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2019年12月05日 (木) 19:50:00

来週月曜日公表予定の7-9月期GDP統計速報2次QE予想は上方改定か?

先週の法人企業統計の公表などを終えて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、来週月曜日12月9日に7~9月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。今回は、消費税率引き上げ直前の実績成長率と直後の見通しということなんですが、いつもの通り、2次QE予想は法人企業統計のオマケの扱いのシンクタンクも少なくなく、その中で、みずほ総研だけは超長めに引用していて、ほかもそれなりに引用しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.1%
(+0.2%)
n.a.
日本総研+0.2%
(+0.7%)
7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が上方修正となる一方、民間在庫は下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+0.7%(前期比+0.2%)と、1次QE(前期比年率+0.2%、前期比+0.1%)から上方修正される見込み。
大和総研+0.3%
(+1.2%)

7-9月期GDP二次速報(12月9日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率+1.2%と、一次速報(同+0.2%)から上方修正されると予想する。需要側統計の法人企業統計の結果を受けて、設備投資が前期比+2.0%に上方修正されることが主因である。
みずほ総研+0.2%
(+0.7%)
今後の日本経済は、10~12月期については消費増税の反動減の影響からマイナス成長は避けられないだろう。来年に入ってからも、消費・投資ともに力強さにかけ、日本経済は低い伸びに留まる見通しだ。
個人消費は、足元消費増税の反動減が下押し圧力として働いている。ただ反動減の影響が徐々にはく落していく来年に入ってからも、所得が伸び悩むなかで、消費の回復テンポは当面弱いとみている。足元の雇用環境をみると、雇用がひっ迫している状況は続いているものの、生産活動の停滞を受けて、製造業を中心に新規求人数が減少している。先行きについても生産の力強い回復が期待しにくいなかで、企業は新規雇用に慎重になるとみられ、雇用者数は当面伸び悩むだろう。また一人当たり賃金についても足元の企業収益が弱含むなか、当面横ばいで推移すると予想する。所得の伸び悩みを考えると、消費の伸びは当面弱いだろう。
設備投資は、省力化投資が下支えとなるものの、調整圧力の高まりから徐々に投資の伸びは鈍化していく見通しだ。米中対立の継続に伴い先行き不透明感が高いことも、投資の伸びを抑制する要因として働こう。
輸出はグローバルなIT需要が底打ちしたことから、徐々に回復していく見通しだ。ただし、世界経済が伸び悩む中ではけん引力に欠け、輸出の伸びは緩やかに留まるだろう。外需主導での日本経済の力強い回復は見込みがたいと考えられる。こうした中、生産活動も精彩を欠いた動きとなる見通しだ。
以上を踏まえると、当面の日本経済は潜在成長率を下回る弱い伸びになるだろう。
ニッセイ基礎研+0.2%
(+0.9%)
19年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.2%(前期比年率0.9%)となり、1次速報の前期比0.1%(前期比年率0.2%)から上方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.3%
(+1.2%)
10-12月期の個人消費は大幅な減少が避けられない。前述のとおり設備投資に反動が生じる可能性があることも懸念材料だ。10-12月期の実質GDPについては、筆者は11月14日の段階で前期比年率▲2.8%を予想していたが、さらなる下振れも意識しておく必要があるように思われる。
伊藤忠総研+0.1%
(+0.6%)
7~9月期のGDP成長率は、最終需要が比較的堅調な拡大を維持する中で、輸出の落ち込みと企業の在庫抑制が下押しし、概ね横ばいにとどまることになり、日本経済は10月の消費増税を待たずに停滞していたという判断に変化はない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.2%
(+1.0%)
2019年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.2%(年率換算+1.0%)と1次速報値の同+0.15(同+0.2%)から上方修正される見込みである。ただし、修正は小幅であり、今回の結果によって景気に対する評価が変わることはないであろう。
三菱総研+0.2%
(+0.9%)
2019年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.2%(年率+0.9%)と、1次速報値(同+0.1%(年率+0.2%))から上方修正を予測する。


ということで、各機関とも軒並み1次QEから上方改定され、ほぼ潜在成長率近傍のプラス成長と見込まれているんですが、その見方や解釈にはやや差があり、+1%弱というか、+0%台後半ながら、みずほ総研や伊藤忠総研ではかなり弱めに見ているようです。しかし、たとえ、7~9月期のGDP成長率が潜在成長率見合いのプラスであったとしても、10月には消費税率引上げがあったわけですから、明記していないシンクタンクを含めて、ほぼほぼすべてのシンクタンク、あるいは、エコノミストは足元の10~12月期はマイナス成長と考えています。ですから、もう焦点は来年1~3月期に移りつつあり、2四半期連続のマイナス成長でテクニカルな景気後退シグナルとなるのかどうか、という見方です。まさに、この2四半期連続のマイナス成長を回避するために政府で景気対策が検討されている訳であり、私は大いに期待していますし、テクニカルな景気後退シグナルは避けられるものと考えています。
下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。プラス成長とはいえ、徐々に成長率が低下しているのが見て取れると思います。

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2019年12月04日 (水) 19:30:00

経済協力開発機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(PISA2018)の結果やいかに?

昨日12月3日、経済協力開発機構(OECD)から昨年2018年に実施された生徒の学習到達度調査 (PISA2018) の結果が公表されています。PISAとは、Programme for International Student Assessment の略であり、15歳児を対象に読解力 reading、数学 mathematics、科学 science の3科目について、3年ごとに国際的に調査を実施し、結果は広く公表されており、データもかなり詳細に提供されています。2000年が初回の調査であり、昨年2018年のPISAは第7サイクルに当たり、79か国・地域の15歳の生徒約60万人が参加しています。以下、OECDの1次資料とともに、国立教育政策研究所のサイトにあるリポートなどをもとに簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上の棒グラフは、OECDのサイトから引用していて、たぶん、読解力 reading の得点でソートされているんではないかと思います。一番上の B-S-J-Z (China) とは、一番下の脚注にあるように、北京・上海・江蘇・浙江のことです。中国はOECD加盟国ではありませんが、かなり前からPISAから参加しているのではないか、と記憶しています。
上のグラフのソートの仕方を見ても判る通り、今回の焦点は読解力に当てられており、ほとんどの生徒がコンピュータを使って回答しています。そして、我が日本は焦点の読解力で世界における順位を下げ続けています。すなわち、2012年調査では4位を占めていたにもかかわらず、2015年調査では8位、そして、今回2018年調査では15位まで後退しました。もっとも、これは首位から4位までの中国各都市やシンガポールといったOECD非加盟国を含めてのお話ですので、OECD非加盟国を加盟国の中では11位ということになります。報道などを見ると、パソコンを使ったコンピューター形式のテスト形式に不慣れなことや、記述式の問題を苦手としていることなどが要因として考えられる一方で、当然ながら、本や新聞などをよく読む生徒の方が平均点は高く、読解力低下の結果には読書量の減少も影響しているのではないか、という見方が示されています。15年前のPISA2003の結果でも、読解力は大きく順位を下げて「PISAショック」というバズワードも出てきたりし、いわゆる「ゆとり教育」を見直すきっかけのひとつとなりました。
ただ、いつも楽観的な見方を示す私としては、いくつか別の観点を示しておきたいと思います。まず、上の画像の一番下にも見られる通り、読解力のOECD平均スコアは487であり、日本の501はこれをまだ何とか上回っています。また、焦点となった読解力は順位を落としている一方で、数学は全79カ国・地域の中では6位なものの、OECD加盟国としては韓国を押さえてトップですし、科学も全79カ国・地域の中で5位、OECD加盟国の中でもエストニアとわずかに1点差の2位につけており、両国スコアの間に統計的に有意な差は見られません。まだまだ、日本の生徒や中等教育は優秀であるといえます。次回の第8サイクル2021年実施のPISAでは数学にスポットが当てられる予定ですので、「ヤッパリ、日本の生徒は優秀」という論調が戻るような気がしないでもありません。

最後に、こういった学習結果の基礎をもとに考えると、現場の技術者は優秀で先進国トップクラスだが、経営者は先進国の中でも平均レベル、という一般的な日本に対する見方を強く支持している、といえそうな気がします。
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2019年12月03日 (火) 22:30:00

SMBCコンサルティングによる「2019年ヒット商品番付」やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週11月27日にSMBCコンサルティングから「2019年ヒット商品番付」が明らかにされています。SMBCコンサルティングのサイトから引用した下のテーブルの通りです。

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東西の横綱はこの通りなんでしょう。でも、大関について、プロスポーツ選手はともかく、ノーベル賞受賞の先生を「商品番付」に置くのは異論ありそうな気がしないでもありませんが、エコノミストはすべてを商品化しかねませんから、いいとしておきます。続く三役級ではサブスクやタピオカは当然でしょう。私が注目したのは前頭2枚目のこども関連のヒット商品です。弘文堂の『こども六法』は子どもの時から「やってはいけない」ことをきちんと教える重要性を改めて世間に知らしめる結果となりました。プログラミング教育も未来につながるスキルなんでしょう。消費者の嗜好の関係では、私はウィスキーはたしなみがなく、ここで知るまで和製ウィスキーは知りませんでした。
師走に入って、そろそろ1年を振り返る季節を感じます。
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2019年12月02日 (月) 19:50:00

ほぼ3年ぶりに減収減益となった法人企業統計をどう見るか?

本日、財務省から4~6月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高はほぼ3年ぶりの減収で前年同期比▲2.6%減の349兆4974億円、経常利益は2四半期連続の減益で▲5.3%減の17兆3232億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで+7.1%増の12兆826億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比+1.5%増となっています。なお、設備投資については、前回からソフトウェアを含むベースに変更されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。


設備投資7.1%増 7-9月法人企業統計、売上高は減
財務省が2日発表した2019年7~9月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の売上高は前年同期比2.6%減の349兆4974億円と、12四半期ぶりの減収となった。米中貿易摩擦やそれに起因した中国経済の減速などを背景に、半導体関連製品などの売り上げが落ち込んだ。
製造業の売上高は1.5%減だった。中国向けなどが振るわず、スマートフォン向け部品など「情報通信機械」が18.9%減、半導体製造機械など「金属製品」が15.4%減となった。
非製造業の売上高は3.1%減と、12四半期ぶりの減収となった。消費増税を控えた耐久消費財への駆け込み需要で小売業は増収だったが、原油安を背景とした石油製品などの価格下落で卸売業が減収となったため「卸売業、小売業」は4.0%減となった。賃貸住宅の建設減や前年の大型案件の反動減から「建設業」は8.6%減だった。
全産業の設備投資は前年同期比7.1%増の12兆826億円で、12四半期連続の増加となった。
製造業の設備投資は6.4%増だった。次世代通信規格の5G関連技術や自動車・通信機械向けの電子部品への投資が活発だった「情報通信機械」が18.9%増となった。新工場の増設のあった「生産用機械」は18.6%増だった。
非製造業の設備投資は7.6%増だった。都市部を中心にオフィスビルの取得が多かった「不動産業」や、物流施設の新設が目立った「卸売業」の増加が寄与した。財務省の担当者は「増税前に設備投資に影響が出たとは考えていない」と説明した。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となるソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、前年同期比で7.7%増、季節調整した前期比で1.2%増だった。
全産業ベースの経常利益は5.3%減の17兆3232億円と2四半期連続の減益となった。海外での建設機械・半導体製造業の落ち込みを受けて製造業が15.1%減となったことが影響した。非製造業は0.5%増だった。
財務省は「緩やかに回復している景気の動向を反映している」と説明した。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や投資動向を集計した。今回の19年7~9月期の結果は、内閣府が9日発表する同期間のGDP改定値に反映される。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフを見る限り、足元の我が国企業の動向は、かなりの程度に最近のマクロ経済動向とも一致して、製造業を中心に停滞色を強めています。季節調整していない原系列の前年同期比で見て、売上高こそ、非製造業の▲3.1%減の方が製造業の▲1.5%減よりも大きな落ち込みを見せましたが、営業利益と経常利益では非製造業が前年同期比プラスでしのいでいるのに対して、製造業はいずれもマイナスに落ち込んでいます。経常利益に至っては、製造業は統計の分類11業種すべてで前年比マイナスとなっています。ただ、設備投資については製造業・非製造業とも増加を続けています。特に、7~9月期には資本金10億円以上の大企業が前年同期比+10.0%と2桁のプラスを記録しています。業況が伸びない中で人手不足などに対応した合理化投資・省力化投資が下支えしているものと私は想像しています。ただ、後に見るように、ストックの利益剰余金こそ積み上がっているものの、フローの企業収益がかなり悪化しているので、設備投資の先行きについては楽観すべきではないと考えています。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。ソフトウェアを含むベースに今回から再計算しています。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、相変わらず、太線のトレンドで見て労働分配率は60%前後で底這い状態から脱することなく低空飛行を続けています。他方、設備投資のキャッシュフロー比率はじわじわと上昇して60%台半ばに達しています。もちろん、一番元気よく右肩上がりの上昇を続けているのは利益剰余金です。ストックですから、積み上がる傾向にあるとはいえ、これを賃金や設備投資にもっと回すような政策はないものでしょうか?

本日の法人企業統計を受けて、来週月曜日の12月9日に7~9月期GDP統計2次QEが公表される予定となっています。基本的に、上方改定されるものと私は考えていますが、日を改めて2次QE予想として取り上げたいと思います。
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2019年12月01日 (日) 15:00:00

阪神タイガース2020年シーズンのチームスローガンは「It's 勝笑 Time! オレがヤル」

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遅ればせながら、11月23日に阪神球団から2020年シーズンのチームスローガン「It's 勝笑 Time! オレがヤル」がプレスリリースされています。阪神タイガースのサイトから引用した上の画像の通りです。

来季こそ15年振りのリーグ優勝と35年振りの日本一目指して、
がんばれタイガース!
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2019年11月30日 (土) 11:00:00

今週の読書はまたまたマルクス主義の経済書など計7冊!!!

今週の読書は、マルクス主義経済学に立脚するものを含めて経済書から教養書、さらに、私の好きな純文学小説の作家である青山奈々枝の小説、また、ブルーバックスで復刻された古典的な数学書まで、以下の通りの計7冊です。冬晴れのいいお天気の下、すでに図書館周回も済んでおり、来週も数冊の読書になる見込みです。

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まず、デヴィッド・ハーヴェイ『経済的理性の狂気』(作品社) です。著者は、ジョンズ・ホプキンス大学やオックスフォード大学を経て、現在はニューヨーク市立大学の研究者をしており、専門分野は経済地理学です。マルクス主義経済学に立脚する研究者です。本書の英語の原題は Marx, Capital, and the Madness of Economic Reason であり、2017年の出版です。上の表紙画像に見えるように、副題は「グローバル経済の行方を<資本論>で読み解く」となっています。ということで、資本主義には強い過剰生産恐慌の傾向があるわけですが、本書では19世紀半ばの経済恐慌を取り上げ、説得的な議論を展開しています。本書では、特に、恐慌に関して価値と反価値から特徴付けようと試みています。特に、反価値として負債に基づく経済発展を措定し、当然ながら、資本主義的な過剰生産により利潤最大化が達成されず、恐慌に陥る歴史的必然が導かれます。経済地理を専門とする研究者らしく、時系列的な流れと空間的な広がりを同時に議論の基礎として展開し、例えば、グローバル資本主義の展開については、利潤確保のための安価な労働力の確保を動機としていることは明らかです。ですから、本書では登場しませんが、いわゆる雁行形態発展理論などが成立するわけです。アジアでは日本が先頭に立って、いわゆるNIESが日本に続き、さらにASEAN、さらに中国、またまたインドシナ半島の国々などが続くわけで、その先にはアフリカ諸国が控えているのかもしれません。そして、空間的に地球上で帝国主義的な進出も含めて、グローバル資本主義が行き渡ってしまえば、利潤追求のための拡大再生産が大きな壁に突き当たり、恐慌を引き起こし、ひいては資本主義の死滅に至るわけです。典型的な唯物史観に基づく生産関係と生産力の間の矛盾による階級闘争なわけですが、現実んの歴史はマルクス主義的な歴史観のように進んでいないことも確かです。他方で、価値と反価値の弁証法については、私が不勉強にして知らないだけか、マルクスの文献に典拠があったりするんでしょうか。また、本書のテーマとどこまで関係するかは自信ありませんが、気候変動に関する分析も秀逸です。全体的に、ポストケインジアンなハイマン・ミンスキー教授らの分析に類似性あるようにも思えますが、剰余価値の生産の限界と資本主義的生産の地理的な広がりに関しては、このハーヴェイ教授のマルクス主義的な分析に軍配が上がるような気がします。

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次に、橘木俊詔『日本の経済学史』(法律文化社) です。江戸期からの我が国における経済学史をかなり独特の、というか、いわゆる経済学史的な視点ではないまとめをしています。ノーベル経済学賞の受賞者を出すための英文論文の必要性については、まったくその通りなんですが、skレは経済学に限らず物理学などの自然科学についても同じではないかという気がします。世界的には英語での普及が絶対条件であり、学問的な完成度よりも語学的な普及の容易さ、というものが重要なのでしょう。ノーベル賞に限定すれば、文学賞でスペイン語がやや有利、という気もします。例えば、私が南米はチリにある日本大使館に勤務していたのは1990粘弾前半の3年間であり、1995年度のノーベル文学賞に大江健三郎が選出される前でしたので、我が国のノーベル文学賞受賞者はたったの1人でした。しかし、人工的には我が国の10%くらいの小国であるにもかかわらず、チリにはその時点で2人のノーベル文学賞受賞者がいました。情熱的な女流詩人のガブリエラ・ミストラルと左派詩人のパブロ・ネルーダです。国連公用語にもなっているスペイン語の有利なところを見た気がしました。本書では、その昔の我が国の東大・京大などの帝大におけるマルクス主義経済学の隆盛と一橋大などの高商における現代経済学を対比させていますが、私も旧制帝国大学卒業生ですから、少なくとも、東大や京大であれば何の経済学を勉強したのかは就職には関係ないといえます。ですから、私の視点は逆であり、我が国の経済学の研究レベルが低い、というよりは、欧米、特に米国の経済学のレベルが高すぎるのではないか、と考えています。加えて、良し悪しは別にして、我が国では経済学だけでなく超絶的なトップエリートの育成システムが存在しないような気がします。さらに加えて、60歳近傍の私くらいの年代までは、工学や理学系については大学院に進学しても修士課程・博士前期課程で終わって、普通に就職するという道がありました。企業でも工学的な研究職は採用します。でも、経済学部の場合、大学院に上がるということは、そのまま博士後期課程まで進み、アカデミックな研究者を目指す、ということだったような気もします。役所や日銀などのごく特殊な組織でなければ経済学の研究はなされておらず、国際機関への就職などはスコープ外でした。逆にいえば、東大や京大の経済学部卒業生の就職が極めてスムーズであったともいえます。いずれにせよ、いわゆるマル経と近経の派閥抗争的な見方には、私はやや違和感を覚えます。

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次に、稲葉振一郎『AI時代の労働の哲学』(講談社選書メチエ) です。著者は明治学院大学の経済研究者であり、本書ではスミス的な古典派経済学やマルクス主義経済学も含めて、経済学の考えから労働について哲学しています。すなわち、経済学的には労働は美徳として単純な勤労観で支えられているだけでなく、出来れば避けたいコスト感も併せ持っています。ですから、時間の配分については、労働によって得られる賃金と機会費用のレジャーの効用を比較して労働供給が決定されるという定式化となっています。そういった労働観に対して、実際の経済の歴史は一貫して機械による人間労働の置換を進めてきたわけで、基本的には、AIを生産現場に活用することはこの延長上にあるともいえます。ですから、AIによる労働の置換に対して、歴史上のラッダイト運動が参照されるのもアリなわけです。そして、もうひとつの古典派経済学やマルクス主義経済学、あるいは、現代経済学においても、生産要素は土地と資本と労働であり、私が『資本論』を読んだところでは、第3巻は土地から地代を得る地主、資本から利潤を得る資本家、労働から賃金を得る労働者の3大階級で締めくくられています。もちろん、エンゲルスの編集にして正しければ、という前提ですが、今までの経済学者でこのエンゲルスの編集に目立った異議を唱えた人はいなかったと私は認識しています。何がいいたいかというと、本書の指摘にある通り、AIは資本なのか、労働なのか、ということを問題にすべきとは私は思いません。すなわち、AIとは資本であって労働ではないことはほぼほぼ確実です。なぜ「ほぼほぼ」というかといえば、まだAIが完成形として人間労働に置き換わったシンギュラリティに達していないからです。ただ、この場合、「シンギュラリティ」はAIが人間からのインプットを必要とせず、高度に自律的な判断を下し、同時に、同じ意味で自律的に行動することになる、という段階と考えておきたいと思います。加えて、AIが意思決定するプロセズが「ブラックボックス」で恐怖ないし違和感を持つ人もあったりするんでしょうが、本書の著者は、そもそも資本主義的な生産・分配、また、市場における価格決定などは、すべてブラックボックスで処理されているに等しい、と指摘しています。これもその通りです。いままで、オックスフォード大学のグループのように単純労働だけでなく、医師や弁護士などの労働もAIによって置き換えられる可能性がある、といった論調が多かった分野ですが、とても新鮮で理解しやすい議論が展開されています。200ページほどのコンパクトなボリュームながら、今週の読書の中で一番だと思います。

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次に、有江大介『反・経済学入門』(創風社) です。著者は一線を退いたとはいえ経済学史を専門とする経済学の研究者です。本書は、著者自身による本書の前書きによれば、社会科学概論という授業のテキストとして企画されたもののようです。ですから、経済学をターゲットのひとつとしつつも、幅広く社会科学、あるいは、科学といったものを対象にしています。それも、古典古代から現代までの長いタイムスパンで論じています。そして、結論を先取りすれば、経済学が科学として生き残るのは、現実からの演繹を徹底して、「経済工学」Economic Engineering としての道ではないか、と本書の最後で記しています。本書は、基本的に、経済学に基礎を置きつつ、社会科学全般について論じた教養書という位置づけなのではないか、という気がします。ただ、私の社会科学や歴史観などと共通する部分も少なくなく、例えば、第Ⅰ部第7章では、歴史の進み方特にグローバル化については「止められない」という表現で、かなり一直線に進む歴史観を支持しているように見えます。ただ、これは西洋由来の学問としての経済学の影響も私は見てしまいます。すなわち、東洋的な、というか、中国的なといってもいい円環的ないし循環的歴史観に対して、西欧的ないし西洋的な歴史観は一直線だと私は受け止めています。そのひとつがマルクス主義的な唯物史観であって、原始共産制に始まって、古典古代の奴隷制、中世の封建制、近代の資本制から社会主義ないし共産主義が展望されていますが、まだ、本格的な社会主義的生産は実現されていません。やや脇道に逸れましたが、本書について私の感想は、基本的に賛成なのですが、マクロな次元における科学としての経済学は、本書の結論通り、経済工学的な側面を強め、その基礎としては実験経済学の知見が生かされる可能性が高いと私も思います。ただ、マイクロな選択の理論としての経済心理学的な方向もあるんではないか、という気がします。典型的にはツベルスキー=カーネマンの研究です。もっと進めば、神経経済学のような分野かも知れません。ここでもやや古い経済学的な合理性が前提とされず、限定合理性の下でのマイクロな選択が解明され、ひいては経済工学的なマクロな経済社会の方向性を議論することになるような気もしますが、それはそれで独立した分野と考えられる可能性もあります。でも、本書についても、経済書というよりも水準の高い教養書であり、私は図書館で借りましたが、残念ながら、東京都の公立図書館では区立図書館で新宿区や杉並区など数館、多摩地区の図書館では国立市しか蔵書してません。でも、1500円プラス税というお値段ならお買い得、という気もします。

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次に、メレディス・ブルサード『AIには何ができないか』(作品社) です。著者は、米国のデータジャーナリストであり、同時に、ニューヨーク大学アーサー・L・カーター・ジャーナリズム研究所の研究者でもあります。英語の原題は Artificial Unintelligence であり、2007年の出版です。ということで、本書では、AIに限らず、テクノロジーに対する懐疑論が展開されています。私はどちらかといえば、AI悲観論、というか、カーツワイルの指摘するような2045年というのでは二としても、人類の英知を超えるAIはいずれ出現し、人類はAIのペットになる、というものです。それに反して、本書では、AIは人類を越えられない、あるいは、AI以外の技術もそれほどのパワーはない、との議論を展開しています。私には正確なところは判りません。AIをはじめとする現在花盛りのテクノロジーは、かなりのパワーあるような気がしますが、何分、専門外で理解がはかどりません。単純な情報処理であれば、マシンは人類をとっくに超えていると思いますが、単純でない、まあ、どこまで単純でないかも問題ながら、例えば、ヒューリスティックな直感判断をマシンに求めるのは、確かに無理がありそうな気もします。ただし、ヒューリスティックな判断は間違いも多いわけで、時間が節約できるのと正確性は、当然、トレードオフの関係にあります。加えて、MicrosoftのTayがマシン学習の課程でナチスやヒトラーを礼賛し始め、ユダヤ人虐殺や差別を肯定したとして、開発を中止したというのも事実ではなかろうかといわれています。当然ながら、AIにも限界、というか、欠陥は考えられるわけです。少なくとも、AIや最新テクノロジーに関して、繰り返しになりますが、私はやや悲観バイアスに傾くんですが、悲観も楽観もせずに社会常識に従った良識的な対応が求められているんだろうと思います。本書のようなAIの限界を指摘する主張も、その意味で、バランスよく目を向けておく必要があると思います。私もAI悲観論から、少しずつですが本書のようなAI限界論に傾いて来た気もします。AIをもって神に措定する必要はまったくありません。

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継に、青山七恵『私の家』(集英社) です。著者は、ご存じの通り芥川賞作家であり、純文学の担い手です。本書では、主人公の女性の祖母の法事に集まった親戚一同を見渡すところから物語が始まります。作者の青山七恵は、私の大好きな作家の1人なのですが、最近、フォローするのをサボっており、最後に読んだのは数年前の『ハッチとマーロウ』でしたので、パタパタとこの間に出版された『踊る星座』と『ブルーハワイ』の2冊の短編集も併せて読んだりした次第です。ということで、本書は連作短編集の体裁のように見えますが、私の解釈によれば長編であり、それほど複雑ではなく、通常の親戚付き合いの範囲で、3代に渡る女性に着目した構成になっています。ただ、3代に渡る家族史ですので、長編と考えれば、かなり長い期間を対象としている上に、章が時系列で並んでいるわけでもなく、逆に、時代がさかのぼったり、大きく飛んだりしますので、その意味では、読み進むのにやや読解力を必要とします。なお、日本語の「家」には英語のhomeとhouseがありますが、明らかに前者のhomeです。建物としての家についてはほとんで触れていません。家族を主として、親戚やご近所も含めた人間関係を抜群の表現力と構成力で描き出しています。3代の女性陣の最年長は法事の対象である祖母であり、まあ、男尊女卑の時代ですから、死ぬまで自分は損な役回りになっていると不満を持った人生のように描かれています。その祖母の子は3人いて、行方不明になっていた長男、主人公から見れば叔父に当たる男性はニュージーランド在住で、四十九日の法要には間に合いませんでしたが、一周忌には現地で結婚した妻や子とともに帰国します。まあ、男性は本書ではオマケかもしれません。主人公の母は、元体育教師という質実剛健な女性でありながら、祖父母の家に里子のような形で出された不遇な子供時代にこだわっています。姉妹は同棲していた男性に逃げられて、東京から北関東の実家に戻って来ています。大叔母は孤独を愛しながらも、異性の崇拝者に囲まれ波乱に富んだ老後を送っています。それぞれのキャラクターがとても明らかに設定されていて、繰り返しになりますが、作者の表現力と構成力が素晴らしいと感じました。また、この作者の作品を追いかけたいと思います。

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最後に、高木貞治『数の概念』(講談社ブルーバックス) です。著者は、我が国数学界の大御所という表現では不足し、巻末の秋山教授による解説によれば「日本の近代数学の祖」ともいえ、もちろん、すでに亡くなっています。没年である1960年がそもそも定年退職した私の生年に近いわけで、創設間もないフィールズ賞の第1回の選考委員も務めています。ドイツ留学でヒルベルトに師事しています。とんでもない大先生なわけです。なぜか私はこの大先生の『解析概論』(岩波書店) を持っていて、箱入りのハードカバーの大判本ですので、読みとおした記憶ないながら、本棚に飾ってあります。本書は、1949年に初版が、1970年に改訂版が、それぞれ岩波書店から出版されたものを新装改版しています。高木教授の最後の著作と見なされています。わずかに、新書判でも200ページ余り、秋山教授による解説を除けば140ページ足らずのボリュームにもかかわらず、誠に残念ながら、私は本書で展開されている議論をすべて理解するだけの数学的な能力はありません。でも、美しい数学の世界に触れただけでも幸福な気分になれる人は少なくないだろうと思います。混み合った通勤電車で本書を開くと、それなりの優越感を持てるかもしれません。もちろん、図書館から借りていますので、待ち行列に割り込んで、ほかの数学に専門性ある人の機会費用を上昇させているという意見もあるかもしれませんが、逆のケースもあり得るんでしょうから、お互いさまです。
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2019年11月29日 (金) 19:19:45

基調判断が下方修正された鉱工業生産指数(IIP)とタイトな状況続く雇用統計!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも10月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から▲4.2%の減産を示しています。失業率は前月と同じ2.4%、有効求人倍率も前月から横ばいの1.57倍と、いずれもタイトな雇用環境がうかがえるものの、指標は雇用の改善のストップないし悪化を示し始めているように見受けられます。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

10月の鉱工業生産 車・機械、台風で低調 4.2%低下
経済産業省が29日発表した10月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比4.2%低下し98.9だった。低下は2カ月ぶり。台風19号の影響で自動車や生産用機械など幅広い業種で減産となった。企業の先行き予測も弱く、経産省は基調判断を「弱含み」とした。
QUICKがまとめた民間予測の中央値(2.1%低下)を上回る低下率となった。下げ幅は18年1月以来、1年9カ月ぶりの大きさ。前回増税直後の14年4月は同じ2015年基準で4.4%の低下で、前回増税時並みの大きなマイナスとなった。
業種別では15業種中12業種が低下した。最もマイナス寄与が大きかったのが自動車で、前月比7.8%低下した。10月に上陸した台風19号で部品の調達が滞り生産に影響した。生産用機械も台風の影響で6.4%低下と振るわなかった。前月に大型案件によって上昇幅が大きくなった汎用・業務用機械は13.0%の低下と反動も出たようだ。
出荷は4.3%の低下と2カ月ぶりのマイナスだった。在庫は1.2%の上昇で4カ月ぶりに前月を上回った。
経産省が28日発表した10月の小売販売額は前年同月比7.1%の低下と前回の増税直後よりも大きなマイナスだった。ただ生産面では「消費増税の影響が大きく出たとは考えていない」(同省)とした。
SMBC日興証券の宮前耕也氏は「台風の影響だけなら在庫は減るはず」と指摘。その上で「増税前の駆け込み需要に対応した中小企業の設備投資がなくなった反動や、外需の低調が影響したとみるべきだ」と述べた。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、11月は前月比1.5%の低下、12月は1.1%の上昇見込みだ。経産省は「生産に弱さが感じられる状態が続いている」と指摘。基調判断はこれまでの「このところ弱含み」から「弱含み」に修正した。
失業率横ばいも…失業者は2カ月連続増 製造業に陰り
総務省が29日に発表した10月の完全失業率(季節調整値)は前月から横ばいの2.4%だった。働く女性の増加が続く一方、米中貿易戦争の影響を受けている製造業などで雇用に陰りが見られ、完全失業者数は2カ月連続で増加した。厚生労働省が同日発表した10月の有効求人倍率(同)は前月から横ばいの1.57倍。全体では堅調な雇用情勢が続いているとした。
就業者数は前年同月比62万人増の6787万人。女性が46万人増と大幅に増えたことが影響した。就業率も男性が0.2ポイント上昇の84.4%、女性が1.3ポイント上昇の71.8%でともに増加した。
一方、完全失業者数は前年同月比1万人増の164万人で、2カ月連続で増えた。「勤め先や事業の都合による離職」が3万人増だった。特に製造業と、インターネット通販の普及などで需要が減っている卸売業・小売業で正社員などの就業者を減らす動きがみられた。製造業の就業者は20万人減の1032万人、卸売業・小売業は16万人減の1072万人だった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率も横ばいの1.13倍。雇用の先行指標となる新規求人倍率は前月から0.16ポイント改善し2.44倍だった。
新規求人数は前年同月比4.0%減の102万7758人で、3カ月連続で減少した。製造業が9カ月連続で減っている影響などを受けた。


いくつかの統計を取り上げていますので長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、中央値で▲2.1%の増産、レンジでも▲2.8%~▲0.6%の幅でしたので、下限を突き抜けた大きなマイナスと受け止めています。基本は、消費税率引上げ後の反動減と、これまた、新幹線も止めた超大型の台風19号の合わせ技の結果です。でも、それも織り込んだ市場の事前コンセンサスを超えるマイナスなんですから、ネガティブなサプライズといえます。季節調整済みの前月比で低下したのは、寄与度順で見て、自動車工業▲7.8%減、汎用・業務用機械工業▲13.0%減、生産用機械工業▲6.4%減、電気・情報通信機械工業▲4.6%減、など、我が国のリーディング・インダストリーがズラリと並んでいます。しかも、先行きについても製造工業生産予測指数で見て、11月は前月比▲1.5%の減産、しかも、上振れバイアスを補正すれば▲1.8%減ですから、12月予想の+1.1%増産もかすんでしまいます。7~9月期の鉱工業生産は▲0.5%の減産でしたが、10~12月期も2四半期連続で減産を記録する公算が高いと考えるべきです。しかも、10月指数を単純に製造工業生産予測指数で引き延ばすと、10~12月期は▲4%を超える減産となる可能性もあり、これはかなり大きな減産であると私は受け止めています。統計作成官庁である経済産業省では生産に関する基調判断を半ノッチ下方修正しています。すなわち、今年度2018年度に入って、4~7月は「一進一退」、8~9月は「このところ弱含み」だったんですが、本日公表の10月統計では端的に「弱含み」に変更しました。年明け後の我が国経済については、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速の影響で輸出が伸び悩む一方で、これを内需がカバーしてプラス成長を予想するエコノミストが多いんですが、その前の10~12月期は、10月の台風19号の影響もあって、かなり落ち込みが大きい可能性があります。

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続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた期間は景気後退期を示しています。ということで、失業率は2%台前半ないし半ばまで低下し、有効求人倍率も1.5倍超の高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も1倍超を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年余りに渡って1倍以上の水準で推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近いタイトな状態にあると私は受け止めています。ただ、モメンタム、すなわち、方向性については、失業率も有効求人倍率もジワジワと雇用悪化の方向にあることは確かです。私が時折参照している日本政策投資公庫の「中小企業景況調査」の2019年11月調査結果では、従業員判断DIが今年に入って急降下しています。すなわち、季節調整済みの系列で、まだ従業員不測のプラスながら、2018年12月の+28.8から直近調査結果の11月には+10.5まで低下しました。そもそも、雇用は生産の派生需要であり、生産が鉱工業生産指数(IIP)で代理されるとすれば、基調判断は「弱含み」であり、先行き、景気局面が転換して景気後退局面に入れば、雇用は急速に冷え込む可能性もあります。生産が雇用増加をけん引しているのであって、人手不足が景気を拡大させているわけではありません。場合によっては、本格的な賃金上昇が始まる前に景気の回復・拡大局面が終了してしまう可能性も排除できません。

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最後に、本日、内閣府から11月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、前月から+2.5ポイント上昇して38.7となり、2か月連続で前月を上回りました。消費者態度指数を構成する4項目、すなわち、暮らし向き、収入の増え方、雇用環境、耐久消費財の買い時判断、のすべてが前月から上昇しています。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「弱まっている」から「持ち直しの動き」に上方修正しています。上のグラフの通りです。
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2019年11月28日 (木) 22:30:00

消費税率引上げ前の駆込み需要よりも落ち込んだ商業販売統計をどう見るか?

本日、経済産業省から10月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲7.1%減の11兆900億円、季節調整済み指数も前月から▲14.4%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

10月小売販売7.1%減 消費増税・台風が影響
経済産業省が28日発表した10月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比7.1%減の11兆900億円だった。消費増税前の駆け込みが起きた9月からの反動減に加え、台風19号による休業や客数減が響いた。自動車や家電の販売が低調だった。前回の消費増税の直後にあたる2014年4月の4.3%減と比べると、減少幅は大きかった。
減少は3カ月ぶり。経産省は「9月に需要を先食いした影響が出た。台風で被災した人を中心に消費者心理も下向いた」と分析した。季節調整済みの前月比では14.4%の減少だった。
小売業販売を商品別にみると、自動車小売業が前年同月比17.0%減と大きく落ち込んだ。普通車や小型車の販売が不調だった。家電など機械器具小売業は15.0%減。9月に駆け込みが出た冷蔵庫や洗濯機など高額な家電を中心に売り上げが伸び悩んだ。
業態別にみると、百貨店の販売額が17.3%減った。高額商品で駆け込みの反動減が出たほか、気温の高い日が続いて秋冬衣料の動きが鈍かった。韓国からの訪日観光客の減少も響いている。下げ幅は前回増税直前の駆け込みから1年が経過した15年3月以来の大きさだった。家電大型専門店は14.2%減少した。
一方、コンビニエンスストアの販売額は3.3%増加した。前年の10月にたばこ税増税で減少した反動が出た。大手コンビニでは10月からキャッシュレス決済に2%分のポイントを即時還元する対応をはじめた。経産省によると、キャッシュレスの支払比率が上がり、コンビニの売り上げにプラスに働いたという。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

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引用した記事には、おそらく、記者会見で明らかにされた経済産業省の公式発表がいっぱい並べられているんですが、要するに、大きな落ち込みは消費税率引上げ後の反動減の要因が大きいんだろうと私は考えています。自動車小売業が▲17.0%減、電機製品などが含まれる機械器具小売業が▲15.0%減、となっており、耐久消費財が大きなマイナスを記録しています。事前の多くのエコノミストの予想では、消費税率の引上げ幅がやや小さい上に政府の各種の対策もあって、今回2019年10月の消費税率引上げでは前回2014年4月の際に比較して、駆込み需要は小さく、それゆえ、その後の反動減も小さい、と受け止められており、実際に、先月統計の2019年9月の小売販売額の前年同月比は+9.2%増と2014年3月の+11.0%増を下回りましたが、その後の反動減を見ると、2014年4月の▲4.3%減を大きく上回る▲7.1%減を記録しました。もちろん、所得やマインドなどの多くの条件が異なるわけですし、特に今年2019年10月には新幹線すら止めた大型の台風19号の影響も無視できませんから、単純な比較はできませんが、一般的な考えながら、消費税率の引上げ幅が小さいにもかかわらず、駆込み需要が小さく反動減が大きい、というのは、まあ、かなり消費としてはよろしくないと私は受け止めています。また、2014年の消費税率引上げ時には、その後の反動減が3か月続き、2014年7月から前年同月比がプラスに回帰したという実績がありますが、今回の税率引上げ後の消費のプラス回帰にどれくらいの期間を要するのか、については、世間一般ではそれほど注目されていないように見受けるものの、少なくとも私は先行き景気動向の観点から考慮すべきと受け止めています。なお、どうでもいいことながら、最近の小売業販売額でもっとも前年同月比の落ち込みが大きかったのは、実は、2015年3月の▲9.7%なんですが、これは2015年3月に何かがあった、というよりは、その前年の2014年3月に消費税率引上げ前の駆込み需要が余りに大きかった、と考えるべきです。

この商業販売統計は供給側の統計ですから、国内家計の消費だけでなくインバウンド消費が含まれるんですが、10月統計はやや複雑な動きを示しています。すなわち、韓国からの訪日観光客が大きく減少している一方で、ラグビーのワールドカップ開催に伴い消費単価の大きい欧州からの訪日観光客が増加しています。観光庁統計では、後者が前者より影響大きいと出ているようです。
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2019年11月27日 (水) 19:15:00

リクルートジョブズによる10月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日11月29日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる10月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の10月度平均時給は前年同月より+2.6%、+27円増加の1,074円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+41円、増減率+3.8%)、「フード系」(+31円、+3.0%)、「製造・物流・清掃系」(+31円、+3.0%)、「販売・サービス系」(+28円、+2.8%)など、全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、今年2019年7月統計以降マイナスを続けており、7月▲10円減、▲0.6%減、8月▲7円減、▲0.4%減の後、9月▲7円減、▲0.4%減の後、10月も▲15円減、▲0.9%減の1,624円と、下げ足を速めています。職種別では、「IT・技術系」(前年同月比増減額+98円、増減率+4.9%)、「クリエイティブ系」(+74円、+4.3%)、「オフィスワーク系」(+21円、+1.4%)、「医療介護・教育系」(+3円、+0.2%)の4職種がプラスなった一方で、「営業・販売・サービス系」(▲47円減、▲3.3%減)の1職種だけながらマイナスを示しています。また、地域別でも、東海・関西・関東のすべてのエリアで前年同月比マイナスを記録しています。派遣スタッフのうち、「クリエイティブ系」と「IT・技術系」が高い伸びを示しているのは、キャッシュレス決済開発の関係ではないか、と私は想像しています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトでは人手不足の影響がまだ強い一方で、「クリエイティブ系」と「IT・技術系」などを除いて派遣スタッフ賃金は伸びが鈍化しつつある、と私は受け止めています。もちろん、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用にはいっそうの注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。特に、上のグラフを見る限り、右肩上がりの上昇を続けるアルバイト・パートに比べて、派遣スタッフの時給については、単変量分析ながら昨年2018年前半から半ばにかけて、いったん直近のピークを付けた可能性があります。ただ、2016年年央にも同じようにピークを過ぎた後、2017年後半からもう一度上昇したこともあり、人手不足をはじめとする労働需給に敏感なだけに、まだ確定的な見方を示すことは出来なさそうな気がします。

最後に、何度でも繰り返しますが、決して人手不足が景気をけん引しているのではありません。雇用は生産の派生需要であり、景気が後退局面に入ると労働需要が一気に冷え込む可能性は否定できないわけで、この点は絶対に忘れるべきではありません。
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2019年11月26日 (火) 19:50:00

企業向けサービス物価(SPPI)は76か月連続で前年同月比プラスを記録!

本日、日銀から10月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。消費税率引上げがありましたので、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率はジャンプして+2.1%を示しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も2.0%を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業向けサービス価格、消費税除き前年比0.4%上昇 広告の出稿需要が弱く
日銀が26日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.8で、前年同月比2.1%上昇した。10月から消費税率が引き上げられた影響で上昇率は前月から大幅に拡大した。前年同月比での上昇は2013年7月以来76カ月連続。
消費税の影響を除くベースでみると0.4%上昇で、9月から上昇率は縮小した。労働者派遣サービスや宿泊サービスを含む諸サービスの伸びが縮まったほか、広告のマイナス幅が拡大した。
人手不足による人件費上昇圧力が引き続きサービス価格の押し上げ要因となっている。半面、景気の先行き不透明感などを背景に企業が経費節減の姿勢を強めているとみられ、テレビ広告を中心に広告の出稿需要が急速に弱まったことが伸びを抑制した。
前月比の上昇率は消費税を含むベースで1.9%、消費税を除くベースでは0.2%だった。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。消費税の影響を除くベースで、対象の146品目のうち上昇は82品目、下落は42品目、上昇から下落を引いた差は40品目と、9月確報値(47品目)から7品目減少した。上昇品目が下落品目を上回るのは16年3月以来44カ月連続だった。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、消費税率の引上げの影響を除いたベースでは、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+0.4%、国際委運輸を除くコアSPPIで+0.3%と、ヘッドラインSPPIの9月の上昇率が+0.5%、コアSPPIが+0.6%でしたから、大きな違いはないとはいえ、やや上昇率が縮小しています。コアSPPIの方が大きく縮小しているのは、国際商品市況における石油価格の影響がより強く現れるからであろうと考えられます。消費税を除くベースのSPPI前年同月比上昇率+0.4%に対する大類別の寄与度を見ると、土木建築サービスや労働者派遣サービスを含む諸サービスが+0.31%と圧倒的な部分を占めていて、次に、運輸・郵便+0.11%と、この2つの大類別でほぼほぼ説明がついてしまいます。他方、マイナス寄与もあり、広告▲0.15%、リース・レンタル▲0.05%となっています。景気に敏感な広告の寄与がマイナスなのは気にかかるところです。というか、消費税率引上げ直後ですから、駆込み需要の反動もあって、広告はそれほど必要ではなかった可能性はあります。でも、引き続き、人手不足の影響はまだ見られる、という印象です。
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