FC2ブログ

2020年01月27日 (月) 19:40:00

キャッシュレス決済に関するMMD研とビザ・ジャパンの調査

とても旧聞に属する話題ですが、ちょうど1週間前の1月20日にビザ・ワールドワイド・ジャパンとMMD研究所が共同で実施した「【第1弾】2020年キャッシュレス・消費者還元事業における利用者実態調査」の結果が明らかにされています。各社のニュースリリースは以下の通りです。


続いて、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのサイトから調査結果のTOPICSを7点引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」の認知・理解は進んでいるか?
    ⇒キャッシュレス・消費者還元事業の認知は約9割、内容の理解は約6割
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」を知ったチャネルは何だったのか?
    ⇒認知キッカケはテレビのニュース番組が最多。CMも含めると約5割がテレビ
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」でキャッシュレス決済での支払いは変化があったのか?
    ⇒「キャッシュレス決済の支払いが増えた」が約4割
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」が始まる前後(10月1日以前と以降)で支払い方法の種類に変化は?
    ⇒クレジットカードが9割近い利用率を維持、スマホ決済(QR・非接触)が増加
  • 最も利用している「キャッシュレス決済」は?
    ⇒ 最も利用するキャッシュレスは「クレジットカード」が52.0%、次いで「カード型電子マネー」が19.2%、「QRコード決済」が18.2%
  • キャッシュレス決済の利用が増えた場所は?
    ⇒キャッシュレスの利用場所TOP3は「コンビニ」、「スーパーマーケット」、「ドラッグストア」
  • キャッシュレス決済から想起すること、普及体感、期待は?
    ⇒キャッシュレス決済のイメージは「クレジットカード」、普及の体感は48.9%、期待は54.9%


いくつかグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


続いて、上のグラフは、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのサイトから 諸飛車還元事業前後の決裁利用 を引用しています、というか、前と後の2つのグラフを連結しています。見れば判ると思いますが、消費者還元事業前後の支払い方法として、当然トップの「現金」を別にしてキャッシュレス決済の中では、依然として、「クレジットカード」が高い利用率なんですが、消費者還元事業の前後で変化なく、変化の幅で見れば、「QRコード決済」は10%ポイントの増加を見せています。「クレジットカード」をはじめ、「カード型電子マネー」などの他のキャッシュレス決済は統計的に有意な差が出ているようには見えません。

photo


さらに、上のグラフは、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのサイトから 消費者還元事業後のキャッシュレス決済利用が多くなった場所 を引用しています。消費税増税に伴うキャッシュレス・ポイント還元事業は、基本的に、政府施策としては中小企業対象だったハズなんですが、政府施策ではない企業独自のポイント還元が少なくなく、むしろ、日用品を扱う大手チェーンストアでの利用が促進され、幅広くキャッシュレス決済を利用する人が増える方向にあることが見て取れます。

私は、エコノミストとして、高額紙幣とか現金決済は金融腐敗や、場合によっては、犯罪の温床になりやすいと危惧しています。スマホへの依存を強めたり、セキュリティ上の懸念は残りますし、実際に、セブンイレブンが大きくコケた例もあったりしますが、高額紙幣での現金決済をいかに減らすかについても、政府や日銀の積極的な取組が必要だと考えています。
Entry No.6499  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月24日 (金) 23:30:00

2019年12月の消費者物価(CPI)はエネルギー価格動向により上昇幅を拡大!

本日、総務省統計局から昨年2019年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し拡大して+0.7%を示しています。また、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.9%でした。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年12月の全国消費者物価、0.7%上昇 伸び率拡大
総務省が24日発表した2019年12月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合が102.2と18年12月に比べ0.7%上昇した。プラスは36カ月連続。材料費や人件費の高止まりを背景とした外食、宿泊料などの上昇に加え、損害保険大手が火災・地震保険料を引き上げたのも物価上昇に寄与した。
上昇率は19年11月の0.5%から拡大した。宿泊料などの上昇に加え、原油価格の上昇でガソリンや灯油の価格の下落幅が縮小したのも物価上昇につながった。一方、携帯電話の通信料は大手各社の値下げの影響で、引き続き物価の下げ圧力となった。
19年12月は生鮮食品を除く総合では387品目が上昇した。下落は112品目、横ばいは24品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
総務省は昨年10月の消費税率引き上げの影響を勘案したCPIの試算値も公表した。総務省の機械的な試算によると、消費税率引き上げと幼児教育・保育無償化の影響を除いた場合、19年12月の生鮮食品を除く総合の物価上昇率は0.4%となる。
19年12月の全国CPIで、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は102.1と18年12月比0.9%上昇した。生鮮食品を含む総合は102.3と0.8%の上昇だった。
あわせて発表した2019年平均の全国CPIは、生鮮食品を除く総合が101.7と18年比0.6%上昇した。上昇は3年連続。外食やエネルギー関連項目の上昇がけん引した。前の年と比べた上昇率は18年の0.9%から縮小した。生鮮食品とエネルギーを除く総合は0.6%上昇、生鮮食品を含む総合は0.5%上昇した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

photo


ということで、昨年2019年の10月統計から消費税率の引上げと幼児教育・保育無償化の影響が現れており、これを含んだ結果となっていて、引用した記事にもあるように、その影響の試算結果が「消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響 (参考値)」として総務省統計局から明らかにされています。少し話がややこしいんですが、この参考値によれば、10月統計について、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIのヘッドライン上昇率+0.4%に対する寄与度が+0.37%となっていて、その+0.37%に対する消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響が合わせて+0.20%、分けると消費税率引上げが+0.77%、幼児教育・保育無償化が▲0.57%と、それぞれ試算結果が示されています。12月統計ではコアCPI上昇率が+0.7%と少し上昇幅を拡大しているものの、このコアCPI上昇率+0.7%のうちの+0.20%が制度要因といえます。実際に、統計局がExceelファイルで提供している消費税調整済指数では、10月と11月は消費税の影響を除くコアCPIの前年同月比上昇率はともに+0.2%でしたが、12月統計では+0.4%にやや加速しています。このコアCPI上昇率の加速の大きな要因はエネルギーであり、かなりの程度に、国際商品市況における石油価格に連動しています。ただ、やや話がややこしいのは、まだ12月統計でもエネルギー価格が下落している点です。すなわち、11月統計では前年同月比で見たエネルギー価格の下落は▲2.1%でしたが、12月統計では▲0.6%に下落幅を縮小させ、その分、コアCPI上昇率の上昇幅拡大に寄与しています。その寄与度差は+0.13%と統計局のリポートで示されています。この寄与度差+0.13%のうち、ガソリンだけで+0.14%に上っており、自動車に乗らない人にはやや実感が薄いかもしれません。また、このエネルギー価格の下落幅の縮小によるコアCPI上昇率へのプラス寄与については、2018年11月に国際商品市況で石油価格がピークを打っていますので、その1年後の2019年11月に物価上昇へのマイナス寄与がもっとも大きくなっているわけで、その後、というか、この先数か月に渡ってエネルギーは我が国物価にプラス寄与しそうです。従って、国際商品市況における石油価格や為替レートの動向にも依存しますが、この先、今年2020年年央くらいまでコアCPI上昇率は+1%近い上昇率を続ける、との見方がエコノミストの間で広がっていることも事実です。その後、消費税率引上げの物価押上げ効果も剥落し、コアCPI上昇率は減速する、との見立てです。金融政策よりもエネルギー価格の方が、我が国物価へのインパクト大きい、という点は変わりないようです。

年初早々に、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したとの報道があり、中東の地政学的リスクから石油価格の動向を私は懸念したんですが、その後、国際商品市況において石油価格が急騰したということにはなっていないようで、例えば、私が時折拝見しているみずほ証券の「マーケット・フォーカス 商品:原油 2020/1/9」では、中東リスクによる不透明感あるものの、「長期的な原油価格の変動要因としては地政学リスクよりも世界景気に軍配があがろう」と指摘していますし、私の知り合いも、米国内のシェール・オイルなどの裏付けあって、石油価格の高騰を招く可能性小さいと考えたからこその軍事行動である、との指摘も受けました。石油価格動向は私には極めて不案内で専門外なんですが、そうなのかもしれません。
Entry No.6496  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月23日 (木) 23:30:00

2か月連続で貿易赤字を記録した12月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から昨年2019年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲6.3%減の6兆5771億円、輸入額も▲4.9%減の6兆7296億円、差引き貿易収支は▲1525億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年12月の貿易収支、1525億円の赤字 通年は2年連続赤字
財務省が23日発表した2019年12月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1525億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1510億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比6.3%減の6兆5771億円、輸入額は4.9%減の6兆7296億円だった。
併せて発表した19年の貿易収支は1兆6438億円の赤字だった。通年ベースの貿易赤字は2年連続。輸出額は18年比5.6%減の76兆9278億円、輸入額は5.0%減の78兆5716億円だった。


いつもの通り、コンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo


まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが貿易赤字▲ 1510億円でしたから、実績の▲1525億円の赤字はほぼほぼジャストミート、何のサプライズもなかったといえます。また、季節調整済みの系列を見ても、12月の貿易収支は▲1025億円の貿易赤字となっており、2018年年央7月からほぼ1年半に渡って貿易赤字を続けており、黒字を記録した月は例外的ともいえ、2019年中では2月と6月だけで、前者2019年2月の黒字は明らかに中華圏の春節の影響だと私は考えています。この1年半の間、上のグラフの下のパネルに見られるように、季節調整済みの系列で見て、輸出入とも緩やかに減少のトレンドにあるように見えるのは、明らかに、米中間の貿易摩擦による関税率引上げに起因した世界的な貿易の停滞やひいては世界経済の需要低迷の影響であると考えるべきです。ここ1年半ほどのトレンドとして、日経新聞の記事「輸出入3年ぶりマイナス 米中貿易戦争で需要減」をはじめとして、年統計に注目した報道の通りといえます。このブログでは景気動向に私自身の興味があるものですから、出来る限り、high frequency という観点から、年統計よりも四半期統計、四半期よりも月次統計を重視していますが、報道では年統計に着目したものが多いので、ここでは、少しニッチを狙って四半期統計に着目したいと思います。すなわち、2018~19年の2年に渡って貿易収支は赤字を続けているわけですが、2019年の各四半期でも、季節調整していない原系列のベースながら、4四半期連続で貿易収支は赤字を続けました。特に、直近では2019年7~9月期▲5263億円、10~12月期▲2249億円となっており、ホントは経常収支ながら貿易収支だけから見て、2019年10~12月期の貿易収支の赤字幅が縮小していますからGDP成長率に対して外需はプラス寄与する可能性が高い、と私は考えています。

photo


輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、輸出数量については前年同月比でまだマイナスとはいえ、12月統計では輸出数量の前年同月比のマイナス幅が大きく縮小していることも事実であり、先進国も中国も需要は回復に向かいつつあることから、我が国の輸出数量にもようやく底入れの兆しが見て取れます。
Entry No.6495  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月22日 (水) 19:30:00

世界経済フォーラム主催のダボス会議におけるOXFAMのリポートやいかに?

いくつかの報道に見られる通り、今週1月21日から24日までダボス会議が開催されています。その中から まあ、私の趣味に従って、昨年と同様にOXFAM のリポート Time to Care に注目したいと思います。ダボス会議の主催者である世界経済フォーラムのサイトにも言及がありますし、もちろん、pdfの全文リポートサマリーリポートもアップされています。このリポートでは、性差別経済が不平等の危機を拡大している "our sexist economies are fuelling the inequality crisis" と、特に以下の3点を例として強調しています。OXFAMのサイトから引用しています。

Time to Care
  • The 22 richest men in the world have more wealth than all the women in Africa.
  • Women and girls put in 12.5 billion hours of unpaid care work each and every day - a contribution to the global economy of at least $10.8 trillion a year, more than three times the size of the global tech industry.
  • Getting the richest one percent to pay just 0.5 percent extra tax on their wealth over the next 10 years would equal the investment needed to create 117 million jobs in sectors such as elderly and childcare, education and health.


下の INFOGRAPHICS は、全文リポートの p.8 から引用していますが、サマリーリポートの p.6 にもほぼほぼ同じものが掲載されています。

photo


男女間の性別の不平等をはじめとして、格差や不平等は単に不正義であるだけでなく、大きく経済を歪めていると私は考えています。何としてもこれらの不平等を是正し、経済を正常な状態に戻す方策を探る必要があります。その意味でも、OXFAM Japan が2018年9月限りで解散したのは誠に遺憾千万、残念この上ありません。
Entry No.6494  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月21日 (火) 19:30:00

IMF「世界経済見通し改定」やいかに?

本日1月21日から開催されたダボス会議を前に、昨日1月20日に国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update, January 2020 が公表されています。副題は、Tentative Stabilization, Sluggish Recovery? とされており、前半部分もさることながら、特に後半部分がよく中身を表している気がします。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、成長率の総括表をIMFのブログ・サイトから引用すると以下の通りです。

photo


見れば明らかなんですが、昨秋2019年10月時点の見通しから全般的に成長率については下方修正されています。今年2020年の世界経済の成長率は昨年10月時点の見通しから▲0.1%ポイント下方改定されて+3.3%と見込まれている上に、来年2021年も▲0.2%ポイント下方修正されて+3.4%と予測されています。この下方修正の要因は、リポートでは、"The downward revision primarily reflects negative surprises to economic activity in a few emerging market economies, notably India" と、インドに起因することを明記しています。広く報じられた通り、住宅金融のノンバンクであるデワン・ハウジング・ファイナンス(DHFL)のデフォルトによる金融混乱を指していると多くのエコノミストは受け止めていることと思います。ただ、同時に、IMFのブログ・サイトでは、"some risks have partially receded with the announcement of a US-China Phase I trade deal and lower likelihood of a no-deal Brexit" と、米中間の第1段階の貿易合意の発表、また、合意なきBREXITの可能性の低下などをリスク低下の要因として上げています。私が見た範囲では、全国紙各紙とも見通し下方修正の要因としてインドに軽く触れている一方で、もっと明るい話題というか、何というか、米中貿易合意とか、BREXTの方の注目度が高かった気がします。先行きについては、リポートでも、"On the positive side, market sentiment has been boosted by tentative signs that manufacturing activity and global trade are bottoming out" と、製造業と世界貿易の落ち込みがボトムアウトする兆候により市場センチメントが向上する、とする一方で、"few signs of turning points are yet visible in global macroeconomic data" と、世界のマクロ経済には転換点を示すデータはまだほとんどない、と先が長い可能性も示唆しています。
日本の成長率見通しについては、今年2020年が+0.7%成長と前回見通しから+0.2%ポイント上方修正された一方で、来年2021年は変わらず+0.5%と見込まれています。このあたりが潜在成長率近傍なのかもしれません。なお、今年2020年の成長率を上方改定した理由は、"healthy private consumption, supported in part by government countermeasures that accompanied the October increase in the consumption tax rate,robust capital expenditure, and historical revisions to national accounts" と、昨年2019年10月の消費税率引上げに合わせた政府経済対策にも部分的に支援されて消費が堅調であり、設備投資も伸びているとしています。ただ、最後のポイント、すなわち、過去にさかのぼっての国民経済計算統計の改定という理由は、まあ、わざわざこんなことを明記するんですから、統計の信頼性に対する苦情にやや近い気もします。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2019年度+0.8~+0.9
<+0.8>
+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.4~+0.5
<+0.4>
 10月時点の見通し+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.6~+0.8
<+0.7>
+0.4~+0.6
<+0.5>
 2020年度+0.8~+1.1
<+0.9>
+1.0~+1.1
<+1.0>
+0.9~+1.0
<+0.9>
 10月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.2
<+1.1>
+0.7~+1.1
<+1.0>
 2021年度+1.0~+1.3
<+1.1>
+1.2~+1.6
<+1.4>
 10月時点の見通し+0.9~+1.2
<+1.0>
+1.2~+1.7
<+1.5>


最後に目を国内に転ずると、本日、日銀「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しは上のテーブルの通りです。各セル下段の>< >内は中央値となっています。ただし、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、その他の情報とともに、引用元である日銀の「展望リポート」のサイトからお願いします。IMF見通しに従って、というわけでもないんでしょうが、日銀見通しも成長率については上方修正されていて、日銀自身も「展望リポート」1ページめのサマリーで、成長率については「2020年度を中心に、上振れている」と見ている一方で、物価の見通しについて「おおむね普遍」と自己評価しています。上のテーブルで明らかな通り、実は、やや下方修正という見方も成り立つような気がします。
Entry No.6493  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月20日 (月) 22:30:00

「中長期の経済財政に関する試算」の結果やいかに?

先週金曜日、1月17日に経済財政諮問会議が開催され、スマート化・グリーン化投資と関連人材投資を軸とした産業構造・経済構造の再構築などをはじめとする2020年前半の主要議題や来年度予算とともに、「中長期の経済財政に関する試算」、すなわち、財政収支と公債残高のGDP比の試算が2029年度まで示されています。

photo


見れば判ると思いますが、上のパネルが国・地方のプライマリ・バランスのGDP比、下が国・地方の公債等残高のGDP比となっています。報道では、プライマリ・バランス黒字化が目標の2025年度に達成できず、赤でプロットされている成長実現ケースでも2027年度に先送りされ、青のベースラインケースでは試算期間中の2029年度までではプライマリ・バランスは赤字のまま、という点が強調されていたように私は受け止めています。でも、上のグラフをよく見れば、プライマリ・バランス赤字を続けるベースラインケースでも、公債残高のGDP比は190%くらいで安定します。現代貨幣理論(MMT)を持ち出すつもりもありませんが、このあたりで十分ではないでしょうか。

なお、国際通貨基金(IMF)のサイトによれば、「世界経済見通し」World Economic Outlook の改定が本日1月20日のダボス会議で明らかにされる予定となっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。
Entry No.6492  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月17日 (金) 20:00:00

来週から始まるダボス会議を前に Global Risks Report 2020 やいかに?

来週の1月21日からダボス会議が始まります。その主催団体である世界経済フォーラムから、「グローバル・リスク報告書 2020」The Global Risks Report 2020 が明らかにされています。今週になって、私が毎日のように世界経済フォーラムのサイトを見ていたところ、月曜日の1月13日付けで "Published" と高らかに明示されたものの、"Coming Soon!" が長らく続き、pdfの全文リポートがアップされて、私の方でダウンロード可能になったのは1月15日でした。

photo


ということで、まず、上の INFOGRAPHICS は、世界経済フォーラムのサイトから引用しており、見れば判りますが、TOP GLOBAL RISKS: From economic to environmental. Climate now tops the risks agenda, while the economy has disappeared from the top five とのタイトルが付されています。リポート冒頭にある Figure I: The Evolving Risks Landscape, 2007-2020 を少しデフォルメしたものだと受け止めています。タイトル通りに、経済リスクが大きく後退してトップ5には見られなくなった一方で、環境リスクがクローズアップされています。Likelihood でソートすると、トップ5すべてが環境リスクで占められており、(1) Extreme weather、(2) Climate action failure、(3) Natural disasters、(4) Biodiversity los、(5) Human-made environmental disasters、の順となります。ただし、資産バブルの発生や財政危機などが後景に退いたとはいえ、この環境リスクの裏側には経済活動である企業の生産や家計の消費などが大きな要因となっているわけですから、これらの経済活動が地球環境と調和するような方策を探る必要がある、というのが大きなメッセージとなっています。下のグラフは、リポート冒頭にある Figure II: The Global Risks Landscape 2020 を引用しています。横軸にリスクが顕在化しそうな Likelihood、縦軸にはリスクが顕在化した際のダメージである Impact を取ったカーテシアン座標にさまざまなリスク要因がプロットされています。右上にプロットされているリスクほど警戒が必要、といことなんだろうと思います。

photo
Entry No.6488  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月16日 (木) 23:30:00

イレギュラーな大型案件で増加した機械受注と消費税率引上げでプラスを続ける企業物価!

本日、内閣府から昨年2019年11月の機械受注が、また、日銀から昨年2019年12月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、イレギュラーな大型案件があり、季節調整済みの系列で見て前月比+18.0%増の9,427億を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.9%の上昇と、10月から消費税率が引き上げられた影響で先月からプラスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の機械受注、前月比18.0%増 市場予想3.3%増内閣府が16日発表した2019年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比18.0%増の9427億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3.3%増だった。
うち製造業は0.6%増、非製造業は27.8%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は5.3%増だった。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いた。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
12月の企業物価指数、前年比0.9%上昇 消費増税・原油高が寄与
日銀が16日発表した2019年12月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.3と、前年同月比で0.9%上昇した。上昇は2カ月連続。消費税率の引き上げの影響に加え、原油価格の上昇で石油・石炭製品が値上がりしたことが寄与した。前月比では、0.1%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年比で4.1%下落し、8カ月連続のマイナスだった。前月比は0.2%上昇した。輸入物価は前年同月比6.8%下落し、前月比で0.9%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。10月の消費増税の影響を除いた企業物価指数は前年同月比で0.7%下落した。7カ月連続で前年を下回った。
2019年(暦年)の企業物価指数は101.5で前年比0.2%上昇した。消費増税の影響を除くと0.2%下落と、3年ぶりに前年実績を下回った。


長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注については、昨年2019年6月に季節調整済みの系列の前月比が+13.9%増を記録した後、7月▲6.6%減、8月▲2.4%減、9月▲2.9%減、10月▲6.0%減と4か月連続でマイナスが続いて来たんですが、本日公表の11月統計では、運輸業・郵便業で2件のイレギュラーな大型受注があり、前月から比率で+108.3%増、額で+1,026億円増、を記録したため、コア機械受注全体でも+18.0%増となりました。ただ、コア機械受注全体の増加額は+1,439億円ですから、運輸業・郵便業の増加額を差し引いても約+400億円強が増加したわけで、前月からの増加率も+5%超と考えて差し支えありません。すなわち、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比で3%を少し上回る増加だったわけですから、予測レンジ上限の+6.2%増の範囲内とはいえ、やや強めの数字と考えるべきです。ただ、イレギュラーな大型案件受注による大幅増でしたので、基調判断は変更しがたく、「足踏み」で据え置かれています。先行きについては、先月の機械受注統計公表時にお示ししたように、基本的に、横ばいないしやや減少のトレンドではないかと私は見ていますが、もしも、経済協力開発機構(OECD)の先行指標 CLI=Composite Leading Index に示されている "Stable growth momentum and below-trend growth" から、世界経済が本格的に上向けば機械受注も増加に転じる可能性が高まるような気がします。

photo


機械受注の方は、ちょっとびっくりの結果だったんですが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスである+0.9%の上昇にジャストミートしました。2か月連続のプラスですが、ただし、日銀から公表されている消費税を除く上昇率は12月でもまだ▲0.7%であり、11月の▲1.5%から下落幅を縮小したとはいえ、まだ前年同月比マイナスが続いています。引用した記事のタイトルにあるように、消費税率の引上げに大きく支えられ、国際商品市況における石油価格の上昇も寄与しているようで、物価動向に対して金融政策はそれほどの重要性ないのかもしれません。あるいは、現代貨幣理論(MMT)のモデルが正しくて、物価には金融政策ではなく財政政策を割り当てるべきなのか、私は基本的にリフレ派エコノミストでしたが、やや自信がなくなって来ています。
Entry No.6487  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月15日 (水) 19:20:00

2020年1月の日銀「さくらリポート」で示された地域の景気動向やいかに?

日銀では支店長会議が開催され、本日午後、「さくらリポート」が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。各地域の景気の総括判断と前回との比較は下のテーブルの通りで、6ブロックで横ばい、3ブロックで下方修正という結果となっています。

 【2019年10月判断】前回との比較【2020年1月判断】
北海道緩やかに拡大している緩やかに拡大している
東北一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている弱めの動きが広がっているものの、緩やかな回復を続けている
北陸緩やかに拡大している引き続き拡大基調にあるが、その速度は一段と緩やかになっている
関東甲信越輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している海外経済の減速や自然災害などの影響がみられるものの、基調としては緩やかに拡大している
東海拡大している緩やかに拡大している
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている
中国一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに拡大している幾分ペースを鈍化させつつも、基調としては緩やかに拡大している
四国回復している一部に弱めの動きがみられるものの、回復している
九州・沖縄緩やかに拡大している緩やかに拡大している


繰り返しになりますが、3ブロックで前回判断から下方修正されているものの、各地域の景気の総括判断はすべての地域で「拡大」または「回復」と示されています。この背景として、日銀では、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられる一方で、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きな循環が引き続き働いており、設備投資や個人消費といった国内需要が増加基調を続けている点を上げています。
このように、地域ブロック別の景気判断では横ばいないし下向きの修正があるにもかかわらず、来週1月20日から2日間にわたって開催される金融政策決定会合で決定される「展望リポート」に関して、以下の日経新聞や朝日新聞では、成長率見通しを引き上げるとの見込みを報じています。やや混乱を招きかねない報道だと私は受け止めていたんですが、実は、昨年末に公表された国民経済計算の確報レベルでGDPの実額が下方修正され、その後の成長率が発射台との関係で先行き見通しがやや上方修正される、というのが真相のようです。ご参考まで。
Entry No.6486  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月14日 (火) 19:45:00

2か月連続で改善した景気ウォッチャーと安定した黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から昨年2019年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2019年11月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.4ポイント上昇の39.8を、先行き判断DIは▲0.3ポイント低下の45.4を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆4368億円の黒字を計上しています。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の街角景気、現状指数は2カ月連続改善
内閣府が14日発表した2019年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、3カ月前と比べた足元の街角の景気実感を示す現状判断指数(DI、季節調整済み)は39.8と前月から0.4ポイント上昇した。消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動が和らいできたことや米中貿易摩擦への懸念が薄れたことなどが寄与し、2カ月連続で改善した。
分野別にみると、企業動向を示す指数が3カ月ぶりに改善した。米中貿易摩擦や世界経済の減速などに関するコメントが前月より減少した。「半導体関連の設備に景気上向き傾向が一部にみられ、受注量も増えている」(九州の一般機械器具製造業)といった声があった。
一方、家計動向を示す指数は2カ月ぶりに低下した。消費増税の影響が和らぎつつあるとの声があった一方、暖冬の影響で冬物衣料や暖房器具などの販売が伸び悩んだとの声があった。降雪量が少なくスキー場が開けないといったコメントや忘年会やクリスマスなど年末イベントの簡素化の影響が出ているとの指摘もあった。
2~3カ月後の景気の良しあしを判断する先行き判断指数は45.4と前月から0.3ポイント低下し、3カ月ぶりに悪化した。年末年始商戦への期待感が一巡したことなどで家計動向を示す指数が低下したことが響いた。
内閣府はウオッチャーの見方について「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が一部にみられる」といったただし書きも変えず、先行きについても「海外情勢などに対する懸念もある一方、持ち直しへの期待がみられる」と前月と同じ表現を維持した。
経常黒字75%増の1.4兆円 19年11月、貿易赤字が縮小
財務省が14日発表した2019年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆4368億円の黒字だった。黒字は65カ月連続。黒字幅は18年11月に比べ75%拡大した。貿易収支の赤字幅縮小や、第1次所得収支の黒字幅拡大が寄与した。
19年11月の輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は25億円の赤字(18年11月は5396億円の赤字)だった。輸出額は10.2%減、輸入額は16.6%減だった。原油価格の下落などを背景に中東からの原粗油などの輸入が減った。輸入額の大幅減少を受け、差し引きの貿易赤字幅が縮小した。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は1兆4575億円の黒字だった。黒字幅は0.1%の拡大。海外の親会社に支払う配当金が減ったため。
サービス収支は18年11月に比べ約4倍となる1630億円の黒字だった。研究開発費やコンサル費用などの赤字幅が縮小したことが大きい。


かなり長くなりました。これらの記事さえしっかり読めば、それはそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

photo


ということで、景気ウォッチャーは現状判断DIも、先行き判断DIも、いずれも小幅な動きで、ほぼ横ばい圏内の気がします。引用した記事には、家計部門と企業部門を対比させる内容となっていますが、私はやや異なる印象を持っています。というのも、12月統計の本日公表の景気ウォッチャーとは時点が違うんですが、先週公表され11月統計だった景気動向指数から、「企業も家計もともに停滞している中で、相対的に企業部門の方が大きな落ち込みを示している」との見方を示しました。景気ウォッチャーでも11月統計の現状判断DIを見ると、家計動向関連が前月差プラスで、企業動向関連はマイナスとなっていて、本日公表の12月統計ではこれが逆転して、家計動向関連がマイナス、企業動向関連がプラス、となっているわけです。このあたりはもう少し均して見る必要があるのかもしれませんが、私自身の先週の見方を否定するようで心苦しいものの、企業動向が依存する世界経済は米中間の貿易摩擦もさることながら、マクロの世界経済は明らかに改善に向かっている一方で、家計動向は少なくとも年内くらいまで10月の消費税率引上げのダメージが続く、と私は考えています。他方で、企業部門は景気動向にかなり敏感に反応してボラティリティ高い一方で、家計の消費はやや粘着性が強いとも考えられます。このパラの冒頭部分に戻りますが、基調判断が先月から変更ないのも、横ばい圏内の動きで方向感に乏しいためであろうと私は考えています。

photo


続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの11月統計でも黒字を記録しており、季節調整していない原系列の統計では2014年7月に黒字に転換して以来、また、季節調整済みの系列ではさらに早くて2014年4月の黒字転換以来、5年を超えて経常収支は黒字を継続しています。重要なコンポーネントのひとつである貿易収支は国際商品市況の石油価格の変動に応じて赤字になったり黒字になったりしている一方で、安定的な海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めている点については変わりありません。本日公表の11月経常収支についても同様といえます。加えて、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、+1兆4263億円の黒字の予想でしたので、サプライズもありませんでした。ただ、貿易収支については、この先、世界経済のいっそうの停滞が予想されるとともに、韓国向け輸出の動向も日韓関係の行方に左右される部分もあって不透明と考えるべきです。
Entry No.6485  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月11日 (土) 11:00:00

雇用者+145千人増の12月米国雇用統計をどう見るか?

日本時間の昨夜、米国労働省から昨年2019年12月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+145千人増とまずまずの堅調振りで、失業率は先月と同じ3.5%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、コンパクトにUSA Today のサイトから記事を最初の4パラを引用すると以下の通りです。

Economy added disappointing 145,000 jobs in December and the unemployment rate was unchanged at 3.5%
U.S. hiring slowed sharply in December as employers added 145,000 jobs, raising concerns that trade worries and a persistent downturn in manufacturing may be taking a bigger toll on the broader economy.
The unemployment rate was unchanged at a 50-year low of 3.5%, the Labor Department said Friday.
Also mildly disappointing: Job gains for October and November were revised down by a total 14,000. October's tally was nudged from 156,000 to 152,000 and November's, from 266,000 to 256,000.
On the one hand, a slowdown from November's booming additions was not surprising. And the economy added an average 176,000 jobs a month in 2019. That's below the 223,000 average the previous year -- a figure that's expected to be revised down -- but more than many experts anticipated in light of slowing growth and a dwindling supply of available workers.


いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

photo


米国雇用統計の何をどう見るかで見方も違ってくるわけですが、先月11月統計の雇用者増+256千人増とか、市場の事前コンセンサスの+180千人増などと比べれば、引用した記事のように、disappointing 物足りない、という評価になるかもしれませんが、米国連邦準備制度理事会(FED)のように、インフレを加速しない巡航速度の雇用者増を+100千人増と考えていたり、あるいは、半世紀振りの低水準である3.5%の失業率を見たりすれば、雇用は堅調という見方も出来ます。私はどちらかといえば後者の、米国雇用はまずまず堅調、という見方です。加えて、今年は米国大統領選挙の年であり、トランプ政権サイドから見ても、両方向の見方ができるかもしれません。すなわち、「よくやった」説を取る場合、北朝鮮に対する態度と同じで、十分な成果が上がったとやや無理やりにでもこじつける見方もできますし、「まだまだ」説を取って、中国やイランに対する態度と同じで、さらなる譲歩≒緩和を求める方向を取ることも出来るでしょう。タイミングも関係するかもしれませんし、年が明けて各政党内の予備選はともかく、本格的な選挙戦に突入すれば、対抗陣営は現政権の政策や成果を否定する一方で、トランプ大統領が共和党の予備選を勝ち抜けば、「まだまだ」説から徐々に「よくやった」説に変化して行くんではないかという気がします。

photo


ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用の堅調振りに歩調を合わせて、賃金上昇率も3%前後の水準が続いており、12月も前年同月比で+2.9%の上昇とインフレ目標を上回る高い伸びを示しています。ただ、上のグラフに見られるように、賃金の伸びが鈍化しているのは、米中間の貿易摩擦の影響もあって、雇用増が製造業ではなく賃金水準の低いサービス業、例えば、Leisure and hospitality や Health care and social assistance などで発生している点もひとつの要因です。日本や欧州と違って、米国では物価も賃金上昇もインフレ目標を上回る経済状態が続いている一方で、政権からの圧力もあってFEDでは利下げが模索されていましたが、「まだまだ」説から「よくやった」説に変化するタイミングを待ちつつ、しばらく小休止なのかもしれません。ただ、左派エコノミストとして、私はトランプ政権の圧力は別と考えても、一般論ながら、金融緩和策や財政的な拡張政策は貧困対策を含めて国民の生活水準向上に役立つものと考えています。
Entry No.6482  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月10日 (金) 19:30:00

4か月連続で「悪化」を示す11月統計の景気動向指数は景気後退を示唆するのか?

本日、内閣府から昨年2019年11月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲0.7ポイント下降して90.9を、CI一致指数も▲0.2 ポイント下降して95.1を、それぞれ記録し、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、4か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気、くすぶる後退観測 11月の動向指数も「悪化」
内閣府が10日発表した2019年11月の景気動向指数(CI、2015年=100)は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.2ポイント低下の95.1だった。10月の消費税率引き上げ後、2カ月続けて前月を下回り、13年2月以来の低水準に落ち込んだ。指数の推移から機械的に決まる基調判断は4カ月連続で「悪化」となり、景気後退の懸念がくすぶり続けている。
指数による基調判断の「悪化」は定義上、景気後退の可能性が高いことを示す。「悪化」が4カ月続くのは12年10月~13年1月以来だ。当時は事後的な認定で景気後退局面とされた期間に重なっており、12年11月が景気の谷だった。
足元の一致指数は増税と大型の台風が重なった10月に急落し、11月もさらに下がった。指数を構成する9統計は7項目が判明ずみで、このうち4項目が指数を押し下げる方向に働いた。
マイナスの度合いが最も大きかった投資財出荷指数は、台風で部品調達が滞った建設機械の出荷減が響いた。世界経済の減速で低迷が続く鉱工業生産指数も、台風による物流の停滞などで一段と落ち込んだ。
政府が月例経済報告で示す公式の景気認識は18年1月から「緩やかに回復」との表現を続けている。直近の19年12月も製造業の弱さに言及しつつ、堅調な雇用などを背景に回復との認識は変えなかった。このため統計指標から機械的にはじく景気動向指数の判断とはズレが生じている。
世界銀行が8日改定した経済見通しによると19年の世界の成長率は推定で2.4%と、金融危機の影響から脱し始めた10年以降で最低になった。市場では日本経済が景気後退局面に入っているとの声がくすぶる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は「景気は既に山を越えた」とみている。米中貿易戦争が激しくなった18年秋以降は下り坂で、19年10月の増税も重荷になっている。
もっとも過去の景気後退局面と比べると、経済指標の落ち込みは小さいとの指摘もある。日本総合研究所の松村秀樹氏は「下押し圧力を超えて回復が持続する」と予想する。内需は堅調で、増税後の個人消費も底割れしないとの見方だ。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo


いつも論じているように、景気動向指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が高いんですが、11月統計の一致指数のマイナス寄与が大きい順に採用系列を並べると、投資財出荷指数(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、有効求人倍率(除学卒)と、最初の3項目にはIIP関連の指標が登場します。 逆に、プラス寄与の大きい順だと、商業販売額(小売業)(前年同月比)や耐久消費財出荷指数が上位に並んで、企業部門の低迷と家計部門の堅調という、消費税率引上げ直後としては考えられない部門間の動きを示しています。というのは、私の考えでは、企業も家計もともに停滞している中で、相対的に企業部門の方が大きな落ち込みを示している、ということなのだろうと考えられます。企業部門の落ち込みを家計部門が下支えしている構図なわけですが、そのひとつの要因として、人手不足による雇用の堅調な動向が上げられます。ただ、私が何度もこのブログで明らかにしているように、景気後退局面に入って雇用が落ち始めると、それこそ、底なし沼のように景気と雇用があいまって大きく落ちる可能性も否定できません。日経新聞の記事で最後の方に紹介されているシンクタンクのエコノミスト2氏の見方は、あるいは、どちらも正しくて、おそらく景気はピークを超えたのでしょうが、まだ、大きな落ち方を示す局面には到達していない、ということなのかもしれません。私も判断に迷うところですから、景気局面の判断はそれなりに時間が経過した後でないと出来ない、というのも理解できるところです。
Entry No.6481  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月09日 (木) 20:00:00

債務が財政危機をもたらすのだろうか?

年末年始の学術論文紹介シリーズ第3回にして早くも最終回です。国際通貨基金(IMF)のワーキング・ペーパー2020年第1号にして "Debt Is Not Free" と題する債務と財政危機の関係に対する論考です。いつもの論文アップロード先は以下の通りです。



ここで、タイトルがあくまで "Debt" となっているところがミソで、引用文献には決して現れないながら、いかにも、ケルトン教授やレイ教授の現代貨幣理論=MMTを十分に意識した内容となっていますが、決して、政府の国内債務に限定することなく議論を展開しています。まず、やや長くなりますが、IMFのwebサイトから英文のままSummaryを引用すると以下の通りです。

Summary
With public debt soaring across the world, a growing concern is whether current debt levels are a harbinger of fiscal crises, thereby restricting the policy space in a downturn. The empirical evidence to date is however inconclusive, and the true cost of debt may be overstated if interest rates remain low. To shed light into this debate, this paper re-examines the importance of public debt as a leading indicator of fiscal crises using machine learning techniques to account for complex interactions previously ignored in the literature. We find that public debt is the most important predictor of crises, showing strong non-linearities. Moreover, beyond certain debt levels, the likelihood of crises increases sharply regardless of the interest-growth differential. Our analysis also reveals that the interactions of public debt with inflation and external imbalances can be as important as debt levels. These results, while not necessarily implying causality, show governments should be wary of high public debt even when borrowing costs seem low.


批判的に検討を加えているのは、MMTではなく、むしろ、IMFのチーフエコノミストも務めて、身内ともいえるブランシャール教授が American Economic Review で明らかにした論文、というか、講演録 "Public Debt and Low Interest Rates" あたりが念頭にあるのかもしれません。この論文では、現在の低金利の米国では安全資産の金利が成長率を下回っており、政府債務は資本蓄積を妨げ経済的な厚生コストを発生させるとしても、"Put bluntly, public debt may have no fiscal cost." とブランシャール教授は主張しています。長崎大学の紀要論文「財政の持続可能性に関する考察 - 成長率・利子率論争と時系列データによる検定のサーベイ -」で私が主張したように、国債金利が成長率を下回る動学的不均衡の状態にあるならば、政府債務は破綻せずサステイナブルである、というのがブランシャール教授の論点です。

photo


本論文 "Debt Is Not Free" では、別のアプローチを取っています。すなわち、上のグラフは本論文 p.40 から Figure 13. Overall Interaction Strength を引用しているんですが、政府債務そのものではなく、国内貯蓄で賄い切れなくなった結果として、公的対外債務が累積すると過去の財政危機の履歴と相まって財政危機を引き起こす可能性が高くなる、という点が強調されているような気がします。英文で70ページ近い論文なものですから、ひょっとしたら、私の方で十分把握できていない恐れもあったりするんですが、財政危機と対外収支危機も峻別されていないような印象すらあります。ともかく、MMTはもとより、ブランシャール教授の動学的不均衡下での政府債務の持続可能性についても、反論できていないように感じるのは私だけでしょうか?
Entry No.6480  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月08日 (水) 19:30:00

ユーラシア・グループによる Top Risks 2020 の1番目は米国大統領選挙!

photo


地政学的なリスクなどの情報提供・分析を行う米国企業であり、イアン・ブレマー率いるユーラシア・グループが今年も昨日1月6日付けで、Top Risks 2020 を明らかにしています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。上の画像はリポートの表紙であり、トップ10の今年2020年のリスクが明記されています。以下の通りです。

  1. Rigged!: Who governs the US?
  2. The Great Decoupling
  3. US/China
  4. MNCs not to the rescue
  5. India gets Modi-fied
  6. Geopolitical Europe
  7. Politics vs. economics of climate change
  8. Shia crescendo
  9. Discontent in Latin America
  10. Turkey


トップリスクは米国の大統領選挙です。ユーラシア・グループでは今まで米国国内政治をトップリスクに上げることはなかったとしながらも、米国の政治、特に、大統領選挙の結果生じうる不確実性の増大や国際政治から米国の影響力が後退する空白に伴って生じる不安定性などを上げています。リポートでは、"American Brexit" なんて表現が p.4 に出てきたりします。それにしても、エコノミストにはまったく理解できないところで、米軍によるイランのイスラム革命防衛隊の「コッズ部隊」ソレイマニ司令官らの殺害なんぞは、在イラクの複数の米軍基地に弾道ミサイルによる攻撃があったようですが、今後、どういう展開を見せるんでしょうか。2番めと3番めはともに米中関係に起因しており、私なんぞはエコノミストですから3番めの米中間の貿易摩擦のエスカレーションが今年最大の懸念材料と考えていますが、このリポートでは中国が技術的な面における米国依存から脱するデカップリングの方を先に位置付けています。後は、多国籍企業、インド、欧州、地球環境、シーア派、中南米、トルコと並んでいて、経済パワーに従って世界的な影響力も大きく後退した我が日本はアジェンダには上がっていません。それから、世界経済フォーラムの主催するダボス会議が1月21~24日に開催され、その前に World Risks Report が明らかにされると思いますので、また、その際は取り上げたいと予定しています。

photo


目を国内の経済指標に転じると、本日、内閣府から昨年2019年12月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、前月から+0.4ポイント上昇して39.1となり、3か月連続で前月を上回りました。いつもの消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
Entry No.6479  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月07日 (火) 19:30:00

貧困と剥奪スコアの関係やいかに?

昨夜に続いて、年末年始休み読んだ学術論文のうち、今夜は社会保障・人口問題研究所の『社会保障研究』から「剥奪指標による貧困の測定」です。論文アップロード先は以下の通りです。



先日の読書感想文『本当の貧困の話をしよう』にもかきましたが、貧困指標にはいくつかあって、英語ながら私は長崎大学の紀要論文 "A Survey on Poverty Indicators: Features and Axioms"で簡単に取りまとめていたりするんですが、私の紀要論文でもすべてが金銭的指標であり、途上国で貧困を定義する場合、1人当たりの所得額、いわゆるヘッドカウントで見て、先進国では相対的貧困率、すなわち、等価可処分所得の中央値の50%を貧困ラインと定義して、その貧困ラインを下回る所得の人数の比率を算出するものが主流となっています。ただ、こういった金銭的な貧困指標だけでなく、本論文のタイトルにもなっている剥奪率という非金銭的な指標の開発が進められてきている点が注目されます。ここで、「剥奪」とは英語の deprivation であり、より広い概念としては「社会的剥奪」social exclusion といったものもあります。社会における標準的な生活様式を享受するための資源が欠如している状態を指していて、典型的に想像されるのは、水道がないために、歩いて1時間ほどもかかる井戸まで子供が水汲みに行かねばならない、といった途上国の剥奪の状況を耳にした人も多いんではないでしょうか。現在の日本で上水道へのアクセスがないというのはやや極端と感じられる人もいる可能性がありますが、本ペーパーの著者が剥奪項目として上げたのはペーパー p.280 表4 項目別の剥奪者率・普及率 から、以下の通りです。

photo


これらの剥奪項目から、金銭的な理由により所有やアクセスのない人数の比率で剥奪率を産出しています。テーブルの真ん中ちょっと上に「自動車」というのがあって、定年までキャリアの国家公務員を務め上げた私が主たる所得稼得者であった我が家には自動車がありませんでしたが、ひょっとしたら、これは金銭的な理由ではない、と判断されるかもしれません。なお、単純な剥奪項目数についてもカウントしています。

photo


所得と剥奪の状態をプロットしたのが、上の 図1 等価所得階級別の剥奪項目数・剥奪率 です。ペーパー p.282 から引用しています。所得に従って剥奪が減少しているのは明確なんですが、等価可処分所得600万円を超えるあたりから横ばいとも見えます。もちろん、単純な平均値的な集計結果だけでなく、各種のモデルに基づく推計も実施されており、線形回帰モデルとトービット・モデルの結果がペーパー p.283 表8 回帰分析の推定結果 に示されています。コチラのテーブルは情報量が多い分、やや見づらい気もするので引用はしませんが、簡単に解説しておくと、第1に、個人の基本的な属性に関しては、年齢と等価可処分所得は明らかに収奪スコアと統計的に有意な負の相関関係にあります。所得が高いほど収奪スコアは低いわけで、年功序列賃金がかなり残っているとすれば当然です。ただ、性別について女性ダミーは収奪スコアと負の符号を取るものの、統計的に有意ではありません。第2に、家族構成としては、所得をコントロールしてもなお、単身世帯や夫婦のみ世帯は収奪スコアと負の相関関係で、統計的にも有意な結果が示されており、逆に、基準となっている夫婦と未婚の子のみの世帯、すなわち、子供を持つことは収奪スコアと正の相関関係にあるようです。もっとも、子供を持つ前に若い年齢層の夫婦のみ世帯と、我が家のように子供が独立してしまった後の高齢の夫婦のみ世帯では、少し事情が違うような気がしないでもありません。それから、ひとり親と未婚の子どもの世帯も収奪スコアと統計的に有意な正の相関関係となっています。母子家庭などの収奪の現状を考えるとそうかもしれません。三世代家族は収奪スコアと正で統計的に有意な相関関係なんですが、おそらく、私の直感では、因果関係は逆であり、三世代同居により収奪スコアが大きくなるわけではなく、収奪スコアの大きな家族は三世代同居をするんだろうという気がします。ただ、同じ『社会保障研究』第4巻第3号には「三世代同居と相対的剥奪」と題する論文も収録されており、そこでは、生活が苦しいので同居せざるを得ない、という私のような見方とともに、家屋が古いとか、老親介護のための同居の可能性、などが指摘されています。いずれにせよ、三世代同居してなお収奪スコアが高いのですから、三世代同居は収奪スコアを高める原因となるリスクを持つ可能性も考えるべきかもしれません。最後に第3に、その他の3つの指標については、主観的健康ダミーと持ち家ダミーは収奪スコアと統計的に有意に負の相関関係があり、健康と感じれば、あるいは、持ち家を持っていれば、収奪スコアが低いことを意味します。そして、最後の最後に興味深いのは、就業ダミーが統計的に有意に正の相関を収奪スコアと有しています。もちろん、因果関係は逆であって、収奪が高いので就労せざるを得ない、という意味なのかもしれませんが、解釈の難しいところです。

エコノミストとしては、ついつい主流派の議論で、あくまで所得の増加が貧困や収奪の軽減に有効であることはいうまでもないところながら、家族構成などは個人や世帯の価値観に基づく判断で決定される、とはいうものの、決して自己責任ばかりではないわけですから、貧困や収奪との関係でさまざまな議論を展開すべき時期に来ているのかもしれません。また、私個人としても、途上国での井戸への水汲みの例も出しましたが、日本国内における議論とともに、途上国の現状についても把握に努めたいと考えます。
Entry No.6478  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2020年01月06日 (月) 23:30:00

企業規模と賃金、労働生産性の関係やいかに?

昨年末に明らかにされ、年末年始休みにパラパラと読んだ学術論文からいくつかピックアップしたいと思います。まず、財務省財務政策総研のディスカッション・ペーパー「企業規模と賃金、労働生産性の関係に関する分析」です。論文アップロード先は以下の通りです。



大学生諸君の終活などでは、その昔は「寄らば大樹の陰」などといわれて、規模の大きな企業への就職がひとつの目標だった時期もありますが、単に、倒産しない、つぶれない、というだけでなく、日本のみならず、米国などにおいても規模の大きな企業ほどお給料や厚生などの待遇がいいことは広く知られている通りです。本論文では財務省の法人企業統計の個票を用いて、従業員数で代理された企業規模と賃金や生産性などとの関係につき、製造業とサービス業の産業別で回帰分析しています。ただ、極端な外れ値を処理するため、分布の両端0.05%を棄却しています。従業員規模は、①1~4人、②5~9人、③10~19人、④20~49人、⑤50~99人、⑥100~249人、⑦250~499人、⑧500人以上、の8階級に分割し、生産性は付加価値額を従業員数で除しています。回帰分析は、「企業規模-賃金」、「企業規模-労働生産性」及び「労働生産性-賃金」の間で左側の変数を従属変数、右側を独立変数としているんですが、少なくとも3番目の回帰分析はそれほど大きな意味あるとは私には思えません。従って、最初の2つのモデルのうち、企業規模と賃金のあ医大で典型的に中央値比較をしたグラフ、図3 企業規模と賃金 をペーパー p.9 から引用すると以下の通りです。

photo


ペーパー p.10 には、図5 企業規模と労働生産性 として同じような企業規模と労働生産性のグラフがあります。製造業では企業規模とともに賃金や労働生産性が単調増加するのに対して、サービス業の賃金や生産性が従業員数250人を超える規模のあたりで横ばいないし低下に転ずるのは、ペーパーでも指摘しているように、生産性の低い小売業のシェアが高まるのもさることながら、同時に、非正規雇用の比率に大きく影響されているのではないか、と私は考えています。その点の分析をしていないんですから、やや物足りない仕上がりと感じてしまいます。賃金や労働生産性を高めるためには正規雇用の増加が重要です。
Entry No.6477  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月27日 (金) 19:20:00

2か月連続で減産となった鉱工業生産指数(IIP)と消費税率引上げのダメージ残る商業販売統計と堅調ながら改善のモメンタム薄れつつある雇用統計!

今日は官庁のご用納めで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から▲0.9%の減産を示し、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲2.1%減の11兆8670億円、季節調整済み指数は前月から+4.5%増を記録しています。雇用統計では、失業率は前月とから▲0.2%ポイント低下して2.2%、有効求人倍率は前月から横ばいの1.57倍と、いずれもタイトな雇用環境が続いているように見受けられます。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、11月も0.9%低下 台風や海外向け低調で
経済産業省が27日発表した11月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比0.9%低下し97.7だった。10月に4.5%低下と大幅に落ち込んだのに続く2カ月連続の低下となった。生産用機械などで台風19号の影響が続いたほか、海外の設備投資の減速も響いた。企業の先行き予測は上昇を見込むが、基調判断は「弱含み」で据え置いた。
QUICKがまとめた民間予測の中央値(1.2%低下)より低下幅は小さかった。それでも台風19号で被害を受けた10月からさらに減産となり、指数は13年4月以来、約6年半ぶりの低水準となった。
業種別では15業種中12業種が低下した。最もマイナスの寄与が大きかったのが生産用機械で、前月比8.9%低下した。台風19号の影響で部品の調達が滞り、生産が鈍った悪影響が残った。半導体製造装置は海外向けの生産が低調だった。
自動車は10月に大幅に落ち込んだ反動が出たほか、新型車の販売が好調で、11月は4.5%増えた。それでも10月の落ち込み(7.9%低下)を補う力強さはなかった。
経産省は10月の消費増税について「生産面でそれほど大きな影響は見られない」とした。指数を財別でみると、家電などの耐久消費財は4.8%の上昇、食料品などの非耐久消費財は0.3%の上昇だった。
もっとも、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎氏は「消費財は10月に大幅に低下した反動で上がっただけで、国内消費の落ち込みは生産に影響している」と指摘する。その上で、11月の指数低下について「米国など海外の設備投資需要の減速も重なった」と語り、台風よりも海外需要が低調であることの影響が大きいとの見方を示した。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、12月は前月比2.8%の上昇、20年1月は2.5%の上昇を見込む。経産省は「先行きは上昇に転じる兆しがある」とする一方で、足元で指数の低下が続いていることから基調判断は「弱含み」のまま据え置いた。予測調査の数字をそのままあてはめると、10▲12月の生産は7▲9月比で低下し、四半期ベースで2期連続のマイナスとなる。
11月の出荷は1.7%の低下と2カ月連続で悪化した。在庫は1.1%低下と2カ月ぶりに前月比でマイナスだった。
小売販売額11月2.1%減 増税で自動車など高額品低調
経済産業省が27日発表した11月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比2.1%減の11兆8670億円だった。10月の消費税率引き上げ前に表れた駆け込み需要の反動減が11月も残った。特に自動車や家電、宝飾品など高額商品の販売が低調だった。10月の7.0%減より下げ幅は縮小したが、前回の増税2カ月目にあたる2014年5月の0.4%減よりは大きかった。
減少は2カ月連続。経産省は「9月までに前倒しで高額品を買った人は購入を控えている」との見方を示した。前回の増税とは季節が違うため単純比較は難しいが、減少率だけを見ると、直後の10月に続いて前回増税時より大きかった。一般的に消費が盛り上がる年末年始も増税を受けた節約モードが続くのかが今後の焦点となる。
小売業販売を商品別にみると、自動車小売業が前年同月比5.9%減と大きく落ち込んだ。新車だけでなく中古車や輸入車の販売も不調だった。家電など機械器具小売業は7.8%減。駆け込み需要が大きかったエアコンなど高額な家電の販売が伸び悩んだ。原油価格が下落し、燃料小売業も6カ月連続で減少した。
業態別では、百貨店の販売額が5.9%減で2カ月連続で前年を下回った。11月は気温が高い日が続き、コートなど冬物衣料の動きが鈍かったことも影響した。訪日観光客の減少も引き続き販売を下押ししている。家電大型専門店は5.5%減った。
一方、コンビニエンスストアの販売額は2.3%増と2カ月連続で増加した。大手コンビニでは10月からキャッシュレス決済に2%分のポイントをその場で還元しており、コンビニでの買い物が増えている。
失業率3カ月ぶり改善 11月2.2%、求人倍率横ばい
総務省が27日に発表した11月の完全失業率(季節調整値)は前月から0.2ポイント改善し2.2%だった。離職者が減ったことで失業者数も減り、3カ月ぶりに改善した。厚生労働省が同日発表した11月の有効求人倍率(同)は3カ月連続の1.57倍となった。製造業など一部業種に陰りがあるものの、全体では堅調な雇用情勢が続いている。
完全失業者数は前年同月比17万人減の151万人。総務省によると、1992年12月の失業者数が144万人となって以来、26年11カ月ぶりの低水準という。自己都合の離職者が12万人減と大幅に減ったことが大きい。
就業者数は同53万人増の6762万人だった。特に女性の就業者が42万人増の3009万人と大きく増えた。男性の就業者数も11万人増の3753万人で増加した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率も3カ月連続の1.13倍となった。雇用の先行指標となる新規求人倍率は前月から0.12ポイント低下し2.32倍だった。
新規求人数は前年同月比6.7%減の90万1638人で、4カ月連続で減少した。米中貿易戦争の影響を受けている製造業が19.3%減と、10カ月連続で減った。サービス業も13.1%減と減少幅が大きかった。


いくつかの統計を取り上げていますので長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

photo


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、中央値で前月から▲1.2%の減産、レンジでも▲2.3%~▲0.2%の減産でしたから、おおむねコンセンサス通りの結果といえます。生産・出荷ともに2か月連続で低下を示しており、在庫は引用した記事にもあるように前月比でマイナスとはいえ高止まりしていて、内外の需要の低迷が伺える内容です。業種別では、生産用機械工業と電気・情報通信機械工業が生産・出荷ともに低下している一方で、自動車工業と輸送機械工業(自動車工業除く)、さらに、電子部品・デバイス工業などは増産となっています。ただし、製造工業生産予測指数によれば、足元の12月は+2.8%、来年1月も+2.5%のそれぞれ増産と見込まれており、それほど悲観的になる必要はないものの、12月については予測誤差を考慮すれば前月比で+0.4%の増産にしか過ぎませんから、10月▲4.5%の減産どころか、直近統計の11月▲0.9%にも及びませんから、目先の生産は低い水準で推移すると考えるべきです。

photo


続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。消費の代理変数となる小売販売額を見ると、消費税率引上げの当月だった10月の前年同月比▲7.0%減から、11月は▲2.1%減とマイナス幅は縮小しました。前回2014年4月の消費税率引上げ後の動向を振り返ると、引上げ当月の4月▲4.3%減、5月▲0.4%減、6月▲0.6%減と、3か月連続マイナスを記録したものの、7月は+0.6%増とプラスに回帰しています。今回の消費税率引上げのダメージがどのくらい続くかにも注目が必要です。11月統計の小売業販売額を業種別に見ると、燃料小売業が大きなマイナスになっているのは国際商品市況における石油価格の下落が朱印としても、引用した記事にもあるように、自動車小売業や電機製品を含む機械器具小売業などの比較的高額な耐久消費財を含む業種のマイナスが大きいのがひとつの特徴となっており、インバウンド観光客の人気の医薬品・化粧品小売業はプラスを続けています。

photo


続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた期間は景気後退期を示しています。ということで、失業率は2%台前半まで低下し、有効求人倍率も1.5倍超の高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も1倍超を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年半近くに渡って1倍以上の水準で推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近いタイトな状態にあると私は受け止めています。ただ、モメンタム、すなわち、方向性については、失業率も有効求人倍率もジワジワと雇用改善が停滞する方向にあることは確かです。雇用の先行指標である新規雇用者数の業種別統計は季節調整済みの系列が公表されていないため、季節調整していない原系列の前年同月比はすべての産業でマイナスだったんですが、特に、製造業が▲19.3%減、卸売業・小売業が▲9.9%減となっており、米中貿易摩擦に起因する外需の減速と消費税率引上げによる消費の低迷が際立っているように見受けられます。

いつも強調している通り、雇用は生産の派生需要であり、生産が鉱工業生産指数(IIP)で代理されるとすれば、基調判断は「生産は弱含んでいる」であり、先行き、景気局面が転換して景気後退局面に入れば、雇用は急速に冷え込む可能性もあります。生産が雇用増加をけん引しているのであって、人手不足が景気を拡大させているわけではありません。場合によっては、本格的な賃金上昇が始まる前に景気の回復・拡大局面が終了してしまう可能性も排除できません。
Entry No.6466  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月25日 (水) 20:00:00

企業向けサービス価格指数(SPPI)上昇率は縮小しつつもプラスが続く!

本日、日銀から11月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。先月10月統計から消費税率引上げがありましたので、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率はジャンプして今月11月統計でも+2.1%を示しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じく+2.1%を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の企業向けサービス価格、増税除き0.4%上昇
日銀が25日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は105.0と、前年同月比で2.1%上昇した。伸び率は10月から横ばいで、消費増税の影響を除くと0.4%上昇にとどまった。スポーツ特番や自動車の新車販売の需要で、テレビ広告がマイナス幅を縮小したことが寄与した。
前月比は0.2%上昇した。広告や不動産が押し上げる一方、土木建築など諸サービスが伸び悩んだ。日銀の調査統計局は「消費税率の引き上げ前後で企業の価格設定行動に大きな変化はみられていない」としている。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


先月統計から大きな変化はないんですが、引き続き、労働者派遣サービスや警備を含む諸サービスが前年同月比で+2.7%と高い伸びを示しているほか、景気に敏感な項目である広告についても、前年同月比はまだマイナスながら、そのマイナス幅が縮小しています。運輸・郵便も11月統計で前年同月比+2.2%と高い上昇率なんですが、一方で国際商品市況における石油価格の下落があり、他方で、人手不足もありで、内訳を少し詳しく見ると、道路貨物輸送が+3.5%と上昇を続けているのに対して、外航貨物輸送や内航貨物輸送は前年同月比でマイナスだったりします。また、消費税を除く上昇率は、11月統計で+0.4%と10月統計から変わりないものの、5月統計まで+1.0%の上昇率を示していたのに比べれば、ジワジワと上昇率が縮小し地得ることも事実です。人手不足の影響によりサービス価格はそれなりに堅調であるものの、米中貿易摩擦を背景に景気動向から方向感としては上昇率が縮小してきているのも確かです。
Entry No.6464  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月24日 (火) 19:45:00

リクルートジョブズによる11月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日12月27日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる11月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

photo


ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は+3%の伸びで引き続き堅調に推移しています。詳細に見ると、三大都市圏の11月度平均時給は前年同月より+3.1%、+32円増加の1,084円を記録しています。職種別では「製造・物流・清掃系」(+41円、+3.9%)、「フード系」(+32円、+3.2%)、「事務系」(前年同月比増減額+30円、増減率+2.8%)、「販売・サービス系」(+29円、+2.8%)など、全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、今年2019年7月統計以降マイナスを続けており、11月はとうとう▲43円減、▲2.6%減の1,619円と、下げ足を速めています。職種別では、「クリエイティブ系」(+56円、+3.2%)、「IT・技術系」(前年同月比増減額+38円、増減率+1.8%)、「オフィスワーク系」(+23円、+1.5%)、「医療介護・教育系」(+16円、+1.1%)の4職種がプラスなった一方で、「営業・販売・サービス系」(▲29円減、▲2.0%減)の1職種だけながらマイナスを示しています。また、地域別でも、関東・東海では前年同月比マイナス、関西では横ばいを記録しています。派遣スタッフの平均時給が唯一低下した「営業・販売・サービス系」の▲2.0%減よりもさらに大きく低下しているのは、職種平均よりもかなり低い時給水準の「医療介護・教育系」のウェイトが増加しているシンプソン効果ではないか、と私は想像しています。というのも、同業のエン・ジャパンによる「エン派遣」3大都市圏募集時平均時給は、11月の前年同月比+1.7%増と、18か月連続で伸びを示しているからです。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトでは人手不足の影響がまだ強い一方で、一部の職種や地域では派遣スタッフ賃金は伸びが鈍化しつつある、と私は受け止めています。もちろん、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用にはいっそうの注視が必要、と考えるエコノミストも私以外に決して少なくなさそうな気がします。特に、上のグラフを見る限り、右肩上がりの上昇を続けるアルバイト・パートに比べて、派遣スタッフの時給については、単変量のトレンドながら昨年2018年前半から半ばにかけて、いったん直近のピークを付けた可能性があります。ただ、2016年年央にも同じようにピークを過ぎた後、2017年後半からもう一度上昇したこともあり、人手不足をはじめとする労働需給に敏感なだけに、まだ確定的な見方を示すことは出来そうにない気がします。

最後に、何度でも繰り返しますが、決して人手不足が景気をけん引しているのではありません。雇用は生産の派生需要であり、景気が後退局面に入ると労働需要が一気に冷え込む可能性は否定できないわけで、この点は絶対に忘れるべきではありません。
Entry No.6463  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月23日 (月) 23:30:00

日本総研リポート「訪日韓国人の減少が関西経済に及ぼす影響」やいかに?

photo


長らく等閑視していましたが、政府観光局の訪日外客統計が先週12月18日に公表されています。最近の動向は上のグラフの通りです。夏休みにもかかわらず8月に訪日外国人が前年同月比マイナスをつけ、最近はさえない動きを占めs知恵いるのはグラフからも読み取れる通りです。この最大の要因のひとつは、広く報じられている通り、外交関係に起因して韓国からの訪日観光客が大きく減少しているためであり、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、8月▲48.0%減、9月▲58.0%減、10月▲65.5%減、11月▲65.1%減となっています。九州は西の端の長崎大学に出向していた私の現地感覚からして、西に行くほど中国・韓国をはじめとするアジアのインバウンドの影響が大きいのは理解できるところで、日本総研から【関西経済シリーズNo.8】として「訪日韓国人の減少が関西経済に及ぼす影響」が12月20日に明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。

photo


上のグラフは、日本総研のリポートから国籍別の訪日客消費額シェア(2018年)のグラフを引用しています。このグラフで見る限り、西に行くほどアジアのインバウンド観光客比率が高い、という私の実感は統計的に裏付けられているようです。そして、リポートでは、2020年も訪日韓国人数が▲6割減の状況が続けば、関西のインバウンド消費を2019年比で▲9%程度、すなわち、▲1,000億円≒関西の地域総生産(GRP)の▲0.1%程度の下押し圧力となる、と試算しています。来年2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催され、訪日観光客が関西から東京に流れるのか、それとも、東京に来たついでに関西にも立ち寄るのか、どちらの目が出るのか私にはよく判らないながら、韓国からの訪日観光客の▲60%減がこのまま1年間続くとは思えないものの、業界や地域によってはそれなりのインパクトがある可能性も否定できません。

私は、来年、私大の教員になるため、故郷の関西に引っ越そうと予定しています。教えるのは長崎大学のころと同じ日本経済論なんですが、関西経済に関する情報についてもちょっぴり気になり始めたところです。
Entry No.6462  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月20日 (金) 23:15:00

力強い上昇ではないながら前年比プラスが続く消費者物価指数(CPI)!

本日、総務省統計局から11月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し拡大して+0.5%を示しています。消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、11月0.5%上昇 増税分除くと弱い水準
総務省が20日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が102.2と前年同月比0.5%上昇した。プラスは35カ月連続となるが、消費税率引き上げによる押し上げ効果を除くと、弱い数字だった。
前年同月と比べると、外食や宿泊料などが上昇した。加えて大手が値上げした火災・地震保険料の上昇も物価上昇に寄与した。一方、電気代や都市ガス代、ガソリンなどのエネルギー構成品目が弱く、物価の下げ圧力となった。携帯電話の通信料も大手各社の値下げの影響が引き続き表れた。
物価上昇率は0.4%上昇だった前月に比べると、伸び率は拡大した。これは消費税率引き上げの経過措置として10月は旧税率(8%)が適用されていた電気代や都市ガス代などの一部の商品・サービスが、11月は新税率(10%)の適用となったことが大きい。
総務省の機械的な試算によると、消費税率引き上げと幼児教育・保育無償化の影響を除いた場合、生鮮食品を除く総合の物価上昇率は0.2%程度。これは同じく0.2%上昇だった17年3月以来の低水準となる。
生鮮食品を除く総合では396品目が上昇した。下落は107品目、横ばいは20品目だった。総務省は「伸び幅は鈍化しているものの、依然としてプラスの状況が続いている」と指摘し、「物価は緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は102.1と前年同月比0.8%上昇した。これは16年4月以来、3年7カ月ぶりの高い水準。「食料、設備修繕・維持など身近なところの幅広い値上げが浸透している」(総務省)とした。生鮮食品を含む総合は102.3と0.5%上昇した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。さらに、なぜか、最近時点でコアコアCPIは従来の「食料とエネルギーを除く総合」から「生鮮食品とエネルギーを除く総合」に変更されています。ですから、従来のコアコアCPIには生鮮食品以外の食料が含まれていない欧米流のコアコアCPIだったんですが、現時点では生鮮食品は含まれていないものの、生鮮食品以外の食料は含まれている日本独自のコアコアCPIだということが出来ます。

photo


ということで、先月の10月統計から消費税率の引上げと幼児教育・保育無償化の影響が現れており、これを含んだ結果となっていて、引用した記事にもあるように、その影響の試算結果が「消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響 (参考値)」として総務省統計局から明らかにされています。少し話がややこしいんですが、この参考値によれば、10月統計について、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIのヘッドライン上昇率+0.4%に対する寄与度が+0.37%となっていて、その+0.37%に対する消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響が合わせて+0.20%、分けると消費税率引上げが+0.77%、幼児教育・保育無償化が▲0.57%と、それぞれ試算結果が示されています。11月統計ではコアCPI上昇率が+0.5%と少し上昇幅を拡大しているものの、引用した記事にあるような経過措置を別にすれば11月統計と10月統計について消費税率引上げと洋右児教育・保育無償化の影響は同じと考えるべきですので、このコアCPI上昇率+0.5%の半分近くの+0.20%が制度要因といえます。実際に、統計局がExceelファイルで提供している消費税調整済指数では、10月も11月も消費税の影響を除くコアCPIの前年同月比上昇率はともに+0.2%と試算されています。先月統計公表時にこのブログでも言及し、また、上に引用した記事にもあるように、電気・ガス料金などの月をまたぐ物価の経過措置が終了したことによる値上げも含まれていますから、結局、実力としての物価上昇は先月10月統計と同じ、ということなのだと私は理解しています。また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.5~+0.6%のレンジで中心値が+0.5%でしたので、ジャストミートしたといえます。
Entry No.6459  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月19日 (木) 21:15:00

世界経済フォーラムによる男女のジェンダー・ギャップ指数で日本は121位と先進国の中で最悪を記録!

一昨日の12月17日、世界経済フォーラム World Economic Forum から「ジェンダー・ギャップ指数報告書2020」 Global Gender Gap Report 2020 が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。いくつかのメディアで報じられているのを見かけましたが、11年連続でアイスランドが世界のトップに君臨するとともに、我が日本は昨年の110位からランクを落として、世界153か国のうち121位と過去最低を記録しています。この指数は、経済・教育・健康・政治の4つの観点、すなわち、Economic Opportunity and Participation と Educational Attainment と Health and Survival と Political Empowerment の4つの指標を合成して作成されているんですが、我が日本は特に最後の政治的な活躍で世界から大きく遅れています。それをビジュアルに示している Figure 4 Range of scores, Global Gender Gap Index and subindexes, 2020 をリポート p.15 から引用すると下の通りです。

photo


hidarisita、というか、一番下の Political Empowerment subindex の低スコアのところに Japan が見えると思います。加えて、リポート p.27 から Selected Country Performances で国別の特徴が並べられてあるんですが、我が日本は p.31 に現れます。そのまま引用すると以下の通りです。「日本のジェンダー・ギャップは先進国の中でメチャクチャ大きく、しかも、過去何年かで拡大してきている」 "Japan's gender gap is by far the largest among all advanced economies and has widened over the past year." で始まっています。

Japan (121)
Japan's gender gap is by far the largest among all advanced economies and has widened over the past year. The country ranks 121st out of 153 countries on this year's Global Gender Gap Index, down 1 percentage point and 11 positions from 2018. Japan has narrowed slightly its economic gender gap, but from a very low base (score of 59.8, 115th). Indeed, the gap in this area is the third-largest among advanced economies, after Italy (117th) and the Republic of Korea (127th). Only 15% of senior and leadership positions are held by women (131st), whose income is around half that of men (108th). The progress achieved in the economic arena has been more than offset by a widening of the political gender gap. Japan has only closed 5% of the gap in this dimension (144th). At 10%, female representation in the Japanese parliament is one of the lowest in the world (135th) and 20% below the average share across advanced economies. Furthermore, there is only one woman in the 18-member cabinet. This translates into a rate of approximately 5% (139th), 26% below the peer (high income) average. Finally, like more than half of the countries studied, Japan has had no female head of state in the last 50 years.


ほとんど引用ばかりなんですが、最後にダメ押しで、いくつかのメディアから私の趣味で記事を引用しておきます。以下の通りです。
Entry No.6458  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月18日 (水) 19:30:00

輸出入ともに減少が続く11月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から11月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲7.9%減の6兆3822億円、輸入額も▲15.7%減の6兆4642億円、差引き貿易収支は▲821億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の輸出額7.9%減、12カ月連続の減少
貿易収支821億円の赤字

財務省が18日発表した11月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額は前年同月比7.9%減の6兆3822億円となった。米国やアジアを中心に世界的な需要の落ち込みが目立った。輸出額の前年割れは12カ月連続。これは2015年10月から14カ月連続で減少して以来の長さとなる。
米国への輸出は12.9%減の1兆2116億円と、4カ月連続の減少となった。減少幅は16年8月(14.5%)以来の大きさだった。自動車や建設用・鉱山用機械の輸出が低迷した。
アジア全体への輸出は5.7%減の3兆6015億円だった。このうち、中国向けは5.4%減の1兆3101億円。中国向けは化学品原料や自動車の部分品などの輸出が減少した。
韓国向けは17%減の3896億円だった。食料品が48.7%減と、下落幅が大きかった。日韓関係の悪化を受け、日本製品の不買運動の影響が現れた可能性がある。欧州連合(EU)向けは7.5%減の6892億円だった。
11月の輸入は15.7%減の6兆4642億円となった。7カ月連続で減少している。原油価格の下落などを背景にサウジアラビアからの原粗油の輸入が減少。中国からの携帯電話などの輸入も減った。
輸出額から輸入額を差し引いた11月の貿易収支は、821億円の赤字(前年同月は7391億円の赤字)だった。2カ月ぶりの赤字となった。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo


ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは貿易収支の赤字を▲3794億円と見込んでいたんですが、まあ、市場の事前コンセンサスほどの大きな貿易赤字ではなかったとはいえ、メチャメチャにレンジが広いので何ともいえません。何となく、輸出入額とも減少して縮小均衡っぽいとはいえ、季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額の減少が10月の前年比▲9.2%減から11月は▲7.9%減へと縮小した一方で、輸入額は10月の▲14.8%減から11月には▲15.7%減とさらに減少幅が拡大したことから、貿易収支の赤字幅は小さくなっています。輸入額の減少は、海外要因で原油価格の下落を受けた部分と、国内要因で消費税率引上げ後の国内需要の落ち込みの両方を反映しているものと考えるべきです。単純な比較はできませんが、10月と11月の輸入額の落ち込みについて、消費税率引上げについてはイーブンに見えるんですが、台風19号で新幹線が止まった10月よりも11月の方が下げ幅が大きいということは、内需の弱さが際立っている気もします。貿易収支の赤字幅の縮小も内需の弱さに起因していると考えるべきで、決していいことではないような気もします。

photo


輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、輸出数量については前年同月比でまだマイナスとはいえ、先進国も中国も需要は回復に向かいつつあることから、我が国の輸出数量にもようやく底入れの兆しが見て取れます。
Entry No.6457  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月17日 (火) 19:45:00

エン・ジャパンによる「2019年 中小企業『冬のボーナス』実態調査」の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、先週水曜日の12月11日にエン・ジャパンから「2019年 中小企業『冬のボーナス』実態調査」の結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされており、冬季賞与は前年よりも増額予定などの結果が示されています。経営サイドへのアンケートですので、ややアップサイドのバイアスは見られるかもしれませんが、まず、エン・ジャパンのサイトから調査結果の概要を5点引用すると以下の通りです。

調査結果 概要
  • ★ 22%の企業が「前年より冬季賞与が増額予定」と5年連続で「減額」を上回るも、「増額」は前年から9ポイント減。
  • ★ 賞与を「増額予定」の回答が多かった業種トップ3は、「広告・出版・マスコミ関連」「金融・コンサル関連」「サービス関連」。
  • ★ 賞与の増額率は「1~3%未満」が最多。増額理由は「業績好調」「社員の意欲向上」。
  • ★ 「賞与」に関する悩み。第1位は「社員への評価、賞与の査定基準」、第2位は「支給額による社員モチベーションへの影響」。
  • ★ 半数の企業が「前年より景気回復を感じない」と回答。


とてもよく取りまとめられているので、これで終わりとして、後はグラフを引用するだけにとどめたいと思います。

photo


まず、上のグラフはエン・ジャパンのサイトから引用しており、今年の冬季賞与の昨年からの変動について問うた結果が示されています。上の方の全社ベースで、引き続き、増額予定が減額予定を上回っていますが、増額予定の比率は昨年よりも▲10%ポイント近く低下しています。下の業種別では、いつものように、「広告・出版・マスコミ関連」や「金融・コンサル関連」といった業種の増額予定が多いんですが、私の受け止めとして「流通・小売関連」ががんばっている印象です。ただ、正社員だけが冬季賞与の対象で、非正規雇用者はそもそも賞与に関してはカウント外と考えられている恐れはあるんではないか、という気もします。

photo


次に、上のグラフはエン・ジャパンのサイトから引用しており、景気の上昇や回復を実感できているかどうかを問うています。昨年よりも今冬の方が景気実感が悪化しているのは、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速からして、まあ、当然なんでしょう。中小企業対象のアンケートですので、景気実感がよくない方に振れているのは事実だろうと思います。
Entry No.6456  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月16日 (月) 22:50:00

来年2020年半ばくらいまでの短期経済見通しやいかに?

先週12月9日に内閣府から公表された本年7~9月期GDP統計速報2次QEを受けて、シンクタンクや金融機関などから来年度2020年度末くらいまでの短期経済見通しがボチボチと明らかにされています。四半期ベースの詳細計数まで利用可能な見通しについて、2020年暦年上半期の東京オリンピック前くらいまで取りまとめると以下の通りです。なお、下のテーブルの経済見通しについて詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。計数の転記については慎重を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、各機関のリポートでご確認ください。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名2019/7-92019/10-122020/1-32020/4-6FY2019
actualforecast
日本経済研究センター+0.4
(+1.8)
▲1.5+0.2+0.5+0.6
日本総研(▲3.7)(+0.9)(+2.3)+0.9
大和総研(▲3.8)(+1.1)(+1.2)+0.9
みずほ総研▲1.2
(▲4.8)
+0.4
(+1.4)
+0.3
(+1.4)
+0.8
ニッセイ基礎研▲1.0
(▲4.0)
+0.1
(+0.4)
+0.5
(+1.8)
+0.8
第一生命経済研▲1.0
(▲3.9)
+0.2
(+0.7)
+0.2
(+0.7)
+0.8
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.9
(▲3.6)
+0.5
(+2.2)
+0.3
(+1.1)
+1.0
SMBC日興証券▲1.1
(▲4.1)
+0.4
(+1.8)
+0.5
(+2.2)
+0.9
農林中金総研▲0.5
(▲2.0)
▲0.3
(▲1.2)
+0.2
(+1.0)
+1.0
東レ経営研▲1.1+0.2+0.3+0.8


一番右の列の2019年度成長率は前年度比そのままですが、四半期成長率については上段のカッコなしの数字が季節調整済み系列の前期比で、下段のカッコ付きの数字が前期比年率となっています。2019年7~9月期までは昨日内閣府から公表された2次QEに基づく実績値、10~12月期からは見通しであり、すべてパーセント表記を省略しています。なお、日本経済研究センターのリポートでは前期比しか出されておらず、逆に、日本総研と大和総研では前期比年率の成長率のみ利用可能でしたので、不明の計数は省略しています。ということで、見れば明らかなんですが、10月の消費税率の引上げの後の動向については、足元の10~12月期はすべての機関でマイナス成長を見込んでいます。
もうひとつの観点は、消費税率引き上げのショックがどの程度長引くかで、多くの機関はマイナス成長は10~12月期の1四半期だけで、来年2020年1~3月期にはプラス成長に回帰すると見込んでいます。この点の少数意見は農林中金総研であり、2020年1~3月期までマイナス成長が2四半期連続で継続すると見込んでいます。ただ、上のテーブルを見ても明らかな通り、2四半期連続のマイナス成長とはいえ、他のシンクタンクが1四半期に大きなマイナス成長で調整速度速く回復に向かうと見ているところ、農林中金総研だけは他のシンクタンクと比較して小幅のマイナス成長が2四半期続く、と見ているように私は解釈しています。調整続度の違いだけなのかもしれませんし、加えて、農林中金総研のリポートでも2020年4~6月期にはプラス成長に回帰すると予測しています。ただし、もしも、農林中金総研の見通しが正しければ、世間では2四半期連続のマイナス成長でテクニカルな景気後退局面入りのシグナルと受け取る可能性がないでもありませんし、マインドに悪影響を及ぼす可能性は否定できませんが、まあ、2020年に入れば、東京オリンピック・パラリンピックの経済効果などもあって、それほど長くマイナス成長は続かないとの見方が多いように私は受け止めています。
なお、私の想像の限りで、三菱総研は年度ベースの短期経済見通しをひとまず出し、その後、四半期ベースの計数を調えるんだろうと思わないでもないんですが、上のテーブルには収録できませんでした。よほど、突飛なものが出ない限り、上のテーブルをアップデートしたり、引き続き短期見通しをフォローするつもりはありません。悪しからず。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のサイトから引用しています。

photo
Entry No.6455  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月13日 (金) 21:30:00

製造業大企業の業況判断DIがゼロまで落ちた日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から12月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から▲5ポイント低下してゼロを示した一方で、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比+3.3%の増加と9月調査の結果から上方修正されてます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業景況感、4期連続悪化 日銀短観のDIゼロ
日銀が13日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)はゼロとなり、9月の前回調査から5ポイント悪化した。米中貿易戦争で外需の低迷が続き、4四半期連続の悪化となる。大企業非製造業も個人消費の落ち込みで2期連続で悪化した。ただ政府の増税対策もあり、前回増税時よりも小幅の悪化にとどまった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた割合を引いた値。大企業製造業のゼロは、日銀が大規模緩和に踏み切る直前の2013年3月(マイナス8)以来、6年9カ月ぶりの低水準となる。QUICKによる市場予想の中心値(プラス2)も下回った。
主要16業種のうち、11業種で悪化した。アジア向け輸出が低迷する自動車や鉄鋼のほか、東京五輪の建設需要が一巡した窯業・土石製品などが悪化した。台風19号による工場の操業停止も響いた。
大企業非製造業の業況判断DIはプラス20で、前回調査から1ポイント悪化した。消費増税の影響で、小売りや卸売りが低迷した。ラグビーワールドカップの特需を受け、宿泊・飲食サービスが改善した。
今回の短観では消費増税による駆け込み需要の反動減や消費意欲の低迷を自動車や小売りなどの業種が受けた。ただ前回の増税直後の14年6月調査では、両業種ともに23ポイント悪化したが、今回調査では自動車が13ポイント、小売りが7ポイントの悪化にとどまった。大企業非製造業は14年6月調査で5ポイント悪化していた。
3カ月先の見通しを示す先行きの業況判断DIは大企業製造業がゼロと足元から横ばいとなる。半導体やスマートフォンなどIT(情報技術)関連の需要回復が見込まれる一方、世界経済の不透明感は続く。非製造業はプラス18で足元から2ポイント悪化となる。増税の個人消費への影響を懸念する声が残る。
短観は日銀が3カ月に1度、全国約1万社の景況感など経営状況を聞き取り公表している。12月調査の回答期間は11月13日から12月12日まで、回収基準日の11月27日までに約7割が回答した。


やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

photo


んまず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、ヘッドラインとなる大企業製造業の足元の業況判断DIは中央値で+3、レンジでも▲1~+6でしたから、ほぼ下限に近いと受け止めています。加えて、3日前の12月10日に日銀短観予想を取り上げた際には、大企業製造業の足元の業況判断DIはギリギリながらプラスにとどまり、次の3月調査では横ばいないし反転して改善する可能性がある、という旨の結論だった気がしますが、実績が出てみるとかなり悲観的な内容であり、足元でゼロ、さらに、3か月後のの先行きもゼロ、という結果でした。ただし、消費税率の引上げがあったにもかかわらず、大企業非製造業の業況判断DIは意外と底堅く、足元でも9月調査から▲1悪化の+20で踏みとどまり、先行きも▲2悪化の+18と見込まれています。大企業について少し詳しく見ると、自動車が消費税率引上げのダメージあったほか、業務用機械、鉄鋼、生産用機械、造船・重機等、はん用機械などの資本財関連産業の悪化幅が大きくなっている印象です。世界経済の減速を背景に資本財への需要が落ちていると私は受け止めています。非製造業については、企業規模を問わず、小売りの悪化幅が大きく、消費税率引上げの影響が読み取れます。ただ、国際商品市況における石油価格の落ち着きから電気・ガスが景況感を回復させています。先行きについても、9月調査から12月調査の足元への変化と基本的に同じと私は受け止めていますが、意外と目先の景気は底堅いながら、東京オリンピック・パラリンピックを終えた来年2020年の今ごろ、1年先くらいの景気がどうなっているか、OECD先行指標に先進国経済回復の兆しあるとはいえ、何とも見通し難いところです。

photo


続いて、設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。ただ、足元で設備と雇用の生産要素については、不足感が和らぐとまでいわないまでも、不足感の拡大は止まりつつあるようですが、大企業製造業の生産・営業用設備判断DIは6月調査の▲1から9月調査では+1の過剰感に転化し、12月調査でも+2とやや過剰感を強めています。また、中堅・中小企業製造業でも同様に設備不足感がゼロないしプラスの過剰感に転じており、設備不足感が和らいでいるのも事実です。ただ、ゼロをはさんだ動きながら、±1~2ポイントの変化はどこまで現実的か、あるいは、統計的に有意か、については議論あると私は考えています。雇用人員判断DIも本日公表の12月調査では前回9月調査から不足感は横ばい、ないし、やや和らいでいますが、先行きは不足感が強まる見込みとなっており、不足感が大企業で▲20を、中堅・中小企業では▲30を軽く超えていますので、設備の不足感が少し和らいだ一方で、まだまだ人手不足は深刻であると考えるべきです。ただ、何度も繰り返していますが、雇用は生産の派生需要であり、景気が後退局面に入ると劇的に労働への需要が減少する可能性は忘れるべきではありません。当たり前ですが、人口減少社会とはいえ、永遠に人手不足が続くわけではありません。

photo


日銀短観の最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2019年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で▲2.8%減という水準で始まった後、6月調査では+2.3%増に、また、9月調査でもわずかながら+2.4%に上方修正された後、12月調査では+3.3%増に順調に上方修正が繰り返されています。通常の日銀短観の統計としてのクセでは、3月調査は前年度比マイナスから始まるとしても、その後は順調に上方修正される、というのがあり、今年度の設備投資計画も、この動きに沿っていると私は受け止めています。ただ、長期系列が取れないので注目度は高くありませんが、ソフトウェア・研究開発を含み、土地投資を除くベースでは、前年度比+5.0%増とさらに大きな伸び率ながら、9月調査の+5.1%増の計画からは下方修正されていたりして、世界経済の不透明感もまったく払拭さる気配すらなく、やや設備投資の伸びが力強さに欠ける気もします。もちろん、基本は、先行きの生産や企業利益とともに、人手不足も視野に入れつつ実行される設備投資なんですが、いずれにせよ、今年度2019年度の設備投資計画は前年度比で増加する見込みながら、それほど力強く上向くという実感はないかもしれません。

何度も繰り返しにありますが、おそらく、私は現在の足元から目先の来年前半ないし年央、東京オリンピック・パラリンピックあたりまでの景気は、報道されているより、意外と底堅いと感じていますが、その先、今から1年先くらいの時点の景況感はまったく不透明です。
Entry No.6451  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月12日 (木) 23:30:00

4か月連続で前月を下回り基調判断が下方修正された機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から10月の機械受注が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲6.0%減の7988億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

機械受注6.0%減 10月、基調判断引き下げ
内閣府が12日発表した10月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比6.0%減の7988億円だった。製造業・非製造業ともに幅広い業種で投資需要が減少した。4カ月連続で前月を下回っていることから、内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」に引き下げた。
受注額はQUICKがまとめた民間予測の中央値(0.9%増)を大幅に下回った。製造業は1.5%減で、10月まで3カ月連続で減少した。海外経済の減速に伴い外需の縮小が続き、生産や情報通信に使う機械の需要が減った。
非製造業は5.4%減で、2カ月ぶりに減少した。農林漁業では10月の消費税率引き上げ後にトラクターなど農林用機械への投資を減らす動きがみられ、需要が約3割減少した。情報サービス業や通信業からの受注減もマイナスに大きく寄与した。内閣府は「農林漁業は例外的な動きで、全体としては消費増税の影響で機械受注が落ち込んだことはない」とした。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、電力と船舶を除くコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比の中央値は+1.0%増であり、レンジでは▲5.0~+3.5%でしたから、わずかとはいえ、下限をさらに下回る大きな減少でした。しかも、4か月連続の前月割れですので、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「持ち直しの動き」を削除して、「足踏みがみられる」に半ノッチ下方修正しています。また、上のグラフにも見られる通り、受注水準としてもコア機械受注の8000億円割れは2015年年央の7~8月以来の低水準となっています。加えて、10月統計ではコア機械受注のうちの製造業と非製造業(船舶と電力を除く)がともに前月比マイナスで、特に、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の停滞を受けて、製造業では3か月連続のマイナスを記録しています。先月統計の公表時に10~12月期のコア機械受注は季節調整済み系列の前期比で+3.5%増と見込まれていたんですが、とても厳しい四半期スタートとなっています。引用した記事の最後の方で、内閣府の公式見解として、消費増税で機械受注が落ちたわけではない旨の発言が収録されていますし、台風19号の影響もご同様で機械受注への影響はそれほどないものと私には見えるのですが、そうであれば、何ともいえないながら、世界経済の低迷を反映して、我が国経済も停滞の方向に向かっている可能性があるのかもしれません。

ただ、明るい話題、というわけでもないんでしょうが、今週月曜日の12月9日に公表された経済協力開発機構(OECD)の先行指標 CLI=Composite Leading Index を見ていると、あるいは、ひょっとしたら、何と申しましょうかで、中国については少し前から景気反転の兆しがあり、また、米国とOECD加盟国の先進国ではも2019年9月を底に10月から景気が反転し上昇に転じた可能性があるような気がしないでもありません。リポートの3ページ目のテーブルを基にしつつ、私個人の希望的観測を込めた楽観的な見方です。念のため。
Entry No.6450  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月11日 (水) 20:45:00

ようやくプラスに転じた企業物価(PPI)と大きくマイナスに落ち込んだ法人企業景気予測調査!

本日、日銀から11月の企業物価 (PPI) が、また、財務省から10~12月期の法人企業景気予測調査が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.1%と、今年6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、6か月振りのプラスを記録しました。ただし、10月からの消費税率引上げの影響を除くベースでは▲1.5%の下落と試算されています。続いて、法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は7~9月期+1.1の後、足元の10~12月期は▲6.2と、消費税率の引上げや台風の影響などからマイナスに転じたものの、来年2020年1~3月期には+2.0、さらに4~6月期は+1.1と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の企業物価指数、前年比0.1%上昇 消費税率引き上げで
日銀が11日発表した11月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.2と、前年同月比で0.1%上昇した。上昇は6カ月ぶり。消費税率の引き上げが押し上げに寄与する一方、石油・石炭製品の下落などが響き、伸びは小幅にとどまった。前月比でみると、0.2%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年比で5.9%下落し、7カ月連続のマイナスだった。前月比は0.2%上昇した。輸入物価は前年同月比11.2%下落し、前月比は0.2%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。10月の消費増税の影響を除いたベースでの企業物価指数は前年同月比で1.5%下落した。6カ月連続で前年を下回った。前月比では0.1%上昇だった。
日銀の調査統計局は11月の企業物価について「消費税率引き上げの前後で企業の価格設定スタンスに大きな変化が生じていないことが改めて確認された」としている。
大企業景況感マイナスに 10-12月、米中摩擦など響く
内閣府と財務省が11日発表した10▲12月期の法人企業景気予測調査によると、大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス6.2だった。マイナスは2四半期ぶり。自動車などで中国を中心とする海外需要が低調だったほか、小売業で消費税率の引き上げや台風の影響もあった。
BSIは前四半期と比べた景況判断で「上昇」と答えた企業の割合から「下降」と答えた企業の割合を引いた値で、7▲9月期はプラス1.1だった。
今回の調査時点は11月15日。大企業のうち製造業はマイナス7.8となり、4四半期連続で「下降」の割合が大きかった。7▲9月期のマイナス0.2からマイナス幅も拡大した。米国との貿易戦争が続く中国で自動車部品や工作機械の需要が落ち込んでいる影響が大きい。10月の台風19号で工場が被災したといった声も聞かれた。
非製造業は2四半期ぶりに「下降」が上回り、マイナス5.3となった。卸売業で中国向けの機械出荷が減った。小売業では家電や百貨店で増税前の駆け込み需要の反動が出た。
全体として大企業の景況感の落ち込みは前回の消費増税後の2014年4▲6月期(マイナス14.6)よりは小幅にとどまった。内閣府と財務省は高水準の企業収益や堅調な設備投資などを理由に「内需を支えるファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)はこれまで同様にしっかりしている。今回の結果は、緩やかに回復している経済全体の傾向を反映している」との見方を示した。
ただ、外需の縮小で製造業を中心に逆風はなお続いている。先行きの20年1▲3月期に大企業の景況感はプラスへと回復する一方、中堅企業や中小企業はマイナス圏から脱せない見通しだ。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


先月10月統計の国内物価の前年同月比上昇率は消費税を含めても▲0.4%の下落、消費税の影響を除けば▲1.9%と、私は軽いショックを受けたんですが、さすがに、11月統計では消費税を含めればプラスに転じたものの、消費税を別にすればまだ▲1.5%の下落と大きなマイナスを続けていることに変わりはありません。特に、11月統計からは、いわゆる経過措置、すなわち、税率引上げ日の10月1日をまたぐ役務などの料金、例えば、旅客運賃、電気料金、請負工事などについての経過措置が縮小しますから、それだけでも物価押し上げ効果がある点は留意する必要があります。また、前年同月比上昇率を項目別に見ると、相変わらず、石油・石炭製品が▲8.3%の下落、非鉄金属が▲4.3%の下落、化学製品も▲3.5%の下落など、国際商品市況の動向や中国経済の停滞に起因する品目の下落が続いています。なお、先月のブログでも書きましたが、企業物価指数(PPI)のうちの輸入物価の円建て原油価格指数は、昨年2018年のピークが11月の142.5でしたから、本日公表された11月統計でPPI輸入物価に現れる原油価格の前年同月比への影響は底を打つ可能性が高いんではないか、と私は期待しています。来月の統計発表がチョッピリ楽しみです。

photo


続いて、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、企業物価(PPI)と同じで、景気後退期を示しています。消費税率が引き上げられたばかりの足元の10~12月期が大きく悪化しているのは、台風もありましたし、ある程度までは想定内の気がします。ただ、グラフはありませんが、私がやや気がかりなのは設備投資計画の下方修正です。すなわち、ソフトウェアを含み土地購入額を除くベースの今年度2019年度の設備投資計画が、前回調査の+8.3%増から+7.8%に下方修正されています。設備判断DIはまだ不足超ながら、その不足幅が徐々に縮小してきているのも事実で、明後日公表予定の日銀短観でも設備投資計画は確認したいと思います。
Entry No.6449  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月10日 (火) 19:30:00

今週金曜日12月13日公表予定の日銀短観では企業マインドはどこまで悪下するか?

今週金曜日12月13日の公表を控えて、シンクタンクから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画はもちろん今年度2019年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、いつもの通り、足元から先行きの景況感に着目しています。一部にとても長くなってしまいました。それでも、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
9月調査 (最近)+5
+21
<+2.4%>
n.a.
日本総研+3
+13
<+3.0%>
先行き(2020年3月調査)は、全規模・全産業で12月調査対比+2%ポイントの改善を予想。海外情勢の先行き不透明感が残るものの、自然災害の影響が一巡するほか、世界的な半導体需要の持ち直しが業況見通しに反映され、製造業、非製造業ともに改善する見込み。
大和総研+2
+17
<+2.5%>
12月日銀短観では、大企業製造業の業況判断DI(先行き)は+3%pt(最近からの変化幅: +1%pt)、大企業非製造業の業況判断DI(先行き)は+16%pt(同: ▲1%pt)と予想する。大企業製造業では、2018年初から続いてきた悪化傾向が止まる見通しだ。ただし、最近の日銀短観において、先行きに慎重な結果が示されるという下方バイアスが見られる点に留意した。
本日(12月5日)閣議決定される財政支出額13兆円の経済対策や、台風被害からの復興・国土強靱化政策に伴う公共事業の活発化が見込まれることは、関連業種の業況を押し上げるだろう。さらに、世界的な半導体需要に明るさが見られ始めたこともプラス材料だ。一方で、世界経済の先行き不透明感の継続は、広範な業種の業況の押し下げに作用するだろう。
みずほ総研+3
+18
<+3.0%>
先行きの製造業・業況判断DIは横ばいを予測する。中国経済を中心とした海外経済の減速や米中交渉を巡る不確実性は残存している。加えて、ブレグジットを巡る英国議会選挙(2019年12月12日実施)の行方や香港情勢の緊迫化、中東における地政学的リスクの高まりなども懸念材料だ。グローバルなIT市場の持ち直しから電気機械業で先行きの景況感は改善が見込まれるが、海外経済の減速傾向が続くことから輸送機械業が横ばい、国際商品市況の軟化を受けて素材業種が悪化することから、全体として製造業の先行きの景況感は改善が見込みづらいだろう。
先行きの非製造業・業況判断DIについては横ばいを見込む。小売業や宿泊・飲食サービス業、対個人サービス業等は消費増税による反動減からの消費の持ち直し期待から先行きの景況感は改善するだろう。一方、幅広い業種について、労働需給のひっ迫に伴う人件費上昇が引き続き重石となることに加え、製造業の不振が非製造業へ波及することへの懸念から卸売業や対事業所サービス業等が下押しするとみている。
ニッセイ基礎研+2
+17
<+2.9%>
先行きの景況感は方向感が分かれそうだ。海外経済の回復は遅れているが、米中貿易摩擦に関して部分合意に向けた交渉が続いており、貿易摩擦緩和への期待が高まっている。また、ITサイクル持ち直しへの期待もあり、製造業では先行きにかけて景況感の持ち直しが示されそうだ。一方、非製造業では、前回消費増税後のように、増税後の内需回復の遅れが懸念されるほか、日韓関係改善に伴う韓国人訪日客の回復も見通せないことから、先行きにかけて景況感の低迷が見込まれる。
第一生命経済研+4
+16
<大企業製造業+9.3%>
1業況判断DIの悪化幅は、大企業・製造業で前回比▲1ポイント。非製造業で同▲5ポイントとなると予測する。果たして、12月会合における追加緩和の予想はどのように変わるだろうか。
三菱総研+2
+17
<+3.2%>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業は+2%ポイントと、業況は横ばいを予測する。非製造業は+18%ポイントと、小幅な業況改善を予測する。ただし、消費税増税後の消費の低迷長期化、米中貿易摩擦の一段の激化などによる海外経済の減速、金融市場の不安定化などには引き続き警戒が必要な局面である。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+2
+17
<大企業全産業+5.0%>
日銀短観(2019年12月調査)の業況判断DI(最近)は、大企業製造業では、前回調査(2019年9月調査)から3ポイント悪化の2と、4四半期連続で悪化すると予測する。消費増税後の一時的な内需の落ち込みと自然災害が下押し要因となったとみられる。先行きについては、海外経済の不透明感は残る一方、増税の影響が剥落し、内需が堅調さを取り戻すことへの期待が反映され、1ポイント改善の3となろう。
大企業非製造業の業況判断DI(最近)は前回調査から4ポイント悪化の17になると予測する。消費増税に伴う一時的な需要の減少により、小売や宿泊・飲食サービスを中心に悪化するだろう。先行きについては、増税の影響は徐々に剥落するものの、すでにDIが高水準である業種を中心に先行きに慎重となる傾向があり、2ポイント悪化の15となると予測する。


当然ながら、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスのうちの大企業製造業の業況判断DIの中央値である+3とほぼほぼ同じ結果となっています。ということは、日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIはやや悪化するものの、日銀による9月調査の先行きと同じ+2近傍で何とかゼロに達する前で踏みとどまり、次の3月調査に相当する先行き業況判断DIは横ばいないし反転、との予想が多くなっています。私が見た範囲では、というのは上のテーブルにある限りのシンクタンクということなんですが、大企業製造業の先行きの業況判断DIが足元と横ばいなのはみずほ総研と三菱総研くらいなもので、ほかのシンクタンクは軒並み先行きは、統計のクセとして慎重な見方が示されるものの、改善を示すとの見方が多数派でした。ただ、大企業製造業とともに大企業非製造業でも先行き業況判断DIの横ばいを見込むのはみずほ総研だけで、三菱総研は大企業非製造業については先行きはプラスと予想しています。ですから、長期に渡って低下を続けた消費者マインドと違って、我が国企業マインドはかなり底堅いと私は受け止めています。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。

photo
Entry No.6448  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月09日 (月) 19:50:00

7-9月期GDP統計2次QEは駆込み需要でちょっとびっくりの高成長!

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.4%、年率では+1.8%と消費税率引上げ直前の駆込み需要込みながら、4四半期連続のプラス成長を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月期のGDP改定値、年率1.8%増 設備投資や個人消費伸びる
内閣府が9日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.4%増、年率換算で1.8%増だった。速報値(前期比0.1%増、年率0.2%増)から上方修正された。法人企業統計など最近の統計結果を反映した。企業の設備投資や個人消費などの伸びが寄与した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.2%増、年率0.8%増と速報値からの上振れが見込まれていたが、これも上回った。生活実感に近い名目GDPは前期比0.6%増(速報値は0.3%増)、年率は2.4%増(同1.2%増)だった。
実質GDPの内訳を見ると上方修正が目立った。民間企業の設備投資は実質で1.8%増(同0.9%増)だった。2日発表の7~9月期の法人企業統計で、ソフトウエアを除く設備投資額(季節調整済み)が伸びたことが寄与した。自動車や通信機械向けの電子部品やオフィスビルなど不動産への投資が目立った。
携帯電話の通話料金などが上昇し、個人消費は前期比0.5%増(同0.4%増)だった。不動産仲介手数料が寄与し、住宅投資は1.6%増(同1.4%増)となった。また民間在庫の寄与度はマイナス0.2%(同マイナス0.3%)、公共投資は0.9%増(同0.8%増)と1次速報値から上方修正された。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス0.6%(同プラス0.2%)に上振れした。輸出から輸入を引いた外需はマイナス0.2%と1次速報値から変わらなかった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス0.6%と1次速報値から変わらなかった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/7-92018/10-122019/1-32019/4-62019/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.6+0.3+0.6+0.5+0.1+0.4
民間消費▲0.2+0.2+0.2+0.6+0.4+0.5
民間住宅+0.4+1.1+1.1+0.5+1.4+1.6
民間設備▲3.4+3.0▲0.2+0.9+0.9+1.8
民間在庫 *(+0.3)(▲0.0)(+0.1)(▲0.1)(▲0.3)(▲0.2)
公的需要▲0.3+0.3+0.1+1.6+0.6+0.7
内需寄与度 *(▲0.5)(+0.7)(+0.3)(+0.8)(+0.2)(+0.6)
外需寄与度 *(▲0.1)(▲0.4)(+0.4)(▲0.3)(▲0.2)(▲0.2)
輸出▲1.8+1.2▲2.1+0.5▲0.7▲0.6
輸入▲1.3+3.8▲4.1+2.1+0.2+0.3
国内総所得 (GDI)▲0.9+0.2+1.1+0.4+0.1+0.5
国民総所得 (GNI)▲1.0+0.3+0.9+0.5+0.1+0.5
名目GDP▲0.6▲0.0+1.3+0.6+0.3+0.6
雇用者報酬+0.3+0.4+0.5+0.9▲0.0▲0.1
GDPデフレータ▲0.3▲0.6+0.1+0.4+0.6+0.6
内需デフレータ+0.8+0.2+0.3+0.4+0.2+0.2


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7~9月期の最新データでは、前期比成長率がジワジワと縮小しつつもまだ十分なプラス成長を示し、需要項目別寄与度では、赤の消費と水色の設備投資がプラスの寄与を示している一方で、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がマイナスの寄与となっているのが見て取れます。

photo


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが中央値で前期比+0.2%、年率+0.7%でしたし、レンジでも年率+0.2~+1.2%でしたので、上限を突き抜けるような高成長、と見えますが、おそらく想定以上に消費税率引上げ直前の駆込み需要が大きかったのでしょうから、逆に、10月以降の反動減の大きさも気にかかるところです。でも、内需寄与度が+0.6%、外需が▲0.2%となっており、基本的には1次QE公表時と同じで、私は駆込み需要を考慮しても内需は底堅いと判断しています。ただ、幸か不幸か、駆込み需要が大きいだけに反動減も覚悟すべき、ということになります。いずれにせよ、10~12月期はマイナス成長が確実視されており、年率なら▲3%を超えるマイナス幅も考えられます。いずれにせよ、GDPの需要項目ほぼほぼすべてが上方改定されています。すなわち、上のテーブルに従って季節調整済みの前期比で見て、民間消費+0.4%増→+0.5%増、民間住宅+1.4%増→+1.6%増、民間設備の上方改定幅が特に大きく+0.9%増→+1.8%増、公的需要も+0.6%増→+0.7%増、などなどです。輸出入まで上方改定されていますが、純輸出の寄与度は相殺してか変化ありません。繰り返しになりますが、10~12月期は消費税率引上げによる消費の冷え込みに対して、世界経済がにわかに回復しているとも思えず、マイナス成長が確実です。12月5日に政府が閣議決定した「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」は事業規模26.0兆円、財政支出13.2兆円に上っていますが、足元の10~12月期の成長率に及ぼす効果はほとんどありません。世界経済の低迷が続き、民間需要が消費税率引上げなどでダメージある間は政府が景気を下支えする必要があります。

photo


加えて、本日は、内閣府から11月の景気ウォッチャーが、また、財務省から10月の経常収支についても、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+2.7ポイント上昇の39.4を、先行き判断DIも+2.0ポイント上昇の45.7を、それぞれ記録しています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆8168億円の黒字を計上しています。いつものグラフは上の通りです。
Entry No.6447  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月07日 (土) 10:30:00

米国雇用統計はちょっとびっくり+266千人増で利下げストップか?

日本時間の昨夜、米国労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+2666千人増とちょっとびっくりするくらいの堅調振りで、失業率は先月からさらに▲0.1%ポイント低下して3.5%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の8パラを引用すると以下の通りです。

Economy added booming 266,000 jobs in November and the unemployment rate fell to 3.5%
Hiring picked up sharply in November as employers added a booming 266,000 jobs, underscoring a healthy economy despite trade jitters and sluggish global growth, and easing recession fears.
The gains far outpaced the 184,000 expected even after accounting for the return of striking General Motors workers.
The unemployment rate fell from 3.6% to 3.5%, matching a 50-year low, the Labor Department said Friday.
As the 2020 election draws closer, job creation under President Trump is likely to be scrutinized more closely. The federal tax cuts and spending increases he spearheaded spurred more hiring but his trade fights and immigration crackdown likely have offset much of the gains, leading economists say.
Also encouraging: Job gains for September and October were revised up by a total of 41,000. September's additions were raised from 180,000 to 193,000 and October's from 128,000 156,000.
A six-week GM strike held down employment by 46,000 in October and that dampening effect was expected to reverse last month since the factory workers were back on the job.
Other forces also may have skewed the numbers. Widespread worker shortages could have prompted employers to pull forward hiring or minimize layoffs -- a strategy that often occurs in November during tight labor markets, Goldman Sachs said.
At the same time, Midwest snowstorms likely reduced payroll growth by about 10,000, Goldman said. And the late Thanksgiving may have curtailed job gains in retail, the research firm said. Since Labor's survey is conducted mid-month, it may have missed holiday workers added shortly before Black Friday.
More generally, average monthly job growth has downshifted to about 170,000 this year from 223,000 in 2018, though the latter figure has tentatively been revised down. Many economists expect gains of only about 100,000 next year because of both a slowing economy and a low jobless rate that's making it harder for businesses to find qualified workers.
Consumer spending, which accounts for about 70% of economic activity, has remained on solid footing. But business investment and manufacturing have pulled back amid a sluggish global economy and uncertainty generated by President Trump's trade war with China.
Average hourly earnings increased 7 cents to $28.29, nudging the annual gain from 3% to 3.1%.
Yearly pay increases shot past 3% last year as employers jostled for a limited supply of workers but they've slowed this year. That has helped keep a lid on inflation, allowing the Federal Reserve to cut interest rates three times this year without worrying the moves would rev up the economy and lead to a spike in consumer prices.


ついつい長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

photo


今週半ばに、民間企業の給与計算などのバックオフィスのアウトソース先の企業であるADPから民間企業雇用の増加が11月はわずかに+67千人増、と明らかにされた際には、私も含めて多くのエコノミストが「こりゃ米国経済はヤバい」と感じたんではないかと思うんですが、何とびっくりで、米国労働省の公式統計では11月は+266千人増という結果が飛び出しました。統計の信頼性に関する議論はともかくとして、失業率も3.5%まで低下していますし、米国の雇用は堅調そのものと考えるべきです。先月の今ブログで言及したGMのストライキの終結により、Motor vehicles and parts では+413千人増を記録していますし、製造業全体でも10月の前月差▲50千人のマイナスから11月は+44千人のプラスに転じています。非製造業でも、ブラック・フライデー以降のクリスマス商戦の好調ぶりが伝えられていますが、11月統計では、Wholesale trade が▲4.3千人減となったほか、Retail trade では+2.0千人増ですし、関連する Transportation and warehousing でも+15.5千人増と伸びを高めています。直近3か月の月平均も好調の目安とされる20万人を再び上回っています。ですから、連邦準備制度理事会(FED)では米中間の貿易摩擦に起因する景気不安を和らげるため、連邦公開市場委員会(FOMC)3会合連続で政策金利を引き下げてきましたが、こういった雇用の底堅さを受けて、また、下のグラフに見るように、11月の平均時給は前年同月比+3.1%増と、16か月連続で3%台の伸びを続けていて賃金にも上昇圧力が見られることなどから、今月12月10~11日のFOMCでは4会合ぶりに利下げを見送る見通しとの観測が広がっています。

photo


ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用の堅調振りに歩調を合わせて、賃金上昇率も3%台が続いており、11月も前年同月比で+3.1%の上昇と高い伸びを示しています。日本や欧州と違って、米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いている一方で、政権からの圧力もあって利下げが模索されていましたが、しばらく小休止なのかもしれません。ただ、左派エコノミストとして、私はトランプ政権の圧力は別と考えても、一般論ながら、金融緩和策や財政的な拡張政策は貧困解消を含めて国民の生活水準向上に役立つものと考えています。
Entry No.6445  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月06日 (金) 19:10:00

大きく下降した景気動向指数を見て経済対策の必要性を感じる!!!

本日、内閣府から10月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲0.1ポイント下降してで91.8を、CI一致指数も▲5.6ポイント下降して94.8を、それぞれ記録し、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、先月から「悪化」に引き下げられたまま据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気指数、6年半ぶり低水準に 消費増税と台風で
持ち直し、年明け以降との見方

国内景気に急ブレーキがかかっている。内閣府が6日発表した10月の景気動向指数は、景気の現状を示す一致指数が94.8と6年8カ月ぶりの低水準になった。消費税率の引き上げと大型の台風が重なり、生産や出荷などの指標が軒並み悪化した。同日発表の家計調査では10月の消費支出が前年同月比5.1%減。景気の持ち直しは年明け以降との見方が多く、停滞が長引く恐れがある。
景気の一致指数(2015年=100)の推移から機械的に決まる基調判断は3カ月連続で「悪化」となり、定義上は景気後退の可能性が高いことを示している。前月比のマイナス幅は5.6ポイントで東日本大震災のあった11年3月以来の大きさだ。前回14年4月の増税時(4.8ポイント低下)よりも落ち込みが激しい。
10月は一致指数のもとになる9項目の統計のうち発表済みの7項目すべてが指数の押し下げ要因となった。特に影響が大きかったのは小売販売額や投資財出荷、鉱工業生産などだ。
小売販売額は自動車やホームセンターなどで増税前の駆け込み需要の反動が出ている。台風で店舗を開けなかったり、客数が減ったりしたことも響いた。投資財出荷ではショベル系掘削機械が台風で部品調達に支障を来す事態などが起きた。鉱工業生産は米中貿易戦争を背景とした世界経済の減速も影を落としている。
指数による景気の基調判断は、最も低い「悪化」から当面抜け出せない公算が大きい。10月の指数が大幅に低下したことが、判断の基準となる3カ月平均や7カ月平均の値に響くからだ。悪化より1段階上の「下げ止まり」への上方修正は「早くて20年1月分」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏)との見方が強い。1月分の指数の発表は3月上旬だ。
10月の消費の落ち込みは総務省の家計調査でも鮮明になった。2人以上の世帯の消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年同月に比べて5.1%減った。落ち込み幅は前回の消費増税後の14年4月(4.6%減)より大きい。
増税前の1年間の平均の消費支出を100とする指数で一時的なブレを除いて比べると、今年10月は95.6で前回増税時の14年4月は95.3とほぼ変わらない水準だった。今回は増税後に消費が急減しないようキャッシュレス決済でのポイント還元などを実施しているなかで、消費減少の要因分析が非常に重要になっている。
西村康稔経済財政・再生相は6日の閣議後の記者会見で、台風の影響に言及しつつ「全体として駆け込みの反動は前回ほどではない」と述べた。日本商工会議所の三村明夫会頭も同日の記者会見で「基調的な落ち込みと台風の影響が大きかったのではないか」と分析した。
14年は消費支出が増税2カ月目の5月も8.0%減と落ち込むなど、前年割れが増税後13カ月続いた。今回も足元の消費の基調自体が弱いとすると、持ち直しは遅れかねない。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、景気局面に関する注目が上がっているのか、まあ、うしろ半分以上は消費動向の記事なんですが、かなり長々と引用してしまいました。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo


いつも論じているように、景気動向指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が高いんですが、10月統計の一致指数のマイナス寄与が大きい順に採用系列を並べると、商業販売額(小売業)(前年同月比) ▲1.92、投資財出荷指数(除輸送機械) ▲1.11、商業販売額(卸売業)(前年同月比) ▲1.11、などとなり、4番目にようやく生産指数(鉱工業) ▲0.72 が来ます。やはり、10月からの消費税率引上げによる商業販売の落ち込みが大きいという印象です。さらに、引用した記事の後半の総務省統計局による家計調査に基づく記事では、やっぱり、今回の消費増税の反動減が前回2014年4月時よりも大きいという結果が示されていますが、2014年と違って今回は消費税に加えて台風19号という自然災害とが相まって景気の下押し圧力がもたらされています。ですから、消費税率引上げ付きの落ち込みが大きく見えるわけで、経済政策当局からすれば想定外・経済外の要因とはいえ、それだけに、何らかの経済対策が必要とされているのは十分理解できます。
ただ、経済対策については、従来型の公共事業に偏重するのは厳に避けるべきです。というのは、クラウディングアウトの恐れが大きくなっているからです。その昔の経済学では、政府支出が資金需要を増加させて金利上昇を招き民間投資が減少する、というタイプのクラウディングアウトを想定していましたが、日本経済の現状からすれば、クラウディングアウトを引き起こす供給制約は資金面や資金に起因する金利ではなく、むしろ人手不足とそれに起因するコストアップです。オリンピック・パラリンピックを前にそれなりの建設需要がある中で、またまた、公共事業に偏った経済対策となれば、民間需要と少ない人手を奪い合うことになり、人手不足の面から民間投資をクラウディングアウトすることにもなりかねません。この点は忘れるべきではありません。
Entry No.6444  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月05日 (木) 19:50:00

来週月曜日公表予定の7-9月期GDP統計速報2次QE予想は上方改定か?

先週の法人企業統計の公表などを終えて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、来週月曜日12月9日に7~9月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。今回は、消費税率引き上げ直前の実績成長率と直後の見通しということなんですが、いつもの通り、2次QE予想は法人企業統計のオマケの扱いのシンクタンクも少なくなく、その中で、みずほ総研だけは超長めに引用していて、ほかもそれなりに引用しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.1%
(+0.2%)
n.a.
日本総研+0.2%
(+0.7%)
7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が上方修正となる一方、民間在庫は下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+0.7%(前期比+0.2%)と、1次QE(前期比年率+0.2%、前期比+0.1%)から上方修正される見込み。
大和総研+0.3%
(+1.2%)

7-9月期GDP二次速報(12月9日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率+1.2%と、一次速報(同+0.2%)から上方修正されると予想する。需要側統計の法人企業統計の結果を受けて、設備投資が前期比+2.0%に上方修正されることが主因である。
みずほ総研+0.2%
(+0.7%)
今後の日本経済は、10~12月期については消費増税の反動減の影響からマイナス成長は避けられないだろう。来年に入ってからも、消費・投資ともに力強さにかけ、日本経済は低い伸びに留まる見通しだ。
個人消費は、足元消費増税の反動減が下押し圧力として働いている。ただ反動減の影響が徐々にはく落していく来年に入ってからも、所得が伸び悩むなかで、消費の回復テンポは当面弱いとみている。足元の雇用環境をみると、雇用がひっ迫している状況は続いているものの、生産活動の停滞を受けて、製造業を中心に新規求人数が減少している。先行きについても生産の力強い回復が期待しにくいなかで、企業は新規雇用に慎重になるとみられ、雇用者数は当面伸び悩むだろう。また一人当たり賃金についても足元の企業収益が弱含むなか、当面横ばいで推移すると予想する。所得の伸び悩みを考えると、消費の伸びは当面弱いだろう。
設備投資は、省力化投資が下支えとなるものの、調整圧力の高まりから徐々に投資の伸びは鈍化していく見通しだ。米中対立の継続に伴い先行き不透明感が高いことも、投資の伸びを抑制する要因として働こう。
輸出はグローバルなIT需要が底打ちしたことから、徐々に回復していく見通しだ。ただし、世界経済が伸び悩む中ではけん引力に欠け、輸出の伸びは緩やかに留まるだろう。外需主導での日本経済の力強い回復は見込みがたいと考えられる。こうした中、生産活動も精彩を欠いた動きとなる見通しだ。
以上を踏まえると、当面の日本経済は潜在成長率を下回る弱い伸びになるだろう。
ニッセイ基礎研+0.2%
(+0.9%)
19年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.2%(前期比年率0.9%)となり、1次速報の前期比0.1%(前期比年率0.2%)から上方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.3%
(+1.2%)
10-12月期の個人消費は大幅な減少が避けられない。前述のとおり設備投資に反動が生じる可能性があることも懸念材料だ。10-12月期の実質GDPについては、筆者は11月14日の段階で前期比年率▲2.8%を予想していたが、さらなる下振れも意識しておく必要があるように思われる。
伊藤忠総研+0.1%
(+0.6%)
7~9月期のGDP成長率は、最終需要が比較的堅調な拡大を維持する中で、輸出の落ち込みと企業の在庫抑制が下押しし、概ね横ばいにとどまることになり、日本経済は10月の消費増税を待たずに停滞していたという判断に変化はない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.2%
(+1.0%)
2019年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.2%(年率換算+1.0%)と1次速報値の同+0.15(同+0.2%)から上方修正される見込みである。ただし、修正は小幅であり、今回の結果によって景気に対する評価が変わることはないであろう。
三菱総研+0.2%
(+0.9%)
2019年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.2%(年率+0.9%)と、1次速報値(同+0.1%(年率+0.2%))から上方修正を予測する。


ということで、各機関とも軒並み1次QEから上方改定され、ほぼ潜在成長率近傍のプラス成長と見込まれているんですが、その見方や解釈にはやや差があり、+1%弱というか、+0%台後半ながら、みずほ総研や伊藤忠総研ではかなり弱めに見ているようです。しかし、たとえ、7~9月期のGDP成長率が潜在成長率見合いのプラスであったとしても、10月には消費税率引上げがあったわけですから、明記していないシンクタンクを含めて、ほぼほぼすべてのシンクタンク、あるいは、エコノミストは足元の10~12月期はマイナス成長と考えています。ですから、もう焦点は来年1~3月期に移りつつあり、2四半期連続のマイナス成長でテクニカルな景気後退シグナルとなるのかどうか、という見方です。まさに、この2四半期連続のマイナス成長を回避するために政府で景気対策が検討されている訳であり、私は大いに期待していますし、テクニカルな景気後退シグナルは避けられるものと考えています。
下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。プラス成長とはいえ、徐々に成長率が低下しているのが見て取れると思います。

photo
Entry No.6443  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月04日 (水) 19:30:00

経済協力開発機構(OECD)による生徒の学習到達度調査(PISA2018)の結果やいかに?

昨日12月3日、経済協力開発機構(OECD)から昨年2018年に実施された生徒の学習到達度調査 (PISA2018) の結果が公表されています。PISAとは、Programme for International Student Assessment の略であり、15歳児を対象に読解力 reading、数学 mathematics、科学 science の3科目について、3年ごとに国際的に調査を実施し、結果は広く公表されており、データもかなり詳細に提供されています。2000年が初回の調査であり、昨年2018年のPISAは第7サイクルに当たり、79か国・地域の15歳の生徒約60万人が参加しています。以下、OECDの1次資料とともに、国立教育政策研究所のサイトにあるリポートなどをもとに簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


まず、上の棒グラフは、OECDのサイトから引用していて、たぶん、読解力 reading の得点でソートされているんではないかと思います。一番上の B-S-J-Z (China) とは、一番下の脚注にあるように、北京・上海・江蘇・浙江のことです。中国はOECD加盟国ではありませんが、かなり前からPISAから参加しているのではないか、と記憶しています。
上のグラフのソートの仕方を見ても判る通り、今回の焦点は読解力に当てられており、ほとんどの生徒がコンピュータを使って回答しています。そして、我が日本は焦点の読解力で世界における順位を下げ続けています。すなわち、2012年調査では4位を占めていたにもかかわらず、2015年調査では8位、そして、今回2018年調査では15位まで後退しました。もっとも、これは首位から4位までの中国各都市やシンガポールといったOECD非加盟国を含めてのお話ですので、OECD非加盟国を加盟国の中では11位ということになります。報道などを見ると、パソコンを使ったコンピューター形式のテスト形式に不慣れなことや、記述式の問題を苦手としていることなどが要因として考えられる一方で、当然ながら、本や新聞などをよく読む生徒の方が平均点は高く、読解力低下の結果には読書量の減少も影響しているのではないか、という見方が示されています。15年前のPISA2003の結果でも、読解力は大きく順位を下げて「PISAショック」というバズワードも出てきたりし、いわゆる「ゆとり教育」を見直すきっかけのひとつとなりました。
ただ、いつも楽観的な見方を示す私としては、いくつか別の観点を示しておきたいと思います。まず、上の画像の一番下にも見られる通り、読解力のOECD平均スコアは487であり、日本の501はこれをまだ何とか上回っています。また、焦点となった読解力は順位を落としている一方で、数学は全79カ国・地域の中では6位なものの、OECD加盟国としては韓国を押さえてトップですし、科学も全79カ国・地域の中で5位、OECD加盟国の中でもエストニアとわずかに1点差の2位につけており、両国スコアの間に統計的に有意な差は見られません。まだまだ、日本の生徒や中等教育は優秀であるといえます。次回の第8サイクル2021年実施のPISAでは数学にスポットが当てられる予定ですので、「ヤッパリ、日本の生徒は優秀」という論調が戻るような気がしないでもありません。

最後に、こういった学習結果の基礎をもとに考えると、現場の技術者は優秀で先進国トップクラスだが、経営者は先進国の中でも平均レベル、という一般的な日本に対する見方を強く支持している、といえそうな気がします。
Entry No.6442  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月03日 (火) 22:30:00

SMBCコンサルティングによる「2019年ヒット商品番付」やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週11月27日にSMBCコンサルティングから「2019年ヒット商品番付」が明らかにされています。SMBCコンサルティングのサイトから引用した下のテーブルの通りです。

photo


東西の横綱はこの通りなんでしょう。でも、大関について、プロスポーツ選手はともかく、ノーベル賞受賞の先生を「商品番付」に置くのは異論ありそうな気がしないでもありませんが、エコノミストはすべてを商品化しかねませんから、いいとしておきます。続く三役級ではサブスクやタピオカは当然でしょう。私が注目したのは前頭2枚目のこども関連のヒット商品です。弘文堂の『こども六法』は子どもの時から「やってはいけない」ことをきちんと教える重要性を改めて世間に知らしめる結果となりました。プログラミング教育も未来につながるスキルなんでしょう。消費者の嗜好の関係では、私はウィスキーはたしなみがなく、ここで知るまで和製ウィスキーは知りませんでした。
師走に入って、そろそろ1年を振り返る季節を感じます。
Entry No.6441  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年12月02日 (月) 19:50:00

ほぼ3年ぶりに減収減益となった法人企業統計をどう見るか?

本日、財務省から4~6月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高はほぼ3年ぶりの減収で前年同期比▲2.6%減の349兆4974億円、経常利益は2四半期連続の減益で▲5.3%減の17兆3232億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで+7.1%増の12兆826億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比+1.5%増となっています。なお、設備投資については、前回からソフトウェアを含むベースに変更されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。


設備投資7.1%増 7-9月法人企業統計、売上高は減
財務省が2日発表した2019年7~9月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の売上高は前年同期比2.6%減の349兆4974億円と、12四半期ぶりの減収となった。米中貿易摩擦やそれに起因した中国経済の減速などを背景に、半導体関連製品などの売り上げが落ち込んだ。
製造業の売上高は1.5%減だった。中国向けなどが振るわず、スマートフォン向け部品など「情報通信機械」が18.9%減、半導体製造機械など「金属製品」が15.4%減となった。
非製造業の売上高は3.1%減と、12四半期ぶりの減収となった。消費増税を控えた耐久消費財への駆け込み需要で小売業は増収だったが、原油安を背景とした石油製品などの価格下落で卸売業が減収となったため「卸売業、小売業」は4.0%減となった。賃貸住宅の建設減や前年の大型案件の反動減から「建設業」は8.6%減だった。
全産業の設備投資は前年同期比7.1%増の12兆826億円で、12四半期連続の増加となった。
製造業の設備投資は6.4%増だった。次世代通信規格の5G関連技術や自動車・通信機械向けの電子部品への投資が活発だった「情報通信機械」が18.9%増となった。新工場の増設のあった「生産用機械」は18.6%増だった。
非製造業の設備投資は7.6%増だった。都市部を中心にオフィスビルの取得が多かった「不動産業」や、物流施設の新設が目立った「卸売業」の増加が寄与した。財務省の担当者は「増税前に設備投資に影響が出たとは考えていない」と説明した。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となるソフトウエアを除く全産業の設備投資額は、前年同期比で7.7%増、季節調整した前期比で1.2%増だった。
全産業ベースの経常利益は5.3%減の17兆3232億円と2四半期連続の減益となった。海外での建設機械・半導体製造業の落ち込みを受けて製造業が15.1%減となったことが影響した。非製造業は0.5%増だった。
財務省は「緩やかに回復している景気の動向を反映している」と説明した。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や投資動向を集計した。今回の19年7~9月期の結果は、内閣府が9日発表する同期間のGDP改定値に反映される。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


上のグラフを見る限り、足元の我が国企業の動向は、かなりの程度に最近のマクロ経済動向とも一致して、製造業を中心に停滞色を強めています。季節調整していない原系列の前年同期比で見て、売上高こそ、非製造業の▲3.1%減の方が製造業の▲1.5%減よりも大きな落ち込みを見せましたが、営業利益と経常利益では非製造業が前年同期比プラスでしのいでいるのに対して、製造業はいずれもマイナスに落ち込んでいます。経常利益に至っては、製造業は統計の分類11業種すべてで前年比マイナスとなっています。ただ、設備投資については製造業・非製造業とも増加を続けています。特に、7~9月期には資本金10億円以上の大企業が前年同期比+10.0%と2桁のプラスを記録しています。業況が伸びない中で人手不足などに対応した合理化投資・省力化投資が下支えしているものと私は想像しています。ただ、後に見るように、ストックの利益剰余金こそ積み上がっているものの、フローの企業収益がかなり悪化しているので、設備投資の先行きについては楽観すべきではないと考えています。

photo


続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。ソフトウェアを含むベースに今回から再計算しています。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、相変わらず、太線のトレンドで見て労働分配率は60%前後で底這い状態から脱することなく低空飛行を続けています。他方、設備投資のキャッシュフロー比率はじわじわと上昇して60%台半ばに達しています。もちろん、一番元気よく右肩上がりの上昇を続けているのは利益剰余金です。ストックですから、積み上がる傾向にあるとはいえ、これを賃金や設備投資にもっと回すような政策はないものでしょうか?

本日の法人企業統計を受けて、来週月曜日の12月9日に7~9月期GDP統計2次QEが公表される予定となっています。基本的に、上方改定されるものと私は考えていますが、日を改めて2次QE予想として取り上げたいと思います。
Entry No.6440  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月29日 (金) 19:19:45

基調判断が下方修正された鉱工業生産指数(IIP)とタイトな状況続く雇用統計!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも10月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から▲4.2%の減産を示しています。失業率は前月と同じ2.4%、有効求人倍率も前月から横ばいの1.57倍と、いずれもタイトな雇用環境がうかがえるものの、指標は雇用の改善のストップないし悪化を示し始めているように見受けられます。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

10月の鉱工業生産 車・機械、台風で低調 4.2%低下
経済産業省が29日発表した10月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は前月比4.2%低下し98.9だった。低下は2カ月ぶり。台風19号の影響で自動車や生産用機械など幅広い業種で減産となった。企業の先行き予測も弱く、経産省は基調判断を「弱含み」とした。
QUICKがまとめた民間予測の中央値(2.1%低下)を上回る低下率となった。下げ幅は18年1月以来、1年9カ月ぶりの大きさ。前回増税直後の14年4月は同じ2015年基準で4.4%の低下で、前回増税時並みの大きなマイナスとなった。
業種別では15業種中12業種が低下した。最もマイナス寄与が大きかったのが自動車で、前月比7.8%低下した。10月に上陸した台風19号で部品の調達が滞り生産に影響した。生産用機械も台風の影響で6.4%低下と振るわなかった。前月に大型案件によって上昇幅が大きくなった汎用・業務用機械は13.0%の低下と反動も出たようだ。
出荷は4.3%の低下と2カ月ぶりのマイナスだった。在庫は1.2%の上昇で4カ月ぶりに前月を上回った。
経産省が28日発表した10月の小売販売額は前年同月比7.1%の低下と前回の増税直後よりも大きなマイナスだった。ただ生産面では「消費増税の影響が大きく出たとは考えていない」(同省)とした。
SMBC日興証券の宮前耕也氏は「台風の影響だけなら在庫は減るはず」と指摘。その上で「増税前の駆け込み需要に対応した中小企業の設備投資がなくなった反動や、外需の低調が影響したとみるべきだ」と述べた。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、11月は前月比1.5%の低下、12月は1.1%の上昇見込みだ。経産省は「生産に弱さが感じられる状態が続いている」と指摘。基調判断はこれまでの「このところ弱含み」から「弱含み」に修正した。
失業率横ばいも…失業者は2カ月連続増 製造業に陰り
総務省が29日に発表した10月の完全失業率(季節調整値)は前月から横ばいの2.4%だった。働く女性の増加が続く一方、米中貿易戦争の影響を受けている製造業などで雇用に陰りが見られ、完全失業者数は2カ月連続で増加した。厚生労働省が同日発表した10月の有効求人倍率(同)は前月から横ばいの1.57倍。全体では堅調な雇用情勢が続いているとした。
就業者数は前年同月比62万人増の6787万人。女性が46万人増と大幅に増えたことが影響した。就業率も男性が0.2ポイント上昇の84.4%、女性が1.3ポイント上昇の71.8%でともに増加した。
一方、完全失業者数は前年同月比1万人増の164万人で、2カ月連続で増えた。「勤め先や事業の都合による離職」が3万人増だった。特に製造業と、インターネット通販の普及などで需要が減っている卸売業・小売業で正社員などの就業者を減らす動きがみられた。製造業の就業者は20万人減の1032万人、卸売業・小売業は16万人減の1072万人だった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率も横ばいの1.13倍。雇用の先行指標となる新規求人倍率は前月から0.16ポイント改善し2.44倍だった。
新規求人数は前年同月比4.0%減の102万7758人で、3カ月連続で減少した。製造業が9カ月連続で減っている影響などを受けた。


いくつかの統計を取り上げていますので長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

photo


まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、中央値で▲2.1%の増産、レンジでも▲2.8%~▲0.6%の幅でしたので、下限を突き抜けた大きなマイナスと受け止めています。基本は、消費税率引上げ後の反動減と、これまた、新幹線も止めた超大型の台風19号の合わせ技の結果です。でも、それも織り込んだ市場の事前コンセンサスを超えるマイナスなんですから、ネガティブなサプライズといえます。季節調整済みの前月比で低下したのは、寄与度順で見て、自動車工業▲7.8%減、汎用・業務用機械工業▲13.0%減、生産用機械工業▲6.4%減、電気・情報通信機械工業▲4.6%減、など、我が国のリーディング・インダストリーがズラリと並んでいます。しかも、先行きについても製造工業生産予測指数で見て、11月は前月比▲1.5%の減産、しかも、上振れバイアスを補正すれば▲1.8%減ですから、12月予想の+1.1%増産もかすんでしまいます。7~9月期の鉱工業生産は▲0.5%の減産でしたが、10~12月期も2四半期連続で減産を記録する公算が高いと考えるべきです。しかも、10月指数を単純に製造工業生産予測指数で引き延ばすと、10~12月期は▲4%を超える減産となる可能性もあり、これはかなり大きな減産であると私は受け止めています。統計作成官庁である経済産業省では生産に関する基調判断を半ノッチ下方修正しています。すなわち、今年度2018年度に入って、4~7月は「一進一退」、8~9月は「このところ弱含み」だったんですが、本日公表の10月統計では端的に「弱含み」に変更しました。年明け後の我が国経済については、米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速の影響で輸出が伸び悩む一方で、これを内需がカバーしてプラス成長を予想するエコノミストが多いんですが、その前の10~12月期は、10月の台風19号の影響もあって、かなり落ち込みが大きい可能性があります。

photo


続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた期間は景気後退期を示しています。ということで、失業率は2%台前半ないし半ばまで低下し、有効求人倍率も1.5倍超の高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も1倍超を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年余りに渡って1倍以上の水準で推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近いタイトな状態にあると私は受け止めています。ただ、モメンタム、すなわち、方向性については、失業率も有効求人倍率もジワジワと雇用悪化の方向にあることは確かです。私が時折参照している日本政策投資公庫の「中小企業景況調査」の2019年11月調査結果では、従業員判断DIが今年に入って急降下しています。すなわち、季節調整済みの系列で、まだ従業員不測のプラスながら、2018年12月の+28.8から直近調査結果の11月には+10.5まで低下しました。そもそも、雇用は生産の派生需要であり、生産が鉱工業生産指数(IIP)で代理されるとすれば、基調判断は「弱含み」であり、先行き、景気局面が転換して景気後退局面に入れば、雇用は急速に冷え込む可能性もあります。生産が雇用増加をけん引しているのであって、人手不足が景気を拡大させているわけではありません。場合によっては、本格的な賃金上昇が始まる前に景気の回復・拡大局面が終了してしまう可能性も排除できません。

photo


最後に、本日、内閣府から11月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、前月から+2.5ポイント上昇して38.7となり、2か月連続で前月を上回りました。消費者態度指数を構成する4項目、すなわち、暮らし向き、収入の増え方、雇用環境、耐久消費財の買い時判断、のすべてが前月から上昇しています。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「弱まっている」から「持ち直しの動き」に上方修正しています。上のグラフの通りです。
Entry No.6437  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月28日 (木) 22:30:00

消費税率引上げ前の駆込み需要よりも落ち込んだ商業販売統計をどう見るか?

本日、経済産業省から10月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲7.1%減の11兆900億円、季節調整済み指数も前月から▲14.4%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

10月小売販売7.1%減 消費増税・台風が影響
経済産業省が28日発表した10月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比7.1%減の11兆900億円だった。消費増税前の駆け込みが起きた9月からの反動減に加え、台風19号による休業や客数減が響いた。自動車や家電の販売が低調だった。前回の消費増税の直後にあたる2014年4月の4.3%減と比べると、減少幅は大きかった。
減少は3カ月ぶり。経産省は「9月に需要を先食いした影響が出た。台風で被災した人を中心に消費者心理も下向いた」と分析した。季節調整済みの前月比では14.4%の減少だった。
小売業販売を商品別にみると、自動車小売業が前年同月比17.0%減と大きく落ち込んだ。普通車や小型車の販売が不調だった。家電など機械器具小売業は15.0%減。9月に駆け込みが出た冷蔵庫や洗濯機など高額な家電を中心に売り上げが伸び悩んだ。
業態別にみると、百貨店の販売額が17.3%減った。高額商品で駆け込みの反動減が出たほか、気温の高い日が続いて秋冬衣料の動きが鈍かった。韓国からの訪日観光客の減少も響いている。下げ幅は前回増税直前の駆け込みから1年が経過した15年3月以来の大きさだった。家電大型専門店は14.2%減少した。
一方、コンビニエンスストアの販売額は3.3%増加した。前年の10月にたばこ税増税で減少した反動が出た。大手コンビニでは10月からキャッシュレス決済に2%分のポイントを即時還元する対応をはじめた。経産省によると、キャッシュレスの支払比率が上がり、コンビニの売り上げにプラスに働いたという。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

photo


引用した記事には、おそらく、記者会見で明らかにされた経済産業省の公式発表がいっぱい並べられているんですが、要するに、大きな落ち込みは消費税率引上げ後の反動減の要因が大きいんだろうと私は考えています。自動車小売業が▲17.0%減、電機製品などが含まれる機械器具小売業が▲15.0%減、となっており、耐久消費財が大きなマイナスを記録しています。事前の多くのエコノミストの予想では、消費税率の引上げ幅がやや小さい上に政府の各種の対策もあって、今回2019年10月の消費税率引上げでは前回2014年4月の際に比較して、駆込み需要は小さく、それゆえ、その後の反動減も小さい、と受け止められており、実際に、先月統計の2019年9月の小売販売額の前年同月比は+9.2%増と2014年3月の+11.0%増を下回りましたが、その後の反動減を見ると、2014年4月の▲4.3%減を大きく上回る▲7.1%減を記録しました。もちろん、所得やマインドなどの多くの条件が異なるわけですし、特に今年2019年10月には新幹線すら止めた大型の台風19号の影響も無視できませんから、単純な比較はできませんが、一般的な考えながら、消費税率の引上げ幅が小さいにもかかわらず、駆込み需要が小さく反動減が大きい、というのは、まあ、かなり消費としてはよろしくないと私は受け止めています。また、2014年の消費税率引上げ時には、その後の反動減が3か月続き、2014年7月から前年同月比がプラスに回帰したという実績がありますが、今回の税率引上げ後の消費のプラス回帰にどれくらいの期間を要するのか、については、世間一般ではそれほど注目されていないように見受けるものの、少なくとも私は先行き景気動向の観点から考慮すべきと受け止めています。なお、どうでもいいことながら、最近の小売業販売額でもっとも前年同月比の落ち込みが大きかったのは、実は、2015年3月の▲9.7%なんですが、これは2015年3月に何かがあった、というよりは、その前年の2014年3月に消費税率引上げ前の駆込み需要が余りに大きかった、と考えるべきです。

この商業販売統計は供給側の統計ですから、国内家計の消費だけでなくインバウンド消費が含まれるんですが、10月統計はやや複雑な動きを示しています。すなわち、韓国からの訪日観光客が大きく減少している一方で、ラグビーのワールドカップ開催に伴い消費単価の大きい欧州からの訪日観光客が増加しています。観光庁統計では、後者が前者より影響大きいと出ているようです。
Entry No.6436  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月27日 (水) 19:15:00

リクルートジョブズによる10月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日11月29日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる10月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

photo


ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の10月度平均時給は前年同月より+2.6%、+27円増加の1,074円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+41円、増減率+3.8%)、「フード系」(+31円、+3.0%)、「製造・物流・清掃系」(+31円、+3.0%)、「販売・サービス系」(+28円、+2.8%)など、全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、今年2019年7月統計以降マイナスを続けており、7月▲10円減、▲0.6%減、8月▲7円減、▲0.4%減の後、9月▲7円減、▲0.4%減の後、10月も▲15円減、▲0.9%減の1,624円と、下げ足を速めています。職種別では、「IT・技術系」(前年同月比増減額+98円、増減率+4.9%)、「クリエイティブ系」(+74円、+4.3%)、「オフィスワーク系」(+21円、+1.4%)、「医療介護・教育系」(+3円、+0.2%)の4職種がプラスなった一方で、「営業・販売・サービス系」(▲47円減、▲3.3%減)の1職種だけながらマイナスを示しています。また、地域別でも、東海・関西・関東のすべてのエリアで前年同月比マイナスを記録しています。派遣スタッフのうち、「クリエイティブ系」と「IT・技術系」が高い伸びを示しているのは、キャッシュレス決済開発の関係ではないか、と私は想像しています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトでは人手不足の影響がまだ強い一方で、「クリエイティブ系」と「IT・技術系」などを除いて派遣スタッフ賃金は伸びが鈍化しつつある、と私は受け止めています。もちろん、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用にはいっそうの注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。特に、上のグラフを見る限り、右肩上がりの上昇を続けるアルバイト・パートに比べて、派遣スタッフの時給については、単変量分析ながら昨年2018年前半から半ばにかけて、いったん直近のピークを付けた可能性があります。ただ、2016年年央にも同じようにピークを過ぎた後、2017年後半からもう一度上昇したこともあり、人手不足をはじめとする労働需給に敏感なだけに、まだ確定的な見方を示すことは出来なさそうな気がします。

最後に、何度でも繰り返しますが、決して人手不足が景気をけん引しているのではありません。雇用は生産の派生需要であり、景気が後退局面に入ると労働需要が一気に冷え込む可能性は否定できないわけで、この点は絶対に忘れるべきではありません。
Entry No.6435  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月26日 (火) 19:50:00

企業向けサービス物価(SPPI)は76か月連続で前年同月比プラスを記録!

本日、日銀から10月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。消費税率引上げがありましたので、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率はジャンプして+2.1%を示しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も2.0%を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業向けサービス価格、消費税除き前年比0.4%上昇 広告の出稿需要が弱く
日銀が26日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.8で、前年同月比2.1%上昇した。10月から消費税率が引き上げられた影響で上昇率は前月から大幅に拡大した。前年同月比での上昇は2013年7月以来76カ月連続。
消費税の影響を除くベースでみると0.4%上昇で、9月から上昇率は縮小した。労働者派遣サービスや宿泊サービスを含む諸サービスの伸びが縮まったほか、広告のマイナス幅が拡大した。
人手不足による人件費上昇圧力が引き続きサービス価格の押し上げ要因となっている。半面、景気の先行き不透明感などを背景に企業が経費節減の姿勢を強めているとみられ、テレビ広告を中心に広告の出稿需要が急速に弱まったことが伸びを抑制した。
前月比の上昇率は消費税を含むベースで1.9%、消費税を除くベースでは0.2%だった。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。消費税の影響を除くベースで、対象の146品目のうち上昇は82品目、下落は42品目、上昇から下落を引いた差は40品目と、9月確報値(47品目)から7品目減少した。上昇品目が下落品目を上回るのは16年3月以来44カ月連続だった。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


まず、引用した記事にもある通り、消費税率の引上げの影響を除いたベースでは、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+0.4%、国際委運輸を除くコアSPPIで+0.3%と、ヘッドラインSPPIの9月の上昇率が+0.5%、コアSPPIが+0.6%でしたから、大きな違いはないとはいえ、やや上昇率が縮小しています。コアSPPIの方が大きく縮小しているのは、国際商品市況における石油価格の影響がより強く現れるからであろうと考えられます。消費税を除くベースのSPPI前年同月比上昇率+0.4%に対する大類別の寄与度を見ると、土木建築サービスや労働者派遣サービスを含む諸サービスが+0.31%と圧倒的な部分を占めていて、次に、運輸・郵便+0.11%と、この2つの大類別でほぼほぼ説明がついてしまいます。他方、マイナス寄与もあり、広告▲0.15%、リース・レンタル▲0.05%となっています。景気に敏感な広告の寄与がマイナスなのは気にかかるところです。というか、消費税率引上げ直後ですから、駆込み需要の反動もあって、広告はそれほど必要ではなかった可能性はあります。でも、引き続き、人手不足の影響はまだ見られる、という印象です。
Entry No.6434  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月25日 (月) 19:45:00

OECD Economic Outlook における日本経済の見通しやいかに?

先週木曜日に経済協力開発機構(OECD)から「OECD 経済見通し」OECD Economic Outlook, November 2019 が公表されています。まず、金曜日の消費者物価指数(CPI)を取り上げた記事に掲載したGDP成長率の総括表のおさらいは以下の通りです。

photo


2018年の世界経済の成長率は+3.5%に達していた一方で、今年2019年は金融危機以来の最低水準となる+2.9%と見込まれており、来年2020年、さ来年2021年も2.9~3.0%程度にとどまると見られています。この要因はいうまでもなく、主に米国と中国の間で関税をめぐる摩擦が高まっているからであり、貿易に打撃を与え、企業投資を弱め、雇用をリスクに晒していると指摘しています。加えて、家計消費はまだ増加しているものの、伸びが弱まる兆しが見え始めているとも分析されています。

photo


こういった中で、カントリーノートから日本の見通し総括表を引用すると上の通りです。成長率を見ると、今年2019年は輸出の伸びがマイナスとなるものの、堅調な内需に支えられて、ほぼ製剤成長率水準の成長を実現しますが、来年は今年2019年10月からの消費税率の引上げで消費の伸びが大きく減速し、また、さ来年2021年は東京オリンピック・パラリンピックの終了などもあって投資が減速し、2020~21年はともに潜在成長率を下回る成長と見込まれています。

photo


次に、カントリーノートから日本の財政見通しと物価見通しのグラフを引用すると上の通りです。見通しに近い潜在成長率近傍の+1.5%成長なら財政のプライマリー・バランスはGDP比▲1%を少し下回る水準で横ばいとなる一方で、名目成長率が+3%超となれば2020年代半ばにプライマリー・バランスは黒字化すると予想されています。ただし、それでも、コア消費者物価(CPI)が+2%に達するのには時間がかかりそうです。
Entry No.6433  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月22日 (金) 19:45:00

消費税率の引上げにもかかわらず伸び悩む消費者物価(CPI)上昇率!

本日、総務省統計局から10月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し拡大して+0.4%を示しています。消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価0.4%上昇 10月、消費増税後も低水準
総務省が22日発表した10月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合が102.0と前年同月比で0.4%上昇した。消費税率10%への引き上げ後の初めての集計として注目されたが、税率引き上げによる押し上げ効果を除くと弱い数字だった。
外食や宿泊料などが引き続き上昇に寄与した一方、電気代が前年同月比で下落に転じるなど、エネルギー構成品目の下落が物価の下げ圧力となった。携帯電話の通信料も6月に大手各社が値下げした影響が引き続き表れた。
総務省は同時に、消費税率の引き上げと幼児教育・保育無償化の物価上昇率への影響の試算値を公表した。試算では消費税率の引き上げによって、物価上昇率は0.77ポイント程度押し上げられる。一方、同時に始まった幼児教育・保育無償化が0.57ポイント程度の押し下げ要因となるとした。
消費税率引き上げと、幼児教育・保育無償化の影響を除いた場合、生鮮食品を除く総合の物価上昇率は0.2%で、2年7カ月ぶりの低水準となる。
生鮮食品を除く総合では391品目が上昇した。下落は111品目、横ばいは21品目だった。総務省は物価の基調について「原油価格の下落などで、上昇には鈍化が見られる」と指摘しつつも「緩やかな上昇が続いている」との見方は据え置いた。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は102.0と前年同月比0.7%上昇、生鮮食品を含む総合は102.2と0.2%上昇した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。さらに、なぜか、最近時点でコアコアCPIは従来の「食料とエネルギーを除く総合」から「生鮮食品とエネルギーを除く総合」に変更されています。ですから、従来のコアコアCPIには生鮮食品以外の食料が含まれていない欧米流のコアコアCPIだったんですが、現時点では生鮮食品は含まれていないものの、生鮮食品以外の食料は含まれている日本独自のコアコアCPIだということが出来ます。

photo


ということで、10月から消費税率の引上げと幼児教育・保育無償化の影響が現れており、これを含んだ結果となっていて、引用した記事にもあるように、その影響の試算結果が「消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響 (参考値)」として総務省統計局から明らかにされています。少し話がややこしいんですが、この参考値によれば、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIのヘッドライン上昇率+0.4%に対する寄与度が+0.37%となっていて、その+0.37%に対する消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響が合わせて+0.20%、分けると消費税率引上げが+0.77%、幼児教育・保育無償化が▲0.57%と、それぞれ試算結果が示されています。コアCPI上昇率の半分が消費税率引上げと幼児教育・保育無償化の影響に起因するわけで、いわゆるコアCPIの「実力」としては+0.4%のうちの半分くらいの+0.2%、ということなのかもしれません。また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.2~+0.6%のレンジで中心値が+0.4%でしたので、ジャストミートしたといえます。
エネルギー価格の動向については、国際商品市況における石油価格の影響が大きく、私ごとき定年退職した元エコノミストにはまったく予想もつきません。ですから、利用可能な専門家のリポートを読んだりするんですが、先月も引用したみずほ証券によるリポート「マーケット・フォーカス 商品: 原油」では、 WTI原油先物価格について2019年度中の予想レンジは1バレル=50ドル~70ドルとし、「原油は上昇一服か」(11月14日付けリポート)と結論しているようです。何ら、ご参考まで。

photo


最後に、上のグラフは勤労者の所得分位別の消費者物価(CPI)上昇率の推移のうち、もっとも所得の低い第Ⅰ分位(~439万円)ともっとも所得の高い第Ⅴ分位(913万円~)の消費バスケットに合わせた物価上昇率をプロットしています。10月CPI統計において、第Ⅰ分位家計の直面する物価上昇率は第Ⅴ分位家計を下回ってマイナスを記録しています。キチンとした分析はしていませんが、直感的に、ひょっとしたら軽減税率の効果かも知れないと私は受け止めています。ただ、グラフは示しませんが、支出弾性値が1以上の選択的支出と1未満の基礎的支出のそれぞれの物価上昇率については逆に出ており、選択的支出の物価上昇率が10月統計では低下した一方で、基礎的支出の方は上昇しています。食品などの基礎的支出に軽減税率が適用されたと私は考えていますが、そうではない可能性もあったりするんでしょうか。

photo


最後に、目を海外に転じると、昨日11月21日に経済協力開発機構(OECD)から「OECD 経済見通し」OECD Economic Outlook, November 2019 が公表されています。ヘッドラインとなる成長率見通しの総括表は上の通りです。我が国の成長率については、前回見通しから据え置かれています。このテーブルはOECDのサイトから引用しています。また、日を改めてもう少し詳しく取り上げたいと思います。
Entry No.6430  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月21日 (木) 23:15:00

7-9月期GDP統計1次QE後の短期経済見通しやいかに?

先週11月17日に内閣府から公表された本年7~9月期GDP統計速報1次QEを受けて、シンクタンクや金融機関などから2020年度末くらいまでの短期経済見通しがいっせいに明らかにされています。四半期ベースの詳細計数まで利用可能な見通しについて、2020年上半期の東京オリンピック前くらいまで取りまとめると以下の通りです。なお、下のテーブルの経済見通しについて詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。計数の転記については慎重を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、各機関のリポートでご確認ください。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名2019/7-92019/10-122020/1-32020/4-6FY2019
actualforecast
日本経済研究センター+0.1
(+0.2)
▲0.9
(▲3.6)
+0.2
(+0.7)
+0.4
(+1.7)
+0.5
日本総研(▲1.9)(+1.3)(+1.6)+0.8
大和総研(▲1.8)(+0.8)(+1.1)+0.8
みずほ総研▲0.7
(▲2.9)
+0.3
(+1.2)
+0.4
(+1.5)
+0.6
ニッセイ基礎研▲0.7
(▲2.6)
+0.1
(+0.4)
+0.5
(+1.9)
+0.6
第一生命経済研▲0.7
(▲2.8)
+0.2
(+0.8)
+0.1
(+0.3)
+0.7
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.3
(▲1.4)
+0.1
(+0.2)
+0.2
(+0.8)
+0.9
三菱総研▲0.5
(▲1.9)
+0.0
(+0.2)
+0.3
(+1.1)
+0.7
SMBC日興証券▲0.5
(▲1.9)
+0.5
(+1.9)
+0.4
(+1.6)
+0.8
明治安田生命▲0.5
(▲2.0)
+0.2
(+0.7)
+0.1
(+0.6)
+0.8
東レ経営研▲0.7+0.2+0.2+0.7
農林中金総研▲0.6
(▲2.2)
▲0.0
(▲0.1)
+0.2
(+0.9)
+0.6


一番右の列の2019年度成長率は前年度比そのままですが、四半期成長率については上段のカッコなしの数字が季節調整済み系列の前期比で、下段のカッコ付きの数字が前期比年率となっています。2019年7~9月期までは実績値、10~12月期からは見通しであり、すべてパーセント表記を省略しています。なお、日本総研と大和総研のリポートでは前期比年率の成長率しか利用可能ではなく、逆に、東レ経営研では前期比年率の計数が明示されていませんでした。ということで、見れば明らかなんですが、10月の消費税率の引上げの後の動向については、10~12月期はすべての機関でマイナス成長を見込んでいます。当然です。
もうひとつの観点は、消費税率引き上げのショックがどの程度長引くかで、多くの機関はマイナス成長は1四半期だけで、来年2020年1~3月期にはプラス成長に回帰すると見込んでいます。逆にいえば、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要がそれほど大きくない、ということの裏返しなのであろうと私は受け止めています。この点の少数意見は農林中金総研であり、2020年1~3月期までマイナス成長が2四半期連続で継続すると見込んでいます。ただ、上のテーブルを見ても明らかな通り、農林中金総研のリポートでも2020年4~6月期にはプラス成長に回帰すると予測しています。もしも、農林中金総研の見通しが正しければ、世間では2四半期連続のマイナス成長でテクニカルな景気後退局面入りのシグナルと受け取る可能性がないでもありませんが、まあ、2020年に入れば、東京オリンピック・パラリンピックの経済効果などもあって、それほど長くマイナス成長は続かないんでしょうね。
最後に、私が知る限り、富国生命が年度半期の上半期と下半期のベースの見通しを、また、信金中金地域・中小企業研が年度の見通しを、それぞれプレスリリースしています。いずれも四半期ベースの件数が利用可能ではなかったので上のテーブルには含めていません。まあ、ほかにも経済見通しを出しているところはいっぱいあるのかも知れませんが、取りあえず、この両機関のリポートについては、下にリンクだけ置いておきます。
Entry No.6429  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月20日 (水) 21:10:00

輸入の大幅減により10月の貿易収支は黒字に転換!

本日、財務省から10月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲9.2%減の6兆5774億円、輸入額も▲14.8%減の6兆5601億円、差引き貿易収支は+173億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月輸出9.2%減、対中国10.3%減 自動車や鉄鋼低調
財務省が20日発表した10月の貿易統計(速報)によると、輸出額は前年同月比9.2%減の6兆5774億円となった。11カ月連続で減少した。2016年10月の10.3%減以来3年ぶりの落ち込み幅となった。米中貿易戦争の影響が長引いており、中国やアジア向けの自動車や鉄鋼などの輸出が落ち込んだ。
アジア全体への輸出は11.2%減の3兆5361億円だった。このうち、中国向けは10.3%減の1兆3230億円だった。中国への輸出はプラスチック原料となる有機化合物が24.9%減だった。自動車部品は21.1%減、自動車用エンジンを主力とする原動機は24.9%減となった。ハイテク製品だけでなく、製造業全般に関わる幅広い品目で需要が縮小した。
日韓の貿易をめぐる対立もあって、韓国向けは23.1%減の3818億円だった。米国への輸出は11.4%減の1兆2676億円、欧州連合(EU)向けは8.4%減の7436億円だった。
10月の輸入は14.8%減の6兆5601億円だった。台風被害で物流が滞った影響が出たようだ。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は173億円の黒字(前年同月は4562億円の赤字)と、4カ月ぶりに黒字転換した。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo


ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは貿易収支の黒字を+3351億円と見込んでいたんですが、メチャメチャにレンジが広いので何ともいえません。ヘッドラインで書いた統計の繰り返しになりますが、前年同月比で見て輸出額が▲10%近く減少したものの、輸入額がそれを大きく上回る▲15%近い減少ですから、縮小均衡的に輸入の減少が輸出の減少を上回って、差引き貿易黒字は黒字、というわけですので、決して日本経済・世界経済の動向から考えて好ましい姿とは思えません。ただし、我が国の輸出が減少傾向にあるのは、割合と単純に、世界経済の減速という需要面の影響を受けていると考えられるのに対して、輸入の減少については、国内景気の減速という需要要因に加えて、いくつかの別の要因が複雑に絡まっている気がします。すなわち、10月統計ですので消費税率引上げ直後ということもあって、その前の駆込み需要の反動減という要素は考慮すべきです。さらに、今年2019年10月上旬には大型の台風19号の影響も無視できません。東海道新幹線をはじめとして交通が遮断されたことによる物流面での影響は、輸入に対してマイナスに作用したことはいうまでもありません。最後に、どこまでカウントできるかは不明であるものの、昨年2018年9月には台風21号の影響でしばらく関西空港が閉鎖され、直後の2018年10月にはその反動で物流が大幅増となり、今年2019年10月は前年同月である昨年2018年10月の関西空港再開後の輸入増の裏年、ということも出来ます。こういった我が国国内景気の需要動向以外の天候要因なども輸入を下押し、ないし、輸入の伸びを低下させる方向に働いたと考えられますので、輸入減を国内景気とストレートに結びつける必要はないと、私は考えています。もちろん、こういった天候に起因する物流面での影響は輸出入に対して、どこまで対称なのか、あるいは、非対称なのか、私はやや不案内なのですが、少なくとも、消費税率引上げ直後の反動減については輸入により大きなマイナス要因となったことは明らかです。

photo


輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、上のグラフのうちの2番め真ん中と一番下のパネルのOECD先行指数を見る限り、先進国も中国もいずれも景気はそろそろ下げ止まりつつあるように見受けられます。ただ、我が国輸出は世界経済や中国の需要要因ほどには回復を見せていません。少なくとも、10月統計については台風19号の物流要因もあることから、今後の輸出の回復に期待したいと思います。
Entry No.6428  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月19日 (火) 19:45:00

上場企業の株式持ち合い比率が10年ぶりに上昇したのはどうしてか?

野村証券の「野村資本市場クォータリー」2019秋号の研究リポートで2018年度の「我が国上場企業の株式持ち合い状況」について報告されていて、2018年度は上場企業の株式持ち合いが10年ぶりに上昇している、と指摘しています。リポートから 図表 1 「株式持ち合い比率」の時系列推移 を引用すると下の通りです。

photo


上場銀行と非金融の事業法人上場会社の株式保有比率を示す青いラインの「持ち合い比率」は2017年度に比べ+0.6%ポイント上昇して10.1%を記録し、また、これに生命保険会社と損害保険会社の株式保有比率を加えた赤いラインの「広義持ち合い比率」も前年度に比べ+0.4ポイント%上昇して14.5%となっています。わずかな上昇幅とはいえ、10年ぶりの上昇です。直感的に上のグラフを読み解けば、長期のトレンドとして株式持ち合い比率は低下を続けている一方で、短期的、というか、循環的には、00年代後半でやや持ち合い比率が上昇しているのは景気拡大により企業利益が、いわゆる「増収増益」で資金的な余裕が出来て、私の目から見て疑問あるものの、賃金で従業員に還元するのではなく、株式持ち合いに走った、ということなのではないか、という見方も成り立つかと考えていました。リーマン証券の破綻などの金融危機からほぼ10年を経て、ふたたび、賃金よりも株式持ち合いか、との疑問を持ちましたが、リポートの解釈は違うようです。すなわち、、有価証券報告書における政策保有株式関連の開示が拡充され、「企業内容等の開示に関する内閣府令」が一部改定された結果、2019年3月期決算に関する有価証券報告書から、純投資と政策投資の区分の基準や考え方や、個別の政策保有株式の保有目的・効果について、提出会社の戦略、事業内容及びセグメントとの関連付け、定量的な効果を含めたより具体的な説明、などが求められたことに加えて、個別開示の対象となる保有銘柄の数が、原則、従来の30銘柄から60銘柄に拡大され、今回の開示拡充により把握できる銘柄数が増加したことが、上場事業法人の株式保有比率の上昇、そして「株式持ち合い比率」の上昇につながった、と結論しています。そして、開示拡充の影響を控除した時の2018年度の持ち合い比率は前年度から▲0.3%ポイント低下して9.2%、広義持ち合い比率も同じく▲0.5%ポイント低下し13.6%となる、との試算結果を明らかにしています。リポートでは、今後とも、コーポレートガバナンスの観点から保有株式圧縮の流れが続く中で、緩やかな持ち合い解消を促す動きが大きく変わるとは考えにくく、今後も、持ち合いの解消は継続すると予想し、他方で、政策保有株式と議決権行使を関連付ける動きに注目、と締めくくっています。
Entry No.6427  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月18日 (月) 19:30:00

遅ればせながらインテージ調査による消費税率引上げ前の駆込み需要とその後の反動に関するデータを見る!!!

遅ればせながらの注目なんですが、ほぼ2週間前の11月5日にインテージから消費税増税前後の日用消費財の購買状況が明らかにされています。先々週の段階では、ついつい大物消費の耐久消費財に着目して、そういったリポートを取り上げましたが、ホントは駆込み需要とその後の反動減は日用品に現れるというのは経験則として確立しています。今回のインテージの調査の結果から、軽減税率の適用が駆込み需要とその後の反動減にクッキリと現れています。以下のグラフの通りです。

photo


日用消費財の購入金額の前年比を、前回消費税率引上げのあった2014年時と今回の2019年10月で比べた6枚のグラフをインテージのサイトから引用し、特に何の芸もなく並べただけです。上から、日用消費財、日用雑貨品、化粧品、ヘルスケア、の4枚は2014年と2019年で大きな差はない一方で、5枚めの食品・飲料については、駆込み需要とその後の反動がかなり小さくなっているのが見て取れます。今回2019年の消費税率引上げにおいて軽減税率が適用されたことに起因しているのではないかと、容易に想像されます。というのも、最後の6枚めのアルコール飲料については、軽減税率の適用がなく、前回2014年と同じような駆込みと反動が見られます。私はそれでも軽減税率については慎重に考えるべきだと思いますが、なかなかに興味深い結果だと受け止めています。
Entry No.6426  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月15日 (金) 19:50:00

世界経済減速の影響を受けて年末ボーナスは減ってしまうのか?

先週から今週にかけて、例年のシンクタンク4社から2019年年末ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因で決まりますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。可能な範囲で、消費との関係を中心に取り上げています。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研の公務員ボーナスだけは地方と国家の両方の公務員の、しかも、全職員ベースなのに対して、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員の組合員ベースの予想、と聞き及んでおり、ベースが違っている可能性があります。注意が必要です。

機関名民間企業
(伸び率)
国家公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研38.7万円
(▲0.8%)
68.4万円
(▲3.6%)
賞与支給総額は、同+0.9%の増加となる見込み。一人当たり支給額は減少するものの、支給労働者数の増加が下支え。
第一生命経済研(▲1.5%)n.a.冬のボーナスの悪化が見込まれることは、今後の個人消費にとって痛手だ。10月から始まった消費増税による負担増にボーナス減少という重荷が加わることで、消費への逆風はさらに強まる。消費増税に備えて様々な対策が実行に移されていることから、家計の実質的な増税負担額は14年と比較してかなり小さく、消費増税発の景気失速は避けられるとみられるが、リスクは明らかに下振れである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング38.8万円
(▲0.4%)
79.0万円
(▲1.3%)
ボーナスの支給総額は16.9兆円(前年比+1.5%)に増加する見通しである。一人当たり支給額は減少に転じるものの、ボーナスが支給される事業所で働く労働者数が大きく増加することが支給総額の増加に寄与しよう。冬のボーナスの支給労働者数は4,344万人(前年比+2.0%)に増加し、支給労働者割合も84.8%(前年差+0.1%ポイント)に上昇すると見込まれる。ボーナスの支給総額の増加は、消費増税後の落ち込みからの回復を期する今後の個人消費にとってプラス材料である。
みずほ総研38.2万円
(▲2.1%)
74.9万円
(▲2.7%)
懸念されるのは、こうした所得の伸び悩みにより、消費増税後の個人消費が下押しされることだ。消費増税後の落ち込みについては、政府の所得支援策などにより、一定程度抑制されるとみられるものの、所得環境は伸び悩みが続いており、消費の基調は力強さに欠ける展開が予想される。今冬のボーナス伸びの大幅鈍化は、ますます消費の基調を弱めることになりかねない。海外経済の減速や企業収益の弱含みが雇用・所得環境を通じて消費に波及していくリスクは継続しており、今後の消費動向は要注意だ。


ということで、こぞって1人当たりボーナス額が減少する一方で、ボーナス支給対象雇用者が増加することから、1人当たり額に支給対象者数を乗じたボーナス支給総額は増加すると予想しています。シンクタンクによっては、1人当たりの減額を受けて消費にマイナスとする見方がある一方で、支給総額がプラスなので消費を下支えするという意見もあります。先行き景気は世界経済の動向に左右される部分が大きいんですが、私自身の見方としては、かなり不透明感がある中で、恒常所得ではないボーナスは消費に回る比率、限界消費性向はそれほど大きくないことから、いずれにせよ、消費に大きな影響をもたらすほどのインパクトはなく、10月からの消費税率引上げによる下押し圧力の方が上回り、消費はさえない展開が続くと予想しています。景気失速ないし景気後退につながるかどうかは、消費よりも世界経済の動向、あるいは、それに起因する我が国の輸出動向に左右される部分が大きいとは思いますが、雇用から消費への波及ももちろん無視できません。景気局面はビミョーな段階に入ったと考えるべきです。
下の画像は、日本総研のリポートから賞与支給総額(前年比)を引用しています。

photo
Entry No.6423  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月14日 (木) 23:10:00

駆込み需要を考慮しても内需の底堅さを確認した7-9月期GDP統計1次QE!!!

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.1%、年率では+0.2%と潜在成長率を下回ってゼロ近傍ながら、4四半期連続のプラス成長を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質0.2%成長、GDP7-9月年率 個人消費など堅調
内閣府が14日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.1%増、年率換算では0.2%増だった。4四半期連続のプラス成長となった。4~6月期は年率換算で1.8%増だった。消費増税前の駆け込み需要でプラス成長は維持したものの、冷夏の影響などが響き、小幅な伸びにとどまった。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.2%増で、年率では0.8%増だった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.3%増、年率では1.2%増だった。名目でも4四半期連続のプラスとなった。
実質GDPの内訳は、内需が0.2%分の押し上げ効果、外需の寄与度は0.2%分のマイナスだった。
項目別にみると、個人消費が実質0.4%増と2四半期連続のプラスとなった。消費増税前の駆け込み需要の影響で支出が増え、個人消費を押し上げた。
設備投資は0.9%増と2四半期連続のプラス。省力化投資の積極化などが寄与した。民間在庫の寄与度は0.3%のマイナスだった。
住宅投資は1.4%増と5四半期連続のプラスと、増税前の駆け込み需要がみられた。公共投資は0.8%のプラスだった。
輸出は0.7%減だった。中国向けを中心にアジア向け輸出が弱かったうえ、世界経済減速などで伸び悩んだ。輸入は0.2%増と2四半期連続のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.6%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.2%のプラスだった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/7-92018/10-122019/1-32019/4-62019/7-9
国内総生産GDP▲0.5+0.4+0.5+0.4+0.1
民間消費▲0.1+0.3▲0.0+0.6+0.4
民間住宅+0.4+1.1+1.1+0.5+1.4
民間設備▲3.2+3.2▲0.4+0.7+0.9
民間在庫 *(+0.3)(▲0.0)(+0.1)(▲0.1)(▲0.3)
公的需要▲0.4+0.4+0.3+1.4+0.6
内需寄与度 *(▲0.4)(+0.8)(+0.1)(+0.7)(+0.2)
外需寄与度 *(▲0.1)(▲0.4)(+0.4)(▲0.3)(▲0.2)
輸出▲1.8+1.1▲2.0+0.5▲0.7
輸入▲1.2+3.8▲4.1+2.1+0.2
国内総所得 (GDI)▲0.8+0.3+1.0+0.3+0.1
国民総所得 (GNI)▲0.9+0.4+0.8+0.4+0.1
名目GDP▲0.4+0.4+0.9+0.4+0.3
雇用者報酬 (実質)▲0.4+0.3+0.4+0.6▲0.0
GDPデフレータ▲0.4▲0.3+0.1+0.4+0.6
内需デフレータ+0.6+0.5+0.3+0.4+0.2


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4~6月期の最新データでは、前期比成長率がわずかながらもプラスを示し、赤の消費と水色の設備投資がプラスの寄与を示している一方で、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がマイナスの寄与となっているのが見て取れます。

photo


前回の4~6月期GDP統計1次QEでは、私は「ほぼゼロ成長ながら、マイナス成長」と予想して大きく外したんですが、今回の7~9月期1次QEでは一昨日のQE予想の折りに、「プラスはプラスでも、かなりゼロに近い成長率」と予想していますので、まずまずの結果ではなかったかと自負しています。また、グラフを引用したニッセイ基礎研のリポートでは、前期比成長率+0.1%、前期比年率+0.2%と予想していましたので、まさに、ドンピシャでした。ということで、基本は、消費などで一定の駆込み需要があったものの、その需要増を供給増、というか、生産増で対応したのではなく、在庫の取り崩しで対応した結果であると私は受け止めています。加えて、世界経済の減速に起因する外需の停滞も成長率を下押ししていることは明らかです。ただ、7~9月期GDPでは、設備投資が前期比+0.9%増となっていますが、あくまで私の直感ながら、やや高い気がしなくもありません。法人企業統計を見ないと何ともいえませんが、先行き下方修正される可能性もあると考えています。ただ、全体として、駆込み需要が一定あることは否定できないものの、それを考慮しても内需の底堅さを確認できる統計だったと私は受け止めています。ですから、世界経済の今後の減速の程度にもよるものの、数兆円規模の財政サポートを含む経済対策が15か月予算として策定されるのであれば、10~12月期は消費税率引き上げによるマイナス成長がほぼほぼ確定しているものの、年明け1~3月期はプラス成長に回帰する可能性が高く、2四半期連続でのマイナス成長というテクニカルな景気後退シグナルを避けられるものと私は見込んでいます。唯一の懸念は、経済をけん引する主役の不在です。外需は世界経済の減速でむしろマイナス要因でしかなく、従って、輸出との相関高い設備投資も力強さに欠け、加えて、消費税率の引上げにもかかわらず、所得が年末ボーナスが渋いこともあって伸びず、家計部門でも消費や住宅が景気をけん引する姿とはほど遠いと考えるべきです。ですから、外需も民需も景気のけん引役としては期待できないとなれば、ここは政府の財政によるサポートが必要な場面であろうと私は考えています。

photo


続いて、上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。雇用者報酬の伸び悩みが始まっているように見えます。10~12月期は消費税率引上げにより実質所得はさらに停滞を見せると考えるべきです。加えて、インバウンド消費も韓国との関係悪化などを背景に、伸びが大きく減速しています。また、消費者マインドは改善の兆しすら見えませんが、現在の人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加の方向の影響を及ぼすことが考えられますし、これに加えて、もしも経済対策による財政支出が先行き見通しの向上をもたらして、賃金が上昇して消費者マインドが上向けば、内需主導の成長がサポートされるものと考えますが、いつになったら賃金が増えて消費者マインドが上向くんでしょうか。目先の景気後退は避けられる可能性高いものの、トンネルは長いかもしれません。
Entry No.6422  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月13日 (水) 22:50:00

企業物価(PPI)の国内物価上昇率は消費税率引上げでもマイナス!!!

本日、日銀から10月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.4%の下落と、6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、今日発表の10月統計まで5か月連続でマイナスが続いています。何と、消費税率が引き上げられたにもかかわらず、前年同月比でマイナスが続いているわけで、消費税率引上げの影響を除くベースでは▲1.9%の下落と試算されています。9月は▲1.1%の下落でしたから、一段と下落幅を拡大していることになります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業物価指数、前年比0.4%下落 薬価改定などで
日銀が13日発表した10月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.0と、前年同月比で0.4%下落した。5カ月連続で下落した。前月比でみると1.1%上昇した。電力料金や薬価の改定などの制度的な価格の引き下げが全体を押し下げた。
円ベースでの輸出物価は前年比で6.3%下落し、6カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.3%上昇した。輸入物価は前年比10.5%下落し、6カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.7%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち、消費税を含むベースで前年から上昇したのは520品目、下落したのは213品目だった。上昇と下落の品目差は307と、9月の確報値(74品目)から233品目増えた。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。10月の消費増税の影響を除いたベースでの企業物価指数は前年同月比で1.9%下落した。5カ月連続で前年を下回った。前月比でも0.4%下落した。2カ月ぶりに下落に転じた。
消費税を除くと上昇が328品目、下落が340品目で、品目差はマイナス12品目だった。下落品目数が上昇品目数を上回るのは2017年3月以来、2年7カ月ぶり。
10月は夏季電力料金の期間が終了したほか、薬価改定で医薬品の価格が引き下げられる影響があった。日銀の調査統計局は10月の企業物価の基調について「制度的な要因が中心で、消費増税の影響はみられない」としている。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


季節調整していないながら、国内物価指数の前月比は流石に消費税率引上げの影響もあって+1.1%の上昇を記録しており、寄与度で見て、輸送機械+0.26%、鉄鋼+0.12%、電気機器+0.11%などのプラス寄与が大きくなっています。国内物価指数の前年同月比では、相変わらず、石油・石炭製品が▲14.1%の下落と9月の▲11.9%から下げ幅が拡大しています。私が調べた範囲で、企業物価指数(PPI)のうちの輸入物価の円建て原油価格指数は、昨年2018年のピークが11月の142.5でしたから、このところ、今年2019年6月以降の100~110で11月も落ち着いた動きをするとすれば、次の11月統計でPPI輸入物価に現れる原油価格の前年同月比は底を打つ可能性が高いと考えられます。でも、サウジアラビアの石油施設への武力攻撃など、エコノミストには想像もできないような地政学的な何かが起こる可能性も排除できませんし、何よりも相場モノですので、先行きの価格動向は私の予想の範囲を超えています。また、国内物価指数で前年同月比の下落の大きい化学製品▲4.3%や非鉄金属▲4.5%などは、米中貿易摩擦の一方の当事者であり、ダメージが大きい方といわれている中国の景気動向に連動する部分が大きいと見なされているわけで、国際商品市況における石油価格とともに中国の景気動向にも物価が反応すると考えるべきです。ひょっとしたら、日銀金融政策よりもこういった対外要因の方が影響力大きいかもしれません。企業物価(PPI)の先行きについて考えると、少なくとも11月統計までは石油価格下落の影響が続くことは容易に想像できますし、加えて、中国をはじめとする世界経済の動向や国内景気も含めて、物価が上昇に転ずるタイミングを図るのは難しそうです。
Entry No.6421  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年11月12日 (火) 19:20:00

明後日公表の7-9月期GDP統計1次QEの予想やいかに?

先々週の政府統計の公表などを終えて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、今週木曜日11月14日に7~9月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。今回は、繰り返しになりますが、消費税率引き上げ直前の実績成長率と直後の見通しということで、先行きについても多くのシンクタンクで言及があり、テーブルの上から順に、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研の5機関は明確に見通しを取り上げ、伊藤忠総研についても「輸出動向がカギ」で締めくくっています。これらの機関はやや長めに、ほかもそれなりに引用しています。ただし、大和総研については、引用した後にも、GDP需要項目別に住宅投資・設備投資・公共投資・輸出と続きがあるんですが、取りあえず、個人消費のパラで打ち止めとしてあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.2%
(+0.7%)
10~12月期を展望すると、消費増税に伴う駆け込み需要の反動減に加え、台風19号などの自然災害が消費と生産の重石となり、5四半期ぶりのマイナス成長となる見込み。もっとも、良好な雇用・所得環境や高水準の企業収益を背景とした内需主導の景気回復基調は途切れておらず、マイナス成長は一時的にとどまると予想。
大和総研+0.2%
(+0.9%)
先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。
個人消費は、駆け込み需要の反動減が生じた後は、一進一退が続くとみている。個人消費の鍵を握る所得は、増加ペースの鈍化が見込まれるものの、消費増税時に実施されている各種経済対策が消費を下支えすることで、増税後の消費の腰折れは回避されるとみている。ただし、消費増税対策は公共投資の比重が大きく、家計に限れば消費増税に伴う負の所得効果を全て相殺できないことから、消費はいくらか抑制されるだろう。また、先行きの消費のかく乱要因として、キャッシュレス決済時のポイント還元制度の終了(2020年6月末)前後に駆け込み需要・反動減が生じ得ることなどが挙げられる。
みずほ総研+0.3%
(+1.3%)
今後の日本経済は、10~12月期については消費増税の反動減が下押しする投資の調整圧力が高まるほか、その後も弱い伸びに留まる見通しだ。
輸出は、IT関連需要の底打ちがプラス材料となるものの、世界経済の減速が続くことから、伸びは弱いとみている。設備投資は、省力化投資が下支えするものの、機械設備や建設投資における調整圧力の高まりが下押し要因になり、当面横ばい圏で推移するだろう。
個人消費は、力強さを欠く見通しだ。消費増税の反動減が見込まれることに加え、世界経済の先行き不透明感や企業収益の弱含みを背景に、所得が伸び悩むことが影響しよう。
ニッセイ基礎研+0.1%
(+0.2%)
2019年10-12月期は、前回増税時に比べれば規模は小さいものの、駆け込み需要の反動減が発生すること、税率引き上げに伴う物価上昇によって実質所得が低下することから、民間消費が大きく減少し、明確なマイナス成長になることが予想される。
第一生命経済研+0.3%
(+1.0%)
前回増税対比では抑制されたとはいえ、個人消費の駆け込み需要は一定程度生じたとみられる。この部分については 10-12月期に反動が出ることは必至である。加えて、増税による実質購買力の抑制による悪影響も懸念されるところだ。増税に備えて様々な対策が実行に移されたことから、14年と比較すれば悪影響は小さくなるだろうが、それでも一定の下押し圧力は受けざるを得ない。10-12月期の個人消費は大幅な減少が予想され、実質GDP成長率もはっきりとしたマイナスに転じるとみている。
伊藤忠総研+0.0%
(+0.2%)
7~9月期の実質GDP成長率は前期比+0.0%(年率+0.2%)、4四半期連続のプラス成長ながら概ね横ばいを予想。個人消費は消費増税前の駆け込み需要を悪天候の影響が相殺、公共投資や設備投資の増加も輸出の減少によって減殺された模様。潜在成長率を上回る成長を取り戻すかどうかは輸出動向がカギ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.1%
(+0.4%)
2019年7~9月期の実質GDP成長率は、前期比+0.1%(年率換算+0.4%)と4四半期連続でプラス成長を維持したと予想される。もっとも、消費増税前の駆け込み需要があったことを考慮すると、伸びは弱い。
三菱総研+0.5%
(+1.9%)
2019年7-9月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.5%(年率+1.9%)と、4四半期連続でのプラス成長を予測する。消費税増税前の駆け込み需要による押し上げ効果もあり、内需が堅調に拡大したとみられる。


ということで、+1%弱といわれている潜在成長率近傍を予想するシンクタンクが多いんですが、高いところで三菱総研の年率+1.9%成長、低いところでも伊藤忠総研の年率+0.2%となっていて、少なくともマイナス成長を見込むシンクタンクはありません。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、中央値で年率+0.8%成長、レンジでも+0.2~+1.9%となっています。基本的に、10月1日からの消費税率引上げ直前の駆込み需要が下支えしており、サステイナブルではないプラス成長ではありますが、ほぼ、私の実感とも合致しています。ただし、下方リスクは小さくなく、特に、悪い話ではないんですが、消費税率引上げ前の駆込み需要が、前回2014年4月時よりも小さく、しかも、大型消費の耐久消費財で小さかったわけですので、私の実感としては、プラスはプラスでも、かなりゼロに近い成長率に仕上がっている可能性が高いと感じています。ただし、駆込み需要が大きかったとすれば、在庫調整が進んだ可能性もあります。これも悪い話ではありません。いずれにせよ、プラス成長というエコノミスト間のコンセンサスは当然なんですが、潜在成長率をやや下回る、と私は予想しています。
下の画像はコンポーネントの寄与度に分解したGDP成長率の推移のグラフをニッセイ基礎研のサイトから引用しています。

photo
Entry No.6420  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑
 | BLOG TOP |  OLDER ≫