2018年02月14日 (水) 19:39:00

2017年10-12月期GDP統計1次QEは8四半期連続のプラス成長!

本日、内閣府から昨年2017年10~12月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.1%、年率では+0.5%を記録しました。8四半期連続のプラス成長で内需主導ながら、+1%をやや下回るといわれている潜在成長率に達しない成長率でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

17年10~12月GDP、年率0.5%増 内需けん引
内閣府が14日発表した2017年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.1%増、年率換算では0.5%増だった。プラスは8四半期連続で、同じ基準で数値をさかのぼることができる1980年以降では約28年ぶりの長さ。輸入の伸びで外需は振るわなかったが、個人消費や設備投資など内需の伸びで補った。
QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.2%増で、年率では0.9%増だった。生活実感に近い名目GDPは前期比0.0%減、年率では0.1%減だった。名目は5四半期ぶりにマイナスだった。
前期比で0.1%増となった実質GDPをけん引したのは内需で、0.1%分の押し上げ効果があった。個人消費は0.5%増と、2四半期ぶりにプラスだった。設備投資は0.7%増と、5四半期連続でプラスだった。生産活動が回復し、設備投資需要が高まった。住宅投資は2.7%減。公共投資は0.5%減。民間在庫の変動は成長率を0.1%分押し下げた。
外需は0.0%分の押し下げ効果があった。輸出は2.4%増、輸入は2.9%増だった。半導体製造装置などが好調でアジア向けを中心に輸出が拡大したが、輸入も増加した。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比0.0%上昇した。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.5%上昇した。
同時に発表した17年通年のGDPは実質で前年比1.6%増、生活実感に近い名目で1.4%増だった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/10-122017/1-32017/4-62017/7-92017/10-12
国内総生産GDP+0.4+0.3+0.6+0.6+0.1
民間消費+0.1+0.3+0.9▲0.6+0.5
民間住宅+0.8+1.2+0.9▲1.5▲2.7
民間設備+1.6+0.1+1.2+1.0+0.7
民間在庫 *(▲0.1)(▲0.0)(▲0.1)(+0.4)(▲0.1)
公的需要▲0.5+0.1+1.2▲0.5▲0.2
内需寄与度 *(+0.1)(+0.2)(+0.9)(+0.0)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.4)(+0.1)(▲0.3)(+0.5)(▲0.0)
輸出+2.7+2.0+0.0+2.1+2.4
輸入+0.6+1.7+1.9▲1.2+2.9
国内総所得 (GDI)+0.1▲0.1+0.8+0.5▲0.2
国民総所得 (GNI)+0.1+0.1+0.9+0.7▲0.3
名目GDP+0.4+0.1+0.9+0.6▲0.0
雇用者報酬 (実質)+0.1▲0.2+1.1+0.6▲0.4
GDPデフレータ▲0.1▲0.8▲0.3+0.2+0.0
内需デフレータ▲0.4+0.0+0.4+0.5+0.5


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2017年10~12月期の最新データでは、前期比成長率が8四半期連続でプラスを示し、赤い消費と水色の設備投資がプラスの寄与を叩き出している一方で、黒の外需(純輸出)や灰色の在庫がマイナス寄与となっているのが見て取れます。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは中央値が前期比+0.2%成長、年率では+0.9%だったわけで、何人かのエコノミストも「物足りない」感を表明しているようですが、すでに、1次QE予想を取りまとめた先週金曜日2月9日付けの記事で指摘しておいたように、この市場の事前コンセンサスは高過ぎます。ただ、成長率の水準として素直に見ても、潜在成長率をやや下回るくらいですから、市場の事前コンセンサスと比較して、というよりは、潜在成長率と比べて、やや物足りない成長であった、ということは出来るかもしれません。また、あくまで言い訳ですが、私の実感は前期比でマイナスとなったGDIやGNIの所得面に起因しているのかもしれません。繰り返しになりますが、苦しい言い訳です。他方、ちゃんと数字を見ると、昨年2017年年央は4~6月期も7~9月期もともに前期比で+0.6%、前期比年率ではともに+2.0%を超える高成長を続けており、2017年通年でも前年比で+1.4%成長でしたから、10~12月期にこの程度の下振れはあり得る許容範囲だという気がしないでもありません。特に、天候条件などに起因する部分が小さくなさそうな印象ですので、なおさらです。10~12月期の成長を牽引した消費については、4~6月期に大きなプラスを記録した後、7~9月期にマイナスとなり、また、10~12月期にプラスに戻るなど、矢荒っぽい動きですが、天候要因もあって、ならして見る必要があるというのは私の従来からの主張です。住宅投資はやや下向き加減の動きながら、設備投資はジワジワと増勢を加速させる可能性もあります。在庫投資は成長にはマイナス寄与ながら、在庫調整が進んでいると考えるべきです。ただ、輸出の動向については為替がやや円高に振れていることもあり、先行きは注視する必要があります。そして、何といっても、金融市場の動向には不透明感が残ります。米国の長期金利の動向や、もちろん、為替動向など、相場モノだけに見通しがたいものがありますが、我が国の金融政策がさらに緩和を進めることがどこまでできるのか、私にはよく判りませんので、不透明感は不透明感として残るような気がします。

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今回の2017年10~12月期1次QEで着目したのは物価の動向です。すなわち、上のグラフは少し長めのスパンでデフレータの上昇率をプロットしています。GDPデフレータ、国内需要デフレータ、消費デフレータです。消費者物価(CPI)などと同じように、いずれのデフレータも季節調整していない原系列のデフレータの前年同期比を取っています。GDPデフレータの動きで注意すべきなのは、企業物価(PPI)や消費者物価(CPI)と違って、輸入物価が控除項目となることです。ですから、石油価格が上昇して輸入デフレータが上昇すると、他の条件にして同じであれば、GDPデフレータは下落します。そのため、2017年10~12月期にはGDPデフレータ上昇率はゼロでしたが、消費デフレータや国内需要デフレータが上昇し、同時に輸入デフレータも上昇してのキャンセルアウトの面もあります。例えば、2017年10~12月期には輸入デフレータは+8.4%の上昇を示しています。しかし、それを加味しても、消費デフレータと国内需要デフレータについては2017年年初から、GDPデフレータについても2017年年央から、上昇率がマイナスの下落からプラスに反転し、少しずつ上昇幅を拡大しているのが見て取れると思います。ホームメード・インフレにつながる動きと私は受け止めています。今春闘に本格的な賃上げが実現されれば、デフレ脱却が加速するのではないかと期待しています。
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2018年02月13日 (火) 22:27:00

企業物価(PPI)は上昇率を縮小させつつもヘッドラインの国内物価は+2.7%の上昇を記録!

本日、日銀から1月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計からやや上昇幅を縮小して+2.7%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業物価指数、前年比2.7%上昇 原油高で
日銀が13日に発表した1月の企業物価指数(2015年=100)は100.3で前年同月比2.7%上昇した。前年実績を上回るのは13カ月連続。上昇率は市場予想の中央値と同じだった。原油高で石油関連商品の価格が上昇した。
前月比では0.3%上昇した。ガソリンや軽油といった石油・石炭製品やエチレンなどの化学製品、銅やアルミニウムなどの非鉄金属や鉄鋼の価格が上がった。
円ベースの輸出物価は前年同月比で1.8%上昇した。前月比での輸出物価は円高で0.4%下落した。
企業物価指数は企業間で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年同月比で上昇したのは390品目、242品目が下落した。下落品目と上昇品目の差は148で、2017年12月(確報値)の126品目から拡大した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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前年同月比で+2.7%の上昇率を示した1月の国内物価のうち、特に高い上昇率、すなわち、2桁の上昇率を示した品目は、石油・石炭製品+12.3%と非鉄金属+10.5%となっています。もちろん、石油・石炭製品は輸入物価から波及しているわけで、企業物価のうちの輸入物価では1月の上昇率で見て、石油・石炭・天然ガスが+13.6%、金属・同製品が+12.2%の上昇となっています。しかし、輸入物価のうち、原油については昨年2017年12月+34.0%の後、今年1月には+15.3%まで上昇率が鈍化してきており、国際商品市況における石油価格次第ながら、何度かこのブログで書いたように、石油価格が牽引する物価上昇がどこまで続くかは疑問なしとしません。ただ、引用した記事の最後の部分にあるように、品目数で見て上昇品目がジワジワと増加を示しており、それだけ物価上昇の裾野が広がっているともいえます。単なるエネルギー価格の波及なのか、それとも金融政策による物価の押し上げ効果なのか、現段階では判断が難しいところですが、賃上げによる消費のサポートがあれば、需給両面からさらに物価上昇につながりやすくなるのはいうまでもありません。
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2018年02月12日 (月) 18:43:00

週末恒例のお天気の話題を昨日に続いてもうひとつで、台風2号発生!

週末はついつい土曜日が読書感想文、日曜日が音楽やお天気の話題、というパターンが多いんですが、3連休ですので、昨日のサクラの開花情報に続いて、今日も無難なお天気の話題で、何と、2月にして早くも台風2号が発生したらしいです。ウェザーニューズのサイトから引用した台風情報の地図画像は以下の通りです。

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まったく私なんぞの知らないうちに、南の海上で台風1号が発生していたんでしょうね。上の台風2号の名称は「サンバ」、日本への影響はないそうです。
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2018年02月11日 (日) 15:32:00

暖かい週末にサクラの開花を考える!

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やや旧聞に属する話題かもしれませんが、2月7日付けで気象協会から「第1回 桜の開花予想」が明らかにされています。上の画像と以下の解説は日本気象協会のサイトから引用しています。

各地の桜(ソメイヨシノほか)の2018年予想開花日の傾向
2018年の桜の開花は、九州で平年並みかやや早く、その他全国的に平年並みでしょう。開花が最も早いと予想されるのは宮崎と熊本、高知でいずれも3月21日、次いで長崎と鹿児島は22日、東京や福岡は24日の予想です。3月末までに九州から関東南部にかけて次々と開花し、4月上旬には山陰から北陸、関東北部でも続々と開花の便りが届く見込みです。桜前線は4月中旬以降に東北を北上し、津軽海峡を渡るのは4月末でしょう。
この冬は、全国的に気温が低く経過し、特に1月下旬には数年に一度の非常に強い寒気が流れ込み、西・東日本を中心に記録的な低温となりました。このため、桜の花芽は休眠打破が順調に進んでいると考えられます。この先の気温は、2月中旬まで西日本を中心に平年より低い見込みですが、2月下旬から4月にかけて平年並みとなるため、桜の開花も全国的に平年並みでしょう。


暖かい週末3連休中日にサクラの開花に関する情報でした。
引用ばかりですが、悪しからず。
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2018年02月10日 (土) 11:42:00

今週の読書は学術書2冊を含めて計6冊!

今週は、やっぱり、6冊読んだんですが、ロビン・ケリー『セロニアス・モンク』のボリュームがものすごくて、私が足かけ3日かけて読まねばならない分量の本というのは久し振りな気がします。ほかにも、重厚な学術書が2冊含まれていて、それなりに時間を取って読書した気がします。なお、最後のオーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』は数年前の単行本出版の際に読んだ記憶がありますが、とてもスンナリと借りられたので文庫本も読んでしまいました。

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まず、寺西重郎『歴史としての大衆消費社会』(慶應義塾大学出版会) です。著者は金融史がご専門で長らく一橋大学をホームグラウンドとしていた研究者、エコノミストです。出版社も考慮すれば、明らかに学術書と考えるべきであり、読み進むためのハードルはそれなりに高いと考えるべきです。本書で著者は、我が国戦後の高度成長期について、極めて旺盛な大衆消費によって支えられていた特異な時期であったとし、敗戦に際しての方向感覚の喪失と政府介入によって生じた一時的な現象であったとの結論を導いています。私は一昨年に高度成長期研究の成果として経済計画の果たした役割に関する論文を取りまとめましたし、開発経済学の視点ながら、それなりに高度成長期に関する見識は持っているつもりですが、この著者の結論は間違っています。まず、著者が結論に至る論点は3点あり、第1に、戦後日本での爆発的な消費拡大は、敗戦による環境の変化に対して、人々と政府が「さしあたって」消費と生活様式の西洋化を決意したことによって引き起こされ、第2に、大衆消費を支えた分厚い中間層は、金融と産業に対する政府規制が生み出すレントの分配によって支えられており、1970年代後半以降に規制緩和が進展した結果、そのレントが消滅して高度成長は終焉したとされ、第3に、1980年代以降の日本で観察された消費の差異化は、普遍的なポストモダンの動きの一環ではなく、伝統的な消費社会への回帰現象であろう、というものです。そして、相変わらず、英国をはじめとする欧米のキリスト教的な供給が牽引する経済と我が国の仏教的な需要が牽引する経済の差をチラチラと出しています。高度成長期に政府が一定の役割を果たしたのは事実ですし、ある意味で、レントを生じていたのも事実です。そして、そのレントは当時極めて希少性の高かった外貨の配分から生じており、それを天下りなどに使っていたわけです。しかし、一般に19世紀後半の1870年代とされるルイス的な転換点は、我が国の場合は高度成長期であった可能性が高く、まさに農業などの低生産性の生存部門から製造業などの近代的な資本家部門に労働が移動したことが高度成長の基本を支えていたわけであり、その時期に大衆消費社会が訪れたのは戦争の期間と終戦直後の混乱期に抑制されていた消費が、米国をはじめとする当時の先進国との技術的なギャップをキャッチアップする過程で、大きく盛り上がった、と考えるべきです。1970年代半ばに高度成長が終焉したのは、石油ショックによる資源制約に起因する成長の屈折ではなく、ましてや、本書で主張されているような規制緩和によるレントの消滅ではあり得ません。立派なエコノミストによる重厚な学術書なんですが、中身はやや「トンデモ」な歴史観を展開しているような気がします。

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次に、ハンナ・ピトキン『代表の概念』(名古屋大学出版会) です。著者はドイツ生まれでユダヤ人であるために米国に渡り、カリフォルニア大学の旗艦校であるバークレイ校の研究者の後、現在は名誉教授となっています。その代表作のひとつである本書に対してはリッピンコット賞が授賞されています。英語の原題は The Concept of Representation であり、50年前の1967年の出版です。どこからどう見ても完全な学術書であり、代表論の古典とすらいえますので、読み進むためのハードルは決して低くありませんが、欧米でポピュリズムの影響力が大きくなっている昨今の政治情勢の中で、決して雲の上の学術だけの課題ではないと私は考えています。ということなんですが、何分、原題にも含まれている英語の Representation は日本語にすると、代表と表現のやニュアンスの異なる2種類の邦訳が当てはめられ、必ずしもスッキリしない場合も見受けられます。ホッブズから始まって、バークなどの理論家や実践家、すなわち、民主主義下での代表的な政治家の考えを引用しつつ、古典古代のような直接民主主義から自由主義まで、思想の土台より政治的代表の意味を徹底的に検討を加えています。政治的な代表だけでなく、君主制の象徴 symbol、あるいは、代理 proxy など、代表に類似する概念と併せて素材とされています。そのあたりの代表と象徴や代理の違いは、それなりに、理解できる一方で、代表の中でももっとも大きなポイントとなるには、いうまでもなく、民主主義下において投票によって議会の構成員を国民の代表として選出する際の代表の考え方です。バークの議論ではありませんが、この代表が何らかのグループの利害関係を代表するのか、それとも集合名詞としての国民、あるいは、国家の利益を代表するのかの議論は分かれることと思います。地域なり、職能なり、階級なり、何らかの利害集団の利益を代表するだけであれば、議会の構成員としての見識や経験はまったく不要であり、まさに、ポピュリズムそのものですし、後者の国民全体あるいは国家の利益を代表するのであれば、極めて高い見識を必要とする一方で、選挙を実施する意味がありません。というか、マニフェストや公約で示すのは、利害調整の際のポジションではなく、見識の高さを競うのかもしれません。いずれにせよ、50年前のテキストながら、ポピュリズムが台頭しつつある21世紀でもまだまだ参考とすべき内容を含んでいる気がします。

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次に、伊東ひとみ『地名の謎を解く』(新潮選書) です。著者は奈良の地方紙のジャーナリストの出身で、私よりも年長ですのでリタイアしているんではないかと思わないでもありません。地名については在野の民俗学の権威のひとりであった柳田國男などにも同様の研究がありますし、ほかにもいろんな調査研究結果があるんでしょうが、本書では奈良ローカルらしく万葉仮名の表現まで引用して地名の起源や変遷について跡付けています。私が本書を読もうと思った本来の目的である雑学的な知識の詰め合わせは p.200 以降の最後の最後に取りまとめられています。本書の著者の前著がキラキラネームに関する雑学書でしたので、平仮名名の地名で外来語由来の地名などにやや嫌悪感、とまではいわないまでも、何らかの違和感を持って取り上げているような気がしますが、私はそれをいい出せばアイヌ語や沖縄由来の地名についても、何らかの色メガネを持って見られそうな気がして、もう少しオープンな視線で地名を見てみたい気がします。さらに、地名と姓名の入れ込み、というか、地名が姓になった利、逆に、姓が地名になったりした例も多いような気がします。例えば、我が家が引っ越し前に住まいしていた青山なんぞは、赤坂とともに、徳川時代に屋敷を置いていた旗本の姓に由来するんではないかと記憶しています。決して青山なる山があったり、赤坂なる坂があったりしたわけではありません。同様に、本書で縄文や弥生まで地名の起源をさかのぼるのが、どこまで意味があるのかどうかも私には不明です。地名の起源が古ければ有り難いというわけでもないでしょうし、実際に、本書に何度か出て来る表現を借りれば、ホントにフィールドワークをしたのであれば、歴史を経て大きな変更があった可能性もありますが、産物や景観なども含めた起源をフィールドワークして欲しかった気もします。ただ、東京になる前の江戸の起源がよどだったのは知りませんでした。あと、「谷」の漢字を「や」と読むのか、「たに」と読むのか、さらに、万葉仮名を持ち出すのであれば、決して漢字を音読みしない古今集タイプも同時に考え、音読み地名と訓読み地名についても、平仮名地名とともに、もう少し掘り下げて欲しかった気がします。まあ、私の期待値が高過ぎた気もしますし、努力賞なのかもしれません。

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次に、ロビン・ケリー『セロニアス・モンク』(シンコーミュージック・エンタテイメント) です。著者は2009年出版時点では南カリフォルニア大学の、そして、現在ではカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の米国史、黒人史などの研究者です。英語の原題はそのままに Thelonious Monk であり、繰り返しになりますが、2009年の出版です。歴史研究者が14年に渡って調べ上げたジャズ・ピアニスト、セロニアス・モンクの生涯をカバーするノンフィクションの伝記です。二段組みの本文だけで670ページを超え、索引と脚注で30ページあり、全体で700ページを超える極めて大きなボリュームの本であり、何と、大量の読書をこなす私が足かけ3日かけて読んだ本も、最近ではめずらしい気がします。一応、ていねいには書かれていますが、登場人物については、それなりのバックグラウンドを知っておいた方が読書がはかどります。当然ながら、モンクを知らないし、聞いたこともない人にはオススメできません。邦訳が出版された昨年2017年はモンク生誕100年ということで、1917年に生まれて、幼少のころからニューヨークで過ごし、1982年に64歳の生涯を閉じるまで、モダンジャズの歴史そのものの人生を送った偉大なるピアニストの生涯を極めて詳細に跡付けています。ビバップからモダンジャズの誕生については、チャーリー・パーカーとディジー・ガレスピーに果たした役割が大きいと評価されて来て、ピアニストとしてはモンクよりもバド・パウエルの存在を重視する見方が広がっている中で、モンクの再発見につながる本書は貴重な見方を提供しているといえます。単に音楽生活だけでなく、その基盤となったネリーとの結婚生活や、パノニカ・ド・コーニグズウォーター男爵夫人との交流や援助など、もちろん、音楽シーンでのほかのジャズ・プレーヤー、プロモーター、マイナーレーベルのオーナー、レコーディング・エンジニアなどなどとの人間関係も余すところなく描き出しています。化学的不均衡により、モンクの双極障害、統合失調症などによる特異な行動や言動などがどこまで説明できるのかは私には理解できませんが、ピアノの弾き方がとても独特なのは聞けば理解できます。決して、音楽の名声の点でも、もちろん、金銭的にも、恵まれた人生であったかどうかは疑問ですが、モダンジャズの開拓者、先導者としてのモンクの役割を知る上で、そして、音楽シーンを離れたモンクの人生を知る上で、十分な情報をもたらしてくれる本だといえます。ただし、かなりのボリュームですので、粘り強く読み進むことが出来る人にオススメです。

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次に、関満博『日本の中小企業』(中公新書) です。著者はご存じの製造業研究などで有名な一橋大学をホームグラウンドにしていた研究者であり、エコノミストというよりは経営学が専門なのかもしれません。繰り返しになりますが、中小企業というよりは、製造業がご専門のような気がしますが、本書では中小企業にスポットを当てています。特に、最近の中小企業経営を取り巻く環境変化として、国内要因の人口減少や高齢化、海外要因として中国をはじめとする新興国や途上国における人件費の安価な製造業の発展を上げています。その上で、第1章では統計的な中小企業の把握を試み、第2相と第3章では企業の観点から、また、第4章では継承の観点から、大量にケーススタディを積み上げ、繰り返しになりますが、第5章では中小企業経営の環境変化、すなわち人口減少・高齢化とグローバル化の進展について考察を進めています。なかなかに元気の出る中小企業のケーススタディであり、どうしても製造業の割合が高いながらも、高い技術に支えられた中小企業の存在意義を明らかにしています。ただ、こういったケーススタディによる研究成果、というか、本書のようなサクセス・ストーリーのご提供に関しては、2点だけ不安が残ります。第1に、これらの成功例のバックグラウンドに累々たる失敗例が存在するのではないか、という点です。我が国では米国などと比べると、起業件数とともに廃業件数も少なく、企業経営が米国ほど動学的ではない、とされていますが、他方で、その昔に「脱サラ」と称されたコンビニ経営などが、一定期間終了後に店仕舞いしている実態も、これまた目にして実感しているわけで、当然ながら、起業がすべて成功するわけもなく、成功例の裏側に失敗例が数多く存在し、単に成功例と失敗例は非対称的にしか扱われていない可能性があります。第2に、最近の中小企業経営の環境変化の中で、非製造業における人手不足について情報が不足しています。本書の著者の専門分野からして、製造業、特に、かなり高い技術水準を有している製造業に目が行きがちで、それだけで成功確率が高まるような気もしますが、建設や運輸、さらに、卸売・小売といった非製造業の中小企業もいっぱいあり、昨今の人手不足の影響はこれら非製造業の中小企業ではかなり大きいのではないか、少なくとも製造業よりもこういった非製造業への影響の方が大きそうな気もします。そういった、否定的な情報が、失敗例にせよ、人手不足の非製造業への影響にせよ、意図的に隠しているわけではないんでしょうが、ほとんど提供されておらないように見受けられなくもなく、技術力の高い製造業の成功例だけが取り上げられているおそれがあるのか、ないのか、やや気にかかるところです。

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最後に、ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』(河出文庫) です。文庫本で出版されたので借りて読んでみました。私は単行本も読んでいて、2013年5月24日付けの読書感想文で取り上げています。その際に、私の知り合いの表現を引いて、「オーツの入門編として最適な1冊」と書いています。詳細は省略します。
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2018年02月09日 (金) 21:43:00

来週公表予定の2017年10-12月期1次QE予想やいかに?

先週水曜日1月31日の鉱工業生産指数(IIP)をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろい、来週の2月14日に昨年2017年10~12月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の1~3月期から2018年の景気動向を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクはかなり多く、特にみずほ総研は詳細でしたので超長めに引用しています。もう1機関、三菱UFJリサーチ&コンサルティングも長めの引用となっていますが、その理由については後ほど取り上げます。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは一番左列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.3%
(+1.0%)
2018年1~3月期を展望すると、食料品やエネルギー価格の上昇による消費者マインドの悪化などが下押し要因となるものの、高水準の企業業績を背景に、工場新設や機械投資などが下支えすることで、緩やかな回復基調が持続する見込み。
大和総研+0.3%
(+1.0%)
先行きの日本経済は、基調として足下の緩やかな拡大が継続するとみている。個人消費を中心とした内需は一進一退ながら堅調な推移が続くと同時に、世界経済の回復を背景とした外需の拡大が日本経済の成長を支えるだろう。ただし、FedやECBの出口戦略に伴う外需の下振れリスクには警戒が必要である。
みずほ総研+0.2%
(+1.0%)
2018年の日本経済を展望すると、海外経済の回復を背景に輸出の増加が続くとともに、内需も底堅く推移し、日本経済は緩やかな回復基調を維持するとみている。項目別にみると、輸出は、新型iPhoneによる大きな押し上げ効果は期待薄となったものの、データセンターや車載向け半導体、半導体製造装置等の需要拡大が引き続き押し上げ要因となるだろう。実際、機械輸出に先行する傾向のある海外からの機械受注は、昨春以来高い伸びを維持している。設備投資は、五輪関係や都市再開発関連の案件が進捗すること、人手不足の深刻化を背景に省力化・効率化投資の積み増しが見込まれることから、回復基調を維持するだろう。個人消費については、堅調な雇用・所得情勢や株高が追い風となろう。ただし、このところ食料品やガソリンといった生活必需品の価格が上昇していることから、家計の節約志向の強まりには注意が必要だ。
リスク要因に目を向けると、世界的な資産価格の調整や円高の進行など金融市場が大きく変動すれば、不確実性の上昇を通じて実体経済に悪影響を及ぼすことになるだろう。中国における構造改革(不動産投機の抑制や過剰債務の調整)の進展も、その舵取り次第では景気が下振れする可能性がある。北朝鮮情勢の悪化など、地政学リスクにも引き続き留意が必要だ。
ニッセイ基礎研+0.2%
(+0.8%)
先行きについても、海外経済の回復に伴う輸出の増加、企業収益の改善を背景とした設備投資の回復が続くことが予想される。一方、名目賃金の伸び悩みや物価上昇に伴う実質所得の低迷から家計部門は厳しい状況が続きそうだ。当面は企業部門(輸出+設備投資)主導の経済成長が続く可能性が高い。
第一生命経済研+0.2%
(+0.8%)
先行きについても、景気は好調に推移するとみられる。米国を中心として海外経済が回復傾向を続けるとみられるなか、輸出は増加基調で推移する可能性が高いことに加え、設備投資も企業収益の増加や高水準の企業マインドを受けて増加傾向が続き、景気を押し上げる。1-3月期以降は再び成長率が高まることが予想される。
伊藤忠経済研+0.2%
(+0.8%)
10~12月期は内閣府が試算する潜在成長率1.1%を下回ることになるが、既に需給ギャップは7~9月期時点で需要が供給力をGDP比0.7%上回っており、10~12月期においてもGDP比0.6%程度の需要超過状態が見込まれる。したがって、デフレ脱却に向けて前進はしないが後退したわけでもない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.0%
(+0.0%)
ゼロ成長となる原因は、第一に、個人消費が小幅ながら2四半期連続で前期比マイナスとなることである。10月に天候不順の影響で落ち込んだ後は持ち直しているが、落ち込みを埋めるまでには至っていない。また、物価が上昇していることも、実質値の押し下げに寄与したとみられる。第二に、住宅投資、公共投資がすでにピークアウトしており、いずれも2四半期連続で前期比マイナスとなると見込まれる。さらに、スマートフォンなど情報通信機械を中心に輸入が堅調に増加すると予想される。最後に、在庫投資の寄与度が7~9月期に急拡大した反動により、マイナス寄与に転じる可能性がある。
三菱総研+0.1%
(+0.4%)
2017年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.1%(年率+0.4%)と8四半期連続のプラス成長を予測する。外需は若干のマイナス寄与となるものの、内需は消費・設備投資を中心に底堅く推移した。


ということで、下の方にある三菱系2機関を別とすれば、引き続き、+1%もしくはそれに近い成長率で、8四半期連続のプラス成長を記録するものと見込まれています。需要項目別に詳しく見ても、昨年2017年7~9月期にマイナスを記録した消費もプラスに戻り、設備投資もプラスを続ける、という形で、内需中心の成長という望ましい姿が示されているように思います。ただ、成長率そのものは2017年4~6月期や7~9月期のような年率+2%超からは大きく縮小するものの、我が国経済の潜在成長率からみれば十分な伸びを確保するとの見込みです。かなり多くのエコノミストのコンセンサスは以上のようなものではないか、と私は考えていますが、実は、私自身はそれほどプラス成長に自信を持っているわけではありません。さすがに、大きなマイナス成長とは思いませんが、かなりゼロ成長に近い、もしくは、マイナス成長の可能性も排除できない、と考えています。理由はそれぞれに薄弱なんですが、第1に消費がどこまでの伸びを示すか自信がありません。野菜などの値上がりで実質消費がマイナスになった可能性すら考えられないでもない、と婉曲な表現ながら、消費が前期からの反動も含めて増加を示すかどうかに疑問を持ちます。第2に住宅投資のマイナス幅が大きい可能性です。あまり根拠ありません。第3に在庫がマイナスになる可能性です。これも、あまり根拠ありません。もっとも、在庫がマイナスになるのは在庫調整がさらに進展するという評価も出来るのではないかと思います。いずれにせよ、繰り返しになりますが、それほど強い根拠ではないですし、著名なシンクタンクに所属するエコノミストであれば躊躇するような異端の見方かもしれませんが、ゼロないし小さなマイナス成長の可能性もあり得る点は忘れるべきではない、と私は考えています。その意味で、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのヘッドラインを少し長めに引用してあります。ご参考まで。
最後に、下のグラフは、いつもお世話になっているニッセイ基礎研のリポートから引用しています。たぶん、仕上がりはこんなもんだろうという気はします。

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2018年02月08日 (木) 20:41:00

2か月連続で悪化した景気ウォッチャーと黒字の続く経常収支をどう見るか!

本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2017年12月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲4.0ポイント低下して49.9を、先行き判断DIも▲0.3ポイント低下して52.4を、それぞれ示し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+7972億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の街角景気、現状判断指数が50を下回る 大雪と寒波の影響
内閣府が8日発表した1月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前月比4.0ポイント低下の49.9と2カ月連続で悪化した。節目の50を下回ったのは2017年7月以来、6カ月ぶり。低下幅は消費税を増税した2014年4月以来、3年9カ月ぶりの大きさだった。大雪や寒波の影響で小売りが苦戦した。
内閣府は基調判断を「緩やかに回復している」から、「緩やかな回復基調が続いている」へ引き下げた。判断引き下げは17年1月以来となる。
部門別にみると家計動向が4.5ポイント低下の47.8となった。そのうち大雪の影響や気温低下で小売関連が5.4ポイント低下したのが目立った。企業動向も3.1ポイント低下、雇用も2.8ポイント低下した。
街角では家計動向について、飲食店から「大雪の影響で県外からの予約はキャンセルが殺到し、隣県からのマイカーによる来店が途絶えた」(北陸の高級レストラン)との声があった。ガソリン価格や野菜価格の上昇も重荷で「消費者のマインドは冷え切っている」(東北のスーパー)との声も出た。企業動向も「寒さが厳しく客足が鈍い。受注量が減少し、積雪の影響で運送遅延による返品も発生しており厳しい状況」(中国の食料品製造業)との指摘があった。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は0.3ポイント低下の52.4と3カ月連続で悪化した。雇用が3.0ポイント低下の55.1、家計動向は0.2ポイント低下の51.8となった。一方、企業動向は0.6ポイント上昇の53.0だった。
17年12月の経常収支、7972億円の黒字 17年は10年ぶり高水準
財務省が8日発表した2017年12月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は7972億円の黒字だった。黒字は42カ月連続だが、黒字額は前年同月に比べて28.5%減少した。貿易黒字の減少が響いた。17年の経常収支は21兆8742億円の黒字と07年以来10年ぶりの高水準だった。
17年12月の貿易収支は5389億円の黒字で、黒字額は33.4%減少した。原粗油や通信機などの輸入が伸び、輸入全体で14.6%増加。自動車や半導体製造装置の好調で輸出も8.8%伸びたが、輸入の影響が上回った。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は6148億円の黒字、10.1%減少した。第1次所得収支の黒字が対前年同月で減少するのは10カ月ぶり。海外株主への配当金の支払いが増加するなど証券投資収益の赤字が拡大した。
サービス収支は2045億円の赤字と前年同月(2886億円の赤字)に比べて赤字幅が縮小した。訪日外国人の増加を背景に旅行収支の黒字額が12月として過去最高となったことが貢献した。
同時に発表した2017年の国際収支状況によると、経常収支は21兆8742億円の黒字だった。黒字額は07年(24兆9490億円)以来10年ぶりの高水準だった。海外子会社から受け取る配当金の増加で第1次所得収支が黒字幅を拡大したことが寄与した。
17年のサービス収支は7061億円の赤字と比較可能な1996年以降で最小の赤字となった。旅行収支が1兆7626億円の黒字と過去最大だったことが追い風となった。


いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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今年1月統計の季節調整済みの系列で見て、景気ウォッチャーのうちの現状判断DIが大きく低下したのは、引用した記事の通り、天候要因が大きいとはいえ少し驚きました。家計動向関連DI、企業動向関連DI、雇用関連DIともそれなりに大きな低下を示しているんですが、昨年2017年12月統計から今年1月にかけての低下幅を見ると、やはり、というか、何というか、家計動向関連DIが▲4.5ともっとも大きく低下し、企業動向関連DIは▲3.1に、雇用関連DIも▲2.8の低下に、それぞれとどまっています。まあ、企業動向関連DIも雇用関連DIも、いずれも大きな低下ではありますが、家計動向関連DIが最大となっています。加えて、先行き判断DIでは、家計動向関連DIが▲0.2と低下を示した一方で、企業動向関連DIは+0.6と、むしろ上昇していたりします。企業部門に比較して、家計部門の停滞感が大きくなっていると考えるべきです。昨夜も景気動向指数と毎月勤労統計を取り上げた際に主張した点ですが、景気拡大の実感が乏しい理由は賃上げによる所得の増加がほとんどなく、消費拡大が実現していないのが大きな原因のひとつであろうと考えられますし、景気拡大局面も後半に達した現段階で、相対的に好調な企業部門から賃上げという形で家計部門に購買力を移転することにより、景気回復・拡大をさらに確実にし長期化することが出来るのではないかと私は考えています。なお、誠についでながら、今週に入ってからの世界同時株安については、大きな反発なくこのまま推移すれば、我が国の企業マインドや消費者マインドには確実に下押し圧力を加えるものと私は推測しています。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。先月11月統計の際には、季節調整済みの系列の統計ではサービス収支のうちの知的財産権等使用料の動きにより経常黒字の縮小がもたらされたことを明らかにしましたが、今月12月統計ではどこをどう見ても貿易黒字の縮小が謙譲黒字の縮小をもたらしているようです。すなわち、経常黒字は11月の+1兆7,005億円から12月には+1兆4,796億円に、▲2200億円超縮小しているところ、貿易黒字はそれ以上に、11月の+5,074億円から12月の+2,302億円へと、▲2770億円超の縮小を見せています。輸入の増加が主な要因であり、季節調整済みの系列で見た輸入は2017年7月の5兆8,087億円を底として、8月5兆8,494億円、9月5兆8,755億円、10月6兆1,433億円、11月6兆5,873億円、12月6兆7,326億円と増加を示しています。単純に見れば、国際商品市況における石油価格などの上昇が一因ですが、我が国が長期に景気回復・拡大を続けているのも輸入増加の要因のひとつであり、決して悲観視する必要はないものと私は考えています。引用した記事にもある通り、2017年通年の経常黒字は+21.9兆円であり、前年2016年の+20.3兆円を上回っています。
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2018年02月07日 (水) 19:56:00

さらに上昇した景気動向指数と賃金上昇が物価に追いつかない実態を明らかにした毎月勤労統計!

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも、昨年2017年12月の統計です。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月比+2.8ポイント上昇して120.7を、CI一致指数+は▲0.3ポイント下降して107.9を、それぞれ記録した一方で、毎月勤労統計の名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+0.7%増の55万1222円を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

17年12月の景気一致指数、2.8ポイント上昇
内閣府が7日発表した2017年12月の景気動向指数(CI、2010年=100)は、景気の現状を示す一致指数が前月比2.8ポイント上昇の120.7だった。数カ月先の景気を示す先行指数は0.3ポイント低下の107.9。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。
実質賃金、12月は0.5%減 17年は2年ぶり減少 毎月勤労統計
厚生労働省が7日発表した2017年12月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.5%減少した。減少は2カ月ぶり。名目賃金は増加したものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月比1.3%上昇し、賃金の伸びを抑えた。17年の実質賃金は前年比0.2%減となり、1年ぶりに減少した。
12月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比0.7%増の55万1222円と5カ月連続で増加した。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が0.6%増、残業代など所定外給与は0.9%増、ボーナスなど特別に支払われた給与は0.7%伸びた。
パートタイム労働者の時間あたり給与は前年同月比2.1%増の1117円だった。パートタイム労働者比率は0.04ポイント高い31.23%となった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。
同時に発表した17年の実質賃金は前年比0.2%減と2年ぶりに減少した。名目賃金にあたる現金給与総額は0.4%増となったものの、消費者物価指数が0.6%上昇した。
所定内給与は0.4%増、所定外給与は0.4%増、特別に支払われた給与は0.4%増だった。パートタイム労働者の時間あたり給与は2.4%増の1110円となり過去最高となった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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まず、CI一致指数に対するプラス寄与度で大きかった系列を順に上げると、投資財出荷指数(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率(除学卒)などとなっています。何と、現時点では昨年2017年12月の一致指数についてはすべてがプラス寄与であり、マイナス寄与の系列はありません。CI先行指数では、マイナス寄与では中小企業売上げ見通しDI、マネーストック(M2)(前年同月比)、新設住宅着工床面積などが上げられ、プラス寄与では新規求人数(除学卒)、最終需要財在庫率指数、日経商品指数(42種総合)などがあります。2017年12月までで、現在の2012年11月を底とする第16循環の現在の景気拡張局面は61か月に達し、高度成長期の1965年11月から1970年7月までの57か月続いた「いざなぎ景気」を超えて、戦後最長の景気拡大期間を記録した米国のサブプライム・バブルに対応した第15循環の景気拡張期の73か月に、あとちょうど1年=12か月と迫っています。ただ、米国のサブプライム・バブルに対応した第15循環の景気拡張期に比べて、現在の景気拡張局面は2014年4月からの消費税率引き上げや2015年年末から2016年年初にかけての新興国経済の減速の影響などがあって、景気動向指数が下降を示す景気の踊り場が多かったような気がします。そのあたりは、上の示したグラフに加えて、日本経済研究センターが昨年2017年5月から提供を始めた景気後退確率のグラフなどからも読み取れます。また、長期に及んでいる割には、景気拡大の実感が乏しい理由は賃上げによる所得の増加がほとんどなく消費拡大が実現していないのが大きな原因のひとつであろうと私は考えています。まさか、高度成長期のような2ケタ成長を目指すべきとの意見はほとんどないものと受け止めており、従って、景気拡大の果実を国民に均霑するためには、企業サイドで内部留保を溜め込むのではなく、賃金上昇という形で国民に広く還元する必要があるといえます。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。賃金に着目すると、上のグラフのうちの2番目のパネルに見られる通り、現金給与総額は前年同月比+0.7%増の55万1222円と5か月連続で増加したものの、生鮮野菜などの値上がりなどによる物価上昇が+1.3%あって、実質賃金は減少を記録しています。また、引用した記事にもある通り、2017年を通じても実質賃金はマイナスでした。もちろん、デフレ脱却の初期局面では、物価上昇が賃上げを上回って実質賃金が低下することから雇用増がもたらされる、というのが教科書的な理解ながら、そろそろ、この人手不足が続く中で賃金の上昇がここまで抑え込まれているのは不可解ともいえます。ただ、上のグラフのうちの最後のパネルに見られる通り、パートタイム労働者の伸び率がかなり鈍化して、フルタイム雇用者の増加が始まっているように見えますから、労働者がパートタイムからフルタイムにシフトすることにより、マイクロな労働者1人当たり賃金がそれほど上昇しなくても、マクロの所得については、それなりの上昇を示す可能性があり、同時に、所得の安定性も向上して消費に向かいやすくなる可能性も出始めているんではないかと期待しています。
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2018年02月06日 (火) 19:39:00

ダイヤモンド・オンラインによる「AI導入でリストラが進みやすい上場企業ランキング」やいかに?

昨日2月5日付けで、ダイヤモンド・オンラインにて「AI導入でリストラが進みやすい上場企業ランキング」が明らかにされています。2045年ともいわれるシンギュラリティの年に向かって、これからAI化やロボットの利用などが一気に加速し雇用が奪われる可能性も取り沙汰されています。私個人としては、そんなころまで命長らえる自身は毛頭ありませんが、エコノミストとしては興味あるところです。

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ということで、ダイヤモンド・オンラインのサイトから引用したテーブルと算出方法は上の通りです。算出方法はまず第1に、AI関連キーワードについて、この1年間において、それぞれの単語に関連する記事が企業ごとにどれだけ出たのかを調査し、記事が多ければ多いほど、AIやロボット化に関する取り組みが進んでいるとし、第2に、AI化が出来ているのはトップが強い権限を持ったオーナー系企業が多いことから、在任期間が長く強い影響力を持つ社長とか、持ち株比率の高いオーナー的経営者の存在を見て、第3に、従業員数が多いところこそがAI化の余地があると想定し、第4に、EBITDA=利払い前・税引き前・減価償却前利益で計測した稼ぐ力も加味して、実際に投資までつなげられるのかを考慮した、としています。7位のオプティムと10位のインベスターズクラウドはよく知らないんですが、それら以外はトップのトヨタ自動車をはじめとして、いかにも学生諸君が就職先として希望しそうな企業だという気もします。さて、シンギュラリティの2045年までに、どこまで正解が明らかになっていますことやら、エコノミストとして、また、就活を間近に控えた大学生の父親として、とても興味深いところです。
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2018年02月05日 (月) 21:56:00

東洋経済オンラインによる「海外勤務者が多い会社トップ200ランキング」やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、1月29日付けの東洋経済オンラインにおいて「海外勤務者が多い会社トップ200ランキング」が明らかにされています。我が家の上の倅も3月には就活を開始してエントリー・シートを準備したりしているようですので、昨年も同時期に同じ特集を取り上げているんですが、やや強めに興味を持って見ていたりします。

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ということで、上のテーブル画像は東洋経済オンラインのサイトから海外勤務者が多い会社 (1~50位)を引用しています。昨年と同じくトヨタ自動車がトップとなっています。ただし、人数としてはトヨタにかなわないものの、やっぱり、上のテーブルを見ても明らかな通り、総合商社の海外勤務者も決して少なくなく、三菱商事、三井物産、住友商事といった財閥系の総合商社御三家については、従業員数に占める比率としては、むしろ、トヨタよりも高くなっている印象です。昨年来、私が不思議に感じているのは、銀行業界で三菱東京UFJ銀行がランキングに現れない点です。上のテーブルに見られる通り、50位までのランキングに銀行からランクインしているのは三井住友銀行だけであり、銀行業界の第2位は三菱UFJ信託銀行が150人で139位にランクインしています。しかし、私がチリの日本大使館に勤務しているころには、まだ、東京銀行が単体で存在しており、広く海外展開していた記憶があります。その後、いくつか合併があって、現在では三菱東京UFJ銀行になっているハズなんですが、ランキングには現れません。です。
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