FC2ブログ

2019年07月12日 (金) 19:40:00

マクロミル・ホノテ「2019年会社員の夏休み」の調査結果やいかに?

旧聞に属する話題ながら、先週木曜日の7月4日付けで、マクロミル・ホノテから「2019年会社員の夏休み」調査の結果が明らかにされています。私の勤務するオフィスでも、今週あたりから夏休みの休暇予定の取りまとめが始まり、梅雨も明けないうちから雰囲気が盛り上がっているのかもしれません。まず、マクロミル・ホノテのサイトから調査結果のTOPICSを6点引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 会社員の夏休み、タイミングは"お盆"がダントツ。一方で、会社員の5人に1人が"夏休みなし"
  • 連休日数は平均「6.5連休」。最多は「9連休」で22%
  • 連休日数の"理想と現実"の間には1.2日の差。昨年よりも差が縮まる
  • 4月からスタートした有給休暇の取得義務化。
    "夏休みにつなげて有休取得"が「推奨されている」26%、「義務付けられている」5%
  • 休みの予算は、平均48,977円。昨年よりも大きく減少
  • 夏休みの過ごし方、1位は「家でゆっくり」49%。その2人に1人が「たっぷりと睡眠をとる」


元官庁エコノミストとして気になっているのは、5点めの夏休み予算の激減なんですが、それも含めて、いくつか図表を引用しつつ、週末前のお気楽なテーマとして、簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


まず、上はマクロミル・ホノテのサイトから会社員の夏休みの有無と時期のグラフを引用しています。「夏休みの有無」というのが、会社員ではなく公務員だった私には判りにくいんですが、製造ラインを止めるとかで特定の日付を休みにする制度がある、という意味なんでしょうか。私が定年退職まで勤務していた役所には、連続であれば有給休暇にプラスして3日の休みが追加で取れる、という制度はありました。これも夏休みなんでしょうか。よく判らないながら、8割の会社員は夏休みがあり、その夏休みの時期は8月のお盆周辺が過半を占めています。これは判りやすい結果となっています。

photo


次に、上はマクロミル・ホノテのサイトから夏休みと有給休暇をつなげることが推奨または義務付けられているかのグラフを引用しています。見て判る通り、推奨が26%、義務が5%となっています。その昔から、日本人は働き過ぎで労働時間が長い、とされていますので、夏休みがあるケースでは有給休暇とすなげて、より長い休暇を取るように推奨したり、あるいは、義務付けたりするのもアファーマティブ・アクションとしてよさそうな気もします。ただ、パーソナルな予定とミートしない夏休みの設定の場合、義務とされてしまうとかえって苦しくなる可能性もあるんではないかという気がします。

photo


最後に、上はマクロミル・ホノテのサイトから最大連休日数の理想と現実、また、予算の平均を示す画像を引用しています。連休日数の理想と現実については、昨年2018年のその差2日余りから、今年2019年は1日余りに激減しました。ついでに、平均予算も1万円近く激減しています。マクロミル・ホノテのサイトでも考慮しているように、今年はゴールデンウィークが10連休と超大型でしたので、お休みもお休みで使う予算もゴールデンウィークと夏季で分散したのだろうと私は受け止めています。
Entry No.6247  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月10日 (水) 19:20:00

とうとう下落に転じた6月の企業物価(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から6月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.1%の下落と、とうとうマイナスになってしまいました。前年比マイナスは2016年12月の▲1.2%以来、1年半ぶりです。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の企業物価、前年比で下落に転じる 2年半ぶり 米中摩擦響く
日銀が10日発表した6月の国内企業物価指数(速報値、2015年平均=100)は101.2と、前年同月に比べて0.1%下落した。前年比で下落に転じるのは2016年12月以来2年半ぶり。前月比でも0.5%下落した。米中間の貿易摩擦懸念の高まりを背景に国際商品市況の悪化が国内企業物価を押し下げた。
米中の追加関税引き上げ措置などを受けて米中貿易摩擦への懸念が再燃した。商品市況の悪化を背景に、銅など非鉄金属が前年比9.3%下落と前月から下落幅を拡大したほか、スクラップ類も同15.4%下落した。
日銀調査統計局は「米中摩擦に対する市場の見方が商品市況にどう影響するかに大きく左右される展開が続くとみられる」という。
公表している744品目のうち、前年比で上昇したのは378品目、下落したのは275品目だった。上昇から下落を引いた品目がプラスとなるのは27カ月連続だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、ヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率で見て+0.3%と、大きくプラス幅が縮小するものの、まだプラス圏内ということだったんですが、実績ではマイナスの結果となりました。予測のレンジでも、下限がゼロでしたので、その下限を突き抜けたマイナスですので、ややびっくりです。米中貿易摩擦に起因する国際商品市況の下落が大きな要因と考えられ、例えば、すべて前年同月比で見て、国内物価では非鉄金属が▲9.3%、石油・石炭製品が▲5.5%、化学製品が▲2.4%などが大きなマイナスをつけています。ただ、電力・都市ガス・水道についてはタイムラグがあって+5.4%の上昇を記録しています。また、同じように、輸出物価でも化学製品▲12.2%、金属・同製品▲5.8%が大きなマイナスで、輸入物価でも金属・同製品▲8.4%、石油・石炭・天然ガスが▲7.0%、化学製品が▲6.8%などとなっています。国際商品市況における動きの激しい品目や中国の需要に大きく左右される品目の下落が大きい印象です。そして、これらの国際商品市況の動向については、実需もさることながら、米中間の貿易摩擦やそれに基づく世界経済の先行きなどに関する期待の影響が大きく、ひょっとしたら、企業物価については日本国内の金融政策よりも国際経済動向の方にウェイトがあるのかもしれません。日銀の物価目標はあくまで消費者物価(CPI)、それも生鮮食品を除くベースのコアCPIですが、当然ながら、その川上に当たる企業物価(PPI)の影響も強く受けます。合わせて、為替動向も見極めて、米国連邦準備制度理事会(FED)の金融政策動向も考慮に入れつつ、日銀による金融政策の舵取りが難しくなってきたように感じています。
Entry No.6244  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月09日 (火) 19:55:00

JTBによる2019年夏休みの旅行動向やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、7月4日にJTBから2019年夏休みの旅行動向が明らかにされています。ここでの夏休みとは、7月15日の海の日から8月31日いっぱいまでです。もちろん、詳細なpdfの全文リポートもアップされています。まず、JTBのサイトから調査結果のヘッドラインを4点引用すると以下の通りです。

2019年夏休みの旅行動向
  • 海外旅行人数は過去最高
  • 総旅行人数は7,734万人(▲0.1%)と微減
  • 国内旅行人数 7,435万人 (▲0.2%)
  • 海外旅行人数 299万人 (+3.5%)


ということで、今年は7月も8月もそれぞれ海の日と山の日の3連休がありい、カレンダーの日並びはいい一方で、夏季ボーナスが昨年より減少したり、米中貿易摩擦に起因してビジネス環境の不透明感が広がったりと、様々な条件を考慮して策定されているようです。加えて、この夏から秋にかけてのイベントとしては、香川県と岡山県の12の島と港で開催される現代美術の国際芸術祭「瀬戸内国際芸術祭2019」(7月19日~8月25日)や、来年2020年を前に開催されるスポーツイベントなどがあるそうです。海外旅行に関しても、為替がやや円高に振れていることや、座席供給数の増加などから、特に、若い世代の海外旅行意欲が高い、と結論しています。2000年以降の総消費額と旅行者数の推移をプロットしたグラフは下の通りです。

photo


我が家は、私がもう定年退職して、老夫婦で旅行するというよりも、子供達が夏休みに帰省で我が家に帰って来るのを待つ姿勢に変化してしまいました。近場に繰り出すことはあっても、たぶん、旅行らしい旅行はしないような気がします。
Entry No.6242  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月08日 (月) 19:32:00

前月から減少した機械受注と弱さが続く景気ウォッチャーと貿易収支が大きなマイナスとなった経常収支!

本日、内閣府から5月の機械受注と6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲7.8%減の8429億円を示しており、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.1ポイント低下の44.0を記録した一方で、先行き判断DIは+0.2ポイント上昇の45.8となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆5948億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の機械受注、7.8%減 基調判断は据え置き
内閣府が8日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比7.8%減の8429億円だった。4カ月ぶりの減少で、QUICKがまとめた民間予測の中央値(4.0%減)を下回った。2018年9月以来8カ月ぶりの下げ幅となったものの、直近3カ月でみると堅調さを維持しているとして内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
製造業の受注額は前月比7.4%減の3706億円だった。2カ月ぶりの減少で、17業種のうち7業種で減少した。4月に大型案件があった「造船業」や、好調だった「はん用・生産用機械」での反動減が目立った。
非製造業も同9.0%減の4710億円。前月比で3カ月ぶりの減少となった。「運輸業・郵便業」でのパソコンなどの受注減が響いた。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は3.7%減だった。前月比でみた受注総額は6.0%減、官公需の受注は19.5%増、外需の受注額は0.8%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
6月の街角景気、現状判断指数は3年ぶり低水準 旅行など反動減で
内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は44.0と前の月から0.1ポイント低下(悪化)し、2016年6月以来3年ぶりの低水準となった。悪化は2カ月連続。旅行などのサービス分野で、好調だった5月の10連休の反動が出た。内閣府はウオッチャーの見方を「回復に弱さが見られる」で据え置いた。
家計動向、企業動向、雇用動向の中で家計動向が低下した。サービス関連が3.5ポイント低下したことが響いた。「大型連休の反動もあり、個人の客足が非常に鈍い。企業も団体旅行など足踏み状態であり、様子見」(甲信越の旅行会社)といった声があった。
企業動向関連では非製造業が1.7ポイント低下した。「日中間の輸出入の件数が10%ほど落ち込んでいる」(東海の輸送業)などと、米中貿易摩擦の影響を指摘する声が聞かれた。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は45.8と、前の月から0.2ポイント上昇した。上昇は5カ月ぶり。家計動向、雇用関連が上昇した。「百貨店や家電量販店などで10月に控えた消費増税前の駆け込み期待が見られる」(内閣府)という。
内閣府はウオッチャーの先行きの見方について「海外情勢等に対する懸念がみられる」とまとめた。
調査期間は毎月25日から月末で、29日実施の米中首脳会談の調査結果への反映はまちまちだという。
5月の経常黒字額は15.8%減 中韓向け輸出減で貿易収支の赤字拡大
財務省が8日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆5948億円の黒字だった。黒字は59カ月連続となったものの、黒字幅は前年同月比で15.8%縮小した。中国や韓国向けの輸出が振るわず、貿易収支の赤字幅が拡大したことが影響した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6509億円の赤字(前年同月は3158億円の赤字)だった。中国や韓国向けに半導体等製造装置の輸出が減少したほか、中国向けに自動車部品の輸出も減少した。輸出額は前年同月比6.3%減の5兆9180億円だった。輸入額は同0.9%減の6兆5690億円だった。液化天然ガスや有機化合物の輸入が減った。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は2兆2574億円の黒字だった。一部の特殊要因により海外子会社からの配当金が減少し、前年同月の2兆3994億円の黒字から黒字幅は縮小した。
第2次所得収支は1488億円の赤字(前年同月は1989億円の赤字)だった。輸送や旅行といった取引の収支を示すサービス収支は1372億円の黒字(前年同月は103億円の黒字)と、黒字幅が拡大した。


とてつもなく長くなりました。この記事さえしっかり読めばそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


ということで、5月の機械受注は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済み系列の前月比で▲4.5%減、レンジの下限でも#x25B2;7.4%減でしたので、やや大きな減少と私は考えたんですが、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いています。というのは、5月の10連休が何らかの影響を及ぼしている可能性がエコノミストの間で取り沙汰されており、その根拠は、今年2019年に入ってから伸びを続けてきた運輸業・郵便業が大きく伸びを鈍化させているからです。いずれにせよ、季節調整済みの系列の前月比で見て、製造業が▲7.4%減、電力と船舶を除く非製造業が▲9.0%減ですから、かなり多くの業種で減少していることが理解できます。コア機械受注は今年2019年に入ってから、1月こそ▲5.4%減を記録したものの、2月は+1.8%増、3月+3.8%増、4月も+5.2%増と3か月連続の前月比プラスとなっていたわけで、4~5月をならしてみればほぼ横ばいですから、大きく減少に転じたとの印象は私にはありません。

photo


続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。景気ウォッチャーを構成する3つのコンポーネントを現状判断DIについて詳しく見ると、家計動向関連が前月から#x25B2;0.5ポイント低下した一方で、企業動向関連は前月から横ばい、雇用関連が+3.2ポイントの上昇となっています。ただ、雇用関連は5月の大型連休が何か影響しているようで、6月統計で大きく上昇したというよりは、5月統計が大きく下がっていた、というのが正しい見方のような気がします。いずれにせよ、上のグラフを見れば明らかで、消費者マインドはかなり長期にわたって低下を続けています。先週7月1日に公表された消費者態度指数は、大雑把に、2017年11月の44.6をピークに1年半余りに渡って下がり続けていますし、景気ウォッチャーも現状判断DI、先行き判断DIともに、細かい動きを別にすれば、2017年10~12月期をピークにトレンドとして低下を続けているように見えます。先週公表された日銀短観を見る限り、企業マインドはまずまず底堅く堅調な印象だった一方で、消費者マインドはまだ低下を継続中のようです。さすがに、景気ウォッチャーを見る限り、ゴールデンウィークの反動減が色濃く出ただけで、そろそろ下げ止まりから反転するんではないか、という期待があるものの、マインド指標は明らかに実体経済の先行指標ですので、10月に消費税率の引き上げを控えて、とても気にかかる指標のひとつです。

photo


続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの経常収支の+1兆円超の黒字はトレンドとして大きな変更はなく、海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めているんですが、5月の経常収支については貿易収支が季節調整済みの系列で▲5000億円近い大きな赤字を計上しています。上のグラフで最新の利用可能な5月統計で、積み上げ棒グラフのうちで黒の貿易収支が大きな赤字となっているのが見て取れると思います。引用した記事にもある通り、中国と韓国向けの輸出が減少したことが大きな要因であり、中国と韓国向けに半導体等製造装置の輸出が減少したほか、中国向けの自動車部品の輸出も減少しています。中国については米中貿易摩擦による経済の減速が要因となっていると私は考えています。韓国についても、我が国からの輸出規制はまだ5月統計には現れていませんが、これから、何らかの影響をもたらすことはいうまでもありません。
Entry No.6240  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月06日 (土) 09:11:00

雇用増が回復した6月の米国雇用統計から米国金融政策はどう動くのか?

日本時間の昨日、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+224千人増と雇用の増加が回復した一方で、失業率は先月から0.1%ポイント上昇したものの3.7%と歴史的に見ても低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから、長くなりますが、記事を10パラ引用すると以下の通りです。

June jobs report: Economy adds 224,000 jobs, easing recession fears
Hiring rebounded strongly in June as employers added 224,000 jobs, easing recession fears and posing a dilemma for a Federal Reserve that's expected to cut interest rates later this month.
The unemployment rate ticked up from its 50-year low of 3.6% to 3.7%, the Labor Department said Friday. Payroll gains for May were revised down to 72,000 from 75,000.
Economists surveyed by Bloomberg expected 160,000 job gains.
"Today's jobs report shows the U.S. economy continues to create jobs at a strong pace even as we enter the longest period of economic expansion on record," said Tony Bedikian, managing director and head of global markets at Citizens Bank in an email.
"The bounce back in the June jobs number may splash cold water on the notion of an imminent Fed rate cut," he added. "We will have to see whether the equity markets can shrug that off when balanced against other macroeconomic factors, such as the hope of a China trade truce."
White House press secretary Stephanie Grisham celebrated the report in a tweet, saying "Thanks to President Trump, America's economy is stronger than ever!"
Economists eagerly awaited the June jobs report after the weak May total stirred recession concerns. Another anemic showing would have amplified those worries but this robust performance underscores that the May number overstated an anticipated cooling in hiring.
Payroll gains are expected to moderate from a monthly average of 223,000 in 2018 to about 160,000 this year as the effects of federal tax cuts and spending increases fade and the low unemployment rate makes it harder to find qualified workers. But a more dramatic slowdown could fuel fears that the trade conflict is having an even bigger impact on hiring or that an economic downturn may be on the horizon.
The Fed, meanwhile, has signaled that it could lower its key short-term interest rate as soon as this month to head off a possible recession amid the Trump administration's trade war with China and a slowing global economy. Markets have priced in a 100% chance of at least a quarter-point rate cut at the Fed's July 30-31 meeting.
This healthy jobs report, however, could give the Fed pause.


やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

photo


ということで、引用した記事の3パラめにあるように、ブルームバーグの集計による市場の事前コンセンサスでは+160千人増とのことでしたので、これを大きく上回りました。先月5月の雇用増が+72千人でしたから、6月の+224千人増は雇用増が回復し、米国労働市場がかなり完全雇用に近い状態にあることを裏付けていると考えるべきです。ただし、というか、何というか、ADP統計では先月5月の+41千人増に対して、6月も+102千人増にとどまっており、米国労働省の雇用増ほどは増加幅が大きくありません。これも、先月の統計公表時にこのブログで頭の体操をしたように、完全雇用に近ければ労働スラックも尽きかけており、雇用増すら小幅にとどまり、賃金が大きく上昇する、という局面に入ってもおかしくないのかもしれません。下のグラフに見られる通り、もちろん、現実には、そこまで賃金が上昇しているわけではありませんから、労働スラックが尽きているわけではありません。というように、かなりビミョーな局面で、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FED)が金融政策運営で、どのような判断を下すのかに注目が集まっています。

photo


ということで、上のグラフは時間あたり賃金上昇率の推移を前年同月比で見ています。昨年2018年8月に賃金上昇率が+3%に達してから、ほぼほぼ1年の11か月連続で賃金上昇率が3%か3%超を記録しています。先月6月18~19日の米国連邦公開市場委員会(FOMC)では、雇用などの米国の国内情勢というよりは、中国との貿易摩擦や世界経済の減速などを背景に、利上げをストップし、金融緩和に転じる動きを見せましたが、次回今月7月30~31日のFOMCでは利下げに転じると見られており、特に、金融先物市場ではほぼ100%利下げが織り込まれています。ただ、FOMCメンバーは必ずしも次回FOMCでの利下げで一枚岩かというとそんなことはなく、6月のFOMCでメンバー17人が示した2019年中の年内の利下げを主張した8人に対して、同じく8人は現状維持を予測し、利上げを予想するメンバーすら1人いました。公表されたばかりの6月の米国雇用統計の底堅さは、金融緩和に慎重な「タカ派」の方向に傾く可能性をもたらしそうで、もしもFOMCメンバー間の意見集約が遅れれば、7月FOMCでの利下げが見送られる可能性もゼロではありません。

来週7月10日には、FEDパウエル議長が米国議会下院で議会証言に臨む予定となっていて、それはそれで注目です。このブログで従来から私が指摘しているように、現状の我が国経済の最大の下振れリスクは為替です。米国が利下げに転じれば、円高を防止するために日銀はさらなる金融緩和を模索することになるかもしれません。
Entry No.6236  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月05日 (金) 20:10:00

「悪化」から「下げ止まり」に基調判断が上方修正された景気動向指数!

本日、内閣府から5月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月差▲0.7ポイント下降して95.2を、CI一致指数は+1.1ポイント上昇して103.2を、それぞれ記録し、基調判断は「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の景気一致指数、1.1ポイント上昇 基調判断「下げ止まり」に上方修正
内閣府が5日発表した5月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.1ポイント上昇の103.2と2カ月連続で上昇した。内閣府は一致指数の動きを機械的に求める景気の基調判断を「悪化を示している」から「下げ止まりを示している」に上方修正した。
基調判断を上方修正するのは2016年10月以来、2年7カ月ぶり。「下げ止まり」の表現を使うのは2013年4月以来、6年1カ月ぶりとなる。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5系列が指数のプラスに寄与した。デスクトップ型パソコンを含む「生産指数(鉱工業)」、海外向けの液晶パネル製造装置を含む「投資財出荷指数(除輸送機械)」、鉄鋼・非鉄金属を含む「鉱工業生産財出荷指数」など生産関連指標が堅調だった。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.7ポイント下落の95.2で、2カ月ぶりに下落した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は0.4ポイント上昇の105.0で、2カ月ぶりに上昇した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、景気局面がビミョーな時期に入りましたので、かなり熱心に取材したのかインタビュー結果も多く、通常の月に比べてとても長い記事になっています。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo


ということで、引用した記事にもある通り、基調判断は「悪化」から「下げ止まり」に上方修正されています。ここでおさらいですが、今年2019年に入ってからの景気動向指数の基調判断を振り返ると、1~2月は「下方への局面変化」、3~4月は「悪化」と着実に下方修正された後、5月には「下げ止まり」に上方修正されました。景気動向指数の基調判断の上方修正は2016年10月以来だそうで、2年7か月振りです。取りあえず、メディアなどで注目されていた景気後退懸念は大きく和らいだと私は受け止めています。すなわち、景気転換点ないし景気後退局面入りが同定されるためには、悪化の度合いのdepthとともに悪化局面のdurationが必要、として、最低でも6か月くらいというのがエコノミストの間での大雑把なコンセンサスですので、2か月の「悪化」で景気後退と同定するのはムリがあると考えるべきです。5月統計を少し詳しく見ると、これも引用した記事にある通り、生産指数(鉱工業)、投資財出荷指数(除輸送機械)、鉱工業生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数などのプラス寄与が大きかった一方で、有効求人倍率(除学卒)や商業販売額(卸売業)(前年同月比)がマイナス寄与を示しています。やっぱり、鉱工業生産指数(IIP)の影響が大きいと改めて実感させられました。

繰り返しになりますが、昨年暮れから今年2019年1~3月期に景気転換点があったんではないか、という議論は今回の景気動向指数で後景に退くことと思いますが、10月には消費税率の引き上げが控えていますし、世界経済の動向次第では今年度後半に1年遅れで、というか、何というか、景気後退に陥る可能性がまだ残されています。というか、少なくともゼロではありません。繰り返しになりますが、今年1~3月期にすでに景気後退に陥っていた、という可能性が大きく低下しただけですので念のため。
Entry No.6234  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月04日 (木) 20:10:00

世界経済フォーラムが考える Top 10 Emerging Technologies 2019 やいかに?

一昨日の7月2日、ダボス会議を主催する世界経済フォーラムから Top 10 Emerging Technologies 2019 と題するリポートが明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。トップは話題の石油から作られるプラスチックからの脱却で注目されているバイオプラスチックです。トップ10は以下の通りです。

1
Bioplastics for a Circular Economy
Advanced solvents and enzymes are transforming woody wastes into better biodegradable plastics
2
Social Robots
Droid friends and assistants are penetrating deeper into our lives
3
Tiny Lenses for Miniature Devices
Thin, flat metalenses could replace bulky glass for manipulating light
4
Disordered Proteins as Drug Targets
New possibilities for treating cancer and other ills
5
Smarter Fertilizers Can Reduce Environmental Contamination
New formulations deliver nourishment on demand
6
Collaborative Telepresence
Soon participants in virtual gatherings will feel like they are physically together
7
Advanced Food Tracking and Packaging
A combination of two technologies could vastly improve food safety
8
Safer Nuclear Reactors
Resilient fuels and innovative reactors could enable a resurgence of nuclear power
9
DNA Data Storage
Life's information-storage system is being adapted to handle massive amounts of information
10
Utility-Scale Storage of Renewable Energy
A roadblock to sustainable energy solutions is coming unstuck


私はもともとがエコノミストでしたし、それも定年退職してしまい、エンジニアとかではなかったわけですから、新しい技術の中身についてはサッパリです。2番めの Social Robots くらいでしたら、まあ、判らなくもありませんし、7.番目の Advanced Food Tracking and Packaging や8番目の Safer Nuclear Reactors なども、「ウン、そうだね」と思うんですが、3番目の Tiny Lenses や4番目の Disordered Proteins となれば、それがそもそも何なのかすら理解できません。まあ、仕方ないのかもしれません。下の画像は、リポートの5ページ目をそのまま画像ファイルにしています。

photo
Entry No.6232  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月03日 (水) 19:11:00

リクルートライフスタイルによる「外食市場調査」(2019年5月度)の統計やいかに?

先週金曜日の6月28日に、リクルートライフスタイルから2019年5月度の「外食市場調査」の結果が明らかにされています。もちろん、pdfのリポートもアップされています。普段は取り上げない情報なんですが、何分、今年のゴールデンウィークは10連休と豪華で、昨日公表の6月調査の日銀短観などでも宿泊業や飲食業などが潤った印象がありますので、軽く見ておきたいと思います。
まず、この調査は、私の知る限り、2012年10月から月次で実施されており、外食実施率、外食頻度、外食単価、外食市場規模の4項目が明らかにされています。季節調整済みの系列は利用不可能で、当然に、毎年12月が実施率でも頻度でも単価でも、これらを総合した市場規模でも、ピョンとスパイクします。まあ、仕方ありません。明らかにされている4項目のうち、総合的な指標と考えられる外食市場規模とその前年同月差のグラフは以下の通りです。

photo


ということで、グラフから明らかなんですが、昨年2018年の4~5月に比べて今年2018年の4~5月が特に市場規模で拡大した、という結果にはなっていません。ただし、今年2019年1~3月期は軒並み前年比マイナスでしたので、それに比べれば前年比でプラスに転じて一息ついた、ということはいえるかもしれません。また、月単位でならした結果ですので、さすがに、ゴールデンウィーク10連休は大入りだった一方で、ゴールデンウィークに含まれない、という意味で、その他4月や5月はやや節約が志向された、というか、ゴールデンウィーク10連休のためにその他4月や5月は外食を控えてゴールデンウィーク10連休に備えた、という形が出たのかもしれません。あるいは、このリクルートライフスタイルの調査地域は首都圏・関西圏・東海圏の都市部に限定されますので、それ以外の飲食店での外食が多かったのかもしれません。いずれにせよ、リクルートライフスタイルの「外食市場調査」の結果だけからは、特に、ゴールデンウィーク10連休や「令和」への改元ないし新時代の祝賀ムードの盛り上がりによる外食の増加は限定的、ということになりそうです。もちろん、10連休や祝賀は外食でなく、家庭料理で豪華に、という選択肢もあったわけですが、それでは宿泊業や飲食業の売上への寄与は小さそうな気もします。よく判りません。
Entry No.6230  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月02日 (火) 23:25:00

インフレ・ターゲット+2%の経済学的基礎を明らかにする日銀ワーキングペーパーを読む!

先週木曜日6月27日に日銀から「ニューケインジアン・モデルを用いたインフレと社会厚生に関する分析: 日米を事例に」と題するワーキングペーパーが明らかにされています。もちろん、ペーパー本体のpdfファイルもアップされています。とても驚くべきことのような気がするんですが、当時の白川総裁のころに物価目標2%を掲げてから、また、現在の黒田総裁が日銀を率いて異次元緩和を開始してから6年余り、今までほとんど2%のインフレ・ターゲットに関して経済学的な基礎に関する議論がなされていませんでしたが、このワーキングペーパーで初めて正面から取り上げられています。
このワーキングペーパーでは、インフレのコストとベネフィットに影響を与える代表的な要因として、(1) 価格の硬直性、(2) 貨幣保有の機会費用、(3) 名目賃金の下方硬直性、(4) ゼロ金利制約、の4要因を非線形なニューケインジアン・モデルに組み込み、社会厚生を最大化する定常状態インフレ率の水準を求めようと試みています。なお、私は社会厚生関数が気になったんですが、価格と賃金が伸縮的なキャッシュレス経済をベンチマークとして、価格の硬直性などの歪みのある経済の経済の社会厚生をこのベンチマークまで引き上げるために必要な消費の変化を消費単位で測った厚生損失として定義しています。それから、モデルのいくつかの前提で、家計の効用最大化や企業の収益最大化とともに、統合政府の予算制約式が満たされると仮定している点について、ひょっとしたら、日本経済の現状から異論あるかもしれませんが、中央銀行を含まない一般政府や中央政府でなく、中央銀行を含む統合政府の予算制約式を満たすわけですから、これは問題ないと私は受け止めています。実際に、モデルの定式化としても、家計の貨幣需要をアコモデートする形でパッシブに貨幣が供給される一方で、統合政府の予算制制約式を満たすようなトランスファーが実行されることとなっています。さらに、パラメータのカリブレーションやその設定については、私は必ずしも自信ありませんが、既存研究を基にしつつ設定されており、加えて、結果の頑健性はそれなりにチェックされている印象です。

photo


まず、結論に入る前に、今までの先行研究がサーベイされています。上のグラフの通り、先行研究ではインフレ・ターゲットとしてゼロないし、場合によっては、マイナス金利が推奨されているかのごとき結果が示されています。逆から見て、+2%あるいはそれ以上のインフレ・ターゲットは、今までの標準的な経済学的分析からは出て来ないとすらいえます。基本的には、相対価格の変動を引き起こさないという利点から、一般物価水準でゼロインフレが好成績を残してきたんだろうと私は考えていますが、加えて、今まで利用されたモデルではかなりアプリオリにゼロインフレ近傍で線形近似されたモデルを使っており、これがひとつの原因ではないかと考えなくもありません。ゼロインフレ近傍での線形近似は判らなくもないんですが、逆に、ゼロインフレから乖離した解が導かれにくいバイアスを生じた可能性があります。あくまで、私の直感です。間違っているかもしれません。

photo


ということで、このワーキングペーパーの結論は上のテーブルの通りです。日米ともに標準的には+2%近傍のの定常状態インフレ率が社会厚生を最大化する、したがって、+2%のインフレ・ターゲットが日米ともに最適解に近い、との分析結果が示されています。そして、既存研究のゼロではなくプラスの、それも+2%の定常状態インフレ率が本ワーキングペーパーで導かれた理由は、日米両国において異なっており、日本ではゼロ金利制約に起因する部分が大きく、米国では名目賃金の下方硬直性が強い影響を及ぼしている、という結果となっています。ただ、ここに示されている社会厚生を最大化する定常状態インフレ率+2%はかなり幅をもって考えるべきであり、 ±1%ポイント程度乖離したとしても、社会厚生が低下する程度は限定的なものにとどまる、と確認しています。同時に、金融政策の時間軸効果=フォワード・ガイダンスを考慮すれば、社会厚生を最大化する定常状態インフレ率がさらに切り下がる可能性も指摘しています。

最後に、学術的、というか、エコノミスト的でなく、すでに定年退職したとはいえ、役人的な裏事情まで見透かして私なりに解釈を加えると、まず、著者3人はいずれも日銀企画局の職員であって、金融研究所の研究者などではありませんから、それなりのポジショントークと受け止めることも必要かもしれませんが、従来の日銀理論から決別し、日銀がオンゴーイングで実行している金融政策に対して標準的な経済学からの裏付けを与えるものであることは間違いありません。ただ、社会厚生を最大化する定常状態インフレ率は+2%であると結論されている一方で、+2%のインフレ・ターゲットから乖離を生じても社会厚生の損失は限定的、という結論は、現状の+1%に届かないインフレでもかなりの程度にOKであり、加えて、+2%目標の達成を急ぐ必要性は低い、というメッセージかも知れません。繰り返しになりますが、この最後のパラは私の勝手な解釈ですので、念のため。
Entry No.6229  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月01日 (月) 19:32:00

2四半期連続で景況感が悪化した日銀短観の先行きをどう見るか?

本日、日銀から6月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査から▲5ポイント低下して+7を示した一方で、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+2.3%の増加と3月調査から上方修正されてます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月日銀短観、大企業・製造業DIは2期連続で悪化 非製造業は2期ぶり改善
日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス7だった。前回3月調査のプラス12から5ポイント悪化した。悪化は2四半期連続だった。
大企業・製造業DIは16年9月(プラス6)以来の低い水準となった。業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス9も下回った。回答期間は5月28日~6月28日で、回収基準日は6月11日だった。
米中貿易摩擦の激化など、世界経済の先行き不透明感が業況感の悪化につながった。中国の景気減速懸念による生産用機械業や、ITサイクルの調整遅れによる電気機械業の悪化が目立った。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス7と横ばいの見通し。市場予想の中央値(プラス7)と同じだった。世界経済の先行き不透明感が引き続き重荷となる一方、米中貿易摩擦の改善や半導体市況の回復に対する期待感は支えになった。
19年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=109円35銭と、実勢レートより円安・ドル高だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス23と前回を2ポイント上回った。改善は2四半期ぶり。国内消費が総じて堅調なほか、大型連休の需要で宿泊・飲食サービス業が改善した。3カ月先のDIは6ポイント悪化のプラス17だった。五輪関連の需要一服や大型連休の追い風がなくなることなどが先行きの不透明感につながった。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス21となり、前回(マイナス23)から低下幅が縮まった。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。
19年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比7.4%増と、市場予想の中央値(8.3%増)を下回った。収益増加を受けた設備投資意欲は強く、都市開発関連の需要や人手不足を背景にした省力化投資の需要も追い風となった。


やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

photo


引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスはヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIで見て、3月調査から▲3ポイント低下の+9でしたから、これを下回り、やや弱い数字という印象なんですが、他方で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは大企業非製造業の業況判断DIは3月調査から▲1ポイント低下の+20を見込んでいたものの、実績は+2ポイント改善の+23でしたから、コチラを考慮すれば、強い数字という気がしないでもありません。大企業製造業の業況判断DIは市場の事前コンセンサスの下限近くな一方で、大企業非製造業の方は市場の事前コンセンサスの上限を突き抜けています。今回の6月調査の日銀短観で、評価の分かれるところかもしれません。ただ、大企業製造業の業況判断DIをヘッドラインとして扱っているのは、大企業から中堅・中小企業へ、また、製造業から非製造業へと波及するという経験則が背景にあるわけで、今後の動向を占う上でもっとも重視されるには理由があります。少し詳細に業種別に景況判断DIを見ると、大企業製造業では金属製品のほか、我が国のリーディング・インダストリーである生産用機械、自動車、電気機械などが3月調査からの下げ幅が大きくなっています。当然ながら、米中間の貿易摩擦やそれに伴う中国をはじめとする世界経済の減速の影響、あるいは、それらに対する不透明感が背景にあると考えるべきです。逆に、業況判断DIが改善した大企業非製造業を見ると、物品賃貸、宿泊・飲食サービス、運輸・郵便、卸売、小売などの改善幅が大きく、ゴールデンウィークの10連休や石油価格の再下落などの恩恵が背景にあると考えられます。先行きについては、大企業の製造業と非製造業で、これまた、見方が分かれ、大企業製造業は悪化に歯止めがかかって底堅く横ばいと見込んでいるのの対して、大企業非製造業では▲6ポイントの大きな低下が予想されています。私が従来から最大のリスク要因として注目している為替レートについては、大企業製造業による今年度2019年度の想定為替レートは対ドルで109.35円が見込まれており、市場の実勢よりもやや円安水準と私は受け止めています。為替相場の先行きについては私は何ら見識ありませんが、先行きの企業業績については、場合によっては、下振れする要因となる可能性を頭にとどめる必要がありそうです。

photo


続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。ただ、このところ、設備と雇用については、少し異なる動きを示していますが、大企業製造業の生産・営業用設備判断DIは3月調査の▲2から6月調査では生産・営業用設備判断1に、また、中堅・中小企業製造業でも同様に設備不足感がやや和らいでいます。ただ、±1~2ポイントの変化はどこまで現実的かは議論あると私は考えています。雇用人員判断DIも6月調査では3月調査から1~3ポイント不足感が和らいでいますが、大企業で▲20を超え、中堅・中小企業では▲30を超えていますので、まだまだ人手不足は深刻であると考えるべきです。

photo


日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2019年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で▲2.8%減という水準で始まった後、6月調査では+2.3%増に上方修正されています。設備不足感がやや和らいだとはいえ、設備投資意欲はそれほど低下していないと私は受け止めています。日銀短観の統計としてのクセもありますから、9月調査ではさらに計画が上方修正されるんではないか、と考えるエコノミストが多いだろうと私は想像しています。ただ、2019年度の設備投資計画が前年度比で増加なのは、2018年度の計画が最後の最後で6月調査の実績を見ると、大きく下方修正されているという要因もあります、基本は、人手不足も視野に入れつつ実行される設備投資なんですが、いずれにせよ、2019年度の設備投資計画は前年度比で増加する見込みながら、それほど力強く上向くという実感はないかもしれません。

photo


最後に、本日は、内閣府から6月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、前月の39.4から6月はまたまた▲0.7ポイント低下して38.7となり、何と、9か月連続で前月を下回りました。コンポーネント4項目のうち、「耐久消費財の買い時判断」と「暮らし向き」と「雇用環境」の3項目が前月から低下し、他方、「収入の増え方」は前月から横ばいとなっています。日銀短観に示された企業マインドも評価が分かれるところですが、消費者マインドの悪化はまだ続くんでしょうか?
Entry No.6228  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月28日 (金) 20:10:00

鉱工業生産指数(IIP)も一進一退が続き雇用統計はタイトな労働市場を示す!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも5月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から+2.3%の増産を示し、また、失業率は前月同じ横ばいの2.4%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月から▲0.01ポイント低下したものの1.62倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産5月2.3%上昇、先行きは「一進一退」
経済産業省が28日発表した5月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整値)は105.2だった。前月比2.3%上昇と大幅に伸び、2カ月連続で上昇した。国内需要が強く、自動車や自動車部品の生産が好調だった。6月には反動減が見込まれるため、経産省は「生産は一進一退」との基調判断を維持した。
15業種のうち、13業種で上昇した。自動車の伸び幅が大きく、前月から5.2%上昇した。5月に国内で新モデル車の発売が多く、生産が増えた。海外向けも需要が回復しているという。電気・情報通信機械工業は4.4%上昇だった。国内でデスクトップ型パソコンや開閉制御装置などの大型受注が相次いだ。
5月は大型連休の影響で企業の生産活動は一定程度の停滞が見込まれていた。実際には国内需要に対応するため、連休中も稼働したり、一日の生産量を増やしたりする動きが広がった。
もっとも先行きは強くない。メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、6月は前月比1.2%低下、7月は0.3%上昇となる。経産省は「今後生産は上昇基調にあるとまでは言えない」とした。同省の聞き取り調査では、中国経済の先行きを懸念する声が企業から出たという。
5月の在庫指数は104.4で、前月比0.6%上昇した。上昇は2カ月ぶり。化学工業で日焼け止めなど季節商品の在庫が増えた。
5月の有効求人倍率1.62倍、0.01ポイント低下 失業率2.4%
厚生労働省が28日に発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.01ポイント低下し1.62倍だった。低下は7カ月ぶりで、10連休明けに一時的に求職者が増えたことなどが影響した。総務省が同日発表した5月の完全失業率(同)は2.4%と前月から横ばいで推移した。「雇用環境は着実に改善が続いている」(総務省)という。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は前月から0.01ポイント低下し、1.15倍だった。雇用の先行指標とされる新規求人倍率は0.05ポイント低下し2.43倍だった。
新規の求人数は前年同月比2.5%減の93万8680人。米中貿易摩擦の影響で業績悪化の懸念がある製造業は8.8%減と4カ月連続で前年同期を下回った。一方、人手不足が続く宿泊業・飲食サービス業や運輸業・郵便業などでは前年を上回る状況が続いた。
完全失業者数は前年同月比7万人増の165万人で、2カ月ぶりに増加した。転職など自己都合で離職する人が増えたという。就業者数は6年5カ月連続で増え、34万人増の6732万人だった。このうち正社員は24万人増、パートなど非正規で働く社員は27万人増だった。


2つの統計を並べると、とても長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

photo


まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは季節調整済の系列で前月比+0.7%の増産でしたから、+2.3%増という実績は確かに大きく見えるんですが、製造工業生産予測指数で見て6月▲1.2%の減産に続いて、7月も+0.3%の増産にとどまるとの見込みですので、決して先行きが増産に向かうわけではありません。しかも、製造工業生産予測指数には上振れバイアスがあるため、6月▲1.2%の減産という調査結果は、補正した最頻値で▲1.7%のマイナス、幅をもって見れば▲2.7%~▲0.7%のレンジと試算されています。ですから、5月の増産は単月の統計でもあり、そのまま基調が変化したとは受け取れません。5月統計を少し詳しく業種別に見ると、引用した記事にもある通り、生産・出荷とも自動車工業と電気・情報通信機械工業の伸びが大きくなっています。まさに、我が国のリーディング・インダストリーであり、とても望ましい姿に見えなくもないんですが、昨日、商業販売統計の小売業販売額で見たように、自動車やデスクトップ・パソコンといった高額な耐久消費財の需要の高まりは、10月からの消費税率引き上げ前の駆け込み需要に起因する可能性が否定できません。駆け込み需要が既に始まっているかどうか、また、どれくらいの規模になるか、現時点では何とも判断がつきかねますが、政府がキャッシュレス決済に対してポイント還元により補助して、駆け込み需要とその反動をならす政策を決定していますが、駆け込み需要と反動減がゼロになると考えているエコノミストはいないと思いますし、一定の需要のかく乱は生じる可能性が高いと私も考えています。

photo


続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は2%台半ばを記録し、有効求人倍率も1.63倍と高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.16倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年近くに渡って1倍を超えて推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することなどから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却にも影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

最後に、エコノミストの間で5月鉱工業生産指数(IIP)の大幅な伸びは季節調整の何かのイタズラ、というか、ひょっとしたら不具合ではないか、という見方が示されていますが、私はCENSUS局法のアルゴリズムからして、取りあえずは、考慮する必要はないんではないか、と考えています。確かに10連休はありましたが、パラメータの設定を間違えているとは考えられず、かつての、2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻の際のように、とてつもない急激で不連続な変化が生じていたわけではありません。増産や景気拡大に対するネガティブな見方を示しがちな証券会社の債券営業サポートのエコノミストやアナリストのポジショントークかどうかを見極める必要があるかもしれません。逆に、証券会社でも株式営業サポートのエコノミストやアナリストがこういった主張をしているのであれば、あるいは、耳を傾けるべきだという気がしないでもありません。
Entry No.6224  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月27日 (木) 23:20:00

一進一退の続く商業販売統計の小売販売額の先行きやいかに?

本日、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.2%増の11兆9840億円、季節調整済み指数は前月比+0.3%増を記録しています。統計作成官庁である経済産業省では、小売業販売の基調判断を「一進一退」で据え置いています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

5月の小売販売額、1.2%増 好天で19カ月連続増加
経済産業省が27日発表した5月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比1.2%増の11兆9840億円だった。19カ月連続の増加。5月は好天に恵まれたことが寄与した。
業種別で見ると、9業種のうち7業種でプラスとなった。好天で夏物衣料を含む「織物・衣服・身の回り品」は4.1%増、「医薬品・化粧品」は31カ月連続の上昇となる4.8%増だった。原油価格の上昇を受けて、石油製品などをはじめとする「燃料」も上昇した。
大型小売店の販売額では、百貨店とスーパーの合計が0.2%減の1兆5632億円だった。既存店ベースでは0.5%減だった。売り場面積の縮小が響いた。コンビニエンスストアの販売額は2.8%増の1兆258億円で、75カ月連続の増加だった。
経産省は小売業の基調判断を5カ月連続で「一進一退」に据え置いた。


いつもながら、包括的に取りまとめられた記事だという気がします。次に、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

photo


ということで、今年2019年に入ってからの小売業販売額の季節調整済み系列の前月比を並べると、2019年1月に▲1.8%減とドカンと落ちた後、2月+0.4%増、3月+0.2%増、4月▲0.1%減の後、直近で利用可能な5月+0.3%増を記録し、2月以降は緩やかな増加を見せています。直近統計の5月では、季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比が+1.2%増で、引用した記事にもあるように、19か月連続のプラスもさることながら、今年2019年に入ってからの消費者物価(CPI)上昇率はヘッドラインでも、生鮮食品を除くコアCPIでも+1%には達していませんから、もちろん、品目構成はビミョーに異なるんでしょうがそれを無視すれば、CPIでデフレートした実質の小売業販売額≅消費はプラス、ということになります。5月統計については、ゴールデンウィーク10連休の大部分が5月でしたから、家計の消費は休日が多ければそれなりに増加するという経験則は確かにあり、休日効果で増加という可能性が高そうに私は受け止めています。卸売業販売額が5月には前年同月比で▲4.1%減と大きく減ったのは問屋さんなどの会社が休みの一方で、小売店は営業していた可能性があります。来年2020年の5月統計を見ればより明らかになるんですが、それも気も長い話で現時点では何とも判断できません。あるいは、10月1日からの消費税率引き上げ前の駆け込み需要が始まっている可能性も考慮しましたが、自動車小売業や電気製品を含む機械器具小売業で、ひょっとしたら、自動車などの大型耐久消費財の駆け込み需要が始まっている可能性を感じます。ただし、家計による目立った消費の駆け込み需要はについては、額は小さいながらも日用品でも生じますので、足元で私にはまだ日用品の駆込み需要は体感としては感じられません。ですから、10月の消費増税までジワジワと駆け込み需要が発生する可能性があると考えています。
Entry No.6223  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月26日 (水) 19:30:00

6月調査の日銀短観でどこまで業況判断は悪化すると予想されているのか?

来週月曜日7月1日の公表を控えて、シンクタンクから6月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画はもちろん今年度2019年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、足元から先行きの景況感に着目しています。一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
3月調査 (最近)+12
+21
<▲2.8>
n.a.
日本総研+11
+19
<+5.6%>
先行き(9月調査)は、全規模・全産業で6月調査対比▲2%ポイントの悪化を予想。雇用・所得環境の改善や消費増税を見据えた駆け込み需要が業況見通しのプラスに作用する一方、米国の保護主義的な通商政策など、海外情勢の先行き不透明感が景況感を下押しする見込み。
大和総研+7
+20
<+2.0%>
先行きの日本経済は、引き続き潜在成長率を下回る低空飛行を続けるだろう。まず、外需の低空飛行は当面続く公算が大きい。そうした中で内需の重要性が相対的に増してくるが、前述したように、雇用者報酬の増加ペース鈍化と消費マインドの悪化、そして今後発生する消費増税の影響などを受け、家計消費が本格的な回復・拡大に回帰するには時間を要するだろう。そして内外需が振るわない中で積み上がった在庫の調整圧力が当面は残存する。
こうした事情を勘案し、6月日銀短観では、製造業と非製造業の業況判断DI(先行き)が、いずれも引き続き悪化すると見込む。
みずほ総研+10
+20
<+4.9%>
先行きの製造業・業況判断DIは横ばいを予測する。
当面は米中間の貿易摩擦などを受けて中国経済やIT関連需要の持ち直しが期待しがたいことから、先行きの景況感は改善しないだろう。通商分野や不確実性に関する用語を含む記事件数を指数化した通商政策不確実性指数をみると、ファーウェイへの制裁措置が報じられたことなどを受けて足元で大幅に上昇している。また今後の米中貿易交渉の行方も不透明だ。さらに物品貿易協定(TAG)を巡る日米交渉も今後本格化することが予想される。仮に自動車に追加関税が課された場合、自動車だけでなくそれ以外の幅広い業種に影響が出る恐れがある。こうした対外的な不確実性が残存している中では、海外環境の影響を受けやすい製造業の業況感の改善は見込み難いと考えられる。
先行きの非製造業については、横ばいを見込む。根強いインバウンド需要などが引き続き押し上げ要因となる一方で、労働需給のひっ迫に伴う人件費上昇や人手不足による供給制約は、引き続き多くの業種の下押し要因となる だろう。
小売業やサービス業については、消費増税前の駆け込み需要の顕在化が期待される一方で、消費増税を控えて家計の節約志向が高まることへの懸念もあり、景況感の改善幅は限定的なものとなるだろう。非製造業全体としては横ばいに留まるとみている。
ニッセイ基礎研+8
+19
<+3.9%>
先行きの景況感もさらなる悪化が見込まれる。米中通商交渉は合意の目処が立っておらず、今後は米国による追加関税第4弾(3000億ドル相当分)発動が懸念される。また、参議院選挙後は日米通商交渉が本格化し、自動車輸出規制や為替条項導入の要求といった米政権からの対日圧力の高まりが懸念されるほか、英国のEU離脱問題についても引き続き難航が予想される。先行きの不透明感が強く、製造業は事業環境のさらなる悪化を想定せざるを得ない。非製造業も、インバウンドを通じて世界経済との繋がりが強まっただけに海外情勢への懸念が現れやすいほか、消費税率引き上げを控えた消費者マインド悪化や人手不足への懸念も重荷になりそうだ。
一方、消費税率引き上げを控えた駆け込み需要や、中国政府が相次いで打ち出している景気対策などへの期待が一定の下支えになることで、先行きの景況感が底割れする事態は避けられると見ている。
第一生命経済研+10
+20
<大企業製造業+15.9%>
7月初に発表される日銀短観は、業況判断DIが前回比△2ポイントの悪化になると予想する。前回の△7ポイントに比べると、悪化ペースに歯止めがかかるだろう。この結果は、10月の消費増税を前に、増税を実行するうえで、追加経済対策がどうなりそうかを考えるための試金石となりそうだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+10
+22
<大企業全産業+8.9%>
日銀短観(2019年6月調査)の業況判断DI(最近)は、大企業製造業では、前回調査(2019年3月調査)から2ポイント悪化の10と、2四半期連続で悪化すると予測する。中でも海外経済減速の影響を強く受ける加工業種の悪化が大きいだろう。先行きについては、3ポイント悪化の7と、海外情勢の不透明さを懸念して慎重な見方が示されよう。
三菱総研+8
+20
<+3.8%>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業が+5%ポイント、非製造業が+19%ポイントと、いずれも業況悪化を予測する。消費税増税前の駆け込み需要も見込まれることから内需は2019年9月にかけて拡大が予想されるものの、米中貿易摩擦の一段の激化、中国をはじめとする海外経済の減速、金融市場のリスク回避姿勢の強まりによる株安や円高、日米物品協定(tag)交渉の行方などには警戒が必要な局面であり、企業マインドの重しとなるであろう。


ということで、上のテーブルに見られるように、ほぼすべてのシンクタンクで大企業製造業・非製造業とも6月調査の業況判断DIは低下=悪化すると見込まれています。唯一の例外は三菱リサーチ&コンサルティングが予想する大企業非製造業であり、3月調査から+1ポイント改善すると見込まれています。リポートからそのまま引用すると、「良好な雇用・所得情勢、令和への改元効果により、特に小売や宿泊・飲食サービスへの需要が強いことがプラスに作用」しているんではないか、と分析しています。他のシンクタンクでは押しなべて、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速の影響から製造業・非製造業ともに業況判断DIは悪化する、特に製造業ではその悪化幅が大きい、と見込んでいます。まあ、順当なところかもしれません。さらに、上のテーブルでは「ヘッドライン」として取りまとめている先行きについては、9月調査でも基本として引き続き悪化を見込むシンクタンクが多いものの、10月からの消費税率引き上げ直前の駆け込み需要や中国における景気下支え対策への期待などから、少なくとも大きな悪化を示すとの予想は少なく、横ばいないし改善を見込む機関すらあります。ただし、今回の予想のスコープには入っていませんが、消費税率引き上げ以降の年度後半の景気については決して予断を許さないというのは多くのエコノミストの共通認識ではないか、と私は考えています。
下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。

photo
Entry No.6222  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月25日 (火) 23:11:00

基準年が2015年にアップデートされた企業向けサービス価格指数(SPPI)の動向やいかに?

本日、日銀から5月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.8%を示しています。前月の0.9%からやや上昇率が縮小したものの、引き続き+1%近い伸びを続けています。なお、今月の統計公表から基準年が2010年から2015年に変更されましたが、大きなトレンドには変化なく、2013年年央から6年近く連続して前年同月比プラスを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の企業向けサービス価格、前年比0.8%上昇 18年3月以来の低い伸び
日銀が25日に発表した5月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は102.8となり、前年同月比0.8%上昇した。伸び率は4月確報から0.2ポイント縮まり、18年3月以来の低い伸びだった。原油安による燃料費の下落や、10連休前の4月に宿泊サービスや新聞広告が伸びた反動で、運輸・郵便や広告のプラス幅が縮んだことが影響した。
日銀は今回発表分から新たに基準年を従来の10年から15年に改定し、調査対象となる価格情報を大幅に拡充した。
人手不足を背景とした人件費上昇の圧力は続いており、前年比でのプラスは71カ月連続だった。日銀は、運輸・郵便でドライバー不足による値上げが一服するなどしプラス幅の縮小傾向が鮮明になってきたとしながらも「(基準改定後も)プラス基調は続いており、大きな基調の変化が生じたわけではない」と評価した。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。日銀は今回の改定で、調査価格数を4758と旧基準から35%増やした。需要が伸びているインターネット広告などのネット関連や、建設機械レンタルなど復興・インフラ関連の値動きが指数に反映されやすくした。
調査対象とするサービスの種類を示す採用品目は統廃合などの結果、146と従来の147から減った。前年比で価格が上昇したのは87品目、下落は30品目だった。上昇から下落を引いた差は57品目となり、差し引きでのプラスは39カ月連続だった。


やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


繰り返しになりますが、引用した記事にもある通り、今月統計から企業向けサービス物価指数(SPPI)の統計は1985年にさかのぼって2010年基準から2015年基準に改定されています。詳細は、日銀リポートで明らかにされています。経済・産業構造の変化への対応や、国民経済計算などのデフレーター・ニーズへの対応の観点から、これまで調査対象外であったサービスを取り込み、また、当然ながら、デジタル経済化の進展によりインターネット関連サービスの価格調査が拡充されたことから、採用カバレッジは上昇し、調査価格数も増加しています。ただ、ウェイトについては少なくとも大類別については、旧基準から大幅な変化はないとしています。
ということで、SPPIの中身に入ると、前年同月比で見て5月統計では上昇幅がやや縮小していますが、主として、運輸・郵便が4月+1.7%上昇から5月には+1.2%にやや上昇幅が低下したことと、広告も4月+2.3%から5月+1.8%に縮小した寄与が上げられています。運輸・郵便は前年比寄与度の前月差で▲0.08%、広告が▲0.03%となっています。前者の運輸・郵便は国際商品市況における石油価格の下落を受けた影響ですが、後者の広告はまだ前年同月比プラスとはいえ、景気敏感項目ですので、米中間の貿易摩擦の激化を懸念した先行き不透明感や企業マインドの悪化も反映されていると考えるべきです。
なお、消費者物価指数(CPI)にせよ、本日公表の企業向けサービス物価指数(SPPI)にせよ、基準年ウェイトのラスパイレス方式で算出されていますので、一般的には上方バイアスを持ち、基準年のアップデートにより上昇率は下振れする場合が多いんですが、全体の評価として、本日公表された基準改定後のSPPI上昇率を見ると、基準改定に加えて、ジワジワと進む円高や内外経済環境なども含めて、かなりの悪条件が重なったにもかかわらず、+1%近い上昇率を続けており、物価はかなり粘着的な性質あるとはいえ、底堅いと評価していいんではないか、と私は肯定的に受け止めています。もちろん、先行きについては決して楽観できると考えるべきではありませんから、米国の金融政策動向によっては、日銀も何らかの追加緩和を模索しているんではないかと想像しています。
Entry No.6221  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月24日 (月) 21:14:00

リクルートジョブズによる5月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日6月28日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる5月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を簡単に見ておきたいと思います。

photo


ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の5月度平均時給は前年同月より+2.6%、+27円増加の1,051円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+44円、増減率+4.2%)、「フード系」(同+29円、+2.9%)、 「販売・サービス系」 (同+29円、+2.8%) 、「製造・物流・清掃系」(同+24円、+2.4%)など全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2018年11月統計から前年同月比プラスに転じて、今年2019年2月統計まで4か月の間は前年同月比プラスだったんですが、3~5月はマイナスを示しています。3月▲2.5%減、4月▲1.7%減、5月▲1.9%減です。5月統計の職種別では、「オフィスワーク系」(前年同月比増減額+30円、増減率+2.0%)、「医療介護・教育系」(同+20円、+1.4%)、「クリエイティブ系」(同+17円、+1.0%)、「IT・技術系」(同+15円、+0.7%)の4職種がプラスなんですが、「営業・販売・サービス系」(▲18円減、▲1.3%減)が前年同月比マイナスに寄与しています。ただ、派遣スタッフの業種別ではもっとも単価の低い医療介護・教育系(2019年5月統計で時給1,440円)の増加がシンプソン効果で平均単価を引き下げているようです。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトや派遣スタッフも人手不足の影響がまだ強いと私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用には注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。
Entry No.6220  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月22日 (土) 11:55:00

今週の読書は歴史上の偉大なエコノミスト12人の伝記をはじめ小説も含めて計7冊!

一昨日の木曜日6月20日に、ご寄贈いただいた松尾匡[編]『「反緊縮!」宣言』(亜紀書房) を取り上げましたが、今週の読書はほかに、以下の通り、私の予想に反して意外と人気の出なかった『アダム・スミスはブレグジットを支持するか? 』はじめとして、経済書を中心に以下の6冊です。実は、先週取り上げた『「追われる国」の経済学』についても、私はもっと話題になるんではないか、と考えていたんですが、どうもそれほど注目を集めているわけではないようです。官庁エコノミストを定年退職してから、私の読書眼もやや鈍っているような気がします。

photo


まず、リンダ・ユー『アダム・スミスはブレグジットを支持するか?』(早川書房) です。著者は、英国のキャスターであるとともに、オックスフォード大学で経済学博士号を取得しているエコノミストでもあります。英語の原題は The Great Economists であり、2018年の出版です。本書では、邦訳タイトルのように、アダム・スミスが英国のEU離脱を支持するかどうか、など、歴史上の著名なエコノミスト12人が現代的な経済課題にどう答えるか、という体裁を取っていますが、もちろん、そんなことにストレートに回答できるハズもなく、実は、12人のエコノミストの伝記になっている、と考えるべきです。私が読んだ限りでは、少なくとも、アダム・スミスがBREXITを支持するかどうかは明確ではありませんでした。私が読み逃しただけかもしれませんが、まあ、そんなことは判りません。スミスが自由貿易を支持したことは明記されていますが、そんなことは本書を読まなくても理解できるでしょう。ただ、今さらながらに思い起こしてしまったのは、マルクス的な共産主義の最も基本は公平と公正だということです。でも、マルクスが現在の中国経済をどう評価するかは、確かに、ビミョーなところかもしれません。ほかにも基本的なラインを思い出したのは、マーシャル的な経済学は政策科学であり、政策的な解決策を提示する必要ある、というのは重要なポイントだと思います。私はエコノミストとして、現状判断はそう無理なくできるような気がしますが、コンサル的に処方箋を書くのは少し苦手だったりしますので反省しています。かなり現在に近くて、それだけに仮定的な判断のあり方に興味あったのは、リーマン・ショック後の金融危機に対するフリードマン教授の対処方法です。本書の著者は、フリードマン教授は日本に量的緩和をオススメした実績もあり、FEDが当時のバーナンキ議長の下でQEを実施したのは支持するだろうと判断しています。私もそうなんだろうと思います。ということで、最後に、繰り返しになりますが、現代的な経済問題に対する歴史上の偉大なエコノミストの対応を仮定的にせよ期待するのではなく、あくまで、偉大なエコノミストの生い立ちを含めた伝記だと思って読み進むことをオススメします。

photo


次に、森信茂樹『デジタル経済と税』(日本経済新聞出版社) です。著者は、財務省から退官後は研究者に転じた税法の専門家です。実に興味あるタイトルであり、例のロボット課税とか、あるいは、税制ではないにしてもベーシック・インカムの議論なども収録されていますが、基本は、かなり課税に関するテクニカルな議論が展開されていると考えるべきであり、その意味でかなり難しい内容です。私は半分も理解できた自信はありません。ただ、GAFAなどのIT大企業がタックスヘブンの利用や極めてアグレッシブな課税回避スキームの利用で、ほとんど税金を収めていないのは広く知られた通りです。本書では、double Irish with a Dutch sandwitch などの手法を詳細に解説しており、経済協力開発機構(OECD)の試算では1,000~2,400億ドルの課税漏れが生じている、などと紹介しています。ただ、これも本書で取り上げていますが、こういった課税逃れについては、まっ先に指摘されたのは英国におけるスターバックスです。結局、本書でも指摘しているように、スターバックスは自発的に年間1,000万ポンドの納税を行っているそうですが、要するに、デジタル経済でなくても、本書で指摘しているようなアグレッシブなものも含めたタックスへ分bを利用した移転価格による課税逃れは、多国籍企業には広く見られるものではないのか、という気はします。すなわち、デジタル経済特有の問題ではないと私は考えます。これも、本書で取り上げられている武富士創業者一族による相続課税逃れも同じです。その意味で、最初に触れたロボット課税とか、AIとロボットによる雇用の喪失に伴うユニバーサルなベーシック・インカムの問題こそがデジタル経済に特有の税制問題であろう、と私は考えるんですが、本書では極めて限られたスペースでしか論じられていません。誠に残念です。

photo


次に、野村総合研究所『ITロードマップ 2019年版』(東洋経済) です。これも、税制の本と同じで、工学的な技術、それも、この先5年位を見据えた技術動向ですから、誠に情けないながら、私にはサッパリ理解できない内容だった気がします。毎年出版して、今年で14冊目、ということのようですが、恥ずかしながら、私は初めて読みました。今まで何をしていたのかは不明だったりします。これまた、半分も理解できた気がしませんが、巻末に用語解説がありますので、場合によっては、先にそれに目を通しておくのも一案かもしれません。日本語の用語集で、エンティティや決定木くらいならともかく、勾配ブースティングになると、私にはサッパリ判りません。また、量子コンピュータというのは何度も聞いたことはあるものの、0と1だけでなくその中間的な値を取れる、などと解説されても理解にはほど遠い気がします。工学的な技術動向に疎いエコノミストに理解できて興味あったのは、例えば、Amazon Go といった無人店舗の拡大と雇用の問題とか、AIに特化したチップの製造が試行されているとか、3Dプリンタによる製造が試作品などの付加製造からより幅広く実用化される方向にあるとか、といった点です。特に、カスタマー・エクスペリエンス(CX)から、今後はエンプロイー・エクスペリエンス(EX)の現実化に進むといわれれば、そうかもしれないと考えたりもします。アリババが国家と一体化して進めているように、信用スコアの構築と実用化なんかも今後の課題になりそうです。セキュリティ面で、Google のゼロ・トラスト・モデルで、ソフトウェアも、人も、何も信用しない、というのはゼロ・トレランスからの発想だろうか、と思わないでもありません。最後に、どうでもいい指摘で、データ・サイエンティストがセクシーであるというのは、2012年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』ではなく、もっと前の『マッキンゼー・クォータリー』ではなかったか、と私は覚えています。私が統計局に出向したのが2010年の夏で、その着任挨拶で引用した記憶があります。

photo


次に、羽賀祥二[編]『名古屋と明治維新』(風媒社) です。編者は、名古屋大学をホームグラウンドとしていた研究者で、すでに引退しているようです。チャプターやコラムごとの著者には、名古屋市博物館や蓬左文庫の学芸員などが名を連ねています。ということで、あまりまとまりもなく、統一性や整合性も十分ではないような気もしますが、それぞれの観点から幕末から明治初期の名古屋について歴史的に跡付けています。というのは、私のようなシロートから見ても、明治維新の立役者は薩長土肥といった西南雄藩であり、その敵役は会津藩などであり、徳川政権の親藩ご三家については、第8代将軍吉宗以来の伝統で、14代の家茂もそうなんですが、宗家の本流といっても差し支えないくらいの紀伊、逆に、徳川宗家とは距離を置き反体制派的な色彩すらある水戸、に対して、親藩ご三家筆頭ながら何となく特徴に欠ける尾張、という受け止めが一般的ではないでしょうか。ですから、新政府軍は名古屋を素通りしたりしています。ただ、支配階層から見た歴史はそうなのかもしれませんが、民衆の指示というのは目には見えなくても不可欠なわけで、例えば、本書でもp.57に新しい勢力の一半として、薩摩芋や長芋で薩長を暗示しつつ、尾張大根もOKといった政治風刺のチラシが紹介されているなど、当時の一般国民レベルでは尾張藩も薩長土肥と同列とはいわないまでも、改革派と見なされて支持されていたようです。ただ、やや強引に見える立論もあり、例えば、青松葉事件から尾張藩関係者が明治新政府で栄達しなかった原因を探るのはムリがありますし、入鹿池の決壊から成瀬・竹腰両付き家老の勢力伸長を解き明かそうと試みるのも強引な気がします。いずれにせよ、ややまとまりに欠ける名古屋論集だという気がして残念です。

photo


次に、柚月裕子『検事の信義』(角川書店) です。著者は、本書の検事佐方貞人シリーズなどで売れっ子のミステリ作家です。本書はシリーズ4作目だそうですが、私は過去3作すべて読んでいると思います。本書は著者の作家デビュー10周年記念作品だそうで、佐方貞人を主人公とする短編4作を収録しています。主人公のモットーは「まっとうに罪を裁かせる」であり、真実に迫る姿勢が好ましく感じられます。私自身は、かなり融通を利かせる方ですので、やや取り組み方の姿勢が違っているんですが、「青臭い」部分もある佐方健司検事の方に共感を寄せそうな読者がいっぱいなんでしょう。ということで、舞台は平成10~12年ころ、約30年前の東北地方にある架空の県庁所在都市である米崎市の米崎地検に勤務する検事の佐方と佐方を補佐する事務官の増田、地検で佐方の上司に当たる副部長の筒井、さらに捜査機関である米崎東警察の南場署長らの登場人物がお話を進めます。佐方は任官4~5年目ですから、まだ30歳前後であり、米崎市は東京から北に新幹線で2時間だそうですから、ほぼほぼ仙台をイメージしてよさそうです。軽いミステリの謎解きになっていますが、謎解きが主眼の小説ではありません。むしろ人間模様というか、人間性の発露のようなものを描くのを目的とした小説です。ということで、私はこのシリーズの中では主人公の佐方検事や補佐役の増田事務官もさることながら、上司の筒井副部長のキャラが好きです。第2話の終わりの方に「俺は、恨みは晴らさないが、胸に刻む主義だ」とうそぶいていたりします。佐方は「覚えておきます」と答えています。なかなかの会話だという気がします。

photo


次に、久住祐一郎『三河吉田藩・お国入り道中記』(インターナショナル新書) です。著者は、豊橋市美術博物館の学芸員です。冒頭に、「古文書から読み解く参勤交代の真実=リアル」とあるように、徳川後期の参勤交代について、譜代大名で三河吉田藩に封じられている松平家の若殿様が、天保年間に父親の名代としてお国入りする際の大名行列について、目付けとして実務を担当した藩官僚の記録から解明を試みています。ところが、ページ数のボリュームで数えて、⅔くらいまで実際の参勤交代は出発しません。それだけ、準備がタイヘンだということであり、「道中心得方之留」などといったマニュアルが紹介されたりもします。正室が江戸詰めであるわけですから、若殿は通常江戸の生まれ育ちであり、父親たる大名の名代として初めてお国入りする際の行列の規模については、通常よりも大きめ、でも、名代ではなく大名を相続してからのお国入りよりは小さく、ということに決まります。19世紀に入ってからの天保年間ですから、徳川政権が成立してからはもちろん、参勤交代が制度化されてからも200年が経過しており、藩官僚としては参照すべき前例がタップリ蓄積されているわけです。そして、天下泰平が続く中で、先週取り上げた『壱人両名』にあったように、本音と建前を使い分けて、融通を利かせるように制度も変化を続けています。そういった例がいくつも見られ、微笑ましいというか、日本人の知恵といったものに感心させられます。

photo


最後に、原真人『日本銀行「失敗の本質」』(小学館新書) です。著者はジャーナリストです。かなりひどく経済政策について理解していない気がしますが、まあ、こういったジャーナリストからの政策当局に対する批判は、当然ありうべきものです。日銀などの先進国における中央銀行が政府から独立しているとはいえ、政策当局が国民から独立しているわけではないと私は常々考えていますので、国民サイドからの何らかのチェックは必要です。ただ、日銀による金融政策運営を軍部による戦争になぞらえるのは、やや下品な気もしますが、批判論者の立場がよりクリアになるということであれば、それなりにアリなのかもしれません。例えば、冒頭から、「異次元緩和」は真珠湾攻撃、「マイナス金利」はインパール作戦、「枠組み変更」は沖縄戦に、それぞれなぞらえられたエピグラフが配されています。批判の中心は、現在の黒田日銀の異次元緩和が財政ファイナンスにつながり、財政赤字が積み上がっていくことに対する素直な恐怖なのかもしれません。それはそれで、エコノミストの側で理解すべきです。まあ、自然科学の素養のない大昔の人が暗闇を怖がったのと同じなのかもしれません。というのは、本書の議論のバックグラウンドには特段の経済学的な裏付けはないと私は感じたからです。決して、オススメはしませんが、何かの点で現政権に反対意見を持ちたいという党派的な読者には好意的に受け入れられる可能性があります。ただ、それなりの基礎的な知識あるエコノミストや現在のアベノミクスを支持している多くの国民からは、とても疑問の多い内容だと思います。繰り返しになりますが、正面切ってまじめに論評するレベルには達していない一方で、権力に対する批判は、これくらいの健全ではない批判であっても許容されるんではないかと、私は広い心を持ちたい気がします。
Entry No.6218  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月21日 (金) 20:10:00

やや上昇率が鈍化した消費者物価指数(CPI)の今後の動向やいかに?

本日、総務省統計局から5月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月とほぼ同じ+0.8%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の全国消費者物価0.8%上昇、プラスは29カ月連続
総務省が21日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.8と前年同月比0.8%上昇した。プラスは29カ月連続。前年に比べ電気代や都市ガス代などが高い水準にあるほか、焼き肉など外食、ポテトチップスなど菓子類の上昇が押し上げた。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.7%上昇だった。全体の56.6%にあたる296品目が上昇し、下落は168品目、横ばいは59品目だった。総務省は「消費者物価は緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
伸び率は4月(0.9%)に比べ縮小した。皇位継承に伴う10連休で前月に目立った外国パック旅行費の上昇が鈍化した。電気代や都市ガス代の上昇幅も縮小した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.6と前年同月比0.5%上昇した。新製品の出回りが早くなったルームエアコンの上昇などが押し上げた。生鮮食品を含む総合は101.8と0.7%上昇した。
総務省は、イラン情勢などの影響による足元の原油価格の上昇について「ガソリン代や電気代などに遅れて影響してくるため、注視している」とした。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

photo


ということで、冒頭では先月4月統計とほぼ同じと表現したんですが、実は、4月のコアCPI上昇率は+0.9%でしたので、やや上昇率は縮小しています。他方で、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.7~+0.8%のレンジでしたので、これに比べるとほぼジャストミートしたといえます。前年同月比上昇率に対する寄与を見ると、エネルギーの寄与が4月の+0.35%から本日公表の5月統計では+0.29にやや縮小しており、特に、電気代が先月4月の前年同月比上昇率+5.8%、寄与度+0.20%から今月5月は上昇率+3.6%、寄与度+0.12%となっており、ほぼほぼ電気代の寄与度差で5月に上昇率が低下したことを説明できてしまいます。すなわち、やっぱり、エネルギーの影響が大きい、ということなんだろうと考えられます。エネルギー価格については、誠に情けなくも、私のは先行きの動向が読み切れません。特に、例のイラン沖のタンカー砲撃が石油価格に及ぼす影響なんぞは、まるっきり予想もできません。予想はできないながらも実績を見れば、昨年2018年10~11月ころに石油価格がピークをつけていることから、今年2019年10~11月の消費税率引き上げの時期にコアCPI上昇率は大きく落ちる可能性が高い、と考えるべきです。消費税率引き上げの影響を除けば、年度後半には+0.5%を下回って、ゼロ%台前半まで上昇率が縮小する可能性があります。わずかにマイナスに入る月もあるかもしれません。ただし、別の観点ですが、引用した記事にもある通り、2年半近い29か月連続で前年同月比でプラスを続けていますので、さすがに適応的な期待形成が成り立つとすれば、そろそろインフレ期待も上昇するんではないかと私は考えています。その昔の日銀理論からすれば、インフレ期待が動き始めると「岩石理論」によって、制御できなくなったり、ハイパーインフレに陥る可能性が指摘されたりしていたんですが、さすがに、現時点でそんなことを主張するのはブードゥー・エコノミクスであるのは多くの人が理解したことと思います。

最後に、私が少し前から主張しているように、我が国経済の先行きリスクのうち最大の下振れ要因は為替であり、今日の段階で1ドル107円くらいまで円高が進んでいます。今週、相次いで開催された日米の中央銀行による米国の連邦公開市場委員会(FOMC)ないし我が国の金融政策決定会合は、ともに金融政策は現状維持、利下げなしで終了しましたが、米港の金融緩和観測により為替の円高が進んでいるようです。6月9日付けとやや古いニュースですが、欧州中央銀行(ECB)関係者の1人は、「『利下げの理由は5つある』とし、『為替相場』と5回繰り返した。」とロイターのサイトで報じられており、日銀も為替に関する比重が従来よりも高い金融政策運営を強いられる段階に近づきつつある、と私は考えています。
Entry No.6216  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月19日 (水) 22:55:00

4か月ぶりの赤字を計上した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲7.8%減の5兆8351億円、輸入額も▲1.5%減の6兆8022億円、差引き貿易収支は▲9671億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の貿易収支、4カ月ぶり赤字 中国や韓国向け輸出落ち込む
財務省が19日発表した5月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9671億円の赤字だった。赤字は4カ月ぶり。中国や韓国向けの半導体等製造装置の輸出が落ち込んだ。米中貿易摩擦の激化などで、低迷する中国経済の影響を受けたようだ。世界全体の輸出額も6カ月連続の減少となった。
全体の輸出額は前年同月比7.8%減の5兆8351億円だった。中国向けの輸出額が9.7%減の1兆1485億円と、3カ月連続で減少したことなどが響いた。全体の輸入額は1.5%減の6兆8022億円。アラブ首長国連邦(UAE)からの液化天然ガスの輸入などが減った。
対欧州連合(EU)の貿易収支は過去最大となる2515億円の赤字となった。英国向けの医薬品の輸出が減った一方、金額の大きいフランスからの航空機類の輸入増が影響した。
対米国の貿易収支は3950億円の黒字で、黒字額は14.8%増加した。自動車や半導体等製造装置の輸出が増え、3カ月連続の増加となった。
5月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=111円07銭。前年同月に比べ1.8%の円安・ドル高に振れた。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、5月の貿易収支は▲1兆290億円の赤字でしたので、丸めて▲1兆円の貿易赤字という意味でほぼジャストミートしたと私は受け止めています。このブログのタイトルもそうなんですが、引用した記事は季節調整していない原系列の統計で論評していますので、「4か月ぶりの貿易赤字」ということになっていますが、上のグラフのうちの下のパネルに見られる通り、トレンドを見る季節調整済みの系列による統計では昨年2018年7月から貿易赤字に転じており、今年2019年5月の直近で利用可能な統計まで、ほぼほぼ1年近い期間ずっと貿易赤字が続いているといっても大きな間違いではありません。もちろん、引用した記事にもある通り、最近時点のトピックとしは5月以降の米中間の貿易摩擦の激化ということになるんでしょうが、季節調整済みの系列でも、季節調整していない原系列でも、輸出入ともに昨年2018年年央過ぎくらいから減少局面に入っているように見え、これは世界経済が全体として景気減速に入っていることの現れと考えるべきです。我が国の景気の減速も明らかであり、1~3月期のGDP統計を振り返って、輸入の減少がGDP成長率に寄与するという形で、ややトリッキーなプラス成長を記録したことは記憶に新しいところではないでしょうか。

photo


その輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、これも引用した記事にある通り、季節調整していない原系列の統計で見て、我が国の輸出額は5月統計で前年同月比▲7.8%減を記録したところ、そのうち中国向けの輸出額が▲9.7%減となっています。もちろん、今年のゴールデンウィークが10連休であったことに起因して、4月に前倒しするなどの動きがあって5月の輸出に影響が出た可能性はあるものの、改めて中国向け輸出の大きさを実感した気がします。すなわち、中国向け輸出額は我が国の輸出額合計のほぼ20パーセントを占めますから、中国向け輸出額が2桁近い減少を示すと、それだけで▲2%ほどの寄与となります。また、上のグラフの一番下のパネルから、OECD先行指数に見る中国経済はそろそろ底を打って反転上昇する局面に入りつつあるように見えますが、HUAWEIに対する個別的な通商措置はすでに効き始めている可能性あるものの、米中間の貿易摩擦の影響が本格的に現れるのはこれからですから、この反転しそうに見えるOECD先行指数がどこまで実現されるかは疑問です。

最後に、私が従来から主張している通り、先行き最大のリスクは為替です。米国連邦準備制度理事会(FED)の連邦公開市場委員会(FOMC)が米国東部海岸時刻(EST)の今日6月19日まで開催されていますから、利下げなどの金融緩和に踏み切るのかどうかが注目されます。
Entry No.6213  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月18日 (火) 22:55:00

世界で最も価値あるブランドやいかに?

先週水曜日の6月12日に、コンサルティング・ファームのカンターから「BrandZ 2019: 世界で最も価値のあるブランドTop100」が明らかにされています。pdfの全文リポートもアップされています。

photo


トップテンの結果は上のテーブルの通りです。調査開始の2006年は、Microsoftがブランド価値ランキングでトップの座を獲得して以来、この調査では12年間一般してテクノロジーブランドがトップに立つとともに、トップ以外でもランクインするブランドの大半はテクノロジーブランドが占めて来たらしいんですが、今回、この調査のブランド価値で見て前年比+52%増の3,155億ドルという際立った成長を見せたAmazonがトップとなりました。+3%増という穏当な成長にとどまったApple(2位、3,095億ドル)、また、+2%増にとどまったGoogle(3位、3,090億ドル)を抜いています。地域別にアジア企業では、上のテーブルを見れば明らかな通り、7位にAlibabaが、8位にTencentがランクインしています。また、トップテンのテーブルには現れませんが、トップ100の中に我が国企業が2社ランクインしており、それはTOYOTAとNTTです。でも、TOYOTAは昨年2018年の36位から2019年には41位にランクダウンし、NTTも昨年の55位から今年の70位に少し順位を下げています。トップ100にランクインするアジアブランドは、昨年2018年の21ブランドから、今年2019年には24ブランドに増えていて、日本の2ブランド以外では、中国: 15ブランド、インド: 3ブランド、韓国: 1ブランド、香港: 1ブランド、オーストラリア: 1ブランド、インドネシア: 1ブランドがランクインしているそうです。
Entry No.6212  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月14日 (金) 20:25:00

東京商工リサーチ「想定為替レート」調査の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、今週月曜日の6月10日に東京商工リサーチから「想定為替レート」調査の結果が明らかにされています。東証の1部と2部に上場しているメーカー128社の2020年3月決算における想定レートの調査結果です。単なる平均値や中央値だけでなく、ある程度、分布が明らかにされています。

photo


ということで、調査結果は東京商工リサーチのサイトから引用した上のグラフの通りとなっています。1年前の2019年3月期決算の期初の想定為替レートは、米国の長期金利上昇などに起因する2018年2月の世界同時株安の余波や米中間の貿易摩擦の深刻化などが懸念され、やや円高の1ドル=105円の企業が85社、66.4%で、もっとも多かったんですが、米国の連邦準備制度理事(FED)の利上げが相次いでドル高円安に振れ、一時115円近い水準まで達するなど、105円の想定水準よりも円安の時期が続いたため、2020年3月期は1ドル=105円から110円に変更するメーカーが目立っています。すなわち、期初の対ドル想定為替レートを110円に設定しているのが75社、58.5%と過半に上り、うち、51社が昨年の想定レート105円から今年の110円に変更しています。上のグラフのうちの上のパネルに見られるように、110円水準を中心に見れば、やや円高水準を想定する企業が多いんですが、全体として、昨年よりも円安水準を想定する企業が大いのは見ての通りです。実際に、3月調査の日銀短観では大企業・製造業の2019年度の想定為替レートは108.87円との結果を弾き出しており、上場メーカーの110円想定レートは日銀短観とも違和感ありません。
今週月曜日6月10日に、内閣府から1~3月期のGDP統計2次QEが公表された際、多くのエコノミストとともに、私も対外要因が我が国経済の先行きにおける最大のリスクと考えている点は同じとしても、私自身は米中貿易摩擦の余波で我が国から中国向けの輸出が影響を受けるのもさることながら、米国の連邦準備制度理事会(FED)が金融引き締めをストップし、金利引き下げに転ずることに伴う為替レートの増価、すなわち円高が最大の先行きリスクと考えていると明らかにしましたが、昨年2018年度から今年2019年度にかけて、上場メーカーの想定レートが円安に修正されているようですから、実際の対ドルレートが円高に振れれば、円安に設定変更された想定レートとの対比で、上下両方向でのダメージがかなり大きい可能性が否定できません。
Entry No.6206  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月13日 (木) 19:40:00

2四半期連続でマイナスとなった法人企業景気予測調査の景況感判断指数BSIの先行きやいかに?

本日、財務省から4~6月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は1~3月期▲1.7の後、足元の4~6月期も▲3.7と、2四半期連続でマイナスを付けた後、先行き7~9月期には+6.7とプラスに転じ、10~12月期も+0.4とプラスを続ける、と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感、2期連続のマイナス 4~6月
財務省と内閣府が13日発表した法人企業景気予測調査によると、4~6月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス3.7だった。マイナスは2四半期連続。前回調査の1~3月期はマイナス1.7だった。
先行き7~9月期の見通しはプラス6.7となった。4~6月期は大企業のうち製造業がマイナス10.4で、非製造業はマイナス0.4だった。中小企業の全産業はマイナス15.0だった。
2019年度の設備投資見通しは前年度比9.0%増だった。前回調査では6.2%減だった。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。


いつもながら、簡潔かつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は4~6月期に▲3.7を示しましたが、大企業の産業別内訳では、引用した記事にもある通り、製造業が▲10.4の大きなマイナスに対して、非製造業はほぼ横ばいの▲0.4となっています。大企業製造業のうち、特にマイナス寄与の大きかった産業を詳しく見ると、自動車・同附属品製造と生産用機械器具製造がともに▲20超の大きなマイナスを記録しています。この両産業に限りませんが、米中間の貿易摩擦の深刻化による先行き不透明感が企業マインドに影を落としていると私は考えています。他方、大企業非製造業でマイナス寄与が大きいのは建設業の▲16.7であり、人手不足による人件費の上昇が負担となっている可能性が示唆されているようにも感じます。また、先行きの景況感について大企業全産業について見ると、7~9月期には+6.7に跳ね上がった後、10~12月期には+0.4と見込まれています。10月の消費増税以降の景況感が、私の目から見て、やや楽観的な気がしなくもありません。もちろん、2014年4月の8%への引き上げ時と違って、今回は引き上げ幅がやや小さい上に、多彩な政府の対応策が用意されていますので、2014年4月の時ほどの大きな落ち込みが見られない可能性があるのも事実です。景況判断以外のほかの調査項目を簡単に見ておくと、雇用については人手不足が続いており、特に、非製造業で不足感が強くなっています。設備については大企業よりも中堅企業や中小企業で不足感が強く、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業の前年度比で+9.0%増と見込まれています。製造業が+9.2%増、非製造業も+8.8%増と大きな違いは見られません。製造業では化学工業の寄与が、非製造業では運輸業・郵便業の寄与が大きくなっています。

企業マインドについては、6月調査の日銀短観が7月1日に公表の予定となっています。米中間の貿易摩擦に伴う先行き不透明感は、どこまで織り込まれた結果が出るんでしょうか。
Entry No.6204  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月12日 (水) 19:22:00

3か月連続の増加を示す機械受注と上昇率の縮小した企業物価(PPI)!

本日、内閣府から4月の機械受注が、また、日銀から3月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+5.2%増の9137億円を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.7%と前月の+1.3%から上昇率が縮小したものの、引き続き、プラスの上昇率を継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の機械受注、前月比5.2%増 市場予想0.8%減
内閣府が12日発表した4月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比5.2%増の9137億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は0.8%の減少だった。
うち製造業は16.3%増、非製造業は1.2%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は2.5%増だった。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」へと変更した。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
5月の企業物価指数、前年比0.7%上昇 前月比は0.1%下落
日銀が12日発表した5月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は101.8と前年同月比で0.7%上昇、前月比で0.1%下落した。市場予想の中心は前年比で0.7%上昇だった。
円ベースでの輸出物価は前年比で2.7%下落、前月比で1.4%下落した。輸入物価は前年比1.4%下落、前月比で0.3%下落した。


長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


まず、機械受注のうち変動の激しい電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注について、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲1%ほどの減少だったんですが、実績値では逆に+5.2%の増加を示しています。今年2019年に入ってから、1月に▲5.4%の減少となった後、2月+1.8%増、3月+3.8%増、4月+5.2%増と、3か月連続での増加となり、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏み」から「持ち直しの動き」へ上方修正しています。先月の3月統計公表時に4~6月期見通しが明らかにされており、コア機械受注は+15.7%増の2兆9,236億円とされていて、4月統計はこれに整合的な動きとも考えられるんですが、いかんせん、5月から激化し始めた米中間の貿易摩擦による関税率引き上げが、まだこれには盛り込まれていませんから、かなり割り引いて考える必要がありそうな気がします。特に、4月統計系では製造業が前月比+16.3%増、電力と船舶を除く非製造業が+1.2%増の結果でしたが、製造業の大きな伸びは大型案件に起因するようですし、4月単月の結果ながら、先行指標の外需が大きく減少しているのも気がかりです。先行きについては、製造業というよりも、むしろ、人手不足への対応による非製造業が底支えし、横ばいないし緩やかな増加を示す、との従来からの見方を変更する必要はないものと私は考えています。

photo


続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価については、つい半年あまり前までの2018年7~10月の期間は4か月連続で前年同月比上昇率が+3%に達っしていたんですが、5月統計では+1%を割り込みました。国際商品市況における石油価格は、昨年2018年10~12月期にピークをつけた後、しばらく低下を続けましたが、最近になって上昇に転じ、米中間の貿易摩擦で中国経済への影響が懸念されてまた下落する、という慌ただしい動きとなっており、我が国物価へのインパクトもさまざまです。5月の国内物価指数では、どこまで米中間の貿易摩擦の影響が織り込まれているか私には不明なんですが、銅地金などの非鉄金属が4月の前年同月比▲2.8%から5月には▲6.2%まで下落幅を拡大し、石油・石炭製品も4月の+4.1%から5月には+1.1%に上昇幅を縮小させており、はん用機器、生産用機器、業務用機器なども軒並み上昇幅が縮小したり、マイナスに転じたりしています。一部に中国経済の停滞が織り込まれているのかもしれません。繰り返しになりますが、あくまで私の想像であり、官庁エコノミストを定年退職した身としては、それほどの情報を持っているわけではありません。というか、官庁エコノミストのころから、それほどの情報は持っていなかったんですが、ますます情報が入って来なくなったのも事実です。
Entry No.6202  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月11日 (火) 21:12:00

セイコー「時間白書2019」による現代人の時間単価やいかに?

昨日6月10日は時の記念日でした。知っている人は知っていると思いますが、『日本書紀』において天智天皇10年に我が国初の時計が鐘を打った日のグレゴリオ暦の日付だそうで、今年も6月6日付けで、セイコー「時間白書2019」が明らかにされています。詳細なリポートから、私の興味の範囲で、いくつかグラフとともにトピックを取り上げておきたいと思います。

photo


まず、私が興味を持ったのは時間価値であり、上のグラフはセイコーのサイトから引用していますが、オンタイムとオフタイムそれぞれ1時間の時間価値の自己評価をプロットしています。オンタイムもオフタイムも最近ジワジワと上昇を示しています。オンタイムについては、大雑把に、1時間4,000円として時給に相当すると考えれば、1日8時間と月20日働けば月給で64万円、ボーナスなどを無視すれば年収768万円に上りますから、先週火曜日の6月4日に取り上げた東京商工リサーチの調査による上場企業平均年間給与の606万円を25%ほど上回ります。平均的なこのアンケートの対象が高額所得者なのか、それとも、やや高めに回答するバイアスがあるのか、よく判りません。オフタイムの時間価値については比較する対象がありませんが、確かに、これくらい貴重な気もします。1時間当たり平均9,632円と昨年調査結果の7,226円よりも2,406円、前年比+33.3%増と大きく伸びています。ワークライフ・バランスの見直し機運もオフタイムの時間価値増加に寄与している気がします。

photo


次に、曜日別に大切にしている時間帯のヒートマップをセイコーのサイトから引用すると上の通りです。月曜日の出勤前と週末金曜日から土日にかけての夕方から夜、というのはとてもよく判る気がします。

ここに取り上げた項目のほかに、時間に追われている感覚は改善せず。せわしさ感は横ばいが続いているとか、セイコーのサイトにはいろいろと興味深い調査結果が取りまとめられています。
Entry No.6200  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月10日 (月) 19:48:00

1-3月期GDP統計2次QEは1次QEからわずかに上方改定される!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.6%、年率では+2.2%と、1次QEからわずかに上方改定されています。2四半期連続のプラス成長で、1~3月期は前期よりも成長が加速しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月期のGDP改定値、年率2.2%増に上方修正 速報は2.1%増
内閣府が10日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算では2.2%増だった。速報値(前期比0.5%増、年率2.1%増)から上方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.5%増、年率2.2%増となっており、速報値から小幅に上振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.8%増(速報値は0.8%増)、年率は3.4%増(同3.3%増)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比0.1%減(同0.1%減)、住宅投資は0.6%増(同1.1%増)、設備投資は0.3%増(同0.3%減)、公共投資は1.2%増(同1.5%増)。民間在庫の寄与度はプラス0.1%(同プラス0.1%)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス0.1%(同プラス0.1%)、輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.4%(同プラス0.4%)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス0.1%(同プラス0.2%)だった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/1-32018/4-62018/7-92018/10-122019/1-3
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.1+0.6▲0.6+0.5+0.5+0.6
民間消費▲0.1+0.6▲0.3+0.3▲0.1▲0.1
民間住宅▲2.3▲2.0+0.8+1.4+1.1+0.6
民間設備+1.0+2.6▲2.6+2.7▲0.3+0.3
民間在庫 *(▲0.2)(▲0.0)(+0.2)(+0.1)(+0.1)(+0.1)
公的需要▲0.1▲0.1▲0.2+0.3+0.2+0.2
内需寄与度 *(▲0.2)(+0.6)(▲0.5)(+0.8)(+0.1)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.0)(▲0.1)(▲0.2)(▲0.3)(+0.4)(+0.4)
輸出+1.0+0.7▲2.0+1.2▲2.4▲2.4
輸入+0.7+1.0▲1.0+3.0▲4.7▲4.7
国内総所得 (GDI)▲0.4+0.4▲0.9+0.4+0.9+1.0
国民総所得 (GNI)▲0.5+0.7▲1.1+0.5+0.7+0.8
名目GDP▲0.2+0.3▲0.6+0.5+0.8+0.8
雇用者報酬+1.0+1.5▲0.5+0.3+0.1+0.1
GDPデフレータ+0.5▲0.1▲0.4▲0.3+0.2+0.1
内需デフレータ+0.9+0.5+0.6+0.5+0.3+0.3


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

photo


ということで、1~3月期GDP統計2次QEは先月の1次QEから大きな変化はありませんでした。法人企業統計などの1次統計の追加と反映を受けて、住宅投資が下方改定された一方で、設備投資が上方改定され、ほかにも細かな修正はありますが、季節調整済みの系列で見て、全体として実質GDI成長率が1次QEの前期比+0.5%、前期比年率+2.1%からわずかに、前期比+0.6%、前期比年率+2.2%と上方修正されています。内需寄与度はほぼゼロで、外需の寄与によりプラス成長を実現していますが、輸出の伸びではなく輸入の減少がGDPの増加に貢献しているわけで、その輸入の減少の背景には内需の伸び悩みがあるわけですから、内容としては望ましい姿と判断するエコノミストは少なそうな気がします。ただし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、前期比年率+2.2%の成長率予想でしたが、先週木曜日6月6日にシンクタンクによる2次QE予想を取りまとめた時点では、「1次QEから上方改定を見込んでいるのが3機関、修正なしが1機関、下方修正が4機関」で、下方修正を予想するシンクタンクも決して少なくなかったことから、1次QE公表時にも正直に書いてしまいましたが、景気後退期年はいくぶんなりともさらに和らいだと考えてよさそうです。
1次QEから大きな違いはないといいつつも、先行きまで含まて、簡単に本日公表されたGDP統計の中身をレビューしておきたいと思います。まず、GDPトータルについて考えると、昨年2018年7~9月期に天候や災害などの影響によりマイナス成長を記録し、直後の2018年10~12月期はリバウンド要因があったにもかかわらず、やや力強さに欠けるプラス成長となり、今年2019年1~3月期は輸入の減少というややトリッキーな要因によりプラス成長の結果となりました。足元の4~6月期はマイナス成長を見込むエコノミストがかなりいます。私が大雑把に見た範囲で、日本総研と 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの2機関以外の大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研は軒並み4~6月期はマイナス成長と見込んでいます。しかし、7~9月期は10月からの消費税率引き上げを前にした駆け込み需要があることから、たとえ4~6月期がマイナス成長であったとしても、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルな景気後退シグナルが出る可能性は少ないと私は考えています。10月の消費増税引き上げ後の景気動向については、私には謎なんですが、政府が多彩に準備を進めているプレミアム商品券、ポイント還元などの効果など、残念ながら、私にはまだ十分判っていません。特に、ポイント還元については、政府の中小企業向けの政策措置だけでなく、事業者の独自判断によるポイントを活用した実質値引きなどもあるようですし、そもそも、何がどうなるのか、官庁エコノミストを3月いっぱいで定年退職して、それほど熱心な情報収集もしていませんので、私には総合的な実態把握もいまだにできていません。軽減税率も含めて過去に例のない政策もあって、私にはより判りにくくなっている気がします。ただ、今回の消費増税対策については、各種資料を見る限り、景気対策としては防災・減災、国土強靱化などの公共投資が過半を占めているようで、相変わらずの土建国家ぶりが示されており、不公平感の解消がどこまで図られるかにも私は注目しています。というわけで、消費増税が国内要因の中では最大のリスクなんですが、もちろん、日本経済の先行きに関して最大のリスクは海外要因であり、米中の貿易摩擦の余波による輸出不振という需要面よりも、米国の連邦準備制度理事会(FED)が金融緩和に転じて金利引き下げとなれば為替が円高に振れる可能性があり、この価格面のインパクトの方が、マインドへの影響もありますから、より大きなリスクになりそうな気がしています。日銀はどのように円高に対応するんでしょうか。量的緩和の拡大以外に何か手はあるんでしょうか。
お話をGDPトータルから需要項目別に移すと、在庫の動きがやや判りにくい気がします。判りにくいことだらけで、繰り返しになりますが、昨年2018年7~9月期の自然災害要因により売れ残りの後ろ向きの在庫が積み上がった後、2018年10~12月期から今年2019年1~3月期にかけて、3四半期連続で在庫は増え続けています。今日公表された1~3月期の2次QEでは、1次QEから小幅に下方修正されたものの、相変わらず在庫は増加しており、それはそれでGDP成長率にはプラス寄与しているわけですし、ひょっとしたら、今年2019年10月の消費増税前の駆け込み需要を当て込んだ前向きの在庫積み増しかもしれませんが、現時点では、在庫調整が進んでいない可能性も含めて、判断する材料はまだ十分ではありません。

photo


最後に、本日、内閣府から5月の景気ウォッチャーが、また、財務省から4月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲1.2ポイント低下の44.1を記録した一方で、先行き判断DIも▲2.8ポイント低下の45.6となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆7074億円の黒字を計上しています。いつものグラフは上の通りです。上のパネルは景気ウォッチャーで、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。下は経常収支で、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。これも、色分けは凡例の通りとなっています。

広く報じられているように、金融庁が6月3日に公表した金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」において、65歳からの高齢期において「20年で約1,300 万円、30年で約2,000万円」の貯蓄の取り崩しが必要と指摘しています(p.16)。こんなふうに政府にいわれれば、老後不安から消費者のマインドはさらに冷え込んでせっせと貯蓄に励みそうな気がしますし、シルバー民主主義が今よりもっと幅を利かせる懸念もありますし、大丈夫なんだろうかと思わないでもありません。
Entry No.6199  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月08日 (土) 09:11:00

雇用増に急ブレーキのかかった米国雇用統計から米国金融政策を占う!

日本時間の昨日、米国労働省から5月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+75千人増と雇用の増加に急ブレーキがかかった一方で、失業率は低い水準で先月と同じ3.6%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の7パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added just 75,000 jobs in May, strengthening case for Fed interest rate cut
Hiring was weak in May as employers added 75,000 jobs, bolstering the Federal Reserve's case for cutting interest rates as soon as this month, a possibility that has juiced markets in recent days.
The unemployment rate was unchanged at a 50-year low of 3.6%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 178,000 job gains.
Adding to the concerns: Payroll gains for March and April combined were revised down by a total 75,000. March's additions were revised from 189,000 153,000, and April's, from 263,200 24,000.
The May employment report was highly anticipated because of recent speculation that the Fed could cut its benchmark rate for the first time in a decade as soon as this month, especially if the economy softens. The jobs report typically provides the best real-time gauge of the labor market and economy.
Fed policymakers have indicated they're prepared to trim rates if necessary, noting concerns that the recent escalation of U.S. trade battles with both China and Mexico could further impede already slowing growth. A stock market that was tumbling amid the trade jitters has rallied since Fed officials have raised the possibility of rate cuts, which tend to increase consumer and business borrowing and prod investors to move money from bonds to higher-yielding stocks.
After the jobs report was released, markets predicted the chance of a Fed rate cut at its June 18-19 meeting rose to 31%, according to CME Group. The odds of a cut at the Fed's late July meeting rose to 58%. The Dow Jones industrial average rose more than 200 points on growing anticipation of a rate cut. On Friday morning, the yield on the 10-year Treasury bond dipped 0.06 basis points, or 2.8%, to 2.06%, nearing the lowest level since 2017.


やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

photo


ということで、引用した記事の3パラめにあるように、ブルームバーグの集計による市場の事前コンセンサスでは+178千人増とのことでしたので、何と半分にも届かず、雇用の増加には急ブレーキがかかった格好です。寒波の影響で、わずかに+56千人増にとどまった今年2019年2月以来の低い伸びでした。中国との貿易摩擦との関係で、米国経済の先行きに不安が広がりかねない統計です。しかし、他方で、失業率は50年来の低水準の3.6%で推移しており、歴史的な低水準にあることも確かです。失業率が低いわけですから、当然に、失業者も少ないわけで、遊休労働スラックも底をつきかけており、その意味で、雇用増が伸びないのも決して不思議ではないとの受け止めもあります。特に、ADPの民間部門雇用増に至っては、わずかに+27千人増でしたから、決して、米国労働省の統計だけが突飛なわけではありません。まあ、この米国雇用統計の評価は難しいところなんですが、このような雇用情勢を受けて、米国債券市場では長期金利が急低下を示しています。すなわち、米2年物国債の利回りは一時1.77%と前日より▲0.1%ほど下げて、約1年半振りの水準まで低下していますし、これも、引用した記事の最後のパラにあるように、10年もの国債金利も下げています。雇用者数の伸びが事前予想を大きく下回り、景気の先行き懸念から安全資産とされる米国債に資金が向かったためと考えられます。米国連邦公開市場委員会(FOMC)の Meeting calendars に従えば、米国連邦準備制度理事会(FED)は今月6月18~19日に FOMC を開催する予定となっています。FED のパウエル議長は、今月6月4日に開催された Conference on Monetary Policy Strategy, Tools, and Communications Practices の Opening Remarks において、"as always, we will act as appropriate to sustain the expansion" と、通常通りに景気拡大を持続させるために適切な行動を取ると言明しており、金融緩和に転じる可能性を強く示唆しています。

photo


ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高める段階にあります。すなわち、5月は前年同月比で+3.1%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して、半年以上に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですので、利上げを停止したり、あるいは、前のパラで論じたように金融緩和に転じたりして、それで物価の方は大丈夫なんでしょうか?
Entry No.6195  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月07日 (金) 20:21:00

米中貿易摩擦の世界経済への影響に関する国際通貨基金(IMF)の試算結果やいかに?

明日の6月8日から福岡で開催されるG20財務相・中央銀行総裁会議を前に、また、6月28~29日のG20大阪サミットに向けて、6月5日付けで国際通貨基金(IMF)ラガルド専務理事によるIMFブログへの投稿 How to Help, Not Hinder Global Growth の中で、米中間の貿易摩擦による関税率引き上げの影響の試算結果が明らかにされています。基本的に、昨年2018年7月18日付けのIMFブログへのラガルド専務理事の投稿 "Shifting Tides: Policy Challenges and Opportunities for the G-20" ですでに2020年までに▲0.5%の世界経済への負のインパクト、との試算が明らかにされていますので、それに、今年2019年5月以降の最新情報を付加したアップデート版なんだろうと私は受け止めています。いずれにせよ、国際機関のリポートに着目するのはこのブログの特徴のひとつですので、グラフを引用して簡単に取り上げておきたいと思いまず。

photo


まず、上のグラフはIMFブログから、2018年までの関税率引き上げと今年2019年5月に表明された追加の関税率引き上げに分けた分析が示され、さらに、上のパネルの積み上げ棒グラフに見られるように、直接効果とマインド効果と市場反応の3つに分けた影響としてトータルを試算しています。最近の5月に表明された関税率引き上げにより、2020年の世界GDPの▲0.3%に達する負の影響があり、その半分はビジネス・マインドと市場の反応に起因すると結論し、昨年2018年7月の試算と同じ結果ながら、2020年で世界経済の▲0.5%に上る負のインパクトがあると試算しています。この損失は4550億米ドルに相当し、南アフリカの経済規模を上回るとしています。ただ、上のパネルの積み上げ棒グラフを見る限り、目先の短期的な2019~20年の期間には中国経済への影響の方が米国より大きいようですが、長期的には大きな差はないように見えます。マインドに起因して経済への悪影響が出る可能性を指摘した点は私はとても鋭いと受け止めています。我が国についても実体経済よりもマインドが先行する可能性があると私も考えています。

photo


次に、上のグラフはIMFブログから引用しており、政策を総動員することの重要性を主張する根拠となる試算結果が示されています。特に上のパネルでは、一番下の紺色のベースラインに対して、赤のラインは金融政策の効果を、さらに、緑のラインは金融政策に加えて財政政策を、さらに、一番上のオレンジのラインは金融政策と財政政策に加えて構造調整政策を加えて、米中間の関税率引き上げの負のインパクトは政策を総動員して相殺できる可能性を示唆しています。ラガルド専務理事のブログでは、最後を "By harnessing the "Fukuoka spirit" of openness, policymakers can help remove the stumbling blocks and set the global economy on a more durable and inclusive path." と締めくくっていますが、果たして、福岡、さらに、大阪のG20の場でどういった議論がなされるんでしょうか。我が国のリーダーシップやいかに。

photo


最後に、目を国内の経済指標に転じると、本日、内閣府から4月の景気動向指数が公表されています。今年に入って1月統計でCI一致指数が大きく下降して、基調判断が「事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高い」とされる「下方への局面変化」に修正された上に、3月統計ではさらに「悪化」に下方修正されて注目が集まっているところ、CI先行指数は前月差▲0.5ポイント下降して95.5を、CI一致指数は+0.8ポイント上昇して101.9を、それぞれ記録しています。CI一致指数は上昇しましたが、基調判断は先月統計に続いて「悪化」に据え置かれています。CI一致指数の3か月後方移動平均はプラスに転じたんですが、まだ、プラス幅が1標準偏差に達しない、ということなんだろうと私は受け止めています。
Entry No.6193  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月06日 (木) 20:10:00

来週月曜日6月10日公表予定の1-3月期GDP統計2次QE予想やいかに?

今週月曜日に公表された法人企業統計など、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日の6月10日に1~3月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっており、すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。ただし、2次QEですので、法人企業統計に関するリポートにオマケで解説されているだけで、明示的に先行き経済を取り上げているシンクタンクは決して多くありませんでした。その中で、みずほ総研だけは長めに、第一生命経済研の4-6月期マイナス成長の可能性を示唆している部分もやや長めに、ほかのシンクタンクもそれなりに、それぞれ引用してあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.5%
(+2.1%)
n.a.
日本総研+0.4%
(+1.6%)
1~3期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が上方修正となる一方、公共投資、民間在庫は下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+1.6%(前期比+0.4%)と1次QE(前期比年率+2.1%、前期比+0.5%)から小幅下方修正される見込み。
大和総研+0.6%
(+2.3%)
1-3月期GDP二次速報(6月10日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率+2.3%と、一次速報(同+2.1%)から僅かに上方修正されると予想する。需要側統計の法人企業統計の結果を受けて、設備投資が前期比+0.7%とプラス転換へ上方修正されることが主因である。
みずほ総研+0.5%
(+1.9%)
今後の日本経済は力強さに欠く展開が続く見通しだ。個人消費は、良好な雇用環境がプラスに働く一方、働き方改革関連法施行を受けた労働時間抑制などによる賃金の伸び鈍化により、力強さを欠く展開になりそうだ。設備投資は、人手不足を背景にした省力化投資が引き続き下支えになるものの、製造業を中心にストック調整圧力が徐々に高まることから、弱い伸びに留まる見通しだ。輸出は、中国経済を中心に海外経済の減速が続くほか、IT関連の調整局面が当面続くことから、伸び悩むとみている。
リスクとして、米国による対中関税引き上げ第4弾やその報復措置など、米中貿易摩擦が更に激化した場合、輸出・設備投資の更なる減退とともに、日本経済はマイナス成長に陥る恐れがある。引き続き注視が必要だろう。
ニッセイ基礎研+0.6%
(+2.3%)
6/10公表予定の19年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.3%)となり、1次速報の前期比0.5%(前期比年率2.1%)から若干上方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.6%
(+2.3%)
設備投資の底堅さが改めて確認されるとみられることはポジティブだ。2次速報では下方修正されるとの見方も多かっただけに、この点は評価できる。もっとも「1-3月期のGDPは表面上は高成長だが、輸入の急減が成長率を大きく押し上げており、内容は悪い」という1次速報時点での評価を覆すほどではない。今回下方修正が予想されるとはいえ、在庫水準が高い点も変わっておらず、先行きの在庫調整リスクは残る。4-6月期には輸入の反動増や在庫の下押しに伴ってマイナス成長に転じる可能性があるだろう。
伊藤忠経済研+0.5%
(+1.8%)
1~3月期の実質GDP成長率は、2次速報で前期比+0.5%(年率+1.8%)へ小幅ながら下方修正されると予想。法人企業統計季報を受けて設備投資は上方修正される一方で民間在庫投資は大幅下方修正、公共投資も下方修正される見込み。設備投資は横ばい圏、GDPは緩やかな拡大基調という評価は変わらず。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+2.1%)
6月10日に内閣府から公表される2019年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.5%(年率換算+2.1%)と1次速報値と同じ伸び率となる見込みである。
三菱総研+0.5%
(+1.9%)
2019年1-3月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.5%(年率+1.9%)と、1次速報値(同+0.5%(年率+2.1%))から小幅下方修正を予測する。


ということで、上に取り上げた8機関のうち、1次QEから上方改定を見込んでいるのが3機関、修正なしが1機関、下方修正が4機関となっており、いずれにせよ、小幅改定とはいえ、見方が分かれています。私は法人企業統計が利用可能になった月曜日の時点で、もっともウェイトの大きい設備投資が1次QEから上方改定されることから、全体の成長率も上方改定、と考えたんですが、在庫が下方修正されることから、むしろ、全体としても下方修正を見込む機関が多くなっています。ただ、上方改定にせよ、下方改定にせよ、全体的な景気認識が大きく変更されるべき内容ではないと私は受け止めています。すなわち、第1に、景気動向指数からは3月指数で「悪化」の基調判断となったものの、2019年1~3月期の成長率はプラスでであり、GDP統計から見る限り緩やかな回復が続いていること、第2に、しかしながら、米中貿易摩擦に起因する世界経済の減速により、4~6月期には成長率がマイナスに転ずる可能性が否定できないこと、第3に、別要因ながら、10月からの消費税率引き上げを前に7~9月期には一定の駆け込み需要が見込まれること、の3点です。
下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。

photo
Entry No.6191  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月04日 (火) 22:58:00

東京商工リサーチ2018年決算 「上場企業2,591社の平均年間給与」調査結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、先週月曜日5月27日付けで東京商工リサーチから2018年決算における「上場企業2,591社の平均年間給与」調査の結果が明らかにされています。まず、東京商工リサーチのサイトから上場企業2,591社平均年間給与のグラフを引用すると以下の通りです。

photo


縦軸のスケールの関係で、とても伸びているように見えなくもないんですが、2018年決算の上場企業2,591社の平均年間給与は606万2,000円(中央値593万5,000円)で、前年より7万円、+1.1%増となっています。2012年から7年連続で増加を示し、この8年間の累積で42万5,000円、+7.5%の伸びとなっています。2018年の伸び率、前年比+1.1%は、その前年2017年の+0.6%を0.5%ポイント上回りました。年々お給料が伸びているのは結構なんですが、ただ、このあたりの伸び率の評価はビミョーなところだと私は受け止めています。
東京商工リサーチの業種別では、建設業が718万7,000円、前年比+1.6%増で4年連続でトップとなり、逆に、最低は小売業の473万8,000円だったんですが、小売業でも6年連続で平均年間給与は増加を示しています。リポートでは、国税庁の民間給与実態統計調査を引用して、2017年平均給与は432万2,000円、うち正規職員493万7,000円との結果と上場企業の平均年間給与で差があり、企業規模による給与格差の存在を示唆していたりします。
Entry No.6188  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月03日 (月) 20:22:00

順調な企業活動を反映する法人企業統計も米中貿易摩擦の影響はいかに?

本日、財務省から1~3月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は10四半期連続の増収で前年同期比+3.0%増の372兆5,204億円、経常利益は2四半期振りの増益で+10.3%増の22兆2440億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで製造業が+8.5%増、非製造業が+5.0%増となり、製造業と非製造業がともに伸びを示し、全産業では+6.1%増の15兆6763億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比+1.1%増となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資6.1%増 1-3月期、経常益は同期間で最高
財務省が3日発表した2019年1~3月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比6.1%増の15兆6763億円だった。増加は10四半期連続で、1~3月期として過去3番目の高水準だった。製造業、非製造業ともに増加した。経常利益は10.3%増で、金額は同期間としては過去最高だった。
設備投資は製造業では8.5%増加した。化粧品や自動車向け素材の生産能力増強で化学は42.1%増、建設機械の生産能力増強投資で生産用機械は43.1%増だった。自動車向け部品用投資で金属製品は23.2%増だった。
非製造業の設備投資は前年同期を5.0%上回った。物品賃貸業が建設機械や情報通信機器などリース資産向け投資で47.7%、安全対策投資などを中心に運輸業、郵便業は12.9%増やした。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で1.1%増加した。製造業が前期比1.7%減少し、非製造業は2.8%増加した。
全産業ベースの経常利益は10.3%増の22兆2440億円と2期ぶりに増益となった。原材料コストの上昇で電気機械が31.2%減となるなど製造業は6.3%マイナスとなったものの、18.4%増と好調な非製造業の伸びが補った。イベント効果で来場者数が伸びたサービス業、都市再開発が貢献した建設業などが増益となった。
売上高は3.0%増と10期連続の増収となった。製造業は1.1%増、非製造業は3.7%増だった。
財務省は「月例経済報告の『景気は緩やかに回復している』という経済全体の動向を反映している」と説明した。
一方で、「製造業では少し傾向が変化している」と話し、電気機械で「中国経済の減速から電子部品の生産が減少している」といった声や輸送用機械で「中国向け部品を製造している工場の稼働率が低下している」といった声が出ていると語った。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や投資動向を集計した。今回の19年1~3月期の結果は、内閣府が10日発表する同期間のGDP改定値に反映される


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


上のグラフとベースを同じにして季節調整済の系列で考えると、昨年の我が国企業の動向は、マクロ経済とも一致して、2018年7~9月期に豪雨、台風、地震など相次ぐ自然災害により、GDPはマイナス成長を記録し、そのほか鉱工業生産指数などの経済統計も同様の傾向にあったんですが、法人企業統計では経常利益こそ前期から低下したものの、売上げは何とかプラスを維持して伸びを示しており、売上げと利益で乖離が生じた後、基本的に、2018年10~12月期統計でも同様の傾向は続き、季節調整済の前期比で見て、売上げは2018年7~9月期▲0.6%増、10~12月期▲0.7%増と、伸び率は大きく鈍化しましたが、プラスを継続している一方で、経常利益については2四半期連続で前期比マイナスを記録しています。その語、今年2019年に入って少し方向性に変化が見え、売上げがほぼ横ばいを続けていると見ても差し支えない範囲ながら、小さなマイナスを記録した一方で、経常利益は前期比+13.2%と前2期の反動とはいえ、大きな増加を示しています。ただし、製造業の利益はほぼほぼ横ばいの+0.9%増に対して、非製造業が+19.5%増を記録しています。国際商品市況の石油価格が昨年2018年10~12月期に底を打って反転上昇を始めたために、製造業では石油価格に起因するコストアップがあり、非製造業では人手不足に起因するコストアップがあるんではないかと、私は想像していましたが、非製造業では大きく利益幅が膨らんでいます。画期的な生産性の向上が非製造業であったとはとても思えませんが、情報を総合すると、「純粋持株会社」の大幅増益が原系列の統計で前年同期比+251.2%に達しており、特殊要因によって押し上げられた面がありそうです。大和総研のリポートに従えば、この純粋持株会社を除いたベースで見ると、非製造業の経常利益は前年同期比で+3.4%にとどまる、と試算されています。ただ、わずかな差でほぼ横ばいとはいえ、製造業と非製造業でプラスとマイナスに方向が割れたともいえるかもしれません。米中間の貿易摩擦がヒートアップすれば、製造業はさらに逆風が強まる可能性もある点は注意すべきです。

photo


続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下し上向く気配すらなくまだ下落の気配を見せていますし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞し底ばっており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけは、グングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善の重要なポイントである賃上げ、あるいは、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。ですから、経済政策の観点から見て、官製春闘は終了したとはいえ、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

最後に、本日の法人企業統計などを受けて、来週月曜日の6月10日に内閣府から1~3月期のGDP統計2次QEが公表される予定となっています。素直に考えれば、設備投資が上方修正されて、それに応じて成長率もわずかながら上方改定されるんではないかと私は予想していますが、また、日を改めて取り上げたいと思います。
Entry No.6187  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年06月02日 (日) 14:27:00

ウェザーニューズによる今年の梅雨入り予想やいかに?

photo


一昨日の5月31日に九州南部が梅雨入りした折に、ウェザーニューズから今年の梅雨入り予想が明らかにされています。上の画像の通りです。
今年2019年の関東甲信地方の梅雨入りは6月7日ころと予想されています。平年が6月8日ころで、昨年2018年が6月6日だったそうですから、まあ、そんなものかという気もします。来週は梅雨入りしているんでしょうか?
Entry No.6185  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月31日 (金) 19:55:00

増産を示す鉱工業生産指数(IIP)と伸びが縮小する商業販売統計と引き続き堅調な雇用統計と下がり続ける消費者態度指数!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から5月の消費者態度指数が表されています。消費者態度指数の三5月の統計ですが、ほかはいずれも4月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から+0.6%の増産を示し、また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.5%増の12兆540億円、季節調整済み指数は前月から横ばいを記録しています。失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.4%と低い水準にあり、有効求人倍率も前月と同じ1.63倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。ただ、消費者態度指数は前月から▲1.0ポイント低下して39.4となり、8か月連続で前月を下回っています。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産4月0.6%増 電子部品低調、回復鈍く
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整値)は102.8と、前月に比べて0.6%上昇した。増産は2カ月ぶり。自動車や生産用機械などの生産が増えた。一方で電子部品・デバイスなど輸出関連の品目は低調だった。中国経済の減速を受けて減産が続いた業種も目立ち、1~3月の停滞からの回復は鈍い。
QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.2%上昇)は上回った。業種別では15業種中、10業種が上昇した。最も上昇に寄与したのは自動車で、前月比3.2%上昇した。国内向けに普通乗用車などが増産となった。前月に大きく落ち込んだ生産用機械はアジア向けのディスプレー製造装置などが回復し、5.3%上昇した。
経産省は「5月の大型連休を前に、生産を4月に前倒しした可能性がある」と指摘した。一方で出荷指数も1.7%上昇の102.6と2カ月ぶりに前月を上回ったことから「需要が良かったことが生産に寄与した面もある」と分析した。
もっとも、業種別の生産では汎用・業務用機械は7.1%低下、電子部品・デバイスは7.7%低下だった。中国向け輸出がけん引役となってきた品目は引き続き減産基調が続いた。
先行きは強弱入り交じっている。メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、5月は前月比5.6%の上昇、6月は4.2%の低下となる。経産省はこうした見通しをもとに生産の基調判断を「一進一退」とし、前月の「このところ弱含み」から上方修正した。経産省は「このところの米中貿易摩擦などの影響はまだ織り込まれていない」と指摘した。
4月の在庫指数は103.8で、前月比横ばいだった。
4月の小売販売額、0.5%増 18カ月連続の増加
経済産業省が31日発表した4月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比0.5%増の12兆540億円だった。18カ月連続の増加。経産省は小売業の基調判断を4カ月連続で「一進一退の小売業販売」に据え置いた。
業種別で見ると、皇位継承に伴う10連休の前に調剤医薬品を買う動きが広がり、医薬品・化粧品小売業が5.8%増となった。花見で総菜や弁当などの販売も好調で飲食料品小売業は1.7%増となった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が1.4%減の1兆5351億円だった。既存店ベースでは1.8%減だった。コンビニエンスストアの販売額は2.6%増の9977億円だった。
4月の失業率は2.4% 2カ月ぶり改善
総務省が31日に発表した4月の完全失業率(季節調整値)は前月から0.1ポイント低下し、2.4%だった。改善は2カ月ぶり。厚生労働省が同日発表した4月の有効求人倍率(同)は1.63倍で、昨年11月から横ばいとなっている。求職者が減り、売り手市場が続いているのを背景に、堅調な雇用情勢が続いている。
完全失業者数は前年同月比4万人減り、176万人だった。男女別の失業率は男性が0.3ポイント低下し2.5%、女性が0.1ポイント上昇し2.3%。転職など自己都合で離職する女性が一時的に増えたが、男性の失業者が大幅に減り全体でも減少した。就業者数は前年同月比37万人増の6708万人で、6年4カ月連続で増加した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は1.16倍と横ばいだった。雇用の先行指標となる新規求人倍率は0.06ポイント上昇の2.48倍で、2カ月ぶりに改善した。
新規求人数は前年同月比0.3%減の96万3317人だった。人手不足が続く建設業や医療・福祉業などで求人が増える一方、生活関連サービス・娯楽業や教育・学習支援業、製造業などの求人が減った。
消費者態度指数、8カ月連続で悪化 内閣府
内閣府が31日に発表した5月の消費動向調査で、消費者心理を表す消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整済み)は前月比1.0ポイント低い39.4と8カ月連続で前月を下回った。2015年1月以来となる4年4カ月ぶりの低い水準だった。
調査は全国8400世帯を対象に毎月、今後の暮らし向きなどについて聞いている。消費者態度指数を構成する4つの個別項目はすべて前月の水準を下回った。
個別項目のうち「収入の増え方」は3年3カ月ぶり、「雇用環境」は2年6カ月ぶりの低い水準だった。所得や雇用の悪化を懸念する世帯が徐々に増えている。今後半年間に耐久消費財が今より買い時になるかを問う「耐久消費財の買い時判断」も、4年5カ月ぶりの低い水準だった。
内閣府は調査を踏まえた消費者心理の基調判断を、4カ月連続で「弱まっている」とした


さすがに、4つの統計を並べると、とてつもなく長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

photo


まず、鉱工業生産については、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比で+0.2%の増産でしたので、ややこれを上回っています。加えて、製造工業生産予測指数では5月+5.6%の増産の後、6月▲4.2%の減産と見込まれており、この統計の上振れバイアスを考慮しても、5月は+1.5%の増産との補正値の試算が示されています。単月の統計を見る限りでは、4月の増産はゴールデンウィークの大型連休前の前倒し生産の可能性もあるものの、15業種の中の10業種が増産を示して、幅広い分野の増産となったことに加えて、5月補正値でもそこそこのプラスが見込まれたことなどから、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を前月の「このところ弱含み」から「一進一退」に上方修正しています。基調判断は生産についてなんですが、出荷も生産以上の増加を示しており、堅調な需要が垣間見えます。もっとも、別の観点ながら、生産の基調判断は先月の統計公表の際に「足踏み」から「このところ弱含み」に下方修正されたばかりですので、毎月のように頻繁に変更すべきかどうかは疑問です。加えて、上のグラフを見れば明らかな通り、「一進一退」とはいえ、今年2019年1月に▲2.5%の大きな低下を記録した後の2~4月は、減産トレンドはストップしたかもしれませんが、以前よりやや低い生産水準での横ばいないし一進一退という点も忘れるべきではありません。

photo


続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は鉱工業生産指数(IIP)のグラフと同じく景気後退期です。ということで、小売業販売額の季節調整していない原系列の前年同月比で見て、引用した記事にもある通り、18か月連続のプラスを記録しているんですが、徐々に伸び率は縮小を示しており、今年2019年に入ってから1月+0.6%増、2月+1.0%増、3月0.6%増、そして、直近で利用可能な4月が+0.5%増と、かなりゼロに近づいていたりします。季節調整済の系列では、とうとう4月の伸びはゼロになっています。前年同月比でゼロパーセント台半ばということになれば、消費者物価(CPI)上昇率がほぼほぼ+1%の水準ですから、名目はプラスでも実質消費はマイナスに落ちている可能性が大きい、と考えるべきです。ただ、ゴールデンウィーク10連休を前に、買い置きのためを含むと見られる医薬品・化粧品小売業が前年同月比で+5.8%の増加を示しています。

photo


続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は2%台半ばを記録し、有効求人倍率も1.63倍と高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.16倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年近くに渡って1倍を超えて推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することなどから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却にも影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

photo


最後に、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、消費者態度指数のコンポーネントについて、季節調整済の系列の前月差で見ると、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.6ポイント低下、「雇用環境」が▲1.1ポイント低下、「収入の増え方」が▲0.7ポイント低下、「暮らし向き」が▲0.6ポイント低下、と、軒並み悪化を示しています。引用した記事にも見られる通り、「収入の増え方」が3年3か月振り、「雇用環境」も2年6か月振りの低い水準まで低下を示しており、人手不足から完全雇用に近い労働市場が消費者マインドを下支えしてきたんですが、雇用や収入に関するマインドが大きく悪化を示しており、消費者マインドの基礎となる部分が悪化しているようです。米国のトランプ大統領が次々に打ち出す関税率引き上げによる貿易制限的通商政策が、企業活動に先立って消費者マインドを悪化させているのではないか、とすら思えてしまいます。基本的に、10月の消費税率引き上げ直前の駆け込み需要の時期まで景気後退局面入りはない、と、私は考えてきたんですが、景気動向指数が示すように、すでに景気転換点を過ぎている、というご託宣もひょっとしたらあり得るのか、という気すらしています。
Entry No.6181  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月30日 (木) 19:25:00

リクルートジョブズによる4月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

明日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる4月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を簡単に見ておきたいと思います。


photo


ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%前後の伸びで堅調に推移していて、三大都市圏の4月度平均時給は前年同月より+2.5%、26円増加の1,047円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+41円、増減率+3.9%)、「販売・サービス系」(+31円、+3.0%)、「製造・物流・清掃系」(+27円、+2.6%)、「フード系」(+24円、+2.4%)など全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2018年11月統計から前年同月比プラスに転じて、今年2019年2月統計まで4か月の間は前年同月比プラスだったんですが、3~4月はマイナスを示しています。3月▲2.5%減、4月▲1.7%減です。4月統計の職種別では、「オフィスワーク系」(前年同月比増減額+27円、増減率+1.8%)、「IT・技術系」(同+34円、+1.7%)、「医療介護・教育系」(同+14円、+1.0%)、「クリエイティブ系」(同+2円、+0.1%)の4職種がプラスなんですが、「営業・販売・サービス系」(▲36円減、▲2.5%減)が伸びを押し下げています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトや派遣スタッフも人手不足の影響がまだ強いと私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用には注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。
Entry No.6179  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月29日 (水) 19:12:00

インテージ「消費税増税によるキャッシュレス決済の動向調査」の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、5月23日付けで、インテージから消費増税によるキャッシュレス決済の動向に関する調査結果が明らかにされています。インテージによる消費増税に関する調査第2段との位置づけのようで、このブログでは取り上げませんでしたが、【図解】軽減税率とか、2014年の消費増税時の振り返り軽減材率による消費への影響などが調査されていたようです。今年10月から予定されている消費税率の引き上げに際しては、9か月間に限り中小・小規模事業者などに対してキャッシュレスでの支払いを行うと、最大5%のポイント還元を受けられることになるようで、キャッシュレス決済が増えるんではないかと考えられています。ということで、インテージの調査結果から、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


まず、インテージのサイトから、キャッシュレス決済非利用者の利用動向のグラフを引用すると上の通りです。スーパーやコンビニなどの4つの業態別の調査結果ですが、いずれもほぼ¼くらいとの結果が得られています。ポイント還元を受けられるのであれば、もっと多くの人が利用動向を示してもいいような気がしますので、やや合理性に欠けるんではないか、と思わないでもありませんが、何らかの理由があるんでしょう。実は、数年前まで我が家が暮らしていた青山の住宅からクイーンズ伊勢丹が何とか徒歩範囲で近くにあったところ、数年前の段階ですでにキャッシュレス決済が大いに普及していて、多くの場合は、EDYではなかったかと思うんですが、例の独特の決済音がレジ周辺で響き渡っていたような記憶があります。現時点のお話ながら、私自身もWAONやNANACOといった電子マネーをスーパーやコンビニなどで使うことが多いような気がします。それから、その昔、スタバによく行っていたころにはスタバ独自の電子マネーを使っていたんですが、なぜか、最近はトンと行かなくなりました。

photo


次に、インテージのサイトから、キャッシュレス決済・ポイント還元制度および軽減税率制度のそれぞれの認知状況のグラフを引用すると上の通りです。軽減税率については「内容を知っている+名前は知っている」の計で90%近い認知度なんですが、ポイント還元についてはまだ70%程度にとどまっています。これも、キャッシュレス決済の利用動向が高まらない要因のひとつな気がします。

photo


最後に、インテージのサイトから、増税による家計支出への影響について、昨年2018年11月と今年2019年4月の2時点で問うた結果のグラフを引用すると上の通りです。調査時点が近いせいもあって、ほとんど有意な違いは見いだせないんですが、大雑把に、「引き締める」30%と「少し引き締まる」50%という結果になっています。「引き締めない」は20%弱ですから、80%超の家計で何らかの引き締めを行う予定であり、消費がどこまで縮小するか、やや心配でもあります。
Entry No.6177  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月28日 (火) 22:42:00

4月の企業向けサービス物価(SPPI)上昇率はやや勢い低下も+1%近い水準を維持!

本日、日銀から4月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.9%を示しています。前月の1.1%からやや上昇率が縮小したものの、引き続き+1%近い伸びを続けています。2013年年央から70か月連続の前年同月比プラスを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月企業向けサービス価格、前年比0.9%上昇 伸び率は前月から縮小
日銀が28日発表した4月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は105.6となり、前年同月比0.9%上昇した。伸び率は3月確報から0.2ポイント縮まった。前年同月の値上げ改定幅が大きかった反動などを主因に運輸・郵便のプラス幅が縮んだことが伸び率の縮小に影響した。
人手不足を背景とした人件費上昇の圧力は続いており、前年比でのプラスは70カ月連続だった。日銀調査統計局は「前年比1%近傍の伸びが維持されており、数字はしっかりした動きと評価していい」としている。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは77品目、下落は31品目で、上昇から下落を引いた差は46品目となり、差し引きでのプラスは29カ月連続だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


繰り返しになりますが、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は昨年2018年6月から直近で利用可能な今年2019年3月統計まで10か月連続で+1%に達していましたが、4月統計では+0.9%を記録しています。2018年5月の+0.9%の前の4月も+1.0%でしたので、昨年度2018年度の12か月間、さらにこの4月まで含めて、ほぼほぼ+1%に達する水準をキープしていたことになります。加えて、6年近い70か月連続でプラスを維持しています。しかし、4月の年度初めの価格改定期にどこまで物価上昇が実現されるかを期待していたんですが、やや物足りない上昇率に終わった気もします。引用した記事にもある通り、昨年4月の価格改定期の上げ幅が大きかった反動という面もあるのかもしれません。もちろん、3月速報で基調判断は、「生産はこのところ弱含み」に引き下げられた鉱工業生産指数(IIP)や、相変わらず「一進一退の小売業販売」の基調判断が続く商業販売統計、さらに、「悪化」の基調判断となった景気動向指数などを考え合わせれば、雇用統計こそ人手不足で堅調な推移を続けているものの、物価については、本日公表のSPPIをはじめとして底堅い動きを続けているとも評価できます。4月統計については、 前年比寄与度前月差で見て、運輸・郵便が▲0.13%、諸サービスが▲0.11%、情報通信が▲0.08%などのマイナス寄与を示しています。SPPIのこの先の動向については、現在の人手不足がどこまで続くか、に影響されるものと考えるべきです。
Entry No.6176  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月24日 (金) 20:12:00

OECD「経済見通し」Economic Outlook May 2019 やいかに?

3月で公務員を定年退職して、このところ、私の不注意で国際機関のリポートを見逃すことが多くなり、4月3日に公表されたアジア開発銀行(ADB)による「アジア開発見通し」Asian Development Outlook (ADO) 2019 はつい最近まで目につかず、今さら取り上げるのも気が引けていましたが、今週火曜日5月21日に公表された経済協力開発機構(OECD)の「経済見通し」OECD Economic Outlook May 2019 については、国際機関のリポートはこのブログの注目点でもありますので、1週間以内くらいであれば遅ればせながら、取り上げておきたいと思います。ADBにせよ、OECDにせよ、米中貿易摩擦により成長率見通しが引き下げられている点については方向性は一致していると考えて差し支えありません。

photo


まず、リポートから成長率や失業率などの総括表 Table 1.1. Global growth remains weak を引用すると上の通りです。世界経済の成長率は、先行き2019-20年に米中間の貿易摩擦により減速すると見込まれています。しかし、特に新興国や途上国などでは、それほど大きく減速するわけではありません。もちろん、中国は別です。しかしながら、私の理解するところ、今年2019年から来年2020年にかけて、2019年のレベルから成長率が上向く国と、そうでなく、今年から来年にかけて成長率が下がり続ける国があります。欧州やインド・ブラジルといった新興国などは前者の成長率が持ち直すグループなんですが、貿易摩擦の当事者そのものである米中と我が国については成長率が来年にかけて下がり続けます。もっとも、日本については、貿易摩擦の影響というよりは、今年2019年10月からの消費税率引き上げが今年よりも来年に大きな影響を及ぼしますので、少し別要因かも知れません。また、このテーブルには出ていませんが、韓国も今年から来年にかけて成長率がさらに減速します。もちろん、米中は成長率が2020年にかけて減速を続けるのは、ひとつに、貿易要因に加えて、輸出が設備投資とリンクしていて、投資の減速も招くからです。ただ、雇用については貿易からの影響大きい製造業ではなく、非製造業で生み出されていることから、引き続き持ちこたえている、と評価しています。

photo


次に、やや雑に3つのグラフを連結したのが上の画像です。上から順に、いずれも、リポートから、Figure 1.7. Global growth is set to remain modest と Figure 1.8. Global trade growth is set to remain subdued と Figure 1.13. The adverse effects from higher US-China tariffs could intensify further を引用して、私の方で結合しています。上2つのパネルを見れば明らかな通り、成長率も貿易の伸びも、ともに、2017年をピークとして2018-19年にかけて緩やかに減速し、2020年には反転して持ち直す、という見通しになっています。一番下のパネルでは、NiGEM global macro-model のシミュレーションにより、米中両国と世界のGDPおよび貿易に対するマイナスの効果を算出しています。関税率の引き上げに加えて、リスク・プレミアムの拡大により影響も決して無視できない、との結果が示されています。
こういった現状判断に加えて、貿易摩擦は目先の短期的なインパクトにとどまらず、長期的な展望にもダメージを及ぼす恐れがあり、各国政府が早急に成長を再活性化する必要を強調しています。政策対応としては、もちろん、発端が貿易摩擦ですので、多国間での貿易交渉を再開する必要性を指摘するとともに、ユーロ圏のように公的債務が比較的少ない国においては、金融政策に依存するのではなく、財政刺激策による構造改革に取り組むべきと主張しています。優先課題としては、インフラ整備、デジタルや交通や環境に配慮したエネルギー対策、人的資本への投資、機会の平等をもたらす政策、などを例示しています。

photo


この見通しと関連して、昨日5月23日付けで、国際通貨基金(IMF)から IMF Blog にて The Impact of US-China Trade Tensions と題する記事がアップされています。そして、米国と中国が互いにすべての輸入品に制裁関税を課すという形で貿易摩擦が激化すると仮定すれば、短期的には世界経済の成長率が▲0.3%ポイント下振れすると試算しています。すなわち、原文を引用すると、"At the global level, the additional impact of the recently announced and envisaged new US-China tariffs, expected to extend to all trade between those countries, will subtract about 0.3 percent of global GDP in the short term, with half stemming from business and market confidence effects." というわけです。なお、上のグラフは IMF Blog のサイトから、国別の生産者への影響のグラフを引用しています。

最後に、目を国内経済指標に転じると、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から上昇幅をやや拡大して+0.9%を示しています。

photo


いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。
Entry No.6170  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月23日 (木) 19:28:00

三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「新入社員意識調査アンケート結果」やいかに?

今年、我が家の上の倅も大学を卒業して就職し働き始めましたが、例年の通り、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから5月17日付けで「新入社員意識調査アンケート結果」が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのサイトからアンケート調査結果の概要を3点引用すると以下の通りです。

【アンケート調査結果の概要】
  • 多様な価値観の許容を何より求める新入社員たち
    会社から「私生活に干渉」されることを拒み、「会社の人と飲みに行くのは気がすすまない」新入社員が増えてきている。プライベートな時間を確保し、会社以外の居場所を大切にしたいという傾向が近年強まっている。
    兼業・副業をしたいと考えている新入社員が4割を超え、そのうち7割以上の人が「趣味を活かした仕事」を希望している。会社という枠にとらわれず、「私」の価値観の下で仕事をしたいと考えている可能性がある。令和の時代に求めることとしては、「多様な価値観が許容される」が最も多かった。
  • 転職にも前向きな姿勢、兼業・副業をその足掛かりに
    今年の新入社員は、転職にも前向きなようだ。良好な雇用情勢の下、転職先を見つけることが比較的容易であるためか、転職への抵抗感が和らいできた。新卒で入った会社で働き続けることが当たり前ではなく、将来の多様な可能性を求めたいということであろう。
    転職に前向きな新入社員ほど、兼業・副業にも前向きで、一部の人は兼業・副業から転職のきっかけを掴もうと考えているようだ。
  • 理想の上司は「寛容型」
    自己認識として、協調性には自信があるが、創造力や積極性に欠けると考える人が多い。また仕事がうまくできるかといった不安を抱えており、たとえミスをしても広い心で受け入れ、温かく成長を見守ってくれる「寛容型」の上司を求めている。


やたらと長くて、これだけでおなかいっぱいな気もします。私自身はすでに定年退職して一線を退いたんですが、倅の終活を見ていて興味あるところ、上に引用した概要とは必ずしも同じ並びではありませんが、私の興味の範囲で、リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


まず、上のグラフはリポートから最近数年の 終業後の付き合い方 の推移を引用しています。2014年新入社員から今年2019年までの5年間の変化で、「上司や仲間と時々飲みに行きたい」が10%ポイント超の減少、逆に、「会社の人と飲みに行くのは気がすすまない」が10%ポイント超の増加、という結果が示されています。最初に引用した結果の概要にもある通り、多様な価値観の許容と個性の尊重が必要ということなんだろうと思います。終業後まで職場の人と付き合おうという新入社員は減っていることは確かでしょう。もっとも、大昔に私が役所に入ったころは霞が関では慢性的な残業体制が広がっていて、その後のバブル期を待たないと職場で飲みに行くなんてことはほぼほぼなかった気がします。

photo


次に、上のグラフはリポートから最近数年の 転職希望に関する就労意識 の推移を引用しています。最近の人手不足の影響が転職に対してどう表れるか、という点に関しては両方の考え方があり、第1に希望通りの就職先だったので転職しない、という考え方が成り立ちますが、逆に、第2に雇用情勢が良好で転職先が見つけやすいので転職も視野に入れる、ということもあり得ます。結果は実証するしかないんですが、2019年新入社員ンついては、従来からは後者の転職を視野に入れる方向に流れたようです。ただ、先行きは不透明そうな気もします。

photo


次に、上のグラフはリポートから最近3年の 海外勤務の希望 の推移を引用しています。わずかに3年間ですので、ここから傾向を見るのは厳しいような気もしますが、海外勤務の希望は減少しているように見えます。銃乱射などの治安、あるいは、かつてのように海外勤務が出世コースであった時代と異なり、また、日本にいても世界を相手にした仕事ができるインフラが整っていることなどが海外勤務希望の減少の背景にあるんではないか、と考えられます。私は南米のチリとインドネシアに2度の海外勤務を経験しましたが、まったく出世はしませんでした。しかしながら、私のつたない経験からして、独身ないし子供が小さいころの海外勤務はそれなりに楽しかった記憶が残っています。

photo


最後に、上のグラフはリポートから最近数年の 残業に対する考え方 の推移を引用しています。残業と所得の間には一定のトレードオフがあり、ワークライフ・バランスの観点などから、ここ数年は「給料が増えなくても残業はない方がよい」が「残業が多くても給料が増えるのだからよい」を上回って過半を占めていたんですが、ここ2~3年はこの差が縮小してきています。基本は、残業せずにプライベートな時間を大切にしたい、ということなんだろうと受け止めていますが、いろんな要因から循環的な結果が示されるんだろうと思います。
Entry No.6168  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月22日 (水) 19:12:00

黒字が大きく減少した4月の貿易統計と2か月連続で増加した機械受注をどう見るか?

本日、財務省から4月の貿易統計が、また、内閣府から3月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計については、季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲2.4%減の6兆6588億円、輸入額も▲6.3%減の1兆2329億円、差引き貿易収支は+604億円の黒字を計上しています。また、機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+3.8%増の8688億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易黒字9割減 4月604億円、中国向け輸出6.3%減少
財務省が22日発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は604億円の黒字だった。3カ月連続の黒字だが、前年同月に比べると黒字幅は9割縮小した。前月と比べても9割ほど縮小した。注目された中国向け輸出は液晶デバイス製造向けの半導体等製造装置が低迷し、前年同月比6.3%減と落ち込んだ。これを受け、世界全体の輸出額も5カ月連続の減少となった。
世界全体の輸出額は前年同月比2.4%減の6兆6588億円だった。中国向けの半導体等製造装置のほか、タンカーなど船舶輸出の減少が影響した。輸入額は6.4%増の6兆5983億円だった。イランからの原粗油のほか、中国からのパソコンや携帯電話の輸入が増えた。
中国向けの輸出額は1兆2329億円と6.3%減少した。自動車輸出は増えたものの、半導体等製造装置や半導体等電子部品などの輸出減が大きく、輸出額は2カ月連続の減少となった。
対米国の貿易収支は7232億円の黒字で、黒字額は17.7%増加した。増加は2カ月連続。自動車や半導体等製造装置の輸出が増えた。
4月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=111円18銭。前年同月に比べ4.6%の円安・ドル高に振れた。
3月の機械受注、3.8%増 建設機械などの大型受注
内閣府が22日発表した3月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比3.8%増の8688億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(0.0%)を上回り、2カ月連続で上昇した。建設機械などの大型案件の受注があったことが寄与した。
製造業の受注額は前月比11.4%減の3440億円だった。2カ月ぶりの減少で、17業種のうち7業種で減少した。「造船業」で2月に大型案件を受注した反動があったことや「その他輸送用機械」で鉄道車両などの受注が低調だった。
半面、非製造業は13.4%増の5117億円と、3カ月ぶりに前月を上回った。「建設業」で建設機械の大型受注があったことが寄与した。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は0.7%減だった。受注総額は1.0%減の2兆2542億円。外需の受注額は1兆734億円で、官公需の受注額は1523億円だった。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
1▲3月期では前期比3.2%減と、2期連続の減少だった。製造業は7.7%減、非製造業は0.3%減だった。
4▲6月期は前期比15.7%増の見通し。製造業は11.7%増、非製造業は18.8%増を見込んでいる。内閣府によると、5月に表面化した米中貿易摩擦の影響については「織り込んでいない」としている。
2018年度の受注額は前年度比2.8%増の10兆4364億円で、2年ぶりの上昇に転じた。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。


長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上2つのパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、一番上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、その下の2番めのパネルは季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。下2つのパネルはともに季節調整していない原系列の輸出数量指数の前年同期比伸び率をOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしています。3番目のパネルは我が国の輸出数量指数とOECD諸国の先行指数のいずれも前年同月比であり、4番めの一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。影を付けた部分は我が国の景気後退期です。ただし、3~4番めのパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。

photo


ということで、引用した記事にもある通り、季節調整していない原系列の統計で見ると貿易収支は大きく減少したとはいえ黒字なんですが、傾向を把握できる季節調整済みの系列の統計では昨年2018年年央の7月からほぼほぼ一貫して赤字が続いています。例外は、中華圏の春節による撹乱があった今年2019年2月統計だけです。GDP統計の基礎となる経常収支の方は直接投資収益などの第1次所得収支がコンスタントに黒字を稼ぎ出しているので、毎月1~2兆円の黒字を計上している一方で、通関統計の貿易収支は国際商品市況における石油価格の上昇による輸入額が増加しているの加えて、先進各国や中国の景気減速により輸出額が減少しており、差し引き貿易黒字は縮小ないし赤字となる傾向にあります。もちろん、我が国の場合は初期条件、というか、どこに初期条件を設定するかにもよりますが、従来から貿易黒字を計上してきていたので、まだ貿易黒字が縮小する段階なのかもしれませんが、石油価格は再上昇をはじめており、米中貿易摩擦の影響により世界経済の低迷が続けば、この傾向はさらに明確になると考えるべきです。さらにさらに、で、引用した記事の最後のパラにもある通り、円レートは対ドルでやや円高を示しているようですが、対ドルで円高でないとしても、中国の人民元が貿易摩擦の影響などから、かなりの減価を示しており、円レートは対ドルで見るよりも実効レートではさらに円高となっている可能性があります。心理的に株価にもインパクトあるとはいえ、為替相場は直接には貿易と物価に影響が大きいことはいうまでもありません。

photo


続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て、2月の+1.8%増に続いて、3月直近統計では+3.8%増と、2か月連続の増加を示しています。ただし、引用した記事にもある通り、ややイレギュラーな大型案件があったような報道ですし、貿易摩擦の影響の大きい製造業では▲11.4%減、逆に、人手不足の影響の大きい非製造業では+13.4%増と明暗が別れています。また、4~6月見通しを見るとコア機械受注で前期比+15.7%増の2兆9,236億円と見込まれていますが、つい最近のこの5月から再燃した米中貿易摩擦の影響が考慮されていないようですから、かなり割り引いて考える必要があるかもしれません。先行きについては、それほどしっかりした根拠があるわけではありませんが、私の見る限りでは、4~6月見通しのような四半期ベースで2ケタ増が続くとは考えられず、貿易摩擦のため製造業でややマイナス、人手不足のため非製造業でややプラス、といったところでしょから、合わせて横ばい近傍の動きになりそうな気がします。繰り返しになりますが、それほどの根拠はありません。
Entry No.6166  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月21日 (火) 23:12:00

アップデートされた大和総研「米中冷戦再開の政治経済分析」やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週木曜日の5月16日に大和総研から「<最新版> 米中冷戦再開の政治経済分析」と題するリポートが明らかにされています。基本的には、大和総研から5月7日に明らかにされ、このブログで5月10日に取り上げた「『米中冷戦』再開の政治経済分析」をアップデートしたものと明記されています。まず、リポートから要約5点のうち4点めと5点めの2点を引用すると以下の通りです。

[要約]
  • 大和総研のマクロモデルを用いた試算によれば、足下の追加関税率に6月1日に予定されている中国の報復を加えると、GDPの下押し効果は中国▲0.25%、米国▲0.29%、日本▲0.02%となる。さらに、米国が残りの3,000億ドル相当にも25%の追加関税を賦課した場合、GDPの下押し効果は中国▲0.36%、米国▲0.55%、日本▲0.03%となる。
  • 【日本経済への含意】日本にとって最も懸念すべき問題は「二次的効果」だ。すなわち、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の対中輸出が顕著に減少する効果である。他方、米中冷戦が深刻化するほどに同盟関係が重要となり、米国による対日関税の引き上げリスクが後退することや、米中が関税を相互に賦課することで日本における代替生産が増加する「代替効果」は、日本経済にとって言わば「漁夫の利」となりうる点にも留意しておきたい。


関税率引き上げの影響試算の概要は以下のグラフの通りです。一番上の図表7については、5月10日付けでこのブログで取り上げた際の図表6とまったく同じです。その下の図表9と図表11がアップデートされています。すなわち、図表7は、関税率引き上げの5月10日の前の段階の関税率であり、米国が中国からの2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税率を10%で据え置かれていた場合の影響を試算しており、図表9は、米国の関税率が25%に引き上げられ、中国が報復で600億ドルの対米輸入品の追加関税を平均7.4%から14.5%へと引き上げた5月10日以降の試算を示しており、最後の図表11は、米国が医薬品とレアアースを除くすべての品目に25%の追加関税を賦課した場合の試算となっています。ですから、繰り返しになりますが、5月10日の前の関税率で試算されている一番上の図表7には変更ありません。なお、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)が制裁対象のイランとの金融取引にかかわったとして、米国商務省の輸出管理規則に基づくエンティティ・リストに追加され、米国製品比率が25%以上含まれていればファーウェイ向けの輸出は事前許可が必要となることから、このエンティティ・リスト入りは事実上の禁輸措置と考えられているんですが、このリポートの試算はあくまで関税率に関するものということなのか、この措置については試算には含まれていないように見受けられます。

photo


私の直感的な理解ながら、CGEモデルで試算すれば、大和総研リポートにもあるように、代替効果を通じる我が国への「漁夫の利」のような影響はプラスとなる可能性が高いと考えられるんですが、このリポートでは日本への影響はマイナスと出ています。リポートでは「大和総研のマクロモデルを用いた試算」としか記されていないんですが、たぶん、CGEモデルではなく、ひょっとしたら、クライン型の計量経済モデルなのかもしれない、と思わないでもありません。いずれにせよ、詳細は不明です。
Entry No.6165  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月20日 (月) 19:55:00

1-3月期GDP統計1次QEから先行きの景気動向を考える!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.5%、年率では+2.1%を記録しました。2四半期連続のプラス成長で、1~3月期は前期よりも成長が加速しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月GDP、年率2.1%増 個人消費は0.1%減
内閣府が20日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.5%増、年率換算では2.1%増だった。2四半期連続のプラス成長となった。10~12月期は年率換算で1.6%増だった。住宅投資や公共投資の増加がプラス成長に寄与した。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.1%減で、年率では0.3%減だった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.8%増、年率では3.3%増だった。名目でも2四半期連続のプラスになった。
実質GDPの内訳は、内需が0.1%分のプラス、外需の寄与度は0.4%分のプラスだった。
項目別にみると、住宅投資は1.1%増で、3四半期連続でプラスだった。持ち家を中心に持ち直しの傾向がみられた。公共投資は1.5%のプラスだった。
輸出は2.4%減だった。中国を中心として海外経済の減速が影響した。輸入は内需の弱さを反映して4.6%減となった。輸入の減少幅が輸出の減少幅を上回ったため、GDPにはプラスに寄与している。
個人消費は0.1%減と、2四半期ぶりのマイナスだった。暖冬の影響で衣料品の販売が不調だったことや、食品の値上げを受け消費意欲が冷え込んだことが寄与した。
設備投資は0.3%減で、2四半期ぶりのマイナス。米中貿易摩擦などによる中国経済の減速懸念で、電気機械などの製造業を中心に設備投資を手控える動きがみられた。民間在庫の寄与度は0.1%のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.2%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.3%のプラスだった。
同時に発表した2018年度のGDPは実質で前年比0.6%増、生活実感に近い名目で0.5%増だった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/1-32018/4-62018/7-92018/10-122019/1-3
国内総生産GDP▲0.1+0.5▲0.6+0.4+0.5
民間消費▲0.1+0.6▲0.3+0.2▲0.1
民間住宅▲2.4▲2.1+0.8+1.4+1.1
民間設備+1.2+2.4▲2.5+2.5▲0.3
民間在庫 *(▲0.2)(▲0.0)(+0.1)(+0.1(+0.1)
公的需要▲0.1▲0.1▲0.2+0.3+0.2
内需寄与度 *(▲0.1)(+0.6)(▲0.4)(+0.7)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.1)(▲0.1)(▲0.2)(▲0.3)(+0.4)
輸出+1.0+0.7▲2.0+1.2▲2.4
輸入+0.7+1.0▲1.0+3.0▲4.6
国内総所得 (GDI)▲0.3+0.4▲0.9+0.4+0.9
国民総所得 (GNI)▲0.4+0.6▲1.1+0.5+0.7
名目GDP▲0.2+0.3▲0.6+0.5+0.8
雇用者報酬 (実質)+1.0+1.4▲0.5+0.2+0.1
GDPデフレータ+0.5▲0.1▲0.4▲0.3+0.2
内需デフレータ+0.9+0.5+0.6+0.5+0.3


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

photo


まず、潜在成長率を上回るという意味で、1~3月期GDP成長率は1次QE段階ではかなり大きなプラス成長となっています。別の観点からは、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前期比で▲0.3%のマイナス成長、レンジでも▲0.4%~+0.4%でしたから、上限を上回る大きなプラス成長ということになります。内外需ともにプラス寄与なんですが、内需では消費も設備投資もマイナスで在庫がプラスですし、外需のプラス寄与については輸出が伸びたからではなく、国内需要の減速を受けて輸入が減ったことに起因している点などを考慮に入れて、成長率の数字の量的な面ではなく、成長の質のようなものを考え合わせると、それほど評価できる成長の姿ではないのかもしれません。ただし、景気動向指数の基調判断などから、景気後退局面が近い、ないし、すでに入っている、といった景気後退に対する懸念は大きく和らいだと私は受け止めています。少なくとも、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルな景気後退観測が成り立ちにくくなったことは確かです。もちろん、米中間の貿易摩擦の影響やそれに起因する中国経済の低迷などから、おそらく、5~6月統計あたりから輸出をはじめとして鉱工業生産など、我が国景気に密接に関連する各種統計にも停滞感が出始める可能性があることは覚悟すべきです。しかし、もう少し先を考えると、ポイント還元などで、かなりの緩和措置が講じられる予定とはいえ、10月の消費税率の引き上げ直前には一定の駆け込み需要はあると想定され、1~3月期の住宅投資にはすでにそれが現れているとの見方もありますので、年度前半くらいまでの景気後退局面入りは可能性として低い気がしています。ただ、年度後半には駆け込み需要の後の反動減はありえますので、決してサステイナブルではなく、景気局面の進み方はやかなり複雑な気がしています。

photo


上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。1~3月期の消費はわずかながらマイナスとなっていますが、雇用者報酬が伸び悩んでいるのが見て取れます。インバウンド消費も順調な拡大を続けており、まだまだ拡大の余地はあると考えられるものの、かつて「爆買い」と称されたほどの爆発的な拡大はそろそろ安定化に向かっている印象です。まだ、消費者マインドは改善の兆しすら見えませんが、現在の人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加の方向の影響を及ぼすことが考えられますし、加えて、賃金が上昇して消費者マインドが上向けば、内需主導の成長がサポートされるものと考えます。もちろん、賃金上昇はデフレ脱却に向けて有効であることは明らかです。
Entry No.6164  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月17日 (金) 20:11:00

来週月曜日公表予定の1-3月期GDP統計1次QEはマイナス成長か?

豪華絢爛10連休のゴールデンウィーク前の先々週金曜日に公表された鉱工業生産指数(IIP)など、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日の5月20日に1~3月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定となっており、すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。明示的に、先行きに言及しているのは、以下のテーブルの上から3機関、すなわち、日本総研、大和総研、みずほ総研だけで、特に大和総研は需要項目別に長くなりそうなので、消費だけでストップしてしまったんですが、いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲0.1%
(▲0.2%)
先行きマイナス成長が続く公算は小さく、4~6月期には緩やかな景気回復基調に復する見込み。中国政府の景気刺激策の効果により中国経済は最悪期を脱しつつあることから、昨年夏場以降減少傾向にあるわが国の輸出は底入れする見込み。設備投資も、中国経済の失速懸念が後退するのに伴い、先送りしていた投資案件を実行に移す動きが顕在化する見通し。
大和総研▲0.1%
(▲0.5%)
先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。
まず、個人消費は一進一退が続きながらも緩やかに増加するとみている。人手不足を背景に名目賃金は緩やかに増加している。また、実質賃金も2018年11月以降原油価格が大きく下落したことで一時的に増加していた。しかし、今年に入り原油価格が再び上昇したことから、先行きは名目賃金上昇の効果が物価高により相殺されるだろう。また、賃金カーブのフラット化や残業抑制により名目賃金の上昇ペースが鈍る可能性にも注意が必要だ。
また、10月に予定されている消費増税に関しては、各種経済対策の実施により駆け込み需要・反動減はいくらか緩和される見込みである。ただし、施策の一つであるポイント還元策が、制度終了(2020年6月末)前後に駆け込み需要・反動減を生じさせる点には留意しておく必要がある。また、増税対策は公共投資の比重が大きく、家計に限れば消費増税に伴う負の所得効果を全て相殺できるような内容ではないことも留意しておくべきだ。
みずほ総研+0.4%
(+1.4%)
4~6月期以降については、輸出の伸び悩みが当面続く一方、内需の更なる低迷は回避される見通しだ。消費が底堅く推移するほか、設備投資の深刻な調整は避けられるとみている。
輸出は、景気対策による中国経済の持ち直しやIT需要の調整局面からの脱却時期が年後半以降になるとみており、当面伸び悩む見通しだ。
個人消費は、労働需給のひっ迫に伴う雇用者所得の堅調さが押し上げ要因となり、底堅く推移するだろう。消費増税前の駆け込み需要も、2014年度当時と比べ小幅ではあるが発生し、一時的だがプラス要因となろう。
設備投資は、高水準の企業収益や人手不足による合理化・省力化投資が下支えになり、深刻な調整局面入りは回避される見通しだ。
リスクはマインド面の更なる低迷だろう。足元続く原油価格の上昇が仮に続けば、低迷している消費マインドをさらに押し下げる可能性がある。また世界経済の更なる減速や貿易摩擦の激化は、輸出減退だけでなく、投資マインドの更なる悪化に繋がるおそれもある。内需のマインド低迷を引き起こす可能性があるこうした要因には、引き続き注視する必要がある。
ニッセイ基礎研▲0.0%
(▲0.2%)
実質GDPは2016年1-3月期から8四半期連続でプラス成長となった後、2018年1-3月期からはマイナス成長とプラス成長を繰り返している。2019年1-3月期のマイナス幅は2018年1-3月期、7-9月期よりも小さくなるとみられるが、2018年中のマイナス成長が大雪、台風、地震など天候不順や自然災害による影響が大きかったのに対し、2019年1-3月期は天候が比較的恵まれている中でのマイナス成長である。また、成長率のマイナス幅が小さい理由は国内需要の低迷を受けた輸入の落ち込みであり、内容的にも悪い。
日本経済は2018年に入ってから横ばい圏の推移が続いていたが、2018年度末にかけて実態として大きく悪化したと判断される。
第一生命経済研▲0.1%
(▲0.2%)
小幅マイナス成長が予想される1-3月期のGDPだが、今回は見た目以上に内容が悪くなりそうだ。輸出が大幅マイナスになることに加え、個人消費、設備投資も弱く、主要どころの需要項目が軒並み弱い結果になるとみられる。こうしたなかでも小幅なマイナス成長にとどまるとみられる理由は、輸入の減少に尽きる。輸入が前期比▲4.5%と、輸出以上に大きな落ち込みとなることでで、外需寄与度は前期比年率で+1.5%Ptも成長率を押し上げる見込みである。輸入の減少によって成長率は押し上げられるが、これは内需の弱さの反映という面もあるため、決して喜べるものではない。表面上の数字以上に足元の景気の弱さを示す内容になるだろう。
伊藤忠経済研+0.3%
(+1.2%)
輸出が大きく落ち込み、設備投資もマイナスに転じたが、個人消費が減速しつつも増勢を維持したことに加え、公共投資が大幅に増加し、成長を下支えした。前年同期比では10~12月期の+0.3%から1~3月期は+0.6%へ伸びを高めていることもあり、日本経済は緩やかながらも拡大基調を維持していると評価できよう。ただし、内閣府が試算する潜在成長率1.0%とさほど変わらない程度の成長にとどまり、物価上昇圧力を大きく高めるほどではない。依然としてデフレ脱却への道のりは遠い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.0%
(▲0.1%)
2019年1~3月期の実質GDP成長率は、前期比-0.0% (年率換算-0.1%) と前期比で小幅ながらもマイナス成長となったと予想される。外需は3四半期ぶりにプラスに寄与するものの、個人消費や設備投資など国内需要が弱い。
三菱総研+0.4%
(+1.4%)
2四半期連続でのプラス成長を予測する。輸出は減少に転じたものの、内需が緩やかながらも増加したとみられる。


ということで、ほぼほぼゼロ成長が予想されており、しかも、成長率の押し上げ要因が輸入の減少というわけで、かなり仕上がりの悪い姿が予想されています。ニッセイ基礎研のヘッドラインでも引用しておきましたが、2018年中もプラス・マイナスの成長率がジグザグに現れたんですが、これは地震や台風や豪雨などの経済外要因たる自然災害に起因していた面が強く、今年2019年1~3月期の成長率の大幅減速は、自律的、というか、経済の内生的な景気循環の局面変化であり、国内要因というよりは海外要因、すなわち、米中貿易摩擦などに起因する中国経済の減速が大きく影響しているとはいえ、世界経済全体が減速する中での我が国経済の成長鈍化と考えるべきです。かつての米国に次ぐの世界第2位の経済大国も、「中国がくしゃみをすれば風邪をひく」ようになったといえます。ですから、日本経済が、このまま、景気後退局面入りするかどうかも世界経済や中国経済の動向に依存します。米国のトランプ政権の強硬姿勢を見る限り、我が国経済が景気後退にすでに入っている、あるいは、これから短期間の間に景気後退局面に入る確率、は決して小さくないと私は受け止めています。
下のグラフは、実質GDP成長率の推移のグラフをニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

photo
Entry No.6159  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月16日 (木) 19:57:00

+1%超の上昇続く企業物価(PPI)の先行きやいかに?

本日、日銀から3月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.3%と前月の+0.9%から上昇率が拡大し、引き続き、プラスの上昇率を継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業物価指数、前年比1.2%増 米中貿易交渉の進展期待で
日銀が16日発表した4月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は101.8で前年同月比で1.2%上昇した。上昇は28カ月連続で、上昇率は3月の確報値の1.3%から縮小した。原油価格の上昇幅が昨年同時期と比べて小さかったため前年比の増加は小幅に縮小したが、米中貿易交渉の進展期待などから企業物価指数は上昇した。
前月比では3カ月連続のプラスで上昇率は前月と同じ0.3%だった。日銀の調査統計局は4月の物価指数上昇について、4月中旬までは米中貿易交渉の進展が期待されており、世界的な景気減速の懸念が和らいでいたとの見方を示した。
円ベースでの輸出物価は前年比で0.2%上昇し、前月比では0.4%上昇した。輸入物価は前年比で1.8%、前月比では0.5%それぞれ上昇した。


いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2つのパネルの影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


ということで、基本的に、ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月の3月統計の+1.3%からほぼ横ばいの+1.2%となっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+1.1%の上昇でしたので、これとも大きな違いはありませんでした。同時に、国際商品市況における石油価格にも連動した動きと考えています。すなわち、輸入物価のうち、石油・石炭・天然ガスは円ベースの前年同月比で見て、3月の+7.3%の上昇から、4月統計では+6.4%にやや上昇幅を縮小させています。加えて、季節調整していない原系列ながら、国内物価の前月からの上昇幅+0.3%に対する寄与度で見て、ガソリンをはじめとする石油・石炭製品が+0.22%、エチレンなどの化学製品が+0.06%、などとなっており、エネルギー価格と中国をはじめとする新興国経済の減速懸念が和らいだ点を背景とした価格上昇の色彩が強いとの報道もうなずけると私は考えています。もっとも、十分な情報はありませんが、4月の新年度に入って価格改定が進んだ部分もあるんではないかと想像しています。企業物価(PPI)ではなく消費者物価(CPI)なんでしょうが、少なくとも、スーパーマーケットなどにおける商品を見ている限り、一部分ながら価格改定が進んでいるような印象を私は持っています。まあ、個人的な印象論です。ただし、ただしなんですが、引用した記事にもある通り、世界経済の減速懸念が4月時点で和らいでいたのは、あくまで米中貿易交渉の進展に対する期待でしたので、現時点では、この交渉進展は望み薄との見方もありますから、来月統計の際には逆の見方が支配的になっていても不思議ではありません。ですから、とても無責任な見方ながら、4月統計の+1%超えの国内物価上昇率は、世界経済要因か、新年度価格改定要因か、来月の統計でヒントが得られるのかもしれません。
Entry No.6158  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月15日 (水) 19:29:00

マクロミル調査による今夏のボーナスの使い道やいかに?

もうすでにかなり前のことのように思えてきますが、4月22日付けで「今夏のボーナスは増えるのか?」と題して、シンクタンク4機関のややビミョーな予想を取りまとめましたが、ゴ0ルデンウィークの10連休が終わって、マクロミル・ホノテから昨日5月14日付けで2019年夏のボーナス、支給見込みや使い道に関する調査結果が明らかにされています。まず、マクロミル・ホノテのサイトから調査結果のTOPICSを4点引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 2019年夏のボーナスが「支給される予定」は84%。昨年から4.9ポイント上昇
  • 夏ボーナスの見込み額は、平均466,326円。昨年より12,805円増加
  • 夏ボーナスの使い道は「預貯金」が7割でダントツ。その理由は「安心感を持つため」が最多
  • 夏のボーナスで奮発したいこと、1位は「旅行」。奮発したいと思わない人も3割


支給額などはシンクタンク予想と比べるべきではないような気もしますが、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


まず、上のグラフは夏のボーナスの受給予定と予想金額を結合させています。いずれも最近3年間ですが、今年2019年は支給される予定が83.7%と、昨年より4.9%ポイント上昇しており、予想金額についても昨年より+12,805円増の平均466,326円に上っています。シンクタンク予想の民間企業平均は40万円に届きませんでしたので、大盤振舞いな気がするんですが、正社員対象の調査でもあって、かなりいい結果ということなのかもしれません。

photo


次に、夏のボーナスで奮発したいことのグラフは上の通りです。もっとも多かったのは旅行35%で、次いで、レジャー19%、趣味18%と続き、電化製品や洋服などを購入したいという人はどちらも15%以下という結果となっています。他方、奮発してやりたいことや買いたいものはない、という回答も34%に上っています。ただ、グラフはありませんが、夏のボーナスの使い道について複数回答でたずねると、1位は預貯金が70%でダントツとなっています。その理由は、まず、安心感を持つため47%、次いで、老後の生活費として45%などが多くなっています。定年退職して、私も判るようになった気がします。
Entry No.6156  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月14日 (火) 22:55:00

現状判断DIが上昇した4月の景気ウオッチャーと黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.5ポイント上昇の45.3を記録した一方で、先行き判断DIも▲0.2ポイント低下の48.4となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆8479億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の街角景気、現状判断指数は2カ月ぶり改善 10連休に期待
内閣府が14日発表した4月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は45.3と、前の月から0.5ポイント上昇(改善)した。改善は2カ月ぶり。10連休を控え、消費の増加に対する期待や生産を上乗せする動きが指数を押し上げた。内閣府は基調判断を「回復に弱さがみられる」に据え置いた。
企業動向関連は1.1ポイント上昇の46.0だった。調査時点では「米中貿易摩擦に対する懸念が和らいでいた」(内閣府)ことも心理を上向かせたとみられる。「連休に備えるための注文が例年以上に多い」(東北の食料品製造業)との声があった。家計動向関連は0.5ポイント上昇の44.7だった。「新元号に関連した商戦、10連休など消費が活発になるきっかけがあった」(北海道のスーパー)との声があった。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は48.4と、前の月から0.2ポイント低下した。雇用関連が2.5ポイント低下の47.4だった。「製造業中心に求人が減少している影響がある」(内閣府)という。企業動向関連も低下し、燃料価格などコストの増加を懸念する声が目立った。内閣府は先行きの基調判断について「海外情勢等に対する懸念がみられる」とした。
3月の経常収支、2兆8479億円の黒字 57カ月連続黒字
財務省が14日発表した3月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆8479億円の黒字だった。黒字は57カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3兆515億円の黒字だった。
貿易収支は7001億円の黒字、第1次所得収支は2兆564億円の黒字だった。
同時に発表した2018年度の経常収支は19兆4144億円の黒字だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計の記事を並べるとやたらと長くなってしまいました。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

photo


4月の景気ウォッチャー全体としては、引用した記事にもある通り、足元から目先についてはゴールデンウィークの10連休に期待して現状判断DIは上向くも、さらに2~3か月先の動向については米中貿易摩擦などからやや不透明感が残って先行き判断DIは下向き、といったところでしょうか。ということで、4月の景気ウォッチャーの現状判断DIを前月差で少し詳しく見ると、3項目のコンポーネントのうち、第1の家計動向関連は住宅関連を除いておおむね前月から上向いており、家計全体で+0.5の上昇を示し、第2の企業動向関連でも製造業がけん引して+1.1の上向きとなっていますが、第3の雇用動向関連が▲0.6とマイナスを示しています。これは、先行き判断DIについても同じ傾向が見受けられ、雇用動向関連が前月差でもっとも大きなマイナスをつけています。世間一般では、雇用はまだまだ堅調であり、人手不足が続いていると考えられていますが、引用した記事と違って、私が景気判断理由集を見る限り、南関東の民間職業紹介機関から「一部の電機、部品メーカーから採用抑制の意向が出てきている。携帯電話の販売状況や米中貿易摩擦の影響が出ており、これまでの採用計画を抑える状況にある。」とか、東海の民間職業紹介機関からも「大手メーカーの一部で中途採用の求人がストップし始めている。」といった見方が出始めています。例の米中間の貿易摩擦に伴う両国の関税率引き上げについては、我が国の実体経済に対して製造業などに影響を及ぼすのはまだまだ先だろうと考えるべきなんですが、米中貿易摩擦が企業マインドを通じて、先行きの不透明感や悲観的な見通しから雇用にマイナスのインパクトを及ぼしているように見えます。消費者者マインドだけでなく、企業マインドも米中貿易摩擦で悪化する可能性がありますし、そうであれば、雇用よりも設備投資への影響も出る懸念があります。もちろん、貿易摩擦だけでなく、実体経済に関して、昨日公表された景気動向指数の「悪化」への基調判断修正も、消費者マインドだけでなく、企業マインドにも否定的な影響を及ぼすのは明らかです。

photo


続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。月次の季節調整済の系列で見て、安定的に1~2兆円の黒字を計上してます。2018年度の統計が利用可能となり、したがって、年度の経常収支が+19兆4144億円の黒字を記録しています。前年度から▲2兆7,605億円の黒字縮小となり、特に、貿易収支が2018年度は+7,068億円と▲3兆8,328億円の大幅な黒字縮小となっています。基本は、国際商品市況における石油価格の上昇ですから、この2018年度の貿易黒字縮小は我が国産業の国際競争力に起因するものではない、と私は受け止めています。また、2018年度経常黒字+14兆円余りの中で、第一次所得収支が+21兆652億円に上っており、さらにそのうちの約+20兆円ほどは直接投資の収益で、かつて大きかった証券投資の収益は+7兆円弱に過ぎません。いずれにせよ、海外投資による収益の黒字が、財サービスの輸出入に基づく貿易黒字よりもはるかに大きくなっています。
Entry No.6155  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月13日 (月) 22:43:00

基調判断が「悪化」に引き下げられた3月統計の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から3月の景気動向指数が公表されています。今年に入って1月統計でCI一致指数が大きく下降して、基調判断が「事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高い」とされる「下方への局面変化」に下方修正されて注目が集まっていたところ、CI先行指数は前月差▲0.9ポイント下降して96.3を、CI一致指数も▲0.9ポイント下降して99.6を、それぞれ記録し、基調判断は「下方への局面変化」から「悪化」に下方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の景気動向指数、判断「悪化」に 6年2カ月ぶり
内閣府は13日、3月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値を発表した。景気の現状を示す一致指数は99.6と前月より0.9ポイント下がった。指数の推移から機械的に決まる基調判断は下方修正され、2013年1月以来6年2カ月ぶりに「悪化」となった。この表現は景気が後退局面にある可能性が高いことを示す。
政府は5月中にまとめる月例経済報告で公式の景気認識を示す。これまで「回復」としてきた表現を修正するかどうかが焦点になる
一致指数が低下したのは、中国経済の減速で中国向けの輸出が落ち込んだ影響が大きい。特にアジア向けの半導体製造装置の出荷などが低迷した。
内閣府が指数に基づく機械的な景気判断を示すようになったのは08年4月以降。指数の動きに照らして「改善」などの基調判断を示す。近年は16年10月から18年8月まで23カ月連続で「改善」だった。18年9~12月は「足踏み」、19年1~2月は「下方への局面変化」となっていた。
過去に判断が「悪化」となった局面は08年6月~09年4月、12年10~13年1月の2回ある。いずれも専門家が事後的に判定した景気後退期と重なる期間が多い。
ただ一致指数以外にも景気の状況を示す指標はある。例えば雇用情勢は依然として堅調との見方が多い。内閣府の担当者は「政府としての正式な景気判断は月例経済報告で行う」と説明した。政府は参院選や消費増税を控える今後の政治日程も念頭に、慎重に経済情勢を見極める。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、景気局面がビミョーな時期に入りましたので、かなり熱心に取材したのかインタビュー結果も多く、通常の月に比べてとても長い記事になっています。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo


ということで、引用した記事にもある通り、3月のCI一致指数に基づく景気の基調判断は「悪化」に下方修正されています。内閣府の「CI の『基調判断』について」に従えば、先月までの「局面変化」は、「事後的に判定される景気の山・谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。」と定義され、基準は「7ヶ月後方移動平均の符号が変化し、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。」とされています。他方で、「悪化」については、「景気後退の可能性が高いことを示す。」と定義され、基準としては「原則として3ヶ月以上連続して、3ヶ月後方移動平均が下降した場合。」に適用されることとされています。そもそも、景気判断は景気動向指数のCI一致指数だけで決まるのではなく、総合的に判断されるものですし、中でも、統計的には景気動向指数よりもヒストリカルDIの方が重視されます。
本日公表の3月統計では、投資財出荷指数(除輸送機械)、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、有効求人倍率(除学卒)、商業販売額(卸売業)(前年同月比)などのマイナス寄与が目立っています。引用した記事には雇用はまだ「堅調」との評価が見られますが、有効求人倍率がマイナス寄与しているのも事実です。また、単月統計ではあるものの、やっぱり、消費者向けの需要が弱い気もします。いずれにせよ、先週木曜日5月9日付けで消費者態度指数を取り上げた際にも言及しましたが、実体経済の景気動向指数とマインドが相乗効果をもって低下する可能性は否定できません。他方で、10月からの消費税率引き上げ前には何らかの規模での駆け込み需要が発生することも予想され、決してサステイナブルではないながらも、一時的な需要の高まりは発生します。やや景気動向は複雑になってきたようです。

最後に、私の方で簡単に取りまとめた「CIによる景気の基調判断」の基準のテーブルを以下に記しておきます。あくまで私自身のメモですので、正確には内閣府の資料をご参照ください。

基調判断定義基準
① 改善景気拡張の可能性が高いことを示す。原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が上昇した場合。
② 足踏み景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す。3か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。
③ 局面変化事後的に判定される景気の山・谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。7か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。
④ 悪化景気後退の可能性が高いことを示す。原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降した場合。
⑤ 下げ止まり景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す。3か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。
Entry No.6154  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月10日 (金) 20:14:00

大和総研による米国の対中国製品関税率25%への引き上げの影響試算やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、今週月曜日の5月7日に大和総研から「『米中冷戦』再開の政治経済分析」と題するリポートが明らかにされています。米中間の通商協議が決裂した際の政治力学的な解析と世界および日本経済への影響試算がなされています。前者の政治力学的な解析はやや専門外ですので、世界経済と日本経済への影響試算に限って、簡単に取り上げておきたいと思います。まず、リポートから要約5点のうち世界経済・日本経済への影響試算に関する2点を引用すると以下の通りです。

[要約]
  • 【世界経済に与える影響の網羅的分析】米国の対中関税は、2,353億ドルの輸入品目に対して賦課される。追加関税総額は現行で305億ドルだが、25%へ引き上げられれば588億ドルとなる。なお、今回問題となる約2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税については、記憶装置の部品などの電子機器の部品、携帯電話を含む電話機のウェイトが大きい。大和総研のマクロモデルを用いた試算によれば、GDPの下押し効果は中国▲0.22%、米国▲0.28%、日本▲0.02%となる。
  • 【日本経済への含意】日本にとって最も懸念すべき問題は「二次的効果」だ。すなわち、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の対中輸出が顕著に減少する効果である。他方、米中冷戦が深刻化するほどに同盟関係が重要となり、米国による対日関税の引き上げリスクが後退することや、米中が関税を相互に賦課することで日本における代替生産が増加する「代替効果」は、日本経済にとって言わば「漁夫の利」となりうる点にも留意しておきたい。


まず、リポートでは、米中間の通商協議が難航している可能性が高いと指摘しつつ、決裂の可能性が高く、さらに、米中冷戦は両国間における経済のみならず安全保障や軍事・外交面も含めた覇権争いが決着するまで解決しない、と指摘し、米国は軍事的優位性を維持する上で経済力をはじめとする総合的な国力の両国間の格差の維持を必要とすることから、減税と関税が大きな意味を持つ一方で、冷戦は消耗戦であり同盟諸国による中国包囲網を必要とする、と結論しています。このあたりは、専門外の私にはよく判りませんが、そうだという気もします。

photo


その上で、関税引き上げの影響試算の概要を上のグラフのように試算しています。その前提は、今回の約2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税については、記憶装置の部品などの電子機器の部品、携帯電話を含む電話機のウェイトが大きく、パブリック・コメントを受けて除外された品目では、化学製品や原料プラスチック製品などの金額が大きかったとし、他にはスマートウオッチなどの消費者家電、繊維、農産品などもリストの対象から外れている、と指摘し、他方で、中国の対米報復関税は、対象品目の輸入総額1,109億ドル、追加関税総額は165億ドル、対象品目に対する平均追加関税率は14.9%と見込んでいます。そして、我が国に対する経済的影響としては、モデル上の試算は2次効果と代替効果が描写できない深刻な弱点を抱えている、と指摘しつつ、前者については、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の我が国からの対中輸出が顕著に減少するリスクがある一方で、後者については、逆に、「漁夫の利」があり得るとし、米中が関税を相互に賦課することで日本をはじめとする周辺関係国が相対的な価格競争力を向上させて代替生産が増加する可能性を指摘しています。

最後に、私の直感なんですが、このリポートでも欠けているのは、国内の企業や消費者のマインドを低下させる効果です。昨日公表された消費者態度指数でも消費者マインドは引き続き低下を続けていることが示され、米中間の貿易摩擦は企業や消費者の将来見通しを通じて内需の回復に水を差す可能性もあり得ることは忘れるべきではありません。
Entry No.6150  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月09日 (木) 19:55:00

7か月連続で低下を続ける消費者態度指数はそろそろ下げ止まるか?

本日、内閣府から4月の消費者態度指数が表されています。前月から▲0.1ポイント低下して40.4を示しています。これで、7か月連続の低下を記録したことになります。統計作成官庁である内閣府は基調判断を「弱まっている」に据え置いています。まず、ロイターのサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月消費者態度指数は7カ月連続悪化、マインド「弱まっている」=内閣府
内閣府が9日発表した4月消費動向調査によると、消費者態度指数(2人以上の世帯・季節調整値)は、前月から0.1ポイントの低下となり、40.4に落ち込んだ。低下は7カ月連続。構成する4項目のうち、「暮らし向き」「雇用環境」が改善、「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」が低下した。
内閣府は消費者態度指数からみた消費者マインドの基調判断を「弱まっている」として据え置いた。
1年後の物価見通しについては、「上昇する」との回答が4カ月連続で増加。「低下する」、「変わらない」が減少した。


いつもの日経新聞ではないんですが、なかなか簡潔によく取りまとめられた記事だという気がしますが、続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


消費者態度指数を構成するコンポーネントごとに詳しく前月差を見ると、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.1ポイント低下し38.8、「収入の増え方」が▲0.1ポイント低下し40.5となった一方で、「雇用環境」が+0.7ポイント上昇し44.4、「暮らし向き」も+0.3ポイント上昇し38.0となりました。今年2019年に入って、1月や3月はコンポーネントの4指標すべてが前月差マイナスでしたし、2月も「雇用環境」を除く3指標がマイナスでしたから、4月統計では消費者態度指数が前月からの低下幅を▲0.1ポイントに縮小するとともに、半分の2指標がプラスを示していますので、7か月連続の低下はものすごく長いとはいえ、そろそろ下げ止まりの局面に入った可能性がうかがえます。ただ、実体経済の動向を示す景気動向指数が来週月曜日の5月13日に公表される予定となっており、景気の基調判断が現在の「下方への局面変化」から「悪化」に下方修正されてる可能性があると私は考えており、そうすると、一気にマインドの方もさらに悪化する可能性が否定できません。加えて、近くこのブログの記事でも詳しく取り上げようと考えているところですが、米中間の貿易摩擦がさらに激化し、明日の5月10日から中国の輸出品のうち約2,000億ドル相当分について関税率が10%から25%に引き上げられる予定となっていて、少なくとも、マインド的には悪影響を及ぼすことは明らかです。

最後に、繰り返しになりますが、このブログでは昨年2018年7月24日付けで大和総研のリポートを引用して、米中間の貿易摩擦の経済的な影響をに着目しましたが、その続きで、日を改めて、同じ大和総研の新しいリポートを取り上げる予定です。米中貿易摩擦の行方は、企業や消費者のマインドにも、それなりのインパクトを持つんではないかと私は考えています。
Entry No.6149  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月08日 (水) 19:14:00

ダイヤモンド・オンラインによる「『睡眠不足が多い』職業ランキング」やいかに?

昨日5月7日付けのダイヤモンド・オンラインの日本全国ストレスランキングにて「『睡眠不足が多い』職業ランキング【完全版】」が明らかにされています。1位は男性で「畜産」、女性で「ガソリンスタンドスタッフ」が上げられています。以下のテーブルの通りです。

photo


私も定年退職前から、ついつい寝不足に陥りがちな生活を送っていたんですが、年齢的に体力が逆についていかず、しっかり寝ないと起きている間の活動レベルが大きく鈍るような高齢者になってしまった気がします。それはそれで哀しいことかもしれません。
Entry No.6147  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月07日 (火) 23:12:00

ダイヤモンド・オンライン記事に見る日本企業の役員報酬やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、4月25日付けでダイヤモンド・オンラインにて「役員なら年収は億を狙える! 1億円プレーヤーが最も多い企業とは?」と題する記事を見かけました。我が国で1億円以上の役員報酬を受け取っている主な経営者は以下のテーブルの通りだそうです。私が35年間勤め上げた公務員では考えられないんでしょうね。何ら、ご参考まで。

photo
Entry No.6146  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年05月03日 (金) 23:41:00

米国雇用統計は堅調で失業率は50年振りの低水準も利上げは停止?!

本日、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+263千人増と大きな回復を示し、失業率もさらに低下して同じ3.6%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を手短に4パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added 263,000 jobs in April, unemployment falls to 3.6%, new 50-year low
Hiring was strong for the second straight month in April and unemployment fell to a new 50-year low, easing concerns that a slowing global and U.S. economy could dampen hiring.
Employers added a booming 263,000 jobs, the Labor Department said Friday. The unemployment rate fell from 3.8% to 3.6%, lowest since December 1969, but that was because nearly 500,000 Americans left the labor force, which includes people working and looking for jobs.
Economists had estimated that 190,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
Another positive: Job gains for February and March were revised up by a modest 16,000. February's total was upgraded from 33,000 to 56,000 and March's was revised down from 196,000 to 189,000.


やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

photo


失業率の3.6%なんですが、先月からさらに0.2%ポイント改善し、ほぼ半世紀振りの低水準まで低下しています。非農業部門雇用者の伸びも、2月に寒波などの天候要因で大きく鈍化しましたが、早くも4月には+263千人増ですから、反動による増加といった要因もあるかもしれません。いずれにせよ、引用した記事にもある通り、市場の事前コンセンサスは+190千人増くらいでしたので、これを大きく上回っています。産業別には、ヘルスケアや接客業などサービス分野の雇用が伸びています。製造業の雇用も伸びていますが、4月は+4千人にとどまりました。ADPも4月は+275千人増でしたから、米国の雇用は極めて堅調と考えるべきです。ただ、米国経済が拡大している中で、トランプ政権からの強い圧力もあって、連邦準備制度理事会(FED)は前回の連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げを一時停止した上で、今年2019年いっぱいは利上げを見送る可能性を強く示唆しています。このところ、物価上昇率が+2%を上回るようになっていることから、まさか、トランプ政権の圧力に屈して、政策金利を1%まで低下させるとは私は考えていませんし、利上げを停止したところで、世界経済が減速する中で米国経済だけが加熱に向かうとも思われませんが、いずれにせよ、今後の米国の金融政策動向にも注目しています。

photo


ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高めています。すなわち、4月は前年同月比で+3.2%の上昇と、昨年2018年8月から+3%の上昇率に達して、半年以上に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているんですが、利上げを停止して大丈夫なんでしょうか?
Entry No.6142  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年04月30日 (火) 14:41:00

帝国データバンク「『平成』産業構造変遷調査」やいかに?

昨日に続いて平成を振り返るシリーズで、4月22日付けで帝国データバンクから明らかにされた「『平成』産業構造変遷調査」を取り上げたいと思います。というか、簡単にまとめると、平成30年間における日本の産業変遷では、全9業種のうち構成比が拡大したのは「建設業」、「小売業」、「運輸・通信業」、「サービス業」の4業種であり、縮小したのは「製造業」、「卸売業」、「不動産業」、「農林水産業」、「鉱業」の5業種となっています。特に、もっとも大きく伸長したのは、「広告・調査・情報サービス業」であり、平成元年のシェア1.6%から平成30年には4.9%に、3.3%ポイント拡大しています。下のグラフは、pdfの全文リポートから引用した平成30年間の各産業・構成比推移です。

photo
Entry No.6137  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑
 | BLOG TOP |  OLDER ≫