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2024年03月01日 (金) 15:00:00

改善が遅れる雇用統計と消費者マインドの改善示す消費者態度指数

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率など、1月の雇用統計が公表されています。失業率は前月から▲0.1%ポイント改善して2.4%を記録した一方で、有効求人倍率は前月と同じ1.27倍となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月の有効求人倍率、横ばいの1.27倍 失業率は2.4%
厚生労働省が1日に発表した1月の有効求人倍率(季節調整値)は1.27倍で前月から横ばいだった。新型コロナウイルスの5類移行後初の年始は人の流れが活発で、生活関連サービス業・娯楽業で求人増につながった。堅調だった宿泊業・飲食サービス業では求人が減った。
総務省が同日発表した1月の完全失業率は2.4%だった。23年12月は2.5%だった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。1月の有効求職者数は前月と比べて0.1%減少し、3カ月ぶりの減少となった。有効求人数は0.2%増で11カ月ぶりに増えた。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で3.0%減少した。原材料や光熱費が上がった影響で、製造業は11.6%減、宿泊・飲食サービス業も8.8%減となった。生活関連サービス・娯楽業は理容・美容などの利用が増えて5.7%増加した。
完全失業者数は163万人で前年同月比で0.6%減った。就業者数は6714万人で0.4%伸び、18カ月連続の増加となった。男性は3682万人と4万人減少し、女性は3032万人と29万人増えた。仕事に就かず職探しもしていない非労働人口は4109万人で、52万人減った。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から▲0.1%ポイント改善の2.4%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、前月から横ばいの1.27倍と見込まれていました。実績は予想と同じでジャストミートしています。いずれにせよ、人口減少局面ということもあって、雇用は底堅い印象ながら、1月統計に現れた雇用の改善が鈍い、と私は評価しています。季節調整済みのマクロの統計で見て、一昨年2022年年末12月から直近の1月統計までの1年余りの期間で、人口減少局面に入って久しい中で労働力人口は+35万人増加し、非労働力人口は▲73万人減少しています。就業者+36万人増、雇用者+53万人増の一方で、完全失業者は▲4万人減となっており、就業率は着実に上昇しています。ただ、就業率上昇の評価は難しいところで、働きたい人が着実に就労しているという側面だけではなく、物価上昇などで生活が苦しいために働かざるを得ない、というケースもありえます。加えて、就業者の内訳として雇用形態を見ると、正規が+36万人増の一方で、非正規が+39万人増ですら、国際労働機構(ILO)のいうところも decent work だけが増えているわけではありません。先進各国がこのまま景気後退に陥らないソフトランディングのパスに乗っているにもかかわらず、我が国の雇用の改善が緩やかな印象を持つのは私だけではないと思います。加えて、量的な雇用ではなく賃金動向も重要な課題です。

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最後に、本日、内閣府から2月の消費者態度指数が公表されています。前月から+1.1ポイント上昇し39.1を記録しています。グラフは上の通りです。統計作成官庁である内閣府による消費者マインドの基調判断は「改善している」で、前月からの据置きです。消費者態度指数を構成する4項目のコンポーネントを少し詳しく見ると、「雇用環境」が+1.4ポイント上昇し44.3、「暮らし向き」が+1.1ポイント上昇し37.6、「収入の増え方」も+1.1ポイント上昇し40.8、「耐久消費財の買い時判断」が+0.7ポイント上昇し33.5となっています。
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2024年02月29日 (木) 15:00:00

1月鉱工業生産指数(IIP)は大きく落ち込み、商業販売統計も伸びが鈍化

本日、経済産業省から1月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲7.5%の減産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+5.3%増の13兆8190億円を示した一方で、季節調整済み指数は前月から+1.0%の増加を記録しています。まず、日経新聞のサイトなどから各統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、1月7.5%低下 ダイハツの工場停止響く
経済産業省が29日に発表した1月の鉱工業生産指数(2020年=100、季節調整済み)速報値は97.6となり、前月比で7.5%低下した。品質不正による自動車メーカーの工場停止が影響し、低下幅は新型コロナウイルスの感染が広がった20年5月以来の大きさとなった。
生産は全15業種のうち14業種で下がった。QUICKがまとめた民間エコノミスト予測の中央値は前月比7.6%のマイナスだった。
生産の基調判断は「一進一退」から「一進一退ながら弱含み」と引き下げた。基調判断を変えたのは23年7月以来となる。2、3月は改善を見込むものの、1月のマイナス幅を取り戻すにはいたらないと判断した。
業種別でマイナス幅が大きいのは自動車工業で17.8%だった。国内の乗用車メーカー8社が28日にまとめた1月の国内生産は前年同月比6%減の54万8000台となった。22年12月以来13カ月ぶりに前年同月で減少に転じた。1月の鉱工業生産指数もこうした動きを反映した。
ダイハツ工業では23年12月に認証試験での不正を公表し、2月12日に京都工場で生産を再開させるまで、国内すべての完成車工場で生産を停止していた。
自動車の品質不正を巡っては、豊田自動織機でエンジンの認証手続きに関する問題も表面化している。1月29日に一部の工場で稼働を停止し、2月半ばから徐々に再開している。
医療業界向けの分析機器が低迷した汎用・業務用機械工業では前月比12.6%下がった。電気・情報通信機械工業も8.3%落ち込んだ。海外向けリチウムイオン蓄電池の需要が低迷した。上昇は1業種のみで、自動車を除く輸送機械工業が2.1%上昇した。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数をみると2月は前月比4.8%の上昇を見込む。企業の予想値は上振れしやすく、例年の傾向をふまえた補正値は0.8%のプラスだ。3月の予測指数は2.0%の上昇を見込む。
小売業販売額1月は前年比2.3%増、食料・化粧品伸びる=経産省
経済産業省が29日に発表した1月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比2.3%増と23カ月連続でプラスだった。価格上昇を背景に飲食料品や医薬品・化粧品の販売が好調だった。出荷停止の影響で自動車販売はマイナスだった。ロイターの事前予測調査では2.3%の増加が予想されていた。
業種別で寄与度の最も大きかったのは飲食料品と医薬品・化粧品。価格上昇の影響や、家庭用品・日用品の販売が伸びた。
業種別の前年比は無店舗小売りが7.1%増、医薬品・化粧品が5.4%増、百貨店などの各種商品小売りが3.5%増だった。
一方、織物・衣服は8.3%減、自動車小売りは3.5%減だった。暖冬の影響で冬物衣料が不調だった。自動車は一部メーカー生産停止の影響で17カ月ぶりに減少した。
業態別の前年比は、ドラッグストア7.4%増、 百貨店5.9%増、 スーパー2.4%増、コンビニエンスストア1.6%増。
一方、家電大型専門店は5.8%減、ホームセンター0.4%減。昨年1月にウィンドウズ8.1のサポート終了に伴うパソコンの買い替え需要が発生した反動などが響いた。


長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は予測中央値で▲7.6%でしたので、実績の前月比▲7.5%の減産は、ほぼほぼコンセンサス通りと受け止めています。ただ、大きな減産であることは確かであり、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」から「一進一退ながら弱含み」と前月から半ノッチ引き下げています。また、先行きの生産については、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足下の2月は補正なしで+4.8%の増産、上方バイアスを除去した補正後でも+0.8%の増産となっていますが、他方で3月は補正前で2.0%の増産ですので、1月の大きな減産は2-3月では取り戻せないという気がします。経済産業省の解説サイトによれば、1月統計での生産は、自動車工業の前月比▲17.8%、寄与度▲2.48%をはじめ、汎用・業務用機械工業でも▲12.6%の減産、寄与度▲1.01%、電気・情報通信機械工業でも前月比▲8.3%の減産、寄与度は▲0.72%など、我が国のリーディング産業が軒並み減産を示しています。引用した記事にもあるように、自動車工業についてはダイハツの品質不正による工場閉鎖の影響が大きいと私も考えていますが、今年の中華圏の春節は2月であるにもかかわらず、1月生産がここまで落ち込んでいるのは欧米先進国や中国への輸出の影響をうかがわせます。2-3月にもいわゆる挽回生産ノペントアップ需要が十分ではないようですし、生産の先行きはやや不安です。唯一のポジな要素は円安かもしれません。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。見れば明らかな通り、小売業販売は堅調な動きを続けています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、経済産業省のリポートでかなり機械的に判断している小売業販売額の基調判断は、直近の1月統計までの3か月後方移動平均の前月比が▲0.2%の低下となって、先月までの「上昇傾向」から「一進一退」に明確に1ノッチ引き下げています。ただ、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、1月統計ではヘッドライン上昇率も生鮮食品を除くコア上昇率も、前年同月比で+2%ほどのインフレを記録していますが、小売業販売額の1月統計の+2.3%の前年同月比での増加は、何とかギリギリでインフレ率を超えている印象で、実質でも小売業販売額は前年同月比でプラスになっている可能性が十分あります。ただ、こういった小売販売額がホントに国内需要に支えられているかどうかは疑問があります。すなわち、現在の高インフレは国内では消費の停滞をもたらす可能性が高く、したがって、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより小売業販売額の伸びが支えられている可能性が否定できません。したがって、国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性が否定できません。私の直感ながら、例えば、引用した記事にもあるように、ドラッグストアや百貨店の販売額の増加率がスーパーやコンビニエンスストアを上回っているのは、インバウンドの影響をうかがわせると私は考えています。
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2024年02月28日 (水) 14:00:00

リクルートによる1月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?

明後日3月1日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートによる11月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。参照しているリポートは以下の通りです。計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、以下の出典に直接当たって引用するようお願いします。


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いつものグラフは上の通りです。アルバイト・パートの募集時平均時給の方は、前年同月比で見て、昨年2023年10月には+2.3%増となった後、11月12月も+2%台を記録しています。そして、今年2024年1月には+3.3%増となりました。昨日公表された消費者物価指数(CPI)上昇率が1月統計で+2%でしたから、これくらいでようやく物価上昇率に追いついて、実質賃金がプラスに転じたのではないか、と想像されます。時給の水準そのものは、一昨年2021年年央からコンスタントに1,100円を上回る水準が続いており、かなり堅調な動きを示しています。他方、派遣スタッフ募集時平均時給の方も昨年2023年10~11月には+2%を上回る増加を示しましたが、12月には+1.1%増に鈍化し、本日公表の2024年1月になってようやく+3.0%を記録しています。
三大都市圏全体のアルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は、繰り返しになりますが、1月には前年同月より3.3%、前年同月よりも+38円増加の1,180円を記録しています。職種別では、「フード系」(+47円、+4.3%)、「販売・サービス系」(+46円、+4.2%)、「営業系」(+40円、+3.4%)、「専門職系」(+42円、+3.2%)、「製造・物流・清掃系」(+32円、+2.8%)、「事務系」(+32円、+2.6%)と、すべての職種で上昇を示しています。加えて、地域別でも関東・東海・関西のすべての三大都市圏で前年同月比プラスとなっています。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、1月には前年同月より+3.0%、+48円増加の1,650円になりました。職種別では、「製造・物流・清掃系」(+40円、+2.9%)、「IT・技術系」(+44円、+2.0%)、「オフィスワーク系」(+28円、+1.8%)、「医療介護・教育系」(+25円、+1.7%)、「営業・販売・サービス系」(+20円、+1.3%)で上昇を示した一方で、「クリエイティブ系」(▲26円、▲1.4%)だけは減少を示しています。なお、地域別でも関東・東海・関西のすべての三大都市圏でプラスとなっています。

アルバイト・パートや派遣スタッフなどの非正規雇用は、従来から、低賃金労働とともに「雇用の調整弁」のような不安定な役回りを演じてきましたが、ジワジワと募集時平均時給の伸びが縮小しています。我が国景気も回復・拡大局面の後半に差しかかり、あるいは、景気後退局面に近づき、雇用の今後の動向が気がかりになり始めるタイミングかもしれません。
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2024年02月27日 (火) 14:30:00

ほぼ2年ぶりの+2%まで縮小した1月の消費者物価指数(CPI)上昇率をどう見るか?

本日、総務省統計局から1月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.0%を記録しています。前年比プラスの上昇は27か月連続ですが、先月11月統計の+2.5%のインフレ率からは上昇幅が縮小しています。日銀のインフレ目標である+2%とピッタリでした。ただ、ヘッドライン上昇率は+2.2%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+3.5%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月の消費者物価2.0%上昇 伸び1年10カ月ぶり低水準
総務省が27日発表した1月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.4となり、前年同月比で2.0%上昇した。伸びは3カ月連続で縮小した。上昇率は22年3月の0.8%以来、1年10カ月ぶりの低水準だった。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は1.8%の上昇だった。23年12月は2.3%上昇だった。プラスは2年5カ月連続となる。
生鮮食品を除く食料や宿泊料は伸びを縮めたものの、依然として高い上昇率が続く。外国パック旅行費もプラスに寄与した。電気代や都市ガス代、固定電話の通信料は指数を下げる方向に働いた。
生鮮食品を除く総合指数の上昇率は日銀の物価安定目標である2%と同じだった。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は3.5%上がった。生鮮食品を含む総合指数は2.2%上昇した。
総務省によると政府の電気・ガス料金の抑制策がなければ、生鮮食品を除いた総合指数の上昇率は2.6%だった。政策効果で物価の伸びを0.5ポイント程度抑えた。
品目別にみると電気代は前年同月比21.0%、都市ガス代は22.8%それぞれ下がった。政府の料金抑制策で前年同月と比べてマイナスでの推移が続く。都市ガス代の下げ幅は比較可能な1971年1月以降で最大だった。
観光需要の回復が続く宿泊料は26.9%上昇した。前年の23年1月から政府の観光振興策「全国旅行支援」の割引額が縮小し、価格が上昇していた。この反動で23年12月の59.0%プラスから伸びを縮めた。
光回線を使う「IP網」への移行で固定電話の通信料も12.0%下がった。
全体をモノとサービスに分けると、サービスは2.2%伸びた。サービスの伸びは23年7月以降、7カ月連続で2%以上で推移する。
外国パック旅行費は62.9%上昇した。新型コロナウイルス禍の影響で21年1月以降は価格の収集を一時的に取りやめていたため、総務省は「20年1月との比較になっている」と説明した。この項目を除くと生鮮食品を除く総合指数は1.9%の上昇だった。


何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2%を下回るとの予想でしたので、実績の+2.0%の上昇率はやや上振れた印象ながら、サプライズはありませんでした。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていて、本日発表された1月統計では前年同月比で▲12.1%に達し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲1.07%の大きさを示しています。先月の2023年12月統計ではこの寄与度が▲1.02%ありましたので、1月統計でコアCPI上昇率が先月統計から▲0.3%ポイント縮小した背景のひとつは、こういったエネルギー価格の動向にあります。特に、そのエネルギー価格の中でもマイナス寄与が大きいのが電気代です。エネルギーのウェイト712の中で電気代は341と半分近くを占め、1月統計では▲21.0%下落し、寄与度は▲0.90%の大きさを示しています。都市ガス代も▲22.8%下落していて、寄与度が▲0.30%となっています。統計局の試算によれば、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の影響を寄与度でみると、▲0.48%に達しており、うち、電気代が▲0.40%に上ります。他方で、政府のガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は昨年2023年7月統計から上昇に転じ、直近の1月統計では+4.7%となっています。中東の地政学的なリスクも高まっています。すなわち、ガザ地区でのイスラエル軍の虐殺行為、親イラン武装組織フーシによる商船の襲撃なども、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。なお、食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮野菜が+0.11%、生鮮果物が+0.10%の寄与を示しています。鶏卵の前年同月比上昇率も+18.3%と、まだまだ高い伸び率が続いています。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見ると、調理カレーなどの調理食品が+0.24%、アイスクリームなどの菓子類が+0.24%、フライドチキンなどの外食が+0.16%、鶏卵などの乳卵類が+0.15%、などなどとなっています。サービスでは、引用した記事にあるように、宿泊料が前年同月比で+26.9%上昇し、寄与度も+0.23%に達しています。もっとも、サービス価格については、上昇の勢いが鈍っている、という見方がある一方で、日経新聞の記事などでは、飲食店、金融機関、病院・診療所については、新型コロナウイルス禍前と比べてサービスの内容が悪化していて、実態的には「ステルス値上げ」が起きている、といった指摘もあったりします。
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2024年02月26日 (月) 14:00:00

1月の企業向けサービス価格指数(SPPI)は6か月連続で+2%台の上昇が続く

本日、日銀から昨年1月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月から▲0.3%ポイント上昇率が縮小して+2.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについても前月から伸びが縮小して+2.1%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、1月2.1%上昇 伸びは鈍化
日銀が26日発表した1月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は109.8と、前年同月比2.1%上昇した。伸び率は23年12月より0.3ポイント縮小し4カ月ぶりに鈍化したが、6カ月連続で2%台で推移する。ソフトウエア開発や廃棄物処理などの幅広い分野で人件費を価格に反映する動きがみられた。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともに消費者物価指数(CPI)の先行指標とされる。調査対象となる146品目のうち、価格が前年同月比で上昇したのは108品目、下落は22品目だった。
内訳をみると、宿泊サービスが前年同月比で27.0%上昇した。23年1月に政府の観光促進策「全国旅行支援」の割引が縮小して値上げした反動で23年12月(56.6%上昇)より伸び率が縮小したが、インバウンド(訪日外国人)の需要回復が下支えしたことで高い伸びが続いた。
情報通信は前年同月比2.2%上昇した。ソフトウエア開発や情報処理・提供サービスで賃上げやサーバーの管理費の値上げが寄与した。廃棄物処理も2.1%上昇した。燃料費や人件費の上昇を転嫁する動きが影響した。
外航貨物輸送も14.9%上昇した。円相場が24年1月(平均)では1ドル=146円台と、23年1月(1ドル=130円台)より円安が進んだことで円ベースの価格が上昇した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。ただし、指数の基準年が異なっており、国内企業物価指数は2020年基準、企業向けサービス価格指数は2015年です。なお、影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

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モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速は終了し、2022年12月から指数水準として120前後でほぼほぼ横ばいとなっています。他方、その名の通りのサービスの企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準としてまだ上昇を続けているのが見て取れます。上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドライン指数の前年同月比上昇率は、今年2023年8月から+2%台まで加速し、本日公表された1月統計では+2.1%に達しています。6か月連続で+2%台の伸びを続けています。ただし、+2%前後の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高いながら、日銀の物価目標、これは生鮮食品を除く消費者物価上昇率ですが、物価目標の+2%近傍であることも確かです。加えて、下のパネルにプロットしたうち、モノの物価である企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価のグラフを見ても理解できるように、インフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速する局面ではないんではないか、と私は考えています。繰り返しになりますが、ヘッドラインSPPI上昇率にせよ、国際運輸を除いたコアSPPIにせよ、日銀の物価目標とほぼマッチする+2%程度となっている点は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて1月統計のヘッドライン上昇率+2.1%への寄与度で見ると、宿泊サービスや土木建築サービスや労働者派遣サービスなどの諸サービスが+0.84%ともっとも大きな寄与を示しています。ヘッドライン上昇率+2.4%の半分近くを占めています。ただし、先月の2023年12月統計からは寄与度として▲0.19%ポイント縮小しています。引用した記事にもある通り、全国旅行支援が終了した一方でインバウンドの寄与もあり、宿泊サービスは前年同月比で2023年12月+56.6%の上昇から、2024年1月は+27.0%に上昇率は縮小しましたが、依然として大きな上昇となっています。ほかに、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.48%、加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている石油価格の影響が大きい外航貨物輸送や道路貨物輸送や道路旅客輸送などの運輸・郵便が+0.39%のプラス寄与となっています。運輸・郵便については、引用した記事にもあるように、円安の影響も見逃せません。リース・レンタルについても+0.19%と寄与が大きくなっています。
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2024年02月22日 (木) 15:00:00

帝国データバンク「2024年度の賃金動向に関する企業の意識調査」の結果やいかに?

昨日2月21日付けで帝国データバンクから「2024年度の賃金動向に関する企業の意識調査」が明らかにされています。pdfの全文リポートもアップロードされています。デフレ脱却のために賃金動向がとても気にかかるところです。今年2024年度には、過去最高となる59.7%の企業で賃金改善を見込んでいるとの結果が示されています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のポイントを4点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 2024年度、過去最高となる59.7%の企業で賃金改善を見込む。ベースアップは過去最高を記録
  2. 賃金改善の理由、「労働力の定着・確保」が75.3%へ増加、「物価動向」も半数を超える
  3. 賃金を改善しない理由、「自社の業績低迷」が56.3%でトップ
  4. 総人件費は平均4.32%増加見込み、従業員給与は平均4.16%増と試算


ということで、リポートから、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 2024年度の賃金改善見込み のグラフを引用すると上の通りです。大きな違いではありませんが、2020年度から最近5年間で、もっとも高い59.7%の企業で賃金改善を見込んでいます。逆に、賃金改善が「ない」との回答は13.9%ともっとも低くなっています。また、グラフは引用しませんが、賃金改善の具体的な内容を見ると、「ベースアップ」が53.6%(前年比+4.5%ポイント増)、「賞与(一時金)」が27.7%(+0.6%ポイント増)と、収益見合いの賞与などではなく、ベースアップ中心の賃金改善が予定されています。「ベースアップ」は過去最高となった前年の49.1%をさらに上る勢いです。また、賃金改善があると見込んでいる企業を産業別に見ると、「製造」が64.7%ともっとも高く、「運輸・倉庫」63.7%や「建設」62.5%が続いて高くなっています。

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続いて、リポートから 賃金を改善する理由 (複数回答) のグラフを引用すると上の通りです。2024年度に賃金改善が「ある」と回答した企業の理由は、人手不足などによる「労働力の定着・確保」が75.3%ともっとも高くなっています。また、昨年2023年度から「物価動向」を上げる企業の割合が高くなっているのも見て取れます。グラフは引用しませんが、賃金を改善しない理由としては「自社の業績低迷」がもっとも高いのですが、昨年度2023年の62.2%から今年度2024年度は56.3%までやや低下しています。また、総人件費の増加率は前年度2023年度から平均+4.32%増加すると見込まれ、うち従業員の給与は平均+4.16%、賞与は平均+4.04%、それぞれ増加し、さらに、各種手当などを含む福利厚生費も平均4.06%の増加が見込まれています。

今年は物価と賃金の動向に注目が集まり、デフレ脱却が現実味を帯びています。金融政策ではデフレ脱却前にマイナス金利などの非伝統的政策の解除が先行しかねない勢いですが、マイルドなインフレと賃金の着実な上昇が期待されます。
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2024年02月21日 (水) 14:30:00

再び赤字になった1月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から1月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+11.9%増の7兆3326億円に対して、輸入額は▲9.6%減の9兆909億円、差引き貿易収支は▲1兆7583億円の赤字を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

1月の貿易収支1兆7583億円の赤字 輸出の伸び鈍く
財務省が21日公表した1月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆7583億円の赤字だった。赤字幅は前年同月に比べて49.9%縮小した。2カ月ぶりに貿易赤字となった。
全体の輸入額は9兆909億円で、9.6%減った。減少は10カ月連続だ。輸出額は7兆3326億円で11.9%増え、2カ月連続で増加した。
輸入は資源関連が全体を押し下げた。原油が9162億円で9.2%減、液化天然ガス(LNG)が6224億円で28.8%減、石炭が4299億円で43.2%減となった。
原油はドル建て価格が1バレルあたり85.8ドルと前年同月から2.9%下がった。円安傾向となった影響で、円建て価格は1キロリットルあたり7万7647円と5.9%上がった。
地域別では米国が1兆83億円で6.0%増、アジアが4兆4820億円で7.0%減だった。
輸出は鉱物性燃料が1220億円と32.7%減った。米国向けの自動車や中国向けIC製造用など半導体等製造装置は増えた。地域別にみると米国向けが1兆4233億円で15.6%増え、アジア向けが3兆8964億円で13.5%の増加となった。
1月の貿易収支は季節調整値でみると2352億円の黒字となった。輸入が前月比で10.5%減の8兆5299億円、輸出が3.6%減の8兆7652億円だった。


長くなってしまいましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲1.85兆円ほど貿易赤字が見込まれていましたので、大きなサプライズはありませんでした。季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、グラフから明らかな通り、輸出額が伸びていないわけではなのですが、それよりも輸入額の減少が現状の貿易統計の大きな特徴です。報じられているように、季節調整していない原系列の統計ではまだ貿易収支は赤字ですが、引用した記事にもある通り、季節調整済みの系列では2021年5月以来久々の黒字、+2000億円余りを記録しています。ただし、中華圏の春節のカレンダーがイレギュラーになっていて、昨年2023年は1月22日から春節が始まった一方で、今年2024年は2月10日からとなっています。ですから、季節調整がどこまでこういった中華圏の春節要因を除去できているか、私には少し疑問です。ひょっとしたら、昨年と今年のそれぞれの1-2月を合計して、というか、平均して見る必要があるのかもしれません。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、貿易収支が赤字であれ黒字であれ、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。そして、私の知る限り、少なくないエコノミストは貿易赤字は縮小、ないし、黒字化に向かうと考えている可能性が十分あります。
1月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が減少しています。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで▲14.2%減、金額ベースで▲9.2%減となっています。数量ベースと金額ベースで大きな差がないというわけですから、価格低下に歯止めがかかりつつあると考えるべきです。LNGについても同様で、数量ベースでは▲10.5%減、金額ベースでは▲28.8%減となっています。また、ある意味で、エネルギーよりも注目されている食料について、穀物類は数量ベースのトン数では▲5.6%減となっている一方で、金額ベースでは▲11.0%減と単価が低下を始めていることがうかがえます。輸出に目を転ずると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で数量ベースの輸出台数で+16.1%増、金額ベースでも+31.6%増と大きく伸びています。半導体部品などの供給制約の緩和による生産の回復が寄与しています。自動車や輸送機械を別にすれば、一般機械+5.1%増、電気機器+7.6%増と、自動車以外の我が国リーディング・インダストリーも輸出額を伸ばしています。ただし、こういった我が国の一般機械や電気機械の輸出はソフトランディングに向かっている米国をはじめとする先進各国経済の需要要因とともに、円安の価格要因も寄与していると考えられます。すなわち、円・ドルの東京インターバンクの為替相場、スポット中心相場の月中平均で見て、2023年1月の\/$130.20から2024年1月には\/$146.57と12%を超える円安となっています。
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2024年02月20日 (火) 15:00:00

やっぱり2021年からのインフレは供給ショックだったのか?

先週2月15日、ピーターソン国際経済研究所(PIIE)のブログで Supply shocks were the most important source of inflation in 2021-23, but raising rates to curb demand was still appropriate と題する記事が明らかにされています。
何が分析されているのかといえば、米国でのインフレは供給サイドを起点に生じたものであることは確かである一方で、需要サイドの寄与がどうだったかを考えています。すなわち、供給サイドだけの要因であれば、金融政策によって需要を引き締める必要は決して大きくなかったのですが、需要のインフレへの寄与がそれなりにあったとすれば、金融政策による需要引締め策が必要であったということになります。

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まず、上のグラフはピーターソン国際経済研究所のサイトから Figure 1 Deviations from forecast can be shown as demand and supply shocks を引用しています。誰もが経済学と聞いて思い浮かべるであろう需要曲線と供給曲線でもって均衡が決まり、その均衡から供給曲線がシフトした結果を考えようと試みています。見れば明らかな通り、供給ショックであるとすれば、価格が上昇し、すなわち、インフレとなり、産出は減少します。

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続いて、上のグラフはピーターソン国際経済研究所のサイトから Figure 2 Shocks differ across major economies in 2020-21 and 2022-23 を引用しています。需要曲線や供給曲線は描けませんから、その交点の均衡、というか、均衡のシフトのみ示してあります。主要4地域、すなわち、米国、欧州、日本、英国です。2022年2月末のロシアによるウクライナ侵攻の前後で分割しており、左のパネルはウクライナ侵攻前の2021年10~12月期まで、右が侵攻後の2021年10~12月期以降となります。侵攻以前の日本が異常な動きを示していて、明らかに供給曲線に沿って需要曲線がシフトしている可能性が伺えます。そして、侵攻前については、少なくとも米国では需要がプラスの方向のシフトしており、"The results presented here suggest that supply shocks were the main culprit but that demand probably played a supporting role, especially in the United States." この結果は供給ショックが主な原因であるが、特に米国では需要がおそらく補助的な役割を果たしたことを示唆している、と結論しています。ですので、金融政策による需要の引締めは必要であった、ということになります。

という結論を見ると、現状でインフレが低下しつつあり、特に、日本の場合は需要がインフレに対して補助的な役割すら果たさなかったと思うのですが、いかがなものでしょうか?
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2024年02月19日 (月) 15:00:00

2023年12月の機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から昨年2023年12月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+0.7%増の8587億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

機械受注23年10-12月1.0%減 3四半期連続マイナス
内閣府が19日発表した2023年10~12月期の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前期比1.0%減の2兆5142億円だった。マイナスは3四半期連続。製造業の発注が減少した。
製造業は2.3%減で、2四半期連続のマイナスとなった。船舶と電力を除く非製造業は2.5%増で3四半期ぶりのプラスを確保した。
23年通年は製造業の減少が響き、全体で前年比3.6%減だった。マイナスは20年以来3年ぶりとなる。
内閣府は実績を見通しで割った「達成率」を公表しており23年10~12月期は93.2%だった。達成率は23年7~9月期の94.6%から低下した。
発注した業種ごとにみると、「化学工業」が26.0%減った。化学機械でまとまった受注があった23年7~9月期の反動が出た。「汎用・生産用機械」も9.1%減少した。クレーンやコンベヤーなどの運搬機械のマイナスが響いた。
船舶と電力を除く非製造業では通信業が18.1%増えた。11月に大型案件があった通信業が全体を押し上げた。卸売業・小売業も汎用コンピューターなどの電子計算機が増えてプラスに寄与した。
23年12月末時点の1~3月期の受注額見通しは前期比4.6%増だった。見込み通りなら4四半期ぶりのプラスとなる。製造業が11.7%増で全体をけん引する。モーターや電子・通信機械などの発注が増えると見込む。
23年12月単月の民需は前月比2.7%増の8388億円だった。プラスは2カ月ぶりとなる。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.5%増だった。内閣府は全体の基調判断を1年2カ月連続で「足踏みがみられる」とした。
製造業が10.1%増と2カ月ぶりにプラスだった。業種別では「化学」や「情報通信機械」が押し上げた。
船舶と電力を除く非製造業は2.2%減った。マイナスは2カ月連続。運輸業・郵便業や通信業が減少した一方、電子計算機が増えて金融業・保険業はプラスだった。


四半期統計中心でとても長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+2.5%増でした。予想レンジがかなり広かったとはいえ、下限は+0.1%増でしたので、実績の+2.7%増は大きなサプライズなかったと私は受け止めています。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いています。1年2か月連続の据え置きだそうです。上のグラフで見ても、太線の移動平均で示されているトレンドで見れば、明らかに下向きとなっています。事実、昨年2023年中、4~6月期▲3.2%減の2兆5855億円に続いて、7~9月期▲1.8%減の2兆5385億円、10~12月期▲1.0%減の2兆5142億円と、3四半期連続で減少しています。ただ、受注水準としてはまだ何とか月次で8,000億円を上回っており決して低くはありませんし、足元の2024年1~3月期の受注見通しは+4.6%増の2兆6294億円と見込まれています。ただし、製造業が2ケタ増と見込まれている一方で、船舶と電力を除く非製造業は▲1.8%減と予想されていて、やや業種でばらつきが見られます。ただ、先行きに関しては、今年2024年1~3月期の受注増見込みはやや慎重に見ておく必要があります。すなわち、引用した記事にもあるように、受注の達成率が低下してきているからです。2023年7~9月期94.6%から10~12月期には93.2%でした。エコノミストの経験的な通説として、この達成率が90%を下回ると景気後退局面入りのひとつのサインとみなされています。私は、先日の2023年10~12月期のGDP養鶏速報1次QEなどを見ても、ひょっとしたら、すでに景気後退局面に入っているかの末芋ゼロではない、と考えていますし、この先、防衛費や子育予算などで国民負担が増加すると本格的な景気後退に入る可能性がさらに高まると考えています。
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2024年02月16日 (金) 15:00:00

海外からの国内送金はフィリピンの成長にどのくらい寄与しているのか?

2月1日に、アジア開発銀行(ADB)から "Measuring the Contribution of International Remittances to Household Expenditures and Economic Output" と題するワーキングペーパーが公表されています。引用情報は以下の通りです。


まず、ペーパーからAbstractを引用すると以下の通りです。

Abstract
The macroeconomic studies that assess the contribution of international remittances to the origin countries of migrants use a different definition of remittances than the microeconomic literature that examines the impact at the household and community levels. This study overcomes this difference in definition by integrating household expenditure data into the input-output analysis. Using the 2018 Family Income and Expenditure Surveys (FIES) of the Philippines, we find that remittance-financed household consumption and investment totaled ₱742.2 billion ($14.1 billion) and contributed 3.5% of the country's total output, 3.4% of gross domestic product (GDP), and 3.7% of total employment in 2018. We note that the largest value added is accruing to the manufacturing sector as it accounts for more than a third of remittance recipients' spending basket followed by the trade and agriculture, forestry, and fisheries sectors, which are closely linked to the manufacturing industry. The international remittances income reported by households is less than half (43.8%) of the ₱1.7 trillion ($32.2 billion) aggregate international remittances reported by the central bank in the same year based on the balance of payments definition.


私は前任校の長崎大学経済学部のころ、国際協力機構(JICA)研究所の特別研究員をしていて、共同研究の成果として紀要論文 "An Essay on Remittances Effects to Economic Development: A Survey" を取りまとめたことがあります。その際に、本国送金が経済成長へどのような影響を及ぼすかについては、外国為替需給に影響を及ぼして、いわゆる「オランダ病」として為替の増価を招く可能性がある一方で、資金アベイラビリティを高めて、また、金融サービスの質の改善も相まって国内の消費や投資が活性化される可能性も否定できない、としつつ、でも結論としては、数十年にわたる民間の所得移転、つまり、海外からの送金(remittances)は、受取国の経済成長にほとんど貢献しておらず、一部の国では成長を遅らせている可能性さえある "decades of private income transfers - remittances - have contributed little to economic growth in remittance-receiving economies and may have even retarded growth in some." としておきました。でも、フィリピンの場合はそれなりのインパクトあるようです。

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まず、上のグラフはペーパー p.11 Figure 1: Philippine Households by Receipt of and Dependence on International Remittances and Income Quintile, 2018 を引用しています。海外からの送金(remittances)を受け取っている家計ほど所得分位5階級で豊かな階級に分類されています。この論文では産業連関表に基づく試算を行っていて、ここではあくまで相関関係ですが、下のテーブルで詳細に論じます。

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次に、上のテーブルはペーパー p.26 Table 5: Estimated Impact of a 10% Increase in Remittance Income by Sector, 2018 を引用しています。テーブルのタイトル通りに、海外からの送金(remittances)が増加するインパクトを産業ごとに見ています。もちろん、農林水産業や鉱業もインパクト大きいのですが、このリポートでは建設業(Construction)、不動産業(Real estate and ownership of dwellings)への誘発効果を強調しています。そして、同時に、宿泊・飲食サービス(Accommodation and food service activities)が次いで大きな誘発効果を示しています。要するに、サービス部門での影響が大きいと結論しています。

最後に、このペーパーでは、海外からの送金(remittances)による家計消費と投資は、2018年にフィリピンの総生産の3.5%(244億ドル)、国内総生産(GDP)の3.4%(119億ドル)、総雇用の3.7%(150万人)に貢献したとの試算結果を示し、シミュレーション分析に基づいて、海外からの送金(remittances)による収入が10%(14億ドルに相当)増加すると、国のGDPがベースライン(2018年の約12億ドル)を0.34%上回る増加につながる "Remittance-financed household consumption and investment contributed to 3.5% of the country's total gross output ($24.4 billion), 3.4% ($11.9 billion) of gross domestic product (GDP), and 3.7% (1.5 million individuals) of total employment in 2018. In our simulation, a general increase in international remittance income of 10% (equivalent to $1.4 billion) leads to an increase in the country's GDP of 0.34 percentage points over the baseline, i.e., about $1.2 billion in 2018." と結論しています。私の紀要論文の結論は、決して間違っていないと思っていたのですが、フィリピンにおける海外からの送金(remittances)の経済的インパクトはかなり大きいのかも知れません。
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2024年02月15日 (木) 15:00:00

2四半期連続でマイナス成長となった10-12月期GDP統計速報1次QEをどう見るか?

本日、内閣府から昨年2023年10~12月期のGDP統計速報2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲0.1%、前期比年率で▲0.4%と2四半期連続のマイナス成長を記録しています。なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+3.8%に達し、5四半期連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率0.4%減で2期連続マイナス 10-12月、消費不振
内閣府が15日発表した2023年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.1%減、年率換算で0.4%減だった。2四半期連続のマイナス成長となった。個人消費と設備投資を中心に内需が軒並み落ち込んだ。
QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値は年率1.0%増で、大きく下回った。前期比年率の寄与度は、内需がマイナス1.1ポイント、外需がプラス0.7ポイントとなり、内需の弱さが目立つ。
GDPの過半を占める個人消費は前期比0.2%減で、3四半期連続のマイナスだった。暖冬の影響で衣料品が振るわず、新型コロナウイルス禍からの回復が一服し、外食も落ち込んだ。物価高も響き、アルコール飲料や野菜、ガソリンなどの消費が減った。
消費に次ぐ民間の柱である設備投資も前期比0.1%減で、3四半期連続のマイナスとなった。設備投資は航空機用の発動機部品や通信ネットワークなどに使われるデジタル伝送装置が下押し圧力となった。
企業の設備投資意欲は旺盛だが、人手不足による工場の建設の遅れなど供給面での制約も響いたとみられる。世界的な半導体市場の低迷が底を打ち、半導体製造装置は堅調だった。省力化に向けた受注ソフトウエア投資も伸びた。
民間住宅は前期比1.0%減と2四半期連続のマイナスだった。インフレによる住宅資材の高騰で着工が弱含み、人件費も上昇して出来高に影響が出ているとの見方がある。民間在庫変動の寄与度はマイナス0.0ポイントだった。
公共投資は前期比0.7%減で、2四半期連続のマイナスとなった。22年度の補正予算による押し上げ効果が一巡したとみられる。政府最終消費支出は医療費の減少などで0.1%減った。2四半期ぶりのマイナスとなる。
輸出は前期比2.6%増で、3四半期連続のプラスだった。とくにサービスの輸出が前期比11.3%伸び、全体を押し上げた。大手製薬会社が新型抗がん剤の開発で提携した米国企業から知的財産関連の使用料を受け取った一時的な要因が大きい。
計算上は輸出に分類するインバウンド(訪日外国人)の日本国内での消費は前期比14.1%増となり、押し上げ要因となった。
輸入は前期比1.7%増で2四半期連続のプラスだった。原油や液化天然ガス(LNG)などの鉱物性燃料の輸入が増えた。輸入はGDPの計算から控除する項目のため、増加は全体を押し下げる。
名目GDPは前期比0.3%増、年率換算で1.2%増と2四半期ぶりのプラスだった。国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比で3.8%上昇し、5四半期連続のプラスとなった。
23年の実質GDPは前年比1.9%増、名目は5.7%増でともに3年連続のプラスだった。暦年ではコロナ禍からの経済回復が緩やかに進んでいる。


いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事となっています。次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2022/10-122022/1-32023/4-62023/7-92023/10-12
国内総生産GDP+0.4+1.1+1.0▲0.8▲0.1
民間消費+0.2+0.8▲0.7▲0.3▲0.2
民間住宅+0.7+0.3+1.8▲0.6▲1.0
民間設備▲0.5+1.6▲1.4▲0.6▲0.1
民間在庫 *(▲0.2)(+0.6)(▲0.2)(▲0.5)(▲0.0)
公的需要+0.8+0.4+0.2+0.0▲0.2
内需寄与度 *(▲0.0)(+1.5)(▲0.7)(▲0.8)(▲0.3)
外需(純輸出)寄与度 *(+0.4)(▲0.4)(+1.7)(▲0.0)(+0.2)
輸出+1.4▲3.5+3.8+0.9+2.6
輸入▲0.8▲1.6▲3.6+1.0+1.7
国内総所得 (GDI)+0.8+1.8+1.6▲0.6▲0.2
国民総所得 (GNI)+1.3+0.4+2.1▲0.7+0.0
名目GDP+1.9+2.3+2.5▲0.1+0.3
雇用者報酬 (実質)+0.1▲1.5+0.4▲1.0+0.1
GDPデフレータ+1.4+2.3+3.7+5.2+3.8
国内需要デフレータ+3.6+3.2+2.7+2.5+2.0


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された10~12月期の最新データでは、前期比成長率がわずかながらマイナス成長を示し、黒い外需のプラス寄与のほかは、GDPの需要項目のいろんなコンポーネントが小幅にマイナス寄与しているのが見て取れます。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前期比年率成長率が+1%ほどでしたから、実績の年率▲0.4%はやや下ぶれした印象です。我が国でも他の先進国と同じようにインフレにより消費の伸びが大きく鈍化して、3四半期連続の前期比マイナスです。3四半期連続のマイナスという符号条件は民間設備投資もまったく同じです。従って、内需寄与度は昨年2023年4~6月期から、これまた、3四半期連続してマイナス寄与となっています。他方で、純輸出の外需は10~12月期にはプラス寄与に転じています。また、報道ではほとんど注目されていないのですが、公的需要が7~9月期の伸びがゼロな上に、10~12月期にはとうとう前期比でマイナスになっています。公的需要の中でも、特に、公的固定資本形成、すなわち、公共投資は7~9月期の前期比マイナスに続いて、10~12月期も2四半期連続でマイナスとなっていて、政府は公共投資によって景気を下支えする気はないように見受けられます。ひょっとしたら、財政再建の方に重点を置き始めている可能性が示唆されているのかも知れません。

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上のグラフは、」上のパネルが雇用者報酬、下のパネルが非居住者家計の購入、すなわち、インバウンド消費のそれぞれの推移をプロットしています。特に、先行き日本経済を考える場合、物価上昇の影響を受ける消費については、実質雇用者報酬の動向が懸念されます。すなわち、少し長い目で見て、2019年10月の消費税率引上げにより、消費者の購買力が低下した後、さらに追い打ちをかけるように、雇用者報酬が傾向的に低下を続けています。上のグラフは実質値でプロットしていますので、物価上昇の影響も含まれているとはいえ、これだけ雇用者報酬が低下すれば消費が振るわないのは当然です。今年の春闘はかなり大幅な賃上げ要求が出そろっているとはいえ、賃上げによる雇用者報酬の増加が着実に進まないと、インフレによるダメージをカバーできずに消費への影響はさらに大きくなる可能性もあります。いずれにせよ、日本経済の大きな課題は賃上げがインフレに追いつくかどうか、と私は受け止めています。そうです。物価を抑えるよりも賃上げの方に重点を置くべきです。他方で、下のパネルのインバウンド消費はコロナの分類変更とともに、実に短期間であっさりと過去最高を記録し年率換算では5兆円を突破しています。内外の経済の差がクッキリと現れています。企業の賃上げ動向が政府の政策とともに注目されるところです。

最後に2点指摘しておきたいと思います。まず第1に、朝日新聞「23年の名目GDPは591兆円、ドイツに抜かれ世界4位に転落」日経新聞「名目GDP、ドイツに抜かれ4位 23年4兆2106億ドル」NHK「日本の去年1年間の名目GDP ドイツに抜かれ世界4位に後退」などで盛んに報じられているように、2023年中の我が国GDPは米ドル換算でドイツを下回り、世界で米国、中国、ドイツについで4番目の位置に交代したようです。私はGDPで計測した経済規模はそれなりに重要だと考えています。でも、現時点での計測は為替レートに大きく依存していますので、それほど意味があるとは考えていません。さらに付け加えると、世界で5番目はインドですから、インドにはあっさりと抜かれる可能性が十分あります。第2に、本日公表されたGDP統計は2四半期連続のマイナス成長でしたので、テクニカルな見方だけでなく、実際に景気後退局面入りしている可能性が十分あると考えるべきです。私が見た範囲のリポートでも、ニッセイ基礎研究所みずほリサーチ&テクノロジーズ第一生命経済研究所などでは、今年2024年1~3月期の成長率をゼロないしマイナスと見込んでいるシンクタンクも少なくありません。3月末に政府予算案が国会で可決されれば議論が本格化する可能性が高いと思います。でも、4月には日本銀行がマイナス金利を解除するという見方があります。景気後退局面に入っているにもかかわらず、金融政策が引き締め方向に変更されるのでしょうか。その意味で、政府と日銀で景気認識は一致しているのでしょうか。とても不思議です。
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2024年02月14日 (水) 14:00:00

昨年2023年10-12月期GDP統計速報1次QEの予想は2四半期ぶりのプラス成長か?

少し前の商業販売統計や家計調査をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、明日2月15日に昨年2023年10~12月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である昨年2023年10~12月期ではなく、足元の1~3月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。そのため、大和総研やみずほリサーチ&テクノロジーズの引用がやたらと長くなっています。いつもは適当に端折るのですが、まあ、今回は長々と引用してみました。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.6%
(+2.5%)
2024年1~3月期の実質GDPも、プラス成長が続く見通し。好調な企業収益が積極的な賃上げや設備投資の拡大につながり、わが国景気は内需主導で緩やかな回復が続く見込み。能登半島地震による影響は限定的と判断。
大和総研+0.2%
(+0.7%)
2024年1-3月期の日本経済は横ばい圏で推移する見込みだ。経済活動の正常化や所得環境の改善などを受けて内需の持ち直しが進むとみられる一方、外需は輸出の反動減によりマイナス寄与に転じよう。
個人消費はインフレ率の低下や賃金上昇による所得環境の改善などを背景に、小幅に増加すると予想する。サービス消費はコロナ禍からの回復余地が依然として大きいこともあり、2023年10-12月期の停滞は一時的とみられる。2024年1-3月期には再び増加に転じよう。財消費のうち、耐久財では自動車の挽回生産が下支えするとみている。
住宅投資は横ばい圏で推移しよう。住宅価格の高騰が続く中、持家を中心に軟調な推移が続くとみられる。
設備投資は増加に転じよう。企業が先送りしてきた更新投資や工場の新設などを含む能力増強投資、人手不足に対応するための省人化投資などが増加すると見込む。デジタル化、グリーン化に関連したソフトウェア投資や研究開発投資も底堅く推移しよう。
公共投資は増加しよう。「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の執行が下支えするとみられるが、人手不足により回復ペースは緩やかなものになりそうだ。政府消費は、前述のワクチン接種にかかる押し上げ効果が剥落する一方、医療費の増加が全体を押し上げるとみられる。
輸出はサービスにおける反動減が下押し要因となって減少に転じよう。中国経済が回復する一方で米欧経済の減速が見込まれることで、財輸出は伸び悩むとみられる。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+0.6%
(+2.4%)
1~3月期成長率はマイナスに転じる可能性が高いと予測する。サービス輸出の反動減が見込まれることに加え、欧米を中心とした海外経済の減速が外需の重石になるほか、国内で生じた一時的な要因による下押し影響も重なることが経済活動を抑制するだろう。
米国については、10~12月の実質GDP成長率が前期比年率+3.3%と、個人消費を中心に想定を大きく上回る伸びを維持している。移民やプライム層の労働供給が増加することで、雇用の増加と労働需給の緩和が同時に進展し、景気の強さと賃金・物価の減速が両立している状況にある。これまで大幅な利上げが行われた一方で、金融コンディションの緩和や企業債務の減少、株価上昇に伴う家計の資産効果、地方政府による支出の継続などが国内需要の下支えとなり、雇用の深刻な悪化には至らず「ソフトランディング」の可能性が高まったとみている。しかしそれでも、これまでの金融引き締めの影響が企業部門を中心に顕在化することで、2024年前半にかけて景気は減速基調で推移すると予想している。
欧州についても、金融引き締め効果が次第に顕在化し、2023年末から2024年前半にかけて小幅な景気後退に陥ると予想している。利上げの影響等から消費者マインドは低水準が続いており、消費は当面弱含みが続く公算が大きい。需要の弱さを背景にPMIは8カ月連続で50(好不況の節目)割れとなっている。生産も輸送機械や資本財等の減産、化学等のエネルギー多消費業種の低迷が下押し要因になり、減少傾向が継続している状況だ。中東情勢緊迫化による物流網混乱が経済に影響を与えるリスクにも注意が必要だろう。
中国は、サービス消費のリベンジ需要がはく落するほか、不動産部門の調整が長期化する下で景気減速感が強まる展開となるだろう(不動産については、販売低迷により在庫調整のペースが鈍っており、過剰在庫の調整完了時期は2025年以降にずれ込む公算が大きい)。国債1兆元増発によるインフラ投資が先行きの景気下支え要因になる一方、政府は大幅な財政赤字を伴う巨額の景気刺激策に慎重なスタンスであり、成長率鈍化は避けられないとみている。
半導体については、メモリ価格の下げ止まり・ロジック価格の上昇を受けて単価が上昇しており、シリコンサイクルは好転している。一方、上記のとおり当面は米国の景気減速などが最終需要を下押しすると見込まれることから、本格回復はスマホの買い替え等が進む2024年後半以降になる可能性が高いだろう。
以上を踏まえると、1~3月期の財輸出は伸び悩む可能性が高い。インバウンド需要も、中国については国内志向や航空便制約が影響して春節休暇(2/10~17)も大幅な伸びは見込みにくいほか、ASEANや欧州の繰り越し需要も一巡すると予想され、訪日客数はいったん減速が見込まれる。1~3月期の外需に景気のけん引役は期待できないだろう
一方、内需も緩やかな回復にとどまる見通しだ。実質賃金の前年比マイナス幅の縮小ペースが緩やかな中で、当面の個人消費は緩やかな回復にとどまる可能性が高い(消費者物価指数の前年比については、2月に政府の電気・ガス代価格抑制策による押し下げ寄与が剥落することで上昇率が高まる点に留意が必要である)。設備投資も、前述した供給制約が引き続き下押し要因となることで増加ペースが抑制されるだろう。先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)をみると、10~11月平均は7~9月平均対比で▲ 1.0%と減少傾向での推移が継続しており、製造業を中心に機械投資の伸び悩みを示唆している。半導体関連産業の在庫調整の進展等を背景に、先行きの設備投資は回復基調を維持するとみているが、急速な回復は期待しにくいだろう。
さらに、1~3月期は令和6年能登半島地震や一部自動車メーカーの生産停止が一時的な下押し要因になるだろう。1月に発生した令和6年能登半島地震の被害状況について、内閣府は住宅・社会インフラ等の資本ストック棄損額を1.1~2.6兆円程度と試算している。2016年の熊本地震について内閣府が資本ストック棄損額を2.4~4.6兆円程度、フローへの影響としてGDP損失額を900~1,270億円程度と推計している点を踏まえて機械的に計算すると、今回の令和6年能登半島地震におけるGDPへの影響は1,000億円程度となる可能性がある。ただし、現時点で被害状況の全容が見えているわけではなく、引き続き状況を注視する必要がある。全国の製造業の付加価値に占める主要被災地域(石川県・新潟県・富山県)のシェアは4%程度であるが、繊維工業(同8%)、生産用機械工業(同7%)、電子部品・デバイス工業(同7%)のシェアがやや大きく、部品等の生産停止が長引けば関連サプライチェーンに悪影響が拡大する可能性があるだろう(実際、足元で一部の自動車メーカーが部品不足により減産を余儀なくされるといった動きが出ている)。地震発生に伴う風評リスクがインバウンド需要の抑制につながる懸念もある。政府には、一日でも早い復旧・復興に向けた取組みが求められる。
一部自動車メーカーの生産停止については、(代替生産・代替需要の動きも出るとみられるものの)生産停止が長引いた場合の影響は相応に大きなものになる可能性がある(報道によると少なくとも2月までは当該メーカーの生産回復は期待しにくい模様である)。経済産業省が本日公表した製造工業生産予測指数をみると、1月の輸送機械工業の計画前月比は▲10.6%(2月は同+0.8%)となっているが、下振れリスクも大きい。
こうした一時的な要因の影響については不確実性が大きいが、現時点では、上記の令和6年能登半島地震や一部自動車メーカーの生産停止により1~3月期のGDPが▲0.4%程度(年率▲1%台後半程度)下押しされると想定している。前述したとおりサービス輸出の反動減が生じることが見込まれる点も踏まえ、1~3月期は2期ぶりのマイナス成長になると予測している。
ニッセイ基礎研+0.2%
(+0.9%)
2023年10-12月期は2四半期ぶりのプラス成長となったが、7-9月期の落ち込みを取り戻すには至らず、景気の回復ペースは依然として緩やかなものにとどまっている。2024年1-3月期は、海外経済の減速を背景に輸出が低迷し、民間消費、設備投資などの国内民間需要も低い伸びにとどまることから、現時点では前期比年率ゼロ%台の低成長を予想している。
第一生命経済研±0.0%
(±0.0%)
先行きについても、牽引役不在のなか、景気の回復ペースは緩慢なものにとどまるだろう。米国景気は足元で依然堅調に推移しているが、方向としては先行き減速していくとみるのが妥当だろう。欧州や中国経済にも多くは望めず、輸出が景気の牽引役となることは期待薄だ。内需についても、コロナ禍からのリバウンドの動きが一巡するなかで引き続き物価高が消費回復の頭を押さえる。景気は今後も停滞感が残るだろう。なお、24年1-3月期については、内需の回復が限定的ななか、サービス輸出で反動減が生じることから、マイナス成長となる可能性が高いと予想している。
伊藤忠総研+0.5%
(+2.0%)
続く2024年1~3月期については、輸出が海外景気の減速により伸び悩むものの、個人消費や設備投資の拡大傾向は維持され、基本的にはプラス成長が見込まれるが、一部自動車メーカーの生産・出荷停止により個人消費や設備投資、在庫投資が落ち込み、実質GDP成長率が大きく押し下げられる恐れがある点に留意が必要であろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.3%
(+1.4%)
2023年10~12月期の実質GDP成長率は、前期比+0.3%(前期比年率換算+1.4%)とプラス成長に転じる見込みである。しかし回復力は力強さに欠け、7~9月期の同-0.7%(同-2.9%)の落ち込みを取り戻すには至らない。
三菱総研+0.6%
(+2.3%)
2023年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.6%(年率+2.3%)と、プラス成長を予測する。
明治安田総研+0.5%
(+2.2%)
先行きについて、まず個人消費は、春闘における高めの賃上げ率が期待できることに加え、物価上昇率の鈍化に伴う実質所得の増加が下支え要因となるため、回復傾向で推移すると予想する。一方、設備投資は、日銀短観など各種調査で見られるとおり計画自体は強いものの、当面は人手不足や資材不足が足枷になるとみられ、緩やかな回復にとどまると見込む。外需にも景気の牽引役は期待しづらい。財輸出に関しては、中国景気の停滞が長引くほか、欧米景気も減速に向かう可能性が高いことから、年の前半を中心に低迷が続くと予想される。インバウンドは引き続き景気の下支え要因になるとみられるが、訪日外客数はすでにコロナ禍前の水準まで戻っており、今後は需要拡大ペースの鈍化が見込まれる。こうした点を踏まえると、2024年の日本景気の回復ペースは緩やかなものにとどまると予想する。


ということで、現在の最新の前期比年率のデータで考えて、2022年10~12月期+1.0%、2023年1~3月期+5.0%、4~6月期+3.6%と、3四半期連続のプラス成長の後、7~9月期に▲2.9%のマイナス成長に陥りましたが、上のテーブルに見る多くのシンクタンクの予想では、10~12月期にはプラス成長に回帰するとの見込みとなっています。ただ、その成長率にはかなり開きが見られるのも事実です。例えば、第一生命経済研究所のゼロ成長もあれば、+2%台半ばの高成長を予測するシンクタンクも少なくありません。基本は、純輸出=外需の見方で違いが生じているのではないか、と私は考えています。私は米国をはじめとして欧米先進国についてはソフトランディングのシナリオが当てはまる一方で、中国の見方が分かれている気がします。そういった中で、単純に平均を取っている日経・QUICKの事前コンセンサスでは+1.1%という数字が明らかにされています。まあ、単純平均であればそうなのかもしれません。ただ、こういった見方の違いにもかかわらず、先行きについては押しなべて停滞ないし横ばい圏内から、見方によってはマイナス成長と、2024年も日本経済の先行きがそれほど明るくないという事実が示されています。大雑把に考えて、昨年2023年10~12月期に高成長を予測するエコノミストは反動を考慮して、今年2024年1~3月期の横ばいないしマイナス成長を見込んでいる気がします。まあ、当然です。
最後に、下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。前期比年率で+2%前後の高成長で純輸出の寄与が大きい、という私の感覚によく合致しています。

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2024年02月13日 (火) 11:00:00

3か月連続で0%台の上昇となった1月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?

本日、日銀から1月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で保合いとなり、上昇率は12か月連続で鈍化しています。したがって、次の2月統計ではマイナス圏に舞い戻るという可能性もありそうです。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業物価、0.2%上昇 3カ月連続0%台
日銀が13日発表した1月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は120.1と、前年同月比で0.2%上昇した。23年12月(0.2%上昇)から横ばいで、3カ月連続で上昇率が0%台となった。政府の補助金が電気・ガスの価格を押し下げたが、飲食料品などの幅広い分野で原材料コストを販売価格に反映する動きがみられた。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。1月の上昇率は民間予測の中央値(0.0%)を0.2ポイント上回った。公表している515品目のうち406品目が値上がりした。
内訳をみると、電力・都市ガス・水道が前年同月比で27.7%下落した。燃料費の下落や政府による電力・ガスの価格抑制策がマイナスに寄与した。日銀の試算によると、抑制策は企業物価指数全体の上昇率を約0.3ポイント押し下げている。
一方、飲食料品は前年同月比で4.4%上昇した。原材料や包装資材のコスト上昇分を販売価格に転嫁する動きが続いている。金属製品も4.1%上昇した。飲料用のアルミニウム製の缶では原材料高のほか、人件費上昇が価格に与える影響もみられたという。
輸入物価は円ベースで前年同月比0.2%下落し、10カ月連続でマイナス圏となった。23年12月(マイナス4.9%)より下落幅が縮小した。


注目の指標のひとつですから、ついつい長くなりますが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の上昇率は前年同月から保合いの±0.0%と見込まれていましたので、実績の+0.2%はやや上振れした印象かもしれません。特に、円ベースの輸入物価は4月統計から前年同月比でマイナスに転じ、1時は2桁マイナスでしたが、1月統計では▲0.2%の下落まで縮小しています。本日公表の企業物価指数(PPI)にはサービスが含まれませんが、他方で、企業向けサービス価格指数(SPPI)は8~12月の統計では5か月連続で前年同月比+2%台を記録しています。しかも、やや上昇率は加速気味だったりしますので、資源高などに起因する輸入物価の上昇から国内物価への波及が、同時に、モノからサービスの価格上昇がインフレの主役となる局面に入る可能性がある、と私は考えています。したがって、日米金利差にもとづく円安の是正については、最近では1ドル150円弱の水準で安定していることも事実であり、経済政策として取り組む必要性や緊急性はそれほど大きくなくなった、と考えるべきです。消費者物価への反映も進んでいますし、企業間ではある意味で順調に価格転嫁が進んでいるという見方も成り立ちます。まあ、それが「迷惑」だという見方も否定はしません。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇・下落率で少し詳しく見ると、引用した記事にもある通り、電力・都市ガス・水道が▲27.7%と下落幅を拡大しています。農林水産物もとうとう▲0.6%の下落に転じましたが、他方、飲食料品は+4.4%の高い上昇率が続いています。ほかに、窯業・土石製品+10.9%、パルプ・紙・同製品+7.1%、石油・石炭製品+6.6%、生産用機器+5.5%、繊維製品+5.0%、などが+5%以上の上昇率を示しています。ただ、ここで上げたカテゴリーをはじめとして多くの品目でジワジワと上昇率が低下してきています。もちろん、上昇率が鈍化しても、あるいは、マイナスに転じたとしても、価格水準としては高止まりしているわけですし、しばらくは国内での価格転嫁が進むでしょうから、決して物価による国民生活へのダメージを軽視することはできません。特に、農林水産物の価格上昇はストップしたものの、農産物を原料とする飲食料品についてはまだ高い上昇率を続けています。生活に不可欠な品目ですので、政策的な対応は必要かと思いますが、エネルギーのように石油元売会社や電力会社のような大企業に対して選別的に補助金を交付するよりは、消費税率の引下げとかで市場メカニズムを活かしつつ、国民向けに普遍的な政策を取る方が望ましい、と私は考えています。
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2024年02月09日 (金) 15:00:00

身体的特徴の遺伝と経済的影響やいかに?

海外の学術論文ながら、週末前の軽い話題を提供する、という意味で、NBERワアーキングペーパー "The Economic Impact of Heritable Physical Traits: Hot Parents, Rich Kid?" を取り上げておきたいと思います。タイトルから想像されるように、遺伝的に身体的特徴がどこまで経済的なインパクトを有するのか、について回答しようと試みています。まず、NBERのサイトからAbstractを引用すると以下の通りです。

Abstract
Since the mapping of the human genome in 2004, biologists have demonstrated genetic links to the expression of several income-enhancing physical traits. To illustrate how heredity produces intergenerational economic effects, this study uses one trait, beauty, to infer the extent to which parents' physical characteristics transmit inequality across generations. Analyses of a large-scale longitudinal dataset in the U.S., and a much smaller dataset of Chinese parents and children, show that a one standard-deviation increase in parents' looks is associated with a 0.4 standard-deviation increase in their child's looks. A large data set of U.S. siblings shows a correlation of their beauty consistent with the same expression of their genetic similarity, as does a small sample of billionaire siblings. Coupling these estimates with parameter estimates from the literatures describing the impact of beauty on earnings and the intergenerational elasticity of income suggests that one standard-deviation difference in parents' looks generates a 0.06 standard-deviation difference in their adult child's earnings, which amounts to additional annual earnings in the U.S. of about $2300.


はい、大胆にも美しさ beauty を取り出して、親の身体的特徴が世代間で不平等をどれくらい伝わるか "to infer the extent to which parents' physical characteristics transmit inequality across generations"を推測しようと試みています。その結果、親の容姿の標準偏差が1増加すると、子供の容姿の標準偏差が0.4増加する "a one standard-deviation increase in parents' looks is associated with a 0.4 standard-deviation increase in their child's looks" そして、親の容姿の標準偏差が1大きければ、成人した子供の収入には0.06の標準偏差の差が生じ、これは追加の収入に相当し、米国であれば年収は約2300ドル増加することが示唆される "one standard-deviation difference in parents' looks generates a 0.06 standard-deviation difference in their adult child's earnings, which amounts to additional annual earnings in the U.S. of about $2300." と結論しています。すなわち、親の容姿がよければ子供に遺伝して、子供により高い年収をもたらす、というわけです。

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上のグラフはワーキングペーパーから Figure 1a. Relation of Child's Average Looks Rating to Mother's, Girls & Figure 1b. Relation of Child's Average Looks Rating to Mother's, Boys を引用しています。まあ、ルッキズムの典型です。私自身は、各個人の経済的な境遇は教育や環境だけで決まるものでは決してなく、遺伝的な要因は決して無視できない、と考えています。でも、そんな私でも、経済学の科学的な研究は価値判断を配して客観的に行うべきである、というのは、どうも怪しい、と考えざるを得ません。
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2024年02月08日 (木) 16:00:00

物価高と震災により現状判断DIが低下した1月の景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支

本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2023年12月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲1.6ポイント低下の50.2となった一方で、先行き判断DIは+2.1ポイント上昇の52.5を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+7443億円の黒字を計上しています。まず、ロイターのサイトなどから統計を報じた記事を引用すると以下の通りです。

街角景気、1月は1.6ポイント低下 物価高や震災の影響で
内閣府が8日発表した1月の景気ウオッチャー調査で、景気の現状判断DIは前月から1.6ポイント低下し、50.2となった。景気判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」と据え置きつつ、「能登半島地震の影響もみられる」と付け加えた。
指数を構成する項目では、家計動向関連DIが前月から2.1ポイント低下の49.5、企業動向関連DIが1.2ポイント低下の50.9だった一方、雇用関連DIは0.6ポイント上昇して53.3となった。
地域別では全国12地域中2地域で上昇、10地域で低下。能登半島地震が発生した北陸地方が9.1ポイント低下し、最も低下幅が大きかった。北陸の百貨店からは「消費マインドが大幅に低下している」、都市型ホテルからは「観光客が激減し、宴会部門も自粛でほぼキャンセルになり、新規予約も入らなくなっている」といったコメントが出ていた。
先行き判断DIは前月から2.1ポイント上昇し52.5となった。内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。
経常収支、暦年黒字2年ぶり20兆円超 貿易赤字縮減で倍増
財務省が8日発表した国際収支状況速報によると、2023年暦年の経常収支は20兆6295億円の黒字となった。貿易収支の赤字縮減などで黒字幅が倍増し、2年ぶりに20兆円台を回復した。
通年の経常収支のうち、貿易収支は6兆6290億円の赤字だった。輸出が前年比1.5%増の100兆2743億円だったのに対し、輸入は106兆9032億円と6.6%減少し、赤字幅は前年から縮小した。
稼ぎ頭の第一次所得収支は34兆5573億円の黒字で、ほぼ横ばいにとどまった。
併せて発表された23年12月の経常収支は7443億円の黒字で、黒字幅はロイターの事前予測(1兆0189億円程度の黒字)を下回った。


とても長くなってしまいましたが、よく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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現状判断DIは、昨年2023年に入ってから高い水準が続いて、2月以降は12か月連続して50を超えています。ただし、本日公表の1月統計では前月から▲1.6ポイント低下してしまいました。もっとも、長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、50近傍の水準は決して低くない点には注意が必要です。1月統計で上昇した主因はインフレと能登半島地震と考えるべきです。まず、前月から▲2.1ポイント低下した家計動向関連の中でも、飲食関連が▲7.8ポイントと大きく低下しています。企業動向関連は前月から▲1.2ポイントの低下にとどまっていますが、製造業が+0.5ポイント上昇している一方で、非製造業は▲2.5ポイントの低下です。加えて、地域別の現状判断DIの前月差を見ると、引用した記事にもある通り、北陸が▲9.1ポイントと最大の落ち込みを示しています。先行き判断DIも北陸は沖縄とともに前月差マイナスとなっています。ただ、全国レベルでは先行き判断DIが前月から+2.1ポイント上昇していますので、長続きはしない、という受け止めなのかもしれません。従って、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。」で据え置いています。ただ、「令和6年能登半島地震の影響もみられる。」との追加文言もあったりします。また、内閣府のリポートの中の北陸の景気判断理由の概要の中から悪化の判断の理由を見ると、現状判断では「能登半島地震の直接的な被害はほとんどなかったが、予約のキャンセルや自粛ムードにより、客足は止まっている(一般レストラン)。 」とか、先行き判断では「能登半島地震による自粛ムードがすぐに払拭できるとは考えられない。北陸応援割が始まる春以降に期待したい(商店街)。」といった意見が見られます。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用したロイターの記事では、2023年12月単月の経常収支に関する市場の事前コンセンサスは+1兆円余り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも同様に+1兆億円余りでしたので、実績の7443億円の黒字はやや下振れした印象です。しかしながら、ウクライナ戦争後の資源価格の上昇に起因する国際商品市況の価格上昇により輸入が大きく増加した局面はすでに過去のものなり、経常黒字の水準はウクライナ戦争の前の状態に戻っています。ですから、2023年12月のように市場の事前コンセンサスを下回っても、もちろん、たとえ赤字であっても、経常収支の水準については何ら悲観する必要はありません。当然、エネルギーや食料をはじめとして経済安全保障には留意する必要はあるものの、資源の乏しい日本では消費や生産のためならエネルギーや食料は輸入すればよく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。
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2024年02月07日 (水) 14:00:00

暗号資産のマイニングの電力使用は決して小さくない

先週2月1日付けの米国エネルギー情報局 U.S. Energy Information Administration (EIA) から、"Tracking electricity consumption from U.S. cryptocurrency mining operations" と題する分析 IN-DEPTH ANALYSIS が公表されています。長くなりますが、EIAのサイトから冒頭4パラのサマリを引用すると以下の通りです。

Summary
Electricity demand associated with U.S. cryptocurrency mining operations in the United States has grown very rapidly over the last several years. Our preliminary estimates suggest that annual electricity use from cryptocurrency mining probably represents from 0.6% to 2.3% of U.S. electricity consumption.
This additional electricity use has drawn the attention of policymakers and grid planners concerned about its effects on cost, reliability, and emissions. Key challenges associated with tracking cryptocurrency mining energy use include the difficulty of identifying cryptocurrency mining activity among millions of U.S. end-use customers and the dynamic nature of the crypto market, where mining assets can be moved rapidly to areas with lower electricity prices.
We have developed general estimates of electricity use by U.S. cryptocurrency mining operations by employing both top-down and bottom-up approaches. Our top-down approach involves data from the Cambridge Centre for Alternative Finance, which maintains an index that estimates global and national electricity use from cryptocurrency activities. We also developed our own bottom-up approach, which involves collecting data pertaining to the location of individual cryptocurrency mining operations and the amount of electricity each facility says it may use.
In order to develop more rigorous estimates of electricity use by U.S. cryptocurrency miners, we have requested and received an emergency clearance pursuant to Office of Management and Budget (OMB) procedures established at 5 CFR Part 1320, Controlling Paperwork Burdens on the Public. We plan to begin collecting data on a monthly basis from February through July 2024.


サマリ1パラ目にある通り、米国における暗号資産(仮想通貨)のマイニング事業に関連する電力需要は、ここ数年で急速に増加していて、EIAによる推定では、おそらく、暗号資産(仮想通貨)のマイニングによる年間電力使用量は米国の電力消費量の0.6%から2.3%に相当する、ということのようです。下のグラフは、EIAのサイトから Annual electricity generation at five select poer plants with crypt-mining operations (2015-2022) を引用しています。

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はい。まったく意味のない電力消費だと私は思います。暗号資産のマイニングは禁止するに値するという意見に私は同意します。強く同意します。
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2024年02月06日 (火) 11:00:00

経済成長と二酸化炭素排出はデカップリングするか?

やや旧聞に属する話題ながら、1月31日、国際エネルギー機関(IEA)の解説サイトで The relationship between growth in GDP and CO2 has loosened; it needs to be cut completely と題して、経済成長と二酸化炭素排出の関係がデカップリングしつつある、との記事を見かけました。直訳すれば「経済成長と二酸化炭素排出の関係が乖離しつつある; しかし、乖離するだけではなく完全に関係を切り離さなければならない」とでもなるのでしょうか。
人新世 Anthropocene に入って以来、少し前まで、経済成長とエネルギー消費、そして、二酸化炭素排出は手に手を取って、というか、正の相関を持って増加し続けてきました。しかし、1990年代以降、先進国では経済成長と二酸化炭素排出の関係がデカップリングされてきています。例えば、成長と不平等の経験的な関係を捉えた逆U字型のクズネッツ曲線になぞらえて、成長とともにエネルギー消費や二酸化炭素排出が逆U字型の曲線で、すなわち、初期の早い段階では成長と二酸化炭素排出が正の相関をもって増加するものの、後期には成長が続いても二酸化炭素排出とは負の相関に変化する、という経験則です。これは環境クズネッツ曲線と呼ばれていて、実証的に明らかにされています。実は、私も10年以上も前の長崎大学で紀要論文 "Estimation of Environmental Kuznets Curve for Various Indicators: Evidence from Cross-Section Data Analysis" として取りまとめて実証しています。

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上のいくつかのグラフはIEAのサイトから GDP and CO2 emissions by region を引用しています。上の段の4つのグラフは左から米国、欧州、日本と韓国、オーストラリアとニュージーランド、となっています。下の段は左から中国、インド、アフリカ、ラテンアメリカです。上の段の先進諸国は、日本も含めて、見ての通りで、青いGDPとオレンジの二酸化炭素排出が見事にデカップリンフしていて、GDPが増加を続けている一方で、2022年の時点で、米欧はすでに1990年の水準を下回っており、日韓とオセアニア2国も2030年くらいまでには1990年の水準まで低下することが予想されています。下の段の新興国とアフリカ、ラテンアメリカについても二酸化炭素排出が1990年の水準まで低下することは、現時点では灘見込まれていませんが、GDPの増加から少し距離をおいてしか二酸化炭素排出が増加していないことが見て取れます。

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他方、上の2つのグラフも、同じく、IEAのサイトから GDP and CO2 emissions by region を引用していて、左が東南アジア、右が中東なのですが、見ての通り、二酸化炭素排出量がGDPと同等に増加しています。まだ、デカップリングされていないわけです。

IEAでは、最近のGDPに見る経済成長と二酸化炭素排出の関係の乖離は以下の4要因によるものと指摘しています。
  • Rapid growth in clean energy investment
  • A growing trend of electrification
  • Improvements in technical energy eff iciency
  • Transitions away from coal

加えて、エネルギー集約度がは格段に高い製造業ではなく、サービス産業が成長に寄与している "the services sector has had a larger contribution to economic growth than industry, which is a far more energy intensive" 点も上げています。しかしながら、解説のタイトルに戻るわけで、経済成長と二酸化炭素排出の関係は完全に切断される必要がある、という点が主張されています。
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2024年02月05日 (月) 16:00:00

在宅勤務技術の進歩は何をもたらすのか?

最近、在宅勤務技術の進歩が何をもたらすのか、についての論文を見かけました。サイテーションは以下の通りです。なお、Review of Economic Studies は、経済学の中ではインパクトファクターの高いジャーナルとして知られています。


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まず、上のグラフは FIGURE 1 Fraction of all days with more than 4 h of work performed only at home, 2003-19 を引用しています。学位が熟練の代理変数として用いられているのですが、学士あるいはそれ以上の修士や博士の学位を持つ高学歴労働者は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックの2020年以前から着実に在宅勤務が増えている点が明らかです。他方で、高校卒業以下の労働者はCOVID-19パンデミック以前は、ほとんど在宅勤務が増加していません。

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次に、上のグラフは FIGURE 4 Change in REIT prices from January 1, 2020 to December 31, 2021 を引用しています。ということで、在宅勤務技術の進歩がもたらす在宅勤務の増加によって、オフィス街の不動産価格が低下し、住宅の方の不動産価格が上昇する、それも、アパートメントではなく、家族向けの借家の不動産価格の方がより大きく上昇しているのがグラフから見て取れると思います。まあ、エコノミストが考えるのはこういった不動産に及ぼす経済効果なんかなんでしょうね。家族の絆とか、地域の活性化とか、そういった価値観はなかなか計測が難しくて、エコノミストの目には入らないのかもしれません。
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2024年02月02日 (金) 23:00:00

1月の米国雇用統計はソフトランディングほぼ確定のサインか?

日本時間の今夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、直近の1月統計では+353千人増となり、失業率は前月から横ばいの3.7%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を4パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added booming 353K jobs in January, unemployment held at 3.7%.
Hiring picked up sharply in January as employers added a booming 353,000 jobs, highlighting a labor market that continues to defy high interest rates and household financial strains.
The unemployment rate held steady at 3.7%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 185,000 jobs were added last month.
Job gains for November and December were revised up by a whopping 126,000, with the December tally upgraded to 333,000 from 216,000. The changes portray a strong labor market in the fall than previously believed.


いつもの通り、よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたのですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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ということで、米国の雇用は非農業部門雇用者の増加が、ひとつの目安とされる+200千人どころか、昨年2023年12月と今年2024年1月の2か月は+300千人増を超えていて、失業率も3%台後半を継続しています。1月統計を見ると、2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック初期からの回復過程にあった2021-22年のような勢いはないといえますが、12月の雇用増も+126千人上方修正されて、+333千人増に引き上げられていますので、USA Todayのタイトルのように booming というのは、決して誇張ではないかもしれません。引用した記事の3パラめにあるように、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは+185千人の雇用増を見込んでいましたので実績は大きく上振れました。昨年2023年12月13日の連邦公開市場委員会(FOMC)後に公表された最新の経済見通しである Summary of Economic Projections の想定するラインから、雇用についてはやや上振れている印象を私も持っています。従って、米国の連邦準備制度理事会(FED)は直近の1月30-31日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)でも金利引下げを見送っています。会議終了後のパウエル議長の会見でも次回会合の3月の金利引下げの可能性が小さいと示唆されているようですし、NY株式市場のダウ平均も史上最高値を更新し、大統領選挙を迎える年の米国経済は堅調と見えます。ソフトランディングはほぼ確定なのかもしれません。
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2024年01月31日 (水) 11:30:00

IMF「世界経済見通し改定」では世界経済の成長率を上方改定

昨日、国際通貨基金(IMF)から「IMF世界経済見通し」World Economic Outlook Update が公表されています。サブタイトルは Moderating Inflation and Steady Growth Open Path to Soft Landing となっており、米国経済のソフトランディングにより、今年2024年の世界経済の成長率を上方改定しています。ただし、ユーロ圏欧州や日本は下方改定されています。中国の成長率も上方改定されたとはいえ、"Deepening property sector woes in China or, elsewhere, a disruptive turn to tax hikes and spending cuts could also cause growth disappointments." と指摘し、中国における不動産セクターの問題や財政再建の影響は下方リスクがあると示唆しています。下のテーブルはIMF Blogのサイトから世界経済の成長率の総括表を引用しています。

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目を国内に転じると、本日は月末最終営業日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも昨年2023年12月統計のです。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から+1.8%の増産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.1%増の15兆5150億円を示した一方で、季節調整済み指数は前月から▲2.9%の減少を記録しています。グラフだけ以下の通り示しておきます。

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2024年01月30日 (火) 23:00:00

12月雇用統計で失業率は改善するも有効求人倍率は悪化

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率など、昨年2023年12月の雇用統計が公表されています。失業率は前月から△0.1%ポイント改善して2.4%を記録した一方で、有効求人倍率は前月から▲0.01ポイント悪化し1.27倍となっています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

23年の求人倍率1.31倍、2年連続上昇 失業率は2.6%
厚生労働省が30日発表した2023年の有効求人倍率は1.31倍と、前年から0.03ポイント伸びた。上昇は2年連続だ。新型コロナウイルス禍から雇用環境が回復したが、伸び率は前年より鈍化した。総務省が同日発表した23年平均の完全失業率は2.6%と横ばいだった。
有効求人倍率は全国のハローワークで職を探す人に対し、1人あたり何件の求人があるかを指す。21年に1.13倍まで下がったが22年に1.28倍と反転し、今回はさらに改善した。コロナ前の19年水準(1.60倍)には届いていない。
月平均の有効求人数は0.9%増の249万6503人だった。国内外の往来再開で飲食・宿泊業が年前半に大きく伸びた。
有効求職者数は190万9647人で1.4%減少した。新規求職者のうち転職希望者が減っており「賃金の上昇を期待して転職活動を控えるといった動きがある」(厚労省)という。
厚労省が同日発表した12月の有効求人倍率(季節調整値)は1.27倍と、前月から0.01ポイント下がった。22年6月以来の低水準だ。
23年平均の完全失業者数は178万人で前年から1万人減った。15歳以上人口の就業率は61.2%と、前年比0.3ポイント上がった。3年連続で伸びた。
就業者数は24万人増の6747万人だった。職に就かず求職活動もしていない非労働力人口は4084万人と44万人減少し、新たに労働市場に参入する動きが目立ってきた。
23年12月の完全失業率(季節調整値)は2.4%で前月から0.1ポイント低下した。


年次統計中心で長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から横ばいの2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも、前月から横ばいの1.28倍と見込まれていました。実績では、失業率は前月から改善した一方で、有効求人倍率はわずかに悪化し、やや不整合な形になりましたが、一致指標と遅行指標であることから、まあ、こんなもんかという気はします。いずれにせよ、足元の統計は改善がやや鈍い面もあるとはいえ、雇用は底堅いと私は評価しています。
先進各国がこのまま景気後退に陥らずにソフトランディングに成功すれば、我が国の雇用も大きく悪化するとは考えにくいのではないかと思います。ですので、問題は量的な雇用ではなく賃金動向です。その意味でも、今年の春闘が気にかかります。

今日は体調が悪くて、夕方から病院に行ったくらいですので、ここまでとしておきます。
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2024年01月29日 (月) 10:30:00

今年の米国大統領選挙の焦点やいかに?

いうまでもありませんが、今年2024年は米国大統領選挙の年です。そして、表題にした「米国大統領選挙の焦点」は明らかに、トランプ前大統領の動向です。共和党の大統領候補選びは予備選序盤で大勢が決してしまった感があります。民主党の大統領候補は、高齢とはいえ現職のバイデン大統領ですんなり決まるでしょうから、4年前と同じ組合せの対決になる可能性が高まってると私は受け止めています。
中でも注目の的はトランプ前大統領です。私が見かけた最初の記事は、昨年2023年9月5日の Foreign Affairs 誌の記事でしたが、最近では Financial Times 紙でも取り上げられていました。まあ、私が見落としているだけで、いっぱいあるのだろうと思います。ただ、この2つの記事では、いずれも "Trump 2.0" と呼んでいます。トランプ前大統領が米国政権にあった2017-2021年から一新して、新しいバージョンということなのだろうと思います。以下に2つの記事のリンクを置いておきます。


私自身は、今現在の日本について、経済が成長しない中で賃金が上がらず、財政が大赤字を記録し、世界経済の中で日本がプレゼンスを徐々に低下させていますが、実は、経済よりも政治的な民主主義が危機に瀕していて、しかも、日本だけでなく、世界的に民主主義が行き詰まっていると感じています。ある意味で、米国が民主主義の行詰りの先頭に立っているかもしれません。果たして、100年先に歴史家は今年2024年をどのように記述するのか、とても気にかかります。
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2024年01月26日 (金) 11:30:00

2023年12月の企業向けサービス価格指数(SPPI)は+2%超の伸びが続く

本日、日銀から昨年2023年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月と同じ+2.4%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについては前月から伸びが縮小して+2.3%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、12月2.4%上昇 宿泊関連が上昇
日銀が26日発表した2023年12月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は110.4と、前年同月比2.4%上昇した。11月から横ばいで、15年3月(3.1%上昇)以来の伸びが続いた。人流回復で宿泊サービスの価格が押し上げられたほか、土木建築サービスなどの分野で人件費上昇を反映する動きもみられた。
同日公表した23年通年の指数は109.1と前年比2.0%上昇し、14年(2.6%上昇)以来の高い伸び率となった。消費税増税の影響を除けば1991年以来32年ぶりの高さだった。
企業向けサービス価格指数は、企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。上昇率は5カ月連続で2%台となった。12月は調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは108品目、下落したのは22品目だった。
内訳をみると、宿泊サービスは前年同月比で59.8%上昇した。インバウンド(訪日外国人)の回復や政府の観光振興策「全国旅行支援」が各地で終了したことが価格を押し上げた。土木建築サービスも人件費上昇を転嫁する動きがあり5.2%上昇した。
外航貨物輸送は前年同月比6.2%上昇し、11月(1.9%上昇)から上昇率が4.3ポイント拡大した。22年12月に価格が下落していた反動や海運相場の上昇が影響した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。

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モノの方の企業物価指数(PPI)の上昇トレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り2023年中に終了し、2024年1月からは前年同月比でマイナスに舞い戻る可能性があると考えられる一方で、その名の通りのサービスの企業向けサービス物価指数(SPPI)はまだ上昇を続けているのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、景気後退期を示しています。上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドライン指数の前年同月比上昇率は、今年2023年8月から+2%台まで加速し、本日公表された12月統計では+2.4%に達しています。もちろん、+2%前後の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高いながら、日銀の物価目標、これは生鮮食品を除く消費者物価上昇率ですが、物価目標の+2%近傍であることも確かです。加えて、下のパネルにプロットしたように、モノの物価である企業物価指数のうちの国内物価のグラフを見ても理解できるように、インフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速する局面ではないんではないか、と私は考えています。繰り返しになりますが、ヘッドラインSPPI上昇率にせよ、国際運輸を除いたコアSPPIにせよ、日銀の物価目標とほぼマッチする+2%程度となっている点は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて12月統計のヘッドライン上昇率+2.4%への寄与度で見ると、宿泊サービスや土木建築サービスや機械修理などの諸サービスが+1.12%ともっとも大きな寄与を示しています。ヘッドライン上昇率+2.4%の半分近くを占めています。引用した記事にもある通り、全国旅行支援が終了した影響もあり、宿泊サービスは前年同月比で+59.8%と大きな上昇となっています。ほかに、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.56%、加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている石油価格の影響が大きい外航貨物輸送や道路旅客輸送や国内航空旅客輸送などの運輸・郵便が+0.31%のプラス寄与となっています。リース・レンタルについても+0.18%と寄与が大きくなっています。

最後に、本日、総務省統計局から東京都区部の1月中旬速報値の消費者物価指数(CPI)が公表されています。いつもはそれほど注目していないのですが、2024年1月中旬の統計で生鮮食品を除くコアCPI上昇率が、とうとう日銀物価目標の+2%を大きく割り込んで+1.6%にまで縮小しています。+2%を下回るのは1年8か月、というか、20か月振りだそうです。いくつかニュースサイトのリンクだけ以下のように残しておきます。
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2024年01月25日 (木) 15:00:00

今年の恵方巻きの値上げはどれくらいか?

昨日1月24日に、帝国データバンクから「2024年節分シーズン 恵方巻価格調査」の結果が明らかにされています。今年の恵方巻は1本当たりの平均価格で40円前後、約4%の値上げと小幅に落ち着いていて、70~150円の値上げだった昨シーズンに比べると一服感も出ているとリポートされています。さらに、今シーズンは海鮮恵方巻では値下げも目立っていてお買い得感強まっているようです。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を2点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 昨シーズンに比べ「お買い得感」強まる フードロス対策の「予約制」、広がりに課題も
  2. 今年の恵方巻、平均価格は前年比4%の値上げ 海鮮恵方巻は値下げも目立つ


ということで、下は帝国データバンクのリポートから 恵方巻 平均価格推移 のグラフを引用しています。

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恵方巻きは、2023年には+74円(+8.9%)の値上げだったのですが、2024年には+39円(+4.3%)と値上げ率は半減しています。海鮮恵方巻きも、2023年+148円(+9.6%)の値上げが、2024年には+40円(+2.4%)と、上昇が鈍化しています。本来、海鮮恵方巻きのほうが高級感があるわけですが、穴子、まぐろ、ほたて、くるまえび、いくらなどで最大で20%超の安値となっているのが原因だそうです。私も食料品を中心に生鮮野菜や生鮮果物や飲料などは週に2-3回くらいの頻度でスーパーで価格チェックをしているのですが、こういった生鮮魚介類は見落としがちです。
フードロス対策として予約制の導入が進められていますが、高価格帯のものや限定商品などに限られているのが現状で、店頭販売が少なくない1本1000円前後のものでは効果が疑問視されているようです。年間500万トンを大きく超えるフードロスのうち半分近くは家庭から出ていて、SDGsを進める上でも重要な観点ではなかろうかという気がします。
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2024年01月24日 (水) 14:00:00

12月の貿易統計は3か月ぶりの黒字を記録

本日、財務省から昨年2023年12月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+9.8%増の9兆6482億円に対して、輸入額は▲6.8%減の9兆5861億円、差引き貿易収支は+621億円の黒字を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

23年輸出額が過去最高、初の100兆円超 赤字は半減
財務省が24日発表した2023年の貿易統計速報によると、自動車の輸出が好調で輸出額が初めて100兆円を超え、過去最高となった。資源高の一服で輸入額は減った。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9兆2913億円の赤字だった。
貿易赤字は3年連続だが、22年比で54.3%縮小した。22年の貿易赤字は資源高と円安の影響で20兆3295億円と、比較可能な1979年以降で最大の赤字だった。
23年の輸出額は22年比2.8%増の100兆8865億円で過去最高となった。半導体不足の解消で自動車の輸出額が17兆2652億円と32.7%伸びた。
輸入額は7%減の110兆1779億円だった。原油や液化天然ガス(LNG)などの輸入額が減った。これら鉱物性燃料の輸入額は18.9%減の27兆3182億円となった。
原油の輸入価格は1キロリットルあたり7万6478円で9.7%下がった。為替レートは年平均で1ドル=140.17円で、7.2%の円安だった。
地域別では米国向け輸出額が11%増の20兆2668億円で過去最高だった。19年から4年ぶりに中国を抜き、国別として最大の輸出先となった。自動車の輸出額が35.5%増えた。
貿易指数(20年=100)は世界全体への輸出数量指数は3.9%下がり、金額指数は2.8%上がった。米国はそれぞれ4.5%、11%の上昇だった。
23年12月単月の貿易収支は621億円の黒字だった。黒字は3カ月ぶり。自動車の輸出が好調だったほか、石炭やLNGの輸入額が減った。


どうしても年統計の方の記述が多くて、やたらと長くなってしまいましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、�円超の貿易赤字が見込まれていて、予測レンジの上限が+1000億円近い黒字でしたので、レンジの範囲内で大きなサプライズはありませんでした。季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、グラフから明らかな通り、輸出額が伸びていないわけではなのですが、それよりも輸入額の減少が貿易赤字縮小の大きな原因です。3か月ぶりの黒字だと報じられていますが、いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、貿易収支が赤字であれ黒字であれ、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。ただ、私の知る限り、少なくないエコノミストは貿易赤字は縮小、ないし、黒字化に向かうと考えている可能性が十分あります。
12月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が減少しています。ただ、減少幅は小さくなってきています。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで▲5.2%減、金額ベースで▲4.1%減となっています。数量ベースと金額ベースで大きな差がないというわけですから、価格低下に歯止めがかかりつつあると考えるべきです。LNGは原油からの代替が進んだこともあって、数量ベースでは+7.2%増、金額ベースでも+6.8%増となっています。また、ある意味で、エネルギーよりも注目されている食料について、穀物類は数量ベースのトン数では▲0.8%減となっている一方で、金額ベースでは▲11.7%減と単価が低下を始めていることがうかがえます。輸出に目を転ずると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で数量ベースの輸出台数は+20.2%増、金額ベースでも+18.3%増と大きく伸びています。半導体部品などの供給制約の緩和による生産の回復が寄与しています。自動車や輸送機械を別にすれば、一般機械+18.7%増、電気機器+5.1%増と、自動車以外の我が国リーディング・インダストリーも輸出額を伸ばしています。ただし、こういった我が国の一般機械や電気機械の輸出はソフトランディングに向かっている米国をはじめとする先進各国経済とともに、中国向け輸出額の回復も寄与していると考えられます。すなわち、例えば、北米向け輸出額は前年同月比で20.2%増、西欧向けも+13.9%増と伸びている一方で、中国向けも+9.6%増と回復の兆しを見せています。12月単月の統計ながら、北米向け輸出が2.3兆円、西欧向けが1.1兆円に対して、中国向け輸出は1.8兆円に達していますし、中国も最悪期を脱しつつあるのかもしれません。
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2024年01月23日 (火) 12:30:00

日銀「展望リポート」が公表され金融政策には大きな変更はなし

本日、日銀で開催されていた金融政策決定会合が終了し、「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しのテーブルは以下の通りです。ということで、もっとも注目された物価見通しは、生鮮食品を除くコアCPIで本年度2023年度には+2.8%と物価目標の+2%を超えるという結果が示されています。なお、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、引用元である日銀の「展望リポート」からお願いします。

     
  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
(参考)
消費者物価指数
(除く生鮮食品・エネルギー)
 2023年度+1.6 ~ +1.9
<+1.8>
+2.8 ~ +2.9
< +2.8>
+3.7 ~ +3.9
< +3.8>
 10月時点の見通し+1.8 ~ +2.0
<+2.0>
+2.7 ~ +3.0
< +2.8>
+3.5 ~ +3.9
< +3.8>
 2024年度+1.0 ~ +1.2
<+1.2>
+2.2 ~ +2.5
<+2.4>
+1.6 ~ +2.1
<+1.9>
 10月時点の見通し+0.9 ~ +1.4
<+1.0>
+2.7 ~ +3.1
<+2.8>
+1.6 ~ +2.1
<+1.9>
 2025年度+1.0 ~ +1.2
<+1.0>
+1.6 ~ +1.9
<+1.8>
+1.8 ~ +2.0
<+1.9>
 10月時点の見通し+0.8 ~ +1.2
<+1.0>
+1.6 ~ +2.0
<+1.7>
+1.8 ~ +2.2
<+1.9>


成長率について「展望リポート」では、海外経済がインフレ抑制のために金融引き締めに伴って、米国を中心にソフトランディングに向かう可能性があるとはいえ、「回復ペース鈍化による下押し圧力」あるものの、ペントアップ需要の顕在化などにより、「緩やかな回復を続け」、潜在成長率を上回る成長を続けると想定しています。他方で、生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)は輸入物価の影響によるコストプッシュのインフレは減衰しつつも、政府による物価抑制策の反動などから+2%を上回って推移すると見込んでいます。
ただ、上のテーブルに見られるように、この潜在成長率を上回る高成長も、物価目標を超えるインフレも、いずれも長続きしません。成長率は2023年度をピークに、2024年度、2025年度と低下すると見込まれていますし、コアCPI上昇率もご同様であり、2025年度には物価目標の+2%を下回ることが制作委員の間で緩やかなコンセンサスがあるようです。
従って、本日までの日銀政策委員会・金融政策決定会合の後に公表された「当面の金融政策運営について」で明らかにされたように、マイナス金利の解除は見送られ、大規模緩和は継続されるようです。要するに、金融政策には現時点で大きな変更はないということのようです。
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2024年01月22日 (月) 13:00:00

日本の再生可能エネルギーは遅れているか?

国際エネルギー機関(IEA)から、再生可能エネルギーに関する Renewables 2023 と題するリポートが公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。

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上のグラフは IEA のツイッタのサイトから引用しています。この先、再生可能エネルギーへの投資が力強く伸びることを見込んでます。振り返って見るに、我が国の再エネ比率を国際比較したグラフを、資源エネルギー庁「日本のエネルギー」から引用すると下のグラフの通りです。再エネ比率が40%を越える欧州諸国と比較して、日本の再エネ比率は欧州諸国の半分の20%少々であることが見て取れます。

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2024年01月19日 (金) 11:00:00

やや上昇率が鈍った12月の消費者物価指数(CPI)をどう見るか?

本日、総務省統計局から昨年2023年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.3%を記録しています。前年比プラスの上昇は27か月連続ですが、先月11月統計の+2.5%のインフレ率からは上昇幅が縮小しています。+3%を下回る上昇が続いていますが、日銀のインフレ目標である+2%をまだ上回る高い上昇率での推移が続いています。ヘッドライン上昇率も+2.6%に達している一方で、エネルギーや食料品の価格高騰からの波及が進んで、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+3.7%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、23年12月2.3%上昇 2カ月連続で伸び縮小
総務省が19日発表した2023年12月の消費者物価指数(CPI、20年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.4となり、前年同月比で2.3%上昇した。伸び率は2カ月連続で前月から縮小し、22年6月の2.2%以来18カ月ぶりの低水準となった。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.3%上昇だった。前年同月比での上昇は28カ月連続。日銀の物価目標である2%を上回る水準が続く。電気代や都市ガス代の低下が続くほか、生鮮食品以外の食料品高にも一服感がみられる。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は3.7%上がった。前月からの伸び率の縮小は4カ月連続となる。生鮮食品を含む総合指数は2.6%伸びた。
総務省によると、政府の電気・ガス料金の抑制策がなければ、生鮮食品を除いた総合指数の上昇率は2.8%だった。政策効果で物価の伸びを0.5ポイント程度抑えた。
同日公表した23年平均の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年比3.1%上昇した。第2次石油危機の影響があった1982年の3.1%プラスに並び41年ぶりの高い伸びとなった。
幅広い品目で値上げが進んだ生鮮食品以外の食料品や日用品が押し上げた。生鮮食品を除く食料は8.2%上昇し、1975年の13.9%以来48年ぶりの上げ幅となった。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は4.0%プラスだった。
23年12月の結果を品目別にみると、電気代は前年同月比20.5%下がった。23年11月の18.1%マイナスから下げ幅を広げた。発電用燃料に用いる石炭の価格が下落傾向にあることや、政府の料金抑制策が影響した。
生鮮食品を除く食料は6.2%上がった。水準は依然として高いものの、前月比でみると0.1%低下した。21年12月以来2年ぶりのマイナスとなる。鶏卵の前年同月比の上昇率は23年11月の26.3%から23年12月は21.9%に鈍った。
全体をモノとサービスに分けると、サービスは2.3%伸びた。23年7月以降、6カ月連続で2%以上で推移する。宿泊料は59.0%高まった。観光需要が回復した。政府の観光振興策が各地で終了していることも押し上げ要因となった。


何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.3%の予想でしたので、実績の+2.3%の上昇率はまさにジャストミートしました。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていて、本日発表された12月統計では前年同月比で▲11.6%に達し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲1.02%の大きさを示しています。先月の11月統計ではこの寄与度が▲0.87%ありましたので、12月統計でコアCPI上昇率が11月統計から▲0.2%ポイント縮小した背景は、こういったエネルギー価格の動向にあります。すなわち、12月統計ではエネルギーの寄与度差が▲0.15%に達しています。たぶん、四捨五入の関係で寄与度差は寄与度の引き算と合致しません。悪しからず。特に、そのエネルギー価格の中でもマイナス寄与が大きいのが電気代です。エネルギーのウェイト712の中で電気代は341と半分近くを占め、11月統計では電気代の寄与度が▲0.75%あったのが、12月統計では▲0.87%に拡大し、▲0.12%ポイントの寄与度差を示しています。統計局の試算によれば、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の影響を寄与度でみると、▲0.49%に達しており、うち、電気代が▲0.41%に上ります。他方で、政府のガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は7月統計から上昇に転じ、直近の12月統計では+4.5%となっています。中東の地政学的なリスクも高まっています。すなわち、ガザ地区でのイスラエル軍の虐殺行為、親イラン武装組織フーシによる商船の襲撃なども、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。なお、食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮野菜が+0.27%、生鮮果物が+0.14%の大きな寄与を示しています。引用した記事にもあるように、鶏卵の前年同月比上昇率も11月の+26.3%から12月は+21.9%に鈍ったとはいえ、まだまだ高い伸び率が続いています。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見ると、調理カレーなどの調理食品が+0.26%、アイスクリームなどの菓子類が+0.22%、フライドチキンなどの外食が+0.17%、鶏卵などの乳卵類が+0.17%、などなどとなっています。

何度も書きましたが、現在の岸田内閣は大企業にばかり目が向いていて、東京オリンピックなどのイベントを開催しては電通やパソナなどに多額の発注をかけましたし、物価対策でも石油元売とか電力会社などの大企業に補助金を出しています。こういった大企業向けの選別主義的な政策ではなく、たとえ結果としては同じであっても、国民に対して出来るだけ普遍主義的な政策を私は強く志向しています。物価対策であれば、例えば、消費税減税・消費税率引下げ、あるいは、物価上昇に見合った賃上げを促す政策が必要であると私は考えます。
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2024年01月18日 (木) 15:30:00

足踏み続く11月統計の機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から昨年2023年11月の機械受注が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比+0.7%増の8587億円となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

23年11月の機械受注4.9%減 3カ月ぶりマイナス
内閣府が18日発表した2023年11月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前月比4.9%減の8167億円だった。マイナスは3カ月ぶりとなる。製造業を中心に発注が減少した。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値の0.8%減を下回った。船舶・電力を除く民需は21年4月の8043億円以来、2年7カ月ぶりの低水準だった。内閣府は全体の基調判断を1年1カ月連続で「足踏みがみられる」とした。
製造業は7.8%減の3774億円だった。マイナスは2カ月ぶりとなる。発注した業種ごとにみると「汎用・生産用機械」が12.7%減った。クレーンやコンベヤーなどの運搬機械の需要が低下した。
「その他製造業」も31.0%減った。23年10月にあった受注額100億円以上の大型案件が23年11月はなかった。産業用ロボットの発注が低調だった「情報通信機械」は24.1%減った。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「中国を中心に海外経済の不透明感が依然として高く、製造業で設備投資の様子見姿勢が強まっている」と指摘する。
非製造業は0.4%減の4482億円で、3カ月ぶりに減った。金融業・保険業からの受注が17.4%減少した。汎用コンピューターといった電子計算機が振るわなかった。卸売業・小売業も12.0%マイナスだった。
通信業は40.3%増とプラスを確保した。大型案件が1件あり全体を押し上げた。運輸業・郵便業は12.8%伸びた。鉄道車両などの発注増が寄与した。


包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比△0.8%減でした。予想レンジがかなり広かったとはいえ、下限は▲4.2%減でしたので、実績の△4.9%減は下限を超えて下振れしたと私は受け止めています。引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いています。1年1か月連続の据え置きだそうです。上のグラフで見ても、太線の移動平均で示されているトレンドで見れば、明らかに下向きとなっています。事実、4~6月期▲3.2%減の2兆5855億円に続いて、7~9月期も▲1.8%減の2兆5385億円と2四半期連続で減少しています。ただ、受注水準としてはまだ何とか8,000億円を上回っており決して低くはありませんし、足元の10~12月期の受注見通しは+0.5%増の2兆5,506億円と見込まれています。
ただ、インフレ抑制のための金融引締めが進められた欧米先進国の景気減速により製造業への受注が停滞している一方で、インバウンドが本格的に増加し始めコロナ前の水準に近づきつつあることから非製造業ではまずます堅調、という明暗が分かれています。本日公表された11月統計では、製造業が季節調整済みの前月比▲7.8%減の3774億円にとどまった一方で、船舶・電力を除く非製造業も減少とはいえ、▲0.4%減の4482億円となっています。もっとも、先行きに関してはそれほど単純ではありません。すなわち、欧米先進国で景気後退に陥ることなくソフトランディングに成功するようですから、輸出が回復して製造業が盛り返すことも十分ありえます。他方で、非製造業も、この先、インフレのダメージが内需に影響する可能性が決して低くないと私は考えています。
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2024年01月17日 (水) 11:00:00

IMF Blog に見る人工知能(AI)と仕事(job)のリスクやいかに?

今週日曜日1月14日のIMF Blogで人工知能(AI)に関して、AI Will Transform the Global Economy. Let's Make Sure It Benefits Humanity. と題する記事がポストされています。投稿者はIMFトップのクリスタリナ・ゲオルギエヴァ専務理事です。まず、IMF Blogのサイトから記事の最初の2パラを引用すると以下の通りです。

We are on the brink of a technological revolution that could jumpstart productivity, boost global growth and raise incomes around the world. Yet it could also replace jobs and deepen inequality.
The rapid advance of artificial intelligence has captivated the world, causing both excitement and alarm, and raising important questions about its potential impact on the global economy. The net effect is difficult to foresee, as AI will ripple through economies in complex ways. What we can say with some confidence is that we will need to come up with a set of policies to safely leverage the vast potential of AI for the benefit of humanity.


もっとも重要なメッセージのひとつは、引用者によって付された下線の部分であり、"it could also replace jobs and deepen inequality." という最初のパラの最後の点です。そして、この記事が主たる典拠としているのは以下の学術論文です。


AIは人間の仕事(job)を補完する場合も、代替する場合も考えられます。AIによる代替のリスクにさらされる仕事は40%に上る "almost 40 percent of global employment is exposed to AI." と指摘しています。先進国では60%近い仕事がAI代替リスクにさらされている一方で、新興国と途上国ではそれぞれ約40%と26%にとどまりますが、他方で、新興国や高所得国では低所得国よりもAI導入の準備が整っている "better equipped for AI adoption" とも指摘しています。IMF Blogのサイトから引用した以下のグラフの通りです。125か国について、就学年数や雇用市場の流動性、社会的セーフティネットの対象となる人口の割合などの要素 "elements such as years of schooling and job-market mobility, as well as the proportion of the population covered by social safety nets" を評価した結果です。

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私は2045年ともいわれるシンギュラリティを過ぎて、すなわち、汎用AIの知能が人類を超えれば、その将来の人類とAIの関係は、現在の家畜であるウマやイヌと人類の関係になぞらえることができると考えています。人類はAIの「家畜」になる可能性があるのかもしれません。ただ、シンギュラリティと目されている2045年には、私自身はたと命長らえていたとしても90歳に近くなっているわけで、おそらく、私自身は検証できない可能性が高いと覚悟しています。
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2024年01月16日 (火) 17:00:00

2023年12月の企業物価指数(PPI)国内物価はとうとう前年同月比上昇率ゼロに縮小

本日、日銀から昨年2023年12月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で保合いとなり、上昇率は12か月連続で鈍化しています。したがって、次の1月統計ではマイナス圏に舞い戻るという可能性もありそうです。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

23年12月の企業物価横ばい 2年10カ月ぶり低さ
日銀が16日発表した2023年12月の企業物価指数(速報値、20年平均=100)は119.9と、前年同月比の上昇率が0%で横ばいだった。上昇率は11月(0.3%上昇)から0.3ポイント低下し、21年2月(マイナス0.9%)以来、2年10カ月ぶりの低い水準となった。政府の対策で電気・ガス料金が押し下げられ、価格転嫁の動きも一時期より落ち着いてきた。
23年通年では前年比4.1%上昇だった。指数水準は119.6と比較可能な1980年以降の過去最高を更新したが、前年比は2022年(9.8%上昇)より鈍化した。政府が23年2月から実施する価格抑制策で電力・都市ガスなどの伸びが大きく減速したほか、木材・木製品など川上に近い品目の値上げの勢いが収まった。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。企業向けサービス価格は4カ月連続で2%台の上昇を維持しており、物価の押し上げ要因がモノから人件費上昇の影響を受けやすいサービスに移りつつある。
企業物価指数で公表する515品目のうち404品目が値上がりした。民間予測の中央値(0.3%下落)より0.3ポイント高かったが、23年1月から12カ月連続で伸び率の鈍化が続いている。
内訳をみると、石油・石炭製品はガソリン補助金の減額を受け、前年同月比4.6%上昇した。飲食料品も4.4%上昇した。11月に続き、原材料やエネルギーのコスト上昇を販売価格に反映する動きがみられた。
電力・都市ガス・水道は前年同月比で27.6%下落し、11月(マイナス24.5%)より下落幅が3.1ポイント拡大した。燃料費の下落や政府の電力・ガスの価格抑制策がマイナスに寄与した。日銀の試算によると、電力・ガスの価格抑制策は企業物価指数全体の上昇率を約0.3ポイント押し下げている。
輸入物価は円ベースで前年同月比4.9%下落し、9カ月連続でマイナス圏となった。11月(マイナス6.4%)より下落幅が縮小した。


注目の指標のひとつですから、ついつい長くなりますが、いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は▲0.3%と見込まれていましたので、実績の前年同月から横ばいという結果はやや上振れしました。特に、円ベースの輸入物価は4月統計から前年同月比でマイナスに転じ、12月統計では輸入物価▲6.4%の下落となっています。本日公表の企業物価指数(PPI)にはサービスが含まれませんが、他方で、企業向けサービス価格指数(SPPI)は8~11月の統計では前年同月比で+2%台を記録していますので、資源高などに起因する輸入物価の上昇から国内物価への波及が、同時に、モノからサービスの価格上昇がインフレの主役となる局面に入った、と私は考えています。したがって、日米金利差にもとづく円安の是正については、すでに一定の円高が進んで、最近では1ドル140円台半ばの水準となっていることも事実であり、経済政策として取り組む必要性や緊急性はそれほど大きくなくなった、と考えるべきです。消費者物価への反映も進んでいますし、企業間ではある意味で順調に価格転嫁が進んでいるという見方も成り立ちます。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇・下落率で少し詳しく見ると、電力・都市ガス・水道が▲27.6%と前月11月の▲24.5%の低下から下落幅を拡大しています。前年同月比で上昇している品目でも、農林水産物+1.5%は11月の+2.5%から上昇幅が縮小していますし、飲食料品も12月の上昇率は11月の+4.4%から横ばいです。ほかに、窯業・土石製品+11.6%、パルプ・紙・同製品+8.3%、繊維製品+5.0%、などが+5%以上の上昇率を示しています。ただ、いま上げたカテゴリーをはじめとして多くの品目でジワジワと上昇率が低下してきています。もちろん、上昇率が鈍化しても、あるいは、マイナスに転じたとしても、価格水準としては高止まりしているわけですし、しばらくは国内での価格転嫁が進むでしょうから、決して物価による国民生活へのダメージを軽視することはできません。特に、農林水産物の価格上昇が続いていて、その影響から飲食料品についても高い上昇率を続けています。生活に不可欠な品目ですので、政策的な対応は必要かと思いますが、エネルギーのように石油元売会社や電力会社のような大企業に対して選別的に補助金を交付するよりは、消費税率の引下げとかで市場メカニズムを活かしつつ、国民向けに普遍的な政策を取る方が望ましい、と私は考えています。

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最後に、世界気象機関(WMO)が1月12日に "WMO confirms that 2023 smashes global temperature record" とのプレスリリースを出しています。まあ、今さら指摘されるまでもありませんが、2023年は観測史上でもっとも平均気温が高かったようです。1850-1900年の平均で定義される産業革命前の気温から、2023年平均気温は 1.45±0.12℃ 高かったとの観測結果が示されています。プレスリリースにいくつかグラフがあるのですが、その中の Global Mean Temperature Difference を引用すると上の通りです。
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2024年01月15日 (月) 12:30:00

OECD Economic Surveys JAPAN: JANUARY 2024 の政策提言はやや問題点あり

先週木曜日1月11日に、経済協力開発機構(OECD)から「OECD対日経済審査報告書」OECD Economic Survey of Japan 2024 が公表されています。OECDのサイトでは邦訳資料も利用可能です。一般向けには不明ながら、勤務校からはpdfの全文リポートも利用可能です。しかし、100ページを超えるリポートで、しかも英文資料ですから、すべてに目を通したわけでもなく、リポート冒頭のExecutive Summaryを見ただけなのですが、かなり、ムチャな政策提言がいくつか目につきます。

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リポート p.13 Main findings/Key recommendations を引用すると上のテーブルの通りです。右欄の Key recommendations のマーカーは引用者である私がつけています。最初のマーカーは "start raising policy rates gradually" です。インフレ率が2%近傍であると予想される限りにおいて、というただし書きがあるとはいえ、利上げが推奨されているような印象です。このただし書きを無視して利上げに踏み出す方向性を見出すタカ派がいそうな気がして、私はやや怖い気がします。少し前まで、インフレ対応のための円安是正を目的とする金利引上げという、ややムチャな観測が流れていましたが、現時点では、この見方は後景に退いていると考えるべきですが、引き続き、理由不明ながら利上げを目指す見方があるのは、私には理解不能です。次に、"Gradually raise tax revenues, including by increasing the consumption tax rate further in small increments." という部分も、2014年の消費税率引上げで明確にデフレ脱却プロセスに大きな障害となった経験がありながら、いまだに「財政再建」の錦の御旗の下でデフレ脱却と財政再建の間で後者のウェイト高い人達がいるのにも、私の理解がついていきません。
テーブルの画像は引用しませんが、ほかに2点、雇用関係でも疑問があります。まず、"Break down labour market dualism by relaxing employment protection for regular workers and making it more transparent." です。正規雇用と非正規雇用の格差は、私からすれば非正規雇用の待遇改善でもって是正されるべきだと考えていたのですが、OECDは真逆の方向性を示していて、正規職員の雇用保護を緩和することにより達成されるべき目標と捉えているようです。昔の言い方になぞらえれば、「1億総非正規化」を目指したいのかもしれません。次に、"Further increase the mandatory retirement age with a view to abolish it" というのもあります。日本の高齢者は就業率がほかの先進国と比べてもかなり高く、さらに定年を引き上げて、あるいは、定年を廃止してまでも高齢者の就業率を高めることは限界があるように私は考えています。それでも、ある意味で、高齢者は安価な労働力ですので、これを利用したいというのは判らないでもないのですが、私は全幅の賛意を示すことはできません。ヤメておいた方がいいような気すらします。少なくとも、「生涯現役社会」はムリです。1980年代の大陸欧州諸国と違って、早期引退パスを設定することに失敗した我が国ですが、どこかで引退するパスは作っておいた方がいいように、直感的ながら感じます。

このリポートにどこまで日本の実情が反映されているのか不明ですが、何らかの意図を感じないでもありません。しかし、いくつか問題となる論点が含まれていますから、OECDの見解を鵜呑みにする必要はないと思います。
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2024年01月12日 (金) 16:30:00

現状判断DIが上向いた12月の景気ウォッチャーと大きな黒字の11月経常収支

本日、内閣府から昨年2023年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から11月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+1.2ポイント上昇の50.7となった一方で、先行き判断DIは▲0.3ポイント低下の49.1を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+1兆9256億円の黒字を計上しています。まず、ロイターのサイトから経常収支の記事を、それぞれ引用すると以下の通りです。

街角景気、12月は1.2ポイント上昇 忘年会や訪日客の増加寄与
内閣府が12日発表した2023年12月の景気ウオッチャー調査によると、景気の現状判断DIは50.7と前月から1.2ポイント上昇した。5カ月ぶりの上昇。忘年会やインバウンド(訪日外国人)など人の移動の活発化が寄与した。
景気判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」とし、前回の表現を維持した。
指数を構成する全3項目が上昇した。家計動向関連DIは前月から0.6ポイント上昇の50.7、企業動向関連DIは2.7ポイント上昇の50.7、雇用関連DIは1.5ポイント上昇の50.2だった。
調査先からは「忘年会シーズンの繁忙期ということもあり、予約でほぼ満席状態」(北関東=一般レストラン「居酒屋」)、「商店街でもインバウンドの数は日増しに増加する傾向」(四国=商店街)といった声が聞かれた。
一方、「暖冬の影響で12月中旬まで冬物衣料が不調だった。食料品も相次ぐ値上げで買い控えが続くなど、消費マインドが冷え込みつつある」(近畿=その他レジャー施設「複合商業施設」)といった指摘も出ていた。
内閣府の担当者は、引き続きモノの値上げによる人々の節約志向が景況感のマイナス要因となっているが、今月は必ずしも悪い文脈だけでなく、客単価の上昇や単価の高い衣料品や雑貨の購買の広がりなどを指摘する声も出ていたと述べ、「値上げのネガティブ度合いが和らいだ」との見方を示した。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは前月から0.3ポイント低下し49.1となった。内閣府は「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。
経常収支、11月として最大の1兆9256億円の黒字 予想は下回る
財務省が12日発表した国際収支状況速報によると、11月の経常収支は1兆9256億円の黒字となった。11月としては、過去最大の黒字幅。ロイターが民間調査機関に行った事前調査の予測中央値は2兆3851億円の黒字で、実際の黒字幅は予想を下回った。黒字は10カ月連続。
経常収支のうち、貿易・サービス収支は6994億円の赤字で、前年同月に比べて赤字幅が縮小した。貿易収支が赤字幅を縮小したほか、サービス収支が旅行収支を支えに黒字転化した。
第1次所得収支は2兆8949億円の黒字となり、前年同月に比べて黒字幅を縮小した。第2次所得収支は2700億円の赤字だった。


とても長くなりましたが、よく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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現状判断DIは、昨年2023年に入ってから高い水準が続いて、2月以降は50を超えていました。しかし、9月統計で50を割って49.9となった後、11月統計まで50割れの水準が続いていました。本日公表の12月統計でようやく上昇に転じて、前月から+1.2ポイント上昇して50.7を記録しています。もっとも、長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、50近傍の水準は決して低くない点には注意が必要です。12月統計で上昇した主因は企業動向関連です。家計動向関連が前月から+0.6ポイント上昇であった一方で、企業動向関連は+2.7ポイントの上昇となっています。製造業も非製造業も、ともに前月から上昇しています。雇用関連も前月から+1.5ポイント上昇しています。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。」で据え置いています。ただ、家計動向関連を少し詳しく見ると、サービス関連が前月から+1.3ポイント改善していますし、インバウンドの恩恵を受ける飲食関連が前月から+0.6ポイント上昇した一方で、小売関連が0.3ポイントの上昇にとどまるなど、明らかに物価上昇の影響が現れていると考えるべきです。特に、2~3か月先の景気を考える先行き判断DIについては、小売関連が前月から▲1.8ポイントの低下となっています。ただし、明日の消費者物価指数(CPI)統計を待ちつつも、このインフレはそれほど長続きしないと私は見込んでいます。また、内閣府のリポートの中の南関東の景気判断理由の概要の中から悪化の判断の理由を見ると、家計動向関連では「来客数の動きから見て、来店頻度がやや減少しているように感じている。また、客単価は上がっているが買上点数は伸びていない(スーパー)。」とか、企業動向関連では「お歳暮商戦はかなり苦戦を強いられている。お中元商戦のときよりも客の財布のひもがよりきつくなっている(食料品製造業)。」とか、インフレによる単価上昇はあるものの、食料品製造のお歳暮商戦は苦戦、といったあたりに私は目が止まってしまいました。もちろん、逆に、改善判断についても、「仲間内での忘年会や飲み会はコロナ禍の頃に比べて回復している」といった意見も見られます。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは経常黒字+2兆4000億円近くでしたので、実績の+1兆9256億円はやや下振れした印象です。2011年3月の東日本大震災と福島第一原発の影響を脱したと考えられる2015年以降で経常赤字を記録したのは、季節調整済みの系列で見て、昨年2022年10月統計▲3419億円だけです。もちろん、ウクライナ戦争後の資源価格の上昇が大きな要因です。ですから、経常黒字の水準はウクライナ戦争の前の状態に戻っていますし、たとえ赤字であっても経常収支についてもなんら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。

 【2023年10月判断】前回との比較【2024年1月判断】
北海道持ち直している持ち直している
東北持ち直している持ち直している
北陸緩やかに回復している今後、令和6年能登半島地震の影響を注視する必要があるが、緩やかに回復している
関東甲信越緩やかに回復している緩やかに回復している
東海持ち直している緩やかに回復している
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、持ち直している持ち直しのペースが鈍化している
中国緩やかに回復している緩やかに回復している
四国持ち直している持ち直している
九州・沖縄緩やかに回復している緩やかに回復している


最後に、日銀支店長会議が開催され、昨日、「地域経済報告 - さくらレポート -」(2024年1月)が公表されています。海外経済の回復ペース鈍化や物価上昇の影響を受けつつも、ほぼほぼすべての地域で景気は「持ち直し」、「緩やかに回復」、「着実に回復」と総括判断されています。ただし、近畿だけは、輸出の弱さから「持ち直しのペースが鈍化」と下方修正されています。各地域の景気の総括判断と前回と比較したテーブルは上の通りです。
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2024年01月11日 (木) 16:00:00

4か月ぶりに一致指数が下降した11月の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から昨年2023年11月の景気動向指数が公表されています。統計のヘッドラインを見ると、CI先行指数は前月から▲1.2ポイント下降の107.7を示し、CI一致指数▲1.4ポイント下降の114.5を記録しています。CI一致指数の下降は4か月ぶりです。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。

景気一致指数4カ月ぶりマイナス、輸出など悪化 判断は「改善」維持
内閣府が11日公表した2023年11月の景気動向一致指数(速報値、2020年=100)、前月比1.4ポイント低下の114.5と4カ月ぶりのマイナスだった。輸出数量指数や投資財出荷指数の悪化が響き、同年1月以来のマイナス幅だった。
>先行指数3カ月連続マイナス>
輸出数量指数は欧米、アジア向けがいずれも減少し、全体を最も押し下げる要因となった。投資財出荷指数は前月にコンベヤーなどが伸びた反動もあった。鉱工業生産指数は自動車の悪化などが響いた。
一致指数から一定のルールで機械的に決まる基調判断は、昨年4月以来続く「改善を示している」との表現を据え置いた。3カ月移動平均が前月比で低下しているが、マイナス幅が大きくないことなどが理由。
先行指数は前月比1.2ポイント低下の107.7で、3カ月連続のマイナスだった。自動車の出荷減による最終需要財在庫率指数の悪化や、新設住宅着工床面積などが指数を下押しした。


とてもシンプルに取りまとめられている印象です。続いて、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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昨年2023年11月統計のCI一致指数については、4か月ぶりの下降となりました。3か月後方移動平均の前月差でも▲0.30ポイントの下降となり、加えて、7か月後方移動平均でも▲0.04ポイント下降と、当月、3か月と7か月の両方の後方移動平均とも前月差がマイナスに転じています。しかし、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「改善」で据え置いています。「足踏み」に下方修正する場合には、3か月後方移動平均が前月差でマイナスになるだけではなく、マイナス幅が1標準偏差以上になるという判断基準ですので、要するに、マイナス幅がまだ1標準偏差に達していないのであろうと私は想像しています。いずれにせよ、米国経済がソフトランディングに成功するとすれば、そうすぐには景気後退入はしない可能性が高い、と私は考えています。従って、機械的判断ながら、まあ、「改善」でもいいか、という気はします。ただし、景気動向指数の基調判断は「改善」ながら、景気回復・拡大局面の後半に入っている点は忘れるべきではありません。なお、CI一致指数を構成する系列を詳しく見ると、プラスの寄与は、商業販売額(小売業)(前年同月比)+0.16ポイントと耐久消費財出荷指数+0.13ポイントくらいのもので、後は軒並みマイナス寄与となっています。すなわち、輸出数量指数が▲0.73ポイント、投資財出荷指数(除輸送機械)が▲0.34ポイント、有効求人倍率(除学卒)も▲0.29ポイント、生産指数(鉱工業)は▲0.15ポイント、商業販売額(卸売業)(前年同月比)が▲0.22ポイント、などなどとなっています。

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最後に、世界経済フォーラムから Global Risks Report 2024 が明らかにされています。pdfの全文リポート p.7 から Current risk landscape を引用すると上の通りです。やっぱり、気候変動が大きなリスク要因と考えられているようです。私は2番めの人工知能(AI)の方が脅威だと思うのですが、コンセンサスではないのかもしれません。
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2024年01月10日 (水) 13:00:00

ユーラシア・グループによる今年2024年10大リスク

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地政学リスクに関するコンサルタント会社であるユーラシア・グループから、一昨日の1月8日に Eurasia Group's Top Risks for 2024 が明らかにされています。日本語のリポートもアップロードされています。地政学の分野はほぼほぼ私の専門外なから、やや気にかかるところでもありますので、簡単にリストアップしておきたいと思います。

2024年10大リスク
  • リスクNo.1 米国の敵は米国
  • リスクNo.2 瀬戸際に立つ中東
  • リスクNo.3 ウクライナ分割
  • リスクNo.4 AIのガバナンス欠如
  • リスクNo.5 ならず者国家の枢軸
  • リスクNo.6 回復しない中国
  • リスクNo.7 重要鉱物の争奪戦
  • リスクNo.8 インフレによる経済的逆風
  • リスクNo.9 エルニーニョ再来
  • リスクNo.10 分断化が進む米国でビジネス展開する企業のリスク


広く知られた通り、今年は米国大統領選挙のある年です。米国の政治的経済的分断がこのまま固定化するのかどうか、とても気にかかるところです。もちろん、ウクライナや中東ガザの武力衝突も終息の兆しを見せていません。ならず者国家には、ロシア、北朝鮮、イランの3国が上げられており、そのうちの2国と日本は国境を接しています。中国経済がこのまま低迷する可能性も排除できませんし、これで米国でビジネス展開するリスクが高まれば、企業活動に制約を受ける場合も出てきそうです。ただ、私自身がもっとも恐れているのはコントロールが効かなくなった人工知能AIが暴走することです。気候変動以上に可能性が高くて、ダメージも大きいという気がします。
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2024年01月09日 (火) 11:00:00

能登半島地震の企業活動への影響やいかに?

あらためまして、能登半島地震で亡くなられた方々には謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された方々のは心よりお見舞い申し上げます。
この地震に関して、経済的にはどのくらいの影響があるかというファーストショットの調査結果が、帝国データバンクから1月5日に「能登半島地震関連調査」として明らかにされています。なお、東京商工リサーチでも、同じ日付で「能登半島地震被災地企業調査」として取りまとめられています。帝国データバンクの方が半島振興法に基づく能登半島に本社を置く企業を調査対象としているのに対して、東京商工リサーチの方は国土交通省が公表した「土砂災害警戒情報基準」の暫定基準を設けた4県の27市6町1村に本社を置く企業を対象としています。東京商工リサーチの調査結果の方が広域に渡っており、従って、いろんな数字が大きくなります。どちらがより適当は鍵論の分かれるところですが、私のこのブログでは帝国データバンクの調査を取り上げたいと思います。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を3点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 能登地方に本社を置く企業、計4075社 最多は「七尾市」の705社
  2. 売上高の合計は1兆3018億円、従業員数は合計4万9728人
  3. 業種別では「建設業」が最多 「サービス業」「製造業」が次いで多い


ということで、帝国データバンクのリポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきます。

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まず、リポートから 「能登地方」の企業数 の地図を引用すると上の通りです。企業数の多い市町村順で、七尾市705社、氷見市596社、かほく市498社、津幡町344社、輪島市315社、などとなっています。交通事情などにより、私はどの地域が地震被害が大きいのか十分な情報がありませんが、能登半島北部の輪島市や珠洲市の方に活断層が走っているという報道も見かけましたし、まだ余震が続いている中で、被害が大きくならないように願っています。

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続いて、リポートから 「能登地方」企業の業種別社数 のグラフを引用すると上の通りです。地方部ですので、どうしても建設業の比率が高くなっているように見えます。ただし、より広域を調査対象とする東京商工リサーチの調査結果では、建設業は企業数で18.98%、売上高では11.70%との結果が示されており、売上高のシェアが企業数のシェアよりも小さいわけですから、規模の小さな建設業者が多い印象を持ちます。同じ東京商工リサーチの調査結果では、売上高に占める製造業の比率が22.18%と帝国データバンクのリポートにある企業数よりも大きなシェアを示していて、サプライチェーンへの影響も懸念されるところです。

いずれにせよ、現地では政府や自治体の援助が行き届かず、生存すら脅かさかねない状況の中で、時事通信などの報道によれば、まるで被災地の実態の隠蔽を目的とするがごとき被災地視察の自粛が与野党6党で合意されています。こういった政府・自治体や国会の動きの鈍さを考えると、経済情報なりとも現地に関する情報が少しでも明らかにされるのは貴重なのかもしれません。
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2024年01月06日 (土) 14:00:00

+216千人の雇用増を記録した12月の米国雇用統計

日本時間の今夜、米国労働省から2023年12月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、直近の12月統計では+216千人増となり、失業率は前月から横ばいの3.7%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を4パラ2タイトル引用すると以下の通りです。

December jobs report: Here are 7 key takeaways
The U.S. economy added 216,000 jobs in December and the unemployment rate held steady at 3.7% as the labor market unexpectedly picked up despite high interest rates.
Here are some key takeaways from the final employment report of the year.
Job growth was unexpectedly strong last month...But
The payroll gains easily topped the 175,000 forecast by economists in a Bloomberg survey. But the strong showing was offset by downward revisions totaling 70,000 to job gains in October and November.
The bottom line: mostly a wash, economists said.
Job growth slowed in 2023
Employers added 2.7 million jobs, or 225,000 a month, last year. That was down from 4.8 million, or 399,000 a month, in 2022 as a post-COVID surge in the economy faded. The pullback is consistent with the Federal Reserve's goal of paring back job and wage growth enough to tame inflation without sparking a recession - a feat known as a "soft landing."


いつもの通り、よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

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ということで、米国の雇用は非農業部門雇用者の増加が、ひとつの目安とされる+200千人を2か月連続でした上回り、失業率は3%台後半を継続しているものの、過去にさかのぼった統計の改定から、10月の雇用者増は+105千人、11月は+173千人と、それぞれ下方改定された上に、20万人を下回っています。特に、11月統計では自動車産業などでのストライキの影響が含まれているとはいえ、12月統計は雇用における人手不足が緩和されつつあり、物価上昇とともに落ち着きを取り戻しつつある、と私は評価しています。ただ、引用した記事の3パラめにあるように、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは+175千人の雇用増を見込んでいましたので、実績はやや上振れた印象です。昨年2023年12月13日の連邦公開市場委員会(FOMC)後に公表された最新の経済見通しである Summary of Economic Projections の想定するラインから、雇用についてはやや強い印象を持ちます。従って、米国の連邦準備制度理事会(FED)は今年2024年に3回の利下げを見込んでいるという記事を見かけましたが、利下げに対するタカ派的な声が強まることはあり得ると考えられます。それが日本経済にとっては、円安是正プロセスに何らかの影響を及ぼす可能性がありますから注意が必要かもしれません。
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2024年01月05日 (金) 17:00:00

基調判断が上方修正された12月の消費者態度指数

本日、内閣府から昨年2023年12月の消費者態度指数が公表されています。12月統計では、前月から+1.1ポイント上昇し37.2を記録しています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者態度指数12月は37.2に改善、基調判断引き上げ=内閣府
内閣府が5日公表した消費動向調査によると、2023年12月の消費者態度指数は前月比1.1ポイント改善の37.2で、21年12月以来の高水準となった。内閣府は消費者マインドの基調判断を、前月の「改善に向けた動きに足踏みがみられる」から「改善に向けた動きがみられる」に上方修正した。1年後の物価が上昇すると回答した世帯の比率は、11月の91.6%から90.8%に低下した。
消費者態度指数の改善は3カ月連続。12月は、同指数を構成する4つの指標(暮らし向き、収入の増え方、雇用環境、耐久消費財の買い方判断)全てが改善した。全指標が前月から改善するのは昨年7月以来。
基調判断は、昨年9月に「足踏みがみられる」に下方修正されて以降、3カ月ぶりの変更。上方修正は昨年7月以来となる。
1年度の物価見通しは、5%以上上昇するとの回答が11月の44.6%から41.4%に減った一方、2%以上5%未満上昇するとの回答は33.0%から35.1%に増えた。内閣府では「物価が急激に上昇する見方は落ち着いたが、一方でそれなりに上昇するとみられている」としている。


いつも通り、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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消費者態度指数は今後半年間の見通しについて質問するものであり、4項目の消費者意識指標から成っています。12月統計では、その4項目すべての指標において前月差で見て上昇しており、「暮らし向き」が+1.6ポイント上昇し35.7、「耐久消費財の買い時判断」も+1.3ポイント上昇し31.4、「収入の増え方」が+0.8ポイント上昇し39.6、「雇用環境」が+0.6ポイント上昇し41.9となっています。消費者態度指数は、8~9月統計では2か月連続で低下していましたが、10月統計から3か月連続の上昇です。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「改善に向けた動きに足踏みがみられる」から「改善に向けた動きがみられる」と、先月から上方修正しています。
繰り返しになりますが、8~9月に消費者態度指数が2か月連続して低下したのは、私は物価上昇に起因する部分が大きいと感じています。同じ8~9月の期間には、「物価が上昇する」と見込む割合が93.7%とピークとなっていて、「5%以上」を見込む割合も51.1%でピークでした。その後、物価上昇を見込む割合も、さらに、5%以上を見込む割合もじわじわと低下し、12月調査では物価上昇が90.8%、5%以上も41.4%と、特に高い物価上昇を見込む割合が大きく低下しています。日本経済研究センターのESPフォーキャストなどを見ても、先行き、物価上昇率は縮小していくと見込まれており、少なくとも物価との関係では、消費者態度指数に現れる消費者マインドは改善に向かうと私は考えています。
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2024年01月04日 (木) 16:30:00

帝国データバンクによる「食品主要195社価格改定動向調査」の結果やいかに?

もう昨年のことなのですが、2023年12月29日に帝国データバンクから「食品主要195社価格改定動向調査」の結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。この調査では昨年2023年の動向と今年2024年の見通しを取りまとめています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のポイントを3点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 2023年の値上げ動向: 累計3万2396品目 バブル崩壊以後で例を見ないラッシュの1年
  2. 2024年の値上げ動向: 5月まで3891品目、23年比6割減ペース 年1~1.5万品目予想
  3. 2024年の見通し: 「人件費」由来の値上げが増加 「電気代」、「円安」再加速も懸念


一昨年来の物価高が続く中で、おそらく、今年2024年は価格上昇のペースは鈍る可能性はあるとはいえ、引き続き、食品価格の動向は注目を集めることと思います。年初早々ではありますが、リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 月別値上げ品目数 推移 のグラフを引用すると上の通りです。見れば明らかな通り、昨年2023年の食料品値上げの品目数は32千品目を越えています。一昨年2022年がおおよそ25品目を少し越えたあたりでしたので、かなり品目数として増加しています。それまで、デフレの中でほぼほぼ前年踏襲の価格設定になっていたわけですので、これだけの品目が値上げされるとかなりのインパクトがあると考えるべきです。ただ、値上げ、というか上昇率で見ても、品目数で見ても、2023年が食料品値上げのピークで、今年2024年からは沈静化に向かうと考えてよさそうです。ただし、再びデフレ期のように価格が動かないというのがいいのかどうかは議論の余地があります。

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続いて、リポートから 食品値上げ 原因別 202→24年推移 を引用すると上の通りです。引き続き、円安は値上げ要因として大きな比率を占めますが、為替そのものがすでに円安修正局面に入っている可能性が十分あるので、この要因は逆方向に効くハズです。そうでなければ、かつてのように、円高差益を消費者に還元せずに企業が溜め込むという形になってしまいます。そのうえで、為替要因を除けば、原材料高とエネルギー高は引き続き高い比率を占めているものの、帝国データバンク指摘するように、人件費という要因がクローズアップされます。デフレ期にはコストダウンが至上命令であって、ともかく人件費を削減してコストダウンに努めていましたが、これからの物価安定期には、賃上げや働き方改革などに伴う人件費の上昇を適正に価格転嫁し、中央銀行が追求するインフレ目標に沿った物価安定の下での経済の好循環に基づく拡大基調の経済運営・経営方針に転換すべき局面に差しかかっています。リポートでも指摘されているように、人件費を単なるコストアップ要因として捉えるのではなく、需要拡大をもたらす要因のひとつと見なせるかどうかがキーポイントとなります。

デフレ期には「囚人のジレンマ」に陥って、他社が賃上げして需要が維持される中で、自社だけが人件費削減というコストダウンに成功する、という見果てぬ夢を追いかけていた日本的経営なのですが、需要拡大に政府や中央銀行が経済政策の舵を切るという形でガイドラインが示されれば、決して経営マインドの問題だけではなく、経営方針も囚人のジレンマから脱する機会がありそうな気がします。
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2023年12月31日 (日) 12:30:00

Financial Times による来年2024年の予想やいかに?

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年末恒例の Financial Times 記者による来年2024年の予想 FT writers' predictions for the world in 2024 で20の質問に回答しています。まず、各テーマとその回答を列挙すると以下のとおりです。なお、各問いのナンバーはオリジナルの記事にはないのですが、出現順に私が便宜的に付与しています。
  1. Will Donald Trump become US president again? → No
  2. Will 2024 surpass 2023 as the hottest year on record? → Yes
  3. Will the Israel-Hamas war trigger a full-blown regional conflict? → No
  4. Will the US achieve a soft landing? → Yes
  5. Will Keir Starmer become UK prime minister? → Yes
  6. Will China's economic growth crash to 3 per cent or less? → No
  7. Will a change of president in Taiwan spark a Chinese attack? → No
  8. Will the US and the EU keep funding Ukraine? → Yes
  9. Will Ursula von der Leyen secure a second term as European Commission president? → Yes
  10. Will the Bank of Japan raise rates above zero? → No
  11. Will the ANC vote fall below 50 per cent in South Africa's election? → Yes
  12. Will Argentina dollarise its economy? → No
  13. Will renewables overtake coal in global electricity generation? → No
  14. Will investors go heavily back into bonds? → Yes
  15. Will X go bankrupt? → Yes
  16. Will Sam Altman be sacked again from OpenAI? → No
  17. Will capital markets reopen for IPOs? → Yes
  18. Will Novo Nordisk end the year as Europe's most valuable company? → Yes
  19. Will female pop stars out-earn the men in concert tours? → No
  20. Will Britain return the Parthenon marbles to Greece? → Yes


最初の2つの問いは常識的にそうだろうという気がします。トランプ氏が米国大統領に返り咲くことはないでしょうし、気候変動は一向に緩和されることなく来年も気温は上がり続けることでしょう。4番目と6番目も、やや期待を込めてながら、そうなのだろうと思います。米国経済は景気後退に陥ることなくソフトランディングに成功するでしょうし、中国経済は+3%レベルにまで成長率を落ち込ませることはないような気がします。でも、米国経済がマイナス成長を記録する可能性は大いにありますし、中国経済も+5%を下回る成長率に一時的に落ち込むことは十分考えられます。
問題は10番目と15番目ではなかろうかと私は考えています。10番目の日銀による金利引上げは、おそらく、私やFinancial Times記者のような常識的なエコノミストであれば日銀による金利引上げはあり得ない、と考えるのでしょうが、現在の国内のエコノミスト界隈の雰囲気はやや異常ですから、可能性としては3割くらいはあるものと私は覚悟しています。ツイッタを引き継いだXが破産する可能性は何ともいえません。私には判りません。
さて、来年の日本と世界の経済やいかに?
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2023年12月28日 (木) 16:00:00

3か月ぶりに減産を記録した鉱工業生産指数(IIP)と高い伸びが続く商業販売統計をどう見るか?

本日は、役所のご用納めで年末最後の閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも11月統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.9%の減産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+5.3%増の13兆8190億円を示した一方で、季節調整済み指数は前月から+1.0%の増加を記録しています。まず、日経新聞のサイトなどから各統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、11月は0.9%低下 3カ月ぶりマイナス
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(2020年=100、季節調整済み)速報値は104.0となり、前月比で0.9%低下した。自動車工業や電気・情報通信機械工業が振るわず、3カ月ぶりのマイナスとなった。
QUICKがまとめた民間エコノミスト予測の中心値は前月比1.7%の下落だった。28日の発表では全15業種のうち11業種が低下した。生産の基調判断は「一進一退」で、10月の表現を据え置いた。
2カ月連続で上昇していた自動車工業は前月比で2.5%のマイナスとなった。小型乗用車や自動車用エンジンが伸び悩んだ。
電気・情報通信機械工業は3.5%低下した。10月に海外向けに大きな取引があった反動で、宇宙や軍事関連のレーダー装置が落ち込んだ。コンベヤーや水管ボイラーといった汎用・業務用機械工業は3.8%下落した。
上昇した4業種のうち、生産用機械工業は1.6%のプラスとなった。国内外問わず半導体製造装置の出荷が好調だった。プラスチック製品工業は0.5%上昇した。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は12月に前月比で6.0%のプラスを見込む。1月は7.2%のマイナスになる見通しだ。生産計画は上振れする傾向があり、補正後の試算値は12月が前月比3.2%の上昇となる。
経産省の担当者は「金利上昇による世界経済の下振れリスクや、物価上昇の影響に引き続き注視する必要がある」と説明した。
小売業販売額、11月は前年比+5.3% 値上げで食品販売増加=経産省
経済産業省が28日に発表した11月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比5.3%増となった。ロイターの事前予測調査では5.0%増が予想されていた。値上げで食品販売額が増加したほか、自動車の納車状況改善などが寄与した。
業種別の前年比は、自動車が11.3%増、機械器具11.0%増、飲食料品5.8%増など。寄与度が大きかったのは飲食料品と自動車だった。
業態別の前年比は、ドラッグストア9.0%増、百貨店6.6%増、スーパー3.8%増、家電大型専門店3.3%増、ホームセンター3.1%増、コンビニ0.1%増。
ドラッグストアは食品や家庭用品・日用消耗品などが伸びた。物価高の影響で「より安い食品をまとめ買いする需要から、客層が広がっている」(経産省幹部)という。
百貨店は衣料品が増加、衣料品やインバウンドが寄与した。
スーパーは食料品販売が値上げの影響で増えたが「購入点数などで買い控えの影響は続いている」(経産省)という。


いくつかの統計を報じた記事ですので、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は予測中央値で▲1.7%、上限でも▲1.0%の減産でしたので、実績の前月比▲0.9%の減産は、コンセンサスよりもやや上振れしています。上のグラフでも明らかな通り、まさに、生産は横ばい状態が続いていて、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「生産は一進一退で推移している」と前月から据え置いています。ただ、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足下の12月は補正なしで+6.0%の増産、上方バイアスを除去した補正後でも+3.2%の増産となっていますが、他方で明けて2024年1月は▲7.2%の減産ですので、まさに「一進一退」という気がします。経済産業省の解説サイトによれば、2023年11月統計での生産は、自動車工業の前月比▲2.5%、寄与度▲0.36%をはじめ、我が国のリーディング産業である電気・情報通信機械工業では前月比▲3.5%の減産、寄与度は▲0.30%、汎用・業務用機械工業では、▲3.8の原産、寄与度▲0.30%パーセントポイントでした。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。見れば明らかな通り、小売業販売は堅調な動きを続けています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、かなり機械的に判断している経済産業省のリポートでは、直近の11月統計までの3か月後方移動平均の前月比は▲0.1%の低下となっているのですが、「上昇傾向」で据え置いています。さらに、消費者物価指数(CPI)との関係では、今年2023年11月統計ではヘッドライン上昇率も生鮮食品を除くコア上昇率も、前年同月比で+2%台半ばないし後半のインフレを記録していますが、小売業販売額の11月統計の+5.3%の増加は軽くインフレ率を超えていて、実質でも小売業販売額は前年同月比でプラスになっている可能性が十分あります。ただ、こういった小売販売額がホントに国内需要に支えられているかどうかは疑問があります。すなわち、インフレの影響は国内では消費の停滞をもたらす可能性が高く、したがって、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより小売業販売額の伸びが支えられている可能性があります。したがって、国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性が否定できません。私の直感ながら、例えば、引用した記事にもあるように、スーパーの販売額が+3.8%で小売業販売額平均の+5.3%を下回っている一方で、百貨店やドラッグストアの伸びが高いのが、インバウンドの象徴のような気もします。引用したロイターの記事で、「スーパーは食料品販売が値上げの影響で増えたが『購入点数などで買い控えの影響は続いている』」というのも気がかりです。

繰り返しになりますが、今日はお役所のご用納めで経済指標についても年内最後の公表ではないかと思います。今年2023年を振り返ってみると、賃金上昇が物価の高騰に追いつかない状態でした。厚生労働省の毎月勤労統計によれば、昨年2022年4月から実質賃金は前年同月比でマイナスを続け、直近で利用可能な2023年10月統計まで1年半に渡ってマイナスが続いています。他方で、法人企業統計に見る企業利益は増加していて、すでに利益剰余金はGDPに匹敵する500兆円半ばに達しています。国民生活を犠牲にして企業利益が積み上がっているとしかいいようがありません。来年2024年はこういったネオリベな傾向を反転させられるような1年になって欲しいと願っています。
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2023年12月27日 (水) 11:00:00

日本生産性本部による「生産性評価要因の国際比較」やいかに?

先週金曜日の12月22日、日本生産性本部から「生産性評価要因の国際比較」と題するリポートが明らかにされています。まず、長くなりますが、リポートから[要約]を3点引用すると以下の通りです。

[要約]
  1. 日本生産性本部は、生産性常任委員会(委員長: 福川伸次 地球産業文化研究所顧問/東洋大学総長)に生産性を評価する専門委員会(委員長: 宮川努 学習院大学教授)を設置し、生産性評価要因に関する検討を行った。生産性向上の原動力となる①IT・デジタル化、②教育・人材、③イノベーションの3要因、付加価値創出の持続可能性を問う、④環境、⑤所得分配、⑥サプライチェーンの3要因から生産性を評価し、OECD加盟国及びOECD非加盟のG20諸国の合計46カ国を対象に国際比較を行っている。
  2. 生産性評価要因から日本の現状をみると、「教育・人材」は人材投資(GDP比)などに課題があるものの、良好な学力成績などを反映し、米国やドイツなどより優れている。一方、「IT・デジタル化」や「イノベーション」は、今回比較対象とした46カ国平均こそ上回るものの、OECD加盟国平均並みとなっている。
  3. 日本の生産性が低い要因としては、「付加価値創出力」の低さが挙げられる。これは、ICT資産当たり付加価値(IT・デジタル化」)・STEM人材当たり付加価値(教育・人材)・研究開発費(ストックベース)当たり付加価値(イノベーション)として、それぞれの要素がどれだけ付加価値の創出につながっているかを定量化したもの。いずれの指標も米国やドイツのみならず46カ国平均を下回っており、日本の付加価値を創出する力が国際的にみて低いことを示しており、生産性向上にむけた課題になっている。


従来から、私は日本の労働力は世界的にも優れた教育などから、潜在的な生産性は決して低くないと主張してきましたし、いくつかテーブルを参照しつつ、簡単にこのリポートを取り上げておきたいと思います。

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まず、上のテーブルは、労働生産性とそれを評価する要因、すなわち、[要約]の第1点目に上げられていた6項目のスコアを取りまとめています。リポートp.9から 生産性評価要因のスコア を引用しています。労働生産性は確かにOECD平均と比べても異常なくらいに低いのですが、その要因として生産性本部が上げた6要因のうち、IT・デジタル化がわずかにOECD平均を下回っているだけで、ほかの5要因はすべてOECD平均を上回っています。特に、教育・人材は大きく上回っているのが読み取れます。実に、不可思議極まりありません。労働生産性を規定する6要因のうち5要因が平均以上であるにもかかわらず、しかも、教育・人材に至ってはOECD+G20の46か国中で11位の位置にあるにもかかわらず、それでも、これら6要因の結果として出てくる労働生産性はOECD平均を大きく下回っているわけです。実に不可解・不思議な現象といわざるを得ません。

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続いて、上のテーブルは、6要因のサブカテゴリ別のスコアを取りまとめています。リポートp.11から サブカテゴリ別のスコア を引用しています。OECD平均を下回っているIT・デジタル化の要因を詳しく見ると、基盤(インフラ)と政府の2項目はOECD平均を大きく上回っており、産業化と付加価値総出力が、逆に、大きく下回っていることが明らかです。項目別に見て、政府部門は十分な役割を果たしている一方で、企業部門が大きく立ち遅れているといわざるを得ません。私のドメインである教育・人材についても、同様に、学校教育成績や社会人学力成績は極めて良好ながら、人材投資・育成や付加価値総出力が大きく平均を下回っています。明らかに、政府や学校や労働者の責任ではなく、企業の責任の範囲で日本の労働生産性が低い原因を作っているとしかいいようがありません。イノベーションの付加価値総出力がさらに悲惨な状況であることはテーブルから明らかです。リポートp.11でも、「研究開発に多くを投じている割にそれが付加価値創出に結びついていないことを意味する。」と指摘しています。企業の研究開発投資がうまくいっていないわけです。

公表されたリポートは、繰り返しになりますが、日本の人材の潜在的な優秀性を明らかにするものであり、企業部門において日本の労働力・人的資源を活かしきれていない実情を浮き彫りにしています。特に、イノベーション活動はひどい状況です。これは、いわゆる「選択と集中」の失敗によるものといわざるを得ません。選択先を失敗したわけではありません。逆に、イノベーションのためのは広くリソースを配分する必要があるのですが、成功しそうなところだけに集中的にリソースを配分しようとして失敗しているわけです。言葉を変えれば、「当たる宝くじを買う」ことを狙っているわけで、私には極めて非現実的な戦略に見えます。幅広い対象に向かって実施している教育と真逆の方向を志向するイノベーション戦略の転換も必要です。
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2023年12月26日 (火) 12:30:00

まずまず底堅い雇用統計と2%台の伸びが続く企業向けサービス価格指数(SPPI)

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率など、雇用統計が、また、日銀から企業向けサービス価格指数 (SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。雇用統計では、失業率は前月から横ばいの2.5%を記録した一方で、有効求人倍率は前月から▲0.02ポイント低下し1.28倍となっています。SPPIはヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月と同じ+2.4%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについても前月と同じ+2.4%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

11月の求人倍率1.28倍、前月比0.02ポイント低下
厚生労働省が26日に発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.28倍で前月から0.02ポイント低下した。原材料費の高騰を受けて求人を控える動きが広がっており、堅調だった宿泊・飲食サービス業でも求人が大幅に減少した。
総務省が同日発表した11月の完全失業率は2.5%で前月と同水準だった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。11月の有効求職者数は前月比0.2%上昇した一方、有効求人数は1.5%減少した。
景気の先行指標とされる新規求人数(原数値)は前年同月比で4.8%マイナスとなった。前年同月比の下がり幅は宿泊・飲食サービス業が最も高くマイナス12.8%で、製造業でも10.5%下がった。
宿泊・飲食サービス業は、新型コロナウイルス禍から回復傾向にあった22年11月の求人の伸びの反動が大きかった。
完全失業者数は169万人で、前年同月比で4万人増えた。就業者数は6780万人で56万人伸び、16カ月連続の増加となった。仕事に就かず職探しもしていない非労働人口は4055万人だった。21カ月連続で減少した。
企業向けサービス価格、11月2.3%上昇 宿泊けん引
日銀が26日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は110.2と、前年同月比2.3%上昇した。上昇率は10月(2.3%)から横ばいだった。宿泊サービスの上昇や人件費転嫁の動きに支えられ、4カ月連続で2%台の上昇率を維持した。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格変動を表す。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともに消費者物価指数(CPI)の先行指標とされる。調査対象となる146品目のうち価格が前年同月比で上昇したのは108品目、下落は22品目だった。
宿泊サービスはインバウンド(訪日外国人)など人流の回復で、前年同月比51.8%上がった。22年10月に始まった政府の全国旅行支援が各地で終わったことも、上昇率を押し上げる要因となった。情報通信も2.4%上昇した。システムエンジニア(SE)職の賃上げを価格に反映する動きが続いている。
国際航空貨物輸送は前年同月比36.9%下落した。ウクライナ情勢や新型コロナウイルス禍の落ち着きで便数が回復し、価格が下がってきた。下落幅は10月(40.7%下落)より3.8ポイント縮小した。



いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、いくつかの統計を並べましたので、やや長くなってしまいました。続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。なお、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、失業率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月から横ばいの2.5%と見込まれ、有効求人倍率に関する日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも、前月から悪横ばいの1.30倍と見込まれていました。実績では、失業率は予想と同じ横ばいながら、有効求人倍率はわずかに悪化し、予測レンジの下限である1.29倍を下回りました。でも、総合的に見て、「こんなもん」という気がします。いずれにせよ、足元の統計は改善がやや鈍い面もあるとはいえ、雇用は底堅いと私は評価しています。季節調整済みのマクロの統計で見て、昨年2022年年末12月から直近の11月統計までの期間で、人口減少局面に入って久しい中で労働力人口は+56万人増加し、非労働力人口は▲81万人減少しています。就業者は+49万人増の一方で、完全失業者は+6万人しか増加しておらず、これには積極的な職探しの結果の増加も含まれていると考えるべきです。就業者の内訳として雇用形態を見ると、正規が+28万人増の一方で、非正規が+17万人増ですら、わずかながら質的な雇用も改善しているといえます。先進各国がこのまま景気後退に陥らずにソフトランディングに成功すれば、我が国の雇用も大きく悪化するとは考えにくいのではないかと思います。ですので、問題は量的な雇用ではなく賃金動向です。その意味でも、来年の春闘が気にかかります。

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続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは上の通りです。上のパネルはヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、下のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。モノの方の企業物価指数(PPI)の上昇トレンドは2022年中に終了した可能性が高い一方で、その名の通りのサービスの企業向けサービス物価指数(SPPI)はまだ上昇トレンドにあるのが見て取れます。なお、影を付けた部分は、景気後退期を示しています。上のグラフで見ても明らかな通り、企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドライン指数の前年同月比上昇率は、今年2023年7月から+2%台まで加速し、本日公表された11月統計では+2.3%に達しています。もちろん、+2%前後の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高いながら、日銀の物価目標、これは生鮮食品を除く消費者物価上昇率ですが、物価目標の+2%近傍であることも確かです。加えて、下のパネルにプロットしたように、モノの物価である企業物価指数のうちの国内物価のグラフを見ても理解できるように、インフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速する局面ではないんではないか、と私は考えています。繰り返しになりますが、ヘッドラインSPPI上昇率にせよ、国際運輸を除いたコアSPPIにせよ、日銀の物価目標とほぼマッチする+2%程度となっている点は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて11月統計のヘッドライン上昇率+2.3%への寄与度で見ると、宿泊サービスや土木建築サービスや機械修理などの諸サービスが+1.11%ともっとも大きな寄与を示しています。+2.3%のほぼ半分です。引用した記事にもある通り、特に、宿泊サービスは前年同月比で+51.8%と大きな上昇となっています。ほかに、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.54%、加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている石油価格の影響が大きい道路旅客輸送や国内航空旅客輸送や鉄道旅客輸送などの運輸・郵便が+0.22%のプラス寄与となっています。リース・レンタルについても+0.19%と寄与が大きくなっています。情報通信の価格上昇は、引用した記事にもある通り、システムエンジニア(SE)などの賃上げの反映という面があります。

最後にご参考まで、メディアで盛んに報道された1人当りGDPがG7で最下位、OECD加盟国で21番目という記事、例えば、朝日新聞「日本の名目GDP,割合最低 80年意向 1人あたりはG7最下位」日経新聞「22年の1人あたりGDP、G7で最下位 円安で順位下げる」などの記事の1次資料は、内閣府から記者発表された以下のリンクの通りです。
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2023年12月25日 (月) 17:00:00

リクルートワークス研究所による「採用見通し調査」の結果やいかに?

先週水曜日の12月20日、リクルートワークス研から「ワークス採用見通し調査」の結果が明らかにされています。大学生と大学院生の2025年新卒を対象とする調査です。
リポートによれば、新卒採用数が「増える」企業の割合は15.6%であり、「減る」は4.8%であった。「増える」から「減る」を差し引いたポイント差を日銀短観のようにDIと呼ぶと、DIは+10.8%ポイントで、2024年卒の+11.9%ポイントから減少しています。「増える」は2024年卒の15.5%から横ばいなのですが、「減る」が2024年卒の3.6%から+1.2%ポイント増加して2025年卒では+4.8%となり、DIが減少しています。リポートから 2025年卒者の新卒採用見通し のグラフを引用すると下の通りです。

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少し詳しく見ると、従業員規模別、業種別ともにすべての区分において「増える」が「減る」を上回っており、DIはプラスを記録しています。従業員規模別では、1000人未満企業+9.8%ポイントに比べて1000人以上の大規模企業+18.3%ポイントの方がDIが大きくなっています。業種別では、機械器具製造業(+15.5%ポイント)、情報通信業(+14.8%ポイント)、飲食店・宿泊業(+14.4%ポイント)、小売業(+14.2%ポイント)などでDIが大きくなっています。

大学生・大学院生の新卒採用は順調に推移しているようで、大学教員としては心強い限りです。
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2023年12月22日 (金) 13:30:00

上昇率が大きく縮小した11月の消費者物価指数(CPI)をどう見るか?

本日、総務省統計局から11月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.5%を記録しています。前年比プラスの上昇は27か月連続ですが、先月10月統計の+2.9%のインフレ率からは上昇幅が大きく縮小しています。+3%を下回る上昇が続いていますが、日銀のインフレ目標である+2%をまだ上回る高い上昇率での推移が続いています。ヘッドライン上昇率も+2.8%に達している一方で、エネルギーや食料品の価格高騰からの波及が進んで、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+3.8%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価11月2.5%上昇 伸び率2カ月ぶり縮小
総務省が22日発表した11月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が106.4となり、前年同月比で2.5%上昇した。食料品の価格転嫁が一服し、伸び率は2カ月ぶりに前月から縮小した。22年7月の2.4%以来16カ月ぶりの低水準となる。
QUICKが事前にまとめた上昇率の市場予測の中央値は2.5%で同じだった。
前年同月比の上昇は27カ月連続。日銀の物価目標である2%を上回る水準での上昇が続く。10月の上昇率は2.9%だった。
生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数は3.8%上昇した。前月からの伸び率の縮小は3カ月連続となる。
生鮮食品を含む総合指数は2.8%上がった。猛暑による生育不良で上昇していたトマトやブロッコリーなどの価格が落ち着き、伸び率は2カ月ぶりに縮んだ。
総務省によると、政府の電気・ガスの料金抑制策がなければ、生鮮食品を除いた総合指数の上昇率は3.0%だった。政策効果で物価の伸びを0.5ポイント抑えていたことになる。
品目別では生鮮食品を除く食料品が前年同月比で6.7%上昇と10月の7.6%から伸び率を縮めた。伸びの縮小は3カ月連続となる。鶏卵は26.3%、外食のフライドチキンは19.2%それぞれ高まった。
全体をモノとサービスに分けると、サービスの上昇率は2.3%と10月から0.2ポイント伸びが加速した。消費増税の時期を除くと1993年10月の2.4%上昇以来30年1カ月ぶりの高水準となった。
宿泊料は62.9%上がった。観光需要の回復に加え、政府の観光振興策「全国旅行支援」が各地で終了していることが影響した。このほか予備校などの教育費が6.0%、自宅などの警備費が4.2%上昇した。
電気代は低下している。下落率は11月は18.1%で、10月の16.8%からマイナス幅が広がった。燃料価格の低下に加え、政府の料金抑制策が押し下げている。都市ガス代も16.8%下がった。


何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.5%の予想でしたので、実績の+2.5%の上昇率はまさにジャストミートしました。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、2月統計から前年同月比マイナスに転じていて、本日発表された10月統計では前年同月比で▲10.1%に達し、ヘッドライン上昇率に対する寄与度も▲0.87%の大きさを示しています。先月の10月統計ではこの寄与度が▲0.75%ありましたので、11月統計でコアCPI上昇率が10月統計から▲0.4%ポイント縮小した背景は、こういったエネルギー価格の動向にあります。すなわち、11月統計ではエネルギーの寄与度差が▲0.13%に達しています。たぶん、四捨五入の関係で寄与度差は寄与度の引き算と合致しません。悪しからず。特に、そのエネルギー価格の中でもマイナス寄与が大きいのが電気代です。エネルギーのウェイト712の中で電気代は341と半分近くを占め、10月統計では電気代の寄与度が▲0.69%あったのが、11月統計では▲0.75%に拡大し、▲0.06%ポイントの寄与度差を示しています。統計局の試算によれば、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の影響を寄与度でみると、▲0.49%に達しており、うち、電気代が▲0.41%に上ります。他方で、政府のガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は7月統計から上昇に転じ、直近の11月統計では+3.9%となっています。中東の地政学的なリスクも高まっています。すなわち、ガザ地区でのイスラエル軍の虐殺行為、親イラン武装組織フーシによる商船の襲撃なども、今後、どのように推移するかについても予断を許しませんし、食料とともにエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。なお、食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮野菜が+0.20%、生鮮果物が+0.17%の大きな寄与を示しています。引用した記事にもあるように、猛暑の影響と見られます。コアCPIの中では、調理カレーなどの調理食品が+0.28%、アイスクリームなどの菓子類が+0.25%、フライドチキンなどの外食が+0.19%、牛乳などの乳卵類が+0.18%、食パンなどの穀類も+0.17%、などなどとなっています。

何度も書きましたが、現在の岸田内閣は大企業にばかり目が向いていて、東京オリンピックなどのイベントを開催しては電通やパソナなどに多額の発注をかけましたし、物価対策でも石油元売とか電力会社などの大企業に補助金を出しています。こういった大企業向けの選別主義的な政策ではなく、たとえ結果としては同じであっても、国民に対して出来るだけ普遍主義的な政策を私は強く志向しています。物価対策であれば、例えば、消費税減税・消費税率引下げ、あるいは、物価上昇に見合った賃上げを促す政策が必要であると私は考えます。
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2023年12月21日 (木) 11:00:00

リクルートによる11月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給やいかに?

来週火曜日12月26日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートによる11月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。参照しているリポートは以下の通りです。計数は正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、以下の出典に直接当たって引用するようお願いします。


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いつものグラフは上の通りです。アルバイト・パートの募集時平均時給の方は、前年同月比で見て、今年2023年に入って8~9月と+1%台の増加が続いていましたが、10月には+2.3%増となった後、11月も+2.5%増を記録しています。しかし、これくらいでは+3%近い消費者物価指数(CPI)の上昇率には追いついておらず、実質賃金はマイナスと想像されますので、もう一弾の伸びを期待してしまいます。でも、時給の水準を見れば、一昨年2021年年央からコンスタントに1,100円を上回る水準が続いており、かなり堅調な動きを示しています。他方、派遣スタッフ募集時平均時給の方も10~11月には+2%を上回る増加を示し、直近の11月には+2.3%増に達しています。
まず、三大都市圏全体のアルバイト・パートの平均時給の前年同月比上昇率は、繰り返しになりますが、11月には前年同月より2.5%、前年同月よりも+29円増加の1,178円を記録しています。職種別では、「フード系」(+49円、+4.5%)、「販売・サービス系」(+40円、+3.6%)、「営業系」(+40円、+3.4%)、「製造・物流・清掃系」(+20円、+1.7%)、「事務系」(+12円、+1.0%)で上昇を示した一方で、「専門職系」(▲3円、▲0.2%)だけは小幅に減少しています。なお、地域別では関東・東海・関西のすべての三大都市圏で前年同月比プラスとなっています。
続いて、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、11月には前年同月より+2.3%、+37円増加の1,654円になりました。過去最高額だそうです。職種別では、「IT・技術系」(+83円、+3.8%)、「製造・物流・清掃系」(+39円、+2.9%)、「営業・販売・サービス系」(+30円、+2.0%)、「オフィスワーク系」(+25円、+1.6%)、「クリエイティブ系」(+10円、+0.5%)で上昇を示した一方で、「医療介護・教育系」(▲22円、▲1.5%)だけは減少を示しています。なお、地域別でも関東・東海・関西のすべての三大都市圏でプラスとなっています。

アルバイト・パートや派遣スタッフなどの非正規雇用は、従来から、低賃金労働とともに「雇用の調整弁」のような不安定な役回りを演じてきましたが、ジワジワと募集時平均時給の伸びが縮小しています。我が国景気も回復・拡大局面の後半に差しかかり、雇用の今後の動向が気がかりになり始めるタイミングかもしれません。
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2023年12月20日 (水) 12:30:00

2か月連続で赤字を記録した11月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から11月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比▲0.2%減の8兆8195億円に対して、輸入額は▲11.9%減の9兆5965億円、差引き貿易収支は▲7769億円の赤字を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

貿易赤字2カ月連続、11月7769億円 赤字幅は62.2%縮小
財務省が20日発表した11月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7769億円の赤字だった。赤字は2カ月連続で、赤字幅は前年同月に比べて62.2%縮小した。資源高が落ち着いて輸入額が減った。
全体の輸入額は9兆5965億円で11.9%減った。減少は8カ月連続。輸出額は8兆8195億円と0.2%減り、3カ月ぶりに減少に転じた。
輸入は原油が1兆832億円で11.5%減、液化天然ガス(LNG)が4938億円で34.1%減、石炭が4132億円で48.0%減となり、資源関連が全体を押し下げた。
原油はドル建て価格が1バレルあたり93.8ドルと前年同月から6.5%下がった。円建て価格は1キロリットルあたり8万8741円と4.0%下落した。
地域別にみると米国が1兆101億円で3.5%減、アジアが4兆6530億円で6.7%減だった。
輸出は半導体等製造装置が2833億円で10.6%減少した。米国向けハイブリッド車など自動車や半導体等電子部品は増えた。
地域別では米国向けが1兆8144億円で5.3%増、アジア向けが4兆6023億円で4.1%減だった。
11月の貿易収支は季節調整値でみると4088億円の赤字となった。輸入が前月比で2.7%減の8兆9762億円、輸出が1.8%減の8兆5673億円だった。赤字幅は18.4%縮小した。


やたらと長くなってしまいましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、𥬡兆円近い貿易赤字が見込まれていて、予測レンジの上限、というか、もっとも赤字額の小さい額が▲8878億円でしたので、この上限を超えた小さな赤字、ということになります。ただ、それほど大きなサプライズではなかった気がします。他方、引用した記事の最後のパラにあるように、季節調整済みの系列の統計で見て、まだ11月統計でも赤字幅は縮小したとはいえ▲4000億円を超える赤字が継続していることも確かです。季節調整していない原系列の統計で見ても、季節調整済みの系列で見ても、グラフから明らかな通り、輸出額の伸びではなく輸入額の減少が貿易赤字縮小の原因です。貿易赤字が続いていますが、いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、貿易収支が赤字であれ黒字であれ、輸入は国内生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。ただ、私の知る限り、少なくないエコノミストは貿易赤字は縮小に向かうと考えている可能性が十分あります。
11月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が大きく減少しています。すなわち、原油及び粗油は数量ベースで▲7.8%減、金額ベースで▲11.5%減となっています。この差は単価の低下です。LNGは原油からの代替が進んだのか、数量ベースでは▲3.9%減ながら、金額ベースでは▲34.1%と大きな減少となっています。価格は国際商品市況で決まる部分が大きく、そこでの価格低下なのですが、少し前までの価格上昇局面でこういったエネルギー価格に応じて省エネが進みましたので、原油からの代替が進んだ可能性のあるLNGは減少幅が原油及び粗油ほど大きくはないとしても、こういったエネルギーの輸入については価格と数量の両面から輸入額が減少していると考えるべきです。また、ある意味で、エネルギーよりも注目されている食料について、穀物類は数量ベースのトン数では+10.7%増となっている一方で、金額ベースでは▲11.8%減と単価に従って輸入額が減少しています。輸出に目を転ずると、輸送用機器の中の自動車は季節調整していない原系列の前年同月比で数量ベースの輸出台数は+9.0%増、金額ベースでは+16.3%増と大きく伸びています。半導体部品などの供給制約の緩和による生産の回復が寄与しています。自動車や輸送機械を別にすれば、一般機械▲10.2%減、電気機器▲0.3%減と、自動車以外の我が国リーディング・インダストリーの輸出額はやや停滞気味です。ただし、こういった我が国の一般機械や電気機械の輸出の停滞はソフトランディングに向かっている米国をはじめとする先進各国に起因するものではなく、むしろ、11月統計を見る限り、中国向け輸出額の減少が寄与してい可能性があります。すなわち、例えば、北米向け輸出額は前年同月比で6.6%増、西欧向けも+1.1%増と伸びている一方で、中国向けは▲2.2%減を記録しています。11月単月の統計ながら、北米向け輸出が1.9兆円、西欧向けが1.0兆円に対して、中国向け輸出は1.6兆円に達していますので、不動産業界も含めて中国の景気動向が気にかかるところです。
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2023年12月19日 (火) 11:00:00

帝国データバンクによる「2023年冬シーズン クリスマスケーキ価格調査」の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ながら、12月5日に、帝国データバンクから「2023年冬シーズン クリスマスケーキ価格調査」の結果が明らかにされています。昨日に続いて、季節の飲み食いの価格ということで2日連続で注目しています。

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上の図表は、リポートから クリスマスケーキの価格推移と値上げ幅2022・23年比較 を引用しています。昨年2022年から2023年にかけての物価上昇の影響で、というか、物価上昇のものによりクリスマスケーキも値上がりをしています。2022年は前年比で+204円、+5.2%の上昇に過ぎませんでしたが、今シーズンは+325円、+7.8%に及んでいて、値上げ幅も上昇率も昨シーズンを上回っています。エネルギー価格は一応、落ち着きを見せましたし、政府の物価対策によって石油元売や電力会社への補助金により、価格の安定が図られていましたが、クリスマスケーキをはじめとする食料品の値上がりはまだ続いています。リポートでも、「鶏卵、砂糖や牛乳など、主要原材料の多くが足元で前年比1.2倍前後の値上げとなったほか、猛暑による植栽遅れといった影響を受けたイチゴは最大で1.5倍超に高騰している」と指摘しています。ある意味で、価格転嫁が順調に進んでいるのかもしれませんが、賃金が物価上昇に追いつかない中で、リポートでも、「値上げ疲れ」という言葉で食料品値上げの限界を示唆しています。消費税率引下げは政策オプションにならないんでしょうか?
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2023年12月18日 (月) 17:00:00

リクルートのホットペッパーグルメ外食総研による忘年会・新年会のアンケート調査結果やいかに?

リクルートの外食市場に関する調査・研究機関であるホットペッパーグルメ外食総研が、先週金曜日の12月15日、忘年会・新年会の消費者アンケート調査の結果を明らかにしています。それによれば、「アフターコロナの忘・新年会への参加回数23.4%が昨年度より『増加しそう』予算は1回当たり平均4,685円で、過去最高額を予測」とのことです。まず、リクルートのサイトから調査結果のポイントを3点引用すると以下の通りです。

要約
POINT1. 今年度の忘・新年会への参加回数は昨年度より増加見込みの人が23.4%
POINT2. 予算(1回当たり)の想定は4,685円(前年比+159円)と過去最高額
POINT3. 「会社・仕事関係」の忘・新年会の予定は32.9%。顕著な回復傾向


回収数が1万件近くの9,849件に上っていますし、私の実感にも沿った結果だと受け止めています。プレスリリースから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、プレスリリースから 忘・新年会への参加回数の見込み のグラフを引用すると上の通りです。「3圏」とは、首都圏・関西圏・東海圏の都市部であり、「昨年度より大きく増えそう」と「昨年度よりやや増えそう」の合計である増加派は計23.4%、対して、「昨年度より大きく減りそう」と「昨年度よりやや減りそう」の合計である減少派は計1.5%と、増加派が減少派を大きく上回っています。特に、性別年代別では、20代女性と40代男性で多くなっています。

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続いて、プレスリリースから 忘・新年会の1回当たりの参加費(支出実績)と想定予算(想定額) のグラフを引用すると上の通りです。今年の想定予算では、1回当たり「5,000円~6,000円未満」(35.7%)がもっとも多く、次いで「3,000円~4,000円未満」(19.2%)の割合が高くなっています。しかし、その差は大きいものがあります。また、今年度の平均想定予算は4,685円(前年比+159円)に上っています。

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最後に、プレスリリースから 参加する機会がありそうな忘・新年会の相手 のグラフを引用すると上の通りです。昨年や一昨年と比較して「家族・親族関係」がやや伸び悩んだ一方で、「会社・仕事関係」と「友人・知人関係」が伸びています。特に前者の「会社・仕事関係」の増加が大きく、平均的に30%を超えており、特に、30~50代の男性では「会社・仕事関係」が40%超となっています。

新型コロナウィスル感染症(COVID-19)の感染法上の分類変更もありましたし、今シーズンの忘年会・新年会は盛況のようです。
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2023年12月15日 (金) 13:00:00

リクルートのブライダル総研による「恋愛・結婚調査2023」の結果やいかに?

今週火曜日の12月12日にリクルートのブライダル総研から「恋愛・結婚調査2023」の調査結果が明らかにされています。西暦の期数年に実施されている隔年の調査です。まず、リポートから調査結果のサマリーを5項目引用すると以下の通りです。

恋愛・結婚調査2023
  • 20~40代の未婚者の中で恋人がいる人の割合は 29.7%。男女共に交際経験なしの割合が増加
  • 恋愛イメージを探ると「恋愛するなら結婚のため」という価値観が20代男女の中で広がっている
  • 結婚意向は未婚者全体で減少。また、男女で比較すると女性の方が減少幅が大きい
  • 結婚したくない理由は男性は「金銭的理由」や「扶養の責任への負担」の理由が強く、女性は「行動や時間の制限」「必要性を感じない」ことが理由として高い
  • 「職場状況や働き方」と「結婚意向」に関係がある


日本の現在の少子高齢化の大きな原因の一つである非婚化や晩婚化について考える上で、恋愛観や結婚観を確認することは極めて重要ですし、加えて、私が相手にしている大学生の近未来を見るという意味もあって、リポートから図表を引用しつつ簡単に見ておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから 恋人がいる人の割合 を引用しています。というか、実際には、恋人がいない人の割合が強調されています。2017年からのデータを見て、年を追うごとに恋人がいない割合がジワジワと増加しており、特に、男性ではとうとう2023年調査で¾を超えました。昔ながらのお見合いから結婚に至るルートが年々狭まっている気がしますから、恋愛から結婚に至るルートが同様に狭まると、ますます非婚化が進む懸念が大きくなります。

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続いて、上のグラフはリポートから 結婚意向がある人の割合 を引用しています。女性にはそれなりに「結婚願望」のようなものが男性に比べれば高かったのですが、上のグラフでいえば「(いずれは)結婚はしたい」の割合がここ数年で急速に低下しているのが見て取れます。男性は恋愛せず、女性は結婚意向が低下する、という流れになっているのが調査結果から翌理解できると思います。

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続いて、上のグラフはリポートから 結婚したくない理由・男女別のTOP5 を引用しています。男女を通じたトップは「金銭的に余裕がなくなるから」36.4%で、その次が「行動や生き方が制限されるから」35.8%となっていて、3番めの「メリットを感じないから」は24.8%と大きく差を開けられています。性別に見ると上のグラフの通り、男性は「金銭的に余裕がなくなるから」、女性は「行動や生き方が制限されるから」が、それぞれトップとなっています。

前々から私が主張しているのは、日本は他の先進国に比較して、極端に婚外子が少なく、これはこれで望ましい美点だろうと私は考えていますから、少子化を反転させるためには男女が結婚に向かう、というか、目指す必要があると考えています。例えば、現在の岸田内閣が志向しているように、子供を産んでからの子育て対策ももちろん重要なのですが、その前の結婚を成立させるための独身者への何らかの政策も考慮されるべきではなかろうか、と感じます。
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