川期から昭和期1970-80年代くらいまでの江戸・東京の発展史を地形にも注目しつつ跡付けています。辺見じゅん・林民夫『ラーゲリより愛を込めて』(文春文庫)は、終戦直後の過酷なシベリアでの捕虜収容所で未来への希望を失わなかった山本一等兵の物語です。
ということで、今年の新刊書読書は今週の6冊を含めて計17冊になります。
どうでもいいことながら、最近、ミステリを読んでいない気がします。ようやく、図書館の予約の順番が回ってきましたので、新刊ではないながらディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)を借りることができました。映画化もされ、話題になったミステリですので、早速、読んでみたいと思っています。

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まず、ロベール・ボワイエ『経済学の認識論』(藤原書店)です。著者は、フランスのエコノミストであり、レギュラシオン理論の第1人者でもあります。フランス語の現代は Une discipline sans réflexivité peut-elle être une science? であり、2021年の出版です。フランス語の現代を直訳すれば「再帰的反省なき学問は科学たり得るのか?」という意味だと思います。キーワードは「再帰的反省」であり、フランス語では "réflexivité" あるいは、英語にすれば "reflexivity" ということですから、英語の "recursivity" や "recursion" ではありません。訳注(p.15)では「研究対象に対する研究主体を客観的に反省すること」とされています。ただ、こういった議論は別にして、本書では20世紀終わりころから、そして、典型的には2008年のリーマン証券破綻からの金融危機、さらに、2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックにより混乱まで、レギュラシオン学派ならざる主流派経済学、特に、新自由主義=ネオリベな実物的景気循環理論(リアル・ビジネス・サイクル=RBC理論)の破綻について論じています。もちろん、その解決策がレギュラシオン理論、ということになります。ボワイエ教授の考えでは、本書に限らず他の著作などでも、理論は歴史の娘であって合理性の娘ではない、という点が強調されます。ケインジアンないしニュー・ケインジアンの経済理論を「ミクロ的基礎づけ」の観点から批判し、古典派ないし新古典派への回帰を図る経済理論を強く批判しています。特に、私が強く同意するのは経済学の数学化に関する第5章から第6章の議論であり、何度か私も主張しているように、エコノミストが用いている経済学のモデルは現実に合わせて修正されるのではなく、逆に、モデルに適合するように政策的に現実の経済社会が古典派の世界に近づけられている危惧が本書でも指摘されています。もちろん、どうしてエコノミストがそのようなインセンティブを持つかといえば、エコノミストのヒエラルキーがあるわけで、私のように上昇志向を持たない例外は別にして、トップ・ジャーナルへの掲載を志向すれば、いろいろと制約条件が重なるわけです。経済学が専門職業化し、さらに学問分野が細分化され、個々のエコノミストの視野狭窄が始まると、経済学が現実の経済社会の問題を解決する能力が低下しかねない、というのはその通りで、現実に生じていいるといえます。そして、経済学をもとから考え直すべき基礎は歴史である、と著者は強く主張します。私はこの点にも合意します。経済学があらぬ方向に向かってしまった今となっては、さまざまな観点からの経済学の再生めいたアクションが必要なのかもしれません。

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次に、井上智洋『メタバースと経済の未来』(文春新書)です。著者は、駒澤大学のエコノミストです。冒頭にタイトルとなっているメタバースの簡単な解説をした後、本書の主張はノッケから、将来の経済がスマート社会とメタバースに分岐する、というところから始まります。すなわち、どちらもAIやデジタル技術が大いに活用されるわけですが、現実社会がAIの活用などによって純粋機械経済に近づくのがスマート社会であり、後者のメタバースとは、大雑把に、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)が進化したものであり、通貨も仮想、あるいは、暗号通貨だったり、アバターで活動して生身の人間の所在が問われないわけです。もちろん、本書は現実社会の空間がスマート化していくことはスコープ外であって、後者の仮想・拡張空間の進化型の経済活動を対象にしています。ですから、メタバースにおける経済活動は純粋デジタル経済になります。そのココロは、純粋なデジタルな財とサービスだけが供給される経済、ということになります。実体経済のスマート化が進み、デジタルでない実体あるモノやサービスはスマート社会から供給され、メタバースで供給・消費されるデジタル財は実体のあるモノやサービスではありませんから、資本財は不要で、限界費用はコピーですからゼロになり、差別化された財の供給という意味で独占的競争が支配的になります。ですから、希少性に従って市場で価格付がなされ、その価格に応じて資源配分されれば効率的、という経済学ではなくなります。限界費用がゼロで供給が無限、というか、経済学的に正しくいえば、希少性がゼロになります。私のような単純エコノミストがパッと思い付きで考えれば、資本主義社会の次に来る社会主義を飛び越して共産主義になるようなものです。ですから、本書でも真剣に資本主義がどう変わるかを第5章で議論しています。現在の企業に代わって、分散型自立組織=DAO (Decentralized Autonomous Organization)が経済活動の中心になれば、資本家/経営者/労働者といった階級分化はなくなり、デジタル通貨により銀行支配が大きく縮小する可能性が示唆されます。同時に、格差についても、明らかに、地域格差は縮小、というか、消滅の方向に向かいます。気候変動=地球温暖化も緩和される可能性が示唆されます。そして、本書の最後の結論は人類は肉体を棄てる、というものです。ここまでくると、まるっきりSFチックなものですから、眉唾で懐疑的な見方が増えそうな気もします。この結論は別としても、メタバースないしメタバース経済に関する入門書としては適切ではないか、と私は考えます。最後の最後に、人類が肉体を棄てるかどうかについて、光瀬龍の原作を基にした萩尾望都の漫画『百億の昼と千億の夜』では、A級市民はコンパートメントが供されて、実体の肉体は惰眠するだけの存在になっていたように私は記憶しています。まあ、やや記憶が不確かなのは認めます。

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次に、中嶋洋平『社会主義前夜』(ちくま新書)です。著者は、同志社大学の研究者であり、専門は政治学です。本書でいうところの「社会主義」は、理論とか運動場の社会主義であって、しかも、その前夜ですのでマルクス主義的な科学的社会主義ではなく、サン=シモン、オーウェン、フーリエの3人を軸とする空想的社会主義について、経済社会の時代背景などとともに振り返っています。すなわち、資本主義社会黎明期としての19世紀初頭から半ばにかけて、フランス革命後の政治的、あるいは、産業革命期に不安定だった経済社会、資本家と労働者のはなはだしい貧富の格差、貧困層の劣悪な労働・生活環境といった問題に取り組んだ理論・思想・運動としての社会主義の誕生の時期にスポットを当てています。後には、暴力革命による体制変革を目指すマルクスとエンゲルスによって空想的社会主義と名付けられ、まあ、マルクス=エンゲルスの科学的社会主義よりもやや質落ちの印象が与えられましたが、オーウェンが米国で始めた労働協同村ニューハモニーとかの実践も本書では取り上げています。ただ、空想的社会主義のその後の歴史的な発展は本書ではややスコープ外とされているようで、英国ではフェビアン協会から労働党が組織されたり、あるいは、欧州各国で革命的な共産主義ではなく改良主義的な社会民主主義の正統が政権に参加したりといった活動は本書では取り上げられていません。もちろん、マルクス=エンゲルスによる科学的社会主義が現在の共産主義につながっていることは明確なのですが、空想的社会主義が社会民主主義につながっているのかどうかは私はよく判りません。ただ、病気の治療なんかもそうですが、経済社会の問題解決に当っては対症療法というのも決して無視してはいけない、と私は考えています。例えば、人類はほぼほぼ天然痘を地球上から駆逐したといわれていますし、こういった病気の克服というのは、もちろん、ある意味での最終目標なのかもしれませんが、熱を下げたり咳を止めたり痛みを緩和したりといった対症療法も必要な場合は少なくないと考えます。また、マルクス=エンゲルス的な社会主義/共産主義がソ連東欧で失敗したわけですし、対症療法として、あるいは、空想的とはいえ、こういったサン=シモン、オーウェン、フーリエの3人が果たした役割というのは決して小さくない、と私は考えています。

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次に、牧野雅彦『ハンナ・アレント』(講談社現代新書)です。著者は、広島大学名誉教授で専門は政治学や政治思想史です。タイトル通りに、ハンナ・アレント女史を反全体主義という観点から取り上げています。ハンナ・アレントといえば、アイヒマン裁判の傍聴から「悪の凡庸さ」を指摘した、くらいしか情報を持たない私のような専門外のエコノミストはちゃんと認識していなかったのですが、権威主義体制と暴政(専制)と全体主義を区別して、判りやすい概念図としてpp.40-41に示してあります。暴政(専制)は1人の暴君がその他すべてを等し並に支配するのでやや判りやすくなっています。他方で、権威主義では超越的な指導者から取り巻きがヒエラルキー=階層構造を成している一方で、全体主義では指導者から同心円的な構造をなしていて階層構造を成していない、という違いがあるそうです。そして、というか、なぜなら、ハンナ・アレントが喝破したように全体主義とは運動である、と考えるべきだからです。もちろん、ハンナ・アレントの全体主義はほぼほぼナチス/ヒトラーと同じと考えるべきですが、当然ながら、イタリアのファシズムや日本の戦前体制も同様の特徴を兼ね備えています。他方で、本書では反ユダヤ主義や全体主義について、かなり歴史的に古くまで概観しているのはいいとしても、同時に、特に、反ユダヤ主義的行為、というか、ユダヤ人虐殺が権威主義的なパーソナリティに基づいて実行されている点は軽く扱われているような気がします。トイウノハ、アイヒマン的にユダヤ人虐殺に対して何らの人道的な痛みも感じることなく、いわば「上司からの命令に基づく業務遂行」のような形で実行している点は私はそれなりに重要な点だと考えています。のちの、ジンバルドー教授によるスタンフォード監獄実験の結果と同じで、役割を割り振られれば良心に反する行為でも実行されかねない危うさは指摘してもしすぎることはないと思います。他方で、私のようなエコノミストの目からすれば、反ユダヤ主義がナチスの残虐行為の源泉とみなされるのも、やや危うさを感じます。ケインズ卿が「平和の経済的帰結」で指摘したような過酷な賠償という要因も忘れるべきではないからです。最後に、私の読み方が浅かったからかもしれませんが、やや読後感がよくなかったのは、どこまでがハンナ・アレントの考えで、どこからが著者自身の考えかが、必ずしも判然とはしなかった気がします。一般向けのコンパクトな新書ですから、学術論文的に引用や参考文献をどこまで示すかは議論あるところですが、少なくとも、ハンナ・アレントの主張と、それを基にした著者自身の考えは、もう少し判りやすく記述してほしかった気がします。

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次に、鈴木浩三『地形で見る江戸・東京発展史』(ちくま新書)(ちくま新書)です。著者は、東京都水道局ご勤務の公務員のようです。ただ、おそらくは技術者ではなく、ビジネス関係の大学のご卒業です。ということで、タイトルから明らかなのですが、近世徳川期から現代、大雑把に昭和の1970-80年代くらいまでの江戸・東京の発展を跡づけています。ただし、タイトルのように地形で跡づけているのは江戸期だけで、明治期以降の近現代はあまり地形には関係なく、というか、科学技術の進歩によって地形の制約が薄れた、ということなのだろうと思いますが、結果的に地形とは関係薄い東京の発展、ということになっています。お仕事柄なのかどうか、江戸期の上水道に関してはとても詳細な解説でした。でも、地形に即しているとはいえ、やや土木技術的な観点が多くて、専門外の私には判りにくかった気がします。他方で、社会科学的な観点から江戸・東京の発展史について、背景も含めて、判りやすく、かつ、多くの読者が興味を持てるように語られているわけでもないわけで、私の目から見て、やや辛い評価なのかもしれませんが、歴史書や事業史といった既存の参考文献をひもといて事実関係を羅列したに近い印象でした。まあ、私のように、浅草に使い下町から城北地区、世田谷区や杉並区といった山の手の住宅街、さらには多摩地区までいろいろと東京の中でも移り住んで、それなりの土地勘ある読者にはいいような気もしますが、それ以外の東京についての情報が少ない読者には大きな興味を持てる内容とは思えませんでした。私は年に何冊か「京都本」を読みますし、おそらく、それほど京都に土地勘ない読者にも興味を持てるように工夫されている感覚が判るのですが、本書については東京在住者の、しかも、読解力が一定の水準に達した、もしくは、マニア的な読者がターゲットなのかもしれません。でもまあ、それだけ東京や首都圏に人口が集中しているわけなので、読者も多数に上るのかもしれません。

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最後に、辺見じゅん・林民夫『ラーゲリより愛を込めて』(文春文庫)です。本書は映画のノベライズ小説です。著者は、映画の原作となった『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』の作者の小説家と映画の監督です。表紙画像にあるように林民夫監督作品として、二宮和也と北川景子の主演で昨年2022年12月に封切られています。私は不勉強にして映画は見ていません。まあ、何と申しましょうかで、映画は見なくてノベライズ小説を読んでおく、というのは、『すずめの戸締まり』と同じパターンだったりします。それはさておき、まず、「ラーゲリ」とはロシア語で強制収容所を意味します。そうです。この小説は、終戦直前に中国の旧満州から一家が帰国しようとする際に、家族と離れてシベリアの強制収容所に捕虜として抑留された山本幡男一等兵の物語、というか、映画のノベライズです。以下、ストーリーを追いますので、結末までネタバレと考えられる部分を含み、この先は自己責任で読み進むことをオススメします。ということで、十分な食事や休養も与えられずに、まったく国際法や基本的人権を無視されたまま強制労働に従事させられ、栄養失調や過酷な労働で病気や怪我をした上に、十分な治療もなされずに亡くなったり、あるいは、自ら命を断ったりする収容者が続出する中で、主人公の山本幡男一等兵は未来への希望、すなわち、家族の待つ日本への帰国の希望を持ち続け、人間らしい尊厳を保ちつつ、日々を過ごします。こういった人柄が収容所の周囲の人々にも伝播し、少しずつ収容者の気持ちにも変化が見られます。しかし、山本幡男一等兵を病魔が遅い十分な治療を受けられずに亡くなります。その直前に、長い長い遺書を書くわけですが、こういった遺書は収容所では許されず没収されるリスクがあることから、宛先別、すなわち、母宛、妻宛、子供達宛に分割して周囲の友人が記憶し、待ちに待った帰国の際の船中で文書に書き残し、帰国後に遺族を探し出して遺書を届ける、というストーリーです。私は感激しながらも涙なしで読み終わりましたが、読者、あるいは、映画の鑑賞者によっては滂沱の涙を流す人がかなりいそうな気がします。たぶん、泣きたい人にはオススメでしょう。
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2023年01月20日 (金) 12:00:00

とうとう+4%に達した2022年12月の消費者物価指数(CPI)上昇率をどう見るか?

本日、総務省統計局から昨年2022年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+4.0%を記録しています。報道によれば、第2次石油危機の影響がまだ残っていた1981年12月の+4.0%以来、41年ぶりの高い上昇率だそうです。ヘッドライン上昇率も+4.0%に達している一方で、エネルギー価格の高騰に伴うプラスですので、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+3.0%にとどまっています。というか、エネルギーと生鮮食品を除いてもインフレ目標の+2%を超えています、というべきかもしれません。まず、日経新聞のサイトから統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、22年12月4.0%上昇 41年ぶり上げ幅
総務省が20日発表した2022年12月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が104.1となり、前年同月比で4.0%上昇した。第2次石油危機の影響で物価が上がっていた1981年12月(4.0%)以来、41年ぶりの上昇率となった。22年通年は生鮮食品を除く総合で102.1となり、前年比2.3%上がった。
上昇は22年12月まで16カ月連続になった。4.0%という伸び率は消費税の導入時や税率引き上げ時を上回り、日銀の物価上昇目標2%の2倍に達した。事前の市場予想におおむね沿う数字だった。
通年での上昇は19年(0.6%)以来3年ぶり。2%を超えるのは、消費税率を上げた14年(2.6%)を除くと1992年(2.2%)以来。消費増税時を除いた比較で、2022年の上昇率2.3%は1991年(2.9%)以来31年ぶりの高い水準になった。
2022年12月は調査対象の522品目のうち、前年同月より上がったのは約8割に相当する417品目。変化なしは47、下がったのが58だった。上昇した品目は11月の412から増加した。
生鮮食品を含む総合指数は4.0%上がった。1991年1月(4.0%)以来、31年11カ月ぶりの上昇率だった。生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数は3.0%上がり、消費増税時を超えて91年8月(3.0%)以来31年4カ月ぶりの水準となった。
エネルギーや食料など生活に欠かせない品目で値上がりが続いている。品目別に上昇率を見ると、エネルギー関連が15.2%で全体を押し上げた。11月の13.3%を上回り、15カ月連続で2桁の伸び。都市ガス代は33.3%、電気代は21.3%上がった。
生鮮を除く食料の上昇率は7.4%で、76年8月(7.6%)以来46年4カ月ぶりの水準に達した。食料全体は7.0%だった。鳥インフルエンザ拡大の影響もあって鶏卵が7.8%上昇した。食用油が33.6%、炭酸飲料は15.9%、弁当や冷凍食品といった調理食品は7.3%伸びた。外食も5.8%と高い。
家庭用耐久財は10.8%上がった。原材料や輸送価格の高騰でルームエアコン(13.0%)などが値上がりしている。
日本経済研究センターが16日にまとめた民間エコノミスト36人の予測平均では、2023年は物価上昇の勢いが鈍る。生鮮食品を除く消費者物価上昇率は23年1~3月期に前年同期比で2.71%になり、7~9月期(1.70%)に1%台になるという。
主要国の生鮮食品を含む総合指数は、22年12月の前年同月比の伸び率で日本を上回る。米国は6.5%、ユーロ圏は9.2%、英国は10.5%だった。


なにせ今一番の注目の経済指標ですのでやたらと長くなりましたが、いつものように、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+4.0%の予想でしたので、ジャストミートしました。もちろん、物価上昇の大きな要因は、基本的に、資源とエネルギー価格の上昇による供給面からの物価上昇と考えるべきですが、もちろん、円安による輸入物価の上昇も一因です。すなわち、コストプッシュによるインフレであり、日銀による緩和的な金融政策による需要面からのディマンドプルによる物価上昇ではありません。CPIに占めるエネルギーのウェイトは1万分の712なのですが、12月統計におけるエネルギーの前年同月比上昇率は+15.2%に達していて、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度は+1.21%あります。このエネルギーの寄与度+1.21%のうち、電気代が+0.78%と過半を占め、次いで、都市ガス代の+0.33%などとなっています。加えて、生鮮食品を除く食料の上昇率も高くなってきていて、10月統計+5.9%、11月統計+6.8%に続いて、12月統計では+7.4%の上昇を示しており、ウェイトがエネルギーの3倍超の1万分の2230ありますので影響も大きく、+1.67%の寄与となっています。統計からしても、値上がりの主役はエネルギーから食料に移ったと考えるべきです。12月統計の生鮮食品を除く食料の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度を少し細かく中分類で見ると、+17.9%の上昇を示したハンバーガーをはじめとする外食が+5.8%の上昇率で+0.27%の寄与度、+10.4%の上昇を示したからあげをはじめとする調理食品が+7.3%で+0.26%の寄与度、+14.1%の上昇をを示したあんパンをはじめとする穀類が+9.6%の上昇率で+0.20%の寄与度、などとなっています。私も週に2~3回くらいは近くのスーパーで身近な商品の価格を見て回りますが、ある程度は生活実感にも合っているのではないかと思います。繰り返しになりますが、ヘッドライン上昇率とコアCPI上昇率は12月統計で、どちらも+4%ですから、エネルギーの寄与度が+1.21%、生鮮食品を除く食料による寄与度が+1.67%となっていますから、これだけで+3%近い寄与となります。それ以外の寄与は+1%強なわけです。
ただし、現在のインフレ目標+2%を超える物価上昇率は長続きしません。すなわち、おそらく、今年2023年1月統計で+4%が続く可能性は十分あるとしても、その後、急速にインフレ率は縮小します。引用した記事にもある通り、日本経済研究センター(JCER)によるEPSフォーキャストでは今年2023年1~3月期は+2.71%になり、2023年7~9月期には道銀のインフレ目標を下回って+1.70%まで上昇幅を縮小させると予想されています。他にも、ニッセイ基礎研究所のリポートによれば、「コアCPIは23年夏場以降に1%台後半まで伸びが鈍化すると予想している」と日本経済研究センターのESPフォーキャストと同じ見方をしています。政府による物価高対策の影響が大きいといえます。
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2023年01月19日 (木) 23:30:00

千早茜『しろがねの葉』直木賞受賞おめでとうございます

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千早茜『しろがねの葉』(新潮社)、直木賞受賞おめでとうございます。作者は、我が勤務校の立命館大学OGだそうです。私は受賞直前に読んでおきました。
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2023年01月19日 (木) 15:30:00

2022年12月統計に見る貿易赤字はそろそろ反転し縮小に転じたか?

本日、財務省から昨年2022年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列で見て、輸出額が+11.5%増の8兆7872億円に対して、輸入額は+20.6%増の10兆2357億円、差引き貿易収支は▲1兆4484億円の赤字となり、昨年2021年8月から17か月連続で貿易赤字を計上しています。しかも、2022年通年の貿易赤字は▲19兆9713億円に上り、統計として比較可能な1979年以降で最大の年間貿易赤字だそうです。まず、日経新聞のサイトから記事の最後の2パラだけ引用すると以下の通りです。というのは、記事の多くの部分が2022年通年の統計で占められていますので、12月統計に言及している最後の2パラだけを引用します。

貿易赤字最大の19.9兆円 22年、円安と資源高響く
22年12月単月の貿易収支は1兆4484億円の赤字だった。赤字は17カ月連続で、12月としては最大の赤字となった。輸入は前年同月比20.6%増の10兆2357億円、輸出は11.5%増の8兆7872億円だった。石炭や原油などの輸入額が膨らみ、大幅な赤字が続いた。
12月は中国向けの輸出が1兆6178億円と前年同月比6.2%減った。減少は7カ月ぶり。自動車や自動車部品が減った。新型コロナウイルスの感染拡大などが影響したとみられる。


包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▱兆6800億円あまりの貿易赤字が見込まれていて、予想レンジの貿易赤字の下限は▲2兆円あまりでしたので、実績の▲1.4兆円あまりの貿易赤字は大きなサプライズない印象です。加えて、引用した記事にもあるように、季節調整していない原系列の統計で見て、貿易赤字は昨年2021年8月から今年2022年11月までの17か月連続なんですが、上のグラフに見られるように、季節調整済みの系列で見ると、貿易赤字は昨年2021年4月から始まっていて、従って、21か月連続となります。しかも、直近時点では貿易赤字額がかなり大きいのが見て取れます。季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、グラフから明らかな通り、輸出額もそこそこ伸びているのですが、輸入が輸出を上回る水準で推移しているのが貿易赤字の原因です。ただし、ここ数ヶ月ではさすがに輸入の伸びは反転した可能性すらあり、貿易赤字がこのまま一本調子で拡大するとは考えにくく、むしろ、昨年2022年後半に毎月▲2兆円超の貿易赤字を記録していたころから赤字幅は着実に縮小しています。円安も一時に比べて落ち着きを取り戻しているのは多くのエコノミストの意見が一致するところです。ですので、私の主張は従来から変わりなく、エネルギーや資源価格の上昇に伴う輸入額の増加に起因する貿易赤字であり、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易赤字や経常赤字は何ら悲観する必要はない、と考えています。
11月の貿易統計を品目別に少し詳しく見ると、まず、輸入については、国際商品市況での石油価格の上昇から原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が大きく増加しています。しかし、前年同月比の伸び率は大きく縮小しました。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで+1.2%増に過ぎないのですが、金額ベースでは+41.4%増と円安を含む価格要因によって大きく水増しされています。でも、昨年2022年10月統計までは原油及び粗油の輸入金額はほぼほぼ倍増でしたので、伸びは大きく鈍化してきている印象です。LNGも同じで数量ベースでは▲13.8%減であるにかかわらず、金額ベースでは+36.8%増となっています。加えて、食料品のうちの穀物類も数量ベースのトン数では+2.3%増に過ぎませんが、金額ベースでは+33.2%増とお支払いがかさんでいます。また、ワクチンを含む医薬品も増加しています。すなわち、前年同月比で見て数量ベースで+26.5%増、金額ベースではこれが膨らんで+50.9%増を記録しています。でも、当然ながら、貿易赤字を抑制するために、ワクチン輸入を制限しようという意見は少数派ではないか、と私は考えています。目を輸出に転じると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で数量ベースの輸出台数は▲8.2%減ながら、輸出金額では+16.2%増と伸びています。また、一般機械+23.9%増、電気機器+12.4%増と、我が国リーディング・インダストリーはそこそこ高い輸出の伸びを示しています。ですから、繰り返しになりますが、輸出額の伸びを上回る輸入額の伸び、中でも価格要因が貿易赤字の原因であり、私はむしろ、少ない輸出で多くの輸入が出来ているお得感すらあると感じています。
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