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2020年03月19日 (木) 23:30:00

新型コロナウィルスの影響により石油価格が下落し消費者物価(CPI)の上昇率も縮小!

本日、総務省統計局から2月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し縮小して+0.6%を示しています。また、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+0.6%でした。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の消費者物価、コロナ影響じわり マスク3.7%上昇
総務省が19日発表した2月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.9と前年同月比0.6%上昇した。38カ月連続でプラスとなったが、伸び率は前月より縮小した。原油安などを背景に、エネルギー構成品目が2カ月ぶりに下落に転じたことが影響した。
材料費や人件費の高止まりを受け、外食は引き続き物価上昇に寄与した。一方、電気代や都市ガス代などの下落幅が拡大。ガソリン価格の上昇幅も縮小したことから、物価上昇の伸び率は前月(0.8%上昇)から縮んだ。携帯電話の通信料も大手各社の値下げの影響で、引き続き物価の下げ圧力となった。
足元で感染が拡大する新型コロナウイルス感染症のCPIへの影響については「一部の品目で影響が出た可能性があるが、全体に与える影響は小さかった」(総務省)と分析している。
具体的に新型コロナの影響が出た可能性があるものとしては、マスクの価格は前年同月比3.7%上昇した。宿泊料も下落幅が拡大。総務省は「新型コロナの感染拡大を受け訪日客が減少し、宿泊料値下げにつながった可能性もある」とみていた。
2月の生鮮食品を除く総合では397品目が上昇した。下落は106品目、横ばいは20品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
2月の全国CPIで、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.8と0.6%上昇した。生鮮食品を含む総合は102.0と、0.4%の上昇。暖冬の影響で、キャベツなどの生鮮野菜の出荷水準が高く、野菜価格が高騰していた19年2月に比べると「価格が下がっている」(総務省)という。
総務省は昨年10月の消費税率引き上げの影響を機械的に調整したCPIの試算値も公表した。消費税率引き上げと幼児教育・保育無償化の影響を除いた場合、2月の生鮮食品を除く総合の物価上昇率は0.2%上昇と、1月(0.4%上昇)から伸び率は縮小した。


やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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ということで、新型コロナウィルス(COVID-19)は物価にまで影響をもたらしているのは明らかで、半ば面白おかしく、上で引用した記事でも、「マスク」は値上がりで、「宿泊料」は下げ、ということになっています。加えて、「外国パック旅行」や下げているようです。でも、私が考えるCOVID-19の我が国物価への最大の影響は石油価格を通じた価格押下げ圧力です。現在の国際商品市況における石油価格がかなり大幅に下げていることは広く報じられており周知の事実ですが、これはかなりの程度にCOVID-19の影響を受けたものです。すなわち、COVID-19の感染拡大を防止するため、我が国でも一部の国からの入国制限を設けており、逆に、我が国からの入国制限を課している国も少なくないことなど、ヒトやモノの移動が停滞しており、加えて、株式市場だけでなくマクロ経済の低迷が鮮明になっていることから、石油への需要が大きく減退している上に、産油国の間では価格支持のための減産合意どころではなく、逆に、サウジアラビアが増産するなど、世界的に石油の需給が緩んだことから、日経新聞のサイトで報じられているように、世界的な石油価格の指標となるWTI先物がバレル20ドルの安値を付けていたりします。ですから、かなりの程度に、先行き物価動向もCOVID-19次第の部分があります。
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2020年03月18日 (水) 19:30:00

中国からの輸入が激減した2月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から2月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲1.0%減の6兆3216億円、輸入額も▲14.0%減の5兆2117億円、差引き貿易収支は+1兆1098億円の黒字を計上しています。なお、新型コロナウィルス(COVID-19)に関連して注目された中国向け輸出額は▲0.4%減、輸入額は何と▲47.1%減を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

2月の貿易収支、中国からの輸入額47%減 86年8月以来の減少幅 新型コロナ響く
財務省が18日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、中国からの輸入額は前年同月比47.1%減の6734億円だった。輸入額の下げ幅は、中国政府が経済引き締め策を実施した影響が出た1986年8月(47.3%減)以来の大きさとなる。財務省は「新型コロナウイルス感染症の拡大で中国国内で生産活動の停止などの動きがみられたことから、その影響が出た可能性がある」とみる。
中国からの輸入減少に最も響いたのは、衣類・同付属品で65.7%減った。次いで携帯電話(45.3%減)、パソコンなどの電算機類(37.2%減)だった。輸出額は、半導体等電子部品などの輸出増加を支えに1兆1361億円と0.4%の減少にとどまった。
中国からの輸入額が大幅に減少した一方で、中国への輸出額は小幅減少にとどまったため、差し引きの中国との貿易収支は4627億円の黒字となった。対中国の黒字は2018年3月以来で、黒字額は過去最大となった。
対世界全体の輸出額は1.0%減の6兆3216億円と15カ月連続で減少した。輸入額は14.0%減の5兆2117億円と10カ月連続の減少で、差し引きの貿易収支は1兆1098億円の黒字となった。黒字は4カ月ぶりで、黒字額は2007年9月以来の大きさとなった。
輸出は中国向けの半導体等電子部品が増えた一方、米国向けの自動車や中国向けの金属加工機械が減少した。輸入はオーストラリアからの液化天然ガス(LNG)が減少したことが大きく影響した。
対米国の貿易収支は6268億円の黒字と2カ月連続の黒字、対欧州連合(EU)の貿易収支は183億円の赤字と8カ月連続の赤字だった。対EUは今回の統計から英国を除いた数字となっている。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で+9172億円の貿易黒字が予想されていましたので、+1兆円をやや上回る貿易黒字とはいえ、まずまず、大きなサプライズをもたらしたわけではありません。ただ、上の輸出入のグラフ、特に下のパネルの季節調整済の系列でトレンドを見ると、明らかに輸出入ともに減少のトレンドにあります。特に、2月の貿易は中国発のCOVID-19の影響で輸出入とも減少しましたし、特に、中国の輸出、というか、我が国の中国からの輸入は、引用した記事のタイトルにもあるように、激減しています。ただし、中国との貿易に関しては、中華圏の春節の影響がとても大きいですから注意する必要があり、特に、昨年2019年の春節は2月5日からスタートし、今年2020年は逆に本来は1月30日までと、1月中に収まる予定でしたので、この上下の違いは大きいと考えるべきです。すなわち、季節調整していない原系列の貿易統計をそのまま見たりすれば、輸出入ともに今年2020年1月は大幅減で、逆に、2月は大幅増、となるのが通常の動きと考えるべきです。しかし、大幅増となると想定されていた今年2月の中国との貿易は逆に減少しました。いうまでもなく、COVID-19の影響であり、我が国からの輸出額こそ▲0.4%減という小幅な減少だったものの、中国からの輸入額は▲47.1%減とほぼ半減しました。強制的に春節休暇が継続され、操業停止が解除されたのが2月中旬ですから、当然です。中国国内の生産が大きくダウンしたわけですので、中国からの我が国の輸入も激減しており、まあ、何と申しましょうかで、マスクなんかが品薄になっているのも当然です。もちろん、マスクが品薄になっているのは中国での生産停滞だけではありません。ただし、少なくとも、中国ではCOVID-19の感染拡大は終息に向かっており、むしろ、現時点では欧州の方で感染が拡大しているのが実情のようです。いずれにせよ、COVID-19の経済的な影響は、私には何とも判りかねます。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ただし、OECD先行指標については、1月統計が公表されていません。OECDのプレスリリース "Release of OECD Composite Leading Indicators Cancelled for March 2020" によれば、"CLI sub-components for many countries are not yet able to capture the effects of the more widespread Covid-19 outbreak." というのが理由とされています。ということで、世界経済とともに中国の景気も最悪期を脱し、これから上向きになろうかという矢先のCOVID-19でしたので、繰り返しになりますが、ダイレクトに中国向けだけでなく、中国向け輸出比率の高いアジア諸国向けの輸出も、我が国では当然に欧米諸国などよりも割合が高く、輸出を通じた日本経済へのダメージは少なくないものと考えます。中国向けの直接の輸出だけでなく、加えて、サプライチェーンの中で中国の占めるポジションからして、部品供給の制約から貿易への影響を生じる可能性も無視できません。欧米向け輸出についても、OECD先行指数を見る限り最悪期を脱したと考えられますが、中国経済の変調とともに、欧州でのCOVID-19の感染拡大もあって、今後の動向は不透明です。
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2020年03月17日 (火) 23:00:00

新型コロナウィルスの影響緩和のための経済対策を考える!!!

先週金曜日の3月13日付けで、第一生命経済研から「新型コロナウィルスで必要とされる経済対策」と題するリポートが明らかにされています。私のこのブログで何度か書きましたように、一昨年2018年10~12月期を山として、我が国景気はすでに景気後退局面に入っていた上に、昨年2019年10月から消費税率の引上げが実施され、加えて、今年2020年に入ってからは中国発の新型コロナウィルス(COVID-19)により、我が国経済は大幅な景気の停滞を経験しています。第一生命経済研のリポートでは、この景気局面を脱するための経済対策について論じられています。まず、リポートから1ページ目の(要旨)にある5項目のうち第1項と第2講を引用すると以下の通りです。

(要旨)
  • 経済対策の規模については、景気後退+消費増税+新型コロナウィルスの3重苦に対して、大型の補正予算が組まれることが予想される。しかし、景気後退+消費増税に伴うGDPギャップを解消するのに必要な規模の経済対策を前提とするだけでも9.8兆円規模の追加の経済対策が必要になる。
  • 東日本大震災と2014年4月消費増税の時は、GDPの実績がトレンドからそれぞれ▲3.8兆円、▲3.7兆円程度下方に乖離。消費増税の影響も前回はトレンドから▲0.9%の乖離に対し、今回は▲2.3%もトレンドから下方に乖離していることから、すでに新型コロナウィルス緊急対応策に加えて、需給ギャップの解消に必要な需要創出額10兆円以上の財政措置が必要となる。市場の不安を軽減するという意味でも規模は重要。


現在、参議院で来年度予算が審議中ですが、早くも年度が明けて4月に入れば経済対策の策定が予定されています。その規模感と中身の案などをこのリポートでは議論しているところ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフは、リポート p.2 から引用したGDPギャップの推計結果です。「ESPフォーキャスト2月調査」を利用して延伸して推計した結果です。ただし、3月13日付けの内閣府の今週の指標No.1233で「2019年10-12月期GDP2次速報後のGDPギャップの推計結果について」において、2次QEの下方改定に従ってGDPギャップのマイナス幅も拡大したのは織り込まれていません。ですから、経済対策としては軽く10兆円を超える規模が想定されます。ということで、リポートでは、リーマン・ショック後の2009年4月の「経済危機対策」における財政支出の規模15.4兆円に言及しています。
経済対策の中身についてリポートでは、リーマン・ショック後の定額給付金方式では貯蓄に回って需要が顕在化しない可能性があると指摘し、すでに予定されているマイナンバーカードへのマイナポイントに加えて、リーマン・ショック後のエコポイントに近いキャッシュレスポイント還元に加えて、大胆にも、時限措置による消費税率の引下げまで踏み込んで主張しています。さらに、COVID-19対策としての意味もあるリモート設備導入に向けた補助制度の拡充、特に、学校や家庭にリモート学習可能な設備の導入補助の必要性などを論じています。

新しい経済対策が議論される4月になれば、私も私大教員として日本経済に携わる立場に復帰しています。景気も私の立場もともにビミョーな時期ながら、現在の緊縮財政を打破すべく、いろんな議論が行われるのはいいことだという気がします。
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2020年03月16日 (月) 20:00:00

2か月連続で前月比プラスとなった機械受注の今後の見通しやいかに?

本日、内閣府から1月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+2.9%増の8,394億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

1月の機械受注は2.9%増 基調判断「足踏みがみられる」で据え置き
内閣府が16日発表した1月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比2.9%増の8394億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(1.2%減)を上回った。内閣府は機械受注の基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業の受注額は前月比4.6%増の3803億円だった。17業種のうち10業種で増加した。電気機械業でクレーンなど運搬機械が伸びた。非鉄金属業において原子力原動機の受注も伸びた。
非製造業は1.7%減の4607億円だった。12業種のうち5業種で減少した。運輸・郵便業が低調だったほか、金融・保険業でCPU(中央演算処理装置)をはじめとした電子機器の受注が振るわなかった。
受注総額は11.5%増、外需の受注額は9.1%増だった。官公需の受注は大型案件の受注が寄与して87.8%増だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は0.3%減だった。
1~3月期の「船舶・電力を除く民需」の見通しは前期比2.0%減だった。製造業は1.0%減、非製造業は5.2%減を見込む。今回の調査で季節調整値の改訂をしたため、見通しの数字も修正された。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比▲1.2%減でしたが、予測レンジ上限は+4.2%増でしたから、実績の+2.9%は増はレンジに収まっており、それほど大きなサプライズはないという印象です。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いています。コア機械受注の前月比+2.9%増を製造業と非製造業に分けて見ると、製造業は昨年12月の+2.4%増に続いて、2か月連続の前月比プラスで1月も+4.6%増、他方、非製造業は12月▲18.8%減に続いて、これまた2か月連続のマイナスで1月も▲1.7%減となっていて、明暗がクッキリと分かれています。製造業に関しては、いわゆる5Gといわれる第5世代移動通信システムへの対応による投資増加の可能性が指摘れされており、他方、非製造業においては、私には要因不明ながら、人手不足の影響大きいといわれている運輸業・郵便業が2か月連続で現象を見せており、この寄与が大きくなっています。しかし、何といっても、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大の影響が先行き最大のリスクと考えるべきです。まず、マインドの冷え込みが懸念されますし、消費はもちろん、需要の低迷に加えて、中国国内をはじめとしてサプライ・チェーンへの影響という供給サイドの要因も世界経済停滞の深刻化や長期化をもたらすわけで、今後のマインドと需要要因と供給要因の動向を注視する必要があるのは明らかです。ただ、私のような専門外のエコノミストは注視するだけで、それ以上は手の施しようがありません。
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2020年03月13日 (金) 23:30:00

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響は経済見通しにどのように現れているか?

今週月曜日3月9日に内閣府から公表された昨年2019年10~12月期GDP統計速報2次QEを受けて、シンクタンクや金融機関などから短期経済見通しがボチボチと明らかにされています。四半期ベースの詳細計数まで利用可能な見通しについて、年半ばの東京オリンピック・パラリンピックの後、今年2020年いっぱいくらいまで取りまとめると以下の通りです。なお、下のテーブルの経済見通しについて詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。計数の転記については慎重を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、各機関のリポートでご確認ください。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名2019/10-122020/1-32020/4-62020/7-92020/10-12
actualforecast
日本経済研究センター▲1.8
(▲7.1)
▲0.7+0.5+0.8+0.3
日本総研(▲2.7)(+1.2)(+5.8)(+1.2)
大和総研(▲4.3)(+4.9)(+2.3)(+0.8)
ニッセイ基礎研▲1.1
(▲4.2)
+1.1
(+4.6)
+0.7
(+2.9)
+0.2
(+0.9)
第一生命経済研▲0.9
(▲3.6)
+0.3
(+1.2)
+0.8
(+3.3)
+0.7
(+2.8)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲1.3
(▲5.0)
+1.2
(+5.0)
+2.8
(+11.7)
▲0.3
(▲1.3)
SMBC日興証券▲1.5
(▲5.8)
+0.7
(+2.7)
+1.5
(+6.1)
+0.7
(+2.9)
農林中金総研▲0.2
(▲0.8)
+0.2
(+1.0)
+0.9
(+3.5)
▲0.5
(▲1.8)
東レ経営研▲1.3+0.6+0.9+0.6


各列の計数については上段のカッコなしの数字が季節調整済み系列の前期比で、下段のカッコ付きの数字が前期比年率となっています。2019年10~12月期までは内閣府から公表された2次QEに基づく実績値、今年2020年1~3月期からは見通しであり、すべてパーセント表記を省略しています。なお、日本経済研究センターと東レ経営研のリポートでは前期比の成長率しか出されておらず、逆に、日本総研と大和総研では前期比年率の成長率のみ利用可能でしたので、不明の計数は省略しています。ということで、見れば明らかなんですが、10月の消費税率の引上げの後、2019年10~12月期が大きなマイナス成長となったのに続き、足元の1~3月期もマイナス成長が確実と見込まれています。ただ、これまた、すべての機関で4~6月期にはプラス成長に回帰し、オリンピック・パラリンピックといったイベントもあることから、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大が終息すれば、年央の4~6月期や7~9月期には、かなり大きなリバウンドが予想されています。ただし、その後の101~2月期には景気は息切れし、成長率は大きく減速して、シンクタンクによってはマイナス成長を見込む機関すらあります。
我が国景気に対する私の基本的な見方は、足元の2020年1~3月期もマイナス成長を記録し、テクニカルな景気後退シグナルが発せられるとともに、景気動向指数などの指標を見るにつけ、2018年10~12月期を景気の山として、すでに我が国は景気後退局面に入っているのではないか、というものです。直近の景気動向指数CI一致指数のピークは2018年10月の104.1であり、鉱工業生産指数(IIP)でも2018年10月の105.6です。2019年3月に定年退職した私のそのあたりまでの景気の実感として、このCI一致指数やIIPのピークの2018年10月あたりが景気の山と考えるべきではないか、という気がしています。それにしては、景気後退の落ち方のスロープが従来のパターンに比べて緩やかなんですが、人手不足を背景とした雇用が国民生活の安定を支えたことに加えて、東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設需要、さらに、緩和の続く金融政策が経済活動を下支えしている、といったあたりが理由と考えられます。ただ、何としても不透明な要因として、新型コロナウィルス(COVID-19)の流行拡大があります。多くのシンクタンクなどの見通しでは、一部繰り返しになるものの、~6月期に終息し、年央は東京オリンピック・パラリンピックで景気も盛り上がり、年末にかけて息切れする、というのが基本シナリオなんですが、東京でのオリンピック・パラリンピックの開催がそもそも不可能となり、一気に景気が奈落の底に突き落とされる、という可能性もゼロではありません。まあ、何としても避けたいシナリオであることは間違いありませんが、私ごとき専門外のエコノミストには予測のしようがありません。
下のグラフは、ニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2020年03月12日 (木) 20:30:00

石油価格に連動する企業物価とマインド悪化を反映する法人企業景気予測調査!!!

本日、日銀から2月の企業物価 (PPI) が、また、財務省から1~3月期の法人企業景気予測調査が、それぞれ公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.8%と、先月統計の+1.5%から縮小し、消費税率引上げの影響を除くベースでは▲0.8%の下落と試算されています。続いて、法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は昨年2019年10~12月期の▲6.2に続いて、足元の今年2020年1~3月期は▲10.1と、さらに、先行き4~6月期には▲4.4と3四半期連続でマイナスを記録した後、さらにその先の7~9月期には+4.2とプラスに転ずると見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の企業物価指数、前年比0.8%上昇 原油安が重荷
日銀が12日発表した2月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.0と、前年同月比で0.8%上昇した。4カ月連続で上昇したものの、伸び率は1月の1.5%から縮小した。消費税率の引き上げが押し上げ要因となる一方、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた原油価格の下落が重荷となった。
前月比では、0.4%の下落だった。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年同月比で2.1%下落し、10カ月連続のマイナスとなった。前月比では0.3%上昇した。輸入物価は前年同月比1.8%下落し、前月比は0.1%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。消費増税の影響を除いたベースでの企業物価指数は2月、前年同月比で0.8%下落した。下落率は3カ月ぶりの大きさだった。
大企業景況1-3月マイナス10.1 14年4-6月以来の低さ
財務省と内閣府が12日発表した法人企業景気予測調査によると、1~3月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス10.1だった。マイナスは2四半期連続で、2014年4~6月期(マイナス14.6)以来の低さとなる。前回調査の19年10~12月期はマイナス6.2だった。先行き4~6月期の見通しはマイナス4.4だった。
1~3月期は大企業のうち、製造業がマイナス17.2で、非製造業はマイナス6.6だった。中小企業の全産業はマイナス25.3だった。
2020年度の設備投資見通しは前年度比1.5%減だった。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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引用した記事のタイトルがやや誤解を招きかねないんですが、国内企業物価のコンポーネントとしての石油・石炭製品の上昇率は大きく縮小したとはいえ、まだプラスの前年同月比を保っています。すなわち、石油・石炭製品の前年同月比で見て、1月には+9.0%の上昇だったのが、2月統計では+1.6%に縮小しています。ただ、季節調整していない国内企業物の前月比▲0.4%のうちの▲3.2%は石油・石炭製品の寄与であることは事実です。また、輸入物価のコンポーネントである石油・石炭・天然ガスでは、国内通貨建ての前年同月比で見て、1月統計で▲0.6%の下落だった結果が2月には▲0.7%と、わずかにマイナス幅を拡大しています。ただ、WTIでバレル30ドル近辺まで下がっていますから、3月には国内企業物価の石油・石炭製品がマイナスに転じたり、輸入物価の石油・石炭・天然ガスのマイナス幅が拡大する可能性が十分あるのはその通りですし、新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大とサウジアラビアの原油生産動向次第では、さらにマイナス幅が大きくなったり、期間が長引く可能性も否定できません。私がこのブログで常々指摘しているように、我が国の物価動向は日銀の金融政策よりも石油価格の方に大きく連動します。加えて、新型コロナウィルスの物価への影響については、中国では供給サイドに現れて物価上昇が生じたように報じられていますが、我が国では需要サイドと石油価格の影響などから、物価を下押しする方向の効果の方が大きいと、私をはじめとする多くのエコノミストは見ています。

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続いて、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は、企業物価(PPI)と同じで、景気後退期を示しています。これまた、直近の2018年10~12月期を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。ということで、BSIは昨年2019年10~12月期から足元の2020年1~3月期、さらに、次期の4~6月期まで、4四半期連続のマイナスが見込まれており、7~9月期になってようやくプラスに転ずる見通しが示されています。まあ、これもCOVID-19の感染拡大次第で、どちらに転ぶのか私にはまったく不明で先行き不透明であることはいうまでもありません。COVID-19の感染者がさらに急ピッチで拡大して終息まで長期化し、しかも、致死率が高かったりすれば経済へのダメージ大きく、早期に被害少なく終息すれば、あるいは、V字回復の可能性すらあります。マインドもそれに従って振れるんだろうと覚悟すべきです。現時点で、そういった方面に専門性ない私のようなエコノミストには何とも判りかねます。ただ、我が国のケースでは、ほかの国と違って、オリンピック・パラリンピックを控えていますから、これが中止になったり、あるいは、延期されたりすれば、他国にないダメージもあり得ると考えるべきです。
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2020年03月11日 (水) 23:30:00

国際通貨基金(IMF)が新型コロナウィルス感染拡大防止のための財政措置を要請!!!

やや旧聞に属する話題ながら、先週木曜日3月5日に、国際通貨基金(IMF)から新型コロナウィルス(COVID-19)の感染が拡大する下で国民を守るため、適切な財政政策の発動を求めるメッセージ "Fiscal Policies to Protect People During the Coronavirus Outbreak" が公表されています。我が国では、小中高校の休校措置などの国民の負担を強いる感染拡大策が先行していますが、こういった国際機関の政策提言にも耳を傾けるべきと私は考えます。とても強く考えます。COVID-19の感染拡大下で国民の命を守るための主要な財政政策をIMFのサイトから引用すると以下の3点です。

  • Spend money to prevent, detect, control, treat, and contain the virus, and to provide basic services to people that have to be quarantined and to the businesses affected.
    ウイルス感染の防止・検知・抑制・治療・封じ込めを行うため、また、隔離を余儀なくされた国民や影響を受けた企業に対して基本的サービスを提供するために、資金を投入する。
  • Provide timely, targeted, and temporary cash flow relief to the people and firms that are most affected, until the emergency abates.
    緊急事態が鎮静化するまでの間、もっとも深刻な影響を受けた国民や企業に対して、適時に対象を絞った一時的なキャッシュフロー救済措置を提供する。
    • Give wage subsidies to people and firms to help curb contagion.
      感染拡大を抑えるために、国民や企業に賃金助成金を支給する。
    • Expand and extend transfers-both cash and in-kind, especially for vulnerable groups.
      脆弱な集団に対しては、特に、金銭と現物支給の両面で給付を拡充する。
    • Provide tax relief for people and businesses who can't afford to pay.
      納税が困難な国民・企業を対象に税制上の負担軽減措置を提供する。
  • Create a business continuity plan.
    業務継続計画を立てる。


第2点めの一時的なキャッシュフロー提供には、さらに入れ子で賃金助成金などの3点が上げられていますので、インデントしてあるとはいえ少し見にくいかもしれません。私はこれら加えて公衆衛生機関や医療機関の体制拡充なども、当然に必要と考えるんですが、医師などの資格を必要とする人員拡充はすぐには難しいなど、短期に出来ることは限りがありますし、医療や衛生などの直接的なウィルス対策の体制拡充とともに、間接的に国民生活を経済面から支える財政政策に絞った提言なんでしょうから、取りあえずは、この3点ということも理解できるところです。我が国でも、ここは財源を気にせず国民の命を守る財政政策を展開すべき時、と私は強く訴えます。
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2020年03月10日 (火) 23:00:00

帝国データバンク「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」に企業の危機意識の高まりを見る!!!

先週金曜日の3月6日に帝国データバンクから「新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査」と題するリポートが明らかにされています。pdfの全文リポートもアップされています。調査結果はかなりありきたりで、それほぼ見るべきものはありませんが、2月後半に日々企業の危機感が高まっていた、という興味深い結果が示されています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のサマリーを3点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 新型コロナウイルス感染症による自社の業績への影響、『マイナスの影響がある』と見込む企業は63.4%。内訳をみると、「既にマイナスの影響がある」が30.2%、「今後マイナスの影響がある」が33.2%となった。「影響はない」とする企業は16.9%だった一方で、『プラスの影響がある』(「既にプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」の合計)と見込む企業は1.7%にとどまった
  2. 『マイナスの影響がある』と見込む企業を日別にみると、日を追うごとに、マイナスの影響を見込む割合が増加し、2月14日の55.7%から2月29日には81.7%まで増加した。新型コロナウイルス感染症の基本方針決定以降は、その傾向が顕著に表れた。特に、「既にマイナスの影響がある」も2月14日の24.5%から2月29日には45.4%まで上昇しており、半数近くの企業でマイナスの影響を受けていた
  3. 『マイナスの影響がある』と見込む企業を業種別にみると、「繊維・繊維製品・服飾品卸売」と「旅館・ホテル」が89.3%で最も高い。以下、「再生資源卸売」(87.5%)、「繊維・繊維製品・服飾品小売」(87.1%)、「飲食店」(80.9%)が8割台で続く。他方、『プラスの影響がある』と見込む企業は、唯一「医薬品・日用雑貨品小売」(12.0%)が1割台となり最も高かった


これ以上の言及は不要と思いますが、ひとつだけ、リポートから企業業績にマイナスの影響があると回答した企業の割合が2月後半にグングン上昇しているグラフが印象的でした。2週間ほどで25%ポイント以上の上昇を見せています。以下の通り、リポートから引用しておきます。

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2020年03月09日 (月) 20:00:00

下方修正された10-12月期GDP統計2次QEから現在の景気局面を考える!!!

本日、内閣府から昨年2019年10~12月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲1.8%、年率では▲7.1%と消費税率引上げ直後の反動を受け、大きなマイナスを記録しています。新型コロナウィルスの感染拡大前から、日本経済が消費税率引上げなどを契機に停滞に入っていたということが明らかになりました。1次QEからも下方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年10-12月期GDP改定値、年率7.1%減に下方修正
内閣府が9日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比1.8%減、年率換算では7.1%減だった。速報値(前期比1.6%減、年率6.3%減)から下方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比1.7%減、年率6.6%減となっており、速報値から下振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比1.5%減(速報値は1.2%減)、年率は5.8%減(同4.9%減)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比2.8%減(同2.9%減)、住宅投資は2.5%減(同2.7%減)、設備投資は4.6%減(同3.7%減)、公共投資は0.7%増(同1.1%増)。民間在庫の寄与度はプラス0.0%(同プラス0.1%)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がマイナス2.3%(同マイナス2.1%)、輸出から輸入を引いた外需はプラス0.5%分(同プラス0.5%)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてプラス1.2%(同プラス1.3%)だった。
10~12月期は世界経済の減速が尾を引き、消費税率の引き上げもあった。財務省が2日発表した法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の設備投資は前年同期比3.5%減で、16年7~9月期以来13四半期ぶりのマイナス。これまで設備投資をけん引してきた非製造業も13四半期ぶりのマイナスに転じていた。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/10-122019/1-32019/4-62019/7-92019/10-12
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.6+0.5+0.0+0.0▲1.6▲1.8
民間消費+0.4+0.0+0.6+0.5▲2.9▲2.8
民間住宅+1.7+1.5▲0.2+1.2▲2.7▲2.5
民間設備+4.4▲0.4+0.8+0.2▲3.7▲4.6
民間在庫 *(+0.0)(+0.1)(▲0.0)(▲0.2)(+0.1)(+0.0)
公的需要+0.3+0.1+1.7+0.8+0.4+0.3
内需寄与度 *(+1.0)(+0.1)(+0.8)(+0.3)(▲2.1)(▲2.3)
外需寄与度 *(▲0.4)(+0.5)(▲0.3)(▲0.3)(+0.5)(+0.5)
輸出+1.6▲1.9+0.4▲0.7▲0.1▲0.1
輸入+4.3▲4.3+2.0+0.7▲2.6▲2.7
国内総所得 (GDI)+0.4+0.9+0.5+0.2▲1.5▲1.7
国民総所得 (GNI)+0.6+0.7+0.6+0.2▲1.6▲1.8
名目GDP+0.2+1.1+0.6+0.4▲1.2▲1.5
雇用者報酬+0.5+0.5+0.8▲0.4▲0.3▲0.4
GDPデフレータ▲0.6+0.1+0.4+0.6+1.3+1.2
内需デフレータ+0.2+0.3+0.4+0.2+0.7+0.7


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された昨年2019年10~12月期の最新データでは、前期比成長率が大きなマイナス成長を示し、需要項目別寄与度では、赤の消費と水色の設備投資がマイナスの寄与を示している一方で、黒の外需(純輸出)がプラスの寄与となっているのが見て取れます。

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>まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが中央値で前期比▲1.7%、年率▲6.6%でしたし、レンジ内に入っていますし、予想された範囲のマイナス成長、と見えます。もっとも、このGDP統計を見て、新型コロナウィルスの感染拡大前から、日本経済が消費税率引上げなどを契機に停滞に入っていたということが明らかになりました。足元の2020年1~3月期も消費税率引上げの反動減の影響は和らぐ一方で、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響からマイナス成長はほぼほぼ確実であり、2四半期連続のマイナス成長という形で、テクニカルな景気後退シグナルが明らかになるだけでなく、私をはじめとする一定数のエコノミストは2018年10~12月期を山として日本経済はすでに景気後退局面に入っている、という見方も徐々に広まるような気がします。上のテーブルを見ても、GDP需要項目ほぼほぼすべてで前期比マイナスを記録しています。例外は公的需要だけですが、まさに、こういった景気局面こそ政府支出による景気の下支えが必要です。また、ややトリッキーな現象ながら、輸出入ともに減少する中で、輸入の減少の方が大きいために外需寄与度がプラスを示しています。消費税率引上げなどの国内要因に基づく景気停滞ですので、外需に依存する景気拡大はアリだと私は考えています、というか、ある意味で必要かもしれません。先行きの日本経済については、COVID-19の感染拡大の終息次第なんでしょうが、年央の東京オリンピク・パラリンピックに向けた需要の盛り上がりは見込めるものの、COVID-19の感染拡大が想定外に大きく進めば、オリンピック・パラリンピックの中止や延期も可能性がゼロとはいい切れず、何とも不透明であることはいうまでもありません。また、COVID-19の影響は国内での需要停滞とともに、海外、特に中国を含むサプライ・チェーンの断絶という形で現れる可能性高く、中国人観光客のインバウンド消費という需要サイドからの影響だけではなく、供給サイドから企業活動に影響を及ぼす可能性もあります。加えて、企業活動に伴う需要サイドの設備投資の抑制だけでなく、雇用者所得の抑制につながれば家計の消費の回復にも水を差しかねません。繰り返しになりますが、何とも先行きは不透明です。ただ、私は何ら根拠なく、4~6月期にはCOVID-19の感染拡大は終息するんではないか、と見込んでいたりします。

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GDP統計のほか、本日は、内閣府から2月の景気ウォッチャーが、また、財務省から1月の経常収支も、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲14.5ポイント低下の27.4を、先行き判断DIも▲17.2ポイント低下の24.6を、それぞれ記録しています。ここまで大きな低下は2011年3月の東日本大震災以来ではないかと思います。おそらく、水準の低さも同じだという気がします。また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+6,123億円の黒字を計上しています。いつものグラフは上の通りです。なお、景気ウォッチャーのグラフで影を付けた部分は景気後退期なんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。
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2020年03月07日 (土) 09:30:00

2月の米国雇用統計には新型コロナウィルスの影響はまだ限定的!!!

日本時間の昨夜、米国労働省から2月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+273千人増と新型コロナウィルス(COVID-19)の影響はまだ限定的で、雇用は予想外の伸びを示し、失業率も先月から0.1%ポイント低下して3.5%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の4パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy adds booming 273,000 jobs in February as unemployment rate falls to 3.5% from 3.6%
The labor market turned in another strong showing in February as employers added 273,000 jobs despite a slowing economy, worker shortages and early coronavirus fears.
The unemployment rate fell from 3.6% to 3.5%, matching a 50-year low, the Labor Department said Friday.
Also encouraging: Job gains for December and January were revised up by a total 85,000. December's was upgraded from 147,000 to 184,000, and January's, from 225,000 to 273,000.
Many economists said coronavirus concerns were unlikely to significantly affect the February jobs totals because the outbreak didn't begin to have a bigger impact on the economy and stock market until late February. The employment survey is conducted earlier in the month. The outbreak, however, could sharply reduce payroll gains in the months ahead.


まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期だったんですが、米国経済が長らく景気回復・拡大を続けているために、このグラフの範囲外になってしまいました。

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まず、Bloomberg のサイトによれば、市場の事前コンセンサスは雇用者の前月からの伸びが+175千人増、失業率は前月と同じ3.6%、ということなんですが、雇用者数はこれを大きく上回って伸び、失業率も低下を示しました。もちろん、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響はまったくないわけでもなかったんでしょうが、引用した記事にもある通り、本格的なインパクトはこれから出るわけで、2月統計ではまだ限定的な影響しか現れていないだけ、というわけなんでしょう。ですから、今週火曜日の3月3日に、米国連邦準備制度理事会(FED)が50ベーシスの大きな利下げを断行したところなんですが、3月17~18日には開催される定例の米国連邦公開市場委員会(FOMC)では、わずかに2週間ながら、追加利下げがあるとする織込みが昨日3月5日の先物市場では、なんと100%に達しました。それだけではなく、再び0.5%の大幅利下げに踏み切るとの予測も8割を超しています。我が国では、小中高校の休校を政府が要請するなど、COVID-19の感染拡大を必死で食い止めようとしているところですが、ゼロ金利が長らく続いて金融政策による追加緩和もままならず、現在国会で審議中の政府予算はまっ赤っかの大赤字で財政出動もためらわれて、COVID-19の経済へのインパクトを相殺・緩和できるような経済政策のカードの持ち合わせがない我が国としては、米国と違ってCOVID-19感染拡大から経済への経路を遮断することが難しいわけですので、感染拡大そのものをいかに防止するか、ということが重要なわけです。

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ということで、米国雇用統計に戻ると、物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向は上のグラフの通りです。米国雇用の堅調振りに歩調を合わせて、一昨年2018年8月以来、賃金上昇率も3%台の水準が続いており、2月も前年同月比で+3.0%の上昇とインフレ目標を上回る高い伸びを示しています。ただ、上のグラフに見られるように、インフレ目標の+2%を大きく超えるとはいえ賃金の伸びが鈍化しているのは、米中間の貿易摩擦の影響もあって、雇用増が製造業ではなく賃金水準の低いサービス業、例えば、Leisure and hospitality や Health care and social assistance などで発生している点もひとつの要因です。ただ、左派エコノミストとして、私はトランプ政権の圧力は別としても、一般論ながら、金融緩和策や財政的な拡張政策は貧困対策や格差是正の観点を含めて国民の生活水準向上に役立つものと考えています。
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2020年03月06日 (金) 20:00:00

6か月連続で「悪化」の基調判断続く景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から1月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲0.7ポイント下降して90.3を、CI一致指数は前月から+0.3ポイント上昇して94.7を、それぞれ記録し、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、6か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の景気動向指数、基調判断は6カ月連続「悪化」
内閣府が6日発表した1月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.3ポイント高い94.7と、4カ月ぶりに上昇した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を6カ月連続で「悪化」に据え置いた。08年6月から09年4月まで11カ月連続で「悪化」となって以来の長さとなる。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち5項目が指数のプラスに寄与した。自動車や二輪車の生産が堅調で「耐久消費財出荷指数」が伸びた。米マイクロソフトの基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」のサポートが1月に終了したのを受けてパソコンの需要が膨らみ「商業販売額(小売業)」も伸びた。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.7ポイント低下の90.3だった。低下は2カ月ぶり。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比0.4ポイント低い103.4と、3カ月ぶりに低下した。
指数公表にあわせて西村康稔経済財政・再生相が談話を発表した。「新型コロナウイルスの影響が世界全体に広がりつつあり、我が国経済にも相当の影響をもたらしてきている」としたうえで「流行を早期に収束させ得ることが最大の課題」との認識を示した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しているんですが、直近の2018年10月を景気の山として暫定的にこのブログのローカルルールで勝手に景気後退局面入りを認定しています、というか、もしそうであれば、という仮定で影をつけています。

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まず、CI一致指数について月別の推移を見ると、消費税率引上げのあった昨年2019年10月から12月まで3か月連続で下降した後、本日公表の今年2020年1月統計では+0.3ポイントの上昇を示しましたが、昨年2019年10月の100.7から12月の94.4まで▲6.3ポイントの下降そ示した後の1月統計での+0.3ポイントの戻りですから、まったく力強さに欠けているとしかいいようがありません。このペースで上昇しても、2019年9月の水準に戻るには20か月以上かかることになってしまいます。その上、本日公表されたのは1月統計ですから、基本的に、景気の自律的な推移だけでこの動きを示していて、というのはややおかしいんですが、ハッキリいって、新型コロナウィルス(COOVID-19)の経済への影響はほぼほぼ含まれていないと考えられますので、COVID-19の影響が現れ始めると考えられる2月統計では、さらに景気動向指数の水準が下降するものと覚悟すべきです。1月統計のCI一致指数では、耐久消費財出荷指数や商業販売額(小売業)(前年同月比)などの消費関連指標のプラス寄与が大きく、昨年2019年10月の消費税率引上げのダメージから少しずつ復活の兆しが見え始めていたんですが、COVID-19ですべて吹き飛んだ気がします。私が今日見かけた大和総研のリポート「【改訂】新型肺炎拡大による日本経済への影響度試算」では、短期終息でもGDPは▲4.5兆円程度の減少を示す可能性が示唆されていましたし、webにはアップされていない顧客向けニュースレターながら、SMBC日興証券のリポートでも同様に、感染拡大の期間が2~4月の3か月間にとどまったとしても、経済へのダメージはGDP比で▲0.9%、もしも、感染拡大の期間が2~7月の6か月間で、加えて、オリンピックが中止にでもなればリーマン・ショック並みの大きなインパクトの可能性を指摘しています。そうならないことを願うばかりです。
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2020年03月05日 (木) 23:00:00

昨年2019年10-12月期のGDP統計2次QE予想と我が国景気の現局面やいかに?

今週月曜日3月2日の法人企業統計の公表を受けて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、来週月曜日3月9日に昨年2019年10~12月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定で、すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしていて、今回は、新型コロナウィルス(COVID-19)に注目が集まっていますが、いつものように、法人企業統計のオマケで明らかにされているリポートも少なくなく、正面から先行きを取り上げているのはみずほ総研と第一生命経済研だけでした。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲1.6%
(▲6.3%)
n.a.
日本総研▲1.8%
(▲7.0%)
10~12月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率▲7.0%(前期比▲1.8%)と、1次QE(前期比年率▲6.3%、前期比▲1.6%)から下方修正される見込み。
大和総研▲1.6%
(▲6.1%)
2019年10-12月期GDP二次速報(3月9日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲6.1%と、一次速報(同▲6.3%)から僅かに上方修正されると予想する。
みずほ総研▲1.9%
(▲7.4%)
コロナウイルスの日本経済への影響は、①個人消費の下押し、②財・インバウンド輸出の減少、③サプライチェーン寸断による国内生産停止、などが想定される。
既に①個人消費については、感染防止等の観点から活動自粛の動きが足元で進んでいる。過去で近しい動きがみられた、東日本大震災や昭和天皇崩御の際は、特にサービス活動の低下が顕著であり、今回も同様の動きが発生するだろう。②輸出については、グローバルに感染が拡大するなかで、中国以外の他地域向けについても輸出が今後減少する可能性が高い。インバウンドについても、国内感染者数の拡大から、外国人客が日本を避ける動きが強まるとみている。③サプライチェーン寸断による生産活動の停止については、現時点では局所的・一時的な動きに留まっているが、長期化すればリスクが 顕在化する可能性が高まるだろう。
現時点で感染者数の今後の拡大ペースや終息時期は不透明だ。前回SARSの際は、発生から半年程度で終息していることから、現時点では年央頃にコロナウイルス影響が終息することをメインシナリオとしている。その場合、①個人消費や②輸出減が年前半の景気を下押しするものの、③サプライチェーン寸断までには至らず、年後半から持ち直すシナリオを想定している。日本経済は既に景気後退にあるとみており、その中での消費減・輸出減のインパクトは大きい。ただし、現時点ではコロナウイルスの影響はあくまで一時的であるとみており、本格的な雇用調整までには至らないと考えている。
ニッセイ基礎研▲1.6%
(▲6.4%)
19年10-12月期の法人企業統計の設備投資は弱い結果となったが、GDP統計の設備投資は1次速報値の段階ですでに弱い結果(名目・前年比▲3.2%)となっており、本日の法人企業統計の結果を反映した下方修正は小幅にとどまるだろう。
第一生命経済研▲1.7%
(▲6.6%)
新型コロナウイルスの悪影響が顕在化する以前から、既に景気が明確に悪化していたことが改めて確認されると思われる。
1次速報からの修正幅自体はそれほど大きいものではなく、10-12月期までの景気認識について変更を迫られるような内容にはならないと思われるが、問題なのは1-3月期以降の動向だ。筆者は2月17日の段階で1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率▲1.3%と、2四半期連続のマイナス成長になると予想していた。中国経済の悪化に伴う輸出の悪化が予想されることを踏まえたものだったが、その後さらに、日本国内でもイベントの中止やレジャー施設の休止、外出の手控え等、想定以上の影響の拡がりがみられており、サービスを中心とした個人消費の下振れが避けられない状況になっている。1-3月期のマイナス幅は、筆者が従来想定していたよりも大きくなりそうだ。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲1.8%
(▲7.1%)
落ち込み幅が拡大することで、消費増税のマイナスの影響が思いのほか大きかったとして、先行きの景気に対して慎重な見方が強まる可能性がある。
三菱総研▲1.9%
(▲7.3%)
2019年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲1.9%(年率▲7.3%)と、1次速報値(同▲1.6%(年率▲6.3%))から下方修正を予測する。


ということで、昨年2019年10~12月期のGDP統計2次QEは1次QEからの修正幅はわずかと見られており、大和総研を別にすれば、ほぼ下方修正で足並みがそろっています。大和総研だけは、原材料在庫の上方修正を主因に、在庫変動の前期比寄与度が上方修正されるため、2次QEは1次QEから上方修正と予想しています。いずれにせよ、改定幅はわずかと見込まれています。
2次QE予想とともに、注目されるのは景気の現局面です。というのも、先週水曜日の2月26日にシンクタンクの短期経済見通しを取り上げた際には、私自身の景気局面の見方として、「足元の2020年1~3月期もマイナス成長を記録し、テクニカルな景気後退シグナルが発せられるとともに、景気動向指数などの指標を見るにつけ、2018年10~12月期を景気の山として、すでに我が国は景気後退局面に入っているのではないか、というものです。」と明記していて、現在の日本経済がすでに景気後退局面に入っていると指摘していたのは、ニッセイ基礎件のリポート「景気は 2018年秋頃をピークに後退局面入りしていたと事後的に認定される公算が大きい。」のほか、第一生命経済圏のリポート「18年10月を山として、景気は後退局面が続いている可能性が高い。」さらに、東レ経営研のリポート「景気は2018年10月を山として後退局面入りしていた可能性高まる」がある一方で、日本総研のリポートでは「景気は回復軌道に復帰する見込み」、あるいは、大和総研のリポートでも「2020年は日本の回復期入りが期待される」などと指摘されていて、直感的に、三菱総研のリポートの「日本経済は景気後退の瀬戸際で踏みとどまるだろう。」あるいは、みずほ総研のリポートの「日本経済は弱含んでいると評価」くらいが予測の中央値である可能性が高い、と私は受け止めていたんですが、今回の2次QE予想では、みずほ総研のリポートが明確に「日本経済は既に景気後退にある」と景気サイクルが進んだことを認めつつ、COVID-19次第で景気後退が深刻化したり、長期化したりすると論じています。この先、時間の流れとともに、景気後退局面入りしているとの「リセッション派」のエコノミストが増えそうな気がします。なお、内閣府から明日公表予定の景気動向指数の基調判断をおさらいしておきますと、2018年いっぱいの12月までは「足踏み」が続き、2019年1~2月は「下方への局面変化」に修正された後、2019年3月には「悪化」となり、メディアを大いに賑わせ、この「悪化」が4月も続いた後、2019年5~7月は一時「下げ止まり」になったものの、再び8月以降は「悪化」が続いていますから、ヒストリカルDIを計算するまでもなく、かなり、この景気動向指数の基調判断が正確だった、ということがいえます。繰り返しになりますが、私の景気の現局面の判断は、ピンポイントの景気転換月の指摘はしませんが、2018年10~12月期を景気の山として日本経済はすでに景気後退局面に入っている可能性が高い、ということになります。そして、来週公表予定の2019年10~12月期や足元の2020年1~3月期のGDP統計は、この私の景気判断を裏付けるものになるんではないか、という気がしないでもありません。
最後に、下のグラフは、私が名付けた「リセッション派」に転じたみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。

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2020年03月04日 (水) 19:20:00

東洋経済オンライン「在宅勤務制度がある会社」主要550社リストやいかに?

新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミック化防止のため、時差通勤や在宅勤務などが模索されていますが、3月1日付けの東洋経済オンラインで「在宅勤務制度がある会社」主要550社リストと題する記事が掲載されています。そのうち、業界別在宅勤務制度の実施会社比率のテーブルを東洋経済オンラインのサイトから引用すると以下の通りです。

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地方公務員はいざ知らず、国家公務員の勤務する政府官庁は100パーセントなんでしょうね。私も公務員だったころに「テレワーク」と称する在宅勤務をした経験があります。在宅勤務も含めて、「休めるのは"上級国民"だけ」という批判があるのも事実ですが、まあ、こういった制度はあるに越したことはないような気がします。
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2020年03月03日 (火) 23:00:00

「OECD経済見通し」新型コロナウィルス(COVID-19)の影響で大きく下方修正!!!

昨日、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し中間評価」OECD Economic Outlook, Interim Report March 2020 が公表されています。副題は Coronavirus: the world economy at risk となっており、そのものズバリです。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。リポートのヘッドラインとなる世界経済の今年2020年の成長率は昨年2019年11月時点から▲0.5%ポイント引き下げて、+2.4%に下方修正しました。いうまでもなく、新型コロナウィルスの影響による下振れです。まず、OECDのサイトから経済成長率見通しの総括的なグラフを引用すると以下の通りです。

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繰り返しになりますが、ほぼほぼ新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により、世界経済の成長率見通しは下方修正されています。具体的な数字をお示しすれば、今年2020年+2.4%と昨年2019年11月時点の見通しから▲0.5%ポイント下方修正されています。2020年の成長率見通しを前回2019年11月時点の見通しとの比較でもう少し国別に細かく見ると、米国はわずかに▲0.1%ポイント下方修正の+1.9%成長、ユーロ圏欧州も▲0.3%ポイント下方修正で+0.8%成長、と見込まれている一方で、日本は▲0.4%ポイントの下方修正で+0.2%とギリギリプラス成長と見込まれ、震源地の中国は▲0.8%下方修正の+4.9%成長と+5%を割り込む予想となっています。上のグラフでも、新興国の方が先進国よりも下方修正幅が大きくなっているのが見て取れます。
しかし、今回の見通しではベースケースのシナリオについて、2020年1~3月期が流行のピーク epidemic peak で、その後は徐々に回復すると見ていますので、2021年見通しは逆に上振れる可能性が示唆されています。すなわち、2021年成長率見通しを前回2019年11月時点と比較すると、世界経済全体では+0.3%ポイントの上振れで+3.3%成長が見込まれており、国別では日本とユーロ圏欧州については前回見通しから変化ないものの、米国は+0.1%ポイント上振れ、中国に至っては+0.9%ポイントの上方修正を見込んでいます。このあたりは、COVID-19の流行の広がりと終息時期によりますから、何ともいえませんが、当然ながら、早期にCOVID-19の流行が終息すればV字回復の可能性もあり得る、ということなのだろうと私は考えています。いずれにせよ、先行き経済見通しは現時点では極めて不透明としかいいようがありません。

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本日、内閣府から2月の消費者態度指数が公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、前月から▲0.7ポイント低下して38.4を記録しました。上のグラフの通りです。なお、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。`消費者態度指数を構成するコンポーネントで詳しく見ると、4項目すべてが前月統計から低下している中で、もっとも大きな落ち込みを示したのが▲2.4ポイント低下の雇用環境でした。コンポーネントは別に収入などがあるとはいえ、GDP需要項目の中で最大のシェアを占める消費の基礎となる雇用に関するマインドが低下したのは気がかりです。なお、統計作成官庁である内閣府による基調判断は「足踏み」で据え置かれています。
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2020年03月02日 (月) 23:00:00

2019年を通じて企業活動の停滞を示す法人企業統計の先行きをどう見るか?

本日、財務省から昨年2019年10~12月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高はほぼ3年ぶりの減収で前年同期比▲6.4%減の347兆8257億円、経常利益は2四半期連続の減益で▲4.6%減の18兆5759億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで▲3.5%減の11兆6303億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資についても前期比▲4.2%減となっています。なお、設備投資については、前回からソフトウェアを含むベースに変更されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資、約3年ぶりマイナス 10-12月3.5%減
財務省が2日発表した2019年10~12月期の法人企業統計によると、全産業(金融・保険業を除く)の設備投資は前年同期比3.5%減の11兆6303億円だった。マイナスは16年7~9月期以来13四半期ぶり。世界経済の減速を受け、自動車など製造業で投資が冷え込んだ。これまで設備投資をけん引してきた非製造業も13四半期ぶりにマイナスに転じた。
設備投資の内訳をみると、製造業が9.0%減で2四半期ぶりに減少した。国内外の需要減が鮮明な自動車産業を中心に、生産能力を増強する投資が減った。非製造業は0.1%減で、13四半期ぶりのマイナス。オフィスビルや商業施設への投資が減った不動産業が22.8%減となり、全体を押し下げた。
全産業の売上高は6.4%減と、2期連続で減少した。製造業・非製造業ともに前年を下回った。製造業では自動車や関連部品の販売が低調だった。非製造業では卸売業・小売業が10.2%減り、マイナスに寄与した。
財務省によると、卸売業にあたる商社で石油化学製品などの販売が減少した。小売業だけでは0.5%の増収で「消費増税の影響はこの統計では確認できなかった」(財務省)という。
経常利益は製造業が15.0%減で6期連続の減少。33.7%の減益となった生産用機械では、海外を中心に建設機械の販売が低迷した。大型台風で生産が減った影響もあった。前年より為替相場が円高で推移していたため、自動車などでは為替差損が出た。
新型コロナウイルスの感染が本格的に広がる前の時期に、企業活動が鈍っていた状況が浮かぶ。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、やや長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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飲用した記事にもある通り、基本的に企業活動は消費税から中立とはいえ、昨年2019年10~12月期は消費需要が大きく低下したわけですので、企業の売上も利益もともに下振れするのは当然ですが、その前の時期から企業活動は鈍化を示しています。すなわち、先の2019年10~12月期の1次QE公表時にも書いた通り、かなり前から、すなわち、「2018年10~12月期を景気の山として、すでに我が国は景気後退局面に入っているのではないか」という見方を示しておきましたが、ひとつの根拠として、この法人企業統計の金融業と保険業を除く全企業の売上が季節調整済みの系列で見て、2018年10~12月期を直近のピークとして、2019年1~3月期から2019年いっぱいの4四半期連続で減少を続けている点が上げられます。上のグラフの通りです。さすがに、リーマン・ショック時の売上や経常利益の落ち方はとても強烈なんですが、その前の時期の落ち方と比較しても、2019年いっぱいの売上や経常利益の落ち方はかなりのもんです。加えて、季節調整済みの系列で見た経常利益については、直近の2019年10~12月期で非製造業がほぼほぼ横ばいの+0.3%増だった一方で、製造業は▲8.6%減を示しており、世界経済の停滞に起因する減益であることは明らかです。設備投資についても2四半期連続のマイナスが続いており、さらに、足元の今年2020年1~3月期には新型コロナウィルスによるダメージが加わる可能性が極めて高く、いっそうの企業活動の停滞につながることは確実です。その先については、私のような凡庸なエコノミストには想像もできません。ただ、短期的な目先の売上や利益や設備投資は新型コロナウィルスにより下振れする可能性がある一方で、感染が収束すれば一気にV字回復する可能性も残されている点は忘れるべきではありません。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。ソフトウェアを含むベースに今回から再計算しています。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、相変わらず、太線のトレンドで見て労働分配率は60%前後で底這い状態から脱することなく低空飛行を続けています。他方、設備投資のキャッシュフロー比率はじわじわと上昇して60%台半ばに達しています。もちろん、一番元気よく右肩上がりの上昇を続けているのは利益剰余金です。ストックですから、積み上がる傾向にあるとはいえ、これを賃金や設備投資にもっと回すような政策はないものでしょうか?

本日の法人企業統計を受けて、来週月曜日の3月9日に10~12月期GDP統計2次QEが公表される予定となっています。基本的に、小規模な修正ながら下方改定されるものと私は考えていますが、いずれにせよ、日を改めて2次QE予想として取り上げたいと思います。
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2020年03月01日 (日) 17:00:00

【LINEリサーチ】新型肺炎(新型コロナウィルス)に関する調査結果やいかに?

私がすっかり見逃していて、やや旧聞に属する話題ながら、2月25日付けでLINEリサーチ「新型肺炎(新型コロナウィルス)に関する調査結果」が明らかにされています。調査そのものは2月19日に実施されており、その2週間前の2月5日調査結果と対比されています。さすがに、新型肺炎(新型コロナウィルス)に関する認知度は高いものの、それでも1%は「全く聞いたことがない」と回答していたりしますが、まあ、99%は知っているわけです。1%の知らない人というのは、どんな人なんでしょうか。年齢・性別・居住地などの属性がやや気にかかります。ということで、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、LINEリサーチのサイトから、さいきん2週間の間に、生活の中で困ったこと を引用しています。「マスクが手に入らない」49%と「手指のアルコール消毒用品が手に入らない」20%がマーキングしてありますが、2月19日調査では「新型肺炎が流行っている」よりも「花粉症の季節が来た」の方が多くなっています。私も実は困るのは新型肺炎よりも花粉症で、エコノミストですから、新型肺炎への罹患は5%水準で棄却されそうな気がしますが、花粉症はほぼほぼ100%ではなかろうかという気もします。もちろん、罹患するかどうかではなく、2~3%といわれる新型肺炎の致死率を考慮した期待値ベースでは、死には至らなさそうな花粉症よりも新型肺炎の方のマイナスが大きいんでしょうが、まあ、私は確率的には罹患しないだろうと高をくくっています。

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次に、上のグラフは、LINEリサーチのサイトから、あなたの職場での対応や推奨されていることは? を引用しています。「手指のアルコール消毒用品が常備」26%、「マスクの着用の義務/推奨」23%、「イベントや集会の中止」14%がハイライトされています。ただ、「時差通勤の推奨」や「在宅勤務の許可/推奨」はいずれも5%という結果が示されています。今ではもっと比率が上昇している可能性はありますが、「休めるのは"上級国民"だけ」という批判があるのも事実です。

今日、私は何度か買い物や図書館に出かけたのですが、やたらとトイレットペーパーを買って帰る人が多かったような気がします。フェイクニュースにもならないデマのたぐいなんでしょうが、我が家周辺のご近所さんのレベルが低いかもしれないと改めて感じてしまいました。
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2020年02月28日 (金) 23:00:00

新型コロナウィルスの影響で先行き不透明な鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計と雇用統計!!!

本日は月末閣議日ということで、重要な政府統計がいくつか公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも1月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で見て、前月から+0.8%の増産を示し、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲0.4%減の11兆7890億円、季節調整済み指数は前月から+0.6%増を記録しています。雇用統計では、失業率は前月とから+0.2%ポイント上昇して2.4%、有効求人倍率は前月から▲0.08ポイント低下して1.49倍と、いずれもタイトながら雇用は悪化のモメンタムが続いているように見受けられます。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産0.8%上昇 1月、輸出品は低調
経済産業省が28日発表した1月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は99.6と前月比0.8%上昇した。自動車などの生産が増え、2カ月連続で伸びた。ただ半導体関連などの輸出品目は低調で、19年10~11月の大幅な低下からの戻りは鈍い。2~3月も新型コロナウイルスの影響で生産計画よりも下振れする可能性が高まっている。
1月の上昇率はQUICKがまとめた民間予測の中央値(0.2%上昇)より大きかった。業種別にみると、15業種中8業種が上昇した。上昇への寄与が最も大きかったのが自動車で前月比5.5%増えた。国内・海外向けともに増産となった。一方、半導体製造装置などの生産用機械は3.4%減、汎用・業務用機械も2.8%減となった。海外向けの生産は低調だった。
1月まで2カ月連続の上昇になったとはいえ、19年10~11月に大きく低下してからの戻りは限定的だ。経産省は「足元は上昇が続いたものの勢いは感じられない」との見方を示した。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、2月は前月比5.3%の上昇、3月は6.9%の低下と見込む。経産省は基調判断を前月までの「弱含み」から「一進一退ながら弱含み」に変更した。ただ調査は2月上旬時点で、新型コロナウイルスの感染拡大による影響は織り込まれていない。経産省は今後について「下振れする可能性がある」としている。
小売販売額、1月0.4%減 先行きは新型コロナ警戒感
経済産業省が28日発表した1月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比0.4%減の11兆7890億円だった。マイナス幅は前の月の2.6%から縮小し、昨年10月の消費税率引き上げの影響は和らぎつつある。ただ2月以降は新型コロナウイルスの影響が出ており、経産省は「百貨店などを中心に大きな落ち込みが予想される」とみている。
減少は消費税率を引き上げた昨年10月以降4カ月連続。自動車小売業が1.7%減と引き続き不振で、全体の重荷となった。1月は例年に比べて記録的な暖冬となり、冬物衣料やエアコンの販売も伸びなかった。
業態別にみると、百貨店が前年同月比3.2%減、スーパーマーケットが0.8%減だった。どちらも暖冬で主力の衣料品の販売が不調だった。
一方、1月は家電大型専門店の販売額が0.1%増となり、増税以来初めてプラスに転じた。パソコンや大型テレビ、レコーダーの販売が好調だった。
2月以降は新型コロナウイルスの感染拡大の影響が最大の焦点となる。経産省のヒアリングでは「2月に入って訪日外国人客が来ない」「マスクを売りたくても商品がない」などの声が聞かれたという。1月時点では、ドラッグストアでマスクやウイルス除去製品の販売が増えるといった影響にとどまっていた。
求人倍率の大幅低下、製造業の生産低迷が影 1月1.49倍
堅調だった雇用情勢に変調の兆しが出始めた。厚生労働省が28日発表した1月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.08ポイント下がり、1.49倍だった。企業の新規求人数が前年同月に比べ16%減った。同省は「求人票の記載項目を拡充した影響が出た」とみるが、製造業で契約社員のライン工が減るなど生産低迷が影を落としており、情勢判断を下方修正した。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。1.50倍を下回るのは2017年5月以来だ。0.08ポイントの低下は公表時ベースで09年2月以来。正社員の有効求人倍率は1.07倍で前月から0.06ポイント低下した。
厚労省は雇用情勢について「改善が進む中、求人が求職を大幅に上回っている」とした。前月までは「着実に改善」としており、今回から「着実」を削除した。判断の下方修正は7年3カ月ぶり。
雇用の先行指標となる新規求人は主要産業全てで減った。特に落ち込みが大きいのは製造業で26.1%減だ。宿泊・飲食サービス業も20.6%減った。
厚労省は1月から企業の出す求人票に昇給や賞与制度の有無などを記載するよう拡充した。19年12月に「駆け込み求人があり、20年1月に反動減が起きた」と説明する。同省は、求人票見直しで有効求人倍率を0.05~0.06ポイント押し下げたと試算する。
ただ有効求人倍率の低下は2月も続く可能性がある。新型コロナウイルスによる中国人の旅行者の減少などに関連して「ハローワークや労働局に観光業や製造業から相談が来ており、今後を注視する」(厚労省幹部)。
総務省が合わせて発表した完全失業率(季節調整値)は2.4%で0.2ポイント上昇した。転職のための自発的な離職が増えた。


いくつかの統計を取り上げていますので長くなりましたが、いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、生産は2か月連続の増産となり、前月比で+0.8%増でしたから、ややこれを上回りましたが、レンジの上限は+1.4%増でしたので、まあ、予想の範囲内ということなのかもしれません。上のグラフの通りに、一見したところV字回復に見えなくもないんですが、生産の先行きは新型コロナウィルス次第ということで、まったく不透明です。マスクについては、電機メーカーのシャープが生産に乗り出すとか、増産の勢いが強いものの、これは例外的な見立てになりますし、一般的には、需要サイドからも供給サイドからも新型コロナウィルスは生産にはマイナスの影響としか考えられません。製造工業生産予測指数によると2020年2月は前月比+5.3%の増産の後、3月は▲6.9%の減産となっていて、2月の補正値試算後の生産指数は+2.0%の増産となっていますが、調査期日が2月10日であり、新型コロナウィルスの影響については十分に織り込まれていないおそれが強く、2~3月は予測調査から下振れする公算が大きいと考えるべきであり、1~3月期は3四半期連続の減産の高3が高くなっていると私は受け止めています。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。消費の代理変数となる小売販売額を見ると、消費税率引上げの当月だった10月の前年同月比▲7.0%減から、11月は▲2.1%減、12月▲2.6%減から、今年2020年1月は▲0.4%減まで、着実にマイナス幅は縮小しました。前回2014年4月の消費税率引上げ後の動向を振り返ると、引上げ当月の4月▲4.3%減、5月▲0.4%減、6月▲0.6%減と、3か月連続マイナスを記録したものの、7月は+0.6%増とプラスに回帰しています。今回の消費税率引上げのダメージは前回の引上げ幅より小さいにもかかわらず、景気局面の違いなどから少し長引いているのかもしれません。

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続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。景気局面との関係においては、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数は先行指標と、エコノミストの間では考えられています。また、影を付けた期間は景気後退期を示しています。ということで、失業率は2%台前半まで低下し、有効求人倍率もほぼ1.5倍くらいの高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も1倍超を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年半に渡って1倍以上の水準で推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近いタイトな状態にあると私は受け止めています。ただ、モメンタム、すなわち、方向性については、失業率も有効求人倍率も、そして、特に先行指標である新規求人数を見れば、ジワジワと雇用改善が停滞する方向にあることは確かです。何度もこのブログで繰り返して表明してきましたが、本格的な景気後退局面に入れば、雇用は急速に悪化するおそれがあります。「人口減少で人手不足」なんてステレオタイプの見方は吹っ飛ぶ可能性がありますので十分な注意が必要です。
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2020年02月27日 (木) 20:30:00

ダイヤモンド・オンライン「花粉症の人が多い都道府県ランキング【47都道府県・完全版】」やいかに?

いよいよ、本格的に花粉症のシーズンに突入してしまいましたが、2月25日付けダイヤモンド・オンラインに、一般社団法人ストレスオフ・アライアンスの実施による大規模インターネット調査『ココロの体力測定2019』を基にした「花粉症の人が多い都道府県ランキング【47都道府県・完全版】」がリポートされています。男女の性別になっているんですが、男性のランキングをダイヤモンド・オンラインのサイトから引用すると以下の通りです。

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実は、私は来月3月、ほぼほぼ1か月以内に東京都から生まれ故郷の京都府に引越す予定なんですが、50パーセントのトップテン内外の似たようなポジションにあるようです。沖縄県が並外れて低い比率を示しているのは、やっぱり、なにか気候的な違いがあるんだろうと想像しています。
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2020年02月26日 (水) 23:00:00

1次QE後の短期見通しやいかに?

先週2月17日に内閣府から公表された昨年10~12月期GDP統計速報1次QEを受けて、シンクタンクや金融機関などから短期経済見通しがボチボチと明らかにされています。四半期ベースの詳細計数まで利用可能な見通しについて、2020年半ばのの東京オリンピックの後、今年2020年いっぱいくらいまで取りまとめると以下の通りです。なお、下のテーブルの経済見通しについて詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。計数の転記については慎重を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、各機関のリポートでご確認ください。なお、"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名2019/10-122020/1-32020/4-62020/7-92020/10-12
actualforecast
日本経済研究センター▲1.6
(▲6.3)
▲0.2
(▲0.7)
+0.5
(+1.9)
+0.7
(+2.6)
+0.3
(+1.0)
日本総研(+1.8)(+2.4)(+2.3)(+1.2)
大和総研+0.3
(+1.3)
+0.6
(+2.6)
+0.3
(+1.0)
+0.2
(+0.9)
みずほ総研+0.2
(+1.0)
+0.3
(+1.3)
+0.3
(+1.4)
+0.5
(+2.1)
ニッセイ基礎研▲0.3
(▲1.0)
+0.7
(+2.9)
+0.5
(+2.2)
+0.2
(+0.8)
第一生命経済研▲0.3
(▲1.3)
+0.2
(+1.1)
+0.7
(+2.7)
+0.5
(+2.0)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.2
(+0.8)
+0.3
(+1.1)
+0.5
(+2.0)
+0.2
(+0.5)
三菱総研+0.2
(+1.0)
+0.4
(+1.5)
+0.4
(+1.7)
+0.1
(+0.6)
SMBC日興証券+0.5
(+2.1)
+0.5
(+2.2)
+0.6
(+2.3)
+0.2
(+0.7)
農林中金総研▲0.0
(▲0.0)
+0.2
(+0.9)
+1.0
(+4.0)
▲0.1
(▲0.3)
東レ経営研▲0.4+0.3+0.6+0.5


各列の計数については上段のカッコなしの数字が季節調整済み系列の前期比で、下段のカッコ付きの数字が前期比年率となっています。2019年10~12月期までは内閣府から公表された1次QEに基づく実績値、今年2020年1~3月期からは見通しであり、すべてパーセント表記を省略しています。なお、日本経済研究センターのリポートでは前期比年率の成長率しか出されておらず、逆に、東レ経営研では前期比の成長率のみ利用可能でしたので、不明の計数は省略しています。ということで、見れば明らかなんですが、10月の消費税率の引上げの後の動向については、足元の1~3月期はマイナス成長予測とプラス成長予測が拮抗している一方で、目先の4~6月期はすべての機関がプラス成長回帰を予想しています。また、2020年には東京オリンピック・パラリンピックの経済効果などがありますが、最終四半期の10~12月期には息切れを見込む向きも少なくないように私は受け止めています。
我が国景気に対する私の基本的な見方は、足元の2020年1~3月期もマイナス成長を記録し、テクニカルな景気後退シグナルが発せられるとともに、景気動向指数などの指標を見るにつけ、2018年10~12月期を景気の山として、すでに我が国は景気後退局面に入っているのではないか、というものです。直近のCI一致指数のピークは2017年12月であり、鉱工業生産指数(IIP)で見ると2018年10月です。2019年3月に定年退職した私のそのあたりまでの景気の実感として、このIIPのピークの2018年10月あたりが景気の山と考えるべきではないか、という気がしています。それにしては、景気後退の落ち方のスロープが緩やかなんですが、人手不足を背景とした雇用が国民生活の安定を支えたことに加えて、東京オリンピック・パラリンピックに向けた建設需要、さらに、緩和の続く金融政策が経済活動を下支えしている、といったあたりが理由と考えられます。ただ、何としても不透明な要因として、新型コロナウィルスによる肺炎の流行があります。多くのシンクタンクなどの見通しでは、4~6月期に終息し、年央は東京オリンピック・パラリンピックで景気も盛り上がり、年末にかけて息切れする、というのが基本シナリオなんですが、極論としては、ロンドンが東京の代替案として浮上しているように、新型コロナウィルスが猖獗を極めて東京でのオリンピック・パラリンピックの開催がそもそも不可能となり、一気に景気が奈落の底に突き落とされる、という可能性もゼロではありません。まあ、限りなくゼロに近いとは思いますし、東京で新型コロナウィルスが猛威を振るえば、おそらく、私の引越し先である関西方面ではもっと大規模なパンデミックに陥っている可能性が高いわけですから、何としても避けたいシナリオであることは間違いありません。
最後に、下のグラフは、ニッセイ基礎研のリポートから引用しています。実質GDP成長率の推移(四半期)です。

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2020年02月25日 (火) 20:00:00

1月の企業向けサービス物価(SPPI)上昇率は+2.3%に加速!!!

本日、日銀から1月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。昨年2019年10月統計から消費税率引上げがありましたので、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は1月統計で前月からやや加速し+2.3%を示しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じく+2.3%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業向けサービス価格、増税除き0.6%上昇
日銀が25日発表した1月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は104.7と、前年同月比で2.3%上昇した。伸び率は2019年12月(2.1%上昇)から拡大した。消費税率引き上げの影響を除くと0.6%上昇と、半年ぶりの大きさだった。環境規制強化による燃料切り替えを背景にしたコスト増で、貨物輸送が上昇した。土木建築サービスや職業紹介サービスの上昇も目立った。
前月比では0.3%下落した。テレビ広告などが下落した。
1月は新型肺炎の感染拡大の影響が明確に現れた品目はなかった。日銀は調査先からの聞き取りを踏まえ、「2月以降は旅客貨物などの運輸関連や宿泊関連サービスを中心に影響が出る可能性が聞かれている」としている。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上昇率がやや加速したとはいえ、先月統計から大きな変化はないんですが、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率+2.3%の内訳を大類別の寄与度で見ると、引き続き、労働者派遣サービスや土木建築サービスなどを含む諸サービスが+0.92%と大きな寄与を示しているほか、ソフトウェア開発などを含む情報通信が+0.47%、道路貨物輸送や鉄道旅客輸送などを含む運輸・郵便が+0.46%となっており、情報通信は携帯電話料金の引下げが議論されているにもかかわらず、上昇寄与が大きくなっていたりします。情報通信を別にすれば、諸サービスと運輸・郵便の2つの大類別は人手不足の影響がうかがえます。これらの業種については、純粋な値上げというよりも、消費税率引上げの転嫁が進んでいる、と考えるべきなのかもしれません。ただし、消費税を除く上昇率が試算されているんですが、消費税率引上げ直後の昨年2019年10~12月の各月統計で+0.4%となっていた一方で、引用した記事にもあるように、1月統計では+0.6%にやや加速しているのも事実です。ただ、昨年2019年5月統計まで+1.0%の上昇率を示し、消費税率引上げ直前の昨年2019年8~9月統計で+0.5%の上昇率だったのに比べて、ほぼほぼ上昇率は同じくらいの水準が続いている、のも事実です。加えて、日々の報道に見られるように、先行き最大の不透明要因は新型コロナウィルスの経済への影響であるのは明らかであり、今後の物価動向は需要サイドからは低下、供給サイドからは上昇、ということなのであろうと私は受け止めています。
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2020年02月21日 (金) 23:00:00

1月の消費者物価(CPI)はエネルギー価格が上昇に転じて37か月連続のプラス!

本日、総務省統計局から1月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し拡大して+0.8%を示しています。また、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+0.8%でした。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の全国消費者物価、0.8%上昇 ガソリン上がる
総務省が21日発表した1月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が102.0と前年同月比0.8%上昇した。プラスは37カ月連続。材料費や人件費の高止まりを背景とした外食などの上昇に加え、ガソリン価格が8カ月ぶりにプラスに転じたことも物価上昇に寄与した。1月中旬時点の調査結果のため、新型コロナウイルス感染症の影響は「見られなかった」(総務省)という。
上昇率は2019年12月の0.7%から、小幅に拡大した。原油価格の上昇でガソリンや灯油の価格が上昇に転じた。もっとも、足元で原油価格は下落傾向にあり、総務省は「今後の動きを注視したい」とした。携帯電話の通信料は大手各社の値下げの影響で、引き続き物価の下げ圧力となった。
1月の生鮮食品を除く総合では388品目が上昇した。下落は110品目、横ばいは25品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
1月の全国CPIで、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.9と0.8%上昇した。生鮮食品を含む総合は102.2と0.7%の上昇。暖冬の影響で、タマネギやブロッコリーなどの生鮮野菜の出荷水準が高く、野菜価格が高騰していた19年1月に比べると「価格が下がっている」(総務省)という。
総務省は昨年12月の消費税率引き上げの影響を配慮したCPIの試算値も公表した。総務省の機械的な試算によると、消費税率引き上げと幼児教育・保育無償化の影響を除いた場合、1月の生鮮食品を除く総合の物価上昇率は19年12月と同じ0.4%だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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ということで、昨年2019年の10月統計から消費税率の引上げと幼児教育・保育無償化の影響が現れており、これを含んだ結果となっていて、引用した記事にもあるように、その影響の試算結果が「消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響 (参考値)」として総務省統計局から明らかにされています。少し話がややこしいんですが、この参考値によれば、10月統計について、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIのヘッドライン上昇率+0.4%に対する寄与度が+0.37%となっていて、その+0.37%に対する消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響が合わせて+0.20%、分けると消費税率引上げが+0.77%、幼児教育・保育無償化が▲0.57%と、それぞれ試算結果が示されています。1月統計ではコアCPI上昇率が+0.8%と少し上昇幅を拡大しているものの、このコアCPI上昇率+0.8%のうちの+0.20%が制度要因からの寄与と考えるべきです。実際に、統計局がExceelファイルで提供している消費税調整済指数では、10月と11月は消費税の影響を除くコアCPIの前年同月比上昇率はともに+0.2%でしたが、12月統計と1月統計では+0.4%にやや加速しています。このコアCPI上昇率の加速の大きな要因はエネルギーであり、かなりの程度に、国際商品市況における石油価格に連動しています。ただし、生鮮食品及びエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も12月と1月統計では+0.6%に達しています。先行きについては、新型コロナウィルスの動向が何とも不透明です。ウィルスそのものの動向が不透明なうえに、ウィルスの影響についても未確定です。常識的に考えれば、需要の減退から需給ギャップがマイナス方向に振れて物価引下げ要因になると考えられますが、「世界の工場」の中国が震源地であり感染拡大の中心ですから、何らかの財のサプライチェーンにおけるボトルネックの発生から物価上昇につながるリスクも無視できません。加えて、これまた、新型コロナウィルスの影響なんですが、その前に1月の石油価格の上昇は、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したことにより、中東の地政学的リスクに起因するわけで、それはそれで一時的に収束する一方で、新型コロナウィルスによる中国経済の停滞は石油価格を押し下げる要因となります。ですから、エネルギー価格が我が国物価を押し上げたのは1月だけの一時的な現象と考えるべきで、2月以降はむしろ新型コロナウィルスによりエネルギー価格は下落に向かい、そのため、我が国物価の下押し要因となる可能性が高い、という予測が多いように私は受け止めています。例えば、日本総研のリポート「新型肺炎による原油市場への影響をどうみるか」、あるいは、みずほ証券のリポート「マーケット・フォーカス 商品: 原油・金・銅」などでは、新型コロナウィルスによる中国の原油需要の下振れとそれに伴う原油価格低下の可能性を示唆しています。さらに加えて、4月からは高等教育無償化が始まり、いっそうの物価引下げをもたらしかねませんから、日銀の物価目標達成はまだまだ先のことかもしれません。
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2020年02月20日 (木) 23:00:00

2020年大統領選挙の年の米国民の政策優先順位はどうなっているか?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、ちょうど1週間前の2月13日付けで米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから As Economic Concerns Recede, Environmental Protection Rises on the Public's Policy Agenda と題する調査結果が明らかにされています。堅調な経済動向を反映して、依然として経済がトップ・プライオリティながら後景に退き、環境保護や気候変動に政策の優先順位が移りつつあるようです。いくつか図表を引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、ピュー・リサーチのサイトから For the first time, environmental protection rivals the economy among the public's top policy priorities と題するグラフを引用しています。実にウィットに富んだタイトルを付けたもので、経済が好調であるがゆえに政策の優先順位を下げ、プライオリティを上げた環境が経済に肩を並べるほどになっているのが見て取れます。クリントン米国政権期の "It's the economy, stupid!" はまだ何とか成り立っているものの、少しずつ経済政策や雇用確保の重要性は低下しているのかもしれません。

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次に、上のグラフは、ピュー・リサーチのサイトから Wide partisan gaps on climate change, environment, guns and stronger military と題するグラフを引用しています。現在のトランプ米国政権下で米国の分断はさらに大きくなり、環境や気候変動、さらに、銃政策などのプライオリティで大きな党派間の差が生じているのが見て取れます。

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最後に、上のグラフは、ピュー・リサーチのサイトから Environment a top priority for younger adults; older Americans prioritize defense, Social Security と題するテーブルを引用しています。党派間だけでhなく、年代別でも政策プライオリティに差を生じており、65歳以上世代と30歳未満世代の差が計算されています。高齢世代では軍事や社会保障が重視され、若い世代では教育、気候変動、環境の重要性が認識されているようです。

さて、いくつかの州で政党の予備選が始まっていて、米国大統領選挙戦はスタートしているといっても過言ではありません。2期目の現職が強いのは通例としても、どのような選挙戦が展開されるのでしょうか。私もそれなりの興味をもって見ています。
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2020年02月19日 (水) 19:20:00

中華圏の春節で赤字が膨らんだ貿易統計と相変わらず低空飛行の続く機械受注!

本日、財務省から1月の貿易統計が、また、内閣府から昨年2019年12月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計では季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲2.6%減の5兆4305億円、輸入額も▲3.6%減の6兆7431億円、差引き貿易収支は▲1兆3126億円の赤字を計上しており、機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比▲12.5%減の8248億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を手短に引用すると以下の通りです。

1月の貿易収支、1兆3126億円の赤字 3カ月連続赤字
財務省が19日発表した1月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆3126億円の赤字だった。赤字は3カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1兆6819億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比2.6%減の5兆4305億円、輸入額は3.6%減の6兆7431億円だった。中国向け輸出額は6.4%減、輸入額は5.7%減だった。
19年12月の機械受注、前月比12.5%減 市場予想は8.8%減
内閣府が19日発表した2019年12月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比12.5%減の8248億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は8.8%減だった。
うち製造業は4.3%増、非製造業は21.3%減だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は3.5%減だった。
内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いた。
19年10▲12月期の四半期ベースでは前期比2.1%減だった。1▲3月期は前期比5.2%減の見通し。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。


やや長くなりましたが、いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、中央値で▲1兆7046億円の貿易赤字が予想されていましたので、▲1兆円超の貿易赤字とはいえ、まずまず、大きなサプライズをもたらしたわけではありません。ただ、上の輸出入のグラフ、特に下のパネルの季節調整済の系列でトレンドを見ると、明らかに輸出入ともに減少のトレンドにあります。特に、1月統計では中華圏の春節による工場停止などの供給サイドへの影響とともに、極めてわずかながら、新型コロナウィルスの影響が需要サイドに出始めていると考えるべきですし、2月統計にはさらに大きなインパクトがもたらされるのは当然です。中華圏の春節について考えると、各企業は当初は1月24~30日を春節期間として見越して1月中旬までに輸出を終えた影響が大きいと私は考えています。というのも、新型コロナウィルスが明らかになったのは1月末日の31日であり、より大きく本格的な影響が出るのは2月ということになります。さらに、当初は1月30日で終わるハズだった春節が、公式に2月2日まで休暇が延長され、さらに、日系企業を始めとする多くの大手企業は2月9日まで工場やオフィスを閉鎖したところも少なくないわけで、再開後も本格稼働に至っていない企業もあるのは当然です。中国への依存が大きい我が国の貿易は、輸出入ともに停滞を見せることが十分予想されます。

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続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、世界経済とともに中国の景気も最悪期を脱し、これから上向きになろうかという矢先の新型コロナウィルスですので、繰り返しになりますが、ダイレクトに中国向けだけでなく、中国向け輸出比率の高いアジア諸国向けの輸出も、我が国では当然に欧米諸国などよりも割合が高く、輸出を通じた日本経済へのダメージは少なくないものと考えます。中国向けの直接の輸出だけでなく、加えて、サプライチェーンの中で中国の占めるポジションからして、部品供給の制約から貿易への影響を生じる可能性も無視できません。欧米向け輸出についても、OECD先行指数を見る限り最悪期を脱したと考えられますが、中国経済の変調に連動する部分もあり得ることから、今後の動向は不透明です。

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続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。これも、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比▲8.3%減でしたから、実績の▲12.5%減はレンジ加減に近く、やや大きなマイナスという印象です。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いています。12月統計でも明瞭に特徴が現れているように、製造業は新型コロナウィルスの影響を別にすれば、というか、まだ12月統計には影響が現れていませんので、下げ止まりの兆しあるものの、非製造業では緩やかな減少が続いています。また、コア機械受注を四半期でならしてみて、2019年10~12月期は前期比▲2.1%減となり2四半期連続の減少を記録しましたが、2020年1~3月期の見通しは▲5.2%減と、いっそうの減少が見込まれています。ただ、この1~3月期の見通しは、12月末時点の情報に基づいており、内閣府でも新型コロナウイルス感染症の影響はほぼ織り込まれていない、と見ているようですから、さらに下振れする可能性も十分あります。貿易と同じことで、産業や企業ごとの中国のサプライチェーンに占めるポジション次第では、よりダメージが大きくなることも覚悟せねばならないかもしれません。
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2020年02月18日 (火) 23:00:00

ダイヤモンド・オンライン「都道府県『生活満足度』ランキング」やいかに?

3月の引越し先について、生まれ育った京都府南部を中心に考えているところですが、昨日2月17日付けのダイヤモンド・オンラインの記事で「都道府県『生活満足度』ランキング」が報告されていました。ダイヤモンド・オンラインのサイトから引用した以下のテーブルの通りです。

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昨年11月と12月にも、各種の都道府県ランキングが同じダイヤモンド・オンラインで明らかにされており、2019年11月19日に「都道府県『幸福度』ランキング」が、2019年12月25日に「住み続けたい都道府県ランキング」が、それぞれ掲載されています。前者の「幸福度」ランキングでは京都府は11位ながら、後者の住み続けたいランキングでは京都府は6位につけています。ほかに、余り経済とは関係ないながら、「地元民が自慢できる」とか、「魅力度」とか、「食事がおいしい」といった都道府県ランキングもダイヤモンド・オンラインで掲載されており、京都府はいずれもトップテンに入っているようです。

人生の終末期、とまでいかないとしても、定年退職後の第2の人生を送るに当たって、こういったランキングを見ていると、関西、特に京都に回帰するのがとても楽しみです。
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2020年02月17日 (月) 19:30:00

消費税率の引上げで大きなマイナス成長を記録した昨年2019年10-12月期のGDP統計1次QE!!!

本日、内閣府から昨年2019年10~12月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲1.6%、年率では▲6.3%と消費税率引上げ直後のため大きなマイナス成長でした。5四半期振りのマイナス成長です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月期GDP、年率6.3%減 5四半期ぶりマイナス
内閣府が17日発表した2019年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比1.6%減、年率換算では6.3%減だった。5四半期ぶりにマイナス成長に転じた。19年7~9月期は年率換算で0.5%増だった。消費増税前の駆け込み需要の反動減が響いたほか、大型台風や暖冬による消費の伸び悩みも重荷となり、年率でのマイナス幅は14年4~6月期(7.4%減)以来の大きさだった。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比1.0%減で、年率では3.9%減だった。
生活実感に近い名目GDPは前期比1.2%減、年率では4.9%減だった。名目でも5四半期ぶりのマイナス成長となった。
実質GDPの内訳は、内需が2.1%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.5%分のプラスだった。
項目別にみると、個人消費が実質2.9%減と5四半期ぶりのマイナスとなった。10月からの消費増税を背景に購買意欲が鈍り、個人消費を押し下げた。
設備投資は3.7%減と3四半期ぶりのマイナスだった。民間在庫の寄与度は0.1%のプラスだった。
住宅投資は2.7%減と2四半期ぶりのマイナスとなった。公共投資は1.1%のプラスだった。
輸出は0.1%減だった。米中貿易摩擦のあおりを受けた世界経済の減速などを背景に2四半期連続でマイナスとなった。輸入は2.6%減と3四半期ぶりのマイナスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス1.3%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.7%のプラスだった。
同時に発表した19年通年のGDPは実質で前年比0.7%増、生活実感に近い名目で1.3%増だった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/10-122019/1-32019/4-62019/7-92019/10-12
国内総生産GDP+0.5+0.6+0.5+0.1▲1.6
民間消費+0.4+0.0+0.6+0.5▲2.9
民間住宅+1.7+1.5▲0.2+1.2▲2.7
民間設備+4.3▲0.5+0.8+0.5▲3.7
民間在庫 *(▲0.0)(+0.2)(▲0.1)(▲0.2)(+0.1)
公的需要+0.3+0.1+1.7+0.8+0.4
内需寄与度 *(+1.0)(+0.2)(+0.8)(+0.4)(▲2.1)
外需寄与度 *(▲0.4)(+0.5)(▲0.3)(▲0.3)(+0.5)
輸出+1.6▲1.9+0.4▲0.7▲0.1
輸入+4.3▲4.3+2.0+0.7▲2.6
国内総所得 (GDI)+0.3+1.0+0.4+0.3▲1.5
国民総所得 (GNI)+0.5+0.8+0.5+0.2▲1.6
名目GDP+0.1+1.2+0.5+0.5▲1.2
雇用者報酬 (実質)+0.4+0.5+0.8▲0.4▲0.3
GDPデフレータ▲0.6+0.1+0.4+0.6+1.3
国内需要デフレータ+0.2+0.3+0.4+0.2+0.7


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された10チルダ12月期の最新データでは、前期比成長率が大きなマイナスを示し、内需の赤の消費と水色の設備投資などがマイナスの寄与を示している一方で、黒の外需(純輸出)がプラスの寄与となっているのが見て取れます。

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先週金曜日に取り上げた1次QE予想では、マイナス成長は確実なるも、季節調整済み系列で見た前期比年率で▲3~4%くらいのマイナス幅が予想されていましたが、実績はこれらの市場の事前コンセンサスを下回り、年率▲6%を超える大きなマイナス成長でした。もちろん、主として10月からの消費税率引上げの影響ですから、公的需要を別にすればほぼほぼ内需項目は大幅マイナスとなっています。インパクトをやや大きく見せるために、季節調整済みの系列の前期比年率で示せば、消費が▲11.1%、設備投資が▲14.1%、住宅投資が▲10.4%と主要な民間内需項目が軒並み2ケタ減を記録しています。逆に、外需、というか純輸出はプラスの寄与となっているんですが、これも輸出入とも減少しつつ、内需の減少に起因する輸入減の方が大きいための外需寄与プラスですので、ややトリッキーな要因が大きいと私は感じています。ただ、消費税率引上げだけではなく、全国紙夕刊の報道ではキチンと伝えていたようで、私は10月上旬の例の新幹線まで止めた台風19号の影響が大きかった、と考えています。根拠は2つあり、第1に、直前7~9月期の駆込み需要がそれほどでもなかったのに比較して、10~12月期の落ち込みが大き過ぎます。第2に、消費税にはニュートラルと見なせる設備投資まで大きな減少を見せている点です。おそらく、素直に駆込み需要の反動減が現れたのは住宅投資だけではないか、という気すらします。ということで、内外需枕を並べて全部マイナス寄与、というわけではないものの、内需のマイナスが大きい故の外需寄与度プラスです。ですから、この10~12月期のGDP統計はもはや「過去の数字」という受け止めのエコノミストも少なくないようで、むしろ、足元の1~3月期から先行きの見通しが重要となります。特に、足元1~3月期もマイナス成長ということになれば、テクニカルな景気後退シグナルと受け止める報道も出る可能性がありますし、あわせて、1~3月期も低空飛行であれば消費税率引上げの影響が大きかった、ということが事後的に確認される可能性があります。そうでなければ、台風19号の影響も無視できない、ということになりそうですし、加えて、2月が29日まである「うるう年効果」も注目されます。しかし、それにしても、何とも大きな不確定要素が新型コロナウィルスです。一般的に便利な用語の「想定外」とともに、エコノミストには「経済外要因」という業界特有のさらに便利な言い回しもあったりするんですが、少なくとも私には先行き不透明としかいいようがありません。いずれにせよ、こういう時こそ、政府支出が短期的に需要を下支えする必要があります。

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続いて、上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。雇用者報酬の伸び悩みが始まっているように見えます。10~12月期は消費税率引上げによりデフレータも上昇して実質所得はさらに停滞を見せたと考えるべきです。加えて、インバウンド消費も、さすがに、まだ新型コロナウィルスの影響は現れていないタイミングながら、韓国との関係悪化などを背景に、伸びが大きく減速しています。消費者マインドは少しずつ改善の兆しを見せていますが、まだ、賃金が増えて消費者マインドが上向くタイミングに達したとは考えられません。繰り返しになりますが、新型コロナウィルスの感染拡大とそれに伴う経済への影響次第ですが、目先の景気後退は避けられる可能性は十分あるものの、政府の対策が渋ければトンネルが長くなりそうな気もします。
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2020年02月14日 (金) 23:00:00

昨年2019年10-12月期の1次QE予想はマイナス成長確定か?

1月末の鉱工業生産指数(IIP)の公表などを終えて、ほぼ必要な指標が利用可能となり、来週月曜日2月17日に昨年2019年10~12月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。消費税率の引上げ直後ですので、当然のように10~12月期はマイナス成長ながら、可能な範囲で、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。今回は、新型コロナウィルスに注目が集まっています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲1.0%
(▲3.9%)
2020年1~3月期を展望すると、消費増税や台風などによる一時的影響が剥落するにつれて、消費・生産活動は持ち直す見込み。堅調な所得環境、世界的なIT需要の回復など、内外景気のファンダメンタルズは上向き方向。もっとも、新型肺炎に伴う訪日中国人の大幅減少により、成長率は前期比ゼロ近くまで下振れる可能性。
大和総研▲0.9%
(▲3.5%)
先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。
個人消費は、消費増税前の駆け込み需要の反動減が緩和することで、2020年1-3月期は持ち直すとみられる。消費増税に伴う物価上昇による家計の購買力低下は消費の下押し要因となるものの、当面は各種経済対策の効果もあり底堅く推移すると考えられる。ただし、多くの経済対策は時限付きのものであるため、春以降は段階的に対策効果が剥落し、消費がいくらか抑制されることで一進一退での推移になるとみている。
住宅投資は、駆け込み需要の反動減による緩やかな減少が続いた後、横ばい圏で推移するとみている。消費増税に伴う各種住宅購入支援策が住宅投資を下支えする一方で、住宅価格が高水準にあることは住宅投資の下押し要因となるだろう。
設備投資は緩やかな増加を見込んでいる。人手不足に対応した合理化・省人化投資や、研究開発投資は拡大基調が続くとみている。また、2019年12月に策定された経済対策も ICT投資等の追い風となるだろう。ただし、世界経済の不透明性の増大が企業の設備投資を慎重化させる可能性にも細心の注意が必要だ。
公共投資については、前述した「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(2018年12月閣議決定)や「安心と成長の未来を拓く総合経済対策経済対策」(2019年12月閣議決定)が押し上げ要因となる。ただし、公共投資は既に高水準にあり、建設業の人手不足や資材価格の高まりを踏まえると執行ペースを上げにくい状況にあることから、先行きは横ばい圏での推移が続くとみている。
輸出は、地域ごとに濃淡はあるものの、当面は足踏みが続くとみている。アジア向け輸出は半導体需要の回復を背景に緩やかな増加基調を維持する一方、米国、EU向けは足下の景気の減速を受け、横ばい圏での推移が続くだろう。足踏みの後は、世界経済の回復に伴い緩やかに持ち直すとみている。
なお、新型肺炎の影響には警戒が必要である。仮に中国人訪日客が100万人(10%)減少すると、波及効果を含めて、日本のGDPは2,500億円程度押し下げられる。このほか、中国の消費や生産活動が落ち込むことで日本の対中輸出が減少したり、中国に進出している日本企業のサプライチェーンが混乱したりすることも想定される。さらに、他国の経済活動が停滞することで中国向け以外の輸出が減少するといった間接的な影響にも注意が必要だ。
みずほ総研▲0.9%
(▲3.5%)
2020年の日本経済は、年前半にかけては弱い伸びに留まり、回復は年後半に入ってからになる見通しだ。年前半は世界経済が回復に至らないなか、自動車や資本財などを中心に輸出は伸び悩むとみている。輸出の回復が見込めない中では製造業の業況も持ち直すには至らず、雇用・所得は伸び悩み、個人消費の増税の反動減からの回復も弱いだろう。設備投資は、省力化ニーズなどからソフトウェア投資は堅調に推移するとみているが、足元の受注状況を見る限り、機械投資は横ばいとなるほか建設投資は弱含み、総じてみれば 横ばい圏になるだろう。
さらに足元急拡大しているコロナウィルスによる中国経済減速が、日本にも影響を及ぼす可能性が高まっている。中国からの訪日来客数低下や日系現地メーカーの生産調整にともなう企業収益の下押しなどの直接的な影響に留まらず、中国国内の消費低迷による消費財輸出の低下、現地での生産調整による中国向け部材輸出の下押しなど間接的な影響もでてくると考えられる。影響のインパクトや期間の不透明感が高いが、前回SARS(2003年)の経験を踏まえれば、正常化するには数か月程度かかる可能性が高い。日本経済の回復は、中国経済が正常化し、世界経済が持ち直していく年後半に入ってからになりそうだ。
ニッセイ基礎研▲1.1%
(▲4.4%)
2020年1-3月期は駆け込み需要の反動が和らぐことで民間消費、設備投資が持ち直すものの、欧米向けを中心に財の輸出が低迷することに加え、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中国からの訪日客が急減し、サービスの輸出も大きく落ち込むことが見込まれるため、ほぼゼロ成長にとどまることが予想される。
第一生命経済研▲1.1%
(▲4.5%)
2020年1-3月期はプラス成長になると予想するが、19年10-12月期の大幅な落ち込みからの戻りとしては鈍いものにとどまるだろう。個人消費は10-12月期の大幅減からの反動でプラスを見込むが、増税に伴う家計負担増の影響が残存することに加え、そもそもの所得の伸びが弱いことから、高い伸びにはならないとみられる。1-3月期の個人消費を前年比でみるとマイナス圏の推移となり、抑制された状態が続く見込みだ。加えて、前述の輸入・在庫要因も足を引っ張る可能性があるだろう。IT部門を中心として世界的に生産活動が上向きつつあることを背景として輸出は増加が見込まれるため、内需・外需総崩れという事態は回避されるが、20年1-3月期も景気には停滞感が残るとみられる。
また、リスク要因として懸念されるのは新型肺炎による悪影響。新型肺炎の議論ではインバウンド需要への悪影響が強調されることが多い。そのこと自体は否定しないが、さらに懸念されるのが中国経済への悪影響だ。移動の規制や外出の手控え等によるサービス消費の悪化に加え、工場の操業停止などが広がり生産活動が下押しされる懸念もある。少なくとも短期的には悪影響は避けられないだろう。中国は日本にとって米国と並んで最大の輸出相手先の一つであり、中国経済の悪化は日本の輸出抑制に直結する。また、中国経済のプレゼンスはかつてに比べて格段に高まっていることから、世界経済への下押し圧力も、SARS の時と比較して大きくなるだろう。世界経済の下押しを通じた日本経済への波及のルートも軽視すべきではない。また、仮に日本国内でも感染が広がるようであれば、外出の手控え等によって個人消費への悪影響が広がる可能性があり、内需の下押しが懸念される。消費増税後の個人消費は予想以上に悪化した。1-3月期以降にはその落ち込みからの持ち直しが期待されていたが、その期待が裏切られる可能性があるだろう。
伊藤忠総研▲0.9%
(▲3.7%)
2020年1~3月期は、米中摩擦の一時中断もあってプラス成長へ戻ると見込んでいたが、新型肺炎の影響により中国経済の停滞が不可避の状況となりつつあり、中国向け財・サービス輸出の大幅な落ち込みを主因に、2四半期連続のマイナス成長となる可能性が十分にあろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.9%
(▲3.7%)
2019年10~12月期の実質GDP成長率は、消費増税による個人消費の落ち込みを主因として前期比-0.9%(年率換算-3.7%)と5四半期ぶりにマイナス成長に転じたと予測される。
三菱総研▲0.8%
(▲3.0%)
2019年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比▲0.8%(年率▲3.0%)と、5四半期ぶりのマイナス成長を予測する。消費税増税後の反動減などから、内需が総じて減少したとみられる。


ということで、各シンクタンクともマイナス成長は確定というカンジで、むしろ、焦点は足元の2020年1~3月期であり、ニッセイ基礎研のリポートにあるように、中国初の新型コロナウィルスの影響によりほぼゼロ成長にとどまる、というのが正直なところで、伊藤忠総研のリポートのように、私も従来は、米中間の貿易摩擦の一時的な中断により、消費税率引上げに伴うマイナス成長からのリバウンドでプラス成長に回帰すると見込んでいましたが、2四半期連続のマイナス成長による敵にカルナ景気後退シグナルという可能性も否定できません。私のようなエコノミストの理解を越えたところにあるような気もします。ただし、内外需そろって総崩れというわけではなく、新型コロナウィルスの影響は不明ながら、世界経済は持ち直しの動きを見せ始めており、我が国内需が不振で輸入が減少することもあって、外需はプラス寄与ではないかと見込まれます。でも、繰り返しになりますが、新型コロナウィルスの影響次第ですので、何とも先行き不透明であることに変わりありません。
下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2020年02月13日 (木) 20:00:00

1月の企業物価(PPI)上昇率は原油高が一時的に押し上げ!

本日、日銀から昨年1月の企業物価 (PPI) が公表されています。統計ののヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.9%の上昇と、10月から消費税率が引き上げられた影響でプラスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業物価指数、前年比1.7%上昇 原油高が押し上げ
日銀が13日発表した1月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.5と、前年同月比で1.7%上昇した。上昇は3カ月連続で、上昇率は18年11月以来の高さとなった。米中貿易協議の進展や米イラン関係の緊迫を受けた原油価格の高騰が、押し上げに寄与した。もっとも新型肺炎への懸念から原油価格は足元で下落しており、物価上昇への影響も一時的となりそうだ。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年同月比で1.4%下落した。下落は9カ月連続。前月比では0.3%上昇した。輸入物価は前年同月比0.7%下落し、前月比では0.7%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。19年10月の消費税率引き上げの影響を除くと、指数は前年同月比0.1%の上昇だった。増税の影響を除くベースでの前年同月比の上昇は8カ月ぶり。前月比では0.1%上昇した。
品目別に見ると石油・石炭製品や非鉄金属といった商品市況の影響を受けやすい品目の上昇が目立ち「企業の価格設定スタンスに基調的な変化はみられない」(日銀・調査統計局)という。日銀は「2月以降は新型肺炎への懸念を背景とした原油価格の下落が指数に相応の影響をもたらすとみられ、影響を注視していく」とした。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、上のグラフのうちの上のパネルの国内物価の推移に示されているように、昨年2019年10月の消費税率引上げからジワジワと情報幅が拡大しています。ただ、これは、どちらかといえば、引用した記事にもある通り、国際商品市況における石油価格の上昇を反映したものであり、季節調整していない原系列の指数ながら、国内物価のうち石油・石炭製品の前月比上昇率は+2.9%、前年同月比は+9.2%に達しています。この石油価格の上昇は1月早々に、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害し、それを受けて、イランが報復措置を繰り出したことから、中東をめぐる地政学リスクの一時的な上昇に起因しており、足元では逆に中国の新型コロナウィルスの影響で石油価格は下落を強めています。私は石油価格については見識ないので、いつものように、マーケットに関するリポートを引用しておくと、みずほ証券のリポート「マーケット・フォーカス」では「20年の予想レンジを1バレル=50~70ドルで維持」と見ており、日本総研のリポート「原油市場展望」では一進一退の展開で50ドル台後半を中心としたボックス圏での推移」を予想しています。相変わらず、日銀の金融政策よりも原油価格の方が我が国物価への影響力が強いようです。
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2020年02月12日 (水) 23:30:00

日本経済研究センターの景気後退確率を見て、やっぱり、リセッションは回避できるか?

普段は、それほど注目していない指標なんですが、日本経済研究センターの景気後退確率が一昨日の2月10日に明らかにされています。日本経済研究センターのサイトから引用した下のグラフの通りです。

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ということで、上のグラフを見れば明らかな通り、昨年2019年12月の景気後退確率は54.8%に低下しています。この景気後退確率計算の基礎となっているのは、内閣府が公表している景気動向指数のCI先行指数であり、マルコフ・レジーム・スイッチング・モデルにより試算していると私は認識しています。このCI先行指数が8か月ぶりに上昇に転じたことが、景気後退確率の低下に寄与しています。CI先行指数の上昇要因としては、新規求人数や日経商品指数、消費者態度などの改善となっています。景気後退確率は2018年5月以来、何と19か月ぶりに景気後退入りの目安となる赤いラインの67%水準を下回ったことになります。単純に、この景気後退確率の低下だけを考えると、我が国は景気後退を回避できそうな気がしますが、昨年2019年12月の時点では、中国の新型コロナウィルスによる景気停滞の影響がまだ現れていません。ですから、我が国がホントに景気後退を脱したのかどうかは、新型コロナウィルスを含めて、今しばらく様子を見る必要がありそうです。
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2020年02月11日 (火) 18:00:00

経済学で使う計量ソフトウェアの特徴やいかに?

2月も半ばになって、次の勤務先の私大への転職に向けて、アドミの各種書類作成とシラバスの作成に大忙しにしています。諸手続き関係では、いかんせん、まだ新しい住まいが決まっていないので、現住所は今の東京城北地区の現住所を記入して済ませていますが、写真も必要だったり、住民票も添付しなければならないなど、まあ、役所でよく知っている手続きの煩雑さというのは学校でも変わりないような気もします。事務作業はかなりありますが、公務員というのはこういった事務処理が専門分野みたいなものですから、せっせとこなしています。
授業のシラバスの方も着々と進めているんですが、経済学部の学生諸君への授業やゼミはともかく、なくはないものの、やや経験薄い大学院の授業の方で少し考えるところがあります。すなわち、経済学の場合、大学院教育でかなり特徴的なのは、学部のころよりも計量ソフトウェアによるプログラミングの比重が増す点です。それほど高いレベルを要求されなければ、私はひと通り近いこなせる自信はありますが、自分で使うのと院生諸君に教えるのとでは少し勝手が違うような気がします。ということで、ネット情報ながら、参考にしたのは、順不同で以下の2つのサイトです。


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上の画像はの参考サイトの上の方の経済学で使える統計ソフト6選から引用した 統計ソフトの見取り図 です。フツーのパソコンにプリインストールされている表計算ソフトの Excel は別にして、私は Eviews と Stata を候補に考えています。というのは、やっぱり、R はむずいからです。私自身は Excel のマクロを使って BASIC でプログラムが組めますので、それなりに使いこなせる方だと自負していますし、一応、R は統計局勤務時に研修で受講したりしたんですが、それでも R はむずい気がします。大学院生の手に余る気がしてなりません。私の方で十分に教えられない恐れもあります。従って、候補として残るのは、繰り返しになりますが、Eviews と Stata になります。私は過去の研究で、ストック・ワトソン型の確率的景気指数を求めるのに、状態空間モデルをカルマンフィルターで解くのに Eview を使ったことがあり、また、賃金センサスの個票を用いてミンサー型の賃金関数を推計するのに Stata も使ったこともあります。まあ、ほかに、マルコフ・レジーム・スイッチンゴ・モデルを使うのに RATS を使ったこともありますし、大昔には TSP を愛用していた時代もあります。でも、極めて大雑把な分類として、マクロの時系列データの分析には Eviews が適していて、マイクロな個票やパネル分析には Stata がいいんではないか、と考えています。さらに情報を収集して、また、着任後は院生諸君の希望も徴しつつ、いろいろと考えを巡らせたいと思います。
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2020年02月10日 (月) 20:00:00

新型コロナウィルスで大きく低下した景気ウォッチャーの先行きマインドと黒字基調の続く経常収支!

本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2019年12月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+2.2ポイント上昇の41.9を、先行き判断DIは▲3.0ポイント低下の41.8を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+5240億円の黒字を計上しています。まず、やや長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の街角景気、先行き指数が2カ月連続で悪化 新型肺炎の影響懸念で
内閣府が10日発表した1月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、2~3カ月後の景気の良しあしを判断する先行き判断指数(DI、季節調整済み)は41.8と前月から3.7ポイント低下し、2カ月連続で悪化した。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大への懸念が、景気の先行きに対する警戒を強めている。
先行きについて分野別にみると、指数を構成する家計動向、企業動向、雇用がいずれも前の月から悪化した。特に観光業を含むサービス関連が大きく落ち込んだ。新型肺炎の影響で「インバウンドの減少に加え、感染を警戒して国内旅行も減る傾向が出始めている」(近畿の観光型旅館)といった声があった。このほか「間接的に、様々な経済的影響が出てくるとみられる」(北海道の家具製造業)、「国内外の生産活動への影響が懸念される」(東海の輸送業)、「観光関連の仕事が減少し、求人数も減少傾向と予測」(沖縄の求人情報誌製作会社)など、影響の広がりを警戒する声が相次いだ。
調査期間は1月25日から月末で、中国政府が同国の海外への団体旅行を禁止したほか、日本政府が新型コロナウイルスによる肺炎を感染症法で定める「指定感染症」にする方針を閣議決定した時期に重なる。内閣府は先行きについて「新型コロナウイルス感染症の拡大などに対する懸念がみられる」とまとめた。
3カ月前と比べた足元の街角の景気実感を示す現状判断指数(DI、季節調整済み)は41.9と前月から2.2ポイント上昇(改善)した。消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動が和らぎ、小売関連が大きく持ち直したことなどが寄与し、3カ月連続で改善した。もっとも暖冬や新型肺炎に伴う消費の落ち込みを懸念する声も多く、内閣府は現状の見方を「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。
経常収支5240億円の黒字 19年12月、66カ月連続黒字
財務省が10日発表した2019年12月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は5240億円の黒字だった。黒字は66カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は4646億円の黒字だった。
貿易収支は1207億円の黒字、第1次所得収支は4001億円の黒字だった。
同時に発表した2019年の経常収支は20兆597億円の黒字だった。


かなり長くなりました。これらの記事さえしっかり読めば、それはそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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景気ウォッチャーの季節調整済みの現状判断DIを前月差で見ると、昨年2019年10月の消費税率の引上げでドンと▲10ポイント近く低下した後、11月から今年2020年1月まで3か月連続でジワジワと回復を示してます。基本は家計動向関連の上昇に見合ったものと私は受け止めており、特に、家計動向関連の中でも小売関連が上昇に寄与している印象です。他方で、企業動向関連では10月の落ち込み幅が家計動向関連ほどではなかったのもありますが、その後の回復は思わしくありません。新型コロナウィルスを別にすれば、現在の世界経済の停滞が反映されているものと考えるべきです。ただ、人手不足がクローズアップされて長いながら、最近時点では雇用動向関連が低下を続けている点は気がかりです。景気ウォッチャーですから、それぞれの業界の供給サイドのマインドを反映しており、雇用と家計のそれぞれの動向が直接にリンクするわけではありませんが、雇用に関して派遣会社などのマインドは当然に家計の雇用改善へのブレーキを反映する場合があります。先日取り上げた三菱総研のリポートでも、先行き我が国経済が景気後退を回避でるとすれば、人手不足に起因する雇用の堅調さがひとつのキーポイントになることは間違いありません。逆にいえば、雇用が悪化し始めると景気後退に陥る可能性が高まります。さらに、先行き判断DIに織り込まれ始めている新型コロナウィルスによる肺炎の拡大も大きな懸念材料です。いくつかのリポートを先週の段階でピックアップして紹介しましたが、まったく私には先行きが見通せません。私の先行き不透明感ほどひどくはないのかもしれませんが、企業でも同じように先行き不安を抱えるところは少なくないものと想像しています。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの12月統計でも黒字を記録しており、引用した記事の通り、季節調整していない原系列の統計では2014年7月に黒字に転換して以来、また、季節調整済みの系列ではさらに早くて2014年4月の黒字転換以来、5年半に渡って経常収支は黒字を継続しています。重要なコンポーネントのひとつである貿易収支は国際商品市況の石油価格の変動に応じて赤字になったり黒字になったりしている一方で、安定的な海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めている点については変わりありません。本日公表の12月経常収支についても同様といえます。加えて、実績の+5000億円強の黒字に対するに、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、+5000億円弱の黒字の予想でしたので、サプライズもありませんでした。ただ、貿易収支については、この先、世界経済のいっそうの停滞により輸出にマイナスの影響がある一方で、中国発の新型コロナウィルスによる肺炎の拡大により国際商品市況において石油価格が下落していて輸入額が減少する可能性もあり、どちらのインパクトが大きいか、によると考えられます。
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2020年02月08日 (土) 09:00:00

米国雇用統計は人手不足でも雇用者が前月から+225千人増加!!!

日本時間の昨夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+225千人増と人手不足にもかかわらず、まだ伸びを示し、失業率は先月から0.1%ポイント悪化したものの、それでも3.6%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、超コンパクトに Bloomberg のサイトから記事を最初の2パラだけ引用すると以下の通りです。

U.S. Jobs Top Estimates With 225,000 Gain, Wages Accelerate
U.S. employers ramped up hiring in January and wage gains rebounded, providing fresh evidence of a durable jobs market that backs the Federal Reserve's decision to stop cutting interest rates and hands President Donald Trump an early election-year boost.
Payrolls increased by 225,000 after an upwardly revised 147,000 gain in December, according to a Labor Department data Friday that topped all estimates of economists. The jobless rate edged up to 3.6%, still near a half-century low, while average hourly earnings climbed 3.1% from a year earlier.


まずまずよく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

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まず、大きな影響は見られないと私は受け止めていますが、今回の2020年1月統計から雇用者のベンチマークがアップデートされています。それにしても、+225千人増という数字は、先月12月の+147千人増や昨年2019年の月平均+175千人増を大きく上回っていますし、Bloombergによる市場の事前コンセンサスの+165千人増もはるかに超えています。米国雇用がこれだけ堅調な背景には、米中間の貿易摩擦の休戦で米国の企業家心理が向上している点が上げられます。例えば、米国サプライチェーン・マネジメント協会(ISM)の製造業景況感指数(PMI)は1月に50.9まで上昇し、半年ぶりに50を超えています。ただ、金融政策の方向感覚がやや不透明です。下のグラフに見られるように、賃金上昇は落ち着きを取り戻しつつあるとはいえ、まだ+3%台をキープしていますし、雇用は堅調ですから引締めの方向を示唆する可能性があります。他方で、中国の新型コロナウィルスというとんでもない特殊要因から、いったんは2020年中は利下げストップといわれながら、この中国発の先行き景気不安から、FED内でも利下げの必要性をめぐる議論が高まりそうです。私なんぞから見ると、やや方向感のない金融政策動向になりつつある気がしないでもありません。

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ということで、物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向は上のグラフの通りです。米国雇用の堅調振りに歩調を合わせて、一昨年2018年8月以来、賃金上昇率も3%台の水準が続いており、1月も前年同月比で+3.1%の上昇とインフレ目標を上回る高い伸びを示しています。ただ、上のグラフに見られるように、+3%を超えるとはいえ賃金の伸びが鈍化しているのは、米中間の貿易摩擦の影響もあって、雇用増が製造業ではなく賃金水準の低いサービス業、例えば、Leisure and hospitality や Health care and social assistance などで発生している点もひとつの要因です。ただ、左派エコノミストとして、私はトランプ政権の圧力は別としても、一般論ながら、金融緩和策や財政的な拡張政策は貧困対策や格差是正の観点を含めて国民の生活水準向上に役立つものと考えています。
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2020年02月07日 (金) 20:00:00

「悪化」の基調判断が続く景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から昨年2019年12月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から+0.8ポイント上昇して91.6を、CI一致指数は前月と同じ94.7を、それぞれ記録し、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、5か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の景気一致指数は横ばい 基調判断「悪化」は5カ月連続
内閣府が7日発表した2019年12月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比横ばいの94.7だった。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を5カ月連続で「悪化」に据え置いた。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち3項目が指数のプラスに寄与し、4項目がマイナスに寄与した。台風の影響で部品供給が遅れていたショベル系掘削機械で生産が再開した影響で「投資財出荷指数(除輸送機械)」などが伸びた。半面、自動車工業を含む「鉱工業生産財出荷指数」や家電など「耐久消費財出荷指数」は落ち込んだ。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.8ポイント上昇の91.6で8カ月ぶりに上昇した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は前月比2.5ポイント上昇の106.9と、2カ月連続で上昇した。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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CI一致指数は前月から横ばいだったものの、3か月後方移動平均は3か月連続の下降で▲1.90ポイント下降しています。繰り返しになりますが、5か月連続で、統計作成官庁である内閣府の基調判断は「悪化」で据え置かれています。ただし、CI先行指数は昨年2019年4月を直近のピークに11月まで半年余り下降を続けていたんですが、12月統計では上昇に転じました。単月の動きですが、先行きの明るさを見た気が品でもありません。ということで、CI一致指数の前月差への寄与度をみると、投資財出荷指数(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、商業販売額(卸売業)(前年同月比)がプラスを示している一方で、マイナス寄与は耐久消費財出荷指数が▲0.52と圧倒的に大きく、昨年2019年10月の消費税率引上げの影響がまだ残っていることがうかがえます。ほかに、鉱工業用生産財出荷指数、有効求人倍率(除学卒)、商業販売額(小売業)(前年同月比)の寄与もマイナスなんですが、投資財出荷指数(除輸送機械)がプラス寄与で、鉱工業用生産財出荷指数がマイナス寄与というのも、やや違和感あるものの、いずれにせよ、耐久消費財出荷指数に次いでマイナス寄与が大きい鉱工業用生産財出荷指数でも▲0.17ですから、消費の回復が政策プライオリティから見て最大の課題のひとつと考えるべきです。

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ということで、ついでながら、本日、総務省統計局から昨年2019年12月の家計調査の結果が公表されていますにで、簡単に見ておきたいと思います。ヘッドラインとなる2人以上世帯の消費支出は1世帯あたり32万1380円で、物価変動の影響を除いた実質の変動調整値で前年同月比▲4.8%減少しています。昨年2019年10月の消費税率の引上げから3か月連続の減少となっています。同時に、統計局から、追加参考図表もいくつか明らかにされており、上のグラフはそのうちから 消費税率引上げ前後における消費支出 (季節調整済実質指数) の推移 を引用しています。3%の消費税導入前後、3%から5%への引上げ前後、5%から8%へに引上げ前後、そして、今回の8%から10%への引上げ前後、のそれぞれの時期の消費支出の推移をプロットしています。今回昨年2019年10月の8%から10%への引上げ時は、前回2014年4月の5%から8%への引上げ時に比べて、引上げ幅が小さいとともに食料品などに軽減税率の適用がなされたこともあり、直前月の駆込み需要は小さかったのですが、その後の反動減はそれほど大きな差はないように見えます。加えて、前回2014年時には消費税率引上げから8か月に渡ってマイナスを続けた点も見逃せません。今回2019年10月の消費税率引上げに対しては、現在の中国における新型コロナウィルスの影響など、経済外要因かつ先行きの極めて不透明な要因も加わっていますが、消費にはかなり大きなインパクトが認められる、と覚悟すべきです。
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2020年02月06日 (木) 19:30:00

新型コロナウィルスの経済への影響はどうなのか?

まったく私の専門外ながら、中国で新型のコロナウィルスによる肺炎などが拡大し、WHOで緊急事態宣言が出されたことは広く報じられている通りなんですが、もちろん、経済に及ぼす影響についてもいくつかリポートが明らかにされています。「いくつか」というよりも、余りにもいっぱいあり過ぎるんですが、取りあえず、私の印象に残った以下の2つのリポートをかんたんに取り上げておきたいと思います。


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当然ながら、2003年のSARSとの比較が中心になり、まず、感染拡大なんですが、今回の新型コロナウィルスの感染は極めて大規模でありSARSとは比較になりません。上のグラフは、日本総研のリポートから ウイルス感染者数(累計) を引用しています。グラフの注にある通り、SARSについては、感染者8,422人、うち死者916人でしたから、感染の拡大はそれほどではなかったものの、致死率がほぼ10%に上り、かなりの強毒性という印象でした。今回の新型コロナウィルスについては、現時点ではSARSほどの致死率は見られず、日本経済研究センターのリポートが引用している恒大研究院の情報によれば、2.2%ということらしいんですが、それはそれで高い致死率ですし、何よりも、大幅な感染拡大というのも厄介です。もっとも、前回2003年のSARSについては、中国が情報を隠蔽していたために感染者数などが過小に報告された一方で、死者数はごまかしが効かなかった、という根強い中国政府への不信感もチラホラと見かけないでもありません。そのあたりは、私には何とも判断がつきかねます。

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上のテーブルは、日本経済研究センターのリポートから引用していますが、もともとは、恒大研究院の情報ということのようです。上のテーブルを見れば明らかなんですが、流行が3~4月までに収束するシナリオ1でも、足元1~3月の成長率は直前の2019年10~12月の+6.0%を大きく下回って+4%程度となる可能性もあり、通年でも+5%台半ばの成長にとどまりますし、さらに収束が遅れるシナリオ2~3では経済へのダメージがより大きいのはいうまでもありません。

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最後に、上のグラフは、大和総研のリポートから引用しています、スペインのバンコ・デ・エスパーニャの研究成果 "Global Impact of a Slowdown in China" からの応用で、中国人観光客にスポットを当て、団体旅行禁止令に伴う中国人の海外旅行客数の減少に関して、リスクシナリオ①では新型肺炎の流行期間が3か月で済み、日本への中国人観光客が▲100万人(2019年比で約▲10%)減少と想定し、リスクシナリオ②では流行が1年続くことから団体旅行禁止令の実施期間も1年程度延長されると想定し、インパクトはほぼほぼ4倍です。2020年の世界経済の成長率は▲0.2~▲0.7%ポイント押し下げられ、我が国の成長率もリスクシナリオ②に、円高の影響などを加えると、▲0.9%の押し下げになることから、2020年の日本経済はマイナス成長の可能性すらある、と結論しています。

SARSが発生した2003年の4~6月期は、台湾と香港でマイナス成長を記録しましたし、アジア、ひいては日本への経済的な影響は決して無視できません。さらに、収束の時期にも依存しますが、今回の新型コロナウィルスの経済への影響は2003年SARSの際よりも大きいことは覚悟した方がよさそうです。
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2020年02月05日 (水) 19:30:00

昨年10月の消費税率引上げは景気後退につながるか、つながらないか?

2月1日付けの三菱総研の『MRIマンスリーレビュー』2月号にて、5番目の記事として「『消費税10%』は景気後退につながるか」と題する短いリポートが収録されています。これを含めた2月号の全文リポートがpdfファイルにてアップされており、このリポートはわずかに1ページだったりします。まず、三菱総研のサイトからPOINTを3点引用すると以下の通りです。

POINT
  • 日本経済が景気後退入りするとの懸念が高まっている。
  • 経済の自律性を示す国内民間需要(除く在庫)の動向が一つの焦点。
  • 国内民間需要が持ちこたえ、日本経済は景気後退を回避すると予想。


わずかに1ページの短いリポートで、上のPOINTの通りなんですが、グラフとともに、簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフは、三菱総研のサイトから [図] 国内民間需要(除く在庫)の推移と景気動 を引用しています。さ来週月曜日の2月17日には昨年2019年10~12月期のGDP統計速報、いわゆる1次QEが内閣府から公表されますが、消費税率引上げのあった四半期ですので、当然ながら、大きなマイナス成長という予想がエコノミストの間では一般的です。ただ、その後、足元の1~3月期にもマイナス成長となって、テクニカルな景気後退のフラグが立つのか、どうか、については議論あるところながら、リポートでは上のグラフに見られる通りに在庫を除く国内民間需要を重視し、消費については雇用・所得環境が労働需給のひっ迫を背景にそれほど悪化しないと予想し、同時に、設備投資は製造業で過剰感が出てきた一方で、人手不足に悩む非製造業の省力化投資が下支え要因になると指摘し、「標準シナリオでは日本経済は景気後退の瀬戸際で踏みとどまる」との結論を示しています。おそらく、私を含めてエコノミストの多数意見と一致しているような気がします。ただ、人手不足をここまで重視するのは、やや落とし穴がありそうな懸念がないでもありません
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2020年02月04日 (火) 22:30:00

インテージによる「イマドキのバレンタイン事情」やいかに?

連夜のインテージからの引用ですが、先週1月30日付けで「イマドキのバレンタイン事情」と題した調査結果が明らかにされています。私なんぞは定年退職して60歳もとうに過ぎていますので、まあ、若い年代の人達をチラチラ眺めるだけですから、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、インテージのサイトから バレンタイン、個人で用意するもの のグラフを引用すると上の通りです。見れば判るように、家族チョコがもっとも高いという結果になっています。ほぼ半分近い女性が用意するようです。特に、40代の女性では50%を超えています。ほかに年代別の特徴あるのは、当然ながら、本命チョコは20代で特に高い結果が示されています。もはや死語かもしれませんが、「適齢期」という言葉が私の頭をよぎりました。しかし、20代を過ぎて30代になると自分チョコが多くなるのはやや悲しい気もしないでもありません。ただし、その前の10代では友チョコがとても多くなっています。

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次に、インテージのサイトから バレンタイン、個人で用意するチョコの金額観 のグラフを引用すると上の通りです。義理チョコがもっとも安価な価格帯に落ちるのは理解できますし、もっとも多くの女性が用意すると回答した家族チョコなんですが、まあ、当然ながら、本命チョコには価格帯では及びません。何と、もっとも価格感が高かったのは自分チョコで2000円に近く、やはり、ごほうび消費に積極的なビジネスウーマンがけん引しているとインテージでは分析しており、ビジネスウーマンに限定した自分チョコの平均額は2919円だったようです。さて、2月14日の戦果やいかに?
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2020年02月03日 (月) 19:50:00

生活者の花粉症対策やいかに?

とても旧聞に属する話題ながら、インテージから「花粉症-市場規模推移と生活者が重視する対策」と題する調査結果が1月14日に明らかにされています。2月に入って、そろそろシーズンインですので、簡単に図表とともに取り上げておきたいと思います。

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まず、インテージのサイトから 花粉症実態 を引用すると上の通りです。オリジナルサイズに少し縮小をかけたので見にくいかもしれませんが、左上の円グラフでは、花粉症の人の割合がとうとう50%超と示されています。下の棒グラフでは、花粉症の症状として、くしゃみや鼻水などの鼻の症状とかゆみや充血などの目の症状が多いことが判ります。また、その症状に対応して、花粉飛散数と連動しつつ市販薬の販売金額も100億円を超えているグラフが示されていますが、このブログでは割愛します。

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次に、インテージのサイトから 直近シーズンに実施した花粉症対策 重視率ランキング を引用すると上の通りです。やっぱり、マスクと処方薬です。私もこの通りです。私は、ほぼほぼ、通年性のアレルギーなんですが、この花粉症の季節だけは錠剤の抗アレルギー薬とともに目薬も処方してもらうことにしています。

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次に、インテージのサイトから 花粉症対策で利用したことのある食材・サプリメント を引用すると上の通りです。すなわち、薬だけでは不足ですので、食材やサプリメントでも補うわけです。ヨーグルトと乳酸菌の圧勝となっています。私も朝食にはヨーグルトを欠かすことがありません。何とか、今シーズンも乗り切りたいと希望しています。
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2020年01月29日 (水) 19:30:00

前月統計から横ばいだった1月の消費者態度指数をどう見るか?

本日、内閣府から1月の消費者態度指数が公表されています。2人以上世帯の季節調整済みの系列で見て、前月比横ばいの39.1となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の消費者態度指数、前月比横ばいの39.1
内閣府が29日発表した1月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯(2人以上の世帯)の消費者態度指数(季節調整値)は前月から横ばいの39.1だった。指数を構成する4指標のうち、「暮らし向き」と「収入の増え方」が4カ月ぶりに低下した一方、「雇用環境」と「耐久消費財の買い時判断」は上昇した。内閣府はここ数カ月の指数の動きを踏まえて、消費者心理の判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
2人以上の世帯で、日ごろよく購入する物の1年後の物価見通しでは「上昇する」と答えた割合が78.2%(原数値)と前の月を0.6ポイント下回った。「低下する」「変わらない」と答えた割合はいずれも前の月よりも小幅に増加したものの、依然として物価上昇を見込む声が多い。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について、今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。調査基準日は1月15日で、調査期間は1月5▲20日だった。調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は6601世帯、回答率は78.6%だった。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。`

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消費者態度指数を構成する4つのコンポーネントで詳しく見てると、「暮らし向き」が▲0.6ポイント、「収入の増え方」が▲0.3ポイント、それぞれ低下した一方で、「雇用環境」が+0.5ポイント、「耐久消費財の買い時判断」が+0.4ポイント、それぞれ上昇しています。統計作成官庁である内閣府の基調判断は、10月までの「弱まっている」が、11月に「持ち直しの動きがみられる」に上方改定されてから、本日公表の1月統計まで、3か月連続で据え置かれています。雇用環境のマインドが改善しながらも、収入の増え方についてのマインドが悪化するという、やや変則的な動きながら、基本的に、人手不足に基づく堅調な雇用が消費者マインドを下支えしているものと私は受け止めています。収入面で期待が高まらないだけに、マインドだけで消費を牽引するのはサステイナブルではないながら、消費税率引上げ直前の消費者マインドの最悪期は脱したと考えるべきです。ただ、1月統計では早くも前月比横ばいという結果に終わり、力強いマインドの改善にはもう少し時間がかかりそうです。さらに、報道を見ると春闘が始まりましたが、賃上げのゆくえはマインドにも大きく影響するものと考えています。デフレ脱却のためにも、家計の将来不安を払拭して景気をさらに上昇させるためにも、大幅な賃上げが効果的です。
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2020年01月28日 (火) 23:30:00

ジワジワと上昇率を縮小させる企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から昨年2019年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。先月10月統計から消費税率引上げがありましたので、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は今月12月統計でも前月と同じ+2.1%を示しています。国際運輸を除く総合で定義されるコアSPPIの前年同月比上昇率も同じく+2.1%を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の企業向けサービス価格、増税除き0.4%上昇
日銀が28日発表した2019年12月の企業向けサービス価格指数(2015年平均=100)は105.0と、前年同月比で2.1%上昇した。消費税率引き上げの影響を除くと同0.4%の上昇だった。人手不足に伴い土木建築サービスや労働者派遣サービスの価格上昇が目立った。燃料費上昇による外国貨物輸送の値上がりも寄与した。
前月比の伸び率は横ばいだった。運輸・郵便などが上昇する一方、広告価格が下落した。
2019年の企業向けサービス価格指数(増税の影響を除く)は前年比0.7%上昇した。上昇は6年連続で、伸び率は18年(1.2%)から縮小した。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。


いつものように、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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先月統計から大きな変化はないんですが、ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率+2.1%の内訳を大類別の寄与度で見ると、引き続き、労働者派遣サービスや土木建築サービスなどを含む諸サービスが+0.89%と大きな寄与を示しているほか、道路貨物輸送や鉄道旅客輸送などを含む運輸・郵便が+0.38%となっており、この2つの大類別は人手不足の影響がうかがえます。ほかに、ソフトウェア開発などを含む情報通信も+0.38%を示しています。これらの業種については、純粋な値上げというよりも、消費税率引上げの転嫁が進んでいる、と考えるべきなのかもしれません。ただし、消費税を除く上昇率が試算されているんですが、10~12月の各月統計で+0.4%となっており、5月統計まで+1.0%の上昇率を示し、消費税率引上げ直前の8~9月統計で+0.5%の上昇率だったのに比べれば、ジワジワと上昇率が縮小して来ていることも事実です。人手不足の影響によりサービス価格はそれなりに堅調であるものの、景気動向から方向感としては上昇率が縮小してきているのも認識すべきであろうと私は受け止めています。
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2020年01月27日 (月) 19:40:00

キャッシュレス決済に関するMMD研とビザ・ジャパンの調査

とても旧聞に属する話題ですが、ちょうど1週間前の1月20日にビザ・ワールドワイド・ジャパンとMMD研究所が共同で実施した「【第1弾】2020年キャッシュレス・消費者還元事業における利用者実態調査」の結果が明らかにされています。各社のニュースリリースは以下の通りです。


続いて、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのサイトから調査結果のTOPICSを7点引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」の認知・理解は進んでいるか?
    ⇒キャッシュレス・消費者還元事業の認知は約9割、内容の理解は約6割
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」を知ったチャネルは何だったのか?
    ⇒認知キッカケはテレビのニュース番組が最多。CMも含めると約5割がテレビ
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」でキャッシュレス決済での支払いは変化があったのか?
    ⇒「キャッシュレス決済の支払いが増えた」が約4割
  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」が始まる前後(10月1日以前と以降)で支払い方法の種類に変化は?
    ⇒クレジットカードが9割近い利用率を維持、スマホ決済(QR・非接触)が増加
  • 最も利用している「キャッシュレス決済」は?
    ⇒ 最も利用するキャッシュレスは「クレジットカード」が52.0%、次いで「カード型電子マネー」が19.2%、「QRコード決済」が18.2%
  • キャッシュレス決済の利用が増えた場所は?
    ⇒キャッシュレスの利用場所TOP3は「コンビニ」、「スーパーマーケット」、「ドラッグストア」
  • キャッシュレス決済から想起すること、普及体感、期待は?
    ⇒キャッシュレス決済のイメージは「クレジットカード」、普及の体感は48.9%、期待は54.9%


いくつかグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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続いて、上のグラフは、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのサイトから 諸飛車還元事業前後の決裁利用 を引用しています、というか、前と後の2つのグラフを連結しています。見れば判ると思いますが、消費者還元事業前後の支払い方法として、当然トップの「現金」を別にしてキャッシュレス決済の中では、依然として、「クレジットカード」が高い利用率なんですが、消費者還元事業の前後で変化なく、変化の幅で見れば、「QRコード決済」は10%ポイントの増加を見せています。「クレジットカード」をはじめ、「カード型電子マネー」などの他のキャッシュレス決済は統計的に有意な差が出ているようには見えません。

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さらに、上のグラフは、ビザ・ワールドワイド・ジャパンのサイトから 消費者還元事業後のキャッシュレス決済利用が多くなった場所 を引用しています。消費税増税に伴うキャッシュレス・ポイント還元事業は、基本的に、政府施策としては中小企業対象だったハズなんですが、政府施策ではない企業独自のポイント還元が少なくなく、むしろ、日用品を扱う大手チェーンストアでの利用が促進され、幅広くキャッシュレス決済を利用する人が増える方向にあることが見て取れます。

私は、エコノミストとして、高額紙幣とか現金決済は金融腐敗や、場合によっては、犯罪の温床になりやすいと危惧しています。スマホへの依存を強めたり、セキュリティ上の懸念は残りますし、実際に、セブンイレブンが大きくコケた例もあったりしますが、高額紙幣での現金決済をいかに減らすかについても、政府や日銀の積極的な取組が必要だと考えています。
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2020年01月24日 (金) 23:30:00

2019年12月の消費者物価(CPI)はエネルギー価格動向により上昇幅を拡大!

本日、総務省統計局から昨年2019年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から少し拡大して+0.7%を示しています。また、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率は+0.9%でした。いずれも、消費税率引上げの影響を含んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年12月の全国消費者物価、0.7%上昇 伸び率拡大
総務省が24日発表した2019年12月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合が102.2と18年12月に比べ0.7%上昇した。プラスは36カ月連続。材料費や人件費の高止まりを背景とした外食、宿泊料などの上昇に加え、損害保険大手が火災・地震保険料を引き上げたのも物価上昇に寄与した。
上昇率は19年11月の0.5%から拡大した。宿泊料などの上昇に加え、原油価格の上昇でガソリンや灯油の価格の下落幅が縮小したのも物価上昇につながった。一方、携帯電話の通信料は大手各社の値下げの影響で、引き続き物価の下げ圧力となった。
19年12月は生鮮食品を除く総合では387品目が上昇した。下落は112品目、横ばいは24品目だった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を据え置いた。
総務省は昨年10月の消費税率引き上げの影響を勘案したCPIの試算値も公表した。総務省の機械的な試算によると、消費税率引き上げと幼児教育・保育無償化の影響を除いた場合、19年12月の生鮮食品を除く総合の物価上昇率は0.4%となる。
19年12月の全国CPIで、生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は102.1と18年12月比0.9%上昇した。生鮮食品を含む総合は102.3と0.8%の上昇だった。
あわせて発表した2019年平均の全国CPIは、生鮮食品を除く総合が101.7と18年比0.6%上昇した。上昇は3年連続。外食やエネルギー関連項目の上昇がけん引した。前の年と比べた上昇率は18年の0.9%から縮小した。生鮮食品とエネルギーを除く総合は0.6%上昇、生鮮食品を含む総合は0.5%上昇した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

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ということで、昨年2019年の10月統計から消費税率の引上げと幼児教育・保育無償化の影響が現れており、これを含んだ結果となっていて、引用した記事にもあるように、その影響の試算結果が「消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響 (参考値)」として総務省統計局から明らかにされています。少し話がややこしいんですが、この参考値によれば、10月統計について、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIのヘッドライン上昇率+0.4%に対する寄与度が+0.37%となっていて、その+0.37%に対する消費税率引上げ及び幼児教育・保育無償化の影響が合わせて+0.20%、分けると消費税率引上げが+0.77%、幼児教育・保育無償化が▲0.57%と、それぞれ試算結果が示されています。12月統計ではコアCPI上昇率が+0.7%と少し上昇幅を拡大しているものの、このコアCPI上昇率+0.7%のうちの+0.20%が制度要因といえます。実際に、統計局がExceelファイルで提供している消費税調整済指数では、10月と11月は消費税の影響を除くコアCPIの前年同月比上昇率はともに+0.2%でしたが、12月統計では+0.4%にやや加速しています。このコアCPI上昇率の加速の大きな要因はエネルギーであり、かなりの程度に、国際商品市況における石油価格に連動しています。ただ、やや話がややこしいのは、まだ12月統計でもエネルギー価格が下落している点です。すなわち、11月統計では前年同月比で見たエネルギー価格の下落は▲2.1%でしたが、12月統計では▲0.6%に下落幅を縮小させ、その分、コアCPI上昇率の上昇幅拡大に寄与しています。その寄与度差は+0.13%と統計局のリポートで示されています。この寄与度差+0.13%のうち、ガソリンだけで+0.14%に上っており、自動車に乗らない人にはやや実感が薄いかもしれません。また、このエネルギー価格の下落幅の縮小によるコアCPI上昇率へのプラス寄与については、2018年11月に国際商品市況で石油価格がピークを打っていますので、その1年後の2019年11月に物価上昇へのマイナス寄与がもっとも大きくなっているわけで、その後、というか、この先数か月に渡ってエネルギーは我が国物価にプラス寄与しそうです。従って、国際商品市況における石油価格や為替レートの動向にも依存しますが、この先、今年2020年年央くらいまでコアCPI上昇率は+1%近い上昇率を続ける、との見方がエコノミストの間で広がっていることも事実です。その後、消費税率引上げの物価押上げ効果も剥落し、コアCPI上昇率は減速する、との見立てです。金融政策よりもエネルギー価格の方が、我が国物価へのインパクト大きい、という点は変わりないようです。

年初早々に、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害したとの報道があり、中東の地政学的リスクから石油価格の動向を私は懸念したんですが、その後、国際商品市況において石油価格が急騰したということにはなっていないようで、例えば、私が時折拝見しているみずほ証券の「マーケット・フォーカス 商品:原油 2020/1/9」では、中東リスクによる不透明感あるものの、「長期的な原油価格の変動要因としては地政学リスクよりも世界景気に軍配があがろう」と指摘していますし、私の知り合いも、米国内のシェール・オイルなどの裏付けあって、石油価格の高騰を招く可能性小さいと考えたからこその軍事行動である、との指摘も受けました。石油価格動向は私には極めて不案内で専門外なんですが、そうなのかもしれません。
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2020年01月23日 (木) 23:30:00

2か月連続で貿易赤字を記録した12月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から昨年2019年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲6.3%減の6兆5771億円、輸入額も▲4.9%減の6兆7296億円、差引き貿易収支は▲1525億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

19年12月の貿易収支、1525億円の赤字 通年は2年連続赤字
財務省が23日発表した2019年12月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1525億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は1510億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比6.3%減の6兆5771億円、輸入額は4.9%減の6兆7296億円だった。
併せて発表した19年の貿易収支は1兆6438億円の赤字だった。通年ベースの貿易赤字は2年連続。輸出額は18年比5.6%減の76兆9278億円、輸入額は5.0%減の78兆5716億円だった。


いつもの通り、コンパクトながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが貿易赤字▲ 1510億円でしたから、実績の▲1525億円の赤字はほぼほぼジャストミート、何のサプライズもなかったといえます。また、季節調整済みの系列を見ても、12月の貿易収支は▲1025億円の貿易赤字となっており、2018年年央7月からほぼ1年半に渡って貿易赤字を続けており、黒字を記録した月は例外的ともいえ、2019年中では2月と6月だけで、前者2019年2月の黒字は明らかに中華圏の春節の影響だと私は考えています。この1年半の間、上のグラフの下のパネルに見られるように、季節調整済みの系列で見て、輸出入とも緩やかに減少のトレンドにあるように見えるのは、明らかに、米中間の貿易摩擦による関税率引上げに起因した世界的な貿易の停滞やひいては世界経済の需要低迷の影響であると考えるべきです。ここ1年半ほどのトレンドとして、日経新聞の記事「輸出入3年ぶりマイナス 米中貿易戦争で需要減」をはじめとして、年統計に注目した報道の通りといえます。このブログでは景気動向に私自身の興味があるものですから、出来る限り、high frequency という観点から、年統計よりも四半期統計、四半期よりも月次統計を重視していますが、報道では年統計に着目したものが多いので、ここでは、少しニッチを狙って四半期統計に着目したいと思います。すなわち、2018~19年の2年に渡って貿易収支は赤字を続けているわけですが、2019年の各四半期でも、季節調整していない原系列のベースながら、4四半期連続で貿易収支は赤字を続けました。特に、直近では2019年7~9月期▲5263億円、10~12月期▲2249億円となっており、ホントは経常収支ながら貿易収支だけから見て、2019年10~12月期の貿易収支の赤字幅が縮小していますからGDP成長率に対して外需はプラス寄与する可能性が高い、と私は考えています。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、輸出数量については前年同月比でまだマイナスとはいえ、12月統計では輸出数量の前年同月比のマイナス幅が大きく縮小していることも事実であり、先進国も中国も需要は回復に向かいつつあることから、我が国の輸出数量にもようやく底入れの兆しが見て取れます。
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2020年01月22日 (水) 19:30:00

世界経済フォーラム主催のダボス会議におけるOXFAMのリポートやいかに?

いくつかの報道に見られる通り、今週1月21日から24日までダボス会議が開催されています。その中から まあ、私の趣味に従って、昨年と同様にOXFAM のリポート Time to Care に注目したいと思います。ダボス会議の主催者である世界経済フォーラムのサイトにも言及がありますし、もちろん、pdfの全文リポートサマリーリポートもアップされています。このリポートでは、性差別経済が不平等の危機を拡大している "our sexist economies are fuelling the inequality crisis" と、特に以下の3点を例として強調しています。OXFAMのサイトから引用しています。

Time to Care
  • The 22 richest men in the world have more wealth than all the women in Africa.
  • Women and girls put in 12.5 billion hours of unpaid care work each and every day - a contribution to the global economy of at least $10.8 trillion a year, more than three times the size of the global tech industry.
  • Getting the richest one percent to pay just 0.5 percent extra tax on their wealth over the next 10 years would equal the investment needed to create 117 million jobs in sectors such as elderly and childcare, education and health.


下の INFOGRAPHICS は、全文リポートの p.8 から引用していますが、サマリーリポートの p.6 にもほぼほぼ同じものが掲載されています。

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男女間の性別の不平等をはじめとして、格差や不平等は単に不正義であるだけでなく、大きく経済を歪めていると私は考えています。何としてもこれらの不平等を是正し、経済を正常な状態に戻す方策を探る必要があります。その意味でも、OXFAM Japan が2018年9月限りで解散したのは誠に遺憾千万、残念この上ありません。
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2020年01月21日 (火) 19:30:00

IMF「世界経済見通し改定」やいかに?

本日1月21日から開催されたダボス会議を前に、昨日1月20日に国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update, January 2020 が公表されています。副題は、Tentative Stabilization, Sluggish Recovery? とされており、前半部分もさることながら、特に後半部分がよく中身を表している気がします。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、成長率の総括表をIMFのブログ・サイトから引用すると以下の通りです。

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見れば明らかなんですが、昨秋2019年10月時点の見通しから全般的に成長率については下方修正されています。今年2020年の世界経済の成長率は昨年10月時点の見通しから▲0.1%ポイント下方改定されて+3.3%と見込まれている上に、来年2021年も▲0.2%ポイント下方修正されて+3.4%と予測されています。この下方修正の要因は、リポートでは、"The downward revision primarily reflects negative surprises to economic activity in a few emerging market economies, notably India" と、インドに起因することを明記しています。広く報じられた通り、住宅金融のノンバンクであるデワン・ハウジング・ファイナンス(DHFL)のデフォルトによる金融混乱を指していると多くのエコノミストは受け止めていることと思います。ただ、同時に、IMFのブログ・サイトでは、"some risks have partially receded with the announcement of a US-China Phase I trade deal and lower likelihood of a no-deal Brexit" と、米中間の第1段階の貿易合意の発表、また、合意なきBREXITの可能性の低下などをリスク低下の要因として上げています。私が見た範囲では、全国紙各紙とも見通し下方修正の要因としてインドに軽く触れている一方で、もっと明るい話題というか、何というか、米中貿易合意とか、BREXTの方の注目度が高かった気がします。先行きについては、リポートでも、"On the positive side, market sentiment has been boosted by tentative signs that manufacturing activity and global trade are bottoming out" と、製造業と世界貿易の落ち込みがボトムアウトする兆候により市場センチメントが向上する、とする一方で、"few signs of turning points are yet visible in global macroeconomic data" と、世界のマクロ経済には転換点を示すデータはまだほとんどない、と先が長い可能性も示唆しています。
日本の成長率見通しについては、今年2020年が+0.7%成長と前回見通しから+0.2%ポイント上方修正された一方で、来年2021年は変わらず+0.5%と見込まれています。このあたりが潜在成長率近傍なのかもしれません。なお、今年2020年の成長率を上方改定した理由は、"healthy private consumption, supported in part by government countermeasures that accompanied the October increase in the consumption tax rate,robust capital expenditure, and historical revisions to national accounts" と、昨年2019年10月の消費税率引上げに合わせた政府経済対策にも部分的に支援されて消費が堅調であり、設備投資も伸びているとしています。ただ、最後のポイント、すなわち、過去にさかのぼっての国民経済計算統計の改定という理由は、まあ、わざわざこんなことを明記するんですから、統計の信頼性に対する苦情にやや近い気もします。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2019年度+0.8~+0.9
<+0.8>
+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.4~+0.5
<+0.4>
 10月時点の見通し+0.6~+0.7
<+0.6>
+0.6~+0.8
<+0.7>
+0.4~+0.6
<+0.5>
 2020年度+0.8~+1.1
<+0.9>
+1.0~+1.1
<+1.0>
+0.9~+1.0
<+0.9>
 10月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.7>
+0.8~+1.2
<+1.1>
+0.7~+1.1
<+1.0>
 2021年度+1.0~+1.3
<+1.1>
+1.2~+1.6
<+1.4>
 10月時点の見通し+0.9~+1.2
<+1.0>
+1.2~+1.7
<+1.5>


最後に目を国内に転ずると、本日、日銀「展望リポート」が公表されています。政策委員の大勢見通しは上のテーブルの通りです。各セル下段の>< >内は中央値となっています。ただし、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、その他の情報とともに、引用元である日銀の「展望リポート」のサイトからお願いします。IMF見通しに従って、というわけでもないんでしょうが、日銀見通しも成長率については上方修正されていて、日銀自身も「展望リポート」1ページめのサマリーで、成長率については「2020年度を中心に、上振れている」と見ている一方で、物価の見通しについて「おおむね普遍」と自己評価しています。上のテーブルで明らかな通り、実は、やや下方修正という見方も成り立つような気がします。
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2020年01月20日 (月) 22:30:00

「中長期の経済財政に関する試算」の結果やいかに?

先週金曜日、1月17日に経済財政諮問会議が開催され、スマート化・グリーン化投資と関連人材投資を軸とした産業構造・経済構造の再構築などをはじめとする2020年前半の主要議題や来年度予算とともに、「中長期の経済財政に関する試算」、すなわち、財政収支と公債残高のGDP比の試算が2029年度まで示されています。

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見れば判ると思いますが、上のパネルが国・地方のプライマリ・バランスのGDP比、下が国・地方の公債等残高のGDP比となっています。報道では、プライマリ・バランス黒字化が目標の2025年度に達成できず、赤でプロットされている成長実現ケースでも2027年度に先送りされ、青のベースラインケースでは試算期間中の2029年度までではプライマリ・バランスは赤字のまま、という点が強調されていたように私は受け止めています。でも、上のグラフをよく見れば、プライマリ・バランス赤字を続けるベースラインケースでも、公債残高のGDP比は190%くらいで安定します。現代貨幣理論(MMT)を持ち出すつもりもありませんが、このあたりで十分ではないでしょうか。

なお、国際通貨基金(IMF)のサイトによれば、「世界経済見通し」World Economic Outlook の改定が本日1月20日のダボス会議で明らかにされる予定となっています。また、日を改めて取り上げたいと思います。
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2020年01月17日 (金) 20:00:00

来週から始まるダボス会議を前に Global Risks Report 2020 やいかに?

来週の1月21日からダボス会議が始まります。その主催団体である世界経済フォーラムから、「グローバル・リスク報告書 2020」The Global Risks Report 2020 が明らかにされています。今週になって、私が毎日のように世界経済フォーラムのサイトを見ていたところ、月曜日の1月13日付けで "Published" と高らかに明示されたものの、"Coming Soon!" が長らく続き、pdfの全文リポートがアップされて、私の方でダウンロード可能になったのは1月15日でした。

photo


ということで、まず、上の INFOGRAPHICS は、世界経済フォーラムのサイトから引用しており、見れば判りますが、TOP GLOBAL RISKS: From economic to environmental. Climate now tops the risks agenda, while the economy has disappeared from the top five とのタイトルが付されています。リポート冒頭にある Figure I: The Evolving Risks Landscape, 2007-2020 を少しデフォルメしたものだと受け止めています。タイトル通りに、経済リスクが大きく後退してトップ5には見られなくなった一方で、環境リスクがクローズアップされています。Likelihood でソートすると、トップ5すべてが環境リスクで占められており、(1) Extreme weather、(2) Climate action failure、(3) Natural disasters、(4) Biodiversity los、(5) Human-made environmental disasters、の順となります。ただし、資産バブルの発生や財政危機などが後景に退いたとはいえ、この環境リスクの裏側には経済活動である企業の生産や家計の消費などが大きな要因となっているわけですから、これらの経済活動が地球環境と調和するような方策を探る必要がある、というのが大きなメッセージとなっています。下のグラフは、リポート冒頭にある Figure II: The Global Risks Landscape 2020 を引用しています。横軸にリスクが顕在化しそうな Likelihood、縦軸にはリスクが顕在化した際のダメージである Impact を取ったカーテシアン座標にさまざまなリスク要因がプロットされています。右上にプロットされているリスクほど警戒が必要、といことなんだろうと思います。

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2020年01月16日 (木) 23:30:00

イレギュラーな大型案件で増加した機械受注と消費税率引上げでプラスを続ける企業物価!

本日、内閣府から昨年2019年11月の機械受注が、また、日銀から昨年2019年12月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、イレギュラーな大型案件があり、季節調整済みの系列で見て前月比+18.0%増の9,427億を示しており、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+0.9%の上昇と、10月から消費税率が引き上げられた影響で先月からプラスが続いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の機械受注、前月比18.0%増 市場予想3.3%増内閣府が16日発表した2019年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比18.0%増の9427億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3.3%増だった。
うち製造業は0.6%増、非製造業は27.8%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は5.3%増だった。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」で据え置いた。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入されて設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
12月の企業物価指数、前年比0.9%上昇 消費増税・原油高が寄与
日銀が16日発表した2019年12月の企業物価指数(2015年平均=100)は102.3と、前年同月比で0.9%上昇した。上昇は2カ月連続。消費税率の引き上げの影響に加え、原油価格の上昇で石油・石炭製品が値上がりしたことが寄与した。前月比では、0.1%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。円ベースでの輸出物価は前年比で4.1%下落し、8カ月連続のマイナスだった。前月比は0.2%上昇した。輸入物価は前年同月比6.8%下落し、前月比で0.9%上昇した。
企業物価指数は消費税を含んだベースで算出している。10月の消費増税の影響を除いた企業物価指数は前年同月比で0.7%下落した。7カ月連続で前年を下回った。
2019年(暦年)の企業物価指数は101.5で前年比0.2%上昇した。消費増税の影響を除くと0.2%下落と、3年ぶりに前年実績を下回った。


長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注については、昨年2019年6月に季節調整済みの系列の前月比が+13.9%増を記録した後、7月▲6.6%減、8月▲2.4%減、9月▲2.9%減、10月▲6.0%減と4か月連続でマイナスが続いて来たんですが、本日公表の11月統計では、運輸業・郵便業で2件のイレギュラーな大型受注があり、前月から比率で+108.3%増、額で+1,026億円増、を記録したため、コア機械受注全体でも+18.0%増となりました。ただ、コア機械受注全体の増加額は+1,439億円ですから、運輸業・郵便業の増加額を差し引いても約+400億円強が増加したわけで、前月からの増加率も+5%超と考えて差し支えありません。すなわち、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比で3%を少し上回る増加だったわけですから、予測レンジ上限の+6.2%増の範囲内とはいえ、やや強めの数字と考えるべきです。ただ、イレギュラーな大型案件受注による大幅増でしたので、基調判断は変更しがたく、「足踏み」で据え置かれています。先行きについては、先月の機械受注統計公表時にお示ししたように、基本的に、横ばいないしやや減少のトレンドではないかと私は見ていますが、もしも、経済協力開発機構(OECD)の先行指標 CLI=Composite Leading Index に示されている "Stable growth momentum and below-trend growth" から、世界経済が本格的に上向けば機械受注も増加に転じる可能性が高まるような気がします。

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機械受注の方は、ちょっとびっくりの結果だったんですが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスである+0.9%の上昇にジャストミートしました。2か月連続のプラスですが、ただし、日銀から公表されている消費税を除く上昇率は12月でもまだ▲0.7%であり、11月の▲1.5%から下落幅を縮小したとはいえ、まだ前年同月比マイナスが続いています。引用した記事のタイトルにあるように、消費税率の引上げに大きく支えられ、国際商品市況における石油価格の上昇も寄与しているようで、物価動向に対して金融政策はそれほどの重要性ないのかもしれません。あるいは、現代貨幣理論(MMT)のモデルが正しくて、物価には金融政策ではなく財政政策を割り当てるべきなのか、私は基本的にリフレ派エコノミストでしたが、やや自信がなくなって来ています。
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2020年01月15日 (水) 19:20:00

2020年1月の日銀「さくらリポート」で示された地域の景気動向やいかに?

日銀では支店長会議が開催され、本日午後、「さくらリポート」が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。各地域の景気の総括判断と前回との比較は下のテーブルの通りで、6ブロックで横ばい、3ブロックで下方修正という結果となっています。

 【2019年10月判断】前回との比較【2020年1月判断】
北海道緩やかに拡大している緩やかに拡大している
東北一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている弱めの動きが広がっているものの、緩やかな回復を続けている
北陸緩やかに拡大している引き続き拡大基調にあるが、その速度は一段と緩やかになっている
関東甲信越輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している海外経済の減速や自然災害などの影響がみられるものの、基調としては緩やかに拡大している
東海拡大している緩やかに拡大している
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな拡大を続けている
中国一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに拡大している幾分ペースを鈍化させつつも、基調としては緩やかに拡大している
四国回復している一部に弱めの動きがみられるものの、回復している
九州・沖縄緩やかに拡大している緩やかに拡大している


繰り返しになりますが、3ブロックで前回判断から下方修正されているものの、各地域の景気の総括判断はすべての地域で「拡大」または「回復」と示されています。この背景として、日銀では、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられる一方で、企業・家計の両部門において所得から支出への前向きな循環が引き続き働いており、設備投資や個人消費といった国内需要が増加基調を続けている点を上げています。
このように、地域ブロック別の景気判断では横ばいないし下向きの修正があるにもかかわらず、来週1月20日から2日間にわたって開催される金融政策決定会合で決定される「展望リポート」に関して、以下の日経新聞や朝日新聞では、成長率見通しを引き上げるとの見込みを報じています。やや混乱を招きかねない報道だと私は受け止めていたんですが、実は、昨年末に公表された国民経済計算の確報レベルでGDPの実額が下方修正され、その後の成長率が発射台との関係で先行き見通しがやや上方修正される、というのが真相のようです。ご参考まで。
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2020年01月14日 (火) 19:45:00

2か月連続で改善した景気ウォッチャーと安定した黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から昨年2019年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2019年11月の経常収支が、それぞれ公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.4ポイント上昇の39.8を、先行き判断DIは▲0.3ポイント低下の45.4を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆4368億円の黒字を計上しています。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の街角景気、現状指数は2カ月連続改善
内閣府が14日発表した2019年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、3カ月前と比べた足元の街角の景気実感を示す現状判断指数(DI、季節調整済み)は39.8と前月から0.4ポイント上昇した。消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動が和らいできたことや米中貿易摩擦への懸念が薄れたことなどが寄与し、2カ月連続で改善した。
分野別にみると、企業動向を示す指数が3カ月ぶりに改善した。米中貿易摩擦や世界経済の減速などに関するコメントが前月より減少した。「半導体関連の設備に景気上向き傾向が一部にみられ、受注量も増えている」(九州の一般機械器具製造業)といった声があった。
一方、家計動向を示す指数は2カ月ぶりに低下した。消費増税の影響が和らぎつつあるとの声があった一方、暖冬の影響で冬物衣料や暖房器具などの販売が伸び悩んだとの声があった。降雪量が少なくスキー場が開けないといったコメントや忘年会やクリスマスなど年末イベントの簡素化の影響が出ているとの指摘もあった。
2~3カ月後の景気の良しあしを判断する先行き判断指数は45.4と前月から0.3ポイント低下し、3カ月ぶりに悪化した。年末年始商戦への期待感が一巡したことなどで家計動向を示す指数が低下したことが響いた。
内閣府はウオッチャーの見方について「このところ回復に弱い動きがみられる」に据え置いた。「消費税率引き上げに伴う駆け込み需要の反動が一部にみられる」といったただし書きも変えず、先行きについても「海外情勢などに対する懸念もある一方、持ち直しへの期待がみられる」と前月と同じ表現を維持した。
経常黒字75%増の1.4兆円 19年11月、貿易赤字が縮小
財務省が14日発表した2019年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆4368億円の黒字だった。黒字は65カ月連続。黒字幅は18年11月に比べ75%拡大した。貿易収支の赤字幅縮小や、第1次所得収支の黒字幅拡大が寄与した。
19年11月の輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は25億円の赤字(18年11月は5396億円の赤字)だった。輸出額は10.2%減、輸入額は16.6%減だった。原油価格の下落などを背景に中東からの原粗油などの輸入が減った。輸入額の大幅減少を受け、差し引きの貿易赤字幅が縮小した。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は1兆4575億円の黒字だった。黒字幅は0.1%の拡大。海外の親会社に支払う配当金が減ったため。
サービス収支は18年11月に比べ約4倍となる1630億円の黒字だった。研究開発費やコンサル費用などの赤字幅が縮小したことが大きい。


かなり長くなりました。これらの記事さえしっかり読めば、それはそれでOKそうに思えます。いずれにせよ、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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ということで、景気ウォッチャーは現状判断DIも、先行き判断DIも、いずれも小幅な動きで、ほぼ横ばい圏内の気がします。引用した記事には、家計部門と企業部門を対比させる内容となっていますが、私はやや異なる印象を持っています。というのも、12月統計の本日公表の景気ウォッチャーとは時点が違うんですが、先週公表され11月統計だった景気動向指数から、「企業も家計もともに停滞している中で、相対的に企業部門の方が大きな落ち込みを示している」との見方を示しました。景気ウォッチャーでも11月統計の現状判断DIを見ると、家計動向関連が前月差プラスで、企業動向関連はマイナスとなっていて、本日公表の12月統計ではこれが逆転して、家計動向関連がマイナス、企業動向関連がプラス、となっているわけです。このあたりはもう少し均して見る必要があるのかもしれませんが、私自身の先週の見方を否定するようで心苦しいものの、企業動向が依存する世界経済は米中間の貿易摩擦もさることながら、マクロの世界経済は明らかに改善に向かっている一方で、家計動向は少なくとも年内くらいまで10月の消費税率引上げのダメージが続く、と私は考えています。他方で、企業部門は景気動向にかなり敏感に反応してボラティリティ高い一方で、家計の消費はやや粘着性が強いとも考えられます。このパラの冒頭部分に戻りますが、基調判断が先月から変更ないのも、横ばい圏内の動きで方向感に乏しいためであろうと私は考えています。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。いずれにせよ、仕上がりの11月統計でも黒字を記録しており、季節調整していない原系列の統計では2014年7月に黒字に転換して以来、また、季節調整済みの系列ではさらに早くて2014年4月の黒字転換以来、5年を超えて経常収支は黒字を継続しています。重要なコンポーネントのひとつである貿易収支は国際商品市況の石油価格の変動に応じて赤字になったり黒字になったりしている一方で、安定的な海外からの第1次所得収支の黒字が大きな部分を占めている点については変わりありません。本日公表の11月経常収支についても同様といえます。加えて、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、+1兆4263億円の黒字の予想でしたので、サプライズもありませんでした。ただ、貿易収支については、この先、世界経済のいっそうの停滞が予想されるとともに、韓国向け輸出の動向も日韓関係の行方に左右される部分もあって不透明と考えるべきです。
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2020年01月11日 (土) 11:00:00

雇用者+145千人増の12月米国雇用統計をどう見るか?

日本時間の昨夜、米国労働省から昨年2019年12月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+145千人増とまずまずの堅調振りで、失業率は先月と同じ3.5%という半世紀ぶりの低い水準を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、コンパクトにUSA Today のサイトから記事を最初の4パラを引用すると以下の通りです。

Economy added disappointing 145,000 jobs in December and the unemployment rate was unchanged at 3.5%
U.S. hiring slowed sharply in December as employers added 145,000 jobs, raising concerns that trade worries and a persistent downturn in manufacturing may be taking a bigger toll on the broader economy.
The unemployment rate was unchanged at a 50-year low of 3.5%, the Labor Department said Friday.
Also mildly disappointing: Job gains for October and November were revised down by a total 14,000. October's tally was nudged from 156,000 to 152,000 and November's, from 266,000 to 256,000.
On the one hand, a slowdown from November's booming additions was not surprising. And the economy added an average 176,000 jobs a month in 2019. That's below the 223,000 average the previous year -- a figure that's expected to be revised down -- but more than many experts anticipated in light of slowing growth and a dwindling supply of available workers.


いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。

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米国雇用統計の何をどう見るかで見方も違ってくるわけですが、先月11月統計の雇用者増+256千人増とか、市場の事前コンセンサスの+180千人増などと比べれば、引用した記事のように、disappointing 物足りない、という評価になるかもしれませんが、米国連邦準備制度理事会(FED)のように、インフレを加速しない巡航速度の雇用者増を+100千人増と考えていたり、あるいは、半世紀振りの低水準である3.5%の失業率を見たりすれば、雇用は堅調という見方も出来ます。私はどちらかといえば後者の、米国雇用はまずまず堅調、という見方です。加えて、今年は米国大統領選挙の年であり、トランプ政権サイドから見ても、両方向の見方ができるかもしれません。すなわち、「よくやった」説を取る場合、北朝鮮に対する態度と同じで、十分な成果が上がったとやや無理やりにでもこじつける見方もできますし、「まだまだ」説を取って、中国やイランに対する態度と同じで、さらなる譲歩≒緩和を求める方向を取ることも出来るでしょう。タイミングも関係するかもしれませんし、年が明けて各政党内の予備選はともかく、本格的な選挙戦に突入すれば、対抗陣営は現政権の政策や成果を否定する一方で、トランプ大統領が共和党の予備選を勝ち抜けば、「まだまだ」説から徐々に「よくやった」説に変化して行くんではないかという気がします。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用の堅調振りに歩調を合わせて、賃金上昇率も3%前後の水準が続いており、12月も前年同月比で+2.9%の上昇とインフレ目標を上回る高い伸びを示しています。ただ、上のグラフに見られるように、賃金の伸びが鈍化しているのは、米中間の貿易摩擦の影響もあって、雇用増が製造業ではなく賃金水準の低いサービス業、例えば、Leisure and hospitality や Health care and social assistance などで発生している点もひとつの要因です。日本や欧州と違って、米国では物価も賃金上昇もインフレ目標を上回る経済状態が続いている一方で、政権からの圧力もあってFEDでは利下げが模索されていましたが、「まだまだ」説から「よくやった」説に変化するタイミングを待ちつつ、しばらく小休止なのかもしれません。ただ、左派エコノミストとして、私はトランプ政権の圧力は別と考えても、一般論ながら、金融緩和策や財政的な拡張政策は貧困対策を含めて国民の生活水準向上に役立つものと考えています。
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2020年01月10日 (金) 19:30:00

4か月連続で「悪化」を示す11月統計の景気動向指数は景気後退を示唆するのか?

本日、内閣府から昨年2019年11月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月から▲0.7ポイント下降して90.9を、CI一致指数も▲0.2 ポイント下降して95.1を、それぞれ記録し、統計作成官庁である内閣府による基調判断は、4か月連続で「悪化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気、くすぶる後退観測 11月の動向指数も「悪化」
内閣府が10日発表した2019年11月の景気動向指数(CI、2015年=100)は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.2ポイント低下の95.1だった。10月の消費税率引き上げ後、2カ月続けて前月を下回り、13年2月以来の低水準に落ち込んだ。指数の推移から機械的に決まる基調判断は4カ月連続で「悪化」となり、景気後退の懸念がくすぶり続けている。
指数による基調判断の「悪化」は定義上、景気後退の可能性が高いことを示す。「悪化」が4カ月続くのは12年10月~13年1月以来だ。当時は事後的な認定で景気後退局面とされた期間に重なっており、12年11月が景気の谷だった。
足元の一致指数は増税と大型の台風が重なった10月に急落し、11月もさらに下がった。指数を構成する9統計は7項目が判明ずみで、このうち4項目が指数を押し下げる方向に働いた。
マイナスの度合いが最も大きかった投資財出荷指数は、台風で部品調達が滞った建設機械の出荷減が響いた。世界経済の減速で低迷が続く鉱工業生産指数も、台風による物流の停滞などで一段と落ち込んだ。
政府が月例経済報告で示す公式の景気認識は18年1月から「緩やかに回復」との表現を続けている。直近の19年12月も製造業の弱さに言及しつつ、堅調な雇用などを背景に回復との認識は変えなかった。このため統計指標から機械的にはじく景気動向指数の判断とはズレが生じている。
世界銀行が8日改定した経済見通しによると19年の世界の成長率は推定で2.4%と、金融危機の影響から脱し始めた10年以降で最低になった。市場では日本経済が景気後退局面に入っているとの声がくすぶる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎氏は「景気は既に山を越えた」とみている。米中貿易戦争が激しくなった18年秋以降は下り坂で、19年10月の増税も重荷になっている。
もっとも過去の景気後退局面と比べると、経済指標の落ち込みは小さいとの指摘もある。日本総合研究所の松村秀樹氏は「下押し圧力を超えて回復が持続する」と予想する。内需は堅調で、増税後の個人消費も底割れしないとの見方だ。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、景気動向指数のグラフは下の通りです。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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いつも論じているように、景気動向指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が高いんですが、11月統計の一致指数のマイナス寄与が大きい順に採用系列を並べると、投資財出荷指数(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、有効求人倍率(除学卒)と、最初の3項目にはIIP関連の指標が登場します。 逆に、プラス寄与の大きい順だと、商業販売額(小売業)(前年同月比)や耐久消費財出荷指数が上位に並んで、企業部門の低迷と家計部門の堅調という、消費税率引上げ直後としては考えられない部門間の動きを示しています。というのは、私の考えでは、企業も家計もともに停滞している中で、相対的に企業部門の方が大きな落ち込みを示している、ということなのだろうと考えられます。企業部門の落ち込みを家計部門が下支えしている構図なわけですが、そのひとつの要因として、人手不足による雇用の堅調な動向が上げられます。ただ、私が何度もこのブログで明らかにしているように、景気後退局面に入って雇用が落ち始めると、それこそ、底なし沼のように景気と雇用があいまって大きく落ちる可能性も否定できません。日経新聞の記事で最後の方に紹介されているシンクタンクのエコノミスト2氏の見方は、あるいは、どちらも正しくて、おそらく景気はピークを超えたのでしょうが、まだ、大きな落ち方を示す局面には到達していない、ということなのかもしれません。私も判断に迷うところですから、景気局面の判断はそれなりに時間が経過した後でないと出来ない、というのも理解できるところです。
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