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2019年11月20日 (水) 21:10:00

輸入の大幅減により10月の貿易収支は黒字に転換!

本日、財務省から10月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲9.2%減の6兆5774億円、輸入額も▲14.8%減の6兆5601億円、差引き貿易収支は+173億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月輸出9.2%減、対中国10.3%減 自動車や鉄鋼低調
財務省が20日発表した10月の貿易統計(速報)によると、輸出額は前年同月比9.2%減の6兆5774億円となった。11カ月連続で減少した。2016年10月の10.3%減以来3年ぶりの落ち込み幅となった。米中貿易戦争の影響が長引いており、中国やアジア向けの自動車や鉄鋼などの輸出が落ち込んだ。
アジア全体への輸出は11.2%減の3兆5361億円だった。このうち、中国向けは10.3%減の1兆3230億円だった。中国への輸出はプラスチック原料となる有機化合物が24.9%減だった。自動車部品は21.1%減、自動車用エンジンを主力とする原動機は24.9%減となった。ハイテク製品だけでなく、製造業全般に関わる幅広い品目で需要が縮小した。
日韓の貿易をめぐる対立もあって、韓国向けは23.1%減の3818億円だった。米国への輸出は11.4%減の1兆2676億円、欧州連合(EU)向けは8.4%減の7436億円だった。
10月の輸入は14.8%減の6兆5601億円だった。台風被害で物流が滞った影響が出たようだ。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は173億円の黒字(前年同月は4562億円の赤字)と、4カ月ぶりに黒字転換した。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは貿易収支の黒字を+3351億円と見込んでいたんですが、メチャメチャにレンジが広いので何ともいえません。ヘッドラインで書いた統計の繰り返しになりますが、前年同月比で見て輸出額が▲10%近く減少したものの、輸入額がそれを大きく上回る▲15%近い減少ですから、縮小均衡的に輸入の減少が輸出の減少を上回って、差引き貿易黒字は黒字、というわけですので、決して日本経済・世界経済の動向から考えて好ましい姿とは思えません。ただし、我が国の輸出が減少傾向にあるのは、割合と単純に、世界経済の減速という需要面の影響を受けていると考えられるのに対して、輸入の減少については、国内景気の減速という需要要因に加えて、いくつかの別の要因が複雑に絡まっている気がします。すなわち、10月統計ですので消費税率引上げ直後ということもあって、その前の駆込み需要の反動減という要素は考慮すべきです。さらに、今年2019年10月上旬には大型の台風19号の影響も無視できません。東海道新幹線をはじめとして交通が遮断されたことによる物流面での影響は、輸入に対してマイナスに作用したことはいうまでもありません。最後に、どこまでカウントできるかは不明であるものの、昨年2018年9月には台風21号の影響でしばらく関西空港が閉鎖され、直後の2018年10月にはその反動で物流が大幅増となり、今年2019年10月は前年同月である昨年2018年10月の関西空港再開後の輸入増の裏年、ということも出来ます。こういった我が国国内景気の需要動向以外の天候要因なども輸入を下押し、ないし、輸入の伸びを低下させる方向に働いたと考えられますので、輸入減を国内景気とストレートに結びつける必要はないと、私は考えています。もちろん、こういった天候に起因する物流面での影響は輸出入に対して、どこまで対称なのか、あるいは、非対称なのか、私はやや不案内なのですが、少なくとも、消費税率引上げ直後の反動減については輸入により大きなマイナス要因となったことは明らかです。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、上のグラフのうちの2番め真ん中と一番下のパネルのOECD先行指数を見る限り、先進国も中国もいずれも景気はそろそろ下げ止まりつつあるように見受けられます。ただ、我が国輸出は世界経済や中国の需要要因ほどには回復を見せていません。少なくとも、10月統計については台風19号の物流要因もあることから、今後の輸出の回復に期待したいと思います。
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2019年11月19日 (火) 19:45:00

上場企業の株式持ち合い比率が10年ぶりに上昇したのはどうしてか?

野村証券の「野村資本市場クォータリー」2019秋号の研究リポートで2018年度の「我が国上場企業の株式持ち合い状況」について報告されていて、2018年度は上場企業の株式持ち合いが10年ぶりに上昇している、と指摘しています。リポートから 図表 1 「株式持ち合い比率」の時系列推移 を引用すると下の通りです。

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上場銀行と非金融の事業法人上場会社の株式保有比率を示す青いラインの「持ち合い比率」は2017年度に比べ+0.6%ポイント上昇して10.1%を記録し、また、これに生命保険会社と損害保険会社の株式保有比率を加えた赤いラインの「広義持ち合い比率」も前年度に比べ+0.4ポイント%上昇して14.5%となっています。わずかな上昇幅とはいえ、10年ぶりの上昇です。直感的に上のグラフを読み解けば、長期のトレンドとして株式持ち合い比率は低下を続けている一方で、短期的、というか、循環的には、00年代後半でやや持ち合い比率が上昇しているのは景気拡大により企業利益が、いわゆる「増収増益」で資金的な余裕が出来て、私の目から見て疑問あるものの、賃金で従業員に還元するのではなく、株式持ち合いに走った、ということなのではないか、という見方も成り立つかと考えていました。リーマン証券の破綻などの金融危機からほぼ10年を経て、ふたたび、賃金よりも株式持ち合いか、との疑問を持ちましたが、リポートの解釈は違うようです。すなわち、、有価証券報告書における政策保有株式関連の開示が拡充され、「企業内容等の開示に関する内閣府令」が一部改定された結果、2019年3月期決算に関する有価証券報告書から、純投資と政策投資の区分の基準や考え方や、個別の政策保有株式の保有目的・効果について、提出会社の戦略、事業内容及びセグメントとの関連付け、定量的な効果を含めたより具体的な説明、などが求められたことに加えて、個別開示の対象となる保有銘柄の数が、原則、従来の30銘柄から60銘柄に拡大され、今回の開示拡充により把握できる銘柄数が増加したことが、上場事業法人の株式保有比率の上昇、そして「株式持ち合い比率」の上昇につながった、と結論しています。そして、開示拡充の影響を控除した時の2018年度の持ち合い比率は前年度から▲0.3%ポイント低下して9.2%、広義持ち合い比率も同じく▲0.5%ポイント低下し13.6%となる、との試算結果を明らかにしています。リポートでは、今後とも、コーポレートガバナンスの観点から保有株式圧縮の流れが続く中で、緩やかな持ち合い解消を促す動きが大きく変わるとは考えにくく、今後も、持ち合いの解消は継続すると予想し、他方で、政策保有株式と議決権行使を関連付ける動きに注目、と締めくくっています。
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2019年11月18日 (月) 19:30:00

遅ればせながらインテージ調査による消費税率引上げ前の駆込み需要とその後の反動に関するデータを見る!!!

遅ればせながらの注目なんですが、ほぼ2週間前の11月5日にインテージから消費税増税前後の日用消費財の購買状況が明らかにされています。先々週の段階では、ついつい大物消費の耐久消費財に着目して、そういったリポートを取り上げましたが、ホントは駆込み需要とその後の反動減は日用品に現れるというのは経験則として確立しています。今回のインテージの調査の結果から、軽減税率の適用が駆込み需要とその後の反動減にクッキリと現れています。以下のグラフの通りです。

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日用消費財の購入金額の前年比を、前回消費税率引上げのあった2014年時と今回の2019年10月で比べた6枚のグラフをインテージのサイトから引用し、特に何の芸もなく並べただけです。上から、日用消費財、日用雑貨品、化粧品、ヘルスケア、の4枚は2014年と2019年で大きな差はない一方で、5枚めの食品・飲料については、駆込み需要とその後の反動がかなり小さくなっているのが見て取れます。今回2019年の消費税率引上げにおいて軽減税率が適用されたことに起因しているのではないかと、容易に想像されます。というのも、最後の6枚めのアルコール飲料については、軽減税率の適用がなく、前回2014年と同じような駆込みと反動が見られます。私はそれでも軽減税率については慎重に考えるべきだと思いますが、なかなかに興味深い結果だと受け止めています。
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2019年11月15日 (金) 19:50:00

世界経済減速の影響を受けて年末ボーナスは減ってしまうのか?

先週から今週にかけて、例年のシンクタンク4社から2019年年末ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因で決まりますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。可能な範囲で、消費との関係を中心に取り上げています。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研の公務員ボーナスだけは地方と国家の両方の公務員の、しかも、全職員ベースなのに対して、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員の組合員ベースの予想、と聞き及んでおり、ベースが違っている可能性があります。注意が必要です。

機関名民間企業
(伸び率)
国家公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研38.7万円
(▲0.8%)
68.4万円
(▲3.6%)
賞与支給総額は、同+0.9%の増加となる見込み。一人当たり支給額は減少するものの、支給労働者数の増加が下支え。
第一生命経済研(▲1.5%)n.a.冬のボーナスの悪化が見込まれることは、今後の個人消費にとって痛手だ。10月から始まった消費増税による負担増にボーナス減少という重荷が加わることで、消費への逆風はさらに強まる。消費増税に備えて様々な対策が実行に移されていることから、家計の実質的な増税負担額は14年と比較してかなり小さく、消費増税発の景気失速は避けられるとみられるが、リスクは明らかに下振れである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング38.8万円
(▲0.4%)
79.0万円
(▲1.3%)
ボーナスの支給総額は16.9兆円(前年比+1.5%)に増加する見通しである。一人当たり支給額は減少に転じるものの、ボーナスが支給される事業所で働く労働者数が大きく増加することが支給総額の増加に寄与しよう。冬のボーナスの支給労働者数は4,344万人(前年比+2.0%)に増加し、支給労働者割合も84.8%(前年差+0.1%ポイント)に上昇すると見込まれる。ボーナスの支給総額の増加は、消費増税後の落ち込みからの回復を期する今後の個人消費にとってプラス材料である。
みずほ総研38.2万円
(▲2.1%)
74.9万円
(▲2.7%)
懸念されるのは、こうした所得の伸び悩みにより、消費増税後の個人消費が下押しされることだ。消費増税後の落ち込みについては、政府の所得支援策などにより、一定程度抑制されるとみられるものの、所得環境は伸び悩みが続いており、消費の基調は力強さに欠ける展開が予想される。今冬のボーナス伸びの大幅鈍化は、ますます消費の基調を弱めることになりかねない。海外経済の減速や企業収益の弱含みが雇用・所得環境を通じて消費に波及していくリスクは継続しており、今後の消費動向は要注意だ。


ということで、こぞって1人当たりボーナス額が減少する一方で、ボーナス支給対象雇用者が増加することから、1人当たり額に支給対象者数を乗じたボーナス支給総額は増加すると予想しています。シンクタンクによっては、1人当たりの減額を受けて消費にマイナスとする見方がある一方で、支給総額がプラスなので消費を下支えするという意見もあります。先行き景気は世界経済の動向に左右される部分が大きいんですが、私自身の見方としては、かなり不透明感がある中で、恒常所得ではないボーナスは消費に回る比率、限界消費性向はそれほど大きくないことから、いずれにせよ、消費に大きな影響をもたらすほどのインパクトはなく、10月からの消費税率引上げによる下押し圧力の方が上回り、消費はさえない展開が続くと予想しています。景気失速ないし景気後退につながるかどうかは、消費よりも世界経済の動向、あるいは、それに起因する我が国の輸出動向に左右される部分が大きいとは思いますが、雇用から消費への波及ももちろん無視できません。景気局面はビミョーな段階に入ったと考えるべきです。
下の画像は、日本総研のリポートから賞与支給総額(前年比)を引用しています。

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2019年11月14日 (木) 23:10:00

駆込み需要を考慮しても内需の底堅さを確認した7-9月期GDP統計1次QE!!!

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.1%、年率では+0.2%と潜在成長率を下回ってゼロ近傍ながら、4四半期連続のプラス成長を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質0.2%成長、GDP7-9月年率 個人消費など堅調
内閣府が14日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.1%増、年率換算では0.2%増だった。4四半期連続のプラス成長となった。4~6月期は年率換算で1.8%増だった。消費増税前の駆け込み需要でプラス成長は維持したものの、冷夏の影響などが響き、小幅な伸びにとどまった。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.2%増で、年率では0.8%増だった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.3%増、年率では1.2%増だった。名目でも4四半期連続のプラスとなった。
実質GDPの内訳は、内需が0.2%分の押し上げ効果、外需の寄与度は0.2%分のマイナスだった。
項目別にみると、個人消費が実質0.4%増と2四半期連続のプラスとなった。消費増税前の駆け込み需要の影響で支出が増え、個人消費を押し上げた。
設備投資は0.9%増と2四半期連続のプラス。省力化投資の積極化などが寄与した。民間在庫の寄与度は0.3%のマイナスだった。
住宅投資は1.4%増と5四半期連続のプラスと、増税前の駆け込み需要がみられた。公共投資は0.8%のプラスだった。
輸出は0.7%減だった。中国向けを中心にアジア向け輸出が弱かったうえ、世界経済減速などで伸び悩んだ。輸入は0.2%増と2四半期連続のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.6%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.2%のプラスだった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/7-92018/10-122019/1-32019/4-62019/7-9
国内総生産GDP▲0.5+0.4+0.5+0.4+0.1
民間消費▲0.1+0.3▲0.0+0.6+0.4
民間住宅+0.4+1.1+1.1+0.5+1.4
民間設備▲3.2+3.2▲0.4+0.7+0.9
民間在庫 *(+0.3)(▲0.0)(+0.1)(▲0.1)(▲0.3)
公的需要▲0.4+0.4+0.3+1.4+0.6
内需寄与度 *(▲0.4)(+0.8)(+0.1)(+0.7)(+0.2)
外需寄与度 *(▲0.1)(▲0.4)(+0.4)(▲0.3)(▲0.2)
輸出▲1.8+1.1▲2.0+0.5▲0.7
輸入▲1.2+3.8▲4.1+2.1+0.2
国内総所得 (GDI)▲0.8+0.3+1.0+0.3+0.1
国民総所得 (GNI)▲0.9+0.4+0.8+0.4+0.1
名目GDP▲0.4+0.4+0.9+0.4+0.3
雇用者報酬 (実質)▲0.4+0.3+0.4+0.6▲0.0
GDPデフレータ▲0.4▲0.3+0.1+0.4+0.6
内需デフレータ+0.6+0.5+0.3+0.4+0.2


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4~6月期の最新データでは、前期比成長率がわずかながらもプラスを示し、赤の消費と水色の設備投資がプラスの寄与を示している一方で、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がマイナスの寄与となっているのが見て取れます。

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前回の4~6月期GDP統計1次QEでは、私は「ほぼゼロ成長ながら、マイナス成長」と予想して大きく外したんですが、今回の7~9月期1次QEでは一昨日のQE予想の折りに、「プラスはプラスでも、かなりゼロに近い成長率」と予想していますので、まずまずの結果ではなかったかと自負しています。また、グラフを引用したニッセイ基礎研のリポートでは、前期比成長率+0.1%、前期比年率+0.2%と予想していましたので、まさに、ドンピシャでした。ということで、基本は、消費などで一定の駆込み需要があったものの、その需要増を供給増、というか、生産増で対応したのではなく、在庫の取り崩しで対応した結果であると私は受け止めています。加えて、世界経済の減速に起因する外需の停滞も成長率を下押ししていることは明らかです。ただ、7~9月期GDPでは、設備投資が前期比+0.9%増となっていますが、あくまで私の直感ながら、やや高い気がしなくもありません。法人企業統計を見ないと何ともいえませんが、先行き下方修正される可能性もあると考えています。ただ、全体として、駆込み需要が一定あることは否定できないものの、それを考慮しても内需の底堅さを確認できる統計だったと私は受け止めています。ですから、世界経済の今後の減速の程度にもよるものの、数兆円規模の財政サポートを含む経済対策が15か月予算として策定されるのであれば、10~12月期は消費税率引き上げによるマイナス成長がほぼほぼ確定しているものの、年明け1~3月期はプラス成長に回帰する可能性が高く、2四半期連続でのマイナス成長というテクニカルな景気後退シグナルを避けられるものと私は見込んでいます。唯一の懸念は、経済をけん引する主役の不在です。外需は世界経済の減速でむしろマイナス要因でしかなく、従って、輸出との相関高い設備投資も力強さに欠け、加えて、消費税率の引上げにもかかわらず、所得が年末ボーナスが渋いこともあって伸びず、家計部門でも消費や住宅が景気をけん引する姿とはほど遠いと考えるべきです。ですから、外需も民需も景気のけん引役としては期待できないとなれば、ここは政府の財政によるサポートが必要な場面であろうと私は考えています。

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続いて、上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。雇用者報酬の伸び悩みが始まっているように見えます。10~12月期は消費税率引上げにより実質所得はさらに停滞を見せると考えるべきです。加えて、インバウンド消費も韓国との関係悪化などを背景に、伸びが大きく減速しています。また、消費者マインドは改善の兆しすら見えませんが、現在の人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加の方向の影響を及ぼすことが考えられますし、これに加えて、もしも経済対策による財政支出が先行き見通しの向上をもたらして、賃金が上昇して消費者マインドが上向けば、内需主導の成長がサポートされるものと考えますが、いつになったら賃金が増えて消費者マインドが上向くんでしょうか。目先の景気後退は避けられる可能性高いものの、トンネルは長いかもしれません。
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2019年11月13日 (水) 22:50:00

企業物価(PPI)の国内物価上昇率は消費税率引上げでもマイナス!!!

本日、日銀から10月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.4%の下落と、6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、今日発表の10月統計まで5か月連続でマイナスが続いています。何と、消費税率が引き上げられたにもかかわらず、前年同月比でマイナスが続いているわけで、消費税率引上げの影響を除くベースでは▲1.9%の下落と試算されています。9月は▲1.1%の下落でしたから、一段と下落幅を拡大していることになります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業物価指数、前年比0.4%下落 薬価改定などで
日銀が13日発表した10月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.0と、前年同月比で0.4%下落した。5カ月連続で下落した。前月比でみると1.1%上昇した。電力料金や薬価の改定などの制度的な価格の引き下げが全体を押し下げた。
円ベースでの輸出物価は前年比で6.3%下落し、6カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.3%上昇した。輸入物価は前年比10.5%下落し、6カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.7%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち、消費税を含むベースで前年から上昇したのは520品目、下落したのは213品目だった。上昇と下落の品目差は307と、9月の確報値(74品目)から233品目増えた。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。10月の消費増税の影響を除いたベースでの企業物価指数は前年同月比で1.9%下落した。5カ月連続で前年を下回った。前月比でも0.4%下落した。2カ月ぶりに下落に転じた。
消費税を除くと上昇が328品目、下落が340品目で、品目差はマイナス12品目だった。下落品目数が上昇品目数を上回るのは2017年3月以来、2年7カ月ぶり。
10月は夏季電力料金の期間が終了したほか、薬価改定で医薬品の価格が引き下げられる影響があった。日銀の調査統計局は10月の企業物価の基調について「制度的な要因が中心で、消費増税の影響はみられない」としている。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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季節調整していないながら、国内物価指数の前月比は流石に消費税率引上げの影響もあって+1.1%の上昇を記録しており、寄与度で見て、輸送機械+0.26%、鉄鋼+0.12%、電気機器+0.11%などのプラス寄与が大きくなっています。国内物価指数の前年同月比では、相変わらず、石油・石炭製品が▲14.1%の下落と9月の▲11.9%から下げ幅が拡大しています。私が調べた範囲で、企業物価指数(PPI)のうちの輸入物価の円建て原油価格指数は、昨年2018年のピークが11月の142.5でしたから、このところ、今年2019年6月以降の100~110で11月も落ち着いた動きをするとすれば、次の11月統計でPPI輸入物価に現れる原油価格の前年同月比は底を打つ可能性が高いと考えられます。でも、サウジアラビアの石油施設への武力攻撃など、エコノミストには想像もできないような地政学的な何かが起こる可能性も排除できませんし、何よりも相場モノですので、先行きの価格動向は私の予想の範囲を超えています。また、国内物価指数で前年同月比の下落の大きい化学製品▲4.3%や非鉄金属▲4.5%などは、米中貿易摩擦の一方の当事者であり、ダメージが大きい方といわれている中国の景気動向に連動する部分が大きいと見なされているわけで、国際商品市況における石油価格とともに中国の景気動向にも物価が反応すると考えるべきです。ひょっとしたら、日銀金融政策よりもこういった対外要因の方が影響力大きいかもしれません。企業物価(PPI)の先行きについて考えると、少なくとも11月統計までは石油価格下落の影響が続くことは容易に想像できますし、加えて、中国をはじめとする世界経済の動向や国内景気も含めて、物価が上昇に転ずるタイミングを図るのは難しそうです。
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2019年11月12日 (火) 19:20:00

明後日公表の7-9月期GDP統計1次QEの予想やいかに?

先々週の政府統計の公表などを終えて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、今週木曜日11月14日に7~9月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。今回は、繰り返しになりますが、消費税率引き上げ直前の実績成長率と直後の見通しということで、先行きについても多くのシンクタンクで言及があり、テーブルの上から順に、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研の5機関は明確に見通しを取り上げ、伊藤忠総研についても「輸出動向がカギ」で締めくくっています。これらの機関はやや長めに、ほかもそれなりに引用しています。ただし、大和総研については、引用した後にも、GDP需要項目別に住宅投資・設備投資・公共投資・輸出と続きがあるんですが、取りあえず、個人消費のパラで打ち止めとしてあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.2%
(+0.7%)
10~12月期を展望すると、消費増税に伴う駆け込み需要の反動減に加え、台風19号などの自然災害が消費と生産の重石となり、5四半期ぶりのマイナス成長となる見込み。もっとも、良好な雇用・所得環境や高水準の企業収益を背景とした内需主導の景気回復基調は途切れておらず、マイナス成長は一時的にとどまると予想。
大和総研+0.2%
(+0.9%)
先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。
個人消費は、駆け込み需要の反動減が生じた後は、一進一退が続くとみている。個人消費の鍵を握る所得は、増加ペースの鈍化が見込まれるものの、消費増税時に実施されている各種経済対策が消費を下支えすることで、増税後の消費の腰折れは回避されるとみている。ただし、消費増税対策は公共投資の比重が大きく、家計に限れば消費増税に伴う負の所得効果を全て相殺できないことから、消費はいくらか抑制されるだろう。また、先行きの消費のかく乱要因として、キャッシュレス決済時のポイント還元制度の終了(2020年6月末)前後に駆け込み需要・反動減が生じ得ることなどが挙げられる。
みずほ総研+0.3%
(+1.3%)
今後の日本経済は、10~12月期については消費増税の反動減が下押しする投資の調整圧力が高まるほか、その後も弱い伸びに留まる見通しだ。
輸出は、IT関連需要の底打ちがプラス材料となるものの、世界経済の減速が続くことから、伸びは弱いとみている。設備投資は、省力化投資が下支えするものの、機械設備や建設投資における調整圧力の高まりが下押し要因になり、当面横ばい圏で推移するだろう。
個人消費は、力強さを欠く見通しだ。消費増税の反動減が見込まれることに加え、世界経済の先行き不透明感や企業収益の弱含みを背景に、所得が伸び悩むことが影響しよう。
ニッセイ基礎研+0.1%
(+0.2%)
2019年10-12月期は、前回増税時に比べれば規模は小さいものの、駆け込み需要の反動減が発生すること、税率引き上げに伴う物価上昇によって実質所得が低下することから、民間消費が大きく減少し、明確なマイナス成長になることが予想される。
第一生命経済研+0.3%
(+1.0%)
前回増税対比では抑制されたとはいえ、個人消費の駆け込み需要は一定程度生じたとみられる。この部分については 10-12月期に反動が出ることは必至である。加えて、増税による実質購買力の抑制による悪影響も懸念されるところだ。増税に備えて様々な対策が実行に移されたことから、14年と比較すれば悪影響は小さくなるだろうが、それでも一定の下押し圧力は受けざるを得ない。10-12月期の個人消費は大幅な減少が予想され、実質GDP成長率もはっきりとしたマイナスに転じるとみている。
伊藤忠総研+0.0%
(+0.2%)
7~9月期の実質GDP成長率は前期比+0.0%(年率+0.2%)、4四半期連続のプラス成長ながら概ね横ばいを予想。個人消費は消費増税前の駆け込み需要を悪天候の影響が相殺、公共投資や設備投資の増加も輸出の減少によって減殺された模様。潜在成長率を上回る成長を取り戻すかどうかは輸出動向がカギ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.1%
(+0.4%)
2019年7~9月期の実質GDP成長率は、前期比+0.1%(年率換算+0.4%)と4四半期連続でプラス成長を維持したと予想される。もっとも、消費増税前の駆け込み需要があったことを考慮すると、伸びは弱い。
三菱総研+0.5%
(+1.9%)
2019年7-9月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.5%(年率+1.9%)と、4四半期連続でのプラス成長を予測する。消費税増税前の駆け込み需要による押し上げ効果もあり、内需が堅調に拡大したとみられる。


ということで、+1%弱といわれている潜在成長率近傍を予想するシンクタンクが多いんですが、高いところで三菱総研の年率+1.9%成長、低いところでも伊藤忠総研の年率+0.2%となっていて、少なくともマイナス成長を見込むシンクタンクはありません。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、中央値で年率+0.8%成長、レンジでも+0.2~+1.9%となっています。基本的に、10月1日からの消費税率引上げ直前の駆込み需要が下支えしており、サステイナブルではないプラス成長ではありますが、ほぼ、私の実感とも合致しています。ただし、下方リスクは小さくなく、特に、悪い話ではないんですが、消費税率引上げ前の駆込み需要が、前回2014年4月時よりも小さく、しかも、大型消費の耐久消費財で小さかったわけですので、私の実感としては、プラスはプラスでも、かなりゼロに近い成長率に仕上がっている可能性が高いと感じています。ただし、駆込み需要が大きかったとすれば、在庫調整が進んだ可能性もあります。これも悪い話ではありません。いずれにせよ、プラス成長というエコノミスト間のコンセンサスは当然なんですが、潜在成長率をやや下回る、と私は予想しています。
下の画像はコンポーネントの寄与度に分解したGDP成長率の推移のグラフをニッセイ基礎研のサイトから引用しています。

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2019年11月11日 (月) 19:45:00

3か月連続でマイナス続く機械受注と景気ウォッチャーと経常収支を読み解く!!!

本日、内閣府から9月の機械受注と10月の景気ウォッチャーが、また、財務省から9月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲2.9%減の8502億円を示しており、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲10.0ポイント低下の36.7を、先行き判断DIは逆に+6.8ポイント上昇の43.7を、それぞれ記録しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆6129億円の黒字を計上しています。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

9月の機械受注、2.9%減 基調判断は引き下げ
内閣府が11日発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.9%減の8502億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(0.7%増)を下回り、3カ月連続の減少となった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」へと引き下げた。基調判断を引き下げるのは2018年12月分以来となる。19年4月分から「持ち直しの動き」としていた。
製造業の受注額は前月比5.2%減の3604億円だった。2カ月連続の減少で、17業種のうち7業種で減少した。「非鉄金属」や「石油製品・石炭製品」の分野で落ち込みが顕著だった。
半面、非製造業は2.6%増の4898億円と、3カ月ぶりの増加に転じた。「通信業」や「情報サービス業」などの増加が寄与した。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は5.1%増だった。受注総額は4.9%減、外需の受注額は7.3%減、官公需の受注は26.3%減だった。
7~9月期では前期比3.5%減と、2期ぶりに減少した。製造業は0.9%減、非製造業は7.3%減だった。10~12月期は前期比3.5%増の見通しで、製造業は2.8%増、非製造業は3.7%増を見込んでいる。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
10月の街角景気、現状判断指数は3カ月ぶり悪化
内閣府が11日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は36.7で、前の月に比べて10.0ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月ぶり。家計動向、企業動向、雇用が悪化した。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は43.7で、6.8ポイント上昇した。上昇は4カ月ぶり。家計動向、企業動向が改善した。
内閣府は基調判断を「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。
経常収支、9月は1兆6129億円の黒字
財務省が11日発表した9月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆6129億円の黒字だった。黒字は63カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆6846億円の黒字だった。
貿易収支は11億円の黒字、第1次所得収支は1兆8054億円の黒字だった。
同時に発表した4~9月期の経常収支は10兆3382億円の黒字だった。貿易収支は241億円の赤字、第1次所得収支は11兆3079億円の黒字となった。


長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、電力と船舶を除くコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比は+0.9%増であり、レンジでは▲9.5~+2.1%でしたから、予測の中央値は前月比プラスとはいえ、リスクを考慮したレンジは下方に広かった、と考えるべきで、もともとが単月の振れの激しい指標ですので、予想と符合が違っていたものの、市場には大きなサプライズはなかった、と私は受け止めています。特に、四半期データが利用可能となり、7~9月期の四半期ベースでは前期比▲3.5%減だった一方で、10~12月期は前期比+3.5%増の見通しとなっていますので、先行き見通しのバイアスをどこまで見込むのかにもよりますが、単純に考えると2019年後半の2四半期をならせばコア機械受注は横ばいということですので、米中貿易摩擦に起因して世界経済が大きく減速している中で、「こんなもん」という相場観ではないか、という気もします。加えて、3か月前の6月統計公表時の7~9月期の予想は▲6.1%減でしたから、この予想からすれば上振れ下、ということにもなります。ただ、3か月連続でのコア機械受注の前月比マイナスですので、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を半ノッチ下げて「持ち直しの動きに足踏み」としています。また、コア機械受注の外数ながら官公需を見ると、8月+36.8%増の反動の要素は考慮しても、9月▲45.2%減を記録しており、経済対策によるテコ入れがなされる予定とはいえ、消費税率引き上げ直前の公共事業の執行姿勢に疑問を持たざるを得ません。緊縮財政を転換することが必要です。

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続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。現状判断DIは家計動向関連、企業動向関連、雇用関連のすべてがマイナスを示し、先行き判断DIはほぼ逆で家計動向関連、企業動向関連ともにプラスながら雇用関連だけがわずかにマイナス、ということになっています。消費税率引上げに起因する動きですので、現状判断DI/先行き判断DIとも家計動向関連のうちの小売り関連が飛び抜けて大きな動きを示しています。まあ、当然です。消費税率引上げ前後の動きとしては、前月の段階で駆込み需要があって現状判断DIが上昇する一方で、先行き判断DIが低下し、消費税率引上げの当月は反動減などから現状判断DIが低下する一方で、先行き判断DIが上昇する、という典型的な動きを示しました。2014年の3~4月とまったく同じでした。統計作成官庁である内閣府による基調判断は、「回復に弱い動き」で据え置かれています。

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最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの8月の経常収支は最近ではやや大きな黒字なっており、海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めている点については変わりありません。経常収支の背景について見ると、国際商品市況における石油価格の動向にもかかわらず、貿易収支が赤字化しているのは、我が国の景気局面と我が国貿易相手国の景気局面に差が生じ始めた可能性を示唆していると私hは受け止めています。すなわち、我が国国内経済の減速はかなりの程度に実感されているところですが、輸出入の動向を見ると、世界経済の減速は我が国以上にもっと進んでいる可能性があると、私は受け止めています。その意味で、貿易収支の動向にも注視が必要かもしれません。

最後に、どうでもいいことながら、私は天皇制については退職した国家公務員、というか、日本国民として、かなり少数派に属する考えを持っていることは自覚していて、昨日の祝賀パレードには何の興味もありませんでした。そして、我が家で購読している朝日新聞の本日付け夕刊の「素粒子」で昨日のパレードの国旗についての疑問が呈されていて、誰が費用を負担しているかは詳しく知りませんが、我が家が青山に住んでいたころ、下の倅は東京都心でボーイスカウト活動に参加していたことから、正月一般参賀の折りには皇居に行って、日の丸配布の奉仕活動していた時期があり、当時の財団だか、社団だかの国旗協会から紅白まんじゅうをもらって帰っていました。私は下の倅に「万歳三唱には加わる必要はない」といい置いていた記憶があります。
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2019年11月11日 (月) 07:25:00

今日は24回目の結婚記念日!!!



今年は24回目の結婚記念日です。ということは、誰でも容易に想像できるように、来年は銀婚式となります。実は、私は勝手に来春に大プロジェクトを進めていて、これを乗り切れば銀婚式を迎えられそうです。
いつものくす玉を置いておきます。クリックして割ってやって下さい。
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2019年11月08日 (金) 22:50:00

「悪化」の基調判断が続く景気動向指数ながら、経済対策による財政出動に期待!

本日、内閣府から9月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から+0.3ポイント上昇して92.2を、CI一致指数も+2.0ポイント上昇して101.0を、それぞれ記録し、前月に続いて「悪化」に据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の景気一致指数、2.0ポイント上昇 基調判断は「悪化」据え置き
内閣府が8日発表した9月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比2.0ポイント上昇の101.0と2カ月ぶりに上昇した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「悪化」で据え置いた。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5系列が指数のプラスに寄与した。自動車や医薬品などに消費増税前の駆け込み需要が膨らみ「商業販売額(小売業)」や「商業販売額(卸売業)」などが伸びた。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.3ポイント上昇の92.2となった。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比1.8ポイント低下の102.9だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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先行指数、一致指数とも2か月ぶりに前月差でプラスとなっています。一致指数の系列ごとに寄与度をみると、商業販売額(小売業)(前年同月比) +0.83、投資財出荷指数(除輸送機械) +0.75、商業販売額(卸売業)(前年同月比) +0.65、 などとなっており、前月差の+2.0ポイントはかなり大きいように見えるんですが、実は、商業販売統計に現れた消費税率引き上げ直前の駆け込み需要に起因する上振れが大きいと考えるべきです。9月当月の前月差がプラスであるにもかかわらず、基調判断が「悪化」に据え置かれているのは、後方7か月移動平均がマイナスを続けているためであり、来月のCI一致指数がもしも駆け込み需要に対する反動減の影響でマイナスを示せば、3か月連続での「悪化」ということになる可能性もあります。私自身は日経新聞のサイトを見ましたが、今朝の閣議で安倍総理大臣から3年振りの経済対策策定の指示が出されたと報じられています。「財政支出は5兆円規模」という報道もありますが、too little too late と評価されないような対策が必要です。2012年暮れに安倍内閣が発足して以来、当初の2012~13年度を別にすれば、経済運営は日銀の金融政策の比重が高く、財政政策は緊縮気味に運営されてきただけに、私は反緊縮の機運はかなり盛り上がっているように感じています。

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最後に、例の統計不正から長らく取り上げるのを差し控えていた厚生労働省の毎月勤労統計の9月速報が公表されています。統計のヘッドラインとなる名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+1.8%増の56万7151円となっています。グラフは上のパネルから順に、景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列、真ん中のパネルが季節調整していない原系列の現金給与指数と決まって支給する給与、一番下が季節調整済みの系列の現金給与指数と決まって支給する給与となっています。影をつけた期間はいずれも景気後退期を示しています。下2枚の賃金のグラフで、昨年2018年12月から今年2019年1月にかけて大きな段差が生じているのは、例の統計不正によるものですが、久し振りに書いてみると、どうしようもなく所定外労働時間のグラフがヘンに見えるのは私だけでしょうか。
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2019年11月07日 (木) 19:50:00

三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートによる消費税率引き上げ前後の個人消費の動向やいかに?

一昨日11月5日に、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「消費税率引き上げ前後の個人消費の動向」と題するリポートが明らかにされており、前回214年の税率引き上げ時よりも駆け込み需要とその後の反動減が小幅にとどまったと報告しています。もちろん、pfdの全文リポートもアップされています。いくつかの論点があるとは思いますが、リポートからいくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートでは経済産業省の「商業販売統計」のデータを基に、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要について分析しており、上のグラフはリポートから 図表2.スーパー販売額の推移 を引用しています。単純に、増税前最終月とそれまでの直近1年間の販売額の平均値との差を駆け込み需要の規模と見なすと、2014年の増税時は1280億円程度だったのに対し、2019年は935億円程度と約27%、345億円程度小さくなっており、同様に、百貨店でも約10%小さくなっています。スーパーでは百貨店よりも、駆け込み需要に一定の割合を占めるトイレットペーパーや洗剤などの日用品の購入が多いと思うんですが、むしろ、軽減材率の適用される食料品の効果が上回り、駆け込み需要の大きさはスーパーの方が百貨店よりも大きく縮小したのではないかと分析されています。また、自動車については9月の売り上げ増が大きかったんですが、増税直前まで駆け込み需要はほとんどみられず、このため、増税直前に需要が集中し、単月での大きな伸びにつながっただけであり、駆け込みの期間が短かった分、トータルで見れば今回の駆け込み需要は前回よりも小さかったと指摘しています。この駆け込み需要の期間が短かったという指摘は、一昨日11月5日に取り上げた日本総研のリポートと同じ結論と私は受け止めています。

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次に、増税後の反動減について見るため、リポートから 図表8. クレジットカード情報に基づく消費動向 (JCB消費NOW) を引用すると上のグラフの通りです。リポートでは、個人の消費支出額は9月上旬に前年比+4.6%、下旬に+11.9%と伸びを高めた後、10月上旬には▲6.7%と減少しているんですが、落ち込み幅は駆け込みの規模と比べても相応の水準であり、駆け込み以上に落ち込んでいる様子は見て取れないと結論しています。

他方、第一生命経済研のリポートのように、自動車と百貨店について分析した結果として、「基調が見極め難く、評価は持ち越し」と評価している例もあります。私が大学出向時などに研究者として統計的計量的な分析をしたのと違って、シンクタンクのリポートは速報性を重視して厳密な数量分析までは手が伸びていないわけで、まあ、速報性と正確性のトレードオフを考えれば、こんなもんか、という気もします。
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2019年11月06日 (水) 19:20:00

リーマン・ショック時以来の2019年7-9月期の倒産増加率をどう見るか?

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上のグラフの引用元である東京商工リサーチによれば、今年2019年7~9月期のの倒産件数は2,182件で、前年同期比+8.1%増に上り、+13.4%増を記録したリーマン・ショック直後の2009年1~3月期以来の高い倒産増加率だったようです。
こういった倒産件数の増加の兆しは、東京商工リサーチが指摘している通り、すでに日銀「金融システムレポート」でも信用コストの増加として取り上げられており、その背景として、「金融システムレポート」(2019年10月)概要の p.22 から2点引用すると、①金融機関との取引履歴が比較的長い、一部の業況不芳先における経営再建の遅れ、②近年、金融機関が貸出増加に取り組んできたもとでの一部審査・管理の引き緩み、を上げています。
なお、現在では、景気動向指数に採用されていませんが、倒産件数は逆サイクルで景気先行指標と考えられています。その昔の1960年代には、当時の経済企画庁の景気動向指数のうちの先行指数に採用されていましたし、私の知る限りでやや記憶は不確かなんですが、兵庫県統計課が作成・提供している兵庫県域の景気動向指数の先行系列にも逆サイクルで倒産件数が採用されているんではないかと思います。ですから、もしも、あくまで、もしも、ですが、倒産がジワジワと増加を示しているのであれば、あるいは、あくまで、あるいは、なんですが、景気後退局面がジワジワと近づいているのかもしれません。

まったくどうでもいいことながら、日銀「金融システムレポート」を少しばかり読んでいて、長らくエコノミストの仕事をして来ていながら、定年退職したとはいえ、また、金融分野はそれほど詳しくないとはいえ、「業況不芳先」とか、「引き緩み」という用語は不勉強にして初めて見ました。もちろん、「引き締め」というのは使ったこともあるんですが、その逆が「引き緩み」とは知りませんでした。この先、エコノミスト的な職に復帰する際には、もっと本格的な勉強が必要かもしれません。
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2019年11月05日 (火) 21:20:00

日本総研リポート「消費増税前の耐久財消費の動向」で分析された駆け込み需要やいかに?

先週金曜日11月1日に日本総研から「消費増税前の耐久財消費の動向」と題するリポートが明らかにされており、今回10月1日からの消費税率引き上げに伴う駆け込み需要は前回2014年4月増税時の半分との試算結果を示しています。

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上のグラフは、pdfのリポートから 耐久財の駆け込み消費額(試算値) を引用しています。前回の耐久消費財の駆け込み需要が1兆1900億円あったのに対して、今回は6200億円と、ほぼ半分にとどまったと推計しています。前回増税時と比べ、家電は6割程度、自動車は4割弱と、国内家計最終消費支出の0.2%程度と小さく、当然、この先の反動減による落ち込みも軽微にとどまるとリポートでは指摘しています。加えて、リポートでは、主要耐久財の買い替えサイクルの観点からも、消費低迷の長期化は避けられるとの判断を示しています。すなわち、自動車では2012年のエコカー補助金や前回増税前の駆け込み購入分が近く平均使用期間を超えるほか、白物家電やテレビなどの家電製品でも、10年前の家電エコポイント制度による購入分が買い替え時期を迎えつつあり、これらの買い替え需要が今後数年間かけて発生することから、消費下支えがなされる見込みとの分析です。

私は各種統計から、9月単月の駆け込み需要はかなりの大きさに上った気がして、少しびっくりしたんですが、この日本総研のリポートによれば、確かに9月の駆け込み需要はそれなりの規模があった一方で、今回は駆け込み需要が短期間で終わったと指摘しています。そうなのかもしれません。
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2019年11月02日 (土) 08:20:00

米国雇用統計や金融政策動向に見るGMストの影響やいかに?

日本時間の昨夜、米国労働省から10月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+128千人増とまずまずの伸びを示した一方で、失業率は先月から0.1%ポイント上昇して3.6%という低い水準にあります。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の6パラを引用すると以下の通りです。

Economy added solid 128,000 jobs in October despite GM strike and loss of census workers
U.S. hiring was surprisingly solid last month as employers added 128,000 jobs despite a General Motors strike that held down overall payrolls and the loss of 20,000 temporary census workers. The showing highlights a healthy economy that eases recession concerns.
Economists surveyed by Bloomberg expected 85,000 job gains.
The unemployment rate, which is calculated from a different survey, rose from a 50-year low of 3.5% to 3.6%, the Labor Department said Friday. That's because a strong increase in employment was offset by an even bigger rise in the labor force, which includes Americans working and looking for jobs.
Even more encouraging: Job gains for August and September were revised up by 95,000. August’s additions were bumped from 168,000 to 219,000 and September’s from 136,000 180,000.
The six-week GM strike reduced employment by 42,000, Labor said. That’s a blip that’s likely to boost November payrolls since striking workers will be back on the job, Morgan Stanley said before the report was released.
And the number of workers preparing for the 2020 census fell by 20,000.


やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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今月の雇用統計のひとつのマイナス要因に、GMのストライキが上げられます。10月下旬に終息したと報じられたものの、米国労働省の CES Strike Report によれば、9月16日から▲46千人の雇用者減とカウントされているようです。もちろん、GM本体だけでなく、自動車産業はすそ野の広いのがひとつの特徴ですから、ある程度の乗数的なプロセスを持ってレイオフなどが発生している可能性もあり、▲50千人を超える雇用減になっていた可能性も十分あります。加えて、引用した記事にもある通り、市場の事前コンセンサスで+85千人の予想だった非農業部門雇用者数の増加幅が+128千人と、まずまず堅調な伸びを示したことから、貿易戦争の逆風下でも雇用は底堅さを保っており、米国連邦準備理事会(FED)の利下げ停止をサポートしそうな統計であると私は受け止めています。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用がやや減速を示し、賃金上昇率も労働市場の動向に合わせるように鈍化し、10月は前年同月比で+2.9%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して以来、久し振りに+3%を割り込みました。でも、日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いている一方で、雇用に現れた景気動向から利下げが模索されるのも、左派エコノミストを自称する私から見れば、ハト派的な金融政策は大いに結構と考えています。
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2019年11月01日 (金) 19:40:00

本日公表の雇用統計から景気悪化の兆しはどこまで読み取れるか?

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも9月の統計です。失業率は前月から0.2%ポイント上昇して2.4%、有効求人倍率も前月から▲0.02ポイント低下して1.57倍と、いずれもタイトな雇用環境がうかがえるものの、指標は雇用の悪化を示し始めているように見受けられます。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインをコンパクトに報じている記事を引用すると以下の通りです。

求人倍率1.57倍、失業率2.4% 9月の雇用指標が悪化
厚生労働省が1日に発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.02ポイント低下し、1.57倍だった。全体では堅調な雇用情勢が続くものの、米中貿易戦争の影響を受けた製造業などで陰りが出ている。総務省が同日発表した9月の完全失業率(同)は前月比0.2ポイント上昇し2.4%となった。新たに職探しをする人が増え4カ月ぶりに悪化した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は0.01ポイント低下の1.13倍、雇用の先行指標となる新規求人倍率は0.17ポイント低下の2.28倍で、前月より悪化した。
新規求人数は前年同月比1.5%減の91万7174人だった。産業別でみると製造業が前年同月比11%減と、8カ月連続で減少した。サービス業や卸売・小売業なども減少が続いた。
完全失業者数は同6万人増の168万人だった。新規の求職者が5万人増えた。就業者数は53万人増の6768万人。ただ、正社員が9万人減の3481万人と2カ月連続で減少した。インターネット直販の浸透などで卸売・小売業の販売が落ち込んでおり、正社員が27万人減った影響が大きい。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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失業率は2%台前半まで低下し、有効求人倍率も1.5倍超の高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も1倍超を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年余りに渡って1倍以上の水準で推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近いタイトな状態にあると私は受け止めています。ただ、問題はモメンタム、すなわち、方向性であって、失業率も有効求人倍率も雇用悪化の方向にあることは確かです。もっとも、雇用は生産の派生需要であり、生産が鉱工業生産指数(IIP)で代理されるとすれば、基調判断は「弱含み」であり、先行き、現在の景気回復・拡大が賃金上昇に直結するかどうかはビミョーなところであり、賃金が本格的に上昇する前に景気局面が転換してしまう可能性も排除できません。
また、マインド指標についても、昨日10月31日に取り上げた消費者態度指数の4つのコンポーネントのうち、「雇用環境」だけが前月差でマイナスでしたし、企業マインドでは、中小企業の代表的な景況感である日本政策金融公庫の中小企業景況調査についても、一昨日10月29日公表の「中小企業景況調査 (2019年10月調査)」の結果にも見られる通り、今年2019年に入ってから従業員判断DIが急速な勢いで低下し、中小企業で人手不足感が大きく縮小し始めています。まだDIそのものはプラスで人手不足感の方が大きいんですが、1990年代前半のバブル経済崩壊後はいうに及ばず、サブプライム・バブル崩壊後の景気後退局面でも、雇用が急速に悪化したのを忘れるべきではありません。
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2019年10月31日 (木) 20:00:00

弱い動きの続く鉱工業生産指数(IIP)と2年振りに前月を上回った消費者態度指数と見通しの下方修正続く日銀「展望リポート」!!!

本日、経済産業省から9月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。季節調整済みの系列で前月から+1.4%の増産を示しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

9月鉱工業生産、1.4%上昇 半導体製造装置が好調
消費増税前の駆け込み生産、影響みられず

経済産業省が31日発表した9月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比1.4%上昇の102.9だった。上昇は2カ月ぶりで、QUICKがまとめた民間予測の中央値(0.4%上昇)を上回った。中国・台湾などアジア向けに輸出する半導体製造装置の生産が好調だった。汎用・業務用機械工業や電気・情報通信機械工業で国内向け大型案件があったことも全体の上昇に寄与した。
業種別では、15業種中7業種が上昇した。生産用機械工業は前月比7.9%の上昇。なかでも、半導体製造装置の上昇が目立った。経産省は「10月の生産計画でも半導体製造装置は伸びるとみられており、需要が高まっているようだ」とした。世界的に半導体市況に底打ち感が出てきたことが背景にありそうだ。
汎用・業務用機械工業は9.4%の上昇、電気・情報通信機械工業は4%の上昇だった。それぞれ、運搬用クレーンや超音波応用装置で大型案件があったことが上昇に寄与した。電気・情報通信機械工業では、セパレート形エアコンも大きく生産が伸びた。「8月の猛暑の影響で、エアコンの店頭在庫が少なくなり、それを補うために企業が増産に動いた」(経産省)という。
もっとも、経産省は生産の基調判断を「生産はこのところ弱含み」に据え置いた。「上昇した業種が多くなく、一部の業種の大型案件や天候など一時的な要因で上昇幅がやや大きくなった面が大きい。8月までの低下から抜け出たとは考えにくい」と判断した。
また、消費増税前の駆け込み生産については「消費財の生産が9月は1.6%の低下となっており、増税前の駆け込み需要を受けた増産の影響は特にみられなかった」とした。
出荷指数は1.3%上昇の102.5と2カ月ぶりに上昇した。在庫指数は1.6%低下の102.7と3カ月連続の低下だった。在庫指数の前月比の低下幅は、同じく1.6%低下だった2016年11月に並ぶ水準だった。「四半期でみた場合も在庫調整局面に入った可能性が高い」という。そのうえで経産省の担当者は「高止まりしていた在庫が減っており、今後も在庫調整が進んでいくことを期待したい」と述べた。在庫の出荷に対する比率を表す在庫率指数は2.4%低下の107.9となった。
製造工業生産予測調査によると、10月は0.6%上昇、11月は1.2%の低下を見込む。鉱工業生産の先行きについて経産省は「9月は上昇したが、先行きは慎重にみている」とした。同時に発表した7~9月期の鉱工業生産指数速報値は前期比0.6%低下の102.4だった。低下は2期ぶりとなる。


やや長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、中央値で+0.4%の増産、レンジでは▲0.1%~+1.3%の幅でしたので、実績の+1.4%の増産はほぼほぼ上限に近くなっていますが、引用した記事にもある通り、経済産業省の情報では消費税率引上げ前の駆込み需要の可能性は否定されています。ということで、産業別に季節調整済み系列の前月比をみると、ぞうさんはばの大きい順に、汎用・業務用機械工業+9.4%増、生産用機械工業+7.9%増、輸送機械工業(除.自動車工業)+6.9%増、などとなっており、産業別をさらに細かく品目で見ると、生産用機械工業の半導体製造装置はいいとしても、汎用・業務用機械工業のコンベヤ、運搬用クレーンなどについては、大型案件の受注に起因しており、基調的な回復とは見なしにくい気もします。先行きを占う製造工業生産予測指数も足元10月はバイアスを補正すれば▲1.6%の減産と試算されており、統計作成官庁である経済産業省の方で基調判断を「このところ弱含み」に据え置いたのは、昨日の商業販売統計の上方修正と違って、まあ、正解なのかもしれないと私は受け止めています。ただし、10月の減産予想は、消費税率引上げによる反動減だけでなく、相次ぐ台風や大雨などの自然災害による減産の影響もあり、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速を超えるような弱いトレンドというわけではないと私は考えています。

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9月の統計が公表され、四半期でいえば7~9月期のデータが利用可能となりましたので、久し振りに、在庫循環図を書いてみました。横軸は在庫の前年比、縦軸は出荷の前年比です。ピンクの矢印の2013年1~3月期から始まって、直近2019年7~9月期まで、6年半のデータをプロットしています。すでに景気循環局面も回復・拡大の後半に入っていることは明らかであり、かなり複雑な軌跡を描いています。「月例経済報告」(2002年12月) の閣僚会議配布資料にある「鉱工業の在庫循環図と概念図」、また、ほぼほぼ同じものが「JFM 経済ニュースレター」 p.9 にもありますが、これらに従えば、在庫循環はすでに景気の山を越えて景気局面が転換していると解釈してもおかしくないわけながら、さすがに、景気判断はそこまで機械的だったり単純に決められたりはしません。ただ、7~9月期の生産は前期比で▲0.6%の減産、出荷も▲0.1%の減を記録しています。

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鉱工業生産指数(IIP)以外にも、本日、内閣府から10月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、10月は+0.6ポイント上昇して36.2となり、23か月ぶりに前月を上回りました。統計作成官庁である内閣府では、10月の消費者マインドの基調判断は、「弱まっている」に据え置いています。消費者態度指数を構成する4指標のうち、「耐久消費財の買い時判断」が消費税率の引上げ直後の10月調査にもかかわらず大きく上昇しており、何か錯誤を生じているのではないか、と疑問にすら思わなくもありません。今後半年間の見通しを調査しているとはいえ、ホントに10月に調査しているんでしょうか。なお、いつものグラフは上の通りです。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2019年度+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.6~+0.8
<+0.7>
+0.4~+0.6
<+0.5>
 7月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.1
<+1.0>
+0.6~+0.9
<+0.8>
 2020年度+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.2
<+1.1>
+0.7~+1.1
<+1.0>
 7月時点の見通し+0.8~+1.0
<+0.9>
+1.1~+1.4
<+1.3>
+1.0~+1.3
<+1.2>
 2021年度+0.9~+1.2
<+1.0>
+1.2~+1.7
<+1.5>
 7月時点の見通し+0.9~+1.2
<+1.1>
+1.3~+1.7
<+1.6>


最後の最後に、本日、日銀「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しに注目した結果、上のテーブルの通りです。データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、その他の情報とともに、引用元である日銀の「展望リポート」のサイトからお願いします。制作委員の大勢見通し、特に物価の見通しは下方修正が続いています。
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2019年10月30日 (水) 20:20:00

消費税率引上げ前の駆込み需要で大幅増となった9月の商業販売統計!!!

本日、経済産業省から9月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+9.1%増の12兆5890億円、季節調整済み指数も前月から+7.1%増を記録しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

9月の小売販売額、9.1%増 14年3月以来の高い伸び率
経済産業省が30日発表した9月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比9.1%増の12兆5890億円と、2カ月連続で増加した。前回の消費増税直前の2014年3月以来の高い伸び率で、経産省は小売業の基調判断を「増加している小売業販売」に上方修正した。
業種別で見ると、9業種のうち8業種でプラスとなった。冷蔵庫やパソコンなどの家電を含む「機械器具小売業」が37.9%増と10年11月以来の伸び率となった。中古車など「自動車小売業」は16.9%増と14年1月以来の伸び率だった。経産省の担当者は今回の大幅な上昇について、パソコンの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」の20年1月のサポート終了など要因は様々あるとしたうえで「業界によっては消費増税に伴う駆け込み需要が出たとの声もあった」と説明した。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が10.4%増の1兆6717億円だった。既存店ベースでは10.0%増だった。コンビニエンスストアの販売額は0.2%減の1兆203億円だった。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

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少し前まで、今回の消費税率引上げに際しての駆込み需要は小さいと感じていたんですが、商業販売統計の9月の結果を見ると、要するに、大きな伸びは消費税率引上げ直前の駆込み需要なんでしょうね。それ以外に受け止めようがないんですが、それでも、小売業の基調判断を上方修正するのは、私にはまったく理解できません。10月統計で大きな反動減が見られたら、基調判断は下方修正するんでしょうか。よく判りません。小売業販売学を季節調整していない原系列の統計で見て、前年同月比伸び率が高いのは、家電などを含む機械器具小売業の+37.9%増、自動車小売業+16.9%増、日用品などの医薬品・化粧品小売業+16.4%増などとなっています。業態別に見ると、コンビニが▲0.2%の減となった一方で、百貨店が+22.1%増、スーパーが+5.4%増、また、家電大型専門店が+52.4%増、ドラッグストアも+21.8%増ですから、これも駆込み需要をうかがわせる結果となっています。来月統計に注目しつつ、そこまで待たなくても、明日公表予定の消費者態度指数に見られる消費者マインドにも注目したいと思います。
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2019年10月29日 (火) 21:20:00

リクルートジョブズによる9月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日11月1日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる9月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の9月度平均時給は前年同月より+2.6%、+27円増加の1,063円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+32円、増減率+3.0%)、「フード系」(+29円、+2.9%)、「製造・物流・清掃系」(+28円、+2.7%)、「販売・サービス系」(+21円、+2.0%)など、全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、今年2019年3~5月はマイナスを示した後、6月統計では一瞬だけ水面上に顔を出して前年同月より+0.2%、+3円増加の1,641円となった後、7~9月統計では。ふたたびマイナスとなり、7月▲10円減、▲0.6%減、8月▲7円減、▲0.4%減の後、9月も▲7円減、▲0.4%減の1,633円を記録しました。職種別では、「IT・技術系」(前年同月比増減額+90円、増減率+4.5%)、「クリエイティブ系」(+67円、+3.9%)、「オフィスワーク系」(+27円、+1.8%)の3職種がプラスなんですが、、「医療介護・教育系」(▲4円、▲0.3%)「営業・販売・サービス系」(▲17円減、▲1.2%減)の2職種がマイナスとなっています。また、地域別でも、関西がプラスとなった一方で、東海・関東はマイナスを記録しています。派遣スタッフのうち、「IT・技術系」と「クリエイティブ系」で高い伸びを示しているのは、キャッシュレス決済開発の関係ではないか、と私は想像しています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトでは人手不足の影響がまだ強い一方で、「IT・技術系」などを除いて派遣スタッフ賃金は伸びが鈍化しつつある、と私は受け止めています。もちろん、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用にはいっそうの注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。特に、派遣スタッフについては、昨年2018年前半から半ばにかけて、いったん直近のピークを付けた可能性があります。ただ、2016年年央にも同じようにピークを過ぎた後、2017年後半からもう一度上昇したこともあり、人手不足をはじめとする労働需給に敏感なだけに、注意が必要そうな気がします。

最後に、何度でも繰り返しますが、決して人手不足が景気をけん引しているのではありません。雇用は生産の派生需要であり、景気が後退局面に入ると労働需要が一気に冷え込む可能性は否定できないわけで、この点は絶対に忘れるべきではありません。
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2019年10月28日 (月) 23:10:00

消費税率引き上げ直前の9月の企業向けサービス物価(SPPI)の動向やいかに?

本日、日銀から9月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.5%を示しています。前月と同じ上昇率となっていて、引き続きプラスの伸びを続けています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率は+0.6%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の企業向けサービス価格、前年比0.5%上昇 キャッシュレス決済開発費膨らむ
日銀が28日発表した9月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は102.8で、前年同月比で0.5%上昇した。前年同月比での上昇は2013年7月以来75カ月連続。消費増税に伴い、キャッシュレス決済開発関連の大型案件があったことや人手不足による人件費の高騰が寄与した。
前月比の上昇率は横ばいだった。人手不足で人件費が高止まりする一方で駆け込み需要を見越して企業の広告出稿が低調だった。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の146品目のうち価格(消費税の影響を含む)が前年比で上昇したのは85品目、下落は36品目、上昇から下落の品目を引いた差は49品目と、8月の確報値(53品目)より4品目減少した。
日銀の調査統計局の担当者は「プラス幅が徐々に縮小し伸び率には一服感があるものの、緩やかに上昇していく基調は続いていきそうだ」と指摘した。


いつものように、コンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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先月統計と大きな違いはないんですが、前年同月比で見ても、8~9月はヘッドラインSPPIが+0.5%の上昇、国際運輸を除くコアSPPIも8月+0.5%、9月+0.6%の上昇と仕上がりの数字に大きな変化は見られません。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率+0.5%のうち、寄与度で見て、土木建築サービスや労働者派遣サービス、あるいは、警備などを含む諸サービスの寄与度が+0.41%、同素貨物輸送などを含む運輸・郵便が+0.16%を占めています。ただ、景気に敏感な広告の寄与は▲0.06%とマイナスを示しており、テレビ広告・新聞広告とも前年同月比マイナスでした。引用した記事にある「駆け込み需要を見越して」という理由が、私にはイマイチ不明でした。宣伝広告により売り上げを増加させようというインセンティブに乏しい時期である、ということなのかもしれません。もうひとつ特徴的なのが運輸・郵便であり、国際商品市況における石油価格の動向に一定連動して、外航貨物輸送が前年同月比で見て8月▲4.3%、9月も▲0.7%と下落を示しているのに対して、国内の人手不足による人件費アップを反映して、道路貨物輸送は8月+2.6%、9月も+2.7%と堅調に推移しています。引用した記事にもある通り、2013年7月以来SPPI上昇率は75か月に渡って連続でプラスを記録し続けています。総じて粘着的な動きを示す物価なんですが、10月からの消費税率の上昇をどのように織り込むことになるのか、本日公表のSPPIだけでなく、金融政策のターゲットとなっている消費者物価(CPI)はもちろん、企業物価(PPI)の動向なども10月統計は注目かもしれません。
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2019年10月25日 (金) 23:20:00

「労働市場に変化の兆し」は見られるか?

昨日、10月24日付けの三井住友信託銀行「調査月報」2019年11月号No.91において、「労働市場に変化の兆し」と題する記事を見受けました。一部業種で雇用拡大姿勢は慎重化しつつあり、求人数が減少し始めていると指摘しています。まず、リポートから<要旨>を引用すると以下の通りです。

<要旨>
労働市場では、失業率が2.2%まで低下し需給逼迫の状況が続いているが、求人倍率は2019 年4月にピークアウトし、ギャップが生じている。求人数の減少が求人倍率低下の主因であり、一部業種で雇用拡大姿勢が慎重化し始めた兆しがある。背景には、製造業を中心とした景況感の弱まりと、同一労働同一賃金の導入と最低賃金引上げという制度要因が労働需給逼迫と重なり、人件費負担が高まってきたことがあると見る。
今後は、景気減速が足元の状況で踏み止まり雇用者数の減少にまで至らなければ、これまで労働力人口を増加させてきた女性と高齢者の労働参加圧力も弱まり始めており、求人数が減少しても失業率は低水準に留まることになろう。


ということで、グラフをいくつか引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから、図表4 新規求人数(19年6~8月平均) 前年同期比▲2.6%に対する産業別寄与度 を引用しています。本リポートの分析に従えば、頭打ちもしくは低下に転じた有効求人倍率の動向は、求職者数の増加ではなく求人数の減少に起因する、とされており、上のグラフを見れば明らかな通り、米中貿易摩擦により世界経済が減速し、輸出などの大きな影響を受けている製造業もマイナス寄与がもっとも大きくなっています。そして、意外なことに派遣業も次いでマイナス寄与が大きくなっており、雇用動向の先行きを敏感に読み切っているのかもしれません。小売と卸売が冴えないのは所得が伸び悩んで消費が停滞しているからで、逆に、医療・福祉が最大のプラス寄与を示しています。

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次に、上のグラフはリポートから、図表11 産業別の時給と最低賃金 を引用しています。労働市場に変化の兆しをもたらした求人数の減少は。最初に引用した<要旨>にある通り、景況感の弱まりとともに、制度的な要因として同一労働同一賃金と最低賃金の引上げが人件費負担を高めている可能性を示唆しているところ、製造や卸小売のパート時給がかなり最低賃金に近い結果を示しており、伝統的な経済学の理論から、限界生産性との比較という文脈で高過ぎる最低賃金が雇用を抑制している可能性を示唆しています。

私自身は、生産の派生需要としての雇用の特質から、量的な産業サイドの労働需要が労働市場への影響力が大きく、制度的な質的要因として最低賃金などの価格としての賃金規制の影響はそれほど大きくない、と直感的に理解していますが、両方の要因あることに異論はありません。ただ、何度もこのブログで強調している通り、景気局面が転換すれば、一気に産業サイドからの量的な労働需要が冷え込む可能性がある点だけは忘れるべきではありません。
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2019年10月24日 (木) 22:30:00

東洋経済オンラインによる「ボランティア休暇利用者が多い」トップ100社やいかに?

今年は特に台風などの自然災害により甚大な被害が発生していますが、10月20日付けで東洋経済オンラインにて「ボランティア休暇利用者が多い」トップ100社が明らかにされています。以下の通りです。

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ランキングトップ1位のオムロンが飛び抜けているのが見て取れます。オムロン以外にも、2位大和ハウス工業では1年間最大20日、通算100日間の失効年次有給休暇の積立制度をボランティア活動として利用できるそうで、また、4位のイオンではボランティアの活動費がほぼ全額支給されるボランティア派遣制度があるようです。こういった企業ごとの文化や制度に支えられているボランティア活動なんですが、誤解ないように付け加えておくと、このランキングはすべてが災害ボランティアというわけではなく、スポーツ・イベントや地域活動へのボランティア参加も含まれています。

昨今の自然災害、特に、自身は別にしても台風や大雨については、海水温の上昇がひとつの原因といわれており、気候変動や地球温暖化の影響のひとつの帰結と私は考えています。政府債務残高なんぞよりも、CO2排出の方がずっと次世代への影響が大きいわけですので、もっと真剣な取り組みが必要です。
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2019年10月23日 (水) 19:30:00

長期経済予測はやっぱり不正確か?

先週、国際通貨基金(IMF)の短期見通しである「世界経済見通し」World Economic Outlook を、また、ニッセイ基礎研による「中期経済見通し (2019-2029年度)」を、それぞれ連続で取り上げましたが、経済産業研究所から「長期経済予測の不確実性」と題した学術論文が公表されています。森川副所長のご執筆となっています。サマリは以下の通りです。

概要
本稿は、経済学者・エコノミストの長期的なマクロ経済予測の精度を事後評価する。分析結果によれば、①経済成長率や物価上昇率の長期予測には上方バイアスが存在し、特に名目GDP成長率予測で顕著である。②TFP上昇率と実質GDP成長率の予測値の間、CPI上昇率と名目GDP成長率の予測値の間には密接な正の関係があり、結果として各変数の予測誤差相互間にも同様の関係がある。③民間エコノミストに比べて経済学者の長期的なGDP成長率予測は上方バイアスが小さい。しかし、マクロ経済学や経済成長論を専門分野とする人の成長率予測は、他の分野を専門とする人に比べて上方バイアスが大きい。経済分析の専門家にとっても、長期経済予測には大きな不確実性があることを示している。


私自身も、経済の見方については自分でも「楽観的」だと自覚しているんですが、多くのエコノミストが楽観バイアスを持っているようです。昨日のラグビーと同じで、私は代表的なバイアスを持つエコノミストだったのかもしれません。下のグラフは「長期経済予測の不確実性」の論文 p.15 から、 図1 GDP成長率の予測誤差の分布 と 図2 物価上昇率の予測誤差の分布 を引用しています。明記はしていないんですが、カーネル密度関数の推計結果ではないかと思います。楽観バイアスがよく理解できるんではないでしょうか。なお、ピークは複数あるのは、これは明記してある通り、1%とか、0.5%刻みくらいのキリのいい数字を回答した人が多いことを反映している可能性があります。

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2019年10月21日 (月) 19:25:00

貿易統計は3か月連続で赤字を記録し7-9月期の外需はマイナス寄与か?

本日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲5.2%減の6兆3685億円、輸入額も▲1.5%減の6兆4915億円、差引き貿易収支は▲1230億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の貿易収支、3カ月連続赤字 中国向け輸出7カ月連続減
4-9月期は8480億円の貿易赤字
財務省が21日発表した9月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1230億円の赤字だった。赤字は3カ月連続。中国向けの自動車部品や韓国向けの半導体等製造装置の輸出が落ち込んだ。同時に発表した4~9月期の貿易収支も中国向け輸出の低迷で8480億円の赤字と、2期連続の赤字となった。財務省は「中国経済が緩やかに減速している影響を受けた可能性がある」と分析している。
9月の全体の輸出額は前年同月比5.2%減の6兆3685億円だった。減少は10カ月連続。輸入額は1.5%減の6兆4915億円と、5カ月連続の減少となった。サウジアラビアからの原粗油や韓国からのナフサなどの輸入が減った。
中国向けの輸出額は6.7%減の1兆1771億円と、7カ月連続で減少した。自動車部品に加え、半導体等製造装置の輸出が減少した。輸入額は1.0%減の1兆6181億円と、2カ月連続の減少。携帯電話などの輸入が減った。対韓国の輸出額は15.9%減の4027億円と、11カ月連続で減少した。食料品が前年同月比62.1%減の大幅減となった。日韓関係の悪化を受け、日本製品の不買運動の影響が出た可能性がある。
対米国の輸出額は7.9%減の1兆1874億円と2カ月連続で減少した。自動車や航空機エンジン部品などの輸出が減少した。輸入額は11.6%減の6233億円。差し引きの貿易収支は5641億円の黒字だった。対欧州連合(EU)の貿易収支は1273億円の赤字だった。
9月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=106円69銭。前年同月に比べ4.0%円高・ドル安に振れた。
同時に発表した2019年度上半期(19年4~9月)の全体の輸出額は前年同期比5.3%減の38兆2332億円、輸入は2.6%減の39兆812億円だった。中国向けの自動車部品や半導体等製造装置の輸出が減った。一方、アラブ首長国連邦(UAE)からの液化天然ガスやサウジアラビアからの原粗油の輸入が減少した。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は▲811億円の赤字ということでしたので、やや赤字幅が大きいと感じられなくもないんですが、予測レンジがとても広いので赤字側の下限を突破したということではありません。ただ、季節調整していない原系列の統計による貿易収支は、引用した記事のタイトルにもある通り、まだ3か月連続の赤字なんですが、季節調整済みの系列でトレンドを見ると、中華圏の春節明けの今年2019年3月から半年余りの7か月連続での貿易赤字となっている点は忘れるべきではありません。8月から9月への輸出入の動きを、季節調整していない原系列の統計の前年同月比で見ると、輸出は8月▲8.2%減から9月▲5.2%減へ、輸入も8月▲11.9%減から9月▲1.5%減に、それぞれ減少幅を縮小させています。輸出入で減少幅に違いがあるのは、輸出については米中貿易摩擦の影響から世界経済が大きく減速している一方で、一時的な要因である可能性は否定できないものの、9月の輸入が消費税率引き上げ直前の駆け込み需要にサポートされている部分が一定の割合ながら含まれているんではないか、と考えられる点です。他方で、季節調整済みの系列の貿易収支は▲972億円と7か月連続の赤字ながら、7月▲1,340億円、8月▲1,167億円から徐々に赤字幅を縮小させているのも事実です。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、ジグザグした動きながら、輸出数量はそろそろ下げ止まるタイミングに差しかかっているように私は見ています。上のグラフのうちの2番めと3番めのグラフにプロットしたOECD加盟国全体と中国のそれぞれの先行指数も、前年同月比で見ればほぼほぼ反転したように感じています。ただし、下げ止まりの兆しある一方で、力強いV字回復の予感はない、と私は考えています。多くのエコノミストの実感でも、しばらく、底這いが続いて持ち直しや回復に至るには今少し時間がかかる、というのが大雑把なコンセンサスではないかという気がします。先週金曜日の10月18日に閣僚会議が開催された10月の月例経済報告においても、景気判断について「緩やかに回復」の前段の形容詞を「輸出を中心に弱さが続いているものの」から「輸出を中心に弱さが長引いているものの」に改め、総合的に見て下方修正と受け止められており、今後、輸出動向が注目されるところです。逆から見て、輸出が本格的に回復すれば景気後退のリスクは軽減される可能性が十分ある、ということも出来ると私は考えています。

引用した記事にもある通り、今年度上半期で見て、輸出額の減少幅は輸入額の2倍となり、上半期貿易収支も赤字を計上しています。7~9月期GDP統計1次QEは11月14日の公表予定ですが、4~6月期の外需寄与度▲0.3%に続いて、7~9月期も外需の寄与度はマイナスを記録しそうです。
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2019年10月18日 (金) 23:00:00

上昇率が縮小した9月の消費者物価(CPI)について考える!

本日、総務省統計局から9月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し縮小して+0.3%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、9月0.3%上昇 2年5カ月ぶり低水準
総務省が18日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比0.3%上昇した。プラスは33カ月連続だが、上昇率は同じく0.3%上昇だった2017年4月以来、2年5カ月ぶりの低水準だった。菓子類など生鮮を除く食料品の値上げが指数を押し上げた一方、ガソリン価格や携帯電話通信料の下落が物価の下げ圧力となった。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は同じく0.3%上昇だった。人件費などが上昇している外食が、物価上昇に寄与した。電気掃除機など家庭用耐久財も上昇した。
伸び率は前月(0.5%上昇)よりも鈍化した。ガソリンや都市ガス代などエネルギー構成品目の下落幅が拡大したことが物価にマイナスに寄与した。携帯電話の通信料も6月に大手各社が値下げした影響が引き続き表れた。
生鮮食品を除く総合では297品目が上昇した。下落は168品目、横ばいは58品目だった。総務省は「2年5カ月ぶりの低水準となったものの、プラスで推移している」と指摘し「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。今後については「10月の消費増税の影響や原油価格の動向を注視したい」(総務省)と話した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.7と前年同月比0.5%上昇、生鮮食品を含む総合は101.9と0.2%上昇した。生鮮食品は、天候不順などの影響でぶどうや梨などの生鮮果物が上昇した一方、トマトやネギなどの生鮮野菜は値下がりした。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。さらに、なぜか、最近時点でコアコアCPIは従来の「食料とエネルギーを除く総合」から「生鮮食品とエネルギーを除く総合」に変更されています。ですから、従来のコアコアCPIには生鮮食品以外の食料が含まれていない欧米流のコアコアCPIだったんですが、現時点では生鮮食品は含まれていないものの、生鮮食品以外の食料は含まれている日本独自のコアコアCPIだということが出来ます。

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ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.2~+0.3%のレンジで中心値が+0.3%でしたので、ジャストミートしたといえます。上のグラフから明らかなように、紺色の折れ線で示したコアCPI上昇率、すなわち、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は今年2019年上半期の4月の前年同月比上昇率+0.9%をピークに、ジワジワと上昇幅を縮小させ、8月には+0.5%に、そして、9月にはとうとう+0.3%まで縮小したわけですが、生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率、上のグラフで赤い折れ線については、同じように4月の+0.6%が高いといえば高いんですが、5月から直近統計が利用可能な9月まで+0.5~0.6%の上昇が続いており、コアCPIの▲0.6%ポイントの縮小幅に比較して、ほとんど上昇幅は縮小していません。要するに、9月統計までのコアCPI上昇率の縮小はエネルギー価格の影響が大きい、ということになります。ですから、先々月月7月統計ではエネルギーの前年同月比上昇率は+0.6%とギリギリながらプラスだったんですが、先月の8月統計では▲0.3%の下落と、とうとうマイナスに転じ、本日公表の9月統計では▲1.9%の下落と下落幅を拡大させています。9月統計の品目別の前年同月比で見ても、ガソリンの▲6.9%下落、灯油の▲2.6%下落などが目につきます。エネルギー全体では、繰り返しになりますが、9月統計の前年同月比で▲1.9%の下落、寄与度でも▲0.15%の大きさとなっています。
エネルギー価格の動向については、国際商品市況における石油価格の影響が大きく、私ごとき定年退職した元エコノミストにはまったく予想もつきません。ですから、利用可能な他の分野の専門家のリポートを読んだりするんですが、みずほ証券による10月17日付けのリポート「マーケット・フォーカス 商品: 原油」では、「当面は1バレル=50ドル台での下値固めを想定する」と結論されているようです。何ら、ご参考まで。

先行きの物価上昇については、当然ながら、10月1日からの消費税率引き上げや幼児教育などの無償化の影響が現れ始めます。今年2019年7月の日銀「展望リポート」では、p.4 の脚注6で、消費税率引上げがフルに転嫁されると、コアCPI上昇率を+1.0%ポイント引き上げ、また、教育無償化政策は、2019年度と2020年度のコアCPI上昇率をそれぞれ▲0.3%ポイント、▲0.4%ポイント押し下げる、と試算しています。
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2019年10月17日 (木) 19:50:00

ニッセイ基礎研「中期経済見通し (2019-2029年度)」を読む!!!

昨日の記事では、IMFが公表した「世界経済見通し」を取り上げましたが、同じ10月15日には、もっと長く10年間を対象としたニッセイ基礎研「中期経済見通し (2019-2029年度)」が明らかにされています。もちろん、ニッセイ基礎研のサイトにはpdfの全文リポートもアップされています。IMFの短期的な来年までの経済見通しとも、また、私の考えるもう少し長い中期的な経済見通しとも、いずれもとてもよくマッチしています。グラフを引用しつつ概観しておきたいと思います。まず、ニッセイ基礎研のサイトからリポートの要旨を5点引用すると以下の通りです。

要旨
  1. 世界経済は製造業を中心に減速している。2019年の世界の実質GDP成長率は3%程度となり、世界金融危機以降では最も低い伸びにとどまることが見込まれる。
  2. 2020年代初頭にかけては製造業サイクルの好転から世界の成長率は3%台半ばまで高まるが、中国をはじめとした新興国の成長率鈍化を反映し、2020年代半ば以降は3%台前半まで低下することが予想される。
  3. 日本は人口減少、高齢化が進む中でも女性、高齢者を中心に労働力人口が大幅に増加しており、中長期的な経済成長を規定する供給力の低下は顕在化していない。一方、需要面では堅調な企業部門に対し、家計部門は低調な推移が続いており、このことが景気回復の実感が乏しい一因となっている。
  4. 2029年度までの10年間の日本の実質GDP成長率は平均1.0%と予想する。高齢者がより長く働くようになれば、高齢者の雇用者所得の拡大を通じて消費の長期低迷に歯止めがかかる可能性もある。
  5. 消費者物価上昇率は10年間の平均で1.1%(消費税の影響を除く)と予想する。デフレに戻る可能性は低いが、賃金の伸び悩みが続くなかでは、日本銀行が「物価安定の目標」としている2%を達成することは難しいだろう。


最初のポイントでは、IMFの「世界経済見通し」とまったく同じ認識で、2019年の世界経済の成長率が+3%とリーマン・ショックに起因する金融危機後の最低水準との現状判断が示されていますし、多くのエコノミストのコンセンサスと考えられる上に、この要旨でほぼほぼ中期見通しの内外の全容を尽くしているような気もしますが、以下では基本的に日本経済に的を絞って、グラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。なお、我が国では2026年4月から消費税率が12%に引き上げられるとの前提を置いています。

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まず、世界主要国の、というか、日米欧の先進国に中国とインドの1人当たりGDPの推移をリポートから引用すると上の通りです。別途、世界のGDP構成比のグラフもあり、日本はGDP規模ですでに2010年に中国に抜かれているわけですが、さらに、インドのGDPは予測期間末に日本を上回る、との結果も示されています。ただ、1人当たりGDPで見れば、中国やインドといった新興国が追い上げ急ピッチではあるものの、見通し最終年の2029年でも日本の1人当たりGDPは中国の2倍以上の水準を維持する、と見込まれています。ただ、米国やユーロ圏欧州との差は縮まりません。

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次に、我が国の潜在成長率の成長会計的な寄与度分解、すなわち、全要素生産性と労働投入と資本投入に潜在成長率を分解した推移を示すグラフをリポートから引用すると上の通りです。高齢者や女性の労働市場参加により、直近2018年くらいまでは労働投入もプラス寄与なんですが、足元の2019年あたりから労働投入はマイナスとなります。基本的には、人口減少の影響ですが、働き方改革に伴う労働時間短縮の影響も見込んでいるようです。しかし、資本投入がこれをカバーして、+1%程度の潜在成長率が見通し期間中はキープされる、と見込まれています。

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次に、需要項目別の寄与度とともにGDP成長率の推移をプロットしたグラフをリポートから引用すると上の通りです。2026年度の成長率が極端に落ち込んでいるのは、繰り返しになりますが、2026年4月から消費税率が12%に引き上げられるとの前提を置いているからです。ということで、成長率は2017年度の+1.9%から2018年度には+0.7%へと減速し、加えて、足元の2019年度から2021年度までは潜在成長率をやや下回るゼロ%台後半の成長が続くと見込んでいる一方で、2022年度に+1.1%と潜在成長率並みの成長へと回帰した後は、2026年度の消費税率引き上げによる落ち込みを別にすれば、おおむね+1%台前半の潜在成長率水準ないしやや上回る成長が続く、と見込んでいます。従って、予測期間(2020~2029年度)を通した平均の成長率は+1.0%になり、直近の過去10年間と大きな差がない水準の成長を続ける、と予想しています。

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最後に、これも各収支別の寄与を分解した経常収支の推移のグラフをリポートから引用すると上の通りです。おそらく、人口減少による高齢化の影響を最も強く受けるのが経常収支であると私は考えています。高齢化、、さらに、その高齢化に伴う貯蓄率の低下がこれを引き起こす要因となります。このニッセイ基礎研の中期見通しでは、経常収支は予測期間終盤に小幅ながら赤字化する、と予想しています。特に、国際商品市況における石油価格の動向にもよりますが、貿易収支は予測期間末には赤字幅が名目GDP比で▲3%程度まで拡大する、と見込んでいます。ただし、だからどうだというわけではなく、経常収支が赤字になる、というか、国内の貯蓄がマイナスになっても、自国通貨の発行権を持つわけですから国債消化には問題なく、ほかにも、大きな問題あるとは私は考えていません。もっと長期にわたって経常赤字を計上し続けている国はいっぱいあります。

グラフなどは引用しませんが、物価については、生鮮食品を除く消費者物価、すなわち、コアCPIの上昇率で見て、日銀の物価目標である+2%に達することはなく、予測期間(2020~2029年度)の平均で+1.1%にとどまるものの、過去10年間の平均である+0.2%よりは上昇幅が拡大する、と見込んでいます。また、財政の見通しについては、基礎的財政収支は見通し最終年の2029年度でもGDP比▲2.6%の赤字を記録し黒字化は実現せず、国と地方の債務残高は2029年度には約1300兆円まで増加する、と見込んでいる一方で、名目成長率が比較的高い伸びとなるため、債務残高の名目GDP比の上昇には歯止めがかかり、▲200%程度で安定する、と予想しています。細部にわたって隅々まで熟読したわけではありませんが、かなりの程度に私の理解や見通しと一致する部分がとても大きいと感じています。多くのビジネスパーソンや学生さんなんかにオススメです
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2019年10月16日 (水) 20:00:00

IMF による「世界経済見通し」World Economic Outlook 見通し編を読む!

IMF・世銀総会が開催されていますが、日本時間の昨日10月15日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook, October 2019 の見通し編が公表されています。副題が Global Manufacturing Downturn, Rising Trade Barriers ということで、かなり下方リスクを意識した内容となっています。まず、IMF Blog のサイトから成長率見通しの総括表を引用すると以下の通りです。なお、いつもの通り、テーブル画像をクリックすると、「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook, October 2019 の見通し総括ページである pp.10-11 だけを抜き出したpdfファイルが別タブで開くようにしてあるつもりです。

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米中間の貿易摩擦や関税率引き上げに伴う世界経済の減速の影響がさらに大きく増して、2019年の成長率見通しが下方修正されています。結果として、世界経済の成長率は2019年3.0%、2020年3.4%と、半年前の2019年4月時点の見通しから2019年が▲0.3%ポイント、2020年も▲0.2%ポイントの下方修正となっています。2019年見通しの+3.0%成長というのは、リーマン・ショック後でもっとも低い成長率見通しに仕上がってしまっています。基本は、繰り返しになりますが、米中間の貿易摩擦が世界経済減速の最大の要因なんですが、加えて、ユーロ圏や中国において新排気ガス規制に伴う混乱などにより自動車生産がマイナスの影響を受けたり、また、先進国における生産性の伸び悩みや高齢化といった構造要因によっても、経済成長が下押しされていると指摘しています。2020年には世界経済の成長率は上向くと見込まれていますが、世界経済を牽引するのは新興国や途上国なんですが、そのうちほぼ半分が、アルゼンチン、イランやトルコなど、ストレスを抱えている新興国での景気回復、あるいは、景気後退が軽微であることで説明でき、残りの部分は、2018年と比べて2019年の成長率が大幅に低下した、ブラジルやインド、メキシコ、ロシア、サウジアラビアといった国々のリバウンドという要因ですから、米国、日本、中国といった経済大国が2019年から2020年にかけて成長率が減速するわけですので、不確実性が大きいと指摘しています。さらに、下振れリスクは目白押しで、米中間の貿易摩擦やBREXITの不確実性はいうまでもなく、湾岸地域の地政学要因も不安定です。マインド要因や新興国への資金フローなどがリスクとなる可能性も残されています。このため、金融政策はもちろんなのですが、財政政策も余裕あれば発動すべき、と指摘しています。最後に、世界経済の成長率が+3.0%にとどまるのであれば、まだまだ政策的な下支えが必要、と結論しています。

 【2019年7月判断】前回との比較【2019年10月判断】
北海道緩やかに回復している緩やかに拡大している
東北一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている
北陸緩やかに拡大している緩やかに拡大している
関東甲信越輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している
東海拡大している拡大している
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている
中国緩やかに拡大している一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに拡大している
四国回復している回復している
九州・沖縄緩やかに拡大している緩やかに拡大している


最後に、昨日10月15日午後、日銀支店長会議にて「さくらリポート」が公表されています。上の通りで、横ばいないし上向きという結果なんですが、下振れリスクも少し意識され始めているような気もします。
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2019年10月15日 (火) 20:15:00

インテージによる消費税増税の駆け込み需要に関する調査結果やいかに?

ちょうど2週間前の10月1日から消費税率が8%から10%に引き上げられています。その後の災害関係のニュースなどで、私もついつい消費税率引き上げの実感がないんですが、もうひとつは、私はほとんど食べる方面の消費が多くを占めていて、軽減税率のために据え置き感があるんだろうと思います。ということで、駆け込み需要も大きくなかったように感じているところ、調査大手のインテージから消費増税の駆け込み需要に関する調査結果が明らかにされています。まず、調査結果のポイントを4点インテージのサイトから引用すると以下の通りです。

[ポイント]
  • 日用消費財全体では、前回増税時ほどの駆け込み需要は起こらず
  • 軽減税率の対象外となるカテゴリーでは、2014年の増税とほぼ同水準で駆け込み需要が起こる
  • 軽減税率対象が多く含まれる食品・飲料では、購入金額の伸びは限定的で、前回比で大幅減
  • 食品・飲料のカテゴリー内でも、対象外のアルコール飲料は2014年とほぼ同じ伸び


ほぼほぼ、これらのポイントに尽きている気がするんですが、2014年の5%から8%に消費税率が引き上げられた時と、今回を対比させたグラフを以下に引用しつつ概観しておきたいと思います。

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見れば明らかなんですが、14年と19年のそれぞれの消費税率引き上げ前後の購入金額前年比です。上から順に、日用消費財、ということで、食品・飲料・日用雑貨品・化粧品・ヘルスケアの合計です。今回も一定の駆け込み需要は見られますが、前回2014年よりもその規模はやや小さかった可能性が示唆されています。ただ、日用消費財のうちでも、2番めのグラフの日用雑貨品、3番目のグラフの化粧品、4番めはのグラフのヘルルスケア、の3品目については、前回と変わらない規模での駆け込み需要が観察されています。インテージでは、軽減税率の適用外である点を指摘しています。逆に、その次の5番目のグラフの食品・飲料については軽減税率適用であり、明確に駆け込み需要が前回から小さくなっています。ただ、最後のアルコール飲料についてはやっぱり、軽減税率の適用外ですので、今回も前回並みの駆け込み需要が生じています。要するに、前回と比較の上では、軽減税率適用品目の駆け込み需要は前回2014年より小さく、適用外の品目は前回並み、ということになります。順当に常識的な結果かという気がします。消費税率引き上げ後の反動減も、そのうちにインテージがリポートすることと私は予想しています。また、取り上げてみたい気がします。

本日10月15日の米国東海岸時刻の午前9時に国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook の見通し編が公表される予定となっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。
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2019年10月14日 (月) 19:50:00

ノーベル経済学賞は貧困削減と開発経済学の3氏に授与!!!

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今年のノーベル経済学賞 The Sveriges Riksbank Prize in Economic Sciences in Memory of Alfred Nobel 2019 が本日公表されています。世界的な貧困削減の貢献により、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者と米国ハーバード大学の研究者計3氏に授賞されています。以下の通りです。お名前にリンクを張ってあります。

nameaffiliationmotivation
Abhijit Banerjee
Born: 21 February 1961, Mumbai, India
Massachusetts Institute of Technology (MIT), Cambridge, MA, USAfor their experimental approach to alleviating global poverty
Esther Duflo
Born: 1972, Paris, France
Massachusetts Institute of Technology (MIT), Cambridge, MA, USAfor their experimental approach to alleviating global poverty
Michael Kremer
Born: 1964
Harvard University, Cambridge, MA, USAfor their experimental approach to alleviating global poverty


もうおおむかしなんですが、バナジー教授とデュフロ教授の共著である『貧乏人の経済学』(みすず書房) を読んだ読書感想文がこのブログに2012年7月13日付けでアップしてあります。「ランダム化比較実験」と訳されている Randomized Controlled Trial (RCT) を途上国で実施し、より有効な貧困削減や経済開発の方策を探ったりしています。もう少し最近では、2017年5月6日付けの読書感想文でデュフロ教授の『貧困と闘う知』(みすず書房)を取り上げています。
開発経済学の研究者としては、ルイス卿やセン教授などがノーベル経済学賞を授賞されていますが、その昔の私の専門分野に近い研究者だけに、とても感激しました。私も役所を定年退職しましたが、もう一度何らかの形でエコノミストに復帰したいとの希望が芽生え始めています。
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2019年10月11日 (金) 23:30:00

IMF「世界経済見通し」分析編を読む!

IMF世銀総会を前に、IMFから「世界経済見通し」分析編がすでに公表されています。章別のタイトルは以下の通りです。

Chapter 2:
Closer Together or Further Apart? Subnational Regional Disparities and Adjustment in Advanced Economies
Chapter 3:
Reigniting Growth in Emerging Market and Low-Income Economies: What Role for Structural Reforms?


第2章では、先進国内における地域間格差について、第3章では、新興国と途上国の成長率の鈍化を、それぞれ着目した分析を行っています。なかなか本文を読み切れないので、IMF blog などから要約を取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは IMF blog のサイトから Slipping behind を引用しています。第2章では、米国の1人あたり実質GDPの平均は、スロバキアの平均値を約90%上回っているが、同時に、米国内で見るとニューヨーク州の1人あたりGDPはミシシッピ州よりも100%高い、と指摘しつつ、同じ国の中であっても地域間で景気動向に大きな差が見られ、特に、1980年代後半以降、特定地域での経済的集中と、それ以外の地域での相対的な停滞を反映して、地域間格差が拡大してきた点に着目しています。すなわち、遅れている地域は、国内の他地域と比べて健康状態が悪く、労働生産性が低く、農業や工業部門における雇用比率が高い、と指摘し、市場の歪みを軽減し、より柔軟で開かれた市場を目指して、しかも強固なセーフティーネットを提供する政策を国レベルで行うような対応を求めています。

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次に、上のグラフは IMF blogのサイト から Slowing pace を引用しています。第3章では、新興市場国と発展途上国は、過去20年にわたって高い経済成長を遂げてきたものの、多くの国々では生活水準が今も先進国に追いつく段階に達しておらず、このままの成長ペースでは、生活水準について、現在の所得ギャップを半分解消するのに、典型的な新興市場国は50年以上、典型的な発展途上国は90年を要することになる、と指摘しつつ、6つの重要分野、すなわち、国内金融、対外資金調達、貿易、労働市場、製品市場、ガバナンスで同時に大規模な改革を行うことにより、平均的な新興市場国・発展途上国の所得が先進国の生活水準に近づくスピードを2倍に加速でき、6年にわたってGDP成長率をを+7%以上に引き上げることができる、と指摘しています。

なお、見通し編は来週早々の10月14日の公表と聞き及んでいますので、また、日を改めて取り上げたいと思います。
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2019年10月10日 (木) 19:20:00

前月比で2か月連続で減少したコア機械受注と国内物価のマイナス幅が1%を超えた企業物価(PPI)!

本日、内閣府から8月の機械受注が、また、日銀から9月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲2.4%減の8753億円を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲1.1%の下落と、6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、今日発表の9月統計まで4か月連続でマイナスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の機械受注、前月比2.4%減 基調判断は「持ち直し」据え置き
内閣府が10日発表した8月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.4%減の8753億円だった。減少は2カ月連続で、市場予想(1.8%減)も下回った。ただ、内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。「3カ月移動平均で見た場合、足元のトレンドは変わってない」(内閣府)という。
8月の受注額は製造業が1.0%減の3802億円だった。減少は2カ月ぶり。造船業で内燃機関や船舶、その他製造業で火水力原動機などの受注が減った。内閣府は「前月が非常に高い伸びだったため、反動減がみられた」と分析している。非製造業は8.0%減の4773億円だった。減少は2カ月連続。建設業で船舶、建設機械、情報サービス業で電子計算機などの受注が減少した。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は14.5%減だった。
一方、前月比での受注総額は11.8%増だった。電力業で大型案件が3件あり、船舶・電力を含む民需の受注額は15.0%増だった。同じく大型案件があった官公需の受注は36.8%増。鉄道などの大型案件が5件あった外需の受注額は21.3%増と大幅に増加した。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
9月の企業物価指数、前年比1.1%低下 16年12月以来の下げ幅
日銀が10日発表した9月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は100.9で前年同月比で1.1%低下した。4カ月連続のマイナスで、2016年12月以来、2年9カ月ぶりの大きな下げ幅だった。前月比でみると横ばいだった。
原油相場の低迷で「石油・石炭製品」や「化学製品」などが低下した。米中貿易摩擦による中国経済の低迷懸念で輸出が落ち込み「スクラップ類」や「非鉄金属」なども低下した。
円ベースでの輸出物価は前年比で6.0%下落し、5カ月連続でマイナスとなった。前月比では0.1%上昇した。輸入物価は前年比9.3%下落し、5カ月連続の低下となった。前月比では0.4%下落した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは355品目、下落したのは291品目だった。上昇と下落の品目差は64と8月の確報値(68品目)から4品目減った。
日銀は「米中貿易摩擦の動向や世界経済の先行きの影響には注意が必要」(調査統計局)としている。


長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、電力と船舶を除くコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比は▲1.0%の減少を見込んでいましたし、上のグラフを見ても判る通り、6か月後方移動平均によるトレンドとしてはまだ上昇を続けていますので、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いたのにも驚きはありません。また、引用した記事にもある通り、私は計算していませんが、3か月後方移動平均でも足元のトレンドは変わってないようですから、なおさらです。もともとが、毎月の変動が大きな統計ですし、2か月連続の前月比マイナスとはいえ、先々月の6月統計でコア機械受注+13.9%増から、7月▲6.6%減、8月▲2.4%減ですから、7月の大幅増の部分がまだお釣りがくるくらいに残っているのも事実ですから、ならして見れば増加基調に変わりないのは、私もその通りだと思います。ただ、上のグラフの下のパネルを見ても。製造業がこのところ弱い動きを続けているのは事実ですし、米中貿易摩擦に起因した世界経済の減速から、さらに受注を低下させる可能性も否定できません。非製造業も、人手不足に伴う合理化・省力化に伴う設備投資需要が期待されますが、景気が後退局面に入れば人手不足がどこまで続くかは不透明です。景気局面に対して敏感になるべく努力したいと思います。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。繰り返しになりますが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価については、とうとう6月統計から前年同月比上昇率がマイナスに転じ、今日発表の9月統計まで4か月連続のマイナスを記録しています。ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前月同月比は▲1.1%の下落を見込んでいましたので、ジャストミートしました。国内物価のうち前年同月比で見て、石油・石炭製品のマイナスが8月▲9.9%の下落から、本日公表の9月統計では▲11.9%に拡大しています。もっとも判りやすいのが、輸入物価の円建てでの石油・石炭・天然ガスであり、8月▲14.7%下落が、9月統計では▲18.9%に拡大しています。なお、契約通貨ベースでは▲15.6%ですので、円高の進行も物価下落を促進しているのがよく判ります。いずれにせよ、10月からの消費税率引き上げで多少なりとも物価上昇圧力は強まるにしても、金融政策よりも国際商品市況における石油価格のほうが我が国物価への影響が大きいというのは、まったく変化ないようです。なお、私が輸入物価のうちの品目別指数を調べた範囲で、昨年2018年中で原油価格の前年同月比上昇率がもっとも高かったのは2018年7月の+60.3%だったんですが、今年2019年の下落幅は、今のところ、2019年9月の▲19.9%がもっとも大きくなっています。価格水準を表す指数のピークは2018年11月の142.5でしたから、この先、もう少し企業物価の下落は続くのかもしれません。
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2019年10月09日 (水) 22:30:00

クラリベイト・アナリティクスによる引用栄誉賞やいかに?

今週月曜日からノーベル賞ウィークが始まり、すでに、医学生理学賞、物理学賞が公表されていますし、今夜は化学賞の公表、明日は2年分の文学賞の公表と目白押しです。その中で、経済学賞が来週月曜に公表される運びなんですが、クラリベイト・アナリティクスによる引用栄誉賞 Clarivate Analytics Citation Awards が9月24日付けで明らかにされています。ノーベル賞との連動性が高いといわれており、というか、自称していますが、経済学分野は以下の3分野の4人となっています。

nameaffiliatecontribution
W. Brian ArthurExternal Professor, Santa Fe Institute, Santa Fe, New Mexico; Fellow, Center for Advanced Study in the Behavioral Sciences, Stanford; and Visiting Researcher, System Sciences Lab, PARC, Palo Alto, California, United States.For research exploring the consequences of increasing returns (or network effects) in economic systems. We recognize Arthur for describing how small events and positive feedback loops act over time to lock an economy into the domination of one player out of several possible. Arthur has also combined the new science of complexity research with economics to show how an economy functions when its players face ill-defined problems and an ever-changing system, and are unable to act with perfect rationality.
Søren JohansenProfessor Emeritus, Department of Economics, University of Copenhagen, Copenhagen, Denmark.For contributions to econometrics and cointegration analysis.
For developing the cointegrated VAR (vector autoregressive) method, which provides a flexible framework to study short- and long-term effects in economic time-series data. The method helps economists avoid confirmation bias in their analyses.
Katarina JuseliusProfessor Emerita, Department of Economics, University of Copenhagen, Copenhagen, Denmark.
Ariel RubinsteinProfessor, School of Economics, Tel Aviv University, Tel Aviv, Israel, and Professor, Department of Economics, New York University, New York, United States.For development of formal theoretical economic models and especially models of bounded rationality, including his model of bargaining, which has had profound influence in Economics.


中断のヨハンセン教授とそのお弟子さんのジューセリウス教授については、時系列変数の共和分に関する検定について、その昔に論文を読んでヨハンセン検定を使った記憶があります。でも、ほかのお二人については、聞いたことがあるような気がしますが、よく判りません。官庁エコノミストを定年退職してはや半年になり、経済とはまだお付き合いがあるものの、経済学との関係は日々に薄くなっていくのかもしれません。さて、来週月曜日の発表ではどうなるんでしょうか?
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2019年10月08日 (火) 19:55:00

消費税率引き上げで撹乱される景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+3.9ポイント上昇の46.7を、先行き判断DIは▲2.8ポイント低下の36.9を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆1577億円の黒字を計上しています。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の街角景気、先行き指数が5年半ぶり低水準
内閣府が8日発表した9月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、2~3カ月後の景気の良しあしを判断する先行き判断指数は36.9と前月から2.8ポイント低下した。3カ月連続で悪化し、前回の消費増税の前月にあたる2014年3月(33.5)以来、5年6カ月ぶりの低水準だった。10月の消費増税を前にした駆け込みによる需要の反動減や増税による買い控えへの懸念が高まった。
指数を構成する家計動向、企業動向、雇用関連のいずれもが低下した。小売業を中心に「増税後の売り上げが期待できない」(南関東の一般小売店)と、消費増税前の駆け込み需要の反動減を懸念する声が出ていた。増税前に高額商品が売れたことから消費者の買い控えを見込む声も出ていた。
一方で、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は46.7と同3.9ポイント上昇と、2カ月連続で改善した。家計動向や企業動向の改善が寄与した。消費増税前の駆け込みが特に家電量販店や百貨店などで見られたとの声があった。冷蔵庫や洗濯機、テレビのほか、化粧品や宝飾品などの比較的高額な商品の売れ行きが伸びたという。
今回の調査では消費税や増税に関するコメント数(現状判断)が548件と前回調査(229件)から大きく増えた。駆け込み需要に対するコメント数も前回(117件)から大きく増え、353件にのぼった。
内閣府はウオッチャーの見方について「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。そのうえで「消費増税の駆け込み需要が一部にみられる」とのコメントを加えた。先行きについては「消費税率引き上げや海外情勢などに対する懸念がみられる」とした。
8月の経常黒字、黒字幅が18.3%拡大 貿易収支の黒字転換で
財務省が8日発表した8月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆1577億円の黒字だった。黒字は62カ月連続。黒字幅は前年同月に比べ18.3%拡大した。貿易収支が黒字転換したことが寄与した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は509億円の黒字(前年同月は2556億円の赤字)だった。中国向け半導体等製造装置の輸出減などで輸出額が6兆808億円と前年同月比8.6%減少した一方、輸入額は原粗油などの輸入減で6兆299億円と12.7%減と大幅に減少した。輸入額の減少が輸出額の減少を上回り、貿易収支は黒字に転換した。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は2兆2681億円の黒字だった。黒字幅は0.7%縮小した。配当金の受け取り減などで、証券投資収益の黒字幅が縮小したことが響いた。直接投資収益は9242億円の黒字と、8月として過去最高だった。
輸送や旅行といった取引の収支を示すサービス収支は233億円の黒字(同218億円の黒字)と、黒字幅がわずかに拡大した。訪日外国人客の消費単価が増えたことなどで旅行収支が1518億円の黒字と、8月として過去最高となったことが寄与した。第2次所得収支は1846億円の赤字(同2267億円の赤字)と赤字幅が縮小した


かなり長くなりました。これらの記事さえしっかり読めば、それはそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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景気ウォッチャーについては、現状判断DIと先行き判断DIが方向性で大きく分かれました。最初にヘッドラインを引用したように、現状判断DIは大きく上昇し、先行き判断DIは低下しています。そして、この傾向を象徴するのが家計部門の小売関連と企業部門です。明らかに、家計部門の小売関連の動きは消費税率引き上げに対応したものであり、9月の時点では駆け込み需要が発生し売り上げ増が実現され現状判断DIが上昇した一方で、先行きについては駆け込み需要の反動減の予想から先行き判断DIが低下しているとしか考えられません。企業部門についても、先行き判断DIの大きな低下の大きな部分は非製造業で発生しています。製造業でも9月の現状判断DIがプラスで先行き判断DIがマイナスとなっているんですが、先行きマイナスが大きいのは非製造業となっています。少なくとも、こういった消費税率引き上げに伴う攪乱的な要因は従来から十分に予想されていたところであり、驚きはありません。消費者マインドを示す指標のうち、消費者態度指数は需要サイドの消費者のマインドを計測している一方で、景気ウォッチャーは供給サイドの事業者のマインドですから、消費者に比較してリスク中立、かつ、将来についてもそれなりに織り込んだ期待形成がなされているんではないかという気がしますが、それでも、現状は駆け込み需要でプラス、先行きは駆け込み需要の反動でマイナス、という結果になるようです。このあたりはもう少し均して見る必要がありそうです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの8月の経常収支は最近ではやや大きな黒字なっており、海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めている点については変わりありません。この8月経常収支の背景について見ると、国際商品市況における石油価格の低下に、我が国への輸入原油額が連動しており、貿易収支が黒字化しているためと考えるべきです。でも、この先、世界経済のいっそうの停滞が予想されるとともに、韓国向け輸出の動向も日韓関係の行方に左右される部分もあって不透明であり、貿易収支が黒字を続けるかどうかは判然としません。
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2019年10月07日 (月) 19:45:00

またまた基調判断が「悪化」に引き下げられた8月の景気動向指数やいかに?

本日、内閣府から8月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲2.0ポイント低下してで91.7を、CI一致指数も▲0.4ポイント上昇して99.3を、それぞれ記録し、基調判断は4か月ぶりに「悪化」に引き下げられました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の景気指数、4カ月ぶり「悪化」 増税前に停滞
内閣府が7日発表した8月の景気動向指数(CI、2015年=100)は、景気の現状を示す一致指数が前月より0.4ポイント低下して99.3となった。海外経済の減速で生産が鈍り、指数を押し下げた。指数の推移から機械的に決まる景気の基調判断は4カ月ぶりに「悪化」となった。10月の消費増税を前にした国内景気の停滞感が改めて浮き彫りになった。
一致指数は生産や消費などにかかわる9項目の統計から算出する。この指数の動きを基準に照らし、「改善」「足踏み」などの基調判断を機械的に示す。「悪化」は大きく5段階のうち最も下の区分で、景気後退の可能性が高いことを示す。
景気指数による判断は米中貿易戦争の影響で生産が年明け以降に急減したことから、3~4月に2カ月連続で「悪化」だった。5月以降は好調な新車販売などが寄与して「下げ止まり」となっていた。ただ貿易戦争の長期化で世界経済の減速が鮮明になり、国内景気も製造業を中心に下押し圧力がかかり続けている。
この間、政府は公式の景気認識を示す月例経済報告で「緩やかな回復」との表現を一貫して使っている。一致指数の動きのほか、企業の景況感など多くの指標を総合的に考慮して判断しているためだ。ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)として重視する雇用情勢も足元でなお堅調だ。
一方で政府は消費増税を挟んでの景気の腰折れは避けたい考え。経済財政諮問会議の民間議員からは、景気下振れリスクが顕在化する「兆し」の時点で経済対策を打つよう求める声も上がっている。増税前からの停滞を引きずる日本経済をどう下支えするか、経済財政運営は難しさを増している。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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繰り返しになりますが、8月のCI一致指数は前月から▲0.3ポイント下降し、3か月後方移動平均でも▲1.03ポイントの下降と、3か月連続の下降となりました。内閣府が示している「『CIによる景気の基調判断』の基準」に従えば、「3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降」かつ「当月の前月差の符号がマイナス」に該当し、景気動向指数の基調判断が「悪化」に引き下げられました。商業販売額(小売業)(前年同月比)と投資財出荷指数(除輸送機械)はプラスに寄与したものの、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、生産指数(鉱工業)、有効求人倍率(除学卒)などがマイナスに寄与しています。引用した記事にもある通り、景気動向指数の基調判断は、今年2019年に入って、米中貿易戦争の影響による世界経済の減速などを受けて生産が減産に転じたことから、3~4月に2か月連続で「悪化」だった後、5月以降は「下げ止まり」に戻っていましたが、10月からの消費税率引き上げを前に駆け込み需要も小さかったことから、8月にはまたまた「悪化」に下方修正されています。まあ、先月統計の公表の段階で、私も8月統計が前月差マイナスなら景気動向指数の基調判断が「悪化」にふたたび引き下げられるのは判り切っていましたし、8月の鉱工業生産指数(IIP)が減産でしたから、連動性の高い景気動向指数CI一致指数が前月差マイナスとなる可能性がとても高いのも見えていましたので、それほど大きなサプライズではありませんが、内閣改造後の臨時国会が始まった冒頭での統計公表ですから、メディア的には囃す可能性が高いと思います。これまた、先月の統計公表時のブログに書きましたが、機械的な景気道央指数に関する基調判断とはいえ、消費税率が引き上げられた直後の景気「悪化」に関するニュースですし、メディアもそれなりに取り上げますし、消費者マインドに対する影響は無視できない可能性があると、私は考えています。

ややボ~ッと生きているうちに、10月に入って、ノーベル賞ウィークを迎えました。来週は経済学賞も発表される予定です。9月25日付けで、いつもの Clarivate Analytics から Citation Awards が明らかにされており、経済学分野でも3名の名前が上がっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。
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2019年10月04日 (金) 23:30:00

9月の米国雇用統計は減速を示し金融政策は利下げを模索中!

日本時間の今夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+136千人増とやや伸びが鈍り物足りない結果に終わったものの、失業率は先月からさらに▲0.2%ポイント低下して3.5%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の8パラを引用すると以下の通りです。

Employers added just 136,000 jobs in September while unemployment hits a new 50-year low
Hiring slowed in September as employers added 136,000 jobs, fueling recession concerns and possibly raising the odds of another Federal Reserve rate cut this month.
The unemployment rate fell from 3.7% to 3.5%, a new 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists expected 145,000 job gains, according to a Bloomberg survey.
Partly offsetting the weak showing: Job gains for July and August were revised up by a total 45,000. July's additions were upgraded from 159,000 to 166,000 and August's from 130,000 168,000.
Average wages, however, fell.
The jobs numbers were released amid mounting concerns that the economy may be heading toward a recession. A manufacturing index this week showed a contraction in activity for a second straight month in September and at the briskest pace in 10 years. Producers cited the toll taken by President Trump's trade war with China and a sluggish global economy.
Of even greater concern is that the much larger service sector is also faltering. An index of activity among services firms revealed expansion last month but at the slowest pace in three years. The service sector makes up 80% of the economy and had been bolstered by steady consumer spending. But U.S. tariffs on Chinese imports are nudging up store prices and dampening retailers' confidence.
Meanwhile, some temporary factors were poised to boost the September jobs numbers. Goldman Sachs expected government hiring for the 2020 census to add 15,000 temporary jobs to the total. And with workers in short supply, the research firm expected businesses to bring on holiday staffers earlier.


やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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ということで、引用した記事にもある通り、ブルームバーグの調査によれば、市場の事前コンセサスは+145千人増でしたので、やや物足りない結果と受け止められています。前月の雇用増+168千人増から9月の雇用統計は減速し、トランプ米国大統領の重視する製造業は就業者数が減少に転じました。米中間の貿易摩擦が米国雇用を下押しし始めており、米連邦準備理事会(FED)が10月末に3会合連続の利下げを決断する可能性が大きいと私は予想しています。9月の就業者数の伸びが市場の事前コンセンサスを下回っただけでなく、直近3か月の増加幅は月平均157千人にとどまり、2018年通年の+223千人から大きく減速しました。2019年に入ってからの1~9月で見ても、雇用増は平均で+161千人にとどまっており、雇用拡大にはブレーキがかかりつつあると私は受け止めています。目先の焦点は、これらの雇用の伸びの鈍化を受けてのFEDの金融政策運営です。FEDは10月29日~30日に米国連邦公開市場委員会(FOMC)を開く予定となっており、7月のFOMCから2会合連続で利下げを決断しているところですが、次のパラで取り上げる物価上昇の減速も相まって、今月10月末のFOMCでも利下げが決定されるものと私は予想しています。それだけの景気下支えが必要な気がします。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用がやや減速を示し、賃金上昇率も労働市場の動向に合わせるように鈍化し、9月は前年同月比で+2.9%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して以来、久し振りに+3%を割り込みました。でも、日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いている一方で、雇用に現れた景気動向から利下げが模索されるのも、左派エコノミストを自称する私から見れば、当然と受け止めています。

なお、遅ればせながら、本日気づいたんですが、国際通貨基金(IMF)のサイトに、秋のIMF世銀総会に合わせて「世界経済見通し」World Economic Outlook についてのアナウンスがあり、Analytical Chapters である第2章と第3章が10月9日の米国東部時間の午前に公表される予定とのことです。また、公表後の適当な時期に取り上げたいと思います。
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2019年10月03日 (木) 19:30:00

ダイヤモンド・オンラインによる「アレルギー性鼻炎薬」処方患者数ランキングやいかに?

私は40代後半で花粉症を発症してから、15年くらいの病歴しかないんですが、花粉症の薬はほとんど市販薬は用いずに処方薬に頼っています。1度だけ医師のおススメに従って薬を切り替えたことがありますが、極めて多種多様な処方薬があるということは知っているものの、実体験としては2種類の処方薬しか飲んだことがありません。ということで、昨日10月2日付けでダイヤモンド・オンラインにて「アレルギー性鼻炎薬」処方患者数ランキングが明らかにされています。ダイヤモンド・オンラインのサイトからテーブルを引用すると以下の通りです。

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私が処方されているのは、上のテーブルのトップ10の2番めにランクインしているザイザルです。何と、1タブレット当たりの単価は最高値となっています。知りませんでした。ただし、トップのアレグラや3番めのアレロックは1日に2タブレット服用する必要があり、服用量も考慮した1日当たりの新発薬ベースの単価ではザイザルの方が安くなっています。もっとも、アレグラやアレロック、あるいは、4番めのアレジオンと違って、ザイザルには後発薬がまだ出ていないので、お安い後発薬と比べると高くなっているのも事実です。私は医師にお任せで薬を処方してもらっているんですが、少なくとも今の段階では価格や効き目や用法用量などに不満はありません。単なる偏見かもしれませんが、一般に、市販薬は処方薬よりも効き目が弱い上に高価であるとのカギカッコ付きの「常識」があるように私は受け止めているところ、効き目はともかく、「処方薬でも市販薬でも、自己負担は大差ない」との試算結果がダイヤモンド・オンライン上で明らかにされています。
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2019年10月02日 (水) 23:00:00

消費者態度指数はどこまで落ちるか、いつまで落ちるか?

本日、内閣府から9月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、8月はまたまた▲1.5ポイント低下して35.6となり、何と、12か月連続で前月を下回りました。統計作成官庁である内閣府では、9月の消費者マインドの基調判断は、「弱まっている」に据え置いています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

9月の消費者態度指数、1.5ポイント低下の35.6 12カ月連続で前月下回る
内閣府が2日発表した9月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.5ポイント低下の35.6だった。前月を下回るのは12カ月連続で、調査方法を変更した2013年以降では最低水準を更新した。統計としては11年6月(35.2)以来、8年3カ月ぶりの低水準となった。
指数を構成する4指標の「暮らし向き」、「収入の増え方」、「雇用環境」、「耐久消費財の買い時判断」はいずれも低下した。なかでも耐久消費財の買い時判断は3.6ポイント低下と大きく下げ、指数は28.1と過去最低を更新した。内閣府は消費者心理の判断を「弱まっている」に8カ月連続で据え置いた。
1年後の物価見通し(2人以上の世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比0.6ポイント上昇の87.6%だった。「低下する」「変わらない」とみる割合はいずれも低下している。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。
調査基準日は9月15日。調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は6754世帯、回答率は80.4%だった。


いつものように、とてもコンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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季節調整済み指数の前月差で見て、消費者態度指数を構成するコンポーネント4項目すべてがマイナスを示し、「耐久消費財の買い時判断」▲3.6ポイント減が特に大きな落ち込みを見せており、これについては消費税率引き上げ直前でしたので仕方ない面もあります。続いて、マイナス幅の大きい順に、「暮らし向き」が▲0.9ポイント減、「収入の増え方」が▲0.8ポイント減、「雇用環境」も▲0.7ポイント減、となっています。繰り返しになりますが、「耐久消費財の買い時判断」は、指数の水準としても4つのコンポーネントのうちで最も低くなっており、30を割り込んでいます。消費税率引き上げ直前とはいえ、デフレ・マインドがまだ払拭されていないことの表れであろうと私は受け止めています。消費者態度指数を構成するコンポーネントすべてがよくないとはいっても、雇用と収入は相対的には大きな悪化を見せていない一方で、耐久消費財への支出意欲が大きく減退しているのは、将来不安から支出が細っているわけで、家計の懐を温める政策が必要かもしれません。それにしても、消費者マインドの悪化はどこまで続くんでしょうか?
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2019年10月01日 (火) 23:30:00

3四半期連続で企業マインドが悪化した日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは6月調査から▲2ポイント低下して+5を示した一方で、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+2.4%の増加と6月調査の結果に比べて、わずかながら上方修正されてます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月日銀短観、大企業・製造業DIはプラス5 3期連続で悪化 非製造業は2期ぶりの悪化
日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス5だった。前回6月調査のプラス7から2ポイント悪化した。悪化は3四半期連続となる。
9月の大企業・製造業DIは2013年6月調査(プラス4)以来6年3カ月ぶりの低い水準となった。米中貿易摩擦などを背景にした世界経済の減速傾向が続き、輸出や生産に勢いはみられない。中国の景気減速懸念などを映した、はん用機械や生産用機械の悪化が目立った。原油安などを背景に石油・石炭製品が大幅に悪化した。一方、受注の底入れや消費増税前の駆け込み需要などで電気機械は改善した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。9月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス2を上回った。回答期間は8月27日~9月30日で、回収基準日は9月10日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス2と悪化する見通し。市場予想の中央値(プラス1)は上回った。世界景気の減速や円高進行への警戒感から、先行きに慎重な姿勢が強かった。
19年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=108円68銭と、6月調査(109円35銭)に比べると円高・ドル安だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス21と前回を2ポイント下回った。業況感の悪化は2四半期ぶり。夏場の天候不順や10連休の反動減などが逆風だった。3カ月先のDIは6ポイント悪化のプラス15だった。宿泊・飲食サービスなどで消費増税後の需要減を懸念する雰囲気が出ている。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス21となり、前回(マイナス21)から横ばいだった。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。
19年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比6.6%増と、市場予想の中央値(6.9%増)を下回った。世界経済の先行き不透明感などから、設備投資の先送りを検討する企業が一部にあったようだ。


やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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確かに、引用した記事が報じる通り、3四半期連続での業況感の悪化なんですが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲5ポイント低下して+2が予想されていましたから、それなりに底堅いと私は受け止めています。大企業非製造業も同様です。業況判断が悪化した要因は、米中貿易摩擦に起因して中国経済の減速をはじめとする世界経済の低迷です。これに加えて、非製造業では消費税率引き上げ前の駆け込み需要があった一方で、ゴールデンウィークの10連休効果の剥落も景況感の押し下げ要因と考えるべきです。ただ、気がかりなのは先行きであり、一部は短観の統計としてのクセもありますが、私には先行きの悪化幅がかなり大きいと見えなくもありません。この不透明感が設備投資の積み増しも思いとどまらせている可能性があり、しかも、海外要因ですから政府の政策対応や個別の企業努力にも限界があり、いっそうの先行き景況感悪化の懸念につながっている気がします。

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続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。ただ、足元で設備と雇用の生産要素については、不足感が和らぐとまでいわないまでも、不足感の拡大は止まりつつあるようですが、大企業製造業の生産・営業用設備判断DIは6月調査の▲1から9月調査では+1の過剰感に転化し、また、中堅・中小企業製造業でも同様に設備不足感がプラスの過剰感に転ずるところまでいかないにしても、やや和らいでいるのも事実です。ただ、±1~2ポイントの変化はどこまで現実的かは議論あると私は考えています。雇用人員判断DIも本日公表の9月調査では6月調査から製造業では+2~3ポイントほど不足感が和らいでいますが、非製造業で押しなべて不足感が拡大していますし、製造業でも不足感が▲10を軽く超えており、まだまだ人手不足は深刻であると考えるべきです。ただ、何度も繰り返していますが、雇用は生産の派生需要であり、景気が後退局面に入ると劇的に労働への需要が減少する可能性は忘れるべきではありません。当たり前ですが、人口減少社会とはいえ、永遠に人手不足が続くわけではありません。

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日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2019年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で▲2.8%減という水準で始まった後、6月調査では+2.3%増に上方修正された後、9月調査でもわずかながら+2.4%に上方修正されています。通常の都市の胆管であれば、3月調査は前年度比マイナスから始まるとしても、6月調査で上方修正され、さらに、9月調査でも上方修正される、という統計としてのクセがあるんですが、設備不足感がやや和らぐ中、さらに、世界経済の不透明感も払拭されず、やや設備投資の伸びが力強さに欠ける気もします。もちろん、基本は、人手不足も視野に入れつつ実行される設備投資なんですが、いずれにせよ、2019年度の設備投資計画は前年度比で増加する見込みながら、それほど力強く上向くという実感はないかもしれません。

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最後に、本日は、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも8月の統計です。失業率は前月と同じ2.2%とバブル経済崩壊直後からほぼ四半世紀ぶりの低い水準にあり、有効求人倍率も前月と同じ1.59倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。いつものグラフだけ、上の通りです。
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2019年09月30日 (月) 19:25:00

基調判断が下方修正された鉱工業生産指数(IIP)と駆け込み需要が始まった商業販売統計!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.2%の減産を示した一方で、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.0%増の12兆540億円、季節調整済み指数も前月比+4.8%増を記録しています。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

8月の鉱工業生産、1.2%低下 判断下方修正、在庫率指数は15年基準で最高
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比1.2%低下の101.5だった。低下は2カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.5%低下)を下回った。米中貿易摩擦を発端とした世界経済の減速を受け、生産も低迷している。
経産省は生産の基調判断を「生産は一進一退」から「生産はこのところ弱含み」に下方修正した。同じ「弱含み」に下方修正した3月以来、5カ月ぶりの下方修正となる。
業種別では、15業種中12業種で低下した。鉄鋼・非鉄金属工業は4.7%減だった。生産設備の定期修繕があったことに加え、台風で生産体制に影響が出た。フラットパネル・ディスプレイ製造装置や半導体製造装置を含む生産用機械工業は、中国向け生産の減少などで2.6%減だった。自動車工業は1.1%減だった。
電子部品・デバイス工業は4.5%増加と、2カ月連続で上昇した。同業種の出荷指数の前年同月比伸び率から在庫指数の前年同月比伸び率を引いた出荷・在庫バランスはプラス10.5とプラスに転じた。同業種は9月の生産予測もプラスとなっており、経産省は「下げ止まりの兆しも見られる」と話した。
出荷指数は1.4%低下の101.1と2カ月ぶりに低下した。「消費増税前の駆け込み需要は特に見られない」(経産省)という。
高水準にある在庫は横ばいの104.5だった。在庫の出荷に対する比率を表す在庫率指数は2.8%上昇の110.5と、2015年基準で最高となった。
製造工業生産予測調査によると、9月は1.9%上昇、10月は0.5%の低下だった。この数値を前提に7~9月期の鉱工業生産指数を計算すると102.5と、4~6月期(103.0)より低い。現状と先行きについて経産省は「生産水準がじりじりと下がる中、在庫も高止まりしており、生産が回復する様子はない」と説明した。
製造工業生産予測は下振れしやすく、経産省が予測誤差を除去した先行きの試算は9月は0.3%上昇だった。
8月の小売販売額、2.0%増 気温上昇でエアコンなど好調
経済産業省が30日発表した8月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比2.0%増の12兆540億円と2カ月ぶりに増加した。天候に恵まれ、夏物関連商品の売り上げが伸びた。経産省は小売業の基調判断を「一進一退の小売業販売」と前月から据え置いた。
業種別で見ると、9業種のうち8業種でプラスとなった。8月は東日本を中心に気温の高い日が続き、エアコンなどの家電を含む「機械器具小売業」が12.1%増、紫外線(UV)対策商品を含む「医薬品・化粧品小売業」が6.3%増と伸びが目立った。夏物衣服も好調で「織物・衣服・身の回り品小売業」は4.9%増だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が0.9%増の1兆5897億円だった。既存店ベースでは0.4%増だった。経産省は「百貨店では、韓国からの訪日客の減少で海外の購買客数が減少しつつあるとの声があった」と明らかにした。
コンビニエンスストアの販売額は1.9%増の1兆950億円。調理品やサラダなど、調理が不要な食品の売り上げが伸びた


これだけの統計を並べると、とても長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、中央値で▲0.5%の減産、レンジの下限でもレンジ▲1.0%でしたので、実績の▲1.2%の減産はかなり大きいと考えるべきです。従って、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を「生産は一進一退」から「生産はこのところ弱含み」に下方修正しています。ただし、先月統計公表時に製造工業生産予測指数に従えば9月の生産は前月比マイナスの減産と予想されていたんですが、本日公表の製造工業生産予測指数では9月は+1.9%の増産、予測誤算を考慮した補正値でも+0.3%の増産と見込まれていますから、消費税率引き上げ以降の消費動向にも大いに左右されるものの、世界経済の低迷とともに一直線に生産も低下する、ということはなさそうです。とはいうものの、世界経済の減速に起因し、特に中国への輸出が生産低迷の原因ですから、少なくとも早期に生産が回復するという見込期は立ちません。加えて、これも引用した記事にある通り、四半期でならしてみて、7~9月期の生産は4~6月期には及ばず、前期比マイナスに帰結しそうな見込みです。10~12月期も消費税率引き上げ直後ですので、決して楽観することはできません。その意味で、年内に景気転換点の議論を始めるのは早いにしても、早晩、エコノミスト業界の景気局面に関する意識が高くなるのは当然です。今年に入ってから、景気動向指数の基調判断との関係で、「景気悪化」が盛んに報じられましたが、メディアも注目度を高めることと私は考えています。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。ということで、小売業販売額を消費と読み替えれば、グラフから単純に、7月は渋かったボーナスや天候不順とともに消費税率引き上げ前に備えて消費を抑制した後、8月には猛暑効果に加えて駆け込み需要が始まった、ということになります。ただ、駆け込み需要の規模はそれほど大きくなさそうに私は見ていますが、ひょっとしたら、9月の小売業売上はもっと増えるのかもしれません。
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2019年09月27日 (金) 20:10:00

9月調査の日銀短観に示される企業マインドの予想やいかに?

来週火曜日10月1日の公表を控えて、シンクタンクから9月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画はもちろん今年度2019年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、足元から先行きの景況感に着目しています。一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
6月調査 (最近)+7
+23
<+2.3>
n.a.
日本総研+2
+25
<+3.4%>
先行き(12月調査)は、全規模・全産業で9月調査対比▲4%ポイントの悪化を予想。米国の保護主義的な通商政策など、海外情勢の先行き不透明感に加え、駆け込み需要の反動による個人消費の落ち込みへの懸念が、業況見通しに反映され、製造業、非製造業ともに悪化する見込み。
大和総研+1
+22
<+3.4%>
先行きの日本経済は、駆け込み需要が発生し得る2019年7-9月期まで成長が続いたのち、①世界経済の減速に伴う輸出低迷に加えて、②在庫調整、③稼働率低下を受けた設備投資の伸び鈍化、④雇用増加ペース鈍化に伴う消費の足踏み、⑤消費増税を背景に、潜在成長率を若干下回る低空飛行が続くとみている。そうした中、9月日銀短観では、製造業と非製造業の業況判断DI(先行き)はいずれも悪化すると見込む。
みずほ総研+1
+21
<+2.7%>
先行きの製造業・業況判断DIは横ばいを予測する。米国の対中制裁第4弾では、スマホやノートPCなどに対する関税引き上げが12月15日に予定されており、これらに係る部材の駆け込み輸出が関税引き上げ前に増加することで、一部の加工業種の景況感が一時的に押し上げられることはあり得る。しかし、米中貿易摩擦やグローバルなIT関連実需の低迷、海外経済の減速は当面継続することが見込まれるなか、全体として製造業の先行きの景況感は改善が見込みづらいだろう。日米交渉についても不確実性が残存している。仮に米国が為替条項の導入について言及してきた場合、急激な円高圧力が生じる可能性も懸念される。
先行きの非製造業については4ポイント悪化を見込む。消費増税による消費の下押し懸念が、小売業や宿泊・飲食サービス業、対個人サービス業などの景況感を押し下げるだろう。各種経済政策が実施されることなどを踏まえると、消費増税による景気への影響は前回増税時と比べて限定的になると考えられるものの、足元の消費マインドが低調であることを受けて、企業の先行きの見方は慎重なものとなると考えられる。実際、2014年増税時は大企業・非製造業の先行き判断(3月調査時)は11ポイントの悪化となっていた(6月調査時の現状判断は5ポイントの悪化)。このほか、幅広い業種について、労働需給のひっ迫に伴う人件費上昇が引き続き重石となることに加え、製造業の不振が非製造業へ波及することへの懸念が下押し要因となるだろう。
ニッセイ基礎研+1
+19
<+2.9%>
先行きの景況感も幅広く悪化が見込まれる。米中通商交渉は一部前向きな動きが見られるものの、依然合意の目処が立っておらず、今後も米国による追加関税発動と中国による報復といったさらなる激化が懸念される。また、英国のEU離脱問題も引き続き混乱が避けられない。事業環境の不透明感が強いことから、製造業の先行きの景況感回復は期待できない。非製造業では、日韓関係悪化の長期化に加え、来月に控える消費増税による影響への懸念から、先行きの景況感が大幅に悪化するだろう。今回の消費増税の悪影響は従来よりも限定的になると予想されるが、過去の消費増税後に起きた大幅な景気悪化がトラウマになっていると考えられる。
第一生命経済研+3
+19
<大企業製造業+13.0%>
10月の増税を前にして、消費産業は先行きをより慎重にみるバイアスが強まり、それが先行きDIにどのように表れるかを注目したい。細かいところでは、飲食サービスはデリバリーによって軽減税率の適用を受ける。キャッシュレス決済による割引は、中小非製造業の反動減対策として実際にどのくらいまで期待されているのか。中小企業の宿泊・飲食サービス、小売・卸売、個人サービスの先行きDIが、それほど大きな反動減を予想していないことがわかれば、そのことは先行きの消費の自信につながる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+4
+24
<大企業全産業+7.7%>
10月1日に公表される日銀短観(2019年9月調査)の業況判断DI(最近)は、大企業製造業では、前回調査(2019年6月調査)から3ポイント悪化の4と、3四半期連続で悪化すると予測する。海外経済減速に伴う外需の弱さと円高が下押し要因となったとみられる。先行きについては、2ポイント悪化の2と、海外経済の先行き不透明感と消費増税後の一時的な内需の弱さを警戒し、慎重な見方が示されよう。
三菱総研+4
+21
<+3.0%>
先行きの 業況判断DI(大企業)は、製造業は▲1%ポイント と、業況が悪化し、「悪い」超を予測する。非製造業も+16%ポイントと、業況悪化を予測する。消費税増税による内需の縮小が予想されるほか、米中貿易摩擦の一段の激化、中国をはじめとする海外経済の減速、金融市場のリスク回避姿勢の強まりによる円高や株安などには警戒が必要な局面であり、企業マインドの重しとなるであろう。


ということで、押しなべて、業況判断DIの低下が予想されています。ただ、大企業非製造業で6月時点での業況判断DIから、わずかながら、改善を示すと予想しているシンクタンクも2機関あり、日本総研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングなんですが、いずれも消費税率引き上げ直前の駆け込み需要を要因として上げており、決してサステイナブルではありません。というか、消費税率引き上げ後の反動減が大きくなりそうで、多くのシンクタンクが先行きの業況判断DIについては、大企業製造業よりも大企業非製造業の方が落ち込み幅が大きいと予想しています。製造業の景況感悪化は、もちろん、米中貿易摩擦に起因する世界経済の減速です。より詳細に、日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIの先行きに着目すると、大和総研がゼロを予想し、三菱総研も▲1を予想しているものの、他のシンクタンクはすべてギリギリながらプラスを予想しています。私は次の12月調査では大企業製造業の業況判断DIがマイナスになる可能性が高いと予想しており、9月調査の先行きとともに注目しています。最後に、設備投資についても世界経済の先行き不透明感がマイナス要因となりますが、人手不足を背景とする合理化・省力化投資が下支えすることから、非製造業を中心に前年度比プラスが予想されています。
下は、業況判断DI予想のグラフを日本総研のリポートから引用しています。

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2019年09月26日 (木) 22:50:00

アジア開銀による経済見通し改定 Asian Development Outlook 2019 Update やいかに?

昨日9月25日に、アジア開発銀行(ADB)から「アジア開発経済見通し2019改定」Asian Development Outlook 2019 Update が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。アジアの新興国・途上国の経済成長率は、2018年実績の+5.9%から、今年2019年+5.4%、来年2020年+5.5%に減速すると見込まれています。これは、今年春の「アジア開発経済見通し」の2019年+5.7%、2020年+5.6%から下方修正となっています。このため、リポートでは、アジアの開発途上国では引き続き+5%を超える力強い経済成長が続いているものの、世界的な貿易と投資の減速により、成長率見通しに陰りが見られ、アジア・太平洋地域経済のリスクが高まっている、と指摘しています。

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上のグラフは、リポート p.3 から Figure 1.0.1 GDP growth outlook in developing Asia を引用しています。画像をクリックすると、リポート冒頭 Summary p.xviii の GDP growth rate and inflation のページだけを抽出したpdfファイルが別タブで読めると思います。250ページ余りのボリュームですので、読み応えがありそうです。
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2019年09月25日 (水) 19:20:00

企業向けサービス物価指数(SPPI)は6年余りに渡って前年同月比プラスが続く!

本日、日銀から8月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.6%を示しています。前月の+0.6%と同じ上昇率となっていて、引き続きプラスの伸びを続けています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率もヘッドラインと同じ+0.6%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の企業向けサービス価格、前年比0.6%上昇 74カ月連続のプラス
日銀が25日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は102.9で、前年同月比で0.6%上昇した。前年同月比での上昇は2013年7月以来74カ月連続。土木建築業や警備サービスを中心に人手不足による人件費の高騰が指数上昇の主因となった。
前月比では横ばいだった。人手不足による人件費が高騰する一方で原油価格の低迷に伴う貨物輸送価格の下落などが影響した。日銀は「値上げに一服感があり伸び率は縮小しているが、指数が堅調に推移しているという基調は変わっていない」とみている。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の146品目のうち価格(消費税の影響を含む)が前年比で上昇したのは87品目、下落は31品目、上昇から下落の品目を引いた差は56品目と、7月(確報値)から6品目増加した。


いつものように、コンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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先月統計と大きな違いはないんですが、前年同月比で見て、土木建築サービスなどの諸サービスが上昇率を高めた一方で、情報通信、運輸・郵便、広告、不動産などが伸び率を低下させています。運輸関連では国際商品市況における石油価格の下落の影響が出ているほか、土木建築サービスが典型的なんですが、引き続き、人手不足によるコストアップの影響も残っています。ただ、一般的な景気状況が従来ほど強い拡張局面でなくなったこともあり、引用した記事にもあるように、値上げに一服感が出ているようです。景気動向次第という気もしますが、引き続き、SPPIの上昇基調には大きな変化はないものと私は考えています。ただ、雇用統計などでも繰り返し指摘していますが、雇用はあくまで生産の派生需要であり、人手不足が景気を牽引しているわけではありません。好景気が人手不足の背景にあるわけですので、景気が悪化すれば雇用が大きく悪化して人手不足から一気に人員過剰に転化する可能性も、決して忘れるべきではありません。
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2019年09月24日 (火) 19:30:00

リクルートジョブズによる8月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

来週火曜日10月1日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる8月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の8月度平均時給は前年同月より+2.3%、+24円増加の1,063円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+34円、増減率+3.2%)、「フード系」(+26円、+2.6%)、「製造・物流・清掃系」(+25円、+2.4%)、「販売・サービス系」(+23円、+2.2%)など、全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、今年2019年3~5月はマイナスを示していたんですが、6月統計では前年同月より+0.2%、+3円増加の1,641円となった後、7月統計と最新の8月統計では。ふたたびマイナスとなり、7月▲10円減、▲0.6%減、8月も▲7円減、▲0.4%減を記録しました。職種別では、「IT・技術系」(前年同月比増減額+64円、増減率+3.2%)、「クリエイティブ系」(+34円、+2.0%)、「オフィスワーク系」(+23円、+1.5%)、「医療介護・教育系」(+3円、+0.2%)の4職種がプラスなんですが、「営業・販売・サービス系」(▲9円減、▲0.6%減)がマイナスとなっています。また、地域別でも、関東がマイナスとなった一方で、東海・関西はプラスを記録しています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトでは人手不足の影響がまだ強い一方で、派遣スタッフ賃金は伸びが鈍化しつつある、と私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用にはいっそうの注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。
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2019年09月23日 (月) 20:30:00

日本の社長は何階に住んでいるか?

先週9月18日の木曜日に、東京商工リサーチから「日本の社長 50万人が住む『マンションの階数』調査」の結果が明らかにされています。東京商工リサーチのサイトから引用した下のテーブルの通りで、マンション等に住む社長宅の平均階数は5.35階と意外と高層ではない、という結果が得られています。都道府県別では、大阪府が6.82階で堂々のトップ、続いて、東京都の6.12階となり、逆に、低階数は、内陸では長野県3.16階、山梨県3.18階、栃木県3.21階など、タワーマンションが少ない分、高層階に住む機会が少ない、と分析しています。ただ、社長さんのお住まいは一戸建てが多いんではないでしょうか?

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2019年09月20日 (金) 22:50:00

消費者物価(CPI)上昇率はなぜ縮小したのか?

本日、総務省統計局から8月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し縮小して+0.5%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月全国消費者物価、0.5%上昇 2年1カ月ぶり低調
総務省が20日発表した8月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.7と前年同月比0.5%上昇した。プラスは32カ月連続だが、2017年7月(0.5%上昇)以来、2年1カ月ぶりの低い伸びとなった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.5%の上昇だった。7月は0.6%上昇だった。
原材料価格の上昇傾向を受け、菓子類など生鮮食品を除く食料品の上昇が目立ち、全体を押し上げた。人件費の高騰を値上げに転嫁する動きが目立つ外食も、上昇に寄与した。電気代も高止まりが続いているほか、新商品が発売された電気掃除機や冷蔵庫などの家庭用耐久財も上昇が目立った。総務省は「増税前の駆け込み需要が出ているかはわからない」との見解を示した。
半面、大手各社に値下げ圧力が強まっている携帯電話の通信料が物価を押し下げたほか、ガソリン価格の下落も影響した。総務省は、足元で不安定になっている原油価格の動向について「物価に原油価格の動きが反映されるまでにはタイムラグがある。中東情勢を見て動向を短期的に判断することは難しい」とした。
生鮮食品を除く総合では298品目が上昇した。下落は164品目、横ばいは61品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.7と前年同月比0.6%上昇した。生鮮食品を含む総合は101.8と0.3%上昇した。トマトやキュウリなど生鮮野菜の値下がりが物価上昇を抑えた。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入れずにコア財に含めています。政府の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.4~+0.6%のレンジで中心値が+0.5%でしたので、ジャストミートしたといえます。上のグラフから明らかなように、紺色の折れ線で示したコアCPI上昇率、すなわち、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は今年2019年上半期の34月の前年同月比上昇率+0.9%をピークに、ジワジワと上昇幅を縮小させ、8月には+0.5%に達したわけですが、食品とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率、上のグラフで赤い折れ線については、同じように4月の+0.4%が高いといえば高いんですが、5月から直近統計が利用可能な8月まで+0.3%の上昇が続いており、コアCPIの▲0.3%ポイントの縮小幅に比較して、わずかに▲0.1%ポイントの縮小と、少し動きに違いがあります。要するに、8月統計までのコアCPI上昇率の縮小はエネルギー価格の影響が大きい、ということになります。ですから、先月7月統計ではエネルギーの前年同月比上昇率は+0.6%とギリギリながらプラスだったんですが、本日公表の8月統計では▲0.3%の下落と、とうとうマイナスに転じてしまいました。前年同月比で見て、ガソリンの▲4.8%下落、灯油の▲1.3%下落が目につきます。ただ、エネルギー価格の動向については、国際商品市況における石油価格の影響が大きく、先日のサウジアラビアの石油施設に対する不可解な攻撃などを見るにつけ、私ごときエコノミストにはまったく予想もつきません。ただ、明らかなのは、10月から消費税率が引き上げられますので、消費税を含む物価上昇率は確実に上昇幅を拡大することになります。なお、日銀が7月31日に公表した「経済・物価情勢の展望 (展望レポート)」では、p.4 の脚注6で、「税率引き上げが軽減税率適用品目以外の課税品目にフル転嫁されると仮定して機械的に計算すると、2019年10月以降の消費者物価前年比(除く生鮮食品)は+1.0%ポイント押し上げられる」との試算を示しています。同時に同じ脚注で、教育無償化政策により2019年度▲0.3%ポイント、2019年度▲0.4%ポイント、それぞれ、押し下げられると見込んでいることも明らかにしています。

従来から、金融政策よりも石油価格に左右されがちな我が国物価動向なんですが、今週になって米国連邦準備理事会(FED)は米国連邦公開市場委員会(FOMC)にて、フェデラルファンド金利の引き下げを決めた一方で、日銀金融政策決定会合では金融政策は基本的に現状維持となっています。消費税率の引き上げを目前に、金融政策は動きようがなかった気もしますが、10月以降の景気も見極めつつ、インフレ目標の達成に必要な金融政策が望まれます。
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2019年09月19日 (木) 19:45:00

日本政策投資銀行などによる「わが国スポーツ産業の経済規模推計」の結果やいかに?

一昨日9月17日に日本政策投資銀行から「わが国スポーツ産業の経済規模推計」の結果が明らかにされています。日本政策投資銀行のほか、日本経済研究所と同志社大学も推計に加わっており、スポーツ庁と経済産業省が監修しているようです。まず、日本政策投資銀行のサイトにアップされているリポート p.9 から 表2-1. スポーツ生産額とスポーツGDP 2014~2016年 (単位:億円) のテーブルを引用すると以下の通りです。

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ということで、上のテーブルを見れば一目瞭然ながら、日本版スポーツサテライトアカウントの推計として、スポーツGDPは2016年で7.6兆円に上り、前年から+1.9%の伸びを示し、我が国GDP総額の1.4%を占める、との結果となっています。引用はしないものの、上のテーブルのある p.9 の前のページにあるリポートの p.7 にやや詳しい推計フローチャートが示されていて、基本的に、SNA産業連関表におけるコモ6桁くらいの細品目別のシェアを用いて推計されているようですので、あくまでSNA統計の内数であって、統計に漏れが生じているわけではないようです。
このGDP総額に占める2%弱のスポーツGDP比率がどれくらいの大きさなのかの実感がわかないんですが、そこは配慮されていて、リポートの p.17 から欧州との国際比較が示されています。詳細なテーブルの引用はしませんが、日本のスポーツGDPとスポーツ産業雇用者数を欧州28か国と比較すると、まず、日本のスポーツGDPは額としてドイツに次いで欧州28か国中2番目の大きさになり、また、スポーツ産業雇用者数も、ドイツ・英国に次いで3番目の規模となります。他方で、スポーツGDPのGDP総額に占める比率、また、スポーツ産業雇用者数が国内総雇用者数に占める比率を見ると、日本のスポーツGDPは欧州28か国中でスウェーデンとイタリアの間の14~15番目と、ほぼほぼ欧州28か国の中間に位置し、日本のスポーツ産業雇用者数はラトビアとポルトガルの間の25~26番目に位置することになります。欧州との比較ながら、より少ない雇用者でより大きいGDPを産出しているわkですから、我が国スポーツ産業雇用者の生産性は欧州と比較してかなり高い、という結論が得られそうです。従来から、私は日本のサービス産業の生産性が低いとの通説は誤っており、かなりの程度に計測ミスがある可能性を指摘して来ましたが、ごく狭いカテゴリーながら、スポーツ産業雇用者では私の主張が当てはまるような気がします。

最後に、生産性も含めて、私がやや不安に感じているのは、スポーツ産業の定義にどこまで公営ギャンブルが含まれているかです。具体的には競馬や競輪などです。まさか、公営ギャンブルですらないパチンコは入っていないことと思いますが、スポーツなのか、ギャンブルなのか、リポートを読む限りでは、私には判然としない部分が残りました。ただ、「公営競技」に関する言及は確かにありますから、私の読解力が不足しているような気もします。
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2019年09月18日 (水) 19:25:00

2か月連続で貿易赤字を計上した8月貿易統計の先行きやいかに?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲8.2%減の6兆1410億円、輸入額も▲12.0%減の6兆2773億円、差引き貿易収支は▲1363億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易収支、2カ月連続赤字 中国向け輸出12%減
財務省が18日発表した8月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1363億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。中国向けの半導体等製造装置や、米国向けの自動車輸出が落ち込んだ。
全体の輸出額は前年同月比8.2%減の6兆1410億円だった。減少は9カ月連続。輸入額は12%減の6兆2773億円と、4カ月連続の減少となった。サウジアラビアからの原粗油などの輸入が減った。
中国向けの輸出額は12.1%減の1兆2001億円と、6カ月連続で減少した。液晶デバイス製造用の半導体等製造装置の輸出が落ち込んだ。財務省は「中国経済が緩やかに減速している影響を受けた可能性がある」と分析した。輸入額は8.5%減の1兆4168億円と、2カ月ぶりの減少。携帯電話などの輸入が減った。
対韓国の輸出額は9.4%減の4226億円と、10カ月連続の減少。食料品が前年同月比40.6%減の大幅減となった。日韓関係の悪化を受け、日本製品の不買運動の影響が表れた可能性がある。
対米国の輸出額は4.4%減の1兆1904億円と11カ月ぶりに減少した。自動車や自動車部分品の輸出が減少した。財務省は「お盆期間に日本の工場が休みとなった影響など、季節的な要因が出た可能性がある」とみる。輸入額は9.2%減の7184億円。差し引きの貿易収支は4720億円の黒字だった。対欧州連合(EU)の貿易収支は788億円の赤字だった。
8月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=107円21銭。前年同月に比べ3.7%の円高・ドル安に振れた。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は▲3654億円の赤字とのことでしたので、実績はここまで大きな赤字とはなりませんでした。もちろん、米中間の貿易摩擦が世界経済に影を落としており、我が国輸出品への需要が減退しているとともに、引用した記事の最後のパラにあるように、為替が円高に振れていることから、貿易収支には黒字幅縮小ないし赤字拡大の効果をもたらします。加えて、何とも測り難いのが原油価格の動向です。サウジアラビアの石油設備へのまったく不可解な攻撃を受けて、ドバイ原油価格は急騰しました。もともと、私のようなエコノミストには国際商品市況における石油価格の動向は予測しがたいものがありましたが、サウジアラビア石油施設への攻撃なんてエコノミストのスコープ外もいいところです。少なくとも、攻撃なかりせばのケースに比べて石油価格が上昇することは明らかですから、我が国貿易赤字の拡大要因となります。加えて、8~9月は10月からの消費税率引き上げの駆け込み需要があるでしょうから、いくぶんなりとも輸入が増加することが予想されますから、これも貿易赤字拡大要因と考えるべきです。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、我が国輸出の動向は、先進国経済及びいくぶんなりとも中国経済の動向に依存しているわけですが、少なくとも、そろそろ中国経済は底入れの兆しが見え、我が国の輸出も底ばい模様ながら、私がいくつか拝見したシンクタンクなどのリポートの中で、そろそろ底入れが近いと示唆するものも見受けました。

繰り返しになりますが、まったく予想もしなかったサウジアラビアの石油施設への攻撃と前々から予定されていた消費税率引き上げのどちらも、9月の貿易赤字を拡大させる方向に働く可能性が高く、我が国輸出の需要要因である世界経済や輸出入品の価格に影響を与える為替とともに今後の動向が注目されます。
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2019年09月17日 (火) 22:40:00

インテージによる「生活者を知る: 消費税増税の駆け込み需要は始まっていた」の調査結果やいかに?

ネット調査大手のインテージから、先週金曜日の9月13日付けで「生活者を知る: 消費税増税の駆け込み需要は始まっていた」の調査結果が明らかにされています。今回の消費税率引き上げに際しての駆け込み需要は、私の実感としても前回と比べてかなり小さいと感じていたんですが、インテージのSCI(全国消費者パネル調査)による調査結果では、一部のカテゴリーながら8月中旬には駆け込み需要が始まっていたことが明らかになっています。まず、インテージのサイトから日用消費財・雑貨品の購買金額前年比(19年vs.14年)のグラフを引用して結合させると以下の通りです。

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実は、たいへんお世話になっているニッセイ基礎研エコノミストの斎藤太郎さんが、昨日のNHKニュースで、「今回2019年の消費税率の引き上げに際しての駆け込み需要は前回の2014年より小さい。なぜなら、税率の引き上げ幅が小さい、食料・飲料などに軽減税率が適用される、自動車に対する自動車税の引き下げが同時に実施される、中小業者のキャッシュレス決済に対するポイント還元が実施される、などの理由によるわけで、ただし、2014年時点に比べて消費の基調がそもそも弱いので、税率引き上げ後の消費の弱さが長引く可能性があり、消費動向には注意が必要」といった趣旨の発言をされていました。私はまったくその通りだと思いましたが、インテージのパネルでは、やっぱり、というか、何というか、静かに日用品の駆け込み需要は始まっているようです。
中でも、上のグラフの一番下のパネルはお酒の駆け込み需要なんですが、実は、私もワインだけは少し買い込んでおこうかという気がしています。私はナイター観戦でビール、というか、正しくは発泡酒だか、第3のビールだか知りませんが、ビール系飲料をナイター観戦で飲む場合が多く、でも、今年の阪神タイガースの成績からして、もう日本シリーズはもちろん、クライマックス・シリーズにも出場のチャンスもないでしょうから、この季節にビールは必要なく、ワインを買い込む予定です。3年余りに渡って大使館勤務をしたチリのワインを長らく愛飲していたんですが、エコノミストらしくEPAで価格競争力を画期的に高めた欧州ワインにシフトしているところ、報道によれば、米国との貿易交渉で米国ワインの関税も画期的に引き下げられるようで、そのうちに、ナパ・バレーのカリフォルニア・ワインに切り替えるかもしれないものの、取りあえずは、スペイン産のワインを買い込もうと予定しています。

まったくどうでもいいことで、本質的な経済のお話とはなんお関係もないんですが、NHKニュースで拝見した斎藤さんがひどくやつれているように見かけて、びっくりしてしまいました。私よりラクに10歳くらいは年下のハズなんですが、そろそろ年齢的にくたびれる年ごろなのかもしれません。新しいチーフエコノミストにこき使われているのかもしれません。
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2019年09月13日 (金) 19:20:00

人手不足の解消で活用される人材やいかに?

人手不足が広がる中で、昨日9月12日に帝国データバンクから「人手不足の解消に向けた企業の意識調査」の結果が明らかにされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のサマリーを5点引用数rと以下の通りです。

調査結果
  1. 従業員が「不足」している企業が半数超にのぼるなか、不足している部門・役割は、「生産現場に携わる従業員」(57.2%)が最も高く、「営業部門の従業員」(47.7%)や「高度な技術を持つ従業員」(37.0%)も高い
  2. 人手不足による影響は、「需要増加への対応が困難」が50.5%で半数を超えトップとなり、五輪関連などによる旺盛な需要が続く『建設』や、荷動きが活発な『運輸・倉庫』などで高水準となった。次いで、「時間外労働の増加」(36.6%)、「新事業・新分野への展開が困難」(31.7%)などが続いた
  3. 企業において多様な人材を活用することが注目されているなか、今後最も積極的に活用したい人材は「シニア」が29.2%で最も高く、「女性」も27.9%と近い水準で続き、「外国人」は13.7%、「障害者」は1.1%となった
  4. 人手不足の解消に向けての取り組みでは、「賃金水準の引き上げ」が38.1%でトップとなった。特に「中小企業」で数値が高く、人材の確保や定着に向けた方法として賃上げが重要視されている様子がうかがえる。次いで、「職場内コミュニケーションの活性化」(36.7%)、「残業などの時間外労働の削減」(35.0%)が続いた
  5. 企業が望む人手不足の解消に向けて社会全体が取り組むべきことは、ハローワークなどの「職業紹介機能の強化・充実」が32.6%でトップとなった。他方、「職種別採用の拡大」は9.9%、「オファー型採用の拡大」は4.8%となり、採用方法の多様化は1ケタ台にとどまった


調査結果の概要というよりも、そのままというカンジのまとまりのないサマリーなんですが、私なりの着目点は下のグラフの通り、活用したい人材です。結局、お上の政府のいうように、シニアと女性なんですかね。もっと若い世代を積極的に雇おうという気はないんでしょうか。また、上のサマリーの4点目で、人手不足の解消に向けての取り組みでは、「賃金水準の引き上げ」がトップに上げられていますが、ホントなんでしょうか。

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現時点では、人手不足で雇用の不安が小さくなっているような気もしますが、あくまで、雇用は生産の派生需要であり、政府の経済政策運営よろしく、また、ほかの要因もあって、現在は景気がいいので雇用は堅調ですが、世界経済の減速などから国内景気が後退局面に入れば、人手不足は急速に雇用過剰に転ずる可能性もあります。人手不足が景気を牽引しているわけではありません。その逆であって、景気が悪化すれば雇用の過剰感が出て失業率も上昇する恐れが十分あります。それが、資本主義的な景気循環というものです。マルクスやケインズが景気後退局面における悲惨な状態を問題視した理由がここにあります。
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2019年09月12日 (木) 19:40:00

緩やかな増加基調の機械受注と大きく下落した企業物価(PPI)!!!

本日、内閣府から7月の機械受注が、また、日銀から8月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲6.6%減の8,969億円を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.9%の下落と、6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、今日発表の8月統計まで3か月連続でマイナスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の機械受注、前月比6.6%減 前月の大型受注の反動減
内閣府が12日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比6.6%減の8969億円だった。減少は2カ月ぶり。市場予想の中央値(9.9%減)は上回った。内閣府は「6月に非製造業の運輸業・郵便業で鉄道車両の大型受注案件があり、7月はその反動で減少した」と分析した。
基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。「大型案件を除いたベースでみると、動きに変化はないと判断した」(内閣府)という。
7月の受注額は製造業が5.4%増の3841億円だった。増加は3カ月ぶり。その他製造業で「火水力原動機」や「その他産業機械」の受注が増えた。非製造業は15.6%減の5189億円だった。運輸業・郵便業で大型受注案件がなくなったことに加え、電力業なども受注が減少し、2カ月ぶりの減少となった。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は0.3%増だった。前月比でみた受注総額は0.1%増、官公需の受注は11%増、外需の受注額は6%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
8月の企業物価指数、前年比0.9%下落 16年12月以来の下落幅
日銀が12日発表した8月の企業物価指数(2015年平均=100)は100.9と、前年同月比で0.9%下落した。下落は3カ月連続で、減少幅は2016年12月(1.2%下落)以来の大きさだった。米中貿易問題など海外情勢の不透明感を映した、原油や銅などの相場下落が影響した。
前月比では0.3%下落した。ガソリンなどの「石油・石炭製品」や銅地金など「非鉄金属」、エチレンなどの「化学製品」などが低下した。
円ベースでの輸出物価は前年比で5.7%下落と、4カ月連続のマイナスだった。前月比では1.2%下落した。輸入物価は前年比8.3%下落し、4カ月連続のマイナスだった。前月比では0.5%下落した。
日銀の調査統計局は「米中対立の懸念の高まりから、主に石油や銅などの市況性の高い製品が影響を受けた」と説明した。先行きについては「世界的な需要減少や物価の下落要因にならないか注視していく」とした。


長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、電力と船舶を除くコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比は▲9.9%の減少を見込んでいましたので、レンジ内でもマイナス幅が小さい方ですので、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いたのにも驚きはありません。特に、引用した記事にもある通り、先月統計の非製造業の運輸業・郵便業で鉄道車両の大型受注案件の反動ということであればなおさらです。先月公表の6月統計で前月比+13.9%増の後の▲6.6%減ですから、ならしてみれば増加基調に変化ないともいえます。もっとも、7月統計でも建設業が前月比+113.6%の増加を示しており、何らかの大型案件が特殊要因となっている可能性が想像されますが、私の方に情報はありません。増加業種別には、製造業でやや弱い動きが続いているものの、非製造業では人で不足を背景に合理化や省力化に向けた設備投資が見込まれることから、全体として先行きも横ばいないし緩やかな増加を見込んでます。ただ、コア機械受注の外数ながら先行指標と考えられている外需が7月には前月比で▲6.0%減を記録しており、米中間の貿易摩擦の激化や長期化とともに今後の懸念が残ります。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。繰り返しになりますが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価については、とうとう6月統計から前年同月比上昇率がマイナスに転じ、今日発表の8月統計まで3か月連続のマイナスを記録しています。ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前月同月比は▲0.8%の下落を見込んでいましたので、レンジ内の想定された動きということになります。季節調整していないながら、前月比▲0.3%の下落の大きな部分を占めるのはエネルギー関連項目であり、寄与度の大きい順に、石油・石炭製品▲0.13%、電力・都市ガス・水道▲0.04%で半分近くが説明できてしまいます。また、輸入物価のうちの石油・石炭・天然ガスも前年同月比で▲5.6%と大きな下落が続いており、国債商品市況の石油価格の下落の影響が見て取れます。加えて、輸出物価でも、化学製品が前年同月比で▲14.3%の下落、金属・同製品が▲6.8%の下落など、米中貿易摩擦とも関連して中国経済の手減速の影響と見られる品目での物価下落が見られます。

国内景気は明らかに景気循環の後半局面に入っており、10月から諸費税率が引き上げられることもあって、エコノミストの中にはやや神経質に指標を見ている向きもあるかもしれません。
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2019年09月11日 (水) 19:30:00

足元7-9月期のBSIがプラスを示した法人企業景気予測調査は駆け込み需要によるものか?

本日、財務省から7~9月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は1~3月期▲1.7、4~6月期▲3.7と、2四半期連続でマイナスを付けた後、足元の7~9月期には+1.1とプラスに転じ、先行きの10~12月期▲0.4とふたたびマイナスに転じるものの、来年2020年1~3月期には+1.7と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感3期ぶりプラス 7-9月、家電など好調
の景況判断指数(BSI)はプラス1.1だった。プラスは3四半期ぶり。家電販売などが好調な非製造業がプラスに回復。製造業もスマートフォン関連需要の底打ち感などからマイナス幅が縮小した。10月の消費増税を前に景況感の悪化にいったん歯止めがかかった形だが、10▲12月期は再びマイナスの見通しで先行きは不透明だ。
BSIは前四半期と比べた景況判断で「上昇」と答えた企業の割合から「下降」と答えた企業の割合を引いた値。前回4▲6月期はマイナス3.7だった。今回の調査時点は8月15日。
大企業のうち製造業はマイナス0.2で4▲6月期のマイナス10.4からマイナス幅が縮んだ。米中貿易摩擦の影響で中国向けの非鉄金属や自動車などは依然さえなかったが、情報通信機器や電気機器がそれぞれ2桁のマイナスだったのが大幅に上向いてプラスになった。超高速の次世代無線規格「5G」や車載向け電子部品の需要が堅調といった声があった。
非製造業はクラウド化などのシステム需要が強いほか、テレビや白物家電の販売が好調でプラス1.8と、2四半期ぶりのプラス。消費増税前の駆け込みについて調査担当者は「白物家電は好調という声が聞かれるが、前回のような大きな需要はみられない」との見方を示した。
大企業全産業で10▲12月期はマイナス0.4と再びマイナスに転じる見込みだ。2020年1▲3月期はプラス1.7の見通しだが、増税後の景況感は不透明だ。


いつもながら、簡潔かつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元の7~9月期に+1.1を示しましたが、大企業の産業別内訳では、引用した記事にもある通り、製造業が前期4~6月期の▲10.4という大きなマイナスに対して、マイナス幅は大きく縮小したものの、7~9月期も依然としてマイナスながら、ほぼ横ばいの▲0.2を記録した一方で、非製造業は前期4~6月期ほぼ横ばいの▲0.4から7~9月期は+1.8とプラスに転じています。となっています。大企業製造業のうち、特にマイナス寄与の大きかった産業を詳しく見ると、非鉄金属製造業と自動車・同附属品製造業が上げられており、逆に、情報通信機械器具製造業と電気機械器具製造業がプラス寄与に転じています。やや複雑な様相ながら、米中間の貿易摩擦の深刻化による先行き不透明感が企業マインドに影を落としていることは間違いありません。他方、大企業非製造業でマイナス寄与が大きいのは卸売業と金融業、保険業が挙げられており、情報通信業と小売業はプラス寄与が大きくなっています。また、先行きの景況感について大企業全産業について見ると、10~12月期は消費税率引き上げが実施されますので、▲0.4と少し落ちはするものの、来年2020年1~3月期には+1.7に戻ると見込まれています。先日、短期経済見通しを取り上げた際にも指摘しましたが、マイナス成長は消費税率引き上げの10~12月期の1四半期で済み、来年2020年1~3月期にはプラス成長に回帰するとの見方がかなり多かったわけですから、それと整合的な景気予想と私は受け止めています。BSI以外では設備投資計画(ソフトウェア投資額を含み、土地購入額を除くベース)だけ見ておくと、全規模全産業で前回調査の2019年度計画+9.0%増から、今回調査では+8.3%増にやや下方修正されました。でも、大きな基調的変化ではないものと私は考えています。製造業と非製造業の間には設備投資計画に大きな差はありません。

企業マインドについては、9月調査の日銀短観が10月1日に公表の予定となっています。米中間の貿易摩擦や世界経済の減速は企業マインドにどのように影響するんでしょうか。また、消費税率の引き上げの影響はどうなんでしょうか。注目したいと思います。
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