2023年06月04日 (日) 16:45:00
才木浩人投手が佐々木朗希投手に投げ勝ってロッテに連勝
2023年06月03日 (土) 17:00:00
交通事故から退院した今週の読書感想文は経済書はなく計9冊
今週の読書感想文は以下の通り計9冊です。入院中や退院直後に読んだ本ばかりで、経済書や教養書はなく、小説の単行本と文庫本が中心となっています。
まず、安倍晋三ほか『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)です。今さら言うまでもなく、昨夏に暗殺された元総理大臣の回顧録です。そして、小説を3冊、村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社)は我が国を代表する小説家が6年ぶりに出版した新作長編小説です。ここまで入院中に読み、以下は退院後に読みました。すなわち、今野敏『審議官 隠蔽捜査9.5』(新潮社)はミステリ作家による警察小説のシリーズのスピンオフ短編集です。麻耶雄嵩『化石少女と7つの冒険』(徳間書店)もミステリ作家による高校を舞台にした学園ミステリです。新書は2冊で、源河亨『「美味しい」とは何か』(中公新書)は食から美学を考えており、「浦上克哉『もしかして認知症?』(PHP新書)はコロナ禍で懸念される認知症について豊富な情報が詰め込まれています。最後に、文庫本は3冊でアンソニー・ホロヴィッツ『殺しへのライン』(創元推理文庫)は探偵ダニエル・ホーソーンの謎解きを作家であるアンソニー・ホロヴィッツが取りまとめるシリーズ第3巻最新刊であり、ピーター・トレメイン『昏き聖母』上下(創元推理文庫)は7世紀のアイルランドを舞台にした修道女フィデルマのシリーズ最新邦訳です。
ということで、今年の新刊書読書は交通事故前の1~3月に44冊でしたが、入院によるブランクが3か月近くあり、今週ポストする9冊を合わせて53冊となります。年半分が過ぎて、例年の年間新刊書読書200冊はムリそうです。せめて、100冊の大台には乗せておきたいと希望しています。ただ、今週の読書感想文は、経済書がなく退院したばかりでもあり、軽いレビューで失礼しておきます。
まず、安倍晋三ほか『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)です。著者は、元総理大臣とインタビュアーのジャーナリストです。安倍晋三元総理は、繰り返しになりますが、昨年2023年7月8日の選挙演説中に暗殺されています。当たり前ですが、それ以前にジャーナリスト2人、すなわち、橋本五郎・尾山宏が聞き取った36時間に渡るインタビューを編集して収録しています。第1章が辞任直前の2020年を取り上げているほかは、第2章で第1次内閣当時までの2003-12年、さらに、第3章では第2次内閣の発足した2013年、などなど、基本的に時系列での章別構成となっています。第1章とともに、第6章だけは例外で、第6章では海外首脳の評価に当てられています。私はエコノミストですので、本書で多くの紙幅が割かれている外交関係は、まあ、外交官経験があるとはいえ、専門外ながら、ひとつの読ませどころとなっているように感じました。ジャーナリストが聞き取ったインタビューを編集した結果ですので、安倍元総理の自画自賛的な部分や一方的な解釈も見受けられ、特に、「財務省陰謀論」的な主張など、それなりに読み進むには注意を要すると感じる読者もいそうな気がします。なお、本書は交通事故にあった時点でリュックに持っていて、半分くらいを読み終えていましたが、入院中にもう一度最初から読み返しました。
次に、村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社)です。著者は、日本を代表する作家の1人であり、最近ではノーベル文学賞候補に上げられることもあります。といった大作家ですので、出版社も特設サイトを開設したりしています。17歳と16歳の高校生男女のカップルから始まって、男子高校生のその後のあり方を主人公に壁の中と外とでストーリーが進みます。主人公のほか、実態上の私設図書館のオーナー運営者であった子易さん、あるいは、イエローサブマリンのヨットパーカを着て図書館に通い詰めていた少年、特徴的な登場人物によって物語が彩られます。読者によっては、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のパラレル・ワールドを思い出す人がいそうな気がします。私はこの作家の大ファンですし、まさに、「村上ワールド」全開といったこの作品はとても好きになりました。『海辺のカフカ』や最近の作品である『1Q84』、あるいは、『騎士団長殺し』などに見られた暴力的な描写もほとんどありません。これも私には好ましい点でした。最後に、私はタイトルも発表されていない2月の時点で大学生協に発注し、入院中にお見舞いに来てくれた同僚教員に持ってきてもらいました。感謝申し上げます。
次に、今野敏『審議官 隠蔽捜査9.5』(新潮社)です。著者は、日本でもっとも売れているミステリ作家の1人であり小説小説がひとつの特徴と考える読者も多いと思います。タイトル通り、「隠蔽捜査」シリーズのスピンオフ短編集です。2字ないし3字の漢字のタイトルを持つ9篇の短編から編まれています。このシリーズでは竜崎と伊丹の2人の警察キャリア官僚が登場しますが、伊丹の方は一貫して警視庁刑事部長である一方で、竜崎の方は警視庁大森署長だったり、神奈川県警刑事部長だったりします。しかし、竜崎は主人公ですが、伊丹の方は本書にはほとんど登場しません。相変わらず、竜崎のウルトラ合理的な姿勢が強調されています。しかし、その中にあって、本書の表題作となっている短編の「審議官」では、仕事をスムーズに運ぶために、というか、面倒を回避するために、竜崎が格上である先輩の警察庁審議官を持ち上げるような面を見せたりします。ただ、これも合理的な理由からなされている点が強調されています。私のようにこのシリーズのファンであれば、読んでおくべきだという気がします。
次に、麻耶雄嵩『化石少女と7つの冒険』(徳間書店)です。著者は、我が母校の京都大学ミス研出身のミステリ作家です。私と同年代に近い京大ミス研出身作家である綾辻行人や法月綸太郎などから10年ほど後輩ではないかと思います。舞台は京都市北部にあるお嬢様お坊っちゃまの通う私立ペルム学園で、主人公はタイトルにある化石少女、すなわち、古生物部の部長である神舞まりあ、高校3年生です。ミステリの謎解きを試みる探偵役です。そして、主人公をサポートするのは同じ古生物部の1年下の高校2年生の桑島彰、まりあの「従僕クン」となります。なお、本書には2014年出版の前作『化石少女』があり、前作では主人公の神舞まりあは高校2年生、桑島彰は高校1年生でしたので、10年近くを経て学年をひとつ進めたことになります。ペルム学園の古生物部には、1年生から高萩双葉が新入部員として加わります。前作では、部員の少ない「過疎部」として生徒会から古生物部が目をつけられていて、とてもあり得なくも毎月のように殺人事件が頻発するペルム学園で、廃部を回避すべく生徒会役員を犯人に見立てた主人公神舞まりあの推理を桑島彰が否定しまくる、というものでしたが、この作品でも前作と同じように、毎月のようにペルム学園で殺人事件が起こります。ただ、まりあが京都府内で恐竜の化石を発見したり、その話題性で大学への推薦入学が早々に決まったりという動きもあります。加えて、前作では真相が明らかにされない事件がいっぱいだったのですが。この作品では真相が明らかになる事件も少なくありません。私のようにこの作家のファンであれば、読んでおいて損はないと思います。
次に、源河亨『「美味しい」とは何か』(中公新書)です。著者は、九州大学の研究者であり、専門は哲学や美学です。本書では、いわゆる味覚について、甘いとか、しょっぱいとかの客観性ある表現ではなく、多分に主観的な要素を含む「美味しい」について、哲学や美学の観点から考察を進めています。甘いとか、辛いとかの記述的判断ではなく、「美味しい」あるいはその逆の「不味い」というのは評価的判断であることから、主観的な要素もあると私は考えますが、文化に根ざす客観性という概念を用いて、著者は食における美学的な表現を展開します。もちろん、他方で、食の芸術性についても考えていて、絵画や音楽といった「高級芸術」に比べて食については「定休芸術」、ないし、芸術ではないとする見解を否定し、同時に、食の芸術性は単なる味覚と嗅覚だけではなく、見た目の視覚や歯触り口当たりなどの触覚なども含めたマルチ・モーダルな観点から評価できる、と主張しています。確かに、私は花粉症の季節にはほぼほぼ嗅覚を失いますが、匂いを感じない時期に色を見ずに果実ジュースを飲むと、何なのか、まったく判らず、美味しさも大きく低減するのを経験することがあります。やや理屈っぽい内容ですが、普段から食べている食品について、より深く考える一助となります。
次に、浦上克哉『もしかして認知症?』(PHP新書)です。著者は、鳥取大学医学部の研究者であり、認知症学会の代表理事だそうです。認知症は発症してしまったら根治は不可能に近く、せいぜいが進行を遅らせるくらいしか出来ないと巷間よくいわれており、さらに、ここ3年ほどのコロナ禍の中で外部との交流なども不十分となり、本書で指摘されるまでもなく、認知症のリスクが高まっていることは明らかです。本書では、認知症発症の前の軽度認知障害を克服して、認知症に進まないために必要な情報を提供するとともに、鳥取ローカルでのいくつかの社会実験的な試みを基に、認知症について包括的に論じています。ただ、惜しむらくは、こういった医学専門家の著書にありがちな点で、認知症さえ防止できればそれ以外の疾病は問題とするに及ばず、に近い感覚が読み取れます。総合的な健康という観点が少し希薄な点が残念です。でも、認知症一点張りの本書とともに、読者の方で自分自身の総合的な健康をバランスよく考える一助には十分なります。
最後に、アンソニー・ホロヴィッツ『殺しへのライン』(創元推理文庫)(創元推理文庫)です。英語の原題は A line to Kill となっていて、2021年の出版です。作者は、『カササギ殺人事件』などで著名な英国のミステリ作家です。この作品は、探偵ダニエル・ホーソーンの事件解決を作家のアンソニー・ホロヴィッツが記述するというシリーズであり、『メインテーマは殺人』と『その裁きは死』に続く第3作です。第4作はすでに英国で出版されていて、タイトルは The Twist of a Knife と巻末の解説で紹介されています。本書では、まだ出版されていない第2巻のプロモーションのためにチャンネル諸島のオルダニー島で開催される文芸フェスにホーソーンとホロヴィッツが行ったところ、島内で連続殺人事件が発生し、島在住の大富豪でオンライン・カジノの経営者で、島に送電線を通す事業も手がけ、さらに、文芸フェスのスポンサーでもある人物とその妻が殺されます。犯人当てとともに動機の解明もテーマとなります。ただ、ミステリとしての謎解きは前作の『その裁きは死』の方が出来がよかったと私は感じました。ご参考まで。
最後に、ピーター・トレメイン『昏き聖母』上下(創元推理文庫)です。英語の原題は Our Lady of Darkness であり、2000年の出版です。作者は、英国の推理小説作家で「修道女フィデルマ」のシリーズ最新邦訳です。本書では、フィデルマのもっとも親しい友人の1人、というか、このシリーズではフィデルマの相棒を務めているサクソン人修道士のエイダルフが、フィデルマの兄王が統治するモアン王国と緊張関係にあるラーハン王国で殺人の罪に問われて有罪判決を受け、処刑の前日に救助に向かう、というところからストーリーが始まります。フィデルマはモアン王国から同行してきた武官らとともに調査を進め、エイダルフの無実を明らかにすべく事件の真相に迫ります。いつもながら、非常に合理的かつクリアな謎解きで、私の好きなミステリのシリーズのひとつです。
まず、安倍晋三ほか『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)です。今さら言うまでもなく、昨夏に暗殺された元総理大臣の回顧録です。そして、小説を3冊、村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社)は我が国を代表する小説家が6年ぶりに出版した新作長編小説です。ここまで入院中に読み、以下は退院後に読みました。すなわち、今野敏『審議官 隠蔽捜査9.5』(新潮社)はミステリ作家による警察小説のシリーズのスピンオフ短編集です。麻耶雄嵩『化石少女と7つの冒険』(徳間書店)もミステリ作家による高校を舞台にした学園ミステリです。新書は2冊で、源河亨『「美味しい」とは何か』(中公新書)は食から美学を考えており、「浦上克哉『もしかして認知症?』(PHP新書)はコロナ禍で懸念される認知症について豊富な情報が詰め込まれています。最後に、文庫本は3冊でアンソニー・ホロヴィッツ『殺しへのライン』(創元推理文庫)は探偵ダニエル・ホーソーンの謎解きを作家であるアンソニー・ホロヴィッツが取りまとめるシリーズ第3巻最新刊であり、ピーター・トレメイン『昏き聖母』上下(創元推理文庫)は7世紀のアイルランドを舞台にした修道女フィデルマのシリーズ最新邦訳です。
ということで、今年の新刊書読書は交通事故前の1~3月に44冊でしたが、入院によるブランクが3か月近くあり、今週ポストする9冊を合わせて53冊となります。年半分が過ぎて、例年の年間新刊書読書200冊はムリそうです。せめて、100冊の大台には乗せておきたいと希望しています。ただ、今週の読書感想文は、経済書がなく退院したばかりでもあり、軽いレビューで失礼しておきます。
まず、安倍晋三ほか『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)です。著者は、元総理大臣とインタビュアーのジャーナリストです。安倍晋三元総理は、繰り返しになりますが、昨年2023年7月8日の選挙演説中に暗殺されています。当たり前ですが、それ以前にジャーナリスト2人、すなわち、橋本五郎・尾山宏が聞き取った36時間に渡るインタビューを編集して収録しています。第1章が辞任直前の2020年を取り上げているほかは、第2章で第1次内閣当時までの2003-12年、さらに、第3章では第2次内閣の発足した2013年、などなど、基本的に時系列での章別構成となっています。第1章とともに、第6章だけは例外で、第6章では海外首脳の評価に当てられています。私はエコノミストですので、本書で多くの紙幅が割かれている外交関係は、まあ、外交官経験があるとはいえ、専門外ながら、ひとつの読ませどころとなっているように感じました。ジャーナリストが聞き取ったインタビューを編集した結果ですので、安倍元総理の自画自賛的な部分や一方的な解釈も見受けられ、特に、「財務省陰謀論」的な主張など、それなりに読み進むには注意を要すると感じる読者もいそうな気がします。なお、本書は交通事故にあった時点でリュックに持っていて、半分くらいを読み終えていましたが、入院中にもう一度最初から読み返しました。
次に、村上春樹『街とその不確かな壁』(新潮社)です。著者は、日本を代表する作家の1人であり、最近ではノーベル文学賞候補に上げられることもあります。といった大作家ですので、出版社も特設サイトを開設したりしています。17歳と16歳の高校生男女のカップルから始まって、男子高校生のその後のあり方を主人公に壁の中と外とでストーリーが進みます。主人公のほか、実態上の私設図書館のオーナー運営者であった子易さん、あるいは、イエローサブマリンのヨットパーカを着て図書館に通い詰めていた少年、特徴的な登場人物によって物語が彩られます。読者によっては、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』のパラレル・ワールドを思い出す人がいそうな気がします。私はこの作家の大ファンですし、まさに、「村上ワールド」全開といったこの作品はとても好きになりました。『海辺のカフカ』や最近の作品である『1Q84』、あるいは、『騎士団長殺し』などに見られた暴力的な描写もほとんどありません。これも私には好ましい点でした。最後に、私はタイトルも発表されていない2月の時点で大学生協に発注し、入院中にお見舞いに来てくれた同僚教員に持ってきてもらいました。感謝申し上げます。
次に、今野敏『審議官 隠蔽捜査9.5』(新潮社)です。著者は、日本でもっとも売れているミステリ作家の1人であり小説小説がひとつの特徴と考える読者も多いと思います。タイトル通り、「隠蔽捜査」シリーズのスピンオフ短編集です。2字ないし3字の漢字のタイトルを持つ9篇の短編から編まれています。このシリーズでは竜崎と伊丹の2人の警察キャリア官僚が登場しますが、伊丹の方は一貫して警視庁刑事部長である一方で、竜崎の方は警視庁大森署長だったり、神奈川県警刑事部長だったりします。しかし、竜崎は主人公ですが、伊丹の方は本書にはほとんど登場しません。相変わらず、竜崎のウルトラ合理的な姿勢が強調されています。しかし、その中にあって、本書の表題作となっている短編の「審議官」では、仕事をスムーズに運ぶために、というか、面倒を回避するために、竜崎が格上である先輩の警察庁審議官を持ち上げるような面を見せたりします。ただ、これも合理的な理由からなされている点が強調されています。私のようにこのシリーズのファンであれば、読んでおくべきだという気がします。
次に、麻耶雄嵩『化石少女と7つの冒険』(徳間書店)です。著者は、我が母校の京都大学ミス研出身のミステリ作家です。私と同年代に近い京大ミス研出身作家である綾辻行人や法月綸太郎などから10年ほど後輩ではないかと思います。舞台は京都市北部にあるお嬢様お坊っちゃまの通う私立ペルム学園で、主人公はタイトルにある化石少女、すなわち、古生物部の部長である神舞まりあ、高校3年生です。ミステリの謎解きを試みる探偵役です。そして、主人公をサポートするのは同じ古生物部の1年下の高校2年生の桑島彰、まりあの「従僕クン」となります。なお、本書には2014年出版の前作『化石少女』があり、前作では主人公の神舞まりあは高校2年生、桑島彰は高校1年生でしたので、10年近くを経て学年をひとつ進めたことになります。ペルム学園の古生物部には、1年生から高萩双葉が新入部員として加わります。前作では、部員の少ない「過疎部」として生徒会から古生物部が目をつけられていて、とてもあり得なくも毎月のように殺人事件が頻発するペルム学園で、廃部を回避すべく生徒会役員を犯人に見立てた主人公神舞まりあの推理を桑島彰が否定しまくる、というものでしたが、この作品でも前作と同じように、毎月のようにペルム学園で殺人事件が起こります。ただ、まりあが京都府内で恐竜の化石を発見したり、その話題性で大学への推薦入学が早々に決まったりという動きもあります。加えて、前作では真相が明らかにされない事件がいっぱいだったのですが。この作品では真相が明らかになる事件も少なくありません。私のようにこの作家のファンであれば、読んでおいて損はないと思います。
次に、源河亨『「美味しい」とは何か』(中公新書)です。著者は、九州大学の研究者であり、専門は哲学や美学です。本書では、いわゆる味覚について、甘いとか、しょっぱいとかの客観性ある表現ではなく、多分に主観的な要素を含む「美味しい」について、哲学や美学の観点から考察を進めています。甘いとか、辛いとかの記述的判断ではなく、「美味しい」あるいはその逆の「不味い」というのは評価的判断であることから、主観的な要素もあると私は考えますが、文化に根ざす客観性という概念を用いて、著者は食における美学的な表現を展開します。もちろん、他方で、食の芸術性についても考えていて、絵画や音楽といった「高級芸術」に比べて食については「定休芸術」、ないし、芸術ではないとする見解を否定し、同時に、食の芸術性は単なる味覚と嗅覚だけではなく、見た目の視覚や歯触り口当たりなどの触覚なども含めたマルチ・モーダルな観点から評価できる、と主張しています。確かに、私は花粉症の季節にはほぼほぼ嗅覚を失いますが、匂いを感じない時期に色を見ずに果実ジュースを飲むと、何なのか、まったく判らず、美味しさも大きく低減するのを経験することがあります。やや理屈っぽい内容ですが、普段から食べている食品について、より深く考える一助となります。
次に、浦上克哉『もしかして認知症?』(PHP新書)です。著者は、鳥取大学医学部の研究者であり、認知症学会の代表理事だそうです。認知症は発症してしまったら根治は不可能に近く、せいぜいが進行を遅らせるくらいしか出来ないと巷間よくいわれており、さらに、ここ3年ほどのコロナ禍の中で外部との交流なども不十分となり、本書で指摘されるまでもなく、認知症のリスクが高まっていることは明らかです。本書では、認知症発症の前の軽度認知障害を克服して、認知症に進まないために必要な情報を提供するとともに、鳥取ローカルでのいくつかの社会実験的な試みを基に、認知症について包括的に論じています。ただ、惜しむらくは、こういった医学専門家の著書にありがちな点で、認知症さえ防止できればそれ以外の疾病は問題とするに及ばず、に近い感覚が読み取れます。総合的な健康という観点が少し希薄な点が残念です。でも、認知症一点張りの本書とともに、読者の方で自分自身の総合的な健康をバランスよく考える一助には十分なります。
最後に、アンソニー・ホロヴィッツ『殺しへのライン』(創元推理文庫)(創元推理文庫)です。英語の原題は A line to Kill となっていて、2021年の出版です。作者は、『カササギ殺人事件』などで著名な英国のミステリ作家です。この作品は、探偵ダニエル・ホーソーンの事件解決を作家のアンソニー・ホロヴィッツが記述するというシリーズであり、『メインテーマは殺人』と『その裁きは死』に続く第3作です。第4作はすでに英国で出版されていて、タイトルは The Twist of a Knife と巻末の解説で紹介されています。本書では、まだ出版されていない第2巻のプロモーションのためにチャンネル諸島のオルダニー島で開催される文芸フェスにホーソーンとホロヴィッツが行ったところ、島内で連続殺人事件が発生し、島在住の大富豪でオンライン・カジノの経営者で、島に送電線を通す事業も手がけ、さらに、文芸フェスのスポンサーでもある人物とその妻が殺されます。犯人当てとともに動機の解明もテーマとなります。ただ、ミステリとしての謎解きは前作の『その裁きは死』の方が出来がよかったと私は感じました。ご参考まで。
最後に、ピーター・トレメイン『昏き聖母』上下(創元推理文庫)です。英語の原題は Our Lady of Darkness であり、2000年の出版です。作者は、英国の推理小説作家で「修道女フィデルマ」のシリーズ最新邦訳です。本書では、フィデルマのもっとも親しい友人の1人、というか、このシリーズではフィデルマの相棒を務めているサクソン人修道士のエイダルフが、フィデルマの兄王が統治するモアン王国と緊張関係にあるラーハン王国で殺人の罪に問われて有罪判決を受け、処刑の前日に救助に向かう、というところからストーリーが始まります。フィデルマはモアン王国から同行してきた武官らとともに調査を進め、エイダルフの無実を明らかにすべく事件の真相に迫ります。いつもながら、非常に合理的かつクリアな謎解きで、私の好きなミステリのシリーズのひとつです。
2023年05月28日 (日) 17:15:00
巨人も3タテして阪神8連勝
2023年05月27日 (土) 17:30:00
最終回に追い上げられながらも巨人を振り切って阪神7連勝
2023年05月26日 (金) 22:00:00
3か月近い入院で体重減少

上のグラフは今年2023年に入ってからの私のBMIの推移です。
正月三が日の寝正月から高めで始まって、冬を経て春から夏にかけて落ちるのが通例なのですが、今年は当然ながら、3月8日からの入院で大きく落ちています。入院中事故直後はともかくほぼほぼ毎日のように体重測定は続けていたりします。事故直後で起きることすら出来なかった期間は直線補間しています。
通常、私の場合、おおむね、標準的体型とみなされている22を少し下回る水準なのですが、最近では21を下回ってしまっています。入院中は圧倒的な運動不足ながら、実に適切にコントロールされた食事によって体重が増加しないように考えられているのかもしれませんが、私にとっては逆に食事、というか、摂取カロリーが不足していた気がしないでもありません。入院初期からカミさんに頼んでチョコなどの間食を差し入れてもらっていたのですが、それでも体重減少は防止できませんでした。
これから、少しずつ体調と体重を戻していきたいと考えています。
2023年05月25日 (木) 23:00:00
本日、退院しました
3月8日に交通事故にあってから、3か月近く入院加療していましたが、ようやく、本日、お陰さまを持ちまして、退院して我が家に帰宅しました。ご心配いただいていたみなさまがたに感謝申し上げます。大学に出勤するのは、たぶん、さ来週火曜日の教授会ではないかと思います。ブログも、かつてのような毎日更新はすぐには出来ませんが、ボチボチ、復活させたいと思います。
なお、どうでもいいことながら、上の写真は今週火曜日の病院食で出たうなぎ寿司です。とっても豪華だったので、ついつい、写真を撮ってしまいました。
2023年03月15日 (水) 15:00:00
ヘルメット
カミさんによると、事故の際のヘルメットが割れていたらしい。私の頭は何の損傷も発見されていない。代わりに壊れてくれたのだとしたら、有り難い限りである。立派に役目を果たしてくれました。
2023年03月07日 (火) 16:00:00
労働政策研究・研修機構(JILPT)のディスカッションペーパー「職業の自動化確率についての日米比較」の試算結果をどう見るか?
10年前のオックスフォード大学研究チームの研究成果 "The future of employment" から人工知能(AI)などの発達によって自動化される、というか、代替される職業に関する関心が高まっています。これに基づいて、先月2月28日付けで労働政策研究・研修機構(JILPT)から「職業の自動化確率についての日米比較」と題するディスカッションペーパーが公表され、かなりあからさまに試算していたりします。こういったマイクロな労働関係は私には専門外なのですが、とても興味ある分野ですので、簡単に取り上げておきたいと思います。まず、参照すべき労働政策研究・研修機構(JILPT)とオックスフォード大学のペーパーへのリンクは以下の通りです。なお、Frey and Osborne のワーキングペーパーは2017年にジャーナルに収録されています。Technological Forecasting & Social Change 114, 2017, pp.254-80 です。中身が違うのかどうかについて、私はチェックしていません。査読が入っているのであれば、多少とも修正はされているのだろうと想像するだけです。
そして、私の興味の対象である 日米における職業12(13)カテゴリー別自動化確率と就業者割合 をJILPTのディスカッションペーパーから引用すると以下の通りです。
大雑把に理解できなくもないですが、やや疑問あるのは、第1に、日米間で自動化確率に差があるのは当然ですが、総計での差が▲0.035であるにもかかわらず、カテゴリー別に見て、どうして、ここまで大きな差があるのか、という点です。いわゆるボリューム・ゾンで、日本の就業人口割合が10%を超えるカテゴリーを見ると、サービス職業従事者、販売従事者、事務従事者、生産工程従事者ではその差が▲0.1を超えており、▲0.2を超えているカテゴリーすらあります。にもかかわらず総計での確率の差が▲0.035という結果です。やや不思議な気がします。第2に、なぜかすべてのカテゴリーで日本の自動化確率が米国を下回っています。ディスカッションペーパーでは「同じ職種でも日本の方が,職務の遂行において,総じて知覚と巧緻性,創造的知性,あるいは社会的知性のいずれかについて米国より高い水準が求められることを意味している」(p.17)と指摘していますが、経営者団体から盛んに指摘される日本の労働者の生産性の低さは、アレは何だったのだろうか、という気がしますし、何よりも、日本では非正規雇用がこれだけ多いにもかかわらず、自動化確率が低いのは、大きな疑問です。
私の直感では、上のいずれの点においても、特に、第2の点については、客観的に計算された労働政策研究・研修機構(JILPT)の試算結果が正しいと考えています。ついでながら、ちょっとしたご縁もあって、労働政策研究・研修機構(JILPT)の研究者の中には何人か私と面識ある人もいて、このディスカッションペーパーは労働政策研究・研修機構(JILPT)の研究者が書いたものではありませんが、それなりに高い研究能力が認められます。ですから、日本の労働者はほぼほぼすべてのカテゴリーの職種で米国よりも総じて高い水準を維持しているにもかかわらず、低い賃金しか支払われていない、というのが私の直感に従った解釈となります。
- 千葉茂樹・福田節也 (2023) 「職業の自動化確率についての日米比較: Frey & Osborneモデルの再現と日本版O-NETデータへの拡張」、JILPT Discussion Paper 23-S-01、2023年2月
- Frey, Carl Benedikt and Michael A. Osborne (2013) "The Future of Employment: How Susceptible Are Jobs to Computerisation?" Working Paper, Oxford University
そして、私の興味の対象である 日米における職業12(13)カテゴリー別自動化確率と就業者割合 をJILPTのディスカッションペーパーから引用すると以下の通りです。
大雑把に理解できなくもないですが、やや疑問あるのは、第1に、日米間で自動化確率に差があるのは当然ですが、総計での差が▲0.035であるにもかかわらず、カテゴリー別に見て、どうして、ここまで大きな差があるのか、という点です。いわゆるボリューム・ゾンで、日本の就業人口割合が10%を超えるカテゴリーを見ると、サービス職業従事者、販売従事者、事務従事者、生産工程従事者ではその差が▲0.1を超えており、▲0.2を超えているカテゴリーすらあります。にもかかわらず総計での確率の差が▲0.035という結果です。やや不思議な気がします。第2に、なぜかすべてのカテゴリーで日本の自動化確率が米国を下回っています。ディスカッションペーパーでは「同じ職種でも日本の方が,職務の遂行において,総じて知覚と巧緻性,創造的知性,あるいは社会的知性のいずれかについて米国より高い水準が求められることを意味している」(p.17)と指摘していますが、経営者団体から盛んに指摘される日本の労働者の生産性の低さは、アレは何だったのだろうか、という気がしますし、何よりも、日本では非正規雇用がこれだけ多いにもかかわらず、自動化確率が低いのは、大きな疑問です。
私の直感では、上のいずれの点においても、特に、第2の点については、客観的に計算された労働政策研究・研修機構(JILPT)の試算結果が正しいと考えています。ついでながら、ちょっとしたご縁もあって、労働政策研究・研修機構(JILPT)の研究者の中には何人か私と面識ある人もいて、このディスカッションペーパーは労働政策研究・研修機構(JILPT)の研究者が書いたものではありませんが、それなりに高い研究能力が認められます。ですから、日本の労働者はほぼほぼすべてのカテゴリーの職種で米国よりも総じて高い水準を維持しているにもかかわらず、低い賃金しか支払われていない、というのが私の直感に従った解釈となります。
2023年03月06日 (月) 11:00:00
木曜日に公表される昨年2022年10-12月期GDP統計速報2次QEの予想やいかに?
先週の法人企業統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、今週木曜日の3月9日に昨年2022年10~12月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。1次QEは小幅なプラス成長でしたが、大きな改定幅ではないものの、上方改定を予測するシンクタンクが多くなっている印象です。でも、下方改定を予想するシンクタンクもあったりします。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である2022年10~12月期ではなく、足元の今年2023年1~3月期から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。ただ、2次QEですので法人企業統計の「オマケ」的な扱いのシンクタンクがほとんどです。例外は、みずほリサーチ&テクノロジーズと東京財団政策研究所であり、みずほリサーチ&テクノロジーズについては下のテーブルに引用しただけではなく、実は、もっと長々と足元から先行きの見通しについて言及されています。また、東京財団政策研究所のナウキャスティングについては、もはや、昨年2022年10~12月期からすでに今年2023年1~3月期に視点が移っていたりします。ですので、正確にいえば2次QE予想ではないのですが、一応、テーブルに収録しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
上のテーブルの通り、ということで、繰り返しになりますが、私の印象としては法人企業統計からして小幅な上方改定、ということなのですが、下方改定を予測するシンクタンクもあります。ただ、下方改定されるとしても、設備投資と在庫の下方改定が主因と私は見ており、設備投資はともかく在庫調整が進むのであれば、経済の姿としてはそれほど悲観する必要はありません。その意味で、上のテーブルに引用した第一生命経済研究所の見方は、ちょっと見当違いかもしれません。
ということで、成長率については、上方改定にせよ、下方改定にせよ、小幅にとどまるということですので、2次QEから目を転じて、上に引用した各シンクタンクのリポートから、2点だけ興味深いトピックを指摘しておきたいと思います。第1に、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから、日銀の総裁・副総裁の交代に関連して、金融緩和の方向性は不変としても、今年2023年4~6月期に長期金利目標が撤廃され、来年2024年10~12月期にマイナス金利が解除されると予想しています。第2に、これは上のテーブルに引用しておきましたが、明治安田総研のリポートでは、2023年度前半に景気転換点を迎える可能性について言及されています。要因としては見ての通りで、国内の食料品などの値上がりに伴う消費停滞に加えて、米国経済の減速次第では、「日本も年度前半に景気の山を付ける可能性が否定できない」と結論しています。果たしてどうなのでしょうか?
下のグラフはのリポートから引用しています。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | +0.2% (+0.6%) | n.a. |
日本総研 | +0.2% (+0.9%) | 実質GDP成長率は前期比年率+0.9%(前期比+0.2%)と、1次QE(前期比年率+0.6%、前期比+0.2%)から小幅に上方改定される見込み。 |
大和総研 | ▲0.0% (▲0.0%) | 2次速報では、民間在庫の減少がGDPを下押ししたものの個人消費や輸出は底堅く推移し、実態としては、GDP成長率が示すよりも景気の回復基調は強かったことが改めて示されるだろう。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +0.4% (+1.5%) | 先行きもサービス消費やインバウンド需要の回復が継続する一方、欧米を中心とした海外経済の減速が逆風になり、回復ペースは緩やかに。1~3月期は年率+1%弱の成長にとどまると予測。 |
ニッセイ基礎研 | +0.3% (+1.0%) | 3/9公表予定の22年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.3%(前期比年率1.0%)となり、1次速報の前期比0.2%(前期比年率0.6%)から上方修正されるだろう。 |
第一生命経済研 | +0.1% (+0.4%) | 22年10-12月期はプラス成長とはいえ伸びは僅かなものにとどまり、7-9月期の落ち込み分を取り戻せない。景気の持ち直しのペースが鈍いものにとどまっていることが改めて確認される見込みだ。 |
伊藤忠総研 | +0.2% (+0.8%) | 10~12月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比+0.2%(年率+0.8%)と1次速報から小幅上方修正される見通し。個人消費が持ち直しインバウンド需要も回復しているが、財の輸出減と設備投資の停滞で成長ペースが期待されたほど高まっていない姿は変わらず。 |
三菱総研 | +0.1% (+0.2%) | 2022年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.1%(年率+0.2%)と、1次速報値(同+0.2%(年率+0.6%))から下方修正を予測する。 |
明治安田総研 | +0.3% (+1.0%) | 先行きはエネルギー関連や食品など、生活必需品の価格高騰が個人消費の下押し圧力となる状況が続くとみられる。1月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、コアCPI)は前年比+4.2%と、前月から+0.2%ポイント上昇幅が拡大し、約41年ぶりの高い伸びとなった。今後は高めの賃上げや、政府の物価高騰対策が個人消費の下支え役になるものの、食品メーカーによる値上げトレンドが予想以上に長期化するリスクがあり、2023年度前半にかけての個人消費はいったん厳しさを増す展開を予想する。 海外経済の動向を見ると、中国は、すでに都市部を中心に感染者数がピークアウトしたとみられるものの、不動産市場の低迷が続くことで、景気回復ペースは緩慢なものにとどまる可能性が高い。米国では、インフレの高止まりに、累積的な利上げの影響の波及が加わることで、今後大方の予想以上に景気が悪化するリスクがある。日本経済の方向性は米国経済の動向に大きく左右される。米国経済が減速度合いを強めるようであれば、日本も年度前半に景気の山を付ける可能性が否定できない。 |
東京財団政策研 | n.a. (n.a.) | モデルは、2023年1-3月期のGDP(実質、季節調整系列前期比)を、0.18%と予測。※年率換算: 0.72% |
上のテーブルの通り、ということで、繰り返しになりますが、私の印象としては法人企業統計からして小幅な上方改定、ということなのですが、下方改定を予測するシンクタンクもあります。ただ、下方改定されるとしても、設備投資と在庫の下方改定が主因と私は見ており、設備投資はともかく在庫調整が進むのであれば、経済の姿としてはそれほど悲観する必要はありません。その意味で、上のテーブルに引用した第一生命経済研究所の見方は、ちょっと見当違いかもしれません。
ということで、成長率については、上方改定にせよ、下方改定にせよ、小幅にとどまるということですので、2次QEから目を転じて、上に引用した各シンクタンクのリポートから、2点だけ興味深いトピックを指摘しておきたいと思います。第1に、みずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから、日銀の総裁・副総裁の交代に関連して、金融緩和の方向性は不変としても、今年2023年4~6月期に長期金利目標が撤廃され、来年2024年10~12月期にマイナス金利が解除されると予想しています。第2に、これは上のテーブルに引用しておきましたが、明治安田総研のリポートでは、2023年度前半に景気転換点を迎える可能性について言及されています。要因としては見ての通りで、国内の食料品などの値上がりに伴う消費停滞に加えて、米国経済の減速次第では、「日本も年度前半に景気の山を付ける可能性が否定できない」と結論しています。果たしてどうなのでしょうか?
下のグラフはのリポートから引用しています。
