FC2ブログ

2019年09月20日 (金) 22:50:00

消費者物価(CPI)上昇率はなぜ縮小したのか?

本日、総務省統計局から8月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し縮小して+0.5%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月全国消費者物価、0.5%上昇 2年1カ月ぶり低調
総務省が20日発表した8月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.7と前年同月比0.5%上昇した。プラスは32カ月連続だが、2017年7月(0.5%上昇)以来、2年1カ月ぶりの低い伸びとなった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.5%の上昇だった。7月は0.6%上昇だった。
原材料価格の上昇傾向を受け、菓子類など生鮮食品を除く食料品の上昇が目立ち、全体を押し上げた。人件費の高騰を値上げに転嫁する動きが目立つ外食も、上昇に寄与した。電気代も高止まりが続いているほか、新商品が発売された電気掃除機や冷蔵庫などの家庭用耐久財も上昇が目立った。総務省は「増税前の駆け込み需要が出ているかはわからない」との見解を示した。
半面、大手各社に値下げ圧力が強まっている携帯電話の通信料が物価を押し下げたほか、ガソリン価格の下落も影響した。総務省は、足元で不安定になっている原油価格の動向について「物価に原油価格の動きが反映されるまでにはタイムラグがある。中東情勢を見て動向を短期的に判断することは難しい」とした。
生鮮食品を除く総合では298品目が上昇した。下落は164品目、横ばいは61品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.7と前年同月比0.6%上昇した。生鮮食品を含む総合は101.8と0.3%上昇した。トマトやキュウリなど生鮮野菜の値下がりが物価上昇を抑えた。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入れずにコア財に含めています。政府の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

photo


ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.4~+0.6%のレンジで中心値が+0.5%でしたので、ジャストミートしたといえます。上のグラフから明らかなように、紺色の折れ線で示したコアCPI上昇率、すなわち、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は今年2019年上半期の34月の前年同月比上昇率+0.9%をピークに、ジワジワと上昇幅を縮小させ、8月には+0.5%に達したわけですが、食品とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率、上のグラフで赤い折れ線については、同じように4月の+0.4%が高いといえば高いんですが、5月から直近統計が利用可能な8月まで+0.3%の上昇が続いており、コアCPIの▲0.3%ポイントの縮小幅に比較して、わずかに▲0.1%ポイントの縮小と、少し動きに違いがあります。要するに、8月統計までのコアCPI上昇率の縮小はエネルギー価格の影響が大きい、ということになります。ですから、先月7月統計ではエネルギーの前年同月比上昇率は+0.6%とギリギリながらプラスだったんですが、本日公表の8月統計では▲0.3%の下落と、とうとうマイナスに転じてしまいました。前年同月比で見て、ガソリンの▲4.8%下落、灯油の▲1.3%下落が目につきます。ただ、エネルギー価格の動向については、国際商品市況における石油価格の影響が大きく、先日のサウジアラビアの石油施設に対する不可解な攻撃などを見るにつけ、私ごときエコノミストにはまったく予想もつきません。ただ、明らかなのは、10月から消費税率が引き上げられますので、消費税を含む物価上昇率は確実に上昇幅を拡大することになります。なお、日銀が7月31日に公表した「経済・物価情勢の展望 (展望レポート)」では、p.4 の脚注6で、「税率引き上げが軽減税率適用品目以外の課税品目にフル転嫁されると仮定して機械的に計算すると、2019年10月以降の消費者物価前年比(除く生鮮食品)は+1.0%ポイント押し上げられる」との試算を示しています。同時に同じ脚注で、教育無償化政策により2019年度▲0.3%ポイント、2019年度▲0.4%ポイント、それぞれ、押し下げられると見込んでいることも明らかにしています。

従来から、金融政策よりも石油価格に左右されがちな我が国物価動向なんですが、今週になって米国連邦準備理事会(FED)は米国連邦公開市場委員会(FOMC)にて、フェデラルファンド金利の引き下げを決めた一方で、日銀金融政策決定会合では金融政策は基本的に現状維持となっています。消費税率の引き上げを目前に、金融政策は動きようがなかった気もしますが、10月以降の景気も見極めつつ、インフレ目標の達成に必要な金融政策が望まれます。
Entry No.6357  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月19日 (木) 19:45:00

日本政策投資銀行などによる「わが国スポーツ産業の経済規模推計」の結果やいかに?

一昨日9月17日に日本政策投資銀行から「わが国スポーツ産業の経済規模推計」の結果が明らかにされています。日本政策投資銀行のほか、日本経済研究所と同志社大学も推計に加わっており、スポーツ庁と経済産業省が監修しているようです。まず、日本政策投資銀行のサイトにアップされているリポート p.9 から 表2-1. スポーツ生産額とスポーツGDP 2014~2016年 (単位:億円) のテーブルを引用すると以下の通りです。

photo


ということで、上のテーブルを見れば一目瞭然ながら、日本版スポーツサテライトアカウントの推計として、スポーツGDPは2016年で7.6兆円に上り、前年から+1.9%の伸びを示し、我が国GDP総額の1.4%を占める、との結果となっています。引用はしないものの、上のテーブルのある p.9 の前のページにあるリポートの p.7 にやや詳しい推計フローチャートが示されていて、基本的に、SNA産業連関表におけるコモ6桁くらいの細品目別のシェアを用いて推計されているようですので、あくまでSNA統計の内数であって、統計に漏れが生じているわけではないようです。
このGDP総額に占める2%弱のスポーツGDP比率がどれくらいの大きさなのかの実感がわかないんですが、そこは配慮されていて、リポートの p.17 から欧州との国際比較が示されています。詳細なテーブルの引用はしませんが、日本のスポーツGDPとスポーツ産業雇用者数を欧州28か国と比較すると、まず、日本のスポーツGDPは額としてドイツに次いで欧州28か国中2番目の大きさになり、また、スポーツ産業雇用者数も、ドイツ・英国に次いで3番目の規模となります。他方で、スポーツGDPのGDP総額に占める比率、また、スポーツ産業雇用者数が国内総雇用者数に占める比率を見ると、日本のスポーツGDPは欧州28か国中でスウェーデンとイタリアの間の14~15番目と、ほぼほぼ欧州28か国の中間に位置し、日本のスポーツ産業雇用者数はラトビアとポルトガルの間の25~26番目に位置することになります。欧州との比較ながら、より少ない雇用者でより大きいGDPを産出しているわkですから、我が国スポーツ産業雇用者の生産性は欧州と比較してかなり高い、という結論が得られそうです。従来から、私は日本のサービス産業の生産性が低いとの通説は誤っており、かなりの程度に計測ミスがある可能性を指摘して来ましたが、ごく狭いカテゴリーながら、スポーツ産業雇用者では私の主張が当てはまるような気がします。

最後に、生産性も含めて、私がやや不安に感じているのは、スポーツ産業の定義にどこまで公営ギャンブルが含まれているかです。具体的には競馬や競輪などです。まさか、公営ギャンブルですらないパチンコは入っていないことと思いますが、スポーツなのか、ギャンブルなのか、リポートを読む限りでは、私には判然としない部分が残りました。ただ、「公営競技」に関する言及は確かにありますから、私の読解力が不足しているような気もします。
Entry No.6355  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月18日 (水) 19:25:00

2か月連続で貿易赤字を計上した8月貿易統計の先行きやいかに?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲8.2%減の6兆1410億円、輸入額も▲12.0%減の6兆2773億円、差引き貿易収支は▲1363億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易収支、2カ月連続赤字 中国向け輸出12%減
財務省が18日発表した8月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1363億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。中国向けの半導体等製造装置や、米国向けの自動車輸出が落ち込んだ。
全体の輸出額は前年同月比8.2%減の6兆1410億円だった。減少は9カ月連続。輸入額は12%減の6兆2773億円と、4カ月連続の減少となった。サウジアラビアからの原粗油などの輸入が減った。
中国向けの輸出額は12.1%減の1兆2001億円と、6カ月連続で減少した。液晶デバイス製造用の半導体等製造装置の輸出が落ち込んだ。財務省は「中国経済が緩やかに減速している影響を受けた可能性がある」と分析した。輸入額は8.5%減の1兆4168億円と、2カ月ぶりの減少。携帯電話などの輸入が減った。
対韓国の輸出額は9.4%減の4226億円と、10カ月連続の減少。食料品が前年同月比40.6%減の大幅減となった。日韓関係の悪化を受け、日本製品の不買運動の影響が表れた可能性がある。
対米国の輸出額は4.4%減の1兆1904億円と11カ月ぶりに減少した。自動車や自動車部分品の輸出が減少した。財務省は「お盆期間に日本の工場が休みとなった影響など、季節的な要因が出た可能性がある」とみる。輸入額は9.2%減の7184億円。差し引きの貿易収支は4720億円の黒字だった。対欧州連合(EU)の貿易収支は788億円の赤字だった。
8月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=107円21銭。前年同月に比べ3.7%の円高・ドル安に振れた。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は▲3654億円の赤字とのことでしたので、実績はここまで大きな赤字とはなりませんでした。もちろん、米中間の貿易摩擦が世界経済に影を落としており、我が国輸出品への需要が減退しているとともに、引用した記事の最後のパラにあるように、為替が円高に振れていることから、貿易収支には黒字幅縮小ないし赤字拡大の効果をもたらします。加えて、何とも測り難いのが原油価格の動向です。サウジアラビアの石油設備へのまったく不可解な攻撃を受けて、ドバイ原油価格は急騰しました。もともと、私のようなエコノミストには国際商品市況における石油価格の動向は予測しがたいものがありましたが、サウジアラビア石油施設への攻撃なんてエコノミストのスコープ外もいいところです。少なくとも、攻撃なかりせばのケースに比べて石油価格が上昇することは明らかですから、我が国貿易赤字の拡大要因となります。加えて、8~9月は10月からの消費税率引き上げの駆け込み需要があるでしょうから、いくぶんなりとも輸入が増加することが予想されますから、これも貿易赤字拡大要因と考えるべきです。

photo


輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、我が国輸出の動向は、先進国経済及びいくぶんなりとも中国経済の動向に依存しているわけですが、少なくとも、そろそろ中国経済は底入れの兆しが見え、我が国の輸出も底ばい模様ながら、私がいくつか拝見したシンクタンクなどのリポートの中で、そろそろ底入れが近いと示唆するものも見受けました。

繰り返しになりますが、まったく予想もしなかったサウジアラビアの石油施設への攻撃と前々から予定されていた消費税率引き上げのどちらも、9月の貿易赤字を拡大させる方向に働く可能性が高く、我が国輸出の需要要因である世界経済や輸出入品の価格に影響を与える為替とともに今後の動向が注目されます。
Entry No.6353  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月17日 (火) 22:40:00

インテージによる「生活者を知る: 消費税増税の駆け込み需要は始まっていた」の調査結果やいかに?

ネット調査大手のインテージから、先週金曜日の9月13日付けで「生活者を知る: 消費税増税の駆け込み需要は始まっていた」の調査結果が明らかにされています。今回の消費税率引き上げに際しての駆け込み需要は、私の実感としても前回と比べてかなり小さいと感じていたんですが、インテージのSCI(全国消費者パネル調査)による調査結果では、一部のカテゴリーながら8月中旬には駆け込み需要が始まっていたことが明らかになっています。まず、インテージのサイトから日用消費財・雑貨品の購買金額前年比(19年vs.14年)のグラフを引用して結合させると以下の通りです。

photo


実は、たいへんお世話になっているニッセイ基礎研エコノミストの斎藤太郎さんが、昨日のNHKニュースで、「今回2019年の消費税率の引き上げに際しての駆け込み需要は前回の2014年より小さい。なぜなら、税率の引き上げ幅が小さい、食料・飲料などに軽減税率が適用される、自動車に対する自動車税の引き下げが同時に実施される、中小業者のキャッシュレス決済に対するポイント還元が実施される、などの理由によるわけで、ただし、2014年時点に比べて消費の基調がそもそも弱いので、税率引き上げ後の消費の弱さが長引く可能性があり、消費動向には注意が必要」といった趣旨の発言をされていました。私はまったくその通りだと思いましたが、インテージのパネルでは、やっぱり、というか、何というか、静かに日用品の駆け込み需要は始まっているようです。
中でも、上のグラフの一番下のパネルはお酒の駆け込み需要なんですが、実は、私もワインだけは少し買い込んでおこうかという気がしています。私はナイター観戦でビール、というか、正しくは発泡酒だか、第3のビールだか知りませんが、ビール系飲料をナイター観戦で飲む場合が多く、でも、今年の阪神タイガースの成績からして、もう日本シリーズはもちろん、クライマックス・シリーズにも出場のチャンスもないでしょうから、この季節にビールは必要なく、ワインを買い込む予定です。3年余りに渡って大使館勤務をしたチリのワインを長らく愛飲していたんですが、エコノミストらしくEPAで価格競争力を画期的に高めた欧州ワインにシフトしているところ、報道によれば、米国との貿易交渉で米国ワインの関税も画期的に引き下げられるようで、そのうちに、ナパ・バレーのカリフォルニア・ワインに切り替えるかもしれないものの、取りあえずは、スペイン産のワインを買い込もうと予定しています。

まったくどうでもいいことで、本質的な経済のお話とはなんお関係もないんですが、NHKニュースで拝見した斎藤さんがひどくやつれているように見かけて、びっくりしてしまいました。私よりラクに10歳くらいは年下のハズなんですが、そろそろ年齢的にくたびれる年ごろなのかもしれません。新しいチーフエコノミストにこき使われているのかもしれません。
Entry No.6352  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月13日 (金) 19:20:00

人手不足の解消で活用される人材やいかに?

人手不足が広がる中で、昨日9月12日に帝国データバンクから「人手不足の解消に向けた企業の意識調査」の結果が明らかにされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のサマリーを5点引用数rと以下の通りです。

調査結果
  1. 従業員が「不足」している企業が半数超にのぼるなか、不足している部門・役割は、「生産現場に携わる従業員」(57.2%)が最も高く、「営業部門の従業員」(47.7%)や「高度な技術を持つ従業員」(37.0%)も高い
  2. 人手不足による影響は、「需要増加への対応が困難」が50.5%で半数を超えトップとなり、五輪関連などによる旺盛な需要が続く『建設』や、荷動きが活発な『運輸・倉庫』などで高水準となった。次いで、「時間外労働の増加」(36.6%)、「新事業・新分野への展開が困難」(31.7%)などが続いた
  3. 企業において多様な人材を活用することが注目されているなか、今後最も積極的に活用したい人材は「シニア」が29.2%で最も高く、「女性」も27.9%と近い水準で続き、「外国人」は13.7%、「障害者」は1.1%となった
  4. 人手不足の解消に向けての取り組みでは、「賃金水準の引き上げ」が38.1%でトップとなった。特に「中小企業」で数値が高く、人材の確保や定着に向けた方法として賃上げが重要視されている様子がうかがえる。次いで、「職場内コミュニケーションの活性化」(36.7%)、「残業などの時間外労働の削減」(35.0%)が続いた
  5. 企業が望む人手不足の解消に向けて社会全体が取り組むべきことは、ハローワークなどの「職業紹介機能の強化・充実」が32.6%でトップとなった。他方、「職種別採用の拡大」は9.9%、「オファー型採用の拡大」は4.8%となり、採用方法の多様化は1ケタ台にとどまった


調査結果の概要というよりも、そのままというカンジのまとまりのないサマリーなんですが、私なりの着目点は下のグラフの通り、活用したい人材です。結局、お上の政府のいうように、シニアと女性なんですかね。もっと若い世代を積極的に雇おうという気はないんでしょうか。また、上のサマリーの4点目で、人手不足の解消に向けての取り組みでは、「賃金水準の引き上げ」がトップに上げられていますが、ホントなんでしょうか。

photo


現時点では、人手不足で雇用の不安が小さくなっているような気もしますが、あくまで、雇用は生産の派生需要であり、政府の経済政策運営よろしく、また、ほかの要因もあって、現在は景気がいいので雇用は堅調ですが、世界経済の減速などから国内景気が後退局面に入れば、人手不足は急速に雇用過剰に転ずる可能性もあります。人手不足が景気を牽引しているわけではありません。その逆であって、景気が悪化すれば雇用の過剰感が出て失業率も上昇する恐れが十分あります。それが、資本主義的な景気循環というものです。マルクスやケインズが景気後退局面における悲惨な状態を問題視した理由がここにあります。
Entry No.6345  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月12日 (木) 19:40:00

緩やかな増加基調の機械受注と大きく下落した企業物価(PPI)!!!

本日、内閣府から7月の機械受注が、また、日銀から8月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲6.6%減の8,969億円を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.9%の下落と、6月統計で前年同月比上昇率がマイナスに転じてから、今日発表の8月統計まで3か月連続でマイナスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の機械受注、前月比6.6%減 前月の大型受注の反動減
内閣府が12日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比6.6%減の8969億円だった。減少は2カ月ぶり。市場予想の中央値(9.9%減)は上回った。内閣府は「6月に非製造業の運輸業・郵便業で鉄道車両の大型受注案件があり、7月はその反動で減少した」と分析した。
基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。「大型案件を除いたベースでみると、動きに変化はないと判断した」(内閣府)という。
7月の受注額は製造業が5.4%増の3841億円だった。増加は3カ月ぶり。その他製造業で「火水力原動機」や「その他産業機械」の受注が増えた。非製造業は15.6%減の5189億円だった。運輸業・郵便業で大型受注案件がなくなったことに加え、電力業なども受注が減少し、2カ月ぶりの減少となった。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は0.3%増だった。前月比でみた受注総額は0.1%増、官公需の受注は11%増、外需の受注額は6%減だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
8月の企業物価指数、前年比0.9%下落 16年12月以来の下落幅
日銀が12日発表した8月の企業物価指数(2015年平均=100)は100.9と、前年同月比で0.9%下落した。下落は3カ月連続で、減少幅は2016年12月(1.2%下落)以来の大きさだった。米中貿易問題など海外情勢の不透明感を映した、原油や銅などの相場下落が影響した。
前月比では0.3%下落した。ガソリンなどの「石油・石炭製品」や銅地金など「非鉄金属」、エチレンなどの「化学製品」などが低下した。
円ベースでの輸出物価は前年比で5.7%下落と、4カ月連続のマイナスだった。前月比では1.2%下落した。輸入物価は前年比8.3%下落し、4カ月連続のマイナスだった。前月比では0.5%下落した。
日銀の調査統計局は「米中対立の懸念の高まりから、主に石油や銅などの市況性の高い製品が影響を受けた」と説明した。先行きについては「世界的な需要減少や物価の下落要因にならないか注視していく」とした。


長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、電力と船舶を除くコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比は▲9.9%の減少を見込んでいましたので、レンジ内でもマイナス幅が小さい方ですので、統計作成官庁である内閣府が基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いたのにも驚きはありません。特に、引用した記事にもある通り、先月統計の非製造業の運輸業・郵便業で鉄道車両の大型受注案件の反動ということであればなおさらです。先月公表の6月統計で前月比+13.9%増の後の▲6.6%減ですから、ならしてみれば増加基調に変化ないともいえます。もっとも、7月統計でも建設業が前月比+113.6%の増加を示しており、何らかの大型案件が特殊要因となっている可能性が想像されますが、私の方に情報はありません。増加業種別には、製造業でやや弱い動きが続いているものの、非製造業では人で不足を背景に合理化や省力化に向けた設備投資が見込まれることから、全体として先行きも横ばいないし緩やかな増加を見込んでます。ただ、コア機械受注の外数ながら先行指標と考えられている外需が7月には前月比で▲6.0%減を記録しており、米中間の貿易摩擦の激化や長期化とともに今後の懸念が残ります。

photo


続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。繰り返しになりますが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価については、とうとう6月統計から前年同月比上昇率がマイナスに転じ、今日発表の8月統計まで3か月連続のマイナスを記録しています。ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前月同月比は▲0.8%の下落を見込んでいましたので、レンジ内の想定された動きということになります。季節調整していないながら、前月比▲0.3%の下落の大きな部分を占めるのはエネルギー関連項目であり、寄与度の大きい順に、石油・石炭製品▲0.13%、電力・都市ガス・水道▲0.04%で半分近くが説明できてしまいます。また、輸入物価のうちの石油・石炭・天然ガスも前年同月比で▲5.6%と大きな下落が続いており、国債商品市況の石油価格の下落の影響が見て取れます。加えて、輸出物価でも、化学製品が前年同月比で▲14.3%の下落、金属・同製品が▲6.8%の下落など、米中貿易摩擦とも関連して中国経済の手減速の影響と見られる品目での物価下落が見られます。

国内景気は明らかに景気循環の後半局面に入っており、10月から諸費税率が引き上げられることもあって、エコノミストの中にはやや神経質に指標を見ている向きもあるかもしれません。
Entry No.6343  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月11日 (水) 19:30:00

足元7-9月期のBSIがプラスを示した法人企業景気予測調査は駆け込み需要によるものか?

本日、財務省から7~9月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は1~3月期▲1.7、4~6月期▲3.7と、2四半期連続でマイナスを付けた後、足元の7~9月期には+1.1とプラスに転じ、先行きの10~12月期▲0.4とふたたびマイナスに転じるものの、来年2020年1~3月期には+1.7と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感3期ぶりプラス 7-9月、家電など好調
の景況判断指数(BSI)はプラス1.1だった。プラスは3四半期ぶり。家電販売などが好調な非製造業がプラスに回復。製造業もスマートフォン関連需要の底打ち感などからマイナス幅が縮小した。10月の消費増税を前に景況感の悪化にいったん歯止めがかかった形だが、10▲12月期は再びマイナスの見通しで先行きは不透明だ。
BSIは前四半期と比べた景況判断で「上昇」と答えた企業の割合から「下降」と答えた企業の割合を引いた値。前回4▲6月期はマイナス3.7だった。今回の調査時点は8月15日。
大企業のうち製造業はマイナス0.2で4▲6月期のマイナス10.4からマイナス幅が縮んだ。米中貿易摩擦の影響で中国向けの非鉄金属や自動車などは依然さえなかったが、情報通信機器や電気機器がそれぞれ2桁のマイナスだったのが大幅に上向いてプラスになった。超高速の次世代無線規格「5G」や車載向け電子部品の需要が堅調といった声があった。
非製造業はクラウド化などのシステム需要が強いほか、テレビや白物家電の販売が好調でプラス1.8と、2四半期ぶりのプラス。消費増税前の駆け込みについて調査担当者は「白物家電は好調という声が聞かれるが、前回のような大きな需要はみられない」との見方を示した。
大企業全産業で10▲12月期はマイナス0.4と再びマイナスに転じる見込みだ。2020年1▲3月期はプラス1.7の見通しだが、増税後の景況感は不透明だ。


いつもながら、簡潔かつ包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況判断指数(BSI)は足元の7~9月期に+1.1を示しましたが、大企業の産業別内訳では、引用した記事にもある通り、製造業が前期4~6月期の▲10.4という大きなマイナスに対して、マイナス幅は大きく縮小したものの、7~9月期も依然としてマイナスながら、ほぼ横ばいの▲0.2を記録した一方で、非製造業は前期4~6月期ほぼ横ばいの▲0.4から7~9月期は+1.8とプラスに転じています。となっています。大企業製造業のうち、特にマイナス寄与の大きかった産業を詳しく見ると、非鉄金属製造業と自動車・同附属品製造業が上げられており、逆に、情報通信機械器具製造業と電気機械器具製造業がプラス寄与に転じています。やや複雑な様相ながら、米中間の貿易摩擦の深刻化による先行き不透明感が企業マインドに影を落としていることは間違いありません。他方、大企業非製造業でマイナス寄与が大きいのは卸売業と金融業、保険業が挙げられており、情報通信業と小売業はプラス寄与が大きくなっています。また、先行きの景況感について大企業全産業について見ると、10~12月期は消費税率引き上げが実施されますので、▲0.4と少し落ちはするものの、来年2020年1~3月期には+1.7に戻ると見込まれています。先日、短期経済見通しを取り上げた際にも指摘しましたが、マイナス成長は消費税率引き上げの10~12月期の1四半期で済み、来年2020年1~3月期にはプラス成長に回帰するとの見方がかなり多かったわけですから、それと整合的な景気予想と私は受け止めています。BSI以外では設備投資計画(ソフトウェア投資額を含み、土地購入額を除くベース)だけ見ておくと、全規模全産業で前回調査の2019年度計画+9.0%増から、今回調査では+8.3%増にやや下方修正されました。でも、大きな基調的変化ではないものと私は考えています。製造業と非製造業の間には設備投資計画に大きな差はありません。

企業マインドについては、9月調査の日銀短観が10月1日に公表の予定となっています。米中間の貿易摩擦や世界経済の減速は企業マインドにどのように影響するんでしょうか。また、消費税率の引き上げの影響はどうなんでしょうか。注目したいと思います。
Entry No.6341  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月10日 (火) 23:20:00

厚生労働省による2017年「所得再分配調

先週金曜日9月6日に、厚生労働省から2017年実施の「所得再分配調査」の結果が公表されています。いつも注目されるのは格差の尺度のひとつであるジニ係数なんですが、3年前の調査と比べて大きな変化は観察されていません。

photo


上のグラフは再分配前後のジニ係数の推移をプロットしています。上のパネルは世帯ベースで世帯人員数を考慮していません。他方、下のパネルは世帯人員数を考慮に入れた等価所得ベースです。等価所得ベースは2002年調査以降しかデータがありませんが、大雑把な印象として、今世紀に入ってから、再分配前の当初所得の格差は拡大しているものの、社会保障や税制により格差は抑えられており、再分配後の所得格差についてはむしろ縮小している、ということになろうかと思います。世間一般の共通認識としては、何となくの印象として、2000年からの小泉政権の下で規制緩和などの新自由主義的な経済政策が進められた結果、特に、非正規雇用の比率が高まり、所得格差が拡大した、と受け止められているんではないかという気がしますが、前半の非正規雇用比率の増加は、その通りと考えられる一方で、後半の所得格差拡大については、この「所得再分配調査」の結果からは支持されません。私のひとつの解釈なんですが、格差拡大というよりは賃金や所得の伸び悩みが貧困層の増加につながった点を強調すべきではないか、と考えています。もちろん、実態上の貧困と印象上の格差拡大の背景には、高齢化の進展もひとつの要因として存在することは間違いありません。それとも、ウルトラCの解釈ですが、ジニ係数が格差指標として適当ではないとか、あるいは、この「所得再分配調査」が間違っている、という統計処理、あるいは、統計そのものの問題も可能性としてはゼロではないかもしれません。いずれにせよ、「所得再分配調査」の結果から、所得格差はここ20年でそれほど拡大していない、というファクトは読み取れるんではないでしょうか。
Entry No.6340  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月09日 (月) 23:00:00

わずかに下方改定された4-6月期GDP統計速報2次QEと景気ウォッチャーと経常収支!

本日、内閣府から4~6月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.3%、年率では+1.3%と、1次QEからわずかに下方改定されています。3四半期連続のプラス成長で、4~6月期は前期よりも成長が減速していますが、内需主導で潜在成長率水準をやや上回るまずまずの成長の姿と評価できます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月期のGDP改定値、年率1.3%増に下方修正 設備投資下振れで
内閣府が9日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算で1.3%増だった。速報値(前期比0.4%増、年率1.8%増)から下方修正された。企業の設備投資が速報段階から下振れしたことが影響した。
民間企業の設備投資は実質で前期比0.2%増(速報値は1.5%増)だった。2日発表の4~6月期の法人企業統計でソフトウエアを除く設備投資額(季節調整済み)が前期比でマイナスとなったことを反映した。米中貿易摩擦の影響もあり、半導体含む産業や輸送用機械産業など製造業の落ち込みが大きかった。GDPの1次速報では供給側の統計情報を基に企業の設備投資を推計するが、需要側の統計である法人企業統計の発表を受けて大幅に修正することとなった。
住宅投資も0.1%増と速報値(0.2%増)から小幅に下振れした。不動産仲介料が下方に寄与したという。
個人消費は0.6%増と速報値から変わらなかった。
一方、公共投資は1.8%増と速報値の1.0%増から大幅に上振れした。政府の消費支出も医療、介護費などに関する統計を反映し、1.2%増と速報段階(0.9%増)から上振れした。
内需の寄与度はプラス0.6%と速報段階のプラス0.7%から下振れした。輸出から輸入を差し引いた外需の寄与度はマイナス0.3%と速報段階と同じだった。民間在庫の寄与度はマイナス0.0%と速報段階のマイナス0.1から上方修正された。仕掛かり品在庫が寄与したという。
物価変動の影響を加味した、生活実感に近い名目GDPは前期比0.3%増(速報値は0.4%増)、年率は1.1%増(同1.7%増)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス0.4%と1次速報値から変わらなかった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/4-62018/7-92018/10-122019/1-32019/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.5▲0.5+0.4+0.5+0.4+0.3
民間消費+0.3▲0.1+0.4▲0.0+0.6+0.6
民間住宅▲1.8+0.8+1.3+0.8+0.2+0.1
民間設備+3.0▲2.8+3.0▲0.2+1.5+0.2
民間在庫 *(▲0.1)(+0.2)(+0.0)(+0.1)(▲0.1)(▲0.0)
公的需要▲0.2▲0.1+0.4+0.2+0.9+1.3
内需寄与度 *(+0.5)(▲0.3)(+0.8)(+0.1)(+0.7)(+0.6)
外需寄与度 *(+0.0)(▲0.2)(▲0.4)(+0.4)(▲0.3)(▲0.3)
輸出+0.8▲2.1+1.2▲2.0▲0.1▲0.0
輸入+0.8▲1.2+3.6▲4.3+1.6+1.7
国内総所得 (GDI)+0.3▲0.8+0.4+1.0+0.4+0.3
国民総所得 (GNI)+0.4▲0.6+0.5+0.7+0.5+0.4
名目GDP+0.2▲0.5+0.4+1.0+0.4+0.3
雇用者報酬+1.2▲0.4+0.3+0.3+0.7+0.7
GDPデフレータ▲0.1▲0.4▲0.3+0.1▲0.0+0.4
内需デフレータ+0.5+0.6+0.5+0.3+0.1+0.4


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4~6月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

photo


ということで、1~3月期GDP統計2次QEは先月の1次QEから大きな変化はありませんでした。法人企業統計などの1次統計の追加と反映を受けて、民間設備投資が下方修正されたのが大きく、それに連れて成長率も下振れしました。ですから、1次QE公表時の景気判断から大きな修正はないものと私は考えますが、ただ、今年2019年に入って1~3月期、4~6月期と2四半期続けて、ややトリッキーな成長が続いていることも確かです。というのは、1~3月期については、内需が振るわない中で、内需の低迷に起因して輸入が減少するという形で外需がプラス寄与しての高成長という予想外の形でしたし、本日2次QEが公表された4~6月期については、消費が成長をけん引して、それだけを見れば望ましい経済の姿といえるんですが、実は、平成から令和への改元に伴うゴールデンウィーク10連休が消費の底上げにかなりの程度寄与していると考えるべきです。そうそう10連休を設定するのはサステイナブルな政策ではありませんし、その上、厚生労働省の毎月勤労統計が信頼性欠く中で統計的な裏付けが難しいものの、賃金、というか、所得の向上なくお休みで消費が増えても、その後の反動が予想されますし、特に、現在のタイミングでは10月1日からの消費税率引き上げが消費減速につながる可能性が十分ありますから、足元の7~9月期はまだしも、目先の10~12月期からの景気が万全とはいいがたく、何ともいえない漠たるものながら懸念があることは確かです。国内的には、消費税率引き上げ前の駆け込み需要は大きくない実感あるものの、他方で海外経済に目を転じると、米中間の貿易摩擦そのものの影響は決して大きくないにしても、これに起因する世界経済の減速は無視できない影響を及ぼすでしょうし、いずれにせよ、10月以降の景気動向は決して楽観できない、と考えるべきです。ハードな経済の動向に加えて、ソフトなマインドの問題もあります。後に取り上げるように、供給サイドの景気ウォッチャー8月統計の結果は冴えないものでしたし、需要サイドの消費者態度指数も下降を続けています。この上、来月10月に入って景気動向指数の基調判断が「悪化」に下方修正されたりすると、さらにマインドが冷え込む恐れもなしとしません。

photo


最後にGDP統計を離れると、本日、内閣府から8月の景気ウォッチャーが、また、財務省から7月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から前月差1.6ポイント上昇の42.8を記録した一方で、先行き判断DIは▲4.6ポイント低下の39.7となっています。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆9999億円の黒字を計上しています。いつものグラフは上の通りです。上のパネルは景気ウォッチャーで、現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。下は経常収支で、青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。これも、色分けは凡例の通りとなっています。
Entry No.6339  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月07日 (土) 09:10:00

堅調ながら減速しつつある米国雇用統計やいかに?

日本時間の先夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+130千人増と貿易摩擦などでやや伸びは鈍ったものの、まずまず堅調な推移を見せた一方で、失業率は先月と同じ3.7%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の8パラを引用すると以下の通りです。

Economy added disappointing 130,000 jobs in August, giving Fed another reason to cut rates
Hiring slowed in August as employers added 130,000 jobs, further stoking recession fears and strengthening the Federal Reserve's argument for another cut in interest rates this month.
The unemployment rate was unchanged at 3.7%, just above a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 160,000 job gains.
Further dimming the latest employment snapshot: Payroll gains for and June and July combined were revised down by a total 20,000.
The increase raised concerns of a recession while the unemployment rate was unchanged from 3.7 percent in July.
The Labor Department has tended to undercount August job totals in its initial estimate and then revise the number higher the following months, says economist Jim O'Sullivan of High Frequency Economics. That pattern increased the risk of a disappointing jobs report Friday. But the payroll total was inflated by the federal government's addition of 25,000 temporary workers for the 2020 census. Without those gains, the August number would have been even weaker.
More broadly, payroll growth has slowed to an average monthly pace of 165,000 this year from 223,000 in 2018, though last year's figures are expected to be revised down substantially based on a recent preliminary estimate. A low unemployment rate has made it harder for employers to find qualified workers.
Also, the economy has slowed from its brisk pace last year because of the fading impact of Republican-led tax cuts and spending increases, President Trump's trade war with China and sluggish economies in other nations. The trade fight has also dampened business confidence and investment and hurt manufacturers.


やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

photo


何ともビミョーな結果だと私は受け止めています。非農業部門雇用者の前月差での+130千人増は、Broomberg による市場の事前コンセンサスである+150千人増を下回りましたが、決して悪くない数字ですし、景気の遅行指標とはいえ、失業率も3.7%と、およそ半世紀以来の低い水準にありますから、米国雇用は堅調と私は考えています。でも、景気の一致指標である非農業部門雇用者の伸びは、市場の事前コンセンサスを下回るとともに、このところやや縮小気味であることも確かです。その要因は、米国から仕かけたとはいえ、米中間の貿易摩擦による世界経済の減速ですから、その意味で、米国連邦準備制度理事会(FED)は7月に利下げに踏み切って、米国はほぼ10年半振りに金融緩和局面に入ったわけですが、来年の米国大統領選挙を前にホワイトハウスからの金融緩和圧力は継続していますし、現在のトランプ米国大統領に任命されたパウエルFED議長も苦しい判断かという気はします。特に、米国トランプ政権が重視しているメインストリームの製造業では、今年2019年に入って1~8月の就業者の増加幅が月平均+6千人にとどまっており、2018年平均の+20千人増を上回るペースから大幅にスローダウンしています。加えて、日本では企業部門が国内景気を牽引するんですが、米国では家計消費が景気を引っ張るわけで、小売部門の雇用は注目されるところですが、7か月連続で就業者数が減少しています。もちろん、ネット販売がトレンド的に増加していることから、小売業で構造的に雇用が増加しなくなっているのも事実ではありますが、世界経済の減速とどこまでシンクロしているかは不明なものの、米国経済の懸念材料であることは確かです。

photo


雇用の最大化という景気動向とともに、物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高める段階にあります。すなわち、8月は前年同月比で+3.2%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して、1年に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですので、金融緩和に転じたりして物価の方は大丈夫なんだろうか、という心配もあるにはあるものの、基本的に、左派エコノミストである私は金融緩和には賛成だったりします。
Entry No.6335  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月06日 (金) 19:40:00

景気動向指数は7月統計の戻りが小さく来月公表の8月統計で再び「悪化」に基調判断が下方修正される可能性も!!!

本日、内閣府から7月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から横ばいで93.6を、CI一致指数は+0.3ポイント上昇して99.8を、それぞれ記録し、基調判断は「下げ止まり」に据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の景気一致指数、0.3ポイント上昇 基調判断「下げ止まり」で据え置き
内閣府が6日発表した7月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.3ポイント上昇の99.8と2カ月ぶりに上昇した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「下げ止まりを示している」に据え置いた。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5系列が指数のプラスに寄与した。車載用蓄電池など自動車関連の生産が伸びたことで「生産指数(鉱工業)」「鉱工業用生産財出荷指数」が堅調だった。半導体製造装置や掘削用機械を含む「投資財出荷指数(除輸送機械)」も伸びた。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比横ばいの93.6だった。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比0.2ポイント上昇の104.8と4カ月ぶりに上昇した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo


従来から、このブログでも指摘している通り、CI一致指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が極めて高いんですが、本日公表の7月統計でもその通りでした。すなわち、6月のCI一致指数は前月から▲2.9ポイントの下降でドカンと落ちた後、7月の戻りはわずかに+0.3ポイントの上昇にとどまり限定的でした。それでも、有効求人倍率(除学卒)と商業販売額(小売業)(前年同月比)が下降に寄与した以外、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、生産指数(鉱工業)、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)といった幅広いコンポーネントがプラスに寄与しています。「下げ止まり」に据え置かれ、メディアで注目の基調判断なんですが、「『CIによる景気の基調判断』の基準」に従えば、「下げ止まり」と「悪化」の違いは3か月後方移動平均と前月差でかなり機械的に決められており、「原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降」かつ「当月の前月差の符号がマイナス」の2つの条件で「悪化」が定義されています。先月の6月統計の3か月後方移動平均は▲0.50の下降、7月統計でも▲0.60の下降ですから、すでに2か月連続での下降となっており、繰り返しになりますが、先ほど「ドカン」と表現した6月統計の前月差▲2.9ポイントの落ち方に比べて、その後の7月統計の戻りが+0.3ポイントと小さく、さらに来月の8月統計で前月差がマイナスだと、またまた基調判断が「悪化」に下方修正される可能性があります。そうすると、来月の景気動向指数の公表日は10月7日であり、消費税率引き上げ直後のタイミングも相まって、メディアが基調判断の「悪化」を大きく取り上げる、ということにもなりかねません。まあ、エコノミストの中には、どこまで本質的な意味があるか疑問に受け止める向きがあるかもしれませんが、私自身はそれなりに象徴的な意味があり、マインドへの影響が小さいながらも無視できない可能性がある、と考えています。

実は、このブログでは先週8月30日付けで7月統計の鉱工業生産指数(IIP)ほかを取り上げており、製造工業生産予測指数について先行き見通しの予測誤差の加工を行った補正値で8月は▲0.7%の減産と試算されていたりします。もしも、これが正しいと仮定すれば、景気動向指数の基調判断はふたたび「悪化」に下方修正される可能性が高いと考えられます。いずれにせよ、月末公表の鉱工業生産指数(IIP)8月統計を注視したいと思います。
Entry No.6333  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月05日 (木) 23:30:00

来週月曜日9月9日公表予定の4-6月期GDP統計2次QEは小幅な下方修正か?

今週月曜日9月2日に公表された法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日9月9日に4~6月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。その中で、みずほ総研、第一生命経済研、伊藤忠総研の3機関はやや長めに、ほかもそれなりに引用しています。従来は2次QE予想は法人企業統計のオマケのような扱いのリポートも少なくなかったんですが、さすがに、消費税率引き上げ直前というのもあって、かなりのリポートが先行きの景気動向に言及しています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.4%
(+1.8%)
n.a.
日本総研+0.3%
(+1.3%)
4~6月期の実質GDP(2次QE)は、公共投資が上方修正となる一方、設備投資、民間在庫は下方修正となる見込み。その結果、同成長率は前期比年率+1.3%(前期比+0.3%)と、1次QE(前期比年率+1.8%、前期比+0.4%)から下方修正される見込み。
大和総研+0.3%
(+1.3%)
4-6月期GDP二次速報(9月9日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率+1.3%と、一次速報(同+1.8%)から下方修正されると予想する。需要側統計の法人企業統計の結果を受けて、設備投資が前期比+0.6%と下方修正されることが主因である。
みずほ総研+0.3%
(+1.2%)
今後の日本経済は、消費増税後の一時的な増減はあるものの、弱い伸びが続くとみている。世界経済の減速が続き、米中製造業が調整局面となるなかで、輸出は当面低迷が続く見通しだ。設備投資は、省力化投資が下支えするものの、機械設備や建設投資における調整圧力の高まりが下押し要因になろう。貿易摩擦などの不透明感の高まりも投資の伸びを押し下げ、今後減速してくとみている。
個人消費は増税前後の一時的なアップダウンはあるものの、均してみれば力強さを欠く見通しだ。足元の雇用環境をみると、雇用のひっ迫は続いているものの、有効求人倍率が3カ月連続で低下するなど、変調の兆しもうかがえる状況だ。生産の停滞や、働き方改革関連法による残業時間規制への対応から、当面賃金の伸びは鈍く、個人消費を押し上げるには至らないだろう。
ニッセイ基礎研+0.2%
(+0.9%)
9/9公表予定の19年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.2%(前期比年率0.9%)となり、1次速報の前期比0.4%(前期比年率1.8%)から下方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.3%
(+1.0%)
4-6月期の成長率を牽引した個人消費については、10連休効果や駆け込みによる耐久財消費増といったイレギュラーな押し上げ要因が大きく、実力以上に上振れている可能性が高い点に注意が必要だ。7-9月期には10連休効果の剥落により下押し圧力がかかりやすいだろう。また、所得が伸び悩むなか、消費者マインドの悪化がこのところ顕著になっている点も懸念材料である。消費を取り巻く環境が上向いているわけではなく、消費の基調は強いとは言い難い。4-6月期のGDP成長率については割り引いて見た方が良いだろう。GDP以外の他の経済指標の動向も踏まえて総合的に判断すれば、景気は引き続き停滞感が残る状況にあると評価すべきと思われる。
伊藤忠総研+0.3%
(+1.1%)
続く7~9月期を展望すると、公共投資が息切れする可能性はあるが、一方で輸出の持ち直しが見込まれる。さらに、個人消費は7月に悪天候の影響を受けて落ち込んだものの、9月にかけて消費増税前の駆け込み需要が衣料品や日用品、雑貨、酒・たばこを中心に、ある程度は発生するとみられ、7~9月期も増勢を維持しよう。設備投資は伸び悩み、住宅投資は減少に転じると見込まれるものの、GDP全体では7~9月期も前期比プラス成長を維持し、少なくとも消費増税までは景気の拡大が続こう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.3%
(+1.2%)
2019年4~6月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.3%(年率換算+1.2%)と1次速報値から下方修正される見込みであるが、修正は小幅であり、今回の結果によって景気に対する評価が変わることはないであろう。
三菱総研+0.3%
(+1.1%)
2019年4-6月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.3%(年率+1.1%)と、1次速報値(同+0.4%(年率+1.8%))から下方修正を予測する。


見れば明らかなんですが、先月公表の1次QEで示された4~6月期の成長率である前期比+0.4%、前期比年率+1.8%をすべて下回っており、2次QEでは下方修正されるとの予想が圧倒的です。基本は、今週月曜日の9月2日に公表された法人企業統計の需要サイドの結果に従った修正であり、設備投資の下方修正がもっとも大きく寄与していると私は受け止めています。ただ、修正幅はそれほど大きくなく、いくつかヘッドラインに収録しておきましたが、下方修正とはいえ現在時点での景気判断の修正を迫るものではないと考えるべきです。その上、仕上がりの成長率を前期比年率で見ると、唯一ニッセイ基礎研を例外として、ほかのシンクタンクの予想では+1%に届いており、ほぼほぼ潜在成長率近傍ないし上回る成長率と予想されている点も忘れるべきではありません。もっとも、我が国の景気がとても順調なのかといえば、決してそうでもなく、少なくとも、4~6月期の成長率はゴールデンウィークの10連休でかさ上げされた消費の効果がある点は注意が必要です。逆から見て、足元の7~9月期はこの効果が剥落するわけですから、景気には下押し圧力がかかる可能性があります。それでも、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要を私なんぞは予想していたんですが、一昨日のこのブログで取り上げたように、駆け込み需要も大きくないようで、反動減も抑制されることから、それはそれで好ましいわけではあるものの、消費税率引き上げ直後の10~12月期はかなりの確度でマイナス成長でしょうから、そこに向けてジワジワと景気が停滞感を強めることが予想されます。米中間の貿易摩擦などがあって、さらにその先は不確定要因がいっぱいあるものの、少なくとも、8月20日付けで取り上げた短期見通しでは来年2020年1~3月期にはプラス成長に回帰し、マイナス成長は1四半期で終了するとの見方が圧倒的でしたから、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルな景気後退シグナルも含めて、景気がこのまま失速して景気後退に向かうというようには見込まれていない、と私は受け止めています。
最後に、下のグラフは、みずほ総研のリポートから引用しています。

photo
Entry No.6332  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月04日 (水) 19:10:00

老後資金はやっぱり1,000万円くらい必要か?

約3か月前の今年2019年6月3日に金融庁から金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」が公表され、p.16で「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20年で約1,300万円、30年で約2,000万円の取崩しが必要」と、老後資金2,000万円の必要性が強調されて物議をかもしましたが、第一生命経済研から一昨日の9月2日付けで「働くシニア世帯の収支状況」と題するリポートが明らかにされ、やっぱり、60代後半から無職となれば老後資金として1,000万円超が必要との試算が明らかにされています。グラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


上のグラフはリポートから、2人以上高齢者世帯の月間家計収支を引用しています。見れば明らかなんですが、世帯主が60歳後半以降でも、勤労所得のある世帯では貯蓄を積み増しているわけです。以下、リポートに従えば、毎月の黒字額はというと、世帯主が65歳以上では80,476円、70歳以上でも69,122円の黒字を積み増しています。うち、世帯主が65歳以上の収入面を見ると、以下すべて月額平均で見て、「実収入」が420,064円、うち公的年金給付等が150,112円と⅓強を占める一方で、収入の柱は「勤め先収入」の254,479円となっています。さらに、世帯主の年齢が70歳以上の高齢勤労者世帯で見ても、「実収入」は380,100円と減るものの、そのうち公的年金給付等が159,218円にやや増加する一方で、「勤め先収入」もまだ209,748円に上ります。長らく国家公務員として働いて定年退職し、もうすぐ61歳になる私の目から見ても、「ホンマかいな」というくらいに恵まれた高齢者の世帯なんですが、総務省統計局の実施している家計調査に基づく統計的な事実のようです。
このように、とても収入に恵まれた高齢者世帯でも、リポートの試算によれば、世帯主が60代前半まで働いて60代後半から無職になり、その後30年間生活すると仮定すれば、今後の年金支給額が不変としても、65歳時点で1,029万円の貯蓄が必要になる一方で、60代後半の5年間も就業を続ければ480万円の貯蓄ができるものの、それでも65歳時点では549万円の貯蓄が必要、という結論のようです。我が家のような、こういった家計調査の対象世帯の平均的な姿に追いつかない場合、もっと膨大な貯蓄を積み上げておくか、それとも、老後の生活を大幅に切り詰めるか、の選択になるのかもしれません。
Entry No.6330  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月03日 (火) 23:00:00

消費税率引き上げ前の駆け込み需要はどうなっているのか?

もう1か月を割って、10月1日に消費税率が現行の8%から10%に引き上げられる予定となっています。以前の税率引き上げ時にはかなりのボリュームの駆け込み需要が発生し、同時に、税率引き上げ後の反動減もそれなりに大きかったわけで、特に、2014年4月の8%への引き上げの際にはデフレ脱却に影響を及ぼしたように私は記憶していますが、私自身の生活実感としても、また、経済指標の統計を見ていても、今回は駆け込み需要が大きくないように感じているところ、『第一生命経済研レポート』2019年9月号において、「今回の駆け込み需要の規模はどうして小さい?」と題するコラムが明らかにされています。グラフを引用して、簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


上のグラフはリポートから引用しており、上から順に、消費税率引上げ前後の民間最終消費支出の推移、消費税率引上げ前後の住宅着工戸数の推移、政府による消費税対策がそれぞれプロットされています。見れば明らかなんですが、現在までに利用可能な統計で見る限り、消費や住宅投資は前々回1997年4月の3%から5%への引上げ、また、前回2014年4月の5%から8%への引上げと比較して、駆け込み需要が大きく抑制されています。まら、リポートでは住宅ほどではないものの大型耐久消費財の典型として自動車販売についても同様である旨が報告されています。
その大きな理由として、リポートでは、3番目のパネルのテーブルに上げられている、政府による駆け込み需要対策による影響が大きい、と指摘しています。同時に、家具・家電などではホントに直前の駆け込み需要の発生の可能性も指摘しています。私は日用品もご同様だと思います。加えて、消費税率引き上げに伴う物価上昇による実質所得の低下は逃れることができません。他方で、軽減税率のように期限のない対策もあれば、キャッシュレス決済に対するポイント還元のように9か月間の起源で来年2020年6月に終了するものもあり、プレミアム付き商品券もいつかは使い終わるわけで、その終了の際に駆け込み需要が一定の大きさで生じる可能性も否定できません。
もちろん、駆け込み需要が小さいものに終われば、その反動減も小さくなる可能性が高く、景気変動の振れが抑制されるとすれば、マクロ経済安定化政策は成功と考えるべきではないかという気がします。
Entry No.6329  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年09月02日 (月) 23:00:00

製造業の停滞を示す4-6月期の法人企業統計をどう見るか?

本日、財務省から4~6月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は11四半期連続の増収で前年同期比+0.4%増の345兆9,119億円、経常利益は2四半期振りの減益で▲12.0%増の23兆2,325億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで1.9%増の10兆8687億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比+1.5%増となっています。なお、設備投資については、以下に引用する記事にもある通り、データの蓄積に伴って、今回からソフトウェアを含むベースに変更されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月期の製造業の設備投資、2年ぶり減 米中貿易摩擦など影響
財務省が2日発表した2019年4~6月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比1.9%増の10兆8687億円だった。増加は11四半期連続。ただ、製造業の設備投資は2年ぶりの減少となった。製造業は経常利益も大幅な減少で、米中貿易摩擦などの影響が出た。
製造業の設備投資は6.9%減の3兆6156億円だった。情報通信機械が43.4%減と大きく落ち込んだのが響いた。半導体需要の減少により、生産能力投資を抑制する動きが出たといい、財務省は「半導体の(低調な)サイクルの中で米中貿易摩擦の影響もあった」と説明した。石油・石炭は、石油精製設備の新設投資をした前年の反動が出て48.7%減となった。
非製造業の設備投資は7.0%増と、11四半期連続で前年同期を上回った。都市部オフィスビルの取得が寄与した不動産業が45.5%増、情報通信機器などリース資産を増やした物品賃貸業が29.4%増だった。
季節調整済み前期比の設備投資額は1.5%増だった。非製造業が4.7%増加し、製造業(4.3%減)の不振を補った。同数値は国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となっているが、ソフトウェアに関するデータが蓄積されたため、今回からソフトウェアを含む数値となった。
全産業ベースの経常利益は12.0%減の23兆2325億円だった。減益は2四半期ぶり。製造業が27.9%減となったことが響いた。情報通信機械業が、米中貿易摩擦によるスマートフォン向け製品の減少などで84.6%減と大きく落ち込んだ。
全産業の売上高は0.4%増と、11四半期連続の増収となった。非製造業は1.0%増だった一方、製造業は1.2%減と10期ぶりの減収だった。
財務省は「緩やかに回復している景気の動向を反映している」と説明した。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や投資動向を集計した。今回の19年4~6月期の結果は、内閣府が9日発表する同期間のGDP改定値に反映される。
同時に発表した2018年度の法人企業統計によると、設備投資額は前年度比8.1%増の49兆1277億円と過去最高だった。売上高は0.6%減の1535兆2114億円と3年ぶりの減少、経常利益は0.4%増の83兆9177億円で過去最高だった。
19年3月末時点の金融業と保険業を除く全産業の内部留保にあたる利益剰余金は3.7%増の463兆1308億円と、7年連続で過去最高だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


上のグラフとベースを同じにして季節調整済の系列で考えると、昨年の我が国企業の動向は、かなりの程度に最近のマクロ経済動向とも一致して、製造業を起点にやや停滞色が強くなりつつあります。すなわち、上に引用した記事では、前年同期比で見て売上高は11四半期連続の増収とされていますが、グラフにプロットした季節調整済みの系列の前期比で見ると、今年2019年に入ってから1~3月期▲0.6%減の後、本日公表の4~6月期も▲0.1%減と2四半期連続の減収を記録しています。経常利益にしても、四半期ごとに増減を繰り返している点は、季節調整していない原系列も季節調整済みの系列も同じで、4~6月期は前期比▲5.0%の減益となっています。設備投資については、繰り返しになりますが、今回からソフトウェアを含むベースに変更され、4~6月期は+1.5%増と前期比プラスを記録したものの、製造業だけを取り出して見れば、1~3月期▲2.0%減の後、4~6月期は▲4.6%減と2四半期連続の2四半期連続の前期比マイナスで、マイナス幅が拡大している点も見逃せません。ただ、非製造業の設備投資が人手不足などを背景に底堅く推移しており、製造業を合わせた全産業では3四半期連続の前期比プラスとなっています。もちろん、製造業の低迷が進んだ背景には世界経済の減速があります。先週金曜日に公表された「月例経済報告」でも国内景気判断は「緩やかに回復」と据え置いた一方で、世界経済については「アジアやヨーロッパの中に弱い動き」を併記して景気判断を半ノッチ下げて、いよいよ政府も世界経済の減速を認めたようですし、米中間の貿易摩擦がヒートアップすれば、製造業はさらに逆風が強まる可能性がある点は注意すべきです。加えて、為替相場における円高の進行も大きなリスクです。

photo


続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。ソフトウェアを含むベースに今回から再計算しています。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下し上向く気配すらなくまだ下落の気配を見せていますし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は60%を超えて少し上昇のトレンドとも見えますが、まったく力強さに欠けており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけは、グングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善の重要なポイントである賃上げ、あるいは、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。ですから、経済政策の観点から見て、企業活動が回復ないし拡大し、所得低迷の激しい家計との格差が無視できないとすれば、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階、特に、消費税率引き上げを目前にして、何らかの家計に対する所得増加を志向すべきではないか、と私は考えています。

最後に、本日の法人企業統計などを受けて、来週月曜日の9月9日に内閣府から4~6月期のGDP統計2次QEが公表される予定となっています。直感的には下方改定なんでしょうが、改定幅はごくわずかで大きな変化ないんではないか、と私は予想していますが、また、日を改めて取り上げたいと思います。
Entry No.6328  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月30日 (金) 19:40:00

増産に転じた鉱工業生産指数(IIP)と減少に転じた商業販売統計とタイトな労働市場を反映する雇用統計!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から+1.3%の増産を示した一方で、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲2.0%減の12兆1650億円、季節調整済み指数も前月から▲2.3%減を記録しています。他方、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.2%とバブル経済崩壊直後からほぼ四半世紀ぶりの低い水準にあり、有効求人倍率は前月から▲0.02ポイント低下したものの1.59倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産1.3%上昇 7月、反発力は弱く
経済産業省が30日発表した7月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比1.3%上昇の102.7だった。上昇は2カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.3%上昇)を上回った。6月に大幅に低下した反動が見られたが反発力は弱かった。
経産省は生産の基調判断は「生産は一進一退」を据え置いた。
業種別では、15業種中11業種で上昇した。前月に8.4%減少した自動車工業は2.1%上昇だった。乳液・化粧水類などを含む化学工業は新商品発売もあり4.7%上昇した。パルプ・紙・紙加工品工業は7.4%上昇した。
一方、無機・有機化学工業は3.9%低下、石油・石炭製品工業は3.8%低下した。
出荷指数は2.6%上昇の102.4と2カ月ぶりに上昇した。鋼船や航空機用発動機部品など自動車を除く輸送機械工業が40.0%増加した。
高水準にある在庫は0.3%低下の104.4と6カ月ぶりに低下した。
製造工業生産予測調査によると、8月は1.3%上昇、9月は1.6%の低下だった。経産省は「生産計画からは消費増税前の駆け込み需要を見込んでいるとは読み取れない」と説明している。
同予測は下振れしやすく、経産省が予測誤差を除去した先行きの試算は8月は0.7%低下だった。
7月の小売販売額2%減 21カ月ぶり減少 基調判断「一進一退」に下げ
経済産業省が30日発表した7月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比2.0%減の12兆1650億円と、21カ月ぶりに減少に転じた。経産省は小売業の基調判断を「一進一退の小売業販売」へと下方修正した。
業種別で見ると、9業種のうち6業種でマイナスとなった。7月は天候不順で例年に比べ気温が低かったことからエアコンの売れ行きが伸びず、「機械器具小売業」が8.1%減となった。「燃料小売業」は原油相場が下落したことを受けて6.0%減だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が4.5%減の1兆6242億円だった。既存店ベースでは4.8%減だった。コンビニエンスストアの販売額は1.3%減の1兆760億円と、13年2月以来6年5カ月ぶりに減少に転じた。天候不順でアイスクリームなどの加工食品の販売が振るわなかった。
7月の有効求人、3カ月連続で低下 製造業など減速
厚生労働省が30日に発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は前月に比べて0.02ポイント低下し、1.59倍だった。3カ月続けて前月を下回った。総務省が同日発表した失業率(同)は同0.1ポイント低下し2.2%と、26年9カ月ぶりの低水準だった。雇用情勢は全体では底堅いが、製造業などの一部の業種で採用に慎重な動きが出ている。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業からの求人が1人当たり何件あるかを示す。有効求人倍率が1.6倍を割り込むのは1年4カ月ぶりだ。正社員の有効求人倍率も1.14倍と前月から0.01ポイント低下。雇用の先行指標となる新規求人倍率も同0.02ポイント低下し2.34倍だった。
新規求人数は前年同月比2.5%増の98万223人となった。業種別では人手不足の建設業や医療・福祉業などが増加した。一方、半導体関連の市況悪化の影響などで製造業は同5.9%減と6カ月続けて減った。
失業率は1992年10月以来の低水準となった。完全失業者数は前年同月比16万人減の156万人で、2カ月連続で減少。就業者数は同71万人増の6731万人。女性や高齢者で働く人が増え、6年7カ月連続で増加した。


これだけの統計を並べると、とても長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。消費の代理変数である小売業販売額を中心に見ると、基本的には、7月の天候不順、というか、

photo


まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは小幅ながら+0.3%の増産なんですが、レンジでは▲0.6~+1.5%と広かったですから、上限を突き抜けての大きな増産とまでは考えられず、むしt、増産に転じたものの基調はまだ力強さにかける、と私は受け止めています。同時に、製造工業生産予測指数による先行き見通しについても、9月+1.3%の増産の後、10月は▲+1.6%の減産と見込んでいて、加えて、製造工業生産予測指数はバイアスの大きい統計であり、予測誤差の加工を行った補正値では9月▲0.7%の減産と試算されており、先行きも増産が続くかどうかは疑問が残ります。もちろん、生産が減速している大きな原因は米中間の貿易摩擦などに起因する世界経済の低迷にありますが、今年2019年年央に来て内需についても、決して、4~6月期GDP統計に示されたように、盤石ではないと私は感じ始めています。ひとつには、昨日取り上げた消費者態度指数ぬ示されているように、消費者マインドが長期に落ち続けており、加えて、賃金上昇が十分ではないわけですから、消費に陰りが見え始めても不思議ではありません。この後、商業販売統計で詳しく見ますが、8月の消費は天候要因もあるものの、かなり大きな落ち込みを見せました。

photo


続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。天候要因、すなわち、引用した記事にもあるように、長梅雨で気温が上がらずエアコンの売れ行きが伸びなかったことから機械器具小売業が▲8.1%減の大きな前年同月比マイナスを記録したほか、 織物・衣服・身の回り品小売業も夏物衣類の販売不振などから▲5.3減となっています。ただ、燃料小売業のマイナスについては国際商品市況における石油価格の下落を反映しているわけですから、懸念材料とはなりません。何といっても、マクロでボーナスをはじめとして賃上げが不十分で所得がそれほど増加しない上に、世界経済の動向の反映も含めて消費者マインドが低下し続けているわけですから、消費が増えるとはとても思えません。それに天候要因が加わりましたので、ウrのグラフのような大きな下振れにつながったと考えるべきです。ただ、9月に入れば、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要が発生する可能性はあります。キュッシュレス決済に対するポイント還元がありますので、大物家電などよりも洗剤やトイレットペーパーなどの日用品かもしれませんが、私はそれなりに注目しています。

photo


続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は2%台前半まで低下し、有効求人倍率も1.59倍と高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.14倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年以上に渡って1倍以上の水準で推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近いタイトな状態にあると私は受け止めています。もっとも、雇用は生産の派生需要であり、生産が鉱工業生産指数(IIP)で代理されるとすれば、基調判断は「一進一退」であり、先行き、賃金上昇に直結するかどうかはビミョーなところです。加えて、今週火曜日の8月27日に日本政策金融公庫から8月調査の「中小企業景況調査」の結果が公表されていますが、ここ2~3か月で 従業員判断DIが急速な勢いで低下し、中小企業で人手不足感が大きく縮小し始めています。1990年代前半のバブル経済崩壊後はいうに及ばず、サブプライム・バブル崩壊後の景気後退局面でも、2007年年央から約2年後の2009年年央にかけて雇用指標が急速に悪化したのを忘れるべきではありません。すなわち、失業率はボトムだった2007年7月の3.6%から、ピークの2009年7月には5.5%まで、2%ポイント近く上昇しましたし、有効求人倍率もピークの2007年6月1.07倍から2009年8月のボトム0.42倍へ半減以下の減り方でした。繰り返しになりますが、雇用は生産の派生需要であり、人手不足による雇用のタイトさが賃金上昇をそれほどもたらしていない現状では、景気回復をどこまで下支えできるかは疑問です。
Entry No.6323  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月29日 (木) 23:30:00

まだまだ低下する消費者態度指数は11か月連続で前月を下回る!!!

本日、内閣府から8月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、8月はまたまた▲0.7ポイント低下して37.1となり、何と、11か月連続で前月を下回りました。統計作成官庁である内閣府では、8月の消費者マインドの基調判断は、「弱まっている」に据え置いています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

8月の消費者態度指数、0.7ポイント低下 11カ月連続で前月下回る
内閣府が29日発表した8月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.7ポイント低下の37.1だった。前月を下回るのは11カ月連続。前回消費税率を引き上げた2014年4月以来、5年4カ月ぶりの低水準となった。10月の消費増税を控え、消費者心理が低迷している。内閣府は基調判断を「弱まっている」に据え置いた。
指数を構成する4つの意識指標のうち、横ばいだった「収入の増え方」を除く3つの指標が低下した。「暮らし向き」は1.0ポイント低下の34.8、「雇用環境」は0.4ポイント低下の42.2。「耐久消費財の買い時判断」は1.7ポイント低下の31.7と落ち込みが目立った。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は、前月比0.1ポイント低下の87.0%だった。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と答えればゼロになる。
調査基準日は8月15日。調査は全国8400世帯が対象で有効回答数は6661世帯、回答率は79.3%だった。


いつものように、とてもコンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


季節調整済み指数の前月差で見て、消費者態度指数を構成するコンポーネント4項目のうち、「収入の増え方」だけが前月から横ばいだった一方で、残りの3項目がすべてがマイナスを示し、そのマイナス幅の大きい順に、「耐久消費財の買い時判断」▲1.7ポイント減が特に大きな落ち込みを見せており、先月統計公表時にも指摘しましたが、夏季ボーナスを手にして消費税率引き上げを控えた時期であるにもかかわらず、耐久消費財を購入しようという意欲が大きく低下しているわけです。従って、かなり消費者マインドは深刻と私は受け止めています。加えて、「暮らし向き」▲1.0ポイント減、「雇用環境」がかろうじて▲0.4ポイント減、となっています。繰り返しになりますが、「耐久消費財の買い時判断」は、先月と今月だけでなく、今年2019年2月から8月の6か月の落ち込みを累積すると、何と、▲9.2ポイント減に達します。指数の水準としても4つのコンポーネントのうちで最も低くなっています。「雇用環境」や「収入の増え方」が落ちている中でも低下幅が小さいのに対して、「耐久消費財の買い時判断」の低下幅が大きくなっており、デフレ・マインドがまだ払拭されていないことの表れであろうと私は受け止めています。よくないとはいっても、雇用と収入はそれほど大きな悪化を見せていない一方で、耐久消費財の支出が大きく絞られているわけです。何らかの将来不安から支出が細っているわけで、家計の懐を温める政策が必要かもしれません。それにしても、消費者マインドの悪化はどこまで続くんでしょうか?
Entry No.6322  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月28日 (水) 19:20:00

今日から横浜で始まった第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に期待する!

photo


今日8月28日から3日間の予定で横浜市のパシフィコ横浜にて第7回アフリカ開発会議 (TICAD7) が開催されます。"TICAD" とは、Tokyo International Conference on African Development (アフリカ開発会議) の略であり、アフリカの開発をテーマとする国際会議です。1993年の TICAD Ⅰを東京で開催して以来、日本政府が主導して、国連、国連開発計画、世界銀行、アフリカ連合委員会と共同で数年おきに開催しています。2016年にケニアの首都ナイロビにて開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD Ⅵ)で採択される「ナイロビ宣言」では、アフリカの緊急の課題として(1)産業化、(2)保健、(3)社会の安定、の3本柱を立て、それぞれに女性や若者、および障害者など脆弱性を抱えた人々を重視する必要性を強調しました。
私個人にとって、経済開発も含めて働いた経験は、アジアの国インドネシアの首都ジャカルタと中南米チリの首都サンティアゴだけで、実は、アフリカには行ったことすらないんですが、2015年に採択された国連「持続可能な開発目標」(SDGs) 推進のためにはアフリカが重要な役割を担うことはいうまでもありません。アフリカ開発に関して日本が明示的に貢献し、会議名に「日本」、というか、正確には「東京」が入る数少ない国際会議です。今は開発経済学からやや離れたお仕事をしていますが、私も大いなる期待をもって注目したいと思っています。

最後に、どうでもいいことながら、第6回会議までローマ数字を使っていたように私は記憶しているんですが、今回第7回会議からロゴに入れやすいのか、アラビア数字を使うようになったみたいです。
Entry No.6320  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月27日 (火) 19:55:00

7月統計から企業向けサービス価格指数(SPPI)の先行きをどう見るか?

本日、日銀から7月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.5%を示しています。前月の+0.7%からこのところ上昇率が縮小しつつあるものの、引き続きプラスの伸びを続けています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率もヘッドラインと同じ+0.5%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の企業向けサービス価格、前年比0.5%上昇 17年1月以来の低さ
日銀が27日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は102.9となり、前年同月比0.5%上昇した。伸び率は4カ月連続で縮小し、17年1月(0.5%上昇)以来の低い伸びだった。
人件費の上昇圧力を反映し、全体としてはプラスの伸びが続いているものの、これまで相応の値上げを実施してきた運輸・郵便や情報通信などで値上げに一服感が出てきた。米中貿易摩擦を背景にした貿易取引の減少で、国際航空貨物輸送が前年比で大きくマイナスとなったことも指数を押し下げた。
前月比では0.1%上昇した。夏休みシーズンで航空運賃の値上がりを反映し、国内航空旅客輸送が前月比プラスとなるなど運輸・郵便が指数を押し上げた。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。


いつものように、コンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は、昨年2018年10~11月には+1.4%を示していましたが、半年ほどで急速に上昇幅を縮小させ、最近では今年2019年4月が+1.0%とギリギリ+1%に達していたんですが、5月には+0.9%、6月は+0.7%、そして、直近で統計が利用可能な7月には+0.5%まで上昇幅が縮小しました。ただ、前年同月比に対する大類別の寄与度で見ると、相変わらず、人手不足の分野の影響は残っており、⅓強のウェイトを占める諸サービスがヘッドラインの+0.5%の上昇に対して+0.34%と⅔の寄与を示し、労働者派遣サービス、土木建築サービス、警備などが例示として上げられます。続いて、道路貨物輸送、鉄道貨物輸送、こん包が例示されている運輸・郵便が+0.14%の寄与と、ほぼこの2分野で+0.5%のヘッドライン上昇率を説明できてしまいます。従って、米中貿易摩擦などに起因する世界経済全般の減速による影響が需給ギャップに及んでいると考えるべきです。
さらに、前月の6月統計から今月への前年同月比の変化、すなわち、6月の+0.7%上昇から7月の+0.5%上昇への▲0.2%ポイントの上昇幅縮小を、大類別の前年同月比寄与度の前月差で見ると、不動産が▲0.05%、諸サービス▲0.03%と大きかったんですが、小類別ではインターネット広告の▲0.07%が目立っています。インターネット広告に限らず、新聞でもテレビでも、全般的に、広告は景気に対して敏感な項目であり、現在の需給ギャップとともに今後の景気動向を考える上で注目しています。
Entry No.6319  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月26日 (月) 22:50:00

リクルートジョブズによる7月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日8月30日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる7月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

photo


ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の7月度平均時給は前年同月より+2.4%、+25円増加の1,054円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+37円、増減率+3.4%)、「フード系」(+27円、+2.8%)、「販売・サービス系」(+27円、+2.6%)、「製造・物流・清掃系」(+21円、+2.6%)など、全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏・東海・関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、今年2019年3~5月はマイナスを示していたんですが、6月統計では前年同月より+0.2%、+3円増加の1,641円となった後、最新の7月統計では。ふたたび▲10円減、▲0.6%減を記録しました。職種別では、「IT・技術系」(前年同月比増減額+69円、増減率+3.4%)、「クリエイティブ系」(+46円、+2.7%)、「医療介護・教育系」(+28円、+2.0%)、「オフィスワーク系」(+18円、+1.2%)の4職種がプラスなんですが、「営業・販売・サービス系」(▲20円減、▲1.4%減)がマイナスとなっています。また、地域別でも、関東・東海がマイナスとなった一方で、関西はプラスを記録しています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトでは人手不足の影響がまだ強い一方で、派遣スタッフ賃金は伸びが鈍化しつつある、と私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用にはいっそうの注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。
Entry No.6318  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月23日 (金) 19:45:00

7月統計では消費者物価指数(CPI)の緩やかな上昇が続く!

本日、総務省統計局から7月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月と同じ+0.6%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価、7月0.6%上昇 緩やかな上昇続く
総務省が23日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.5と前年同月比0.6%上昇した。プラスは31カ月連続。伸び率は前月と同じだった。QUICKがまとめた市場予想の中央値は同じく0.6%上昇だった。
菓子類など、生鮮食品を除く食料で広がっている値上げの流れが物価を押し上げた。高止まりしている電気代やガス代、人件費が高騰している外食なども、物価上昇に寄与した。
電気掃除機など家庭用耐久財も上昇した。総務省は「新製品の発売に加え、消費増税前の駆け込み需要の影響もありそうだ」との見方を示した。
一方、ガソリン価格の下落傾向や、大手各社の値下げによる携帯電話の通信料の下落が物価の下げ圧力となった。
生鮮食品を除く総合では302品目が上昇した。下落は164品目、横ばいは57品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.5と前年同月比0.6%上昇した。生鮮食品を含む総合は101.6と0.5%上昇したが、キャベツなど生鮮野菜の値下がりが物価上昇を抑えた。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入れずにコア財に含めています。政府の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

photo


ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.5~+0.6%のレンジで中心値が+0.6%でしたので、ジャストミートしたといえます。加えて、6月統計から7月にかけての変化はそれほど大きくなく、私がいつも物価への影響力大きいと分析しているエネルギーについても、前年同月比寄与度で+0.04%のプラス寄与に過ぎませんでした。いわゆる小動きであり、10月の消費税率引き上げを前に企業が様子見をして価格の動きが小さくなっているそうな気すらします。もっとも、石油価格は下落を続けており、ガソリンの寄与度▲0.10%を含めて、石油製品の寄与は▲0.09%とマイナスであり、石油価格からラグをもって変動する電気代とガス代の寄与度が合わせて+0.14%ありましたので、エネルギー全体としてのくくりではプラス寄与を示しています。6月から始まった携帯電話、特に、スマートフォンの通信料の値下げについては、先月6月統計の通信料(携帯電話)が前年同月比で▲5.8%の下落、前年同月比への寄与度で▲0.12%に達していましたが、本日公表の7月統計では前年同月比で▲5.7%の下落、前年同月比への寄与度でも前月統計と同じ▲0.12%を示しています。先月のCPI統計公表時にも、このブログに書いた記憶がありますが、10月から消費税率が引き上げられる一方で、幼児教育の無償化が同時に始まれば、エネルギー価格の鈍化と相まって、この先CPI上昇率はさらに縮小する可能性が高いと私は予想しています。すなわち、消費税率引き上げの影響を除くベースで考えて、当面の足元では6月統計並みの+ゼロ%台半ばが続き、10月以降はゼロ%台前半にまで上昇率が縮小する可能性が十分あると見込んでいます。
Entry No.6313  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月22日 (木) 19:50:00

デロイトトーマツ試算のFTA活用による関税削減可能額やいかに?

今週月曜日8月19日にデロイトトーマツから「FTA活用による関税削減可能額 2019年に約1.1兆円」と題するニュースリリースが明らかにされています。試算の詳細を含めたpdfのリポートもアップされています。国別の削減可能な関税額は以下の通りです。

photo


縮小してしまったため、見にくくなっていますが、対象国別の削減額では、日EU EPAを締結したEU向け輸出が2019年に最大で約1708億円、ついでメキシコ向けが1557億円、マレーシア向けが1456億円となっています。もちろん、試算したデロイトトーマツではFTAの積極的な活用、さらに、締結国の拡大をオススメしています。

最後に、上の画像の米国を除く一番下の2国、すなわち、ペルーとチリなんですが、国旗が間違って逆になっています。私はペルーには行ったことがありませんが、チリでは経済アタッシェとして大使館に3年間勤務しました。それなりに馴染みあるこの両国の国旗取り違えはとても残念です。
Entry No.6311  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月21日 (水) 19:20:00

日経シサーチによるQR決済サービス利用者・非利用者のCrossMappingやいかに?

今週月曜日8月19日に日経リサーチから20~39歳のミレニアル世代を対象としたQR決済サービス利用の現状に関するネット調査結果が明らかにされています。私のような定年退職者は対象外の調査なんですが、まず、グラフは省略して、ミレニアル世代ですら、QRコード決済を使っているのは31.1%にとどまっています。利用頻度で見て、LINE Payと楽天PayとPayPayがビッグスリーとなっており、登録・保有比率が20%を超えています。続いて、d払い、QUIC Pay、メルペイ、Origami Pay、au Pay、Amazon Pay、ゆうちょPayの順となっています。繰り返しになりますが、ビッグスリーでも登録・所有者が20%程度、年に数回以上の利用者が13~14%程度にとどまっています。まあ、先日、7Payが大きくコケて9月30日でサービス終了となりましたが、背景として我が国でのQRコード決済の低調さが上げられるかもしれません。そして、日経リサーチの分析手法として有名なCrossMappingによるミレニアル世代のQRコード決済の利用者・非利用者のマッピングは以下の通りです。日経リサーチのサイトから、図2. QR決済利用者の特徴マップ と図3. QR決済非利用者の特徴マップ の画像を私の方で結合させています。

photo


まず、上のパネルですが、QRコード決済サービス利用者の特徴をいくつか取りまとめ他グループがあり、左上の「バーチャル先端」グループから順に時計回りに解説があり、まず、第1に、「バーチャル先端」は先端的なツールやサービスの中でも、バーチャルな体験を好むグループであり、第2に、「リアル先端」は先端的なツールやサービスの中でも、リアルな体験を伴うものを利用し、利便性の向上を重視するグループとされています。第3に、「日用品ネット購入」はそのまんまで、楽天市場やメルカリなどで日用品を購入するグループです。第4の「娯楽品ネット購入」も同じで、特に、キャンペーンを利用してネットでダウンロードも含めて娯楽品を購入するグループだそうです。第5に、「現金代替」はネットではなく、実店舗でQR決済サービスを利用するグループであり、ポイント還元や現金・小銭を使わなくて済む利便性にメリットを感じていて、当然ながら、利用可能な店舗が増えることを期待している、とされています。最後に、「メルカリ利用」もその名の通りで、先端的なサービスの中でも、敷居の低いメルカリをよく利用するグループです。
次に、下のパネルの非利用者の特徴も、いくつかのグループに分けてあります。これも左上の「安全性希求」から時計回りに説明があり、第1に「安全性希求」はその名の通り、サービスの安全性が担保されているのかどうかに関心があり、使っていないグループです。第2に、「プロセスが面倒」もそのまんまであり、サービスの登録自体が面倒であるとともに、いちいちスマートフォンを取り出して店員に伝えることも面倒であると考えて利用していないグループです。もしも、我が家の上の倅がQRコード決済サービスを利用していないとすれば、ほぼほぼ間違いなくこのグループだろうと私は考えます。次に、第3に、「セキュリティー不安」が上げられていますが、最初の「安全性希求」との違いが私にはよく理解できませんでした。第4に、「利用困難」があり、高齢者などではなくミレニアル世代でも機械操作の不慣れとか、あるいは、可処分所得が低いとかで、そもそもの環境的に、あるいは、QR決済サービスの利用が難しいなどのグループです。最後の第5に、「ワンストップ化不安」として、携帯電話やスマートフォンを保有しておらず、スマホを利用したサービスそのものに対して不安がある、あるいは、スマホのみを利用し、依存してしまうことに不安を抱いているグループが上げられています。

私自身はQRコード決済は使っておらず、上の非利用者の特徴からすれば、たぶん、我が家の上の倅と同じで「プロセスが面倒」なんだろうと思います。カード型のNANACOやWAONといった流通系の電子マネーは使っていますし、もちろん、交通系も利用しています。我が家の公共料金はほぼほぼ私のクレジットカードで支払っていますので、キャッシュレス決済は毎月数万円に上ることもあり、決して現金決済に頼っているわけでもなく、まずまずキャッシュレス決済の利用は進んでいる気もします。まあ、QRコード決済サービスでなくても、ほかにもポイントも付けば小銭もいらないなどの利便性が高い決済サービスがある、ということかもしれません。いずれにせよ、7Payは大きくコケましたが、10月の消費税率引き上げに伴うキャッシュレス決済のポイント還元もあり、このリポートで取り上げられたQRコード決済だけでなく、電子マネーやクレジットカードも含めて、現金離れが進むのは間違いありません。
Entry No.6309  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月20日 (火) 22:40:00

10月の消費税率引き上げを経て今年度末くらいまでの短期経済見通しやいかに?

先日8月9日に内閣府から公表された本年4~6月期GDP統計速報1次QEを受けて、シンクタンクや金融機関などから2020年度末くらいまでの短期経済見通しがいっせいに明らかにされています。四半期ベースの詳細計数まで利用可能な見通しについて、本年度2019年度末まで取りまとめると以下の通りです。なお、下のテーブルの経済見通しについて詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。計数の転記については慎重を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、各機関のリポートでご確認ください。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名2019/4-62019/7-92019/10-122020/1-3FY2019
actualforecast
日本経済研究センター+0.4
(+1.8)
+0.1
(+0.3)
▲0.8
(▲3.3)
+0.0
(+0.1)
+0.7
日本総研(+0.6)(▲2.9)(+1.5)+0.8
大和総研+0.0
(+0.1)
▲0.4
(▲1.7)
+0.3
(+1.0)
+0.9
みずほ総研+0.0
(+0.2)
▲0.9
(▲3.4)
+0.1
(+0.3)
+0.7
ニッセイ基礎研+0.2
(+0.7)
▲0.6
(▲2.5)
+0.1
(+0.4)
+0.4
第一生命経済研+0.1
(+0.3)
▲0.5
(▲2.1)
+0.2
(+0.6)
+0.9
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.2
(+0.6)
▲0.6
(▲2.4)
+0.2
(+0.7)
+0.9
三菱総研+0.1
(+0.2)
▲0.6
(▲2.5)
+0.1
(+0.5)
+0.7
SMBC日興証券▲0.6
(▲2.3)
+0.5
(+1.8)
+0.0
(+0.1)
+0.9
農林中金総研+0.0
(+0.0)
▲0.5
(▲2.0)
▲0.4
(▲1.5)
+0.7
明治安田生命+0.0
(+0.1)
▲0.6
(▲2.2)
+0.1
(+0.4)
+0.8


一番右の列の2019年度成長率は前年度比そのままですが、四半期成長率については上段のカッコなしの数字が季節調整済み系列の前期比で、下段のカッコ付きの数字が前期比年率となっています。2019年4~6月期までは実績値、7~9月期からは見通しであり、すべてパーセント表記を省略しています。なお、日本総研のリポートでは前期比年率の成長率しか利用可能ではありませんでした。ということで、見れば明らかなんですが、10月からの消費税率の引き上げの前後の動向については、かなり多くの機関で足元の7~9月期の駆け込み需要はそれほど大きくなく、年率成長率でも潜在成長率水準の+1%に達しない一方で、10~12月期には消費税率引き上げによる成長率の落ち込み、マイナス成長を見込む結果となっています。唯一の例外はSMBC日興証券であり、実は、私はこのSMBC日興証券の「ハウスビュー」の経済見通しの詳細バージョンのニューズレターをメールでもらっているんですが、それを参照するまでもなく、キャッシュレス決済を対象とする5%ポイント還元などの駆け込み需要と反動減をスムージングする政府対策などにより、逆に、7~9月期に買い控えが起こり、増税後の10~12月期にその反動増が生ずる、と見込んでいるようです。官庁エコノミストの経験ある私の目から見て、とても大きな疑問符がつきますし、上のテーブルを見ても、かなりの少数意見のような気がします。
もうひとつの観点は、消費税率引き上げのショックがどの程度長引くかで、これも、多くの機関はマイナス成長は1四半期だけで、来年2020年1~3月期にはプラス成長に回帰すると見込んでいます。逆にいえば、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要がそれほど大きくない、ということの裏返しなのであろうと私は受け止めています。この点の少数意見は農林中金総研であり、2020年1~3月期までマイナス成長が2四半期連続で継続すると見込んでいます。ただ、上のテーブルでは省略していますが、農林中金総研のリポートでも2020年4~6月期にはプラス成長に回帰すると予測しています。もしも、農林中金総研の見通しが正しければ、世間では2四半期連続のマイナス成長でテクニカルな景気後退局面入りのシグナルと受け取る可能性がないでもありませんが、まあ、2020年に入れば、東京オリンピック・パラリンピックの経済効果などもあって、それほど長くマイナス成長は続かないんでしょうね。
下のグラフは日本経済研究センターのサイトから短期経済見通しの前期比と寄与度のグラフを引用しています。

photo


最後に、私が知る限り、浜銀総研と富国生命が年度半期の上半期と下半期のベースの見通しを、また、信金中金地域・中小企業研が年度の見通しを、それぞれプレスリリースしています。四半期ベースの見通しが利用可能ではなかったので上のテーブルには含めていません。ほかにもあるのかもしれませんが、取りあえず、これら3機関をどうしても見たい方は、下にリンクだけ置いておきます。
Entry No.6308  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月19日 (月) 22:50:00

貿易収支が赤字に転じた7月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から7月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲1.6%減の6兆6432億円、輸入額も▲1.2%減の6兆8928億円、差引き貿易収支は▲2496億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の貿易収支、2カ月ぶり赤字 中国向け輸出は5カ月連続減
財務省が19日発表した7月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2496億円の赤字だった。赤字は2カ月ぶり。中国向けの半導体等製造装置や自動車部品の輸出が大幅に落ち込んだ。
全体の輸出額は前年同月比1.6%減の6兆6432億円だった。輸入額は1.2%減の6兆8928億円で、イランからの原粗油などの輸入が減った。
中国向けの輸出額は9.3%減の1兆2288億円と、5カ月連続で減少した。財務省は「中国経済が減速している影響を受けた可能性がある」との見方を示した。一方、中国からの輸入額は2.8%増の1兆6126億円と3カ月ぶりに増加した。パソコンなど電算機類(含む周辺機器)の輸入が増えた。
韓国向けの輸出額は6.9%減の4363億円と、9カ月連続で減少した。半導体等製造装置などの輸出が大幅に減少した。日本政府による韓国向けの半導体材料などの輸出管理の強化について、財務省は「(対象となった)3品目は、貨物の形態などによって様々な統計品目番号に分類される可能性がある」と、貿易統計への具体的な影響を示すことは困難と説明している。
対米国の貿易収支は5794億円の黒字だった。半導体等製造装置や建設用・鉱山用機械の輸出が増えた。対欧州連合(EU)の貿易収支は679億円の赤字だった。
7月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=108円00銭で、前年同月に比べ円高・ドル安に振れた。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は▲2000億円の赤字とのことでしたので、実績はこれをやや上回る貿易赤字となりました。ただし、輸出入ともに前年同月から数パーセント減少した上での差し引きの貿易赤字ですから、まあ、縮小均衡と捉える向きもあるかもしれません。もちろん、我が国を含めて世界経済の減速が大きな要因となった輸出入額の減少と考えるべきです。やや別の観点ながら、先月の貿易統計公表時の論評で、韓国との6月統計での貿易額が2桁減となっている点を指摘しましたが、7月統計では引き続き前年同月比マイナスながら下げ幅は縮小しています。ただ、制度的な要因で管理が強化される直前の駆込みがあったとの指摘もあり、日韓貿易の減少に歯止めがかかったようには見受けられません。ですから、米中間の貿易摩擦とともに、マクロの世界経済の減速に加えて、東アジアにおける通商政策による貿易制限的な効果も我が国輸出入の低迷の一因となっていることは確かです。

photo


輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、まず着目すべきは、先月6月統計まではここ数か月の輸出額の減少はほぼほ数量が減少に寄与していたんですが、ようやく輸出に底入れの兆しが見えます。これは中国向け輸出の回復に依存するわけですが、もちろん、今後、5月に米国が発動した中国製品2000億ドルに対する25%の追加関税の影響が、中国経済に現れることが考えられます。マクロの中国経済はそろそろ底入れしたと考えるエコノミストは少なくないんですが、それほど単純なパスで中国経済が回復に向かうかどうかはまだ不確実性が高いと私は考えています。ただ、私がちょうだいしているシンクタンクのリポートのうちのいくつかで、財務省の公式発表ではなく各機関独自に季節調整を実施している例があり、繰り返しになりますが、輸出数量の季節調整値からは、そろそろ底入れの兆しがうかがえる、とするリポートも複数ありました。

我が国景気との関係で、もっとも避けたいシナリオは10月からの消費税率引き上げによる国内経済のダメージに加えて、同時に世界経済、特に、中国経済が米国の関税率の追加引き上げの影響により低迷し、我が国の中国向け輸出が減速して、内外需要が同時に低迷することです。しかし、米国の関税率引き上げはすでに発動されており、我が国の消費税率引き上げもほぼほぼスケジュールされていますので、このタイミングの問題はなかなかに悩ましいところかもしれません。
Entry No.6307  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月16日 (金) 19:50:00

帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査 (2019年)」の結果やいかに?

昨日、帝国データバンクから「女性登用に対する企業の意識調査 (2019年)」の結果が明らかにされています。女性管理職の割合は平均7.7%と前年比+0.5%ポイント上昇したなどとなっています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を4点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 女性管理職の割合は平均7.7%と前年比0.5ポイント上昇。「30%以上」とする企業は7.1%(同0.3ポイント上昇)と緩やかな増加をみせた。他方、女性管理職がいない企業は46.7%と半数近くにのぼるが、女性管理職の割合は上昇傾向にある。また、女性従業員の割合は平均25.2%で同0.3ポイント上昇、女性役員の割合は平均9.8%で同0.1ポイント上昇した
  2. 今後、女性管理職の割合が増えると見込んでいる企業は23.6%。また、今後女性役員の割合が増えると見込んでいる企業は7.6%だった
  3. 社内外を問わず女性の活用・登用を進めている企業は50.0%。その効果は、「男女にかかわらず有能な人材を生かすことができた」(68.0%)が約7割となり、突出して高い。以下、「多様な働き方が促進された」(28.4%)、「女性の労働観が変化してきた」(27.5%)が上位となった
  4. 女性の活躍を促進するために重視する上位3項目は、女性の家庭における負担軽減に関する項目が並ぶ。「妊娠・出産・子育て支援の充実」(60.5%)が6割超でトップ。次いで、待機児童や保育士不足の解消などの「保育サービスの充実」(59.0%)、育休復帰支援などの「仕事と子育ての両立支援」(58.4%)が続いた


もう上の調査結果概要以上の情報はほとんどないんですが、リポートからグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

photo


まず、リポートから 女性の割合(従業員・管理職・役員) の最近3年間の推移を示すグラフを引用すると上の通りです。レンジの構成比を示す棒グラフで見ても判りにくいので、右側の欄外ともいえる平均を見れば、従業員の中の女性比率はここ3年でジワジワと上昇し、今年2019年には25%を超えました。課長職以上の女性管理職比率も7.7%に達しています。やや不思議なのが、女性役員比率であり、管理職比率を上回る10%近くに達しています。創業者一族が多い可能性があると私は受け止めています。

photo


次に、リポートから 女性管理職の平均割合 - 規模別・業界別 の去年と今年の推移を示すグラフを引用すると上の通りです。去年と今年の2年間の推移ですので大きな違いはないんですが、規模別では規模が大きいほど女性管理職の登用が進んでいないのが見て取れます。また、 業界別では、「小売」、「不動産」、「サービス」で高く、「建設」、「運輸・倉庫」、「製造」などが低くなっています。私なりの偏った印象ながら、B to C の接客の要素多い業種で女性管理職比率が高いような気がします。それから、去年から今年にかけて押しなべて女性管理職比率が上昇している一方で、「農・林・水産」のような例外もあるものの、去年女性管理職比率が高かった業種は今年にかけての上昇幅も大きいんではないか、そして、逆は逆なんではないか、といった印象を持ちます。もしも、この傾向が続くとすれば、女性管理職比率の業種間の格差は拡大することになりかねません。時間がかかる課題とはいえ、何らかの意識的な取り組みの必要性を示唆しているような気がします。
Entry No.6301  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月15日 (木) 22:55:00

東京脱出組はどういう年齢層か?

参議院事務局から毎月「経済のプリズム」が公表されていますが、8月号の「東京は誰に住みよいか」と題するコラムを読みました。お盆の季節で、特段の経済情報もなく、軽く取り上げておきたいと思います。

photo


コラムでは、三大都市圏や東京圏への人口流入を歴史的に概観し、バブル崩壊後の1990年代なかばから東京一極集中が進んでいるように見えながら、すべての年代で東京への流入が進んでいるわけではないとし、年齢別に見て、0~14歳が流出超の▲2,489人、15~29歳の若年層はもっとも大きい流入超で+85,607人、30~64歳はそれほどの流入超はなく+240人、そして、65歳以上の高齢層は▲5,872人の流出超となっています。上のグラフは 2014-2018年(平均)の都道府県別の転入超過数 のグラフを参議院のコラムから引用しています。
見れば明らかな通り、8万人近い東京都への人口流入に対して、15~29歳の若年層はこれを上回る8.5万人超の流入超過がある一方で、30~64歳はほぼほぼゼロで、0~14歳の中学生以下層はマイナスですので、かなりの程度に子育てファミリーは東京から流出している可能性が指摘されています。65歳超の高齢層は特別養護老人ホームに入所できない、いわゆる「待機老人」が東京都外の施設に入所するのもさることながら、高齢者には住みにくい東京を脱出する向きも少なくないような気がします。

実は、私も今年3月にすでに定年退職し、もともとが関西圏の京都出身ですし、上の倅はすでに就職して独身寮に入り、下の倅は大阪で下宿しての学生生活ですから、関西圏に限らず、高齢層に入りつつある我が家も東京脱出を考えないでもありません。
Entry No.6300  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月14日 (水) 19:20:00

イレギュラーな大型受注で増加を示した機械受注の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から6月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、大型受注案件が入って、季節調整済みの系列で見て前月比+13.9%増の9603億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月機械受注、前月比13.9%増 鉄道車両の大型受注で
内閣府が14日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比13.9%増の9603億円だった。増加は2カ月ぶりで、市場予想の中央値である1.5%減を大きく上回った。伸び率は比較可能な2005年4月以降で最も高くなった。製造業の受注は減少した一方、非製造業が大きく伸びた。内閣府は「非製造業の運輸業・郵便業で、鉄道車両の大型受注案件が複数みられたことが大きく影響した」と分析した。
6月の受注額は製造業が1.7%減の3644億円だった。減少は2カ月連続。その他製造業で、火水力原動機や通信機などの受注が減った。非製造業は30.5%増の6147億円。増加は2カ月ぶり。大型案件のほか、その他非製造業で電子計算機等や原子力原動機の受注が増えた。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は12.5%増だった。
基調判断は「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。「6月は高い伸び率となった一方、前月がマイナスだったことなどを踏まえて、判断した」という。
4▲6月期は前期比7.5%増の2兆7169億円だった。増加は3四半期ぶりだが、3月末時点の見通しよりは低い伸び率となった。製造業は2.5%増、非製造業は13.1%増だった。
7▲9月期は前期比6.1%減と、2期ぶりに減少する見通し。製造業は2.8%増。工作機械や産業機械などの増加で2期連続で増加する見込み。非製造業は12.5%減と鉄道車両などの受注減で2期ぶりの減少となる見通し。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、季節調整済みのコア機械受注の前期比で▲1.5%減でしたから、実績の2桁増はちょっとびっくりでしたが、これも引用した記事にある通り、「非製造業の運輸業・郵便業で、鉄道車両の大型受注案件が複数みられたことが大きく影響した」とのことですので、どこまでが、いわゆる「実力」なのかは不明です。コア機械受注の前月比の伸びが+13.9%、ただし、産業別の内訳を少し詳しく見ると、米中間の貿易摩擦などで世界経済減速の影響大きい製造業は▲1.7%のマイナスであり、船舶と電力を除く非製造業は+30.5%増を示したものの、その中でも、運輸業・郵便業が大型案件の受注というイレギュラーな要因で+91.4%増を記録しています。ただ、5月から6月にかけての前月差を見ると、コア機械受注全体で+1175億円増、うち、イレギュラーな運輸業・郵便業は+845億円増ですから、この寄与が決定的に大きいとはいうものの、差額の+330億円増は残りの産業で叩き出していますので、季節調整済みの系列は個別の産業を足し合わせても合計と一致しないという留保条件はあるものの、決して、イレギュラーな大型案件だけでコア機械受注が前月比でプラスになったわけではない、と考えるべきです。さて、機械受注は変動の激しい指標ですので、6月統計が利用可能になった段階で、少し四半期統計にも目を向けておくと、まず、コア機械受注については、昨年2018年10~12月期▲3.2%減、今年2019年1~3月期も同じく▲3.2%減の後、4~6月期には+7.5%増を記録しています。上のグラフの上のパネルを見ても、太線の6か月後方移動平均のトレンドで見て、今年の1~3月期をボトムとしてジワリと4~6月期に増加しているのが見て取れます。ただし、同時に、先行き7~9月期の見通しは前期比でマイナスであり、コア機械受注が▲6.1%減の2兆5,525億円、内訳としては、製造業は+2.8%増である一方で、船舶と電力を除く非製造業は▲12.5%減と見込まれています。さのさらに先の先行きについては、製造業が世界経済の低迷により投資意欲が高まらず、緩やかな減少を示すと考えられる一方で、非製造業は人手不足などに対応する省力化や合理化投資が伸びる余地があり、投資も増加すると考えられます。ただ、コア機械受注全体としては横ばいないし緩やかな減少ではないか、と私は予想しています。

photo


機械受注の四半期データが利用可能となりましたので、コア機械受注の季節調整済みのベースでの達成率のグラフを久し振りに書いてみました。上の通りです。エコノミストの経験則として、コア機械受注の達成率90%が景気転換点といわれているんですが、今年2019年1~3月期に96.3%を記録した後、4~6月期は91.2%まで低下しています。このまま7~9月期に90%を下回る可能性も否定できません。
Entry No.6298  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月13日 (火) 20:05:00

7月統計で下落幅が拡大した企業物価(PPI)の今後の方向感やいかに?

本日、日銀から7月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲0.6%の下落と、先月統計からマイナスに転じて、今月はマイナス幅が拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の企業物価指数、前年比0.6%下落 16年12月以来の下げ幅
日銀が13日発表した7月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は101.2で前年同月比で0.6%下落した。下落幅は2016年12月以来2年7カ月ぶりの大きさ。6月に2年6カ月ぶりのマイナスとなったが、7月は2カ月連続での下落となった。
前月比でみると横ばいだった。米中貿易摩擦によるリスク警戒感の高まりで原油相場が下落し、「石油・石炭製品」「化学製品」「プラスチック製品」などが低下した。一方で夏季電力料金の適用期間に入ったことから「電力・都市ガス・水道」が上昇した。夏季電力料金の影響を除くと前月比0.2%のマイナスとなっている。
円ベースでの輸出物価は前年比で4.7%下落し、3カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.3%下落した。輸入物価は前年比8.1%下落し、3カ月連続のマイナスとなった。前月比では1.8%の下落となった。中国経済の先行き不透明感の強まりで「化学製品」などが低下した。軟調な原油相場も下落に影響した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは373品目、下落したのは280品目だった。上昇と下落の品目差は93と6月の確報値(122品目)から29品目減った。
日銀の調査統計局は「米中貿易摩擦の影響で商品市況が悪化しており、これが物価下落の要因となっている。今後も注視が必要だ」との見通しを示した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


企業物価指数(PPI)のうちのヘッドラインとなる国内物価は、前年同月比で見て先月公表の6月統計が2016年12月以来の1年半振りにマイナスに転じて▲0.1%を示した後、7月にはさらにマイナス幅を拡大して▲0.6%となりました。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、前年同月比で▲0.5%の下落ということでしたので、ほぼジャストミートしました。国際商品市況における石油価格の低迷により、国内物価のうちの石油・石炭製品が前年同月比で見て▲8.7%と下落幅を拡大し、輸入物価では石油・石炭・天然ガスが▲13.8%を記録しています。加えて、米中貿易摩擦に起因する中国経済の停滞などにより、同じく非鉄金属が▲6.7%、化学製品が▲3.7%、などと下落を続けています。上のグラフを見ても明らかな通り、ヘッドラインとなる国内物価も、輸出物価も輸入物価も、需要段階別で見て、素原材料も中間財も最終財も、すべて7月統計では前年同月比でマイナスを付けました。
人手不足の中で人件費比率の高い企業向けサービス価格指数(SPPI)を除けば、企業物価(PPI)が下落し始め、消費者物価(CPI)も上昇幅が縮小しています。先行きについても、本日公表のPPIでは国際商品市況や中国経済の影響を受け弱含みの動きが見込まれます。特に、円ベースの輸入物価の前年同月比上昇率は、昨年2018年8月にピークの+12.3%を付けていますので、来月統計までさらに下落幅を拡大する可能性があります。CPIも、10月から消費税率が引き上げられますが、その影響を除けば、幼児教育無償化のインパクトなどによりさらに上昇幅が縮小すると予想されています。ますます物価目標から遠ざかるような気がします。特に、気がかりなのは為替相場です。従来から、私は日本経済の先行き最大のリスクは為替相場であると強く主張してきていますが、東京市場におけるドル・円為替のスポット中心相場の月中平均の前年同月比で見て、今年2019年6月は▲1.8%、7月は▲2.8%の、それぞれ円高となっています。この6~7月の円ドル相場は108円台だったんですが、今週は105円台で推移していたりもします。広く報じられている通り、米国の連邦準備制度理事会(FED)が利下げに転じています。日銀はどういった動きを示すんでしょうか?
Entry No.6296  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月12日 (月) 20:40:00

いかにもスミ1の負けパターンで中日にボロ負け!!!

  RHE
阪  神100000000 140
中  日20020001x 590


中日にボロ負けでした。いかにものスミ1の負けパターンでした。投手は序盤から失点し終盤にはダメを押され、打線は1回こそ先取点を取ったものの、後が続かず4安打1得点で打ち止め、という情けないゲームでした。広島戦で連夜の大逆転劇を演じましたが、まあ、まぐれは続かないということなのかもしれません。昨年最下位ですから、今年は5位が目標なのかもしれません。

明日は、
がんばれタイガース!
Entry No.6295  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月12日 (月) 19:20:00

最新技術のAI・ドローン・自動運転に関連する法人設立やいかに?

先週木曜日の8月8日に東京商工リサーチから、「『AI・ドローン・自動運転』関連事業者の新設法人調査」の結果が明らかにされています。昨年2018年に設立された法人数は12万8,610社で前年から▲2.7%の減少だったんですが、このうち、主要事業目的として「AI」を記載した企業は211社で+52.8%の増加、すなわち、前年比1.5倍増と急増しています。また、「ドローン」を記載した法人は195社で+9.7%減ながら、「自動運転」を記載した法人は7社と+250.0%増となっています。少し長い目で見て2014年から2018年にかけて、特に、AIとドローンの法人設立が急増しています。これ以上の情報はありませんが、以下のグラフを東京商工リサーチのサイトから引用しておきます。

photo
Entry No.6294  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月09日 (金) 23:15:00

4-6月期GDP統計1次QEは内需がけん引して3四半期連続のプラス成長!!!

本日、内閣府から4~6月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.4%、年率では+1.8%の高い伸びを記録しました。3四半期連続のプラス成長で、4~6月期は前期よりも成長が減速したとはいえ、潜在成長率の+1%余りはやや上回っています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP実質1.8%増 4-6月期年率、消費などがけん引
内閣府が9日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.4%増、年率換算では1.8%増だった。3四半期連続のプラス成長となった。1~3月期は年率換算で2.8%増だった。個人消費が伸びたことや積極的な設備投資がプラス成長に寄与した。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.1%増で、年率では0.4%増だった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.4%増、年率では1.7%増だった。名目でも3四半期連続のプラスになった。
実質GDPの内訳は、内需が0.7%分の押し上げ効果、外需の寄与度は0.3%分のマイナスだった。
項目別にみると、個人消費が実質0.6%増と3四半期連続のプラスとなった。改元に伴う10連休で旅行などの支出が増え、個人消費を押し上げた。
設備投資は1.5%増で3四半期連続のプラス。人手不足で企業が省力化投資を積極化したことが寄与した。民間在庫の寄与度は0.1%のマイナスだった。
住宅投資は0.2%増。4四半期連続のプラスだった。持ち家を中心に10月に予定されている消費増税前の駆け込み需要がみられた。公共投資は1.0%のプラスだった。
輸出は0.1%減だった。中国をはじめとするアジア向け輸出が弱かった。輸入は前期の急激な減少の反動で1.6%増となった。輸入が増加し、輸出が減少となったため、GDPにはマイナス方向に作用している。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.4%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.4%のプラスだった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/4-62018/7-92018/10-122019/1-32019/4-6
国内総生産GDP+0.4▲0.5+0.4+0.7+0.4
民間消費+0.4▲0.1+0.4+0.1+0.6
民間住宅▲2.4▲2.1+0.8+1.4+1.1
民間設備▲1.9+0.8+1.3+0.6+0.2
民間在庫 *(▲0.1)(+0.2)(+0.1)(+0.1)(▲0.1)
公的需要▲0.2▲0.2+0.3+0.2+0.9
内需寄与度 *(+0.4)(▲0.3)(+0.8)(+0.3)(+0.7)
外需寄与度 *(+0.0)(▲0.2)(▲0.4)(+0.4)(▲0.3)
輸出+0.8▲2.1+1.2▲2.0▲0.1
輸入+0.8▲1.2+3.6▲4.3+1.6
国内総所得 (GDI)+0.3▲0.8+0.4+1.1+0.4
国民総所得 (GNI)+0.5▲0.9+0.5+0.9+0.5
名目GDP+0.2▲0.4+0.4+1.0+0.4
雇用者報酬 (実質)+1.2▲0.4+0.3+0.4+0.7
GDPデフレータ▲0.3+0.0+0.0+0.3▲0.0
内需デフレータ▲0.1+0.4+0.1▲0.1+0.1


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4~6月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、赤の消費と水色の設備投資がプラスの寄与を示している一方で、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がマイナスの寄与となっているのが見て取れます。

photo


一昨日に、民間シンクタンクの4~6月期1次QE予想を取りまとめた際に、私はほぼほぼゼロ成長ながら、マイナス成長であるとの見通しに言及しましたが、大きく外してしまいまして、誠に申し訳ありませんが、この貧弱なメディアですので、ご迷惑の範囲は限定的と勝手に考えております。引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前期比+0.1%、前期比年率で+0.4%、前期比年率のレンジで▲0.3~+1.7%の成長率予想でしたので、わずかとはいえ、レンジの上限を超える大きなプラス成長でした。1~3月期1次QEが5月に公表された際も、やっぱり、レンジの上限を上回る実績でしたので、2四半期連続でやや上振れサプライズだったともいえそうです。もちろん、1~3月期の上振れは内需の停滞が控除小目である輸入の減少を招いたという形で、きわめてイレギュラーな高成長でしたが、本日公表の4~6月期の高成長について、需要項目別に少し詳しく見ると、消費がプラスに外需がマイナス、というのは私も含めて多くのエコノミストの合意するところであり、おそらく、在庫がマイナスというのも無理ないところかと考えられる一方で、私が大きく外したのは設備投資であり、一昨夜の1次QE予想では設備投資はマイナスを予想していましたが、実績では季節調整済みの実質ベースの前期比で+1.5%増、成長率への寄与度も+0.2%の大きさでしたから、それなりに、「うれしい誤算」という言葉が当てはまりそうな気もします。外需=純輸出の寄与度は実績で▲0.3%であり、これはほぼほぼ予想通りの大きさでしたので、設備投資の予想と実績の上下の違いで、+0.3%ポイントくらいの成長率の上振れとなっている、と私は受け止めています。加えて、消費が改元の祝賀ムードと10連休で大きく盛り上がったのも成長率の上振れに寄与しています。下がり続けているマインドではなく、後に見るように、所得の寄与が大きかったと私は見ています。ここまで、長々と反省だったんですが、1次QEの前期比+0.4%成長を見る限り、1~3月期1次QE公表時とまったく同じ感想なんですが、これで、テクニカルな2四半期連続でのマイナス成長の判定による景気後退に対する懸念が大きく和らいだ、と私は考えています。ただ、少し前まで、10月からの消費税率引き上げ前に駆け込み需要がそれなりのボリュームであろうと考えていたのですが、逆に、ポイント還元などの駆け込み需要と反動減への対策の効果も含めて、駆け込み需要がそれほどは発生しない可能性もあるんではないかと考えたりします。他方で、駆け込み需要がどうであれ、消費税率引き上げ直後の10~12月期の消費がマイナスに落ち込み、おそらく、GDP成長率もマイナスを記録することは、それなりの確度で生じる可能性あると私は考えていますので、いずれにせよ、10月からの消費税率引き上げという攪乱要因の後の経済動向については、現時点では私は何とも確信を持った予想はできません。ただし、何度でも繰り返しますが、私は日本経済の先行きに関する最大のリスクは消費税率引き上げではなく為替レートだと考えています。貿易摩擦が激化すれば円高が進む可能性が高く、同時に、世界株安が進んでも円高に帰結する可能性が高い、という意味で、消費税率引き上げに起因する駆け込み需要とその後の反動減を乗り切ったとしても、まだまだ円レートという大きなリスクが残っている点は忘れるべきではありません。

photo


続いて、上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。4~6月期の消費の大きなプラスは、単に改元祝賀と長期休暇だけでなく、雇用者報酬の高い伸びにも支えらた消費拡大であったことが裏付けられています。インバウンド消費も順調な拡大を続けており、まだまだ拡大の余地はあると考えられるものの、かつて「爆買い」と称されたほどの爆発的な拡大はそろそろ安定化に向かっている印象です。まだ、消費者マインドは改善の兆しすら見えませんが、現在の人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加の方向の影響を及ぼすことが考えられますし、加えて、賃金が上昇して消費者マインドが上向けば、内需主導の成長がサポートされるものと考えます。もちろん、賃金上昇はデフレ脱却に向けて有効であることは明らかです。
Entry No.6289  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月08日 (木) 20:10:00

低下を続ける景気ウォッチャーと先行き不透明感残る経常収支!

本日、内閣府から7月の景気ウォッチャーが、また、財務省から6月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲2.8ポイント低下の41.2を、先行き判断DIも▲1.5ポイント低下の44.3を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆2112億億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の街角景気、現状判断は3年ぶり低水準 天候や日韓関係響く
内閣府が8日発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は41.2と前の月から2.8ポイント低下(悪化)し、2016年4月以来3年3カ月ぶりの低水準となった。悪化は3カ月連続。例年と比べ梅雨明けが遅く気温が低い日が続いたことが響いた。内閣府はウオッチャーの見方を「このところ回復に弱さがみられる」から「天候など一時的な下押し要因もあり、このところ回復に弱い動きがみられる」と4カ月ぶりに下方修正した。
家計動向、企業動向、雇用がいずれも低下した。家計動向関連は3.6ポイント低下の40.0だった。「梅雨が長く、例年よりも気温がかなり低いため、ドリンク類、冷たい調理麺、アイスクリーム等が前年より2~3割落ち込み、全体の売り上げを押し下げている」(北関東のコンビニ)といった天候不順に関する声が多かった。「韓国人の宿泊者が大幅に減少しており、しばらく続く見込みである」(九州の都市型ホテル)として、日韓関係の冷え込みの影響を指摘する声も増えた。7月は参院選があったため飲食店での会合が減少した影響もあるという。
企業動向関連は0.7ポイント減で、製造業がマイナス3.0ポイントと押し下げた。米中貿易摩擦による取引量の減少などを訴える声があった。雇用関連も2.3ポイント減の45.8で、「世界の経済情勢の不透明感から、製造業を中心に様子見感の広がりが懸念される」(東海地方の職業安定所)との声が聞かれた。
2~3カ月後の先行き判断指数は44.3と前月から1.5ポイント低下した。「10月の消費税引き上げにより、外食産業は悪くなるとみている」(北陸地方の一般レストラン)など増税後の消費動向を懸念する声が増えた。先行きについて消費税に関するコメント数は556と6月の450から増えた。
内閣府はウオッチャーの先行きの見方について「消費税率引き上げや海外情勢等に対する懸念がみられる」とまとめた。
6月の経常収支、1兆2112億円の黒字 60カ月連続黒字
財務省が8日発表した6月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆2112億円の黒字だった。黒字は60カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆1717億円の黒字だった。
貿易収支は7593億円の黒字、第1次所得収支は4273億円の黒字だった。
同時に発表した1~6月の経常収支は10兆4676億円の黒字、貿易収支は2242億円の黒字だった。


かなり長くなりました。これらの記事さえしっかり読めば、それはそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

photo


消費者マインドについては、需要サイドの消費医者態度指数に加えて、本日公表の供給サイドの景気ウォッチャーも、かなり大きく下げています。マインドは実体経済の先行指標ですから、この先に景気の停滞が待っている可能性が高いと考えざるを得ません。基本的には、米中貿易摩擦に起因する世界経済の停滞が背景にあるんでしょうが、直近7月統計については長引いた梅雨といった天候要因もありそうです。そこで、4月から7月にかけての3か月間において、景気ウォッチャーを構成する3つのコンポーネントの現状判断DIがどのように下げたかを少し詳しく見ると、家計動向関連が4月から▲4.7ポイント低下した一方で、企業動向関連は▲3.2ポイント、雇用関連が▲2.0ポイントの低下となっています。企業よりも家計のマインドの方がより大きく低下しているわけです。他方、人手不足を背景に雇用については家計部門の半分以下の下げ幅となっています。なお、4月から7月にかけて、家計が企業よりも大きく下げている点については現状判断DIだけでなく、先行き判断DIでもまったく同じだったりします。なお、引用した記事に見られる通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「回復に弱さ」から「回復に弱い動き」と4か月ぶりに下方修正しています。実は、この記事を見るまで、この基調判断の下方修正を見逃していたんですが、記者会見でそういった説明があったんだろうと想像しています。
いずれにせよ、上のグラフを見れば明らかで、消費者マインドはかなり長期にわたって低下を続けています。先週7月30日に公表された消費者態度指数は、大雑把に、2017年11月の44.6をピークに1年半余りに渡って下がり続けていますし、景気ウォッチャーも現状判断DI、先行き判断DIともに、細かい動きを別にすれば、2017年10~12月期をピークにトレンドとして低下を続けているように見えます。繰り返しになりますが、マインドは明らかに実体経済の先行指標ですので、10月に消費税率の引き上げを控えて、直前に駆け込み需要が予想されるとはいえ、とても気にかかる指標のひとつです。

photo


続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの経常収支の+1兆円超の黒字はトレンドとして大きな変更はなく、海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めているんですが、先月5月の経常収支については貿易収支が季節調整済みの系列で▲4,522億円と大きな赤字を計上していましたが、6月統計では+1,585億円の黒字に転じています。でも、この先、世界経済のいっそうの停滞が予想されるとともに、韓国向け輸出の動向が不透明であり、貿易収支が従来通りの黒字を続けるかどうかは判然としません。
Entry No.6287  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月07日 (水) 19:25:00

明後日金曜日公表の4-6月期GDP統計1次QEの予想はプラス成長か、マイナス成長か?

今週火曜日に公表された鉱工業生産指数(IIP)など、ほぼ必要な統計が出そろい、明後日8月9日に4~6月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。その中で、みずほ総研だけは長めに、第一生命経済研の4-6月期マイナス成長の可能性を示唆している部分もやや長めに、ほかのシンクタンクもそれなりに、それぞれ引用してあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.3%
(+1.2%)
2019年7~9月期を展望すると、外需については、6月末のG20大阪サミットにおいて米中首脳が米中貿易戦争の一時休戦で合意したことを受けて、輸出の下振れリスクが目先後退した一方、内需は10月の消費増税を控え耐久財を中心に駆け込み需要が強まることから、成長率は上振れる見込み。
大和総研▲0.1%
(▲0.3%)
2019年4-6月期のGDP一次速報(8/9公表予定)は、実質GDPが前期比年率▲0.3%(前期比▲0.1%)と、3四半期ぶりのマイナス成長を予想する。内需が堅調に推移した一方で、外需が大きく落ち込んだことで、全体では小幅な減少となったとみられる。
みずほ総研▲0.1%
(▲0.3%)
7~9月期以降の日本経済は、弱い伸びが続く見通しだ。
輸出は底入れに向かうものの、世界経済の減速基調が続くほか、米中製造業が調整局面となるなかで、当面は伸び悩む見通しだ。設備投資は、機械設備や建設投資におけるストック調整圧力の高まりを受けて、減速基調が続くとみている。
個人消費は増税前後の一時的なアップダウンはあるものの、均してみれば力強さを欠く見通しだ。働き方改革による残業規制の影響や、国内生産の弱い伸びを受け、所得の伸びが鈍化することが影響するとみている。耐久消費財が調整局面入りすることも消費の下押し圧力になるだろう。
ニッセイ基礎研▲0.1%
(▲0.2%)
2019年7-9月期は前回の消費増税時に比べると規模は小さいものの、税率引き上げ前の駆け込み需要が発生することから明確なプラス成長となることが予想される。
第一生命経済研+0.2%
(+0.7%)
4-6月期の消費については 10連休による一時的な押し上げ効果が大きいとみられ、持続性に欠ける。7-9月期には10連休効果の剥落により下押し圧力がかかりやすい。所得が伸び悩むなか、消費者マインドの悪化がこのところ顕著になっていることも懸念材料だ。今回のプラス成長については割り引いて見た方が良いだろう。輸出にまだ持ち直しの動きが見られないなか、景気は依然として底這い状態を続けていると判断される。
伊藤忠経済研+0.2%
(+0.9%)
4~6月期の実質GDP成長率は前期比+0.2%(年率+0.9%)、3四半期連続となるプラス成長を予想。輸出は伸び悩み、設備投資は減少に転じるも、個人消費が前期の反動もあり比較的高い伸びを記録、公共投資は増勢を強め、プラス成長に貢献。ただ、潜在成長率を下回り、物価上昇圧力は弱まる兆し。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.1%
(+0.4%)
2019年4~6月期の実質GDP成長率は、前期比+0.1%(年率換算+0.4%)と小幅ながらも3四半期連続でプラス成長が続いたと予想される。プラス幅は小さいが、これは外需寄与度のマイナス幅が大きいためであり、内需は個人消費を中心に底堅く推移している。
三菱総研+0.3%
(+1.4%)
2019年4-6月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.3%(年率+1.4%)と、3四半期連続でのプラス成長を予測する。外需はマイナス寄与に転じたものの、大型連休による押し上げ効果もあり、内需が堅調に拡大したとみられる。


おしなべて、4~6月期はほぼほぼゼロ成長という予想が並んでいるんですが、逆に、ほぼほぼゼロ成長なだけに、プラスかマイナスかが気にかかるところです。その結論の前に、どうしてほぼほぼゼロ成長かというと、10連休効果でプラスの消費に対して、世界経済の停滞で輸出が大きなマイナスになるのとの綱引きが主役で、どちらが絶対値として大きいか、加えて、設備投資が私は輸出に起因するストック調整でマイナスと考えているんですが、プラスと見ているシンクタンクもあります。さらに、消費が好調だった分、在庫調整が進んで、在庫もマイナスになることから、私は仕上がりの成長率としてはマイナスと考えています。ただ、その違いは大きくなく、在庫がマイナスで調整が進んでいるというのは評価すべきポイントのような気もしましす、プラスにせよ、マイナスにせよ、ほぼほぼゼロ成長という見方にはそれほど有意な差はないと考えるべきです。
下のグラフは、いつもお世話になっているニッセイ基礎研のリポートから引用しています。7~9月期の先行きに関する言及はありませんでしたが、4~6月期はマイナス成長との私の仕上がりの予想と一致しています。

photo
Entry No.6285  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月06日 (火) 20:20:00

大きく下降したCI一致指数から景気動向指数の先行きを考える!

本日、内閣府から6月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月差▲1.6ポイント下降して93.3を、CI一致指数も▲3.0ポイント下降して100.4を、それぞれ記録し、基調判断は「下げ止まり」に据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の景気一致指数、前月比3.0ポイント低下 5年2カ月ぶりの下げ幅
内閣府が6日発表した6月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比3.0ポイント低下の100.4と3カ月ぶりに下落に転じた。2014年4月以来5年2カ月ぶりの大きな下げ幅だった。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「下げ止まりを示している」に据え置いた。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のすべてが指数のマイナスに働いた。10連休があった5月は季節調整の関係で生産関連の統計が強めだった反動が出た。主に自動車工業が不調で「生産指数(鉱工業)」「鉱工業用生産財出荷指数」「耐久消費財出荷指数」などが低下に影響した。フラットパネルディスプレーなどの資本財を含む「投資財出荷指数」も不調だった。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比1.6ポイント下落の93.3で、2カ月連続で下落した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は2カ月ぶりの低下となる104.1(同0.4ポイント低下)だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、景気局面がビミョーな時期に入りましたので、かなり熱心に取材したのかインタビュー結果も多く、通常の月に比べてとても長い記事になっています。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo


景気動向指数のうちの特にCI一致指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が高い点はかねてより主張されていますが、6月統計でもその結果が確かめられたような気がします。繰り返しになりますが、CI一致指数は前月から▲3.0ポイントの下降を示しており、速報時点で利用可能なCI一致指数のコンポーネントはほぼほぼ下降となっています。CIはDIと違ってボリューム感も表現できる指標ですから、大幅な下降は景気の動向も大きく低下していることを意味する可能性があります。CI一致指数のコンポーネントのうち、マイナスの寄与度が大きい系列は、順に、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、投資財出荷指数(除輸送機械)、鉱工業用生産財出荷指数、有効求人倍率(除学卒)、などとなっています。ですから、鉱工業生産指数(IIP)に整合的な形で、6月のCI一致指数は大きく下降することは早くから予想されており、例えば、第一生命経済研のリポートなどでも指摘されていたところです。本日公表された6月統計の大きな下降で、3か月後方移動平均も一気にマイナスとなりましたので、この先2か月が連続で3か月後方移動平均マイナスを記録すれば、基調判断が再び「悪化」に逆戻りする可能性があります。ただ、私自身は可能性としてそうだというだけであり、10月からの消費税率引き上げを前に駆け込み需要があるでしょうから、7~8月のCI一致指数が連続してマイナスというのは考えにくいと受け止めています。ただ、繰り返しになりますが、あくまで可能性ながら、最短で8月統計公表時に「悪化」に逆戻りする可能性は否定できません。
Entry No.6283  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月05日 (月) 19:20:00

経団連集計による大手企業の夏季ボーナスやいかに?

先週金曜日8月2日に、経団連から2019年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結結果が明らかにされています。経団連ですから、大手企業の代表選手なんでしょうが、2019年夏季ボーナスは加重平均で921,107円、前年比で△3.44%減でした。経団連の発表では19業種なんですが、製造業と非製造業だけに集計したテーブルは以下の通りです。

業種
社数
加重平均金額
(単純平均金額)
加重平均前年比
(単純平均前年比)
製造業平均
110社
909,169円
(788,156円)
△3.77%
(△0.71%)
非製造業平均
27社
958,670円
(906,786円)
△2.08%
(△3.96%)
総平均
137社
921,107円
(811,536円)
△3.44%
(△1.47%)


今年4月22日付けの記事で、いつもの日本総研、第一生命経済研、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、みずほ総研のシンクタンク4機関の夏季ボーナス予想を取りまとめた際は、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングとみずほ総研の3機関は、1人当たりで見て+1%に満たないながらも前年の夏季ボーナスから増えると予想しているのに対して、第一生命経済研はこれも▲1%に達しないながらも、減少する可能性を示唆していたんですが、大企業主体の経団連ですら前年比マイナスですから、中小企業はさらに厳しい結果となったことが想像されます。米中貿易摩擦に起因する世界経済の不透明感がボーナス減少の大きな要因でしょうから、非製造業よりも製造業の方がマイナス幅が大きかったのも理解できます。19業種のうちで最大の減少幅を示したのは自動車の△7.88%でした。7月以降の消費が心配ですし、10月の消費税率引き上げ後の消費はもっと心配です。
Entry No.6282  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月02日 (金) 23:45:00

米国雇用統計は堅調ながら金融緩和は続くのか?

日本時間の今夜、米国労働省から7月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+164千人増と貿易摩擦などでやや伸びは鈍ったものの、まずまず堅調な推移を見せた一方で、失業率は先月と同じ3.7%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の8パラを引用すると以下の通りです。

Employers added solid 164,000 jobs in July, underscoring sturdy economy
U.S. job growth was solid for a second straight month in July as employers added 164,000 jobs, further allaying recession worries and doing little to bolster the Federal Reserve's case for another interest rate cut next month.
The unemployment rate was unchanged at 3.7%, just above a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Economists expected 165,000 job gains, according to a Bloomberg survey.
Mildly disappointing: Payroll gains for May and June combined were revised down by a total 41,000. May's additions were revised from 72,000 to 62,000, and June's, from 224,000 to 193,000.
Hiring has slowed this year to an average monthly pace of 165,000 from 223,000 in 2018, but that's still a solid performance and more than enough to keep lowering the jobless rate. Economists largely blame the downshift on fading effects of federal tax cuts and spending increases, the sluggish global economy and President Trump's trade war with China, which has damped business confidence and investment. Also, the low unemployment rate means employers have a harder time finding available workers.
The increase was close to expectations while the unemployment rate was unchanged from 3.7 percent in June.
The upshot is that consumer spending - which makes up 70% of the economy - is healthy and jobs in service industries such as health care and professional services continue to grow smartly. But manufacturing payrolls, which depend more on sales abroad, largely have been stagnant.
The Fed lowered its key interest rate this week for the first time in more than a decade because policymakers worry the global troubles, lackluster business spending and stubbornly low inflation eventually could derail the record 10-year-old economic expansion. Another cut could be on the way as soon as September if those risks combine with an escalating trade war and weakening labor market.


やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

photo


ということで、引用した記事にもある通り、ブルームバーグの調査によれば、市場の事前コンセサスは+165千人増でしたので、ほぼほぼジャストミートしたと受け止められていますが、ただ、先々月の5月統計と先月の6月統計がともに下方改定、すなわち、5月が+72千人増から+62千人増に、6月が+224千人増から+193千人増に、それぞれ下方改定されていますので、やや割り引いて考える必要はあるかもしれません。上のグラフのうちの上のパネルを見ても直感的に理解できる通り、雇用の増加は堅調とはいいつつも、2019年に入ってからの雇用者の増加幅は2018年よりもややシフトダウンしたことは明らかです。他方で、失業率は3.7%と50年ぶりの低水準を記録しています。マクロ経済政策としての金融政策の舵取りが難しい局面だという気がしますが、米国の連邦準備制度理事会(FED)は先月7月末の連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスポイントの利下げを決定し、実に、2008年12月以来の利下げの決定でした。そして、焦点は早くも次なる金融政策動向に移って来ており、トランプ米国大統領が昨日8月1日に残りの約3000億ドルの輸入に対して、中国への制裁関税第4弾を発動すると表明しており、今回の雇用増の鈍化を受けて、早期に追加利下げの可能性が浮上するものと私は予想しています。

photo


ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高める段階にあります。すなわち、5月は前年同月比で+3.1%の上昇と、昨年2018年8月に+3%の上昇率に達して、半年以上に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですので、利上げを停止したり、あるいは、前のパラで論じたように金融緩和に転じたりして、それで物価の方は大丈夫なんだろうか、という心配もあるにはあるものの、基本的に、左派エコノミストである私は金融緩和には賛成だったりします。
Entry No.6278  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年08月01日 (木) 19:10:00

雇用調整助成金で雇用を維持すると中長期的にどうなるのか?

経済産業研究所から、先月7月に雇用調整助成金が企業業績に及ぼす中長期的な影響を計測したディスカッションペーパーが明らかにされています。参照文献として示せば以下の通りです。なお、タイトルにある "Short-Time Compensation" とは、本文では STC と省略されていますが、「雇用調整助成金」のことです。



私自身は、その昔、いわゆる生産要素、労働や資本を生産性低い分野から高い企業・産業に移動させることにより、我が国全体の生産性が向上する、という意味で、極めて右派的な経済学を信奉していたんですが、今ではそうでもなくなっています、このディスカッション・ペーパーでは、雇用調整助成金により雇用を維持することが抽象気的な企業業績を向上させる、という結論を導いています。ペーパーの p.21 Table 4-1 The Estimated Effect of STC on ROA を引用すると以下の通りです。推計結果は、雇用調整助成金受給企業の「当該年と受給前年のROAの差」から非受給企業の「当該年と受給前年のROAの差」を差し引いたものであり、2年後以降は統計的に有意な差があることがアスタリスクで示されています。なお、このテーブルは、ROA への雇用調整助成金の効果ですが、このテーブルの後に、営業利益 profit margin や売上 sales などに対する影響の推計結果も示されています。

photo


その理由は、労働コストを引き上げることなく売上を伸ばすことによってもたらされている "STC leads to sales growth without raising labor costs" ためであり、雇用調整助成金が企業業績にプラスに働くことは、伝統的な雇用調整助成金の効果、すなわち、解雇抑制効果、それに伴う企業特殊的人的資本の喪失を防ぐ効果、あるいは解雇による職場のモラル低下を抑制する効果 "preserving firm-specific human capital and avoiding the negative morale effect of layoffs" に加えて、雇用調整助成金によるワークシェアリングは危機感の共有からチームワークを高め、企業業績向上のための改革に雇用者が協力的になる、という効果も見られるのではないか、と結論しています。まったく、その通りですし、こういった見方が実証的に数量分析によって示されたのは意義あることではないかと私も考えています。
Entry No.6276  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月31日 (水) 19:50:00

消費者態度指数はどこまで下がり続けるのか?

本日、内閣府から7月の消費者態度指数も公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、7月はまたまた▲0.9ポイント低下して37.8となり、何と、10か月連続で前月を下回りました。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

7月の消費者心理、14年の増税時並み水準に悪化
内閣府が31日発表した7月の消費動向調査によると、消費者心理を示す消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整済み)は前月より0.9ポイント低下して37.8となった。前月を下回るのは10カ月連続。2014年4月以来5年3カ月ぶりの低水準だった。10月の消費税率引き上げを前に、消費者の間で暮らし向き悪化への警戒感が強まっているようだ。
指数を構成する4指標は「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」で、7月は全てが前月より低下した。内閣府は「月々の給料や年金が大きく増える見通しがないなかで、身の回りの商品の値上げや増税の予定が消費者心理を悪化させたのではないか」としている。指数の下げ幅は小さいとして、消費者心理の基調判断は「弱まっている」に据え置いた。
消費者心理は14年の消費増税前より悪い水準にある。名目賃金は増加傾向にあるものの、物価上昇のペースに追いつかず、実質の賃金は伸び悩んでいるためだ。社会保障制度の持続可能性に対する不安も、若者を中心とした節約志向につながっている。
実際の消費は大型連休の効果などで、底堅く推移している。総務省が毎月発表している家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は最新の5月分まで6カ月続けて前年同月を上回った。政府は7月の月例経済報告でも、個人消費について「持ち直している」との見方を維持した。


いつもながら、包括的に取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


季節調整済の指数の前月差で見て、消費者態度指数を構成するコンポーネント4項目のすべてがマイナスを示し、そのマイナス幅の大きい順に、「耐久消費財の買い時判断」▲2.2ポイント減が特に大きな落ち込みを見せており、夏季ボーナスを手にして消費税率引き上げを控えた時期であるにもかかわらず、耐久消費財を購入しようという意欲が大きく低下しているわけです。かなり消費者マインドは深刻と私は受け止めています。加えて、「暮らし向き」▲0.5ポイント減、「雇用環境」▲0.4ポイント減、「収入の増え方」▲0.3ポイント減、となっています。消費者マインドの悪化はどこまで続くんでしょうか?
Entry No.6274  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月30日 (火) 19:35:00

大きな減産を記録した鉱工業生産指数(IIP)と引き続きタイトな労働市場を示す雇用統計をどう見るか?

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも6月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲3.6%もの大きな減産を示した一方で、失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.3%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月から▲0.01ポイント低下したものの1.61倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

6月の鉱工業生産3.6%低下 18年1月以来の下げ幅
経済産業省が30日発表した6月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比3.6%低下の101.1だった。低下は3カ月ぶりで、18年1月(4.2%低下)以来の下げ幅だった。QUICKがまとめた民間予測の中心値(1.9%低下)を下回った。経産省は生産の基調判断は「生産は一進一退」に据え置いた。
業種別では、15業種中13業種で減少した。5月の上昇を受けた反動減で自動車工業や電気・情報通信機械工業が伸び悩んだ。このほか、生産用機械工業や汎用・業務用機械工業で6月から7月へと納期ズレを起こした企業があったことも全体を押し下げた。
出荷指数は3.3%低下の100.6と3カ月ぶりに減少した。自動車工業や生産用機械工業など11業種で減少した。在庫は0.3%増の104.6だった。在庫率は2.8%増の109.4だった。
4~6月期の生産指数は前期比0.5%上昇の102.9だった。4、5月の指数の堅調な伸びが上昇に寄与した。
製造工業生産予測調査によると、7月は2.7%上昇だった。8月は0.6%の上昇を予測している。7月に実施した対韓輸出管理の強化については「大きな影響はないとみている」(経産省)という。
同予測は下振れしやすく、経産省が予測誤差を除去した先行きの試算(7月)は0.3%低下だった。
女性就業者、初の3000万人突破 6月労働力調査
総務省が30日発表した2019年6月の労働力調査によると、女性の就業者数(原数値)は3003万人と、比較可能な1953年以降で初めて3千万人を突破した。前年同月に比べて53万人増え、就業者全体の伸びの9割近くを女性が占めている。専業主婦らが新たに仕事に就くことが増えているためだ。6月の完全失業率(季節調整値)は2.3%で前月から0.1ポイント下がった。
男女合わせた就業者は6747万人。女性の就業者が全体の44.5%を占め、09年平均と比べて2.6ポイント上昇した。欧米の主要先進国の大半は40%台後半で、日本もその水準に近づきつつある。
女性の就業者を年代別にみると、65歳以上の伸びが目立ち、19年6月は359万人と09年平均と比べて145万人増えた。一方、65歳以上の女性の就業率は17.7%で、男性(34.3%)と比べて低く、引き続き増加が見込まれる。日本の人口全体の減少が続くなか、「女性」「高齢者」が働き手の不足を補う意味で存在感を増している。
女性の生産年齢人口(15~64歳)の就業率は71.3%で、前年同月に比べて1.9ポイント上昇し過去最高になった。年代別では15~24歳は50.5%と、同年代の男性を上回る。25~34歳は78.1%、35~44歳は77.8%と10年前より10ポイント以上高い。
女性の場合、30歳前後から結婚や出産を機に仕事を辞め、就業率が下がる「M字カーブ」が課題とされてきたが、解消に向かっている。政府による育児休業制度の充実などが寄与した。ただ働き方には課題が残る。女性の雇用者のうち、全体の55%がパートなど非正規だ。男性の非正規は23%で2倍以上の差がある。
働き方の違いから、女性管理職の割合が欧米と比べて低くなっている。独立行政法人の労働政策研究・研修機構によると、日本の管理職に占める女性の割合は16年時点で12.9%にとどまる。一方、米国は43.8%、フランスは32.9%だ。
日本では終身雇用と長時間労働を前提とする働き方がなお主流だ。出産や育児で休職や短時間労働が必要になる女性は昇進する際、依然として不利になりやすい。人口の減少が続くなか、安定した経済成長を保つためには働き手の多様化が欠かせない。勤務年数でなく、能力に応じて評価する仕組みづくりなど、男女を問わず働きやすい環境を整える必要がある。
6月の男女合わせた完全失業者数は前年同月比6万人減の162万人だった。新たに転職活動する人などが減ったことが影響した。一方、厚生労働省が30日発表した6月の有効求人倍率(同)は前月から0.01ポイント低下し1.61倍。低下は2カ月連続だ。正社員の有効求人倍率は1.15倍と、前月から横ばいだった


2つの統計を並べると、とても長くなってしまいました。特に、女性の雇用に関して強く注目された記事のようです。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

photo


まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲1.9%の減産であり、レンジでも▲2.2~▲1.3%の減産でしたから、下限を突き抜けての大きな減産であることは間違いなく、同時に、製造工業生産予測指数による先行き見通しについても、7月+2.7%、8月+0.6%の増産と見込んでいますが、製造工業生産予測指数はバイアスの大きい統計であり、予測誤差の加工を行った補正値では7月▲0.3%の減産と試算されており、6月に大きな減産を記録した後に、7月も小幅ながら2か月連続で減産となる可能性も十分あります。業種別でもっとも減産幅が大きかったのが我が国のリーディング・インダストリーである輸送機械工業であり、6月統計で前月比▲7.9%減を示し、続いて、生産用機械工業▲6.9%減、電気・情報通信機械工業▲4.7%減がマイナス寄与度の順となります。輸送機械工業以外でも、我が国の製造業をけん引する産業が並んでいるわけです。また、四半期でならせば、今年2019年1~3月期の前期比▲2.5%減からはプラスに転じ、4~6月期は+0.5%増を記録しています。来週金曜日の8月9日には内閣府から4~6月期GDP速報、いわゆる1次QEが公表される予定ですが、4~6月期はプラスの成長率と予想されるひとつの根拠であろうと私は受け止めています。もっとも、1~3月期のマイナス幅に比較して4~6月期の戻りは小さいといえます。最後に、昨日の商業販売統計を取り上げた際にも言及しましたが、本日公表の鉱工業生産指数(IIP)では輸出を含むので、国内需要だけの傾向を読み取るのは難しいんですが、それでも、少なくとも自動車には消費税率引き上げ前の駆け込み需要の影響は小さい、というか、駆け込み需要そのものが小さいような気がしてなりません。

photo


続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は2%台前半まで低下し、有効求人倍率も1.61倍と高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.15倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年近くに渡って1倍を超えて推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、雇用は生産の派生需要であり、生産が鉱工業生産指数(IIP)で代理されるとすれば、基調判断は「一進一退」であり、先行き、賃金上昇に直結するかどうかはビミョーなところです。ただ、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、雇用者そのものが増加して失業者が減少したり、あるいは、雇用の中身として非正規雇用ではなく正規雇用が増加することなどから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。またまた、逆接の接続詞で、しかしながら、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却にも影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。
Entry No.6272  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月29日 (月) 19:35:00

6月統計の商業販売統計に消費税率引き上げの駆け込み需要は見られるか?

本日、経済産業省から6月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.5%増の11兆8220億円、季節調整済み指数は前月から横ばいを記録しています。統計作成官庁である経済産業省では、小売業販売の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」と、前月までの「一進一退」から上方修正しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

6月の小売販売額、0.5%増 増税前の駆け込み需要、基調判断を上方修正
経済産業省が29日発表した6月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は大型家電の好調などを背景に、前年同月比0.5%増の11兆8220億円となった。増加は20カ月連続。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。
業種別で見ると、9業種のうち5業種でプラスとなった。エアコンや洗濯機など「機械器具小売業」は消費増税前の駆け込み需要が入り、5.6%増となった。6月は気温があまり上昇せず、風邪薬など「医薬品・化粧品小売業」も2.0%増と32カ月連続で上昇した。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.3%減の1兆5977億円だった。既存店ベースでは0.5%減だった。コンビニエンスストアの販売額は1.4%増の1兆116億円で、76カ月連続の増加となった。


いつもながら、包括的に取りまとめられた記事だという気がします。次に、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

photo


ということで、今年2019年に入ってからの小売業販売額の季節調整済み系列の前月比を並べると、2019年1月に▲1.8%減とドカンと落ちた後、2月+0.4%増、3月+0.2%増、4月▲0.1%減、5月+0.4%増の後、本日公表の6月は前月から横ばいとなり、2月以降は緩やかな増加を見せています。ただ、6月統計では、季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比が+0.5%増ですから、先々週7月16日公表の消費者物価指数(CPI)の6月ヘッドライン上昇率の+0.7%に及びませんでしたので、ウェイト構成が違うとはいえ、直感的にはCPIでデフレートした実質の小売業販売額≅消費は前年比でマイナスだった、という結論も出て来そうです。季節調整済み系列の前月比が横ばいというのは、前月統計が10連休のゴールデンウィークで通常よりも上振れていると考えるべきですから、まったく悲観するには当たりません。それから、私は長らく公務員をしていましたので、夏季ボーナスは6月30日と決まっていて、ボーナス支給は6月の消費支出には間に合いませんでしたが、7月の小売業販売額≅消費は、ほとんどの場合、ボーナス支給後でしょうから、来月統計を見てみたい気がします。
また、引用した記事には家電などを含む機械器具小売業の販売額がプラスとなっていることから、エアコンや洗濯機などについて10月1日の消費税率引き上げを前にした駆け込み需要が始まっているような報道ぶりです。ただし、家電と並んでもうひとつの大型耐久消費財の代表として自動車小売業の販売額を見ると、前年同月比で▲0.6%減でした。自販連の普通乗用車と小型乗用車の合計販売台数で見ても6月は前年同月比▲1.8%減でしたから、台数ベースでも金額ベースでも前年比マイナスを記録しています。ですから、もちろん、業種や品目別に見ていっせいに駆け込み需要が始まるわけでもないんでしょうが、政府の政策として駆け込み需要やその後の反動減をならす政策としてポイント還元などが準備されており、また、今回2019年の引き上げ幅が2014年よりも小さいこともあり、直感的には、駆け込み需要は小さい印象を私は持っています。ただし、繰り返しになりますが、夏季ボーナスを手にした消費者が7月にどのような消費行動を取っているかについては注視したいと思います。
Entry No.6271  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月26日 (金) 19:55:00

リクルートジョブズによる6月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

来週火曜日7月31日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる6月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を取り上げておきたいと思います。

photo


ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%超の伸びで堅調に推移しており、三大都市圏の6月度平均時給は前年同月より+2.4%、+25円増加の1,054円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+43円、増減率+4.1%)、「フード系」(同+24円、+2.5%)、「販売・サービス系」(同+25円、+2.4%)、「製造・物流・清掃系」(同+22円、+2.1%)など全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、今年2019年3~5月はマイナスを示していたんですが、6月統計では前年同月より+0.2%、+3円増加の1,641円となっています。職種別では、「IT・技術系」(前年同月比増減額+67円、増減率+3.3%)、「クリエイティブ系」(同+41円、+2.4%)、「医療介護・教育系」(同+30円、+2.1%)、「オフィスワーク系」(同+19円、+1.3%)の4職種がプラスなんですが、「営業・販売・サービス系」(同▲6円減、▲0.4%減)が前年同月比マイナスとなっています。また、地域別でも、関東・関西は前年同月比プラスを記録しています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトや派遣スタッフも人手不足の影響がまだ強いと私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用には注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。
Entry No.6266  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月25日 (木) 19:33:00

上昇幅が縮小した6月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から6月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.7%を示しています。前月の+0.9%から上昇率が縮小したものの、引き続き+1%近い伸びを続けています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率もヘッドラインと同じ+0.7%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の企業向けサービス価格、0.7%上昇 17年7月以来の低い伸び
日銀が25日発表した6月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は102.8と、前年同月比で0.7%上昇した。伸び率は5月確報から0.2%縮小し、17年7月(0.6%上昇)以来の低い伸びとなった。人手不足の影響で土木建築サービスなどの値上がりが続く半面、燃料費の下落の影響で外航貨物輸送が前年比でマイナスとなった。
前月比では0.1%下落した。前月比のマイナスは3カ月連続。米中摩擦などを背景とした貨物需要の落ち込みで、国際航空貨物輸送の値下がりが目立った。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。


やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

photo


先日7月10日に日銀から公表された企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は、とうとうマイナスを記録したんですが、企業向けサービス価格指数(SPPI)については、上昇幅は縮小させつつもプラスを続けており、かなり+1%に近い結果となっています。大類別で見ても、引き続き、労働者派遣サービスや土木建築サービスなどを含む諸サービスが、SPPI全体の前年同月比+0.7%の半分を超える寄与度の+0.37%を示していますが、他方で、この諸サービスの上昇率がが5月の+1.3%から6月には+1.1%に縮小し、寄与度の前月差では▲0.07%ポイントの上昇率引き下げ要因ともなっています。SPPIの中で諸サービスのウェイトは⅓を超えており、少しの上昇率の変化にも寄与度差による影響力がかなり大きくなっています。加えて、引用した記事にもある通り、国際商品市況における石油価格の低下が運輸・郵便に現れています。前月からの寄与度差は▲0.04%となっています。ただし、SPPIヘッドラインとコアSPPIの上昇率が同じですので、それほど大きな影響はなさそうな気もします。また、景気敏感業種である広告も新聞広告が5月のプラスから6月は前年同月比上昇率が下落に転じ、▲0.04%のマイナス寄与を記録しています。

この先の物価の見通しについては、もちろん、10月1日からの消費税率引き上げの影響を除いたベースで考えると、全般的に、昨年2018年の10~12月期にピークだった国際商品市況の石油価格に左右されるわけですから、やや弱含みというのは間違いないところで、加えて、消費者物価(CPI)については幼児教育の無償化や携帯電話料金の引き下げなどが上昇率を下押しすると考えられ、企業物価(PPI)や企業向けサービス価格(SPPI)についても、貿易摩擦による世界経済の減速に従って上昇率が縮小ないしマイナスに転ずる可能性が高くなります。今月末の日銀「展望リポート」では、どのような方向が示されるのでしょうか?
Entry No.6264  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月24日 (水) 19:30:00

国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し改訂見通し」は成長率を下方修正!

昨日7月23日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改訂見通し」World Economic Outlook, July 2019 が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。今年から来年にかけての世界経済の成長率見通しは、それぞれ2019年+3.2%、2020年+3.5%と、4月時点の見通しから▲0.1%ポイント下方修正されています。ただ、4月時点でその直前の見通しから大きく下方修正していましたので、4月から大きな変更はないとはいうものの、下方修正が連続している点は忘れるべきではありません。

photo


まず、上のテーブルは IMF Blog のサイトから成長率見通しの総括表を引用しています。下方修正された要因はそのまま先行き見通しの不透明さにつながるわけですが、リポートでは、"Global technology supply chains were threatened by the prospect of US sanctions, Brexit-related uncertainty continued, and rising geopolitical tensions roiled energy prices." ということで、米中間の貿易摩擦、英国のEUからの脱退の不透明さ、そして、エネルギーを巡る地政学的緊張の3点を上げています。先行きの下振れリスク要因としては、これらの他に、"financial vulnerabilities" 金融面の脆弱性を上げています。そして、緩和的な政策対応を求め、特に、"If growth weakens relative to the baseline, macroeconomic policies will need to turn more accommodative, depending on country circumstances." さらに成長率が下振れする場合、各国の置かれた状況により、いっそうの緩和政策が必要、と結論しています。
最後に、下の画像は IMF のサイトから INFOGRAPHICS を引用しています。

photo
Entry No.6262  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月23日 (火) 19:40:00

本日公表されたばかりの「経済財政白書」をザッとながめる!!!

本日の閣議で、本年度の「経済財政白書」が報告されています。400ページを軽く超えるボリュームですので、細かなポイントまでは目が届いていないことと思いますが、公表当日に取り上げる意味はあると思いますので、雇用に関して賃金と多様化だけながら、グラフを2点引用して簡単に見ておきたいと思います。

photo


まず、「経済財政白書」 p.80 第1-3-9図 人手不足と賃金 を引用すると上の通りです。(1) が賃金フィリップス曲線であり、(2) は賃金上昇率の回帰分析結果です。上のパネルを見ると、青の1990年代から緑の2000年代、そして、赤の2010年代と、最近になるほどフィリップス曲線がフラットになっており、因果関係ではない相関関係ながら、人手不足の代理変数である失業率に対して賃金の反応が鈍くなっていることが見て取れます。そして、下のパネルから、パラメータの大きさはそれほど差がないものの、人手不足よりも労働生産性向上の方が賃金上昇との相関が強い、ということが明らかにされています。

photo


次に、「経済財政白書」 p.204 第2-3-2図 多様な人材と生産性 を引用すると上の通りです。生産性が賃金上昇をもたらすわけですから、その生産性の向上に結び付く要因を探って、従来の日本型雇用慣行のような青年・壮年・中年の男性雇用一点張りではなく、女性の活躍を促し高齢者も参加できる雇用という意味で、雇用の多様性という結論に達するものの、単に多様性があればそれでOKというわけでもないようで、雇用の多様性に加えて、計画やビジョン、あるいは、柔軟な働き方を組み合わせると生産性がさらにアップする一方で、そういった取組なしの多様性はかえって生産性を低下させる、という結論を導いています。なお、生産性は最近5年間の全要素生産性(TFP)で代理しています。ただ、私の目には疑問と映る分析結果が2点あり、第1に、正規雇用に加えて非正規雇用の増加による雇用形態の多様化は、生産性向上をもたらす雇用多様化なのでしょうか。第2に、雇用の補完関係と代替関係について、「高齢者雇用の増加が若年層の賃金や雇用(採用)を抑制するとの関係性はみられておらず、若年層が抱えていた高齢者の増加に対する懸念は必ずしも正しくない」(p.208)、また、「産業等をコントロールした簡単な回帰分析を行ったところ、外国人従業員の伸びと日本人従業員の伸びには有意に正の関係があるとの結果が得られた」(p.211) などと結論されており、高齢者雇用が若年層の賃金や雇用に負の影響を及ぼすことはなく、外国人雇用と日本人雇用にはむしろ補完関係が見られる、ということになっています。分析手法についてはともかく、結論については直感的に疑問が残ります。繰り返しになりますが、分析手法などについて詳細に見ているわけではないものの、平たくいえば、単に景気のいい会社が、高齢者も雇えば若年層の賃金も上げて、外国人雇用を増やせば日本人の雇用も増加させる、逆に、景気の悪い会社は高齢者も若年層も関係なく雇用を減少させ、外国人も日本人もどちらも雇わない、ということなのではないか、という気がします。直感的な私の理解であり、根拠はありません。

繰り返しになりますが、極めて限定的な範囲でしか目が届いておらず、従って、もっと重要な点を見逃がしている可能性が大いにあるんですが、「経済財政白書」の公表当日に取り上げるのもひとつの値打ち、と考えています。
Entry No.6260  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月22日 (月) 23:10:00

東京オリンピック・パラリンピックにおける交通対策やいかに?

広く報じられているように、今週、7月24日(水曜)と7月26日(金曜)に来年の東京オリンピック・パラリンピック2020に向けた交通対策の総合的なテストが実施されます。組織員会と警視庁の関連サイトは以下の通りです。



photo


今週の交通対策のテストのうち、高速道路での交通規制の予定図を組織委員会のサイトから引用すると上の通りです。加えて、交通対策の一環なんでしょうが、我がオフィスでも、交通需要マネジメント (TDM) なるものが実施され、時差通勤が試行されるようです。もっとも、私の場合は、フルタイム勤務ではなくパートタイムですので平日休みがあり、その平日休みに合わせて時差出勤割り当てがなされて、結果として、時差出勤はしないで済むようです。

photo


こういった交通規制に対抗する、というわけでもないんでしょうが、リモートワーク推進のサイボウズでは、去る7月12日に都内ビジネスパーソン400人に聞く「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会混雑への働き方対応」に関する調査の結果を明らかにしています。そのうち、大会中の通勤や仕事上の移動についての回答の円グラフと「不安」の理由の棒グラフをサイボウズのサイトから引用すると上の通りです。これを受けて、大会開催時期には本音では会社を休みたいと考えているビジネスパーソンは70.6%に上っています。ものすごくサンプル数が少ないので統計的な信頼性に疑問あるものの、何となく私にも判る気がします。
Entry No.6259  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月19日 (金) 19:40:00

上昇幅が縮小した消費者物価指数(CPI)は先行きさらに減速するのか?

本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月からやや縮小して+0.6%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の全国消費者物価0.6%上昇 通信料値下げで伸びは鈍化
総務省が19日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.6と前年同月比0.6%上昇した。プラスは30カ月連続となったが、上昇幅は前月(0.8%)に比べて縮小しており、2017年7月(0.5%)以来の低水準となった。携帯電話大手が通信料金を引き下げたことが物価の下げ圧力となった。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は同じく0.6%上昇だった。電気代などが前年に比べると依然として高い水準にあることや、人件費などが上昇している外食が、全体の物価を押し上げた。
もっとも、伸び率は前月からプラス幅が0.2ポイント縮小した。ガソリンが前年同月比でマイナスに転じたほか、足元で電気代や都市ガス代の上昇幅が縮小したことが響いた。携帯電話の通信料は大手各社の値下げの影響で、前年同月比で5.8%の低下となった。
生鮮食品を除く総合では全体の57.9%にあたる303品目が上昇した。下落は162品目、横ばいは58品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.5と前年同月比0.5%上昇、生鮮食品を含む総合は101.6と0.7%上昇した。天候不順の影響で、さくらんぼなどの価格が上昇したことが影響した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

photo


ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+0.5~+0.7%のレンジで中心値が+0.6%したので、ジャストミートしたといえます。また、引用した記事のタイトルはいかにも携帯電話の通信料金が、生鮮食品を除くコア消費者物価(CPI)上昇率縮小の要因であるかのような雰囲気を出していますが、私が従来から指摘している通り、我が国の物価はむしろエネルギー価格に敏感であり、特に、6月統計ではガソリンが5月の前年同月比+2.8%上昇から6月には▲2.7%と下落に転じたことから、ガソリンだけで5月から6月にかけての寄与度差が▲0.12%あり、ガソリンを含むエネルギー全体では寄与度差が▲0.19%となっていて、ほぼほぼエネルギー価格の動向だけでコアCPI上昇幅の縮小が説明可能です。他方、通信料(携帯電話)の前年同月比上昇率は、5月の▲4.2%下落が6月に▲5.8%に拡大したものの、寄与度差はわずかに▲0.03%に過ぎません。携帯電話通信料が消費者物価を押し下げたのは事実ですが、エネルギー価格ほどの影響ははなかったといえます。物価の先行きについて考えると、幼児教育の無償化が10月から始まれば、エネルギー価格の鈍化と相まって、この先CPI上昇率はさらに縮小すると私は予想しています。すなわち、消費税率引き上げの影響を除くベースで考えて、当面の足元では6月統計並みの+ゼロ%台半ばが続き、10月以降はゼロ%台前半にまで上昇率が縮小する可能性が高いと考えるべきです。
Entry No.6255  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月18日 (木) 23:15:00

アジアとの輸出入が減少した6月の貿易統計と国際機関のリポート2本に注目!

本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲6.7%減の6兆5845億円、輸入額も▲5.2%減の5兆9950億円、差引き貿易収支は+5895億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月輸出6.7%減、アジア向け減少 上期は8888億円赤字
財務省が18日発表した6月の貿易統計は、輸出が前年同月比6.7%減の6兆5845億円となった。減少は7カ月連続。米中貿易摩擦の影響で、中国を含むアジア向けが大幅に減った。2019年上期(1~6月)も16年下期以来5期ぶりの輸出減となった。
日本の輸出で5割強を占めるアジア向けは、6月が前年同月比8.2%減の3兆5636億円となった。このうち、中国向けは10.1%減の1兆2459億円と4カ月連続で減少した。液晶デバイスに使う半導体等製造装置が27%減、自動車部品は30%減だった。
中国は4~6月の国内総生産(GDP)が物価変動を除いた実質で前年同期比6.2%増と、統計を遡れる1992年以降で過去最低となった。需要が縮小し、日本からの輸出も幅広い品目が減少した。米国政府による中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)への事実上の輸出禁止も影響が出ている。
一方で、米国向けは4.8%増の1兆3555億円だった。半導体製造装置や自動車の輸出が好調だった。
6月の輸入額は5.2%減5兆9950億円だった。6月の輸出額から輸入額を差し引いた収支は、19%減の5895億円の黒字だった。
19年上期の輸出は前年同期比4.7%減の38兆2404億円だった。上期の貿易収支は8888億円の赤字と、2期連続で赤字となった。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、6月の貿易収支は+4000億円余りの黒字でしたので、実績で+6000億円近い貿易黒字はやや上振れた印象と私は受け止めています。ただし、輸出入ともに、前年同月から数パーセント減少した上での差し引きの貿易黒字ですから、まあ、縮小均衡と捉える向きもあるかもしれません。もちろん、世界経済の減速が大きな要因となった輸出入額の減少と考えるべきです。やや別の観点ながら、引用した記事もそうなんですが、ついつい、ボリューム感で中国に注目しがちなところ、実は、韓国についても6月貿易統計では輸出入とも減少しており、中国との輸出入の減少幅を上回る2桁減となっていることは忘れるべきではありません。すなわち、数字を少し詳しく取り上げると、6月単月の貿易統計ながら、季節調整していない原系列の統計で見て、対中国貿易は輸出額が▲10.1%減、輸入額が▲5.3%減ですが、対韓国貿易は輸出額が▲14.8%減、輸入額も▲13.6%減を記録しています。今年2019年上半期の1~6月期の統計で見ても、対中国輸出額が▲8.2%減に対して、対韓国輸出は▲11.1%減を示しています。中国については米中間の貿易摩擦とそれに起因する中国経済の減速が大きな要因なんでしょうが、韓国については、まだ情報が十分ではないものの、外交関係の冷え込みないし輸出規制が統計に表れ始めている可能性も否定できません。

photo


輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、まず着目すべきは、ここ数か月の輸出額の減少はほぼほ数量が減少に寄与している点は見逃すべきではありません。6月統計では、季節調整していない貿易指数の前年同月比で見て、輸出額が▲6.7%減で、これを数量と価格に分解すると、価格の寄与は▲1.2%に過ぎず、数量が▲5.5%の寄与を占めています。輸出数量指数は昨年2018年11月から8か月連続で前値比マイナスが続いています。国別で見ると、一番下のパネルの中国の先行指数は、まだ前年同月比でマイナスながら、最悪期は脱して底入れしているようにも見えますし、真ん中のパネルの先進国もそろそろ底入れしそうに見えなくもないんですが、米中間の貿易摩擦の本格化や激化により、決して、世界経済とともに貿易関係も単調に回復に向かうかどうか、私は自信がありません。

photo


続いて、国際機関のリポートを2本取り上げたいと思います。まず、貿易や経常収支とも関連して、昨日7月17日に、国際通貨基金(IMF)から 2019 External Sector Report が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。上のグラフは、リポート p.2 Figure 1.1. Evolution of Current Account Balances and Exchange Rates の 1. Current Account Balances, 1990-2018 (Percent of world GDP) を引用しています。黒い折れ線グラフで示された経常収支の黒字額と赤字額の合計の対世界GDP比は、2006~07年の6%近くから2013年の約3.5%へと急激に縮小した後、縮小ペースがやや鈍化し、2018年には約3%を記録しています。加えて、この不均衡縮小は新興国・途上国の寄与部分が大きく、先進国の不均衡はそれほど縮小していない、と指摘しています。また、フローの経常収支不均衡は縮小しているものの、ストックとしては依然として拡大を続けています。従って、ということで、何分、100ページを超える英文リポートですので、このリポートを取り上げた IMF Blog のサイトの表現を借りれば、主要国で対外債務がさらに拡大すれば、コストの大きい破壊的な調整を誘発する恐れがある "a further increase in countries' external debts in key countries could trigger costly disruptive adjustments" ことから、赤字国も黒字国も協力して、世界経済の成長と安定を支えるかたちで過度の世界的な不均衡を是正できるように取り組まねばならない "both surplus and deficit countries must work together to reduce excess global imbalances in a manner supportive of global growth and stability" と結論しています。その上で、不均衡是正の方法 How to tackle imbalances としては、貿易を歪めるような政策は世界の貿易・投資・経済成長に犠牲をもたらしがちであり、各国ともそうした政策は避けるべきである "all countries should avoid policies that distort trade, as they tend to come at the expense of global trade, investment, and growth" と、間接的な表現ながら、米中間の貿易摩擦を批判的に見ているようです。当然です。

photo


さらに、本日7月18日、アジア開発銀行(ADB)から Asian Development Outlook 2019 Supplement が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。上のテーブルは、リポート p.3 Table 1 Gross domestic product growth (%) を引用しています。アジア途上国の成長率については、貿易摩擦の緊張が続いているものの内需の拡大に支えられ、4月時点の見通しと同じ2019年+5.7%、2020年+5.6%に据え置く "This Supplement maintains ADO 2019 projections from April for growth in developing Asia at 5.7% in 2019 and 5.6% in 2020, with domestic demand supporting expansion as trade tensions persist" と結論しています。
Entry No.6254  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月17日 (水) 19:25:00

日銀の考える「賃金上昇が抑制されるメカニズム」やいかに?

先週7月12日金曜日に日銀ワーキングペーパー「賃金上昇が抑制されるメカニズム」が、日銀調査統計局の職員と東大社研の玄田教授との共著で明らかにされています。もちろん、pdfでもアップされており、ダウンロードができます。玄田教授は、先年、『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』という本を編集しており、私もこのブログの2017年5月20日付けの読書感想文で取り上げています。ということで、本論文を私が読んだ範囲でのエッセンスについて簡単に取り上げると以下の通りとなります。

photo


まず、第1に、本論文では、非正規雇用の労働市場がルイス転換点を迎えると、それ以前に比べて賃金はより急速に上昇する、と基本的な考えを明らかにしています。それが上のグラフで、ワーキングペーパーの p.4 (図表2) から引用しています。ルイス転換点に達すると労働供給曲線の傾きがスティープになります。ただ、上のグラフの右上がりの太線の労働供給曲線が賃金に対して弾力的であれば、すなわち、少しの賃金上昇で労働供給が大きく増加するのであれば、均衡賃金の増加は小幅にとどまり、2000年代には非正規雇用の労働供給の主要な担い手であった女性や高齢者は、まさに、この通りに労働供給の賃金弾力性が高かった、と指摘しています。
第2に、企業マインドや企業行動のひとつのパターンとして、賃金の上方硬直性を指摘する見方も紹介されています。すなわち、賃金はもともとケインズの指摘を待つまでもなく下方硬直性があるわけですが、この下方硬直性に起因して、将来の賃金引き下げを回避するために現時点では賃上げしない、という企業マインドや企業行動が観察されると指摘します。

photo


第3に、ルイス転換点にホントに近づいているのか、という疑問に答えるため、留保賃金の動向からの分析があります。それが上のグラフで、ワーキングペーパーの p.10 (図表4) から引用しています。私はこの点がもっとも大きな疑問となっており、実は、ルイス転換点はまだそれほど近づいていないのではないか、別の表現をすれば、賃金上昇がみられない現状は完全雇用ではない、と考えなくもないんですが、この疑問にかなり正面から回答しようと試みています。その結果、男性と55歳以上高齢者は留保賃金が高くてまだルイス転換点には近づいておらず、潜在的な労働供給拡大の余地が残されている一方で、女性は留保賃金が低くてルイス転換点が近づいており、女性の労働供給をさらに増加させるためには大幅な時給上昇は不可欠、と結論しています。追加的に、労働力調査のフローデータの分析から、労働力人口ストックの拡大は女性と55歳以上高齢者が労働市場から退出あるいは引退しないことにより押し上げられていると指摘しています。

photo


第4に、ある意味で日本的な賃金支払い方法として賞与の分析がなされています。それが上のグラフで、ワーキングペーパーの p.28 (図表20) から引用しています。見れば理解できる通り、特別給与=賞与は好景気-賃金上昇局面と不況期-賃金抑制局面で非対称性があり、企業の売上高利益率の1%の下落は今期のボーナスに対して4~5%程度の変化をもたらす一方で、利益率1%の上昇はボーナスを1~2%程度しか押し上げておらず、ボーナスには賃金上昇を抑制する方向での非対称性が存在する、と結論しています。ただ、惜しむらくは、この非対称性の原因は追求されていません。加えて、ボーナスと雇用流動性や転職との関係も分析されており、特別給与は人材流出対策として中高年よりも流動性が高い若年に手厚く配分されてきており、この点も賃金上昇を抑制する要因のひとつとなっていると指摘しています。
最後に、必ずしも賃金上昇に完結するトピックではなく、賃金上昇から物価上昇につながるルートについても分析が行われており、賃金と生産性と単位労働コストの関係については、特に、製造業、建設業、飲食・宿泊業等で賃金上昇を生産性の向上が相殺し、単位労働コストの上昇を抑制して、さらに、物価上昇に波及しないようなメカニズムができている、と指摘しています。ただし、運輸・郵便業では生産性向上は見られるものの、人手不足による賃金上昇の方が大きく、単位労働コストは結果として上昇しており、また、医療福祉業では賃金上昇とともに生産性も低下しており、単位労働コストが上昇している、と結論しています。
最後の最後に、今後の課題として上げられているうちで私の目を引いたのが、外国人労働者の就業は人工知能(AI)による技術革新とともに、労働需要の増大を緩和し賃金上昇を抑制する可能性です。その通りだと思います。

途中でも書いたように、私は、ホントに労働市場がルイス転換点に近づいているのか、別の表現をすれば、フィリップス曲線の傾きがスティープになる局面に入っているのか、その意味で、ホントに人手不足なのか、という疑問がありました。本論文による留保賃金の分析から、その点はかなりクリアになった気がします。ただ、1点だけマクロ経済の観点から労働分配率の低下が見逃されている気がします。すなわち、昨年2018年8月23日のこのブログで取り上げたように、IMF Working Paper WP/18/186 では、「先進国において雇用保護規制の緩和は15パーセントに相当する平均的な労働分配率の低下に寄与した可能性がある」("job protection deregulation may have contributed about 15 percent to the average labor share decline in advanced economies") と指摘しており、この労働分配率の低下が賃金上昇の抑制にどのような影響を及ぼしたのか、あるいは、逆なのか、すなわち、賃金上昇の抑制が労働分配率の低下につながったのか、が残されたマクロ経済学的な論点のひとつだという気がします。
Entry No.6252  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

2019年07月16日 (火) 23:12:00

消費税率引き上げに関する企業の見方やいかに?

先週相次いで、7月9日に東京商工リサーチから、さらに、7月11日に帝国データバンクから、消費税率の引き上げに関する企業の意識を問うアンケート調査の結果が明らかにされています。私の見るところ、ビミョーに結果が異なっています。

photo


まず、上のグラフは東京商工リサーチから引用しています。見れば判る通り、予定通りの実施が51.4%の過半を制しています。また、昨年2018年9月時点の調査から、+4.4%ポイントの上昇となっています。ただし、消費税率引き上げの帰結として、景気がよくなるはわずかに0.7%であったのに対して、悪くなるは65.0%に上っています。

photo


他方、上のグラフは帝国データバンクから引用しています。こちらは、予定通りの実施は44.1%を占めるに過ぎず、延期や実施しないなどの否定的見方が44.3%とほぼ拮抗する水神に達しています。しかも、昨年2018年10月の調査から+0.8%ポイントしか上昇していません。ですから、東京商工リサーチの調査結果に比較して、帝国データバンクの方は消費税率引き上げにやや否定的な見方を示している、というふうに私は受け止めています。

まあ、大雑把に、企業規模が小さくなるほど消費税率引き上げには否定的ですから、帝国データバンクに比較して東京商工リサーチの調査対象がやや大企業に偏っているんだろうと私は想像しています。あるいは、業種別に見ると、おそらく、小売業が飛び抜けて否定的な見方を示すでしょうから、そのあたりのサンプルのバイアスがあるんだろうと思います。当然ながら母集団は同じと考えるべきですから、このやや似通った両社の調査結果を見る時のサンプルの偏りを垣間見たような気がします。
Entry No.6251  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑
 | BLOG TOP |  OLDER ≫