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2018年12月31日 (月) 18:51:00

よい年をお迎えください!!

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恒例により、Financial Times の The World in 2019 から取り上げておきたいと思いますが、1年前は明示的に日本が入り、それは「日銀は金融引締めを行うか?」の問いに対して、予想される回答はNoだったんですが、今回はとうとう日本は無視されたようです。わずかに関係しているのは、最後の20番目の「ゴーン抜きで日産とルノーの連携は継続するか?」だけで、答えは Yes でした。しょうがないので、以下、FT のサイトから引用して羅列しておきます。

  • Will Brexit be stopped?
  • Will Jeremy Corbyn become UK prime minister?
  • Will France's Emmanuel Macron get his reforms back on track after the gilets jaunes protests?
  • Will populists make big gains in European Parliament elections?
  • Will the Democrats attempt to impeach President Donald Trump?
  • Will the trade truce hold between Donald Trump and China's Xi Jinping?
  • Will Russia escalate military action against Ukraine?
  • Will there be a new financial crisis?
  • Will Narendra Modi still be prime minister after India's parliamentary polls?
  • Will the disputes in the South China Sea blow up?
  • Will Jair Bolsonaro boost Brazilian economic growth?
  • Will Saudi Crown Prince Mohammed bin Salman survive the aftermath of the killing of Jamal Khashoggi?
  • Will the S&P 500 finish 2019 above 3,000?
  • Will Ethiopia's prime minister be able to maintain the momentum of one of Africa's most striking transformations?
  • Will Brent crude end the year below $60 a barrel?
  • Will Uber achieve the biggest IPO in history?
  • Will Mark Zuckerberg step down as chairman of Facebook?
  • Will the US yield curve invert?
  • Will Huawei lose its foothold outside China?
  • Will the Nissan-Renault alliance survive without Carlos Ghosn?
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2018年12月30日 (日) 18:38:00

年末年始休みに入りジブリのDVDを鑑賞する!

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9月の本放送で見逃したので、2~3日前に深田恭子のキャスターによる「とことんフランス! 魅惑の5時間SP」の再放送をBSの深夜枠でウツラウツラしながら見たので、二日酔いならぬ三日睡眠不足といったところでやたらと眠いんですが、今日の午後になってようやく目覚めて、借りてあったジブリのアニメを鑑賞しました。「思い出のマーニー」です。私は日本のアニメはサブカルながら、ハイカルの文学で未だに村上春樹がノーベル文学賞を取れない中で、我が国を代表する文化のひとつと考えています。村上春樹がノーベル賞を受賞しても考えは変わらないかもしれませんが、それはともかく、その我が国を代表する文化のひとつであるアニメの中でも、ジブリとポケモンとドラえもんはトップを走っている気がします。もちろん、最近では、ワンピースやナルトや名探偵コナンもそうなのかもしれません。ただ、流石に60歳に達して老人の域に近づき、少女児童文学を原作とする作品は少し消化が悪かった気がします。その昔は、子供達が小さかったのもあって、「魔女の宅急便」とか、「風の谷のナウシカ」とか、「千と千尋の神隠し」とか、「もののけ姫」とか、いっぱい楽しんだんですが、今では「紅の豚」のような男のロマンを感じさせる作品がいいのかもしれません。年齢とともに好みは変わるのではなかろうかという気がします。
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2018年12月29日 (土) 13:02:00

今年最後の読書感想文はアジア開発銀行50年史など計6冊!

今年2018年最後の読書感想文のブログです。何といっても目玉はアジア開発銀行(ADB)50年史です。私はドライな人間ですから、どうということはありませんが、熱血漢であれば涙なしには読めない感動モノです。それから、年末年始休みに合わせたわけでもないんですが、何となくフィクションの小説が増えた気がします。いろいろと取りそろえて以下の6冊です。

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まず、ピーター・マッコーリー『アジアはいかに発展したか』(勁草書房) です。著者はオーストラリアのエコノミストであり、やや判りにくいタイトルなんですが、上の表紙画像の英語の原題である "50 Years of the Asian Development Bank" にうかがえる通り、本書はマニラに本部を置く国際機関であるアジア開発銀行(ADB)の50年史です。ですから、まあいってみれば、社史と同じで基本的に提灯本ではあるんですが、私の専門分野とも近く、アジア各国の経済発展の歴史をコンパクトに取りまとめていますので、オススメです。歴代の総裁に対する提灯持ちの姿勢は別としても、世銀や国際通貨基金(IMF)などのワシントン・コンセンサスに従った制作決定や業務運営と異なって、アジア開発銀行(ADB)ではもっとアジア的な色彩が強いのは事実ですし、その意味で、本書では世銀・IMFは国際収支への支援であるのに対して、ADBは医療などの社会政策や教育も含めた財政支援を重視した、というのは事実なんだろうと思います。巻末資料も豊富です。

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次に、オーナ・ハサウェイ & スコット・シャピーロ『逆転の大戦争史』(文藝春秋) です。著者は2人共米国イェール大学法学部の研究者であり、専門分野は国際法と法哲学ということのようです。英語の原題は The Internationalists であり、2017年の出版です。ということで、中世の絶対王政期から以降の現在までの期間における戦争に関する国際法の歴史について概観しています。オランダのグロティウスによる戦時国際法の確立から、基本的に、勝者の理屈が通る世界だった戦争に関する国際法なんですが、1928年のパリ不戦協定によって、それまでの帝国主義的な領土分割の結果が固定され、それ以降の侵略戦争に対する風当たりが厳しくなった点を跡づけています。その点で、日本も着目されており、満州国の成立とそれを否定するリットン調査団は、そういった世界的な風潮の最初の兆候であったと振り返っています。特に、1928年のパリ不戦協定から第2時世界大戦を経て、戦争や領土獲得を目的とした征服が大きく減じた点をパリ不戦協定の功績として着目しています。私は、進歩主義者として、こういった画期を考えるのではなく、世界の進歩の方向がそうであった、としか思えませんが、まあ、興味深い歴史的論考だと思います。

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次に、澤野由明『澤野工房物語』(DU BOOKS) です。私は音楽の方ではもっぱらにモダン・ジャズばかり聞いていますので、この澤野工房という欧州ジャズの、しかも、ピアノを中心に制作しているマイナー・レーベルは当然に知っています。私が聞いたのは、本書でも紹介されているウラディミール・シャフラノフにトヌー・ナイソー、そして、もちろん、山中千尋の初期作品です。シャフラノフや山中千尋はメジャーに移籍してしまいましたが、少なくとも、山中千尋については、私は移籍前後の、澤野工房でいえば「マドリガル」、あるいは、メジャー移籍後のヴァーヴでのデビュー第1弾「アウトサイド・バイ・ザ・スウィング」をもっとも高く評価しています。ジャズのマイナー・レーベルといえば、本場米国のアルフレッド・ライオン による「ブルーノート」、オリン・キープニュースによる「リバーサイド」、ボブ・ウェインストックによる「プレスティッジ」がとても有名なんですが、かのマイルス・デイビスがプレステッジからメジャーのCBSコロンビアに移籍する直前のマラソンセッションなども有名です。それはともかく、欧州のピアノ・ジャズが多いとは感じていましたが、澤野工房が兄弟2人で大阪の新世界と欧州に展開していたとか、元は履き物屋さんだったとか、知らない話題も満載で、とても楽しむことができました。

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次に、伊坂幸太郎『フーガはユーガ』(実業之日本社) です。作者はご存じの通りの売れっ子のミステリ作家で、数多くのエンタメ小説をモノにしていて、本書は最新作です。兄優我と弟風我の2人が、誕生日に2時間おきに入れ替わるというオカルト的な現象をアレンジして、優我がそれをテレビで取り上げてもらうべくジャーナリストにモノローグするという形でストーリーが進みます。父親のDVから始まって、暗くてノワールなトピックも盛り込みながら、独特の伊坂ワールドが展開されます。時折挟まれる優我の嘘が混じる旨のモノローグもあって、どこまでがホントで、どこからがウソなのか、瞬間移動もウソなんではないか、と思わせつつ、最後に大きなどんでん返しが待っています。なかなか、痛快でスピード感あふれるストーリーなんですが、ひとつだけ、同じような不可解なオカルト的な現象が生じる西澤康彦の『7回死んだ男』では、「反復落し穴」という独特のネーミングを用いています。本書でも双子の瞬間移動に何か特徴的な名前を付けて欲しかった気もします。

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次に、宇佐美まこと『骨を弔う』(小学館) です。今年2018年最大の話題を提供したミステリの1冊ではないでしょうか。ようやく図書館の予約が回ってきました。ということで、小学校高学年10歳過ぎくらいの仲良し同級生の男子3人女子2人の5人による秘密の行動の謎を、その中の1人である男子が解き明かそうと試みます。小学生の男女数名の仲良しグループの再会、ということになれば、スティーヴン・キングの『It』を思い出してしまいましたが、非科学的なホラーの要素はありません。それよりも、私の限られた読書経験の範囲からすれば、柴田よしきの『激流』っぽい気もしなくもありません。それにしても、評判に違わずなかなかの出来の小説です。個々人の名をタイトルにした章に合わせた文体の書き分けはまだしっくり来ておらず、一部に違和感が残るものの、プロット、とうか、構成はとても目を見張るモノがありました。ただ、最終章は蛇足というよりも、ムダそのものです。一気にストーリー全体がウソっぽくなってしまっています。文庫本に収録する際には削除すべきかもしれません。

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最後に、湊かなえ『ブロードキャスト』(角川書店) です。作者はご存じ売れっ子のミステリ作家です。とても明るい青春小説です。ただ、主人公が中学3年生から高校1年生の1年足らずの期間ですので、やや幼い気もします。従って、恋愛感情などは表には現れません。ということで、中学まで陸上の駅伝などの長距離走者だった主人公が、高校の合格発表の帰り道で交通事故にあって陸上を諦めて放送部の部活を始め、陸上部の駅伝で果たせなかった全国大会出場を目指す、というストーリーです。主人公は陸上でも、本書のタイトルとなった放送部でも目標となり、よき刺激を受けるライバルや友人に恵まれ、のびのびと高校生活を送ります。ただ、陸上を諦める大きな原因となった交通事故については、もう少し詳細を明らかにして欲しかった気がします。でも、私は今もってこの作品を読んだ後でも、この作者の最高傑作はデビュー作の『告白』だと思っているんですが、一連のモノローグの暗い物語から、次々に新境地を拓く作者に注目しているのも事実です。
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2018年12月28日 (金) 23:28:00

足踏み続く鉱工業生産指数(IIP)と伸びが鈍化しつつある商業販売統計と完全雇用に近い雇用統計!

本日は御用納めの官庁年内最後の営業日であり、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.1%の減産を示し、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.4%増の12兆1280億円、季節調整済み指数の前月比は▲1.0%減を示しています。失業率は前月から+0.1%ポイント上昇したものの2.5%と低い水準にあり、有効求人倍率も前月から+0.01ポイント改善して1.63倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。まず、3つの統計を取り上げますので長くなりますが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

11月の鉱工業生産、1.1%低下 生産予測は慎重
経済産業省が28日発表した11月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比1.1%低下の104.7だった。低下は2カ月ぶり。10月に自然災害の影響から大幅に回復した業種の低下が全体を押し下げた。QUICKがまとめた民間予測の中心値(1.9%低下)は上回った。
経産省は生産指数自体は比較的高い水準にあるとして、基調判断は「生産は緩やかな持ち直し」を維持した。
業種別では、15業種中8業種で低下した。10月に上昇した「汎用・業務用機械工業」の低下による影響が大きかった。コンベヤー、一般用蒸気タービン、水管ボイラーなどが低下した。
出荷指数は1.4%低下の103.1と2カ月ぶりに低下した。汎用・業務用機械工業のほか、自動車工業、電気・情報通信機械工業など11業種が低下した。
在庫指数は0.2%上昇の101.5だった。石油・石炭製品工業など8業種で上昇した。
製造工業生産予測調査によると、12月は2.2%上昇、1月は0.8%の低下だった。この数値について、予測誤差の加工を施した試算値は、12月が前月比0.7%低下だった。1月の低下見込みと合わせて、「向こう2カ月の生産予測はやや慎重なものとなっている」(経産省)という。
11月の小売販売額、1.4%増 石油製品の価格上昇続く
経済産業省が28日発表した商業動態統計(速報)によると、11月の小売販売額は前年同月比1.4%増の12兆1280億円だった。前年実績を上回るのは13カ月連続。経産省は小売業の基調判断を「緩やかに持ち直している」で据え置いた。
業種別では燃料小売業が8.1%増と伸びが目立った。原油高による石油製品の価格上昇が続いた。自動車小売業は5.3%増。新型普通車の販売が好調だった。医薬品・化粧品小売業は4.6%増となった。一方、機械器具小売業は3.9%減。スマートフォンの販売が振るわなかった。
大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計で1.7%減の1兆6423億円だった。既存店ベースは2.2%減だった。コンビニエンスストアの販売額は2.0%増の9716億円だった。
有効求人1.63倍、人手不足で2カ月ぶり改善
厚生労働省が28日発表した11月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.01ポイント上昇し、1.63倍だった。改善は2カ月ぶり。高水準が続き、人手不足を背景に企業の強い採用意欲を表している。総務省が同日発表した11月の完全失業率(同)は2.5%と0.1ポイント悪化した。ただ依然として働く意思のある人なら働ける「完全雇用」と呼べる状況が続いている。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率(季節調整値)は1.13倍と前月と同水準だった。
有効求人倍率は10月に8カ月ぶりに悪化したものの、11月は持ち直した。新規求人(原数値)は96万6635人と前年同月比で2.6%増えた。特に建設業(7.1%増)、運輸業、郵便業(5.2%増)、医療、福祉(5.1%増)などの採用意欲が強い。
雇用の先行指標となる新規求人倍率(季節調整値)は2.40倍で前年と同水準だった。
完全失業率は2カ月連続の悪化となった。雇用環境が改善するなか、自発的に仕事を辞め、よりよい賃金や待遇の職を探す動きが活発になっている。
求人があっても職種や勤務地など条件が合わずに発生する「ミスマッチ失業率」は3%程度とされ、3%を下回れば完全雇用状態にあるといえる。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比で▲1.9%の減産が見込まれていましたから、減産幅は小さいとの受け止めも少なくないようですが、製造工業生産予測調査では12月が+2.2%の増産となっているものの、予測誤差を含む試算では▲0.7%の減産が見込まれており、1月も減産見込みですから、先行きは不透明です。特に、来年2019年は中華圏の春節が2月5日から始まりますので、景気が回復しつつある中国の動向が気にかかるところです。産業別に少し詳しく見ると、9月の自然災害で減産あるいは停滞し、逆に、10月の「挽回生産」で増産した業種が11月統計では落ちています。すなわち、汎用・業務用機械工業や電気・情報通信機械工業などです。繰り返しになりますが、先行きも生産や出荷は弱そうなんですが、例えば、11月統計で生産▲1.1%の減産、出荷も▲1.4%の低下ながら、在庫は前月から+0.2%しか増えておらず、出荷との相対比である在庫率は逆に▲1.8%の低下を示していますから、在庫が積みあがって生産に調整圧力がかかる段階には達していないと私は考えています。ですから、統計作成官庁である経済産業省でも基調判断は「緩やかな持ち直し」で据え置いたのではなかろうかと想像しています。いずれにせよ、中華圏の主節がかく乱要因ですから、来年2019年2月の実績が出るまでは、なかなか先が見通せない不透明感が残るような気はします。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は鉱工業生産指数(IIP)のグラフと同じく景気後退期です。ということで、小売販売額については、ヘッドラインの季節調整していない原系列の統計での前年同月比ではプラスを1年超で続けているものの、季節調整済の系列の前月比ではマイナスを記録し、そろそろ慎重な判断を要する段階に達しつつあるような気もします。特に、今年2018年8~10月には原系列の前年同月比で+2%超の伸びを記録しましたが、商業販売統計の小売業販売額は名目の売り上げであり、現時点で、ほぼほぼ+1%近くに達している消費者物価(CPI)上昇率を考え合わせれば、11月統計の+1.4%の伸びはギリギリで実質プラス、という感じがしなくもなく、今後、国際商品市況における石油価格の低下とともに国内物価が上昇率を低下させ始めると、小売売上額も同時に停滞しそうな気もします。ただ、鉱工業生産・出荷には年明け早々の中華圏の春節がかく乱要因になる一方で、商業販売統計の小売業販売額については来年2019年10月の消費税率の引き上げが消費のかく乱要因であることは確実です。消費税率引き上げ直前の駆け込み需要とその後の反動減の大きさは、財政政策をはじめとして各種の、というか手厚過ぎるくらいの措置が講じられているとはいえ、何とも測りがたいところです。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間は、これまた同じく、景気後退期です。また、グラフにはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.13倍と、昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ1年以上に渡って1倍を超えて推移しています。こういった政府統計からも、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。
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2018年12月27日 (木) 21:14:00

読売新聞による読者が選ぶ10大ニュースやいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、読売新聞から12月22日付けで「読者が選ぶ10大ニュース」が明らかにされています。海外と日本のそれぞれの10大ニュースとともに、同じく海外と日本の出来事もあったりします。基本的に、国内ニュースに着目すると以下の10大ニュースの順となります。もちろん、読売新聞のサイトから引用しています。

【1位】
平昌五輪で日本は冬季最多13メダル。フィギュア・羽生結弦は連覇
14,527(77.6%)
【2位】
西日本豪雨、死者220人超
12,267(65.6%)
【3位】
日大アメフト部選手が危険タックル。スポーツ界で不祥事相次ぐ
11,587(61.9%)
【4位】
テニス・大坂なおみが全米オープン優勝、四大大会で日本人初
11,262(60.2%)
【5位】
日産・ゴーン会長を逮捕
11,021(58.9%)
【6位】
北海道で震度7、道内全域で停電
10,957(58.6%)
【7位】
ノーベル生理学・医学賞に本庶氏
10,346(55.3%)
【8位】
オウム松本死刑囚ら元幹部の死刑執行
9,346(50.0%)
【9位】
大谷翔平、メジャー新人王に
7,912(42.3%)
【10位】
大型台風襲来、関空が冠水し孤立
7,231(38.6%)


この後の11位が安室奈美恵引退、が続きます。なお、海外ニュースを省略したのは、米朝首脳会談が2位にとどまり、タイの洞窟で少年ら全員救出がトップになっているからで、まあ、大きな話題と小さな話題という気もしますが、私にはやや疑問です。やっぱり、米朝首脳会談がダントツではないでしょうか。ご興味ある向きは、読売新聞の「読者が選ぶ10大ニュース」のサイトから、昨年2017年の10大ニュースや出来事編とともにリンクをたどれると思います。

最後に、ネット・アンケートのマクロミル・ホノテでも「2018年 重大ニュース」を明らかにしています。でも、とてもご予算をケチって、わずか1000人を対象にしたネット・アンケートなものですから、芸能関係のニュースが多かったり、地震や台風などの自然災害のニュースがなかったりと、ついつい限界を感じてしまいました。
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2018年12月26日 (水) 19:56:00

リクルートジョブズによる11月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

明後日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる非正規雇用の時給調査、すなわち、11月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を見ておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%前後の伸びで堅調に推移していて、三大都市圏の11月度平均時給は前年同月より+2.7%、27円増加の1,052円となり、2006年1月の調査開始以来過去最高を更新しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+41円、増減率+3.9%)、「製造・物流・清掃系」(+32円、+3.2%)、 「販売・サービス系」(+28円、+2.8%) 、「フード系」(+23円、+2.3%)など全職種で前年同月比プラス、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアで前年同月比・前月比ともプラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、直近の2018年9~10月は前年同月比でマイナスを続けたものの、11月統計では前年同月より18円増加、増減率+1.1%を示しています。職種別に詳しく見ると、前年同月から保合いの「クリエイティブ系」以外の「IT・技術系」(前年同月比増減額+46円、増減率+2.3%)、「オフィスワーク系」(同+34円、+2.3%)、「医療介護・教育系」(同+32円、+2.3%)、「営業・販売・サービス系」(同+3円、+0.2%)の4職種がプラスとなった一方で、前月比は「クリエイティブ系」も含めて全職種がプラスを示しています。まあ、年末を控えた11月ですから、季節調整していない前月比の結果は少し割り引いて考える必要があるのかもしれません。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトや派遣の非正規職員の雇用も堅調と私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用には注視が必要、と考えるエコノミストもいそうな気がします。
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2018年12月25日 (火) 21:55:00

6か月連続で+1%以上の上昇率を続ける企業向けサービス価格指数(SPPI)!

本日、日銀から11月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て前月からややプラス幅を縮小しつつも6か月連続の+1%以上の+1.2%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、11月1.2%上昇
日銀が25日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は105.5で、前年同月比1.2%上昇した。上昇は65カ月連続。伸び率は10月確報(1.3%上昇)からやや鈍化したが、高い伸びが続いており、前月比でも0.2%上昇した。
人件費の上昇を背景に、労働者派遣サービスなど人材関連の上昇が目立った。広告のうち新聞広告が前年同月比12.1%上昇(10月は8.0%上昇)となった。紙面削減の影響で紙面あたり単価が上昇した。半面、運輸・郵便のうち外航貨物輸送が前年同月比11.9%上昇(10月は16.5%上昇)と伸び悩んだ。


シンプルながら包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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繰り返しになりますが、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は今年2018年6月から6か月連続で+1%に達しています。その直前の5月の+0.9%の前の4月も+1.0%でしたので、今年度に入ってから、ほぼほぼ+1%に達する水準をキープしていることになります。しかも、私の見る限り、消費者物価指数(CPI)がかなりの程度にエネルギー価格の動向に依存しているのに対して、SPPIについては人手不足による賃金動向に従った動きでしょうから、品目別には毎月のように上昇品目が変化しているように見えます。野球に例えれば、日替わりヒーローということになります。本日公表の11月統計について少し詳しく見ると、前年同月比で見て、運輸・郵便と情報開発とリース・レンタルの大類別が上昇幅を下げたんですが、いずれもまだプラスを維持しており、特に、運輸・郵便は+2%を超えています。ただし、運輸・郵便についてはエネルギー価格の影響が現れていると考えるべきであり、石油価格の下落とともに上昇幅は縮小するものと私は予想しています。他方、上昇幅を拡大したのが景気に敏感な広告です。10月の+1.5%から11月には+2.7%を記録しています。引用した記事にもある通り、テレビ広告とインターネット広告の寄与が大きく、特に、インターネット広告は10月のマイナスから11月にはプラスに回帰しています。そして、相変わらず、人手不足の影響は、土木建築サービス+3.4%、警備+3.5%、労働者派遣サービス+2.8%などのを含む大類別でいえば諸サービス+1.3%に現れています。
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2018年12月24日 (月) 10:11:00

年賀状の作業を続ける!

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来年2019年の年賀状は富士山を選んでみました。初めてかもしれません。いよいよ定年退官まで3か月です。何とか、今日中に作業を終えて、明日の朝には投函したいと奮闘しています。
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2018年12月23日 (日) 20:23:00

下の倅が帰省しクリスマスのごちそうをいただく!!

大学が冬休みに入ったようで、先日、下の倅が大阪から帰省して、今夜はクリスマスのごちそうです。まあ、我が家は浄土真宗の仏教徒ですので、1~2日の違いは気にしません。ごちそうのたぐいは早めに前倒しでちょうだいします。

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今年もクリスマスのごちそうはケンタッキー・フライドチキンのパーティ・バレルでした。私がクリスマス・シーズンに外国にいたのは南米はチリとインドネシアのジャカルタだけなんですが、キリスト教国のチリではスペイン語でアサードという焼き肉でした。七面鳥を食べるのは米国くらいではないのか、という気がします。仏教徒の日本人はチキンで十分、と思わないでもありません。
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2018年12月23日 (日) 14:25:00

遠藤征志「源氏物語54帖の響 vol.1」を聞く!!

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遠藤征志「源氏物語54帖の響 vol.1」を聞きました。アルバムは全12曲収録しており、構成は以下の通りです。

  1. 桐壺 (桐壺更衣)
  2. 葵 (葵の上)
  3. 葵 (六条御息所)
  4. 若紫
  5. 花宴 (朧月夜)
  6. 末摘花
  7. 紅葉賀 (藤壺)
  8. 夕顔
  9. 花散里
  10. 空蝉
  11. 須磨
  12. 明石


私がアルバムを聞くくらいですから、奏者はジャズピアニストであり、アルバムはピアノソロです。副題は「文字の源氏を音の源氏へ」となっています。幻想的というと少し違う気はしますが、余韻のある、また、ふくらみのあるメロディと思わせぶりな奏法、という気がします。古い気はしません。なお、このアルバムはvol.1なんですが、『源氏物語』の54帖をすべてピアノソロ、かどうかは知りませんが、現代の音や曲として表現するというプロジェクトのようです。はばかりながら、私は円地文子現代訳で『源氏物語』全54帖を読んでいますが、果たして、現代日本人、というか歴代日本人でもいいんですが、そもそも音になる前の文字の『源氏物語』をどれくらいの割合で読んでいるんでしょうか。疑問が起こります。とても壮大かつ華麗なプロジェクトだと思うんですが、現代に生きる日本人にはやや壮大過ぎる気もしないでもありません。
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2018年12月22日 (土) 11:28:00

今週の読書は『宮部みゆき全一冊』や経済書をはじめ計7冊!!!

今週も、経済学や経営書を含めて計7冊、以下の通りです。来週金曜日を本年最後の開館日として、図書館は年末年始休みに入るところが多いような気がします。年末年始は少しDVDを見たり、文庫本を読んでのんびり過ごそうと予定しています。

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まず、ダン・アリエリー & ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門 お金篇』(早川書房) です。著者のうちアリエリー教授は実験経済学を専門とする研究者であり、もうひとりのクライスラーは弁護士の資格持つコメディアンだそうです。英語の原題は Dollars and Sense であり、2017年の出版です。タイトルからもお金にまつわる話が多いとされているようですが、中身はそれほどお金の話ばかりではなく、行動経済学一般の入門書となっています。ただ、こういったアリエリー教授の行動経済学の入門書は、類書も含めて、私も数冊読みましたが、どれも同工異曲であって、ツベルスキー・カーネマンのプロスペクト理論を基に、いくつか最近の実験経済学らしい実験結果を盛り込みつつも、よく似た内容が多くて、そろそろおなかがいっぱいになりそうな気がします。すなわち、相対性に幻惑されたセール価格の魅力、心の会計としてお金を分類して無駄遣いを抑制する心理、出費の痛みを軽減して支出させるマーケティング手法、アンカリングによるバイアスの発生、モノだけでなく経験も含めた所有に基づく授かり効果や損失回避、公正の実現と労力、マシュマロ・テストのような自制心の涵養、価格を過度に重視する製品ラインナップの幻惑、などなど、私のような行動経済学は専門外とはいえ、それでも何冊かのこういった本を読んでいれば、今までに見たことのありそうなトピックが満載です。私の方から、本書で取り上げられていない公正と効率のトピックをひとつ上げると、マクドナルドのマニュアルにはフォーク型の1列の行列ではなく、パラレルな平行型のレジごとに並ぶ行列を取ります。1列に順番で並ぶと、行列の先頭からレジに行くまでの時間が無駄を生じることとなり、効率を重視するとレジごとに平行で並ぶ行列が推奨される一方で、フォーク型に並ぶのはお店に着いた準晩が注文する順番と一致するわけですから公正の観点からは受け入れやすい気もします。本書では労力を費やして公正を達成する心理が取り上げられていますが、こういった効率と公正がトレード・オフの関係にある場合も少なくないわけで、本書では取り上げられていないながら、行動経済学はマンネリではなく、さらに発展の可能性があると私は評価しています。

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次に、田中靖浩『会計の世界史』(日本経済新聞出版社) です。著者は公認会計士事務所の所長であり、研究者ではなく実務の一線でご活躍のようです。本書は3部構成となっており、第1部では中世イタリアで発生した複式簿記にスポットを当て、イタリアからオランダに簿記が普及し、自分のビジネスがどうなっているかを自分で解明する、というか、お金の観点から把握する試みとして、その歴史が跡づけられます。第2部では英国から米国の大西洋を挟んだアングロサクソンの国で、ルールに則って投資家に対して情報を開示する手段としての財務会計として発展する会計が描き出されます。そして、最後の第3部では米国を舞台にビジネス展開の基礎となる情報を提供する管理会計の発達に着目します。単に、会計や経済の同行だけでなく、絵画や音楽といったハイカルチャーやポップカルチャーの動向も合わせて歴史的に跡づけながら、会計と経済社会、さらに文化も包括的に解明しようと試みています。そして、私の見る限り、かなりの程度にこの試みは成功しているんではないかという気がします。あるいは、マルクス主義的な下部構造と上部構造というのはいいセン行っているのかもしれません。オランダのチューリップ・バブルや英仏両国を巻き込んだ南海会社事件などのバブルも興味深く取り上げられています。全体として、初学者にも配慮された入門編の趣きを持って、会計の観点から西洋先進国の経済社会の歴史を解明しようと試みた本書なんですが、「会計史」を標榜するからには、中世イタリアでかなりの程度に自然発生的に始まった複式簿記のごく初期の歴史にまったく触れていないのはとても大きな欠落ではないかと私は考えています。タイプライタのキーの並びと同じで、複式簿記の開始に当たっても、何らかのエピソードがあるんではないかと私は想像しているんですが、会計史の観点から複式簿記誕生秘話のようなものが冒頭に置かれていれば、もっと印象がよくなったんではないか、という気がします。

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次に、マーク・リラ『リベラル再生宣言』(早川書房) です。著者は、もちろん、リベラルな政治史の研究者であり、米国コロンビア大学教授です。英語の原題は The Once and Future Liberal であり、2017年の出版です。軽く想像される通り、2016年の米国大統領選挙でトランプ大統領の当選を受けてのリベラルの側からの反省の書といえます。一言で言うと、2016年米国大統領選でのリベラルの敗因は、アイデンティティ・リベラリズムによる特定のグループへの特別の配慮を上から目線で恣意的に決定する市民視点の欠落である、と本書では指摘しています。それを、1930年代からのルーズベルト大統領によるニューディールに始まる時期、1980年代からのレーガン大統領による右派反動の政治期、そして、2016年のトランプ当選で新たなポピュリズム期、の3期に分けて論じています。先行きについては、第3部でリベラルが選挙で勝って巻き返すために、著者は市民の立場を強調しています。ただ、私には「市民」あるいは「市民の立場」という概念は大きな疑問です。というのは、市民の構成要員によるからです。米国では150年前の南北戦争後も、おそらく、1960-70年代くらいまで黒人は市民の構成要素ではなかったのではないでしょうか。さらに、その前の時代では女性は市民ではなかった可能性が高いと私は考えていますし、21世紀の現代でも、例えば、イスラム教徒の移民は市民に入れてもらえない場合がありそうな気がします。2008年の米国大統領選の際の当時の現職だったオバマ大統領に対する執拗な批判もその観点ではなかったでしょうか。ですから、私は従来から指摘しているように、リベラルないし左派というのは進歩主義で測るべきと考えています。私は圧倒的に進歩史観であり、多少のジグザグはあっても、生産性は伸び続け、そのため、財やサービスの希少性は低下し、従って、価格は低下し、その昔は金持ちしか利用可能性がなかった財やサービスが広く一般に開放される、という未来を思い描いています。その前の段階では市場において希少性に従った配分がなされるわけですから、それが平等の観点から不都合であれば、再分配を政府が行う必要があるわけです。それすら必要なく、市場に従った配分の下で決定され、平等性には配慮されていないままですから、自由を重視する右派と平等、あるいは、平等を実現するために進歩を旗印にする左派あるいはリベラル、という視点が重要ではないか、と専門がいながら私は考えています。

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次に、リチャード・ブリビエスカス『男たちよ、ウエストが気になり始めたら、進化論に訊け!』(インターシフト) です。著者は、米国イェール大学の人類学や進化生物学の研究者であり、上の表紙画像に見られる通り、英語の原題は Hoe Men Age であり、2016年の出版です。ということで、人類学と生物学の学際的な研究成果、ということであれば、とても聞こえはいいんですが、私の目から見て、進化論的な適応と経済社会的な適応がゴッチャになっている印象で、どこまで区別出来るのか出来ないのか、あるいは、本書のように渾然一体として論じるのが正しいのか、私には判りかねますが、少し疑問に思わないでもありません。加えて、確かに、WEIRD=West; Educated; Rich; and Democraric な男性の老化を論じているわけですが、女性との違いが小さすぎるような気がします。本書で強調されている免疫力の男女差がひいては寿命の差につながる可能性はまだしも、特に、日本語タイトルにしてしまったウェストのサイズは男女ともに年齢とともに太るわけであり、程度差はあるかもしれませんが、年齢とともにウェスト周りが太るのは男女間で方向は同じであるような気がします。そして、結局のところ最後は、オキシトシンとか、テストステロンとかのホルモン、というか、脳内分泌物質に行き着くわけで、それはそれでOKだと私は考えるんですが、同じか別か、進化論的・生物学的な適応や自然選択と経済社会的な適応について、さらに両者のインタラクティブな関係やフィードバックについて、また、男女の性差についても、もう少し掘り下げた議論が欲しかった気がします。最後に、p.127 図4-1 の出展論文の著者なんですが、Kunert とありますが、ウムラウトが付く Künert だと思います。少子化の関係で、私のような専門外のエコノミストでも見た記憶があり、編集の方にはもっと正確を期して欲しいと思います。

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次に、赤上裕幸『「もしもあの時」の社会学』(筑摩選書) です。2016年にオックスフォード辞書でポスト・トゥルースが選ばれて以来、フェイク・ニュースをはじめとして、真実ではない「なにか」をターゲットにした論考が少なくありませんが、本書では1997年出版のニーアル・ファーガソン教授の「仮想歴史」を題材にして、反実歴史、すなわち、事実として確定した過去に歴史に対して、そうでない反事実の歴史を仮定してその後の歴史の同行や流れを考察した社会学、というか、私のは歴史学にしか見えませんが、そういった人文科学分野の学問について紹介しています。典型的に反事実を考えるには戦争の勝者と敗者を逆にすればいいわけで、我が国のSF文学でも半村良の一連のシリーズや第2時世界大戦で日独が英米に勝利する仮定で歴史の流れを考えるSFに近い文学もあります。ただ、本書を読む限り、歴史の流れについての基礎的な認識が私と違っている気がします。すなわち、マルクス主義的な唯物史観に近い私は歴史の流れは、生産性の向上という流れが貫徹しており、基本的に進歩史観ですから、典型的には、コロンブスが米大陸を発見しなかったとしても、結局、誰かが発見していたであろうし、歴史の分岐以降、永遠に離れることはない、と考えているのに対して、本書の歴史観はどうもハッキリしません。私のようなホイッグ的なマルクス主義的な歴史観では、反事実な歴史の分岐があったとしても、例えば、第2時世界大戦で日独枢軸国側が勝利していたとしても、歴史はカギカッコ付きながら「修復」され、結局、自由と民主主義が勝利する方向に変わりなく、やや寄り道するとしても、世界は進歩を止めることはない、ということになります。その基礎となるのは経済の生産性であり、物的な生産性が高まれば、経済学的な希少性が低下し、そのため、価格が低下して、かつてはごく少数の人、すなわち金持ちしか利用可能性がなかった財・サービスでも多くの人に利用可能性が開け、必要に応じて配分されるシステム=共産主義が実現される、それも、血なまぐさい革命なしに経済の生産性向上がそれを実現する、ということになっており、その意味で、私の進歩史観はとても単純で判りやすいんですが、本書の歴史観は私にはやや不可解であった気がします。

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次に、ロバート H. ラティフ『フューチャー・ウォー』(新潮社) です。著者は米国空軍を少将まで務めて退役したエンジニアであり、英語の原題はそのまま Future War となっていて、2017年の出版です。日本語タイトルの副題が『米軍は戦争に勝てるのか?』となっていますし、宣伝文句ながらAIが戦争や戦闘行為をどのように変えるのか、といった視点が強調されていたりしますが、まあ、そういった私のような一般大衆が興味を持ちそうな論点も含めて、極めて幅広くかつバランスよく論じています。ただ、主要な論点は2点に絞られ、すなわち、兵器の技術的進歩と人間あるいは先頭の先頭に立つ可能性あるロボットなどの倫理性です。前者については、「サイバー攻撃」なんて言葉が広まっていますし、伝統的な戦闘行為だけでなく、電力や水道などのライフラインに対するサイバー・アタックも私のような専門外の一般大衆ですら想像できるような世の中になっています。20世紀半ばから現在まで飛行機が空軍の創設に導いたように、兵器の技術的進歩が軍事組織の再編成を伴いつつ進んでいます。核兵器の開発はその最たるものといえます。今週になって、米国のトランプ大統領が宇宙軍 (Space Force) の創設を明らかにしましたが、これも技術的な裏打ちあってこそのことではないでしょうか。もうひとつの倫理性については、時代の進歩とともに国際法も倫理面を重視するように進歩していることは確かなんですが、本書の用語を用いれば、国際法の縛りを受けない「国家未満」のグループがテロ行為に及ぶケースが増えており、なかなか終息の兆しもありません。ただし、本書のように戦闘行為ではなく、戦争を全面に押し出せば、戦争で倫理を問うのは私には無益なことに見えます。つまり、戦争そのものが倫理性に欠けるからです。例えば、銃に実弾を装填して人間に狙いを定めて引き金を引けば、戦争状態ではないという意味で、通常であれば明らかに殺人を試みた行為として、何らかの法律で裁かれる可能性がありますが、戦争においては敵兵に対して銃をぶっ放すのは、もちろん、その結果として死亡させるのも明らかに免責されます。そのような非倫理的な戦争において、捕虜の扱いとか、毒ガス使用などを倫理や道徳の観点からいくら論じても、かなり無益な行為のように私には思えるんですが、いかがでしょうか。

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最後に、宮部みゆき『宮部みゆき全一冊』(新潮社) です。昨年だか、今年だかに、作家活動30年を迎えた人気作家の未収録短編やインタビュー、書評を含むエッセイを幅広く収録するとともに、何と、ご本人による『ソロモンの偽証』の朗読CDも付属しています。私が借りた図書館は、もちろん、CDごと貸してくれました。確か、昨年の『この世の春』が30年記念の出版だったように記憶していますが、時代小説だったので、私のはあまりピンと来ませんでした。というのも、私はこの作者の作品は、もちろん、広範に読んでいるんですが、どうしても時代小説は後回しになって、現代ものが中心です。そして、宮部みゆきの最高傑作ということになると、直木賞受賞の『理由』や山本周五郎賞受賞の『火車』などが上げられる場合が多いんですが、倒叙ミステリながら私は『模倣犯』を推すことが多いような気もします。ただ、やっぱり、『模倣犯』を超えるとすれば、『ソロモンの偽証』も最高傑作の候補になろうか、という気もします。ということで、最高傑作が何かということはさて置いて、本書では、今までバラバラだったインタビューや鼎談などのナラティブを一挙に読めるという意味で貴重な存在ではないかと受け止めています。まだ、CD-ROMは聞いていませんので、何ともいえませんが、年末年始休みに聞いてみるのも楽しみです。
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2018年12月21日 (金) 20:55:00

消費者物価指数(CPI)上昇率はエネルギーの寄与縮小するも+0.9%の上昇率!

本日、総務省統計局から11月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。でみて、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月からやや上昇幅を縮小して+0.9%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の全国消費者物価、0.9%上昇 エネルギーの寄与度が縮小
総務省が21日発表した11月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合が101.6と前年同月比0.9%上昇した。上昇は23カ月連続。10月(1.0%上昇)に比べて伸び率が縮小した。エネルギー関連項目が引き続き押し上げに寄与したものの、足元の原油安を背景に寄与度は前月に比べて低下した。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は1.0%上昇だった。生鮮食品を除く総合を季節調整して前月と比べると横ばいだった。生鮮食品を除く総合では、全体の52.8%にあたる276品目が上昇した。下落は178品目、横ばいは69品目だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合は101.3と前年同月比0.3%上昇した。外食など生鮮食品を除く食料の上昇が目立った。たばこ税の増税に伴い、たばこも上昇した。
生鮮食品を含む総合は101.8と0.8%上昇した。伸び率は前月(1.4%上昇)に比べて縮小した。前年よりも気温が高く推移した影響で、レタスやホウレンソウといった生鮮野菜が下落した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は前月と同じ+1.0%と見込まれていましたので、やや下振れした印象がありますが、国際商品市況における石油価格の動向に影響された結果ですので、まあ、こんなもんかという気もします。例えば、生鮮食品を含む総合のベースの前年同月比上昇率で見て、ガソリンの寄与度が10月には+0.36%ありましたが、11月には+0.26%まで縮小し、寄与度差は▲0.09%となっています。灯油も同様に寄与度差が▲0.01%あり、石油製品全体での下振れ要因となっていますから、生鮮食品を除くコアCPI上昇率の縮小幅▲0.1%をほぼほぼすべて石油製品価格が説明しています。ただし、1点だけ補足すると、11月の全国CPI前年同月比上昇率は前月から▲0.1%縮小しましたが、東京都区部CPIについては11月上昇率は前月から変わりありません。これは、東京が全国に先行しているというよりは、ガソリンのウェイトの違いではなかろうかと私は受け止めています。ですから、先行きについても、石油価格の動向が参考になります。私自身は、日経新聞電子版の商品欄のドバイ原油をチラチラと見ているだけで、データとして体系的に観察しているわけではないものの、10月上旬にはバレル80ドルをラクに超えていたんですが、今朝の時点では50ドル台半ばから前半にまで下落を示しています。私がいくつかのシンクタンクのリポートなどを拝見した範囲でも、来年半ばにかけて石油価格の全国CPIへの寄与度はゼロ近辺まで低下するとした予想も少なくありません。もちろん、石油価格動向に従って我が国の物価上昇率も低下する可能性があります。来年2019年10月からの消費増税に伴う景気対策では、かなり手厚い税制出動が見込まれていますので、消費増税で需要がショックを受けて需給ギャップが拡大し、これに起因してさらに物価が下振れする恐れは小さいと私自身は考えていますが、物価動向はこの先も上昇幅を拡大するとは考えにくいため、日銀がどこまでフォワード・ルッキングに金融政策運営をするかを私は注目しています。
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2018年12月20日 (木) 22:01:00

世界経済フォーラム「ジェンダー・ギャップ指数」に見る我が国の男女格差やいかに?

去る12月17日、世界経済フォーラムから「世界ジェンダー・ギャップ報告2018」The Global Gender Gap Report 2018 が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。ジェンダー・ギャップ指数で見た男女格差で、我が国は世界110位と2017年の114位から順位を上げたとはいえ、先進国の中では大きく遅れている現状が改めて明らかにされています。諸般の事情により、今夜は帰宅が遅くなりましたので、ジェンダー・ギャップ指数に関するグラフをリポートからいくつか引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポート p.8 Figure 1: Gender gap by country, 2018 を引用すると上の通りです。一番上のアイスランド、ノルウェイ、スエーデンから始まって、真ん中少し下に濃い色の帯があって、Global Average が示してあります。その下12-3番目くらいが我が日本です。繰り返しになりますが、昨年の114位からやや順位を上げたとはいえ、今年もまだ110位です。中国よりも、インドよりも下位に甘んじています。

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ということで、リポート pp.139-40 Country Profiles から日本のレーダーチャートを引用すると上の通りです。教育や健康はまずまずなんですが、特に、Political empowerment のスコアが悪いのが下位に甘んじている大きな要因です。議会における女性のプレゼンスも低いんですが、最近50年で女性が国家のトップを務めたスコアはゼロだったりします。
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2018年12月19日 (水) 20:11:00

石油価格上昇のため2か月連続で貿易赤字を記録した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から11月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+0.1%増の6兆9276億円、輸入額は+12.5%増の7兆6649億円、差引き貿易収支は▲7373億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の貿易収支、7373億円の赤字 原油高で輸出増
財務省が19日発表した11月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7373億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。輸出入ともに増加したが、原粗油を中心に輸入の増加が上回った。QUICKがまとめた民間予測の中央値は5796億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比0.1%増の6兆9276億円だった。増加は2カ月連続。船舶の大幅な増加がけん引したほか、有機化合物も伸びた。半導体等製造装置や通信機は減少した。
輸入額は12.5%増の7兆6649億円。8カ月連続で増加した。サウジアラビアから原粗油の輸入が増加した。液化天然ガス(LNG)や石油製品も増えた。11月の原粗油の円建て輸入単価は40.8%上昇した。
11月の対米国の貿易収支は6234億円の黒字で、黒字額は5.4%減少した。減少は5カ月連続。輸出は1.6%増、輸入は8.1%増だった。対中国の貿易収支は5031億円の赤字だった。
11月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=112円99銭。前年同月に比べて0.5%円高・ドル安に振れた。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、引用した記事にもある通り、a target="_blank" href="https://www.nikkei.com/article/DGXLMSE2QET16_U8A211C1000000/" title="11月輸入超過額、5898億円・QUICK調査">日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲6000億円弱の貿易赤字が見込まれていましたので、やや赤字幅が大きい印象もあるんですが、基本的には、国際商品市況における石油価格の上昇に伴う輸入額の増加に起因する貿易赤字だと私は認識しているんですが、もちろん、輸出の伸びが大きく鈍化していることも忘れるべきではありません。輸出については別途考えるとして、石油価格については、ニッセイ基礎研のリポートなどから私が知りえた情報では、ドバイ原油価格は11-12月にかけて低下を示しているハズなんですが、本邦到着ベースではまだ高値が続いているようで、1-2か月のラグがあるようです。ですから、利用可能な限りの情報を総合すれば、原油価格に起因する輸入額の増加は、おそらく、11月がピークとなる可能性が高い、と私は見込んでいます。ひとつのエビデンスとしては、上のグラフの季節調整していない原系列でも、季節調整済でも、赤い折れ線の輸入額が10月から11月にかけて、ほぼ横ばいないし下向きになっている点が上げられます。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、輸入額の増加がそろそろピークアウトする可能性が高い一方で、輸出についてはさらに減速が強まった印象があります。9月の自然災害による供給面や物流面での制約から輸出数量が前年比で減少した後、10月にはリバウンドもあってプラスに転じましたが、11月の輸出数量は再び前年度月比でマイナスを記録しています。加えて需要面を考えれば、ここ数か月、上のOECD先行指数の1か月リードのグラフに即していえば、先進国の需要が下向きで今年2018年年央から前年比でマイナスに下落する一方で、中国では逆に年後半から上向きになったとはいえ、まだ伸び率としては前年比マイナスを続けているわけですから、我が国の輸出に対する需要要因としてはかなり弱くなっていることは事実です。今後は、自然災害の供給面での影響はほぼほぼ脱したとはいえ、需要面で、上向きの中国の持続力がどれくらいで、しかも、米国との貿易摩擦の影響がどのタイミングでどれくらいの大きさで出るのか、先進国の下向きの需要がどこで下げ止まるのか、といった複雑な要因を考えあわせる必要があります。ただ、直感的には需要要因から我が国輸出の伸びはさらに減速する可能性が高い、と私は考えています。ただし、それ以上に輸出額の減少が大きい可能性は残されています。
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2018年12月18日 (火) 23:26:00

インテージによる「2018年好調カテゴリーランキング」の売れ筋やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、ほぼ1週間前の12月12日にインテージから「2018年好調カテゴリーランキング」が明らかにされています。サバ缶とサラダチキンがともに前年比約1.5倍で1~2位を占めました。12月2日付けのこのブログで取り上げたSMBCコンサルティングのヒット商品番付とはまた違った角度から、最近の時流を的確に反映しているような気もします。グラフとともに簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上の棒グラフはインテージのサイトから 購入額の伸び を引用しています。見れば明らかなんですが、サラダチキンとサバ缶が飛び抜けており、前年比で1.5倍を記録しています。さらに無糖炭酸水、ビネガードリンクと続く今年のランキングの特徴は「健康志向」と「手軽さ」ではないかとインテージでは分析しています。体によいものを、あまり手を加えず摂取できるという2つの機能を盛り込んだカテゴリーのようです。でも、私が疑問に思うのは無糖炭酸水です。外国ではガス入りのミネラルウォーターということになるんですが、手軽であることはいいとして、健康志向なのかどうかは疑問です。私はチリに駐在していたころにガス入りのミネラルウォーターを愛飲していましたが、それは、ガス入りにしておくとごまかしが利かないからであって、それほどおいしくも、健康的でもないような気がします。まあ、好みの問題です。

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次に、上の棒グラフはインテージのサイトから サラダチキンとサバ缶の市場規模と商品数の推移 を引用しています。サラダチキンについては、プレーンから始まり、ハーブ、カレー、ゆず胡椒など味のバラエティが増加して、当然ながら、商品数も伸びています。サラダチキンもサバ缶も、売り上げが伸びて商品数が伸びる、との好循環に入っているわけです。企業も商品開発に熱心取り組んでいるのだろうと想像されます。

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最後に、上の棒グラフはインテージのサイトから 購入率と購入金額の伸び を引用しています。見れば判る通り、男女別年代別になっています。直感的には、女性は横に伸びて購入率が高まる一方で、男性は縦に伸びて購入金額が増加している印象です。女性は特に30代から60代までの家庭で料理をしている層の購入率が高まっており、女性だけでなく家族の一員であると考えられる男性にも消費量の増加が波及しているような気がします。

繰り返しになりますが、12月2日付けのこのブログで取り上げたSMBCコンサルティングのヒット商品番付ほど、何といいますか、華やかにビジネス界の注目を集めた商品ではないとはいえ、家庭の食生活で近年大いに幅を利かせ始めたサラダチキンとサバ缶に関する興味深い数量的エビデンスであったと思います。
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2018年12月17日 (月) 23:28:00

そろそろ苦手な忘年会シーズンが始まる!

そろそろ、今週あたりから忘年会シーズンが本格化ます。私はそれなりに酒は飲むんですが、忘年会はやや苦手だったりします。実は、私は忘年会の頻度や豪華さなどで、その時点の景気のひとつの目安として、それなりに注視しているんですが、今年は昨年ほどよくないと見ました。ただし、ご同様の指標となる年末のカレンダーや手帳の配布は堅調です。さて、我が国景気動向やいかに。
下の画像は今年に入ってからの私のボディマス指数(BMI)です。7月下旬の梅雨明けのころからの猛暑効果で体重が落ちて、しばらく、そのままだったんですが、12月に入ってからスパイクしているのは、おそらく、何らかのイベントで飲み食いしたんではなかろうかと思います。

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やや無理やりに「経済評論のブログ」に分類しておきます。
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2018年12月16日 (日) 16:25:00

今朝は今季一番の冷え込みでいよいよ本格的な冬に突入!

ウェザーニュースによれば、「各地で今季一番の寒さ 東京都心で『初霜』大阪で『初氷』観測」だそうです。
私はその昔から朝に弱かったんですが、60歳に達してそろそろ「老人性早起き」になりつつあり、週末の土日でも平日と同じように起きてたところ、今朝はさすがに10時近くまで寝坊しました。朝寒かったんだろうと思います。いよいよ本格的な冬に入り、「南岸低気圧」も通るそうですので、地球環境の大きな変化により気候が激しくなる方向に振れている気もします。年齢とともに、寒さがこたえる域に達していますので、体調管理に注意したいと思います。
下の画像は今朝のウェザーニュースのサイトから引用しています。

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2018年12月15日 (土) 11:49:00

今週の読書は経済書中心にボリュームたっぷりの計6冊!!

今週はいろいろあって、経済書を中心、というのは通例通りなんですが、小説や新書なしで以下の通りの計6冊でした。いつもと変わらぬ冊数なんですが、今週の読書では、1冊1冊のボリュームがかなりあり、400ページを超える本も少なくなかったので、経済書中心の質感とページ数の量感ともに、かなり充実した読書だったような気がします。

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まず、安達誠司・飯田泰之[編著]『デフレと戦う-金融政策の有効性』(日本経済新聞出版社) です。著者・編者は、巷間、よくリフレ派と呼ばれているエコノミストであり、私の知り合いはもちろん、その昔にミク友だったところ、mixiが廃れるとともにやや疎遠になった方、あるいは、その昔に書いた論文の共著者も含まれていたりします。ですから、私にはとてもスンナリと頭に入ってくる論文集でした。冒頭の編者によるエディトリアルを読めば、各チャプターの概要や結論は明らかですが、基本的に、現在の黒田総裁の下での日銀の異次元緩和をサポートする内容となっています。その中でも、特に私の印象に残ったのは、第1章では、p.35の図1-5に見られるように、多くのエコノミストの直観的な理解と整合的にも、日銀の金融緩和が生産に及ぼした影響についてVARプロセスで分解すると、株価を通じた影響がもっとも大きい、というものです。ほかに、ブロック・リカーシブ型のVARプロセスの応用、フィリップス曲線のレジーム転換、連邦準備制度理事会(FED)の議長も務めたバーナンキ教授の研究にも応用されたファイナンシャル・アクセラレータに着目した分析、ソロス・チャートとして人口に膾炙したマネタリーベースの為替への影響、さらに、企業パネルデータを用いた為替の影響の分析、各種の予想インフレ率のパフォーマンス測定などなどですが、第8章では定量分析というよりも理論モデル分析で財政政策の物価理論(FTPL)についてサーベイがなされています。ただ、やや厳しい見方に過ぎるかもしれませんが、物価目標達成の時期については何らかの分析は欲しかった気がします。副総裁就任時の国会での所信表明で、当時の副総裁候補であった岩田教授は「2年で達成できなかったら辞任する」と見得を切ったわけですから、現在の金融緩和政策が有効であるとの分析結果を示すだけでなく、動学的というと少し違うのかもしれませんが、どういった期間で物価目標が達成できるのか、についての分析が今後進むよう期待しています。

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次に、岩田規久男『日銀日記』(筑摩書房) です。著者は、ご存じの通り、リフレ派の経済学者から日銀副総裁として金融政策の現場に乗り込み、今年2018年春に退任しています。就任前の国会での所信表明で、2年間で物価目標2%を達成できなければ辞任すると大見得を切って話題になったりもしました。そして、本書では、その2%の物価目標を達成できなかった最大の要因として、2014年4月の消費増税によるリフレ・レジームの転換と国際商品市況における石油価格の下落によるコスト面からの物価下押し圧力を上げています。リフレ派エコノミストの末席を汚している私にはとても判りやすい内容でした。ただ、後に取り上げる権丈先生のご本にあるように、手にした学問が異なれば答えは違ってきますので、私と同じ意見かどうかは手にした学問次第かもしれません。ただ、アベノミクス登場前のリフレ的な経済政策は、どうしても日陰の花だっただけに、本書でもかなり過激な言説が現れています。こういったあまりに率直な、率直すぎる議論の展開で、逆に、リフレ派経済学が国民一般から遠ざかった点は反省が進んでいると私は考えていたんですが、公職を退かれた勢いもあるとはいえ、やや下品に感じる読者もいるかも知れません。そういった率直すぎる感想は、特に、アベノミクスの登場とともに野党に転じた副総裁就任当時の民主党議員との国会論戦に典型的に見受けられます。それを総称して「経済音痴」と表現されていますが、米国のクリントン大統領のころの選挙キャンペーンで人口に膾炙した "It's the economy, stupid!" ということなのだろうと思います。要するに、「経済音痴」であれば選挙に勝てず、政権から脱落する、あるいは、政権を取れない、ということです。

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次に、ダーシーニ・デイヴィッド『1ドル札の動きでわかる経済のしくみ』(かんき出版) です。著者は英国HSBC銀行の立会場でエコノミストとして働いていたときにBBCにヘッドハンティングされキャスターに転身したキャリアの持ち主です。ファーストネームから私はインド系を想像します。英語の原題は The Almighty Dollar であり、2018年の出版です。ということで、世界の基軸通貨たるドルがどのように世界を駆け巡るか、同時にその逆方向にどのような財サービスがドルと交換されるか、について、それぞれのドル札の行き先の国とともに経済現象について、極めて上手に取りまとめています。最初はドル札が米国の消費者によって中国製のラジオを買い求めるのに使われ、もてん派的な比較生産費説による交易の利益が解説され、ドル札の行き先の中国の為替制度に関連して変動相場と固定相場の説明があり、石油と交換されてナイジェリアに注目されて石油開発のための直接投資について、さらに、インドではロストウ的な経済の離陸と発展段階説などの開発経済学とともに、モディ政権下での高額紙幣の廃止による混乱、などが取り上げられ、最後の方では金融資産の購入の意味やバブルとその終息によるリーマン証券の破たんに伴う経済の収縮に触れています。お約束のように、英仏の南海バブルやオランダのチューリップ・バブルにも言及しています。全体として、繰り返しになりますが、とてもよく取りまとめられています。そもそも通貨や貨幣がどうして物々交換に取って代わったかは、とてもシンプルに説明しているのはいいとしても、いきなり基軸通貨の米ドルから始まっていて、英ポンドが米ドルに取って代わられた、という歴史的事実も付け加えて、基軸通貨が交代する可能性についても、もう少し非経済的な要因とともに取り上げて欲しかった気がします。でも、経済に詳しいビジネスパーソンなどは物足りないと感じるかもしれないものの、初学者の大学生とかにはとてもよく出来た経済の解説書だと私は考えます。

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次に、ティム・ハーフォード『50 いまの経済をつくったモノ』(日本経済新聞出版社) です。著者はファイナンシャル・タイムズ紙のジャーナリスト・コラムニストです。英語の原題は Fifty Things That Made the Modern Economy であり、2017年の出版です。ということで、50の財・サービス・システムなどを上げて、ただし、決して重要性の観点から順序付けをしたのではないと著者は断りつつ、近代社会成立への貢献を明らかにしています。50の項目は出版社のサイトにありますので、ご興味ある向きは参照できます。パフォーマンスを保存できる蓄音機、もちろん、現在の電子本やデジタル録画されたDVDなども含めて、その蓄音機などからスーパースター経済の1人勝ち経済社会の基礎ができ、有刺鉄線による囲い込みから私有財産が守られるようになり、などなどなんですが、制度学派が財産権の確立をもってイングランドにおける産業革命の発生の要因としているくらいですから、本書にそのような明記なくとも、そういったバックグラウンドを知っておくとさらに本書の読書が楽しめるかもしれません。加えて、本書では冷凍食品に関連してTVディナーの功罪を取り上げるなど、本書で着目された50のコトが近代社会を作り上げた重要な要素とはいえ、必ずしも、経済社会が倫理的・道徳的に正しい方向に導かれたかどうかは一部に懐疑的な姿勢を示しています。とくに、最後の電球の第50章で、100年前の年収7万ドルと現時点での年収7万ドルのどちらの生活が望ましいか、と大学生に問えば、かなりの学生が100年前に圧倒的に実質価値の高かった年収7万ドルよりも、現時点での年収7万ドルを選ぶ、というポイントは外せません。物価をはじめとする統計に表れない近代・現代生活の利点がいっぱいあるわけです。そして、こういった利点をもたらした発明・発見に本書では焦点を当てています。Google検索やiPhoneといった現在のデジタル・デバイス、銀行・紙幣・保険に有限責任株式会社などの現在経済の基礎的なシステム、紙や時計やプラスチックなどの近代社会の不可欠だったモノ、などとともに、とても意外なモノや制度なども取り上げられています。例えば、日本ではピル解禁が遅れたので女性の社会進出が進まなかった、などの観点も私には目新しかったりしました。その意味で、なかなか興味深く、近代ないし現代の経済社会を論じる好著でした。

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次に、権丈善一『ちょっと気になる政策思想』(勁草書房) です。著者は慶應義塾大学の研究者であり、社会保障の分野の専門家です。従って、短期的な合理性や整合性とともに、長期的なサステイナビリティにも目が行き届いたエッセイに仕上がっていますが、講演やスピーチなどのオーラルなプレゼンをいくつか収録していますので少し重複感を感じる読者はいるかもしれません。冒頭に著者から著書がシリーズ化される弱点があるとの指摘がありますが、私は不勉強ながらこの著者のご本は初めて読みましたので、それなりに新鮮でした。ということで、まず、著者は、需要サイドの経済学を左側、供給サイドの経済学を右側と定義し、現在のような一部の消費の飽和が見られるような経済社会ではなく、その昔の必ずしも生産力が十分に発達しておらず、作れば売れる時代の供給サイド分析を中心とする右側の経済学から、スミスやリカードをはじめとして、究極のところ、セイの法則などが出現した、と分析し、他方で、左側の経済学はケインズの直前のマルサスを起源に据えています。そして、その観点から社会保諸、特に年金の政策思想を分析しようと試みています。特に強調しているのが、社会保障に限らず企業活動もご同様と私は考えるんですが、将来に対する不確実性です。すなわち、シカゴ学派のナイト的なリスクと不確実性の区別に基づき、確率分布が既知であるリスクに対して、事前には情報のない不確実性があるからこそ、貨幣と実物を二分する貨幣ベール説からケインズ的な流動性選好の学説が生まれ、将来の不確実性への対処のひとつの形として貨幣が保蔵される、と主張します。その上で、経済成長とともに平等と安定の実現による経済厚生の向上を政策目標と示唆しています。なお、私が深く感銘したのは、手にする学問が異なれば答えが変わる、という著者の主張です。名探偵コナンではありませんが、よく理想的に真実はひとつとの主張も見かけますが、私は実務的に経済政策に携わって30年超ですから、何となく理解できます。ニュートン的に表現すれば、どの巨人の肩に乗るかで見える風景が違うんだろうという気がします。

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最後に、片岡義男『珈琲が呼ぶ』(光文社) です。小説家の手になるコーヒーに関するエッセイです。ただ、もうすぐ幕を閉じようとしている平成のエッセイではなく、昭和のエッセイです。ですから、本書では「グルメ・コーヒー」と称されているスターバックスとかのプレミアム・コーヒーではなく、伝統的な喫茶店で飲むコーヒーを主眼にしています。その喫茶店の立地は東京が中心なんですが、本書冒頭ではなぜか、京都が中心に据えられていたりします。私は京都大学に通っていましたから、それなりに、京都における昭和の喫茶店は詳しいと自負していたんですが、ほとんど知らないところでしたので、やや不安を覚えたりもしましたが、まあ、こんなもんなんでしょう。こういったエッセイを読んでいると、私自身も片足突っ込んでいるんですが、年配の読者層を意識した本の出版がこれからも増えそうな気がして、少し怖いです。
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2018年12月14日 (金) 23:42:00

日銀短観は底堅い企業マインドを示し設備投資計画は上方修正!

本日、日銀から12月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から変わらず+19を記録した一方で、本年度2018年度の設備投資計画は全規模全産業が前年度比+10.4%の増加と9月調査の+8.5%からさらに上方修正されました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月日銀短観、大企業・製造業DIは横ばいのプラス19 市場予想上回る
日銀が14日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス19だった。前回9月調査から横ばいだった。
企業収益の拡大傾向や7~9月期の自然災害の悪影響の一巡や復興需要などが支えとなった。造船・重機等のほか、石油・石炭製品の改善が目立った。半面、海外需要や設備投資の鈍化を受けて生産用機械や業務用機械が悪化した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。12月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス17を上回った。回答期間は11月13日~12月13日で、回収基準日は11月28日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス15と悪化する見通し。市場予想の中央値(プラス16)を下回った。米中貿易摩擦に対する警戒感が聞かれ、海外需要の先行きに対する不透明感が強かった。
18年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=109円41銭と、実勢レートより円高・ドル安だった。前回(107円40銭)からは円安方向に修正された。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス24と前回を2ポイント上回った。改善は2期ぶり。国内消費は堅調に推移しており、景況感が改善した。業種別では通信や不動産などが改善した。3カ月先のDIは4ポイント悪化のプラス20だった。人手不足や人件費の上昇などが重荷となった。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス23となり、前回と同じだった。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。
18年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比14.3%増と、市場予想の中央値(12.5%増)を上回った。前回(13.4%増)から上方修正した。


やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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まず、引用した記事にもある通り、企業の景況感は日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスを上回りました。今年春ごろから、企業マインドはやや下降気味と私は考えていたんですが、意外と堅調ないし底堅いと評価できようかと考えています。その要因としては、国際商品市況における石油価格がようやく頭打ちとなって、まだまだ原油価格は高いものの、さらに先行き上昇するという雰囲気ではなくなった点と、9月にやや集中した自然災害の悪影響が一巡したことが大きな要因と私は受け止めています。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。特に、雇用人員については規模の小さい中堅企業・中小企業の方が大企業より採用の厳しさがうかがわれ、人手不足幅のマイナスが大きくなっています。入管法改正による外国人材の受け入れについても、まだ未確定な要素が大きいと受け止めている企業が多そうです。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2018年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で異例の▲0.7%減という高い水準で始まった後、6月調査では+7.9%増に大きく上方改定され、9月調査ではさらに+8.5%まで高まった後、今日発表の12月調査では+10.4%まで上方改定されています。上のグラフを見ても判る通り、6月調査以降の今年2018年度の設備投資計画はかなり高い伸びを見込んでいてる、というか、ここ数年の設備投資計画をぶっち切りで上回っています。もともと、企業の手元にあるキャッシュフローは潤沢な上に、失業率が2%台前半まで低下した人手不足へ対応した合理化・省力化投資需要の高まり、加えて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを視野に入れ、今年度2018年度の設備投資は大いに期待できそうです。
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2018年12月13日 (木) 21:21:00

2018年今年の漢字は「災」!

いろいろあって、1日遅れの話題ですが、昨日午後、今年の漢字に「災」が選ばれました。私は実は「力」で投票したんですが、何とか20位以内に入るのが精一杯だったようです。
下の写真は、どこから引用したのか忘れてしまいましたが、いつもの通り、清水寺での今年の漢字の揮毫です。

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2018年12月13日 (木) 19:44:00

明日公表予定の日銀短観予想やいかに?

今週金曜日14日の公表を明日に控えて、シンクタンクから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2018年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、足元から先行きの景況感に着目しています。一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
9月調査 (最近)+19
+22
<+8.5%>
n.a.
日本総研+21
+23
<+9.3%>
先行き(2019年3月調査)は、全規模・全産業で12月調査対比▲1%ポイントの低下を予想。雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費の持ち直しが期待されるほか、政府の消費増税対策への期待感が景況感の下支えに作用。もっとも、中国経済の減速や、米国トランプ政権の保護主義姿勢の強まりなど、海外情勢の先行き不透明感が重石となり、慎重な姿勢が残る見通し。
大和総研+19
+21
<+9.1%>
2018年の業況感は、生産活動の足踏み、コスト上昇、貿易戦争懸念、自然災害などの要因から、悪化傾向が続いた。しかし、少なくとも自然災害の悪影響は一巡している。また、先行きを見通しても、原油価格下落に伴う交易条件の改善は好材料となる。また、2019年度の懸案事項であった消費増税の影響は、財政拡張によって大部分が相殺されるとみられる。業況感の悪化モメンタムは一旦緩和する公算が大きい。
みずほ総研+18
+22
<+7.5%>
先行きの製造業・業況判断DIは小幅な悪化を予測する。
中国経済の減速や米中貿易摩擦などの要因から、世界経済の減速懸念が広がっており、企業マインドを下押しするとみている。加えて、年明けには日米間で物品貿易協定(TAG)に関する議論が本格化するとみられる。仮に自動車に関税がかかった場合、自動車だけでなくそれ以外のあらゆる業種に影響が出る恐れがあり、TAGを巡る状況次第では、今後の企業景況感を更に押し下げかねない点には注意が必要だ。
非製造業については、先行き堅調な推移を見込む。冬季賞与や良好な雇用環境を背景に個人消費は回復するとみられ、小売業やサービス業の業況は改善するだろう。また、オリンピックやインバウンド対応需要も、引き続き改善の押し上げに寄与するとみている。ただし、労働需給のひっ迫に伴う人件費上昇が引き続き下押し要因となり、改善は限定的となるだろう。
ニッセイ基礎研+16
+20
<+8.3%>
先行きの景況感も幅広く悪化すると予想。製造業では、海外経済減速や貿易摩擦激化に対する懸念が示されそうだ。米中貿易摩擦の終結は依然として見通せないうえ、来年初からは日米通商交渉が開始され、米政権による対日圧力が強まることが想定される。非製造業もインバウンドを通じて世界経済との繋がりが強まっているだけに海外情勢への警戒が現れやすいほか、人手不足深刻化に対する懸念も現れそうだ。
第一生命経済研+17
+21
<大企業製造業+15.6%>
先行きの予想は、貿易戦争の深刻化によって、さらに△2ポイントの悪化を見込む。Quick短観の月次データでは、11・12月の落ち込みは大きい。その水準は、2017年初の水準まで落ちてきている。筆者の予想では、そこまで極端な変化を織り込まなかったが、もしかすると△2ポイントよりも大きく下振れすることが起きるかもしれない。予想よりも変化する可能性があるとすれば、より下向きへの変化があり得るとみている。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+18
+22
<大企業全産業+13.1%>
日銀短観(2018年12月調査)の業況判断DI(最近)は、大企業製造業では、小幅ながら4四半期連続の悪化となり、前回調査(2018年9月調査)から1ポイント悪化の18になると予測する。
三菱総研+19
+17
<+8.2%>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業は+16%ポイント、非製造業は+20%ポイントと、いずれも業況悪化を予測する。国内経済は堅調持続が予想されるものの、保護主義化の連鎖が、金融市場や貿易・投資を通じて日本経済に波及するリスクには警戒が必要であり、企業マインドの重石となるであろう。
富士通総研+17
+21
<+9.2%>
景況感は製造業、非製造業とも悪化すると予想される。大企業製造業の業況判断DIは今回調査で17と9月調査から2ポイント悪化、大企業非製造業の業況判断DIは今回調査で21と9月調査比1ポイント悪化すると見込まれる。先行きについては、人手不足や世界経済の不透明感から、製造業、非製造業とも悪化すると考えられる。


見れば明らかな通り、日本総研を例外と見なせば、景況感については小幅に悪化との予想が中心となっています。ただ、9月の台風や豪雨などの自然災害によるマインド悪化はほぼほぼ出尽くし感もあるようで、国内要因としては企業マインドはさらに悪化することは見込まれていません。とくに、私のようなリフレ派のエコノミストからすれば、期間的な意味で日銀短観のスコープ外なのかもしれませんが、来年10月からの消費増税については、まだ織り込まれていない、というか、むしろ消費増税直前の駆け込み需要の方が企業にとっては注目点なのかもしれません。ただ、米中間の貿易摩擦に加えて中国をはじめとする世界経済の減速などの海外要因については、先行き企業マインドを悪化させる要因が山盛りの印象です。少し前までは、海外要因は輸出を通じて製造業への影響が中心で、ある意味では、今でもそうなのかもしれませんが、非製造業についても世界経済の減速が特に中国に現れていることからインバウンド消費を通じて世界経済との結びつきが、以前に比べて、かなり大きく感じられているようですし、国内要因ながら人手不足が進み、来年2019年4月から施行される入管法改正の影響が読めないだけに、懸念材料となる可能性もあります。また、今年度2018年度の設備投資計画については、9月調査からの改定幅は小さいながら、上振れと下振れがいずれもあり得る、との結果が示されています。
最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから 業況判断DIの予想 のテーブルを引用しています。

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2018年12月12日 (水) 21:19:00

上の倅の22歳の誕生日を祝うごちそう!!!

去る12月8日は上の倅の22歳の誕生日でした。誠にめでたい限りで、諸般の事情により、本日の夕食の折にお祝いしました。下の写真はお誕生日のお祝いのごちそうです。

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大学4年生になって就活も終わり、来年2019年4月からは新社会人として巣立って行きます。私なんぞよりも優秀でしょうから心配はいらなさそうな気もしますが、同時に私よりもずっと酒飲みですのでやや懸念もあります。それから、どうでもいいことながら、昨年の上の倅の誕生日は、大学の恩師のお別れの会に行っていた私が不在のまま決行されたように記憶しています。
いつものクス玉を置いておきます。倅の誕生日をめでたいとお考えの向きはクリックしてクス玉を割ってやって下さい。

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2018年12月12日 (水) 20:12:00

9月の自然災害からのリバウンドが物足りない機械受注と上昇幅が縮小した企業物価(PPI)!

本日、内閣府から10月の機械受注が、また、日銀から11月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て、前月比+7.6%増の8632億円を示しています。また、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+2.3%と前月の+3.0%から上昇率が大きく縮小したものの、引き続き、高い上昇率を継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の機械受注7.6%増、2カ月ぶり増も基調判断は下方修正
内閣府が12日発表した10月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比7.6%増の8632億円だった。増加は2カ月ぶり。製造業、非製造業ともに受注額が増えたが、QUICKがまとめた民間予測の中央値(10%増)を下回った。
内閣府は「3カ月移動平均でならしてみると、2カ月連続で減少している」として、基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に下方修正した。基調判断を下方修正するのは今年6月以来、4カ月ぶり。「受注額は高い水準にあるが、10月の戻りが弱く、方向感としては足踏みがみられる」(内閣府)という。
10月の受注額は製造業が12.3%増の4226億円だった。増加は2カ月ぶり。17業種のうち12業種が増加した。石油製品・石炭製品の受注が増えたほか、自動車・同付属品で工作機械などの受注が増えた。
非製造業も2カ月ぶりに増え、4.5%増の4537億円だった。電力業で発電機などの受注が増えた。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は4.5%増だった。
11月の企業物価指数、前月比で8カ月ぶり下落 原油下落の影響
日銀が12日発表した11月の国内企業物価指数(速報値、2015年平均=100)は102.1で、前年同月に比べて2.3%上昇した。23カ月連続で前年同月を上回ったが、10月確報値(3.0%上昇)からは鈍化した。前月比では0.3%下落と、8カ月ぶりに下落に転じた。
10月から11月にかけて原油相場が下落した影響が出た。米中間の貿易摩擦に対する懸念も重荷となった。
品目別では、石油・石炭製品が前年同月比14.8%上昇したが、10月確報値(24.9%上昇)から大幅に鈍化した。また、非鉄金属が前年比3.6%下落したことも影響した。
今後の企業物価動向について、日銀は「原油価格の下落が続けばより広範囲で下押ししやすいほか、米中貿易摩擦の影響が出始めており、注視したい」(調査統計局)との見方を示した。


長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの前月比で見て+10.3%増でしたので、やや物足りない結果と私も受け止めています。9月は台風や豪雨といった自然災害による供給制約や物流停滞のため、前月比で▲17.8%減でしたからリバウンドもやや弱い気がします。ただ、いわゆる「挽回生産」がもう少し続く可能性もありますので、統計作成官庁である内閣府で基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に半ノッチ下方修正したのは、そこまでする必要があるか、という気がしないでもありません。もちろん、上のグラフの上のパネルに見られる通り、私の計算による6か月後方移動平均で見たトレンドでもまだ下向きですし、引用した記事にもある通り、3か月移動平均でもご同様のようです。他方で、10~12月期のコア機械受注見通し+3.6%については、9月実績の発射台がかなり低い点を別にすれば、10月の滑り出しはまずまずと評価できます。月曜日に公表された7~9月期GDP統計では設備投資が前期比マイナスに振れましたが、先行きについては、少なくとも来年10月からの消費増税までは緩やかな増加が期待できるだけに、機械受注も堅調に推移すると考えるべきです。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、また、一番下は企業物価指数のうちの円建て輸入物価の原油の指数そのものと前年同月比上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2つのパネルの影をつけた部分は景気後退期を示しています。ヘッドラインの国内物価を前年同月比で見ると、7月から10月まで+3.0%を4か月連続で記録した後、11月は+2.3%と上昇幅を縮小させています。大きな要因は国際商品市況における石油価格の動向なんですが、国内物価のコンポーネントで1,000分の59.5のウェイトを持つ石油・石炭製品の前年同月比上昇率は10月の+24.9%から11月は+14.5%と、まだ2ケタの上昇率であるものの大きく低下しています。季節調整されていない原系列の指数の前月比ながら、石油・石炭製品に加えて、化学製品や金属製品などの素材についても下落を示しています。ただし、円建て輸入物価の石油・石炭・天然ガスは10月上昇率の+36.7%から11月の+35.2%にしか上昇幅が縮小しておらず、やや不思議な気もします。それはともかく、こういった石油価格やそれに連動する財の価格とともに、引用した記事の最後のパラにあるように、日銀では米中貿易摩擦の影響も出始めている、と指摘しており、物価の基調が弱いのであれば、金融政策で何らかの追加緩和が模索される可能性も否定できません。ただ、私がかねてからこのブログで主張しているように、我が国の物価動向は、日銀金融政策よりも国際商品市況における一次産品の価格動向により敏感に反応するような気がしないでもありません。
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2018年12月11日 (火) 23:38:00

法人企業景気予測調査に見る景況感と設備投資動向の乖離は何が原因か?

本日、財務省から10~12月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は今年2018年10~12月期+4.3の後、先行き来年2019年1~3月期には+4.7と見込まれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月大企業景況感、プラス4.3 建材・自動車向け好調
財務省と内閣府が11日発表した法人企業景気予測調査によると、10~12月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス4.3(7~9月期はプラス3.8)となった。プラスは2四半期連続。建材や自動車向けの需要が好調だった。
大企業のうち非製造業はプラス3.7(7~9月期はプラス2.4)。卸売業で建材向けの需要が好調だった。鉄鋼やエネルギーの販売価格上昇も寄与した。製造業はプラス5.5(7~9月期はプラス6.5)だった。化学工業で自動車向けの需要が増えた。
先行き2019年1~3月期の見通しは大企業全産業でプラス4.7だった。製造業がプラス4.2、非製造業がプラス5.0だった。4~6月期の見通しは全産業でプラス1.4だった。
18年度の設備投資は前年度比9.1%増となる見通し。前回調査(9.9%増)から小幅に下方修正した。19年度の設備投資見通しを見ると、大企業で「増加」が「減少」を上回った。
18年度の経常利益の見通しは0.4%増と前回調査(0.4%減)から上方修正した。
財務省と内閣府は企業の景況感について「政府の月例経済報告で『景気は緩やかに回復している』という判断が示されているが、そうした経済全体の傾向を反映した動き」としている。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。今回の調査は11月15日時点で、資本金1000万円以上の企業1万2895社が回答した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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今回の結果は、上のグラフの景況感とテーブルの引用はしませんが設備投資計画で企業マインドが乖離しているように見える点に絞って考えたいと思います。まず、結論から明らかにすると、景況感については、足元の今年2018年10~12月期から先行き2019年1~3月期の見通しは上向くわけで、今週金曜日公表予定のの日銀短観も見てみたい気はしますが、この法人企業景気予測調査については2018年4~6月期にマイナスをつけた後に上昇に転じており、統計の特性からして1期くらいリードを取るとしても、今年2018年年央くらいが企業マインドの一時的な底だったのかもしれません。日銀短観で確認したいと思いますが、景況感に現れる企業マインドは目先は上向きなのかもしれません。ただ、設備投資計画は下方修正されていますから、もっと長い期間を考えると、設備投資につながるような長期的なマインドは決して上向きではないように見えます。このあたりの乖離はビミョーな違いながら直観的にはあり得るところで、短期的に目先の景況感は決して悪くないものの、設備投資に現れるようなもう少し先の長い企業マインドはそれほど楽観できない、というふうに取りまとめられるのではないかと私は考えています。

いずれにせよ、今週金曜日に日銀短観が公表され、企業マインドの決定版のような統計ですので、さらに詳細な情報が明らかになることと期待しています。その前に、明日か明後日にでも各シンクタンクの日銀短観予想を取りまとめておきたいと予定しています。
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2018年12月10日 (月) 19:18:00

大きく下方修正された7-9月期GDP統計2次QEから景気の現状をどう見るか?

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計速報、いわゆる2次QEが公表されています。1次QEの前期比年率▲0.3%のマイナス成長から2次QEでは▲0.6%と大きく下方改定されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP、年率2.5%減に下方修正 7-9月改定値
内閣府が10日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%減、年率換算では2.5%減だった。速報値(前期比0.3%減、年率1.2%減)から下方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.5%減、年率2.0%減となっており、速報値から下振れすると見込まれていた。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.7%減(速報値は0.3%減)、年率は2.7%減(同1.1%減)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費は前期比0.2%減(同0.1%減)、住宅投資は0.7%増(同0.6%増)、設備投資は2.8%減(同0.2%減)、公共投資は2.0%減(同1.9%減)。民間在庫の寄与度はプラス0.0ポイント(同マイナス0.1ポイント)だった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がマイナス0.5ポイント(同マイナス0.2ポイント)、輸出から輸入を差し引いた外需はマイナス0.1ポイント(同マイナス0.1ポイント)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期に比べてマイナス0.3%(同マイナス0.3%)だった。


ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2017/7-92017/10-122018/1-32018/4-62018/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.7+0.4▲0.30.7▲0.3▲0.6
民間消費▲0.8+0.4▲0.3+0.7▲0.1▲0.2
民間住宅▲1.8▲3.3▲2.1▲1.9+0.6+0.7
民間設備+1.7+1.1+0.4+2.8▲0.2▲2.8
民間在庫 *(+0.4)(+0.2)(▲0.2)(+0.0)(▲0.1)(+0.0)
公的需要▲0.3▲0.1+0.0▲0.0▲0.2▲0.2
内需寄与度 *(+0.1)(+0.5)(▲0.4)(+0.8)(▲0.2)(▲0.5)
外需寄与度 *(+0.6)(▲0.1)(+0.1)(▲0.1)(▲0.1)(▲0.1)
輸出+2.7+2.1+0.5+0.3▲1.8▲1.8
輸入▲1.0+3.1+0.2+1.0▲+1.4▲+1.4
国内総所得 (GDI)+0.8+0.1▲0.6+0.6▲0.6▲0.9
国民総所得 (GNI)+1.0▲0.1▲0.8+0.9▲0.7▲1.0
名目GDP+1.0+0.5▲0.6+0.5▲0.3▲0.7
雇用者報酬+0.9▲0.4+1.0+1.6▲0.5▲0.4
GDPデフレータ+0.2+0.1+0.5+0.0▲0.3▲0.3
内需デフレータ+0.6+0.6+0.9+0.5+0.7+0.7


上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2018年7~9月期の最新データでは、前期比成長率がマイナスを示し、特に、水色の設備投資がマイナス寄与が大きいのが見て取れます。

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基本的には、7~9月期GDP2次QEのマイナス成長幅の拡大は、自然災害に伴う供給面の制約、物流の停滞などに起因し、それが企業マインドや消費者マインドを冷やした結果であり、足元の10~12月期にはこれらの制約や停滞を脱して我が国経済は緩やかながら回復ないし拡大の軌道に回帰する、というエコノミストのコンセンサスは特に変更を必要としない結果であった、と私は受け止めています。特に、1次QEからの下方修正の主因は法人企業統計にの結果を受けた設備投資の下振れであることは明らかで、上のグラフでも設備投資の水色の積上げ棒グラフが大きなマイナスを示していることが読み取れます。同時に、1次QEから2次QEへの修正については、消費が小幅に下方修正され、住宅投資がこれも小幅に上方修正されています。
ただ、現時点での我が国の景気認識として、足元の今年2018年10~12月期にはプラス成長に回帰するとはいえ、ちょうど1年前の2017年10~12月期くらいからの実質成長率を見ると、2017年10~12月期+0.4%の後に2018年1~3月期が▲0.3%、4~6月期に+0.7%とプラス成長に回帰した後、本日公表の7~9月期にはまたまた▲0.6%とマイナス成長と、プラスとマイナスが交互に並んでおり、2016年1~3月期から2017年10~12月期までまる2年8四半期に渡ってプラス成長を継続していたころの拡大局面とは異なり、やや景気の踊り場的な認識を持っているエコノミストも少なくないと私は考えています。もちろん、この踊り場からそのまま景気後退局面に入るとは、私は必ずしも考えていませんが、先々週の12月5日付けの記事では「来年2019年後半に景気後退の可能性はあるか?」とのタイトルで、来年後半にも景気転換点が来る可能性も無視できないとのリポートを紹介したところです。いずれにせよ、景気拡大局面は後半に入っていることは忘れるべきではありません。そして、その現状認識の下で、来年2019年10月からの消費増税の影響を正しく評価する必要があることはいうまでもありません。

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最後に、本日は7~9月期GDP統計2次QEだけでなく、11月の景気ウォッチャーが内閣府から、また、10月の経常収支が財務省から、同時に公表されています。いつものグラフだけ上に示しておきます。景気ウォッチャーは季節調整済の系列で見て、現状判断DIは前月差+1.5ポイント上昇の51.0を、先行き判断DIは前月差+1.6ポイント上昇の52.2を、それぞれ示しています。経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆3099億円の黒字を記録しています。
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2018年12月09日 (日) 14:29:00

先週の読書は経済・金融の専門書や話題の海外ミステリをはじめ計7冊!

昨日に米国雇用統計が割り込んで、読書日が1日多くなったこともあり、先週の読書は計7冊です。経済や金融の専門書に歴史分野などの教養書、さらに、話題の海外ミステリなどなど、盛りだくさんに以下の通りとなっています。今週もすでに図書館回りを終え、経済書や金融専門書など数冊を借りてきています。

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まず、馬奈木俊介[編著]『人工知能の経済学』(ミネルヴァ書房) です。経済産業総研(RIETI)に集まった研究者による研究成果であり、タイトルといい、馬奈木先生の編著であることからも、かなり期待したんですが、さすがに、せまいAIだけの研究はまだ成り立たないようで、かなり広くICT技術の進歩に関する経済学の論文集と考えるべきです。特に、最後の第Ⅳ部のAI技術開発の課題に含まれているICT技術と生産性については、まだ、生産工程にAIがそれほど実装されているわけではなく、チェスや囲碁といったボードゲームやクイズ番組でチャンピオンを破ったからといっても、特定の産業の生産性が向上するわけではありません。もちろん、AIならざるICTばかりが取り上げられているわけではなく、ドローンや自動運転技術の開発なども含む内容となっています。英国オックスフォード大学のフレイ&オズボーンによる有名な研究も着目されており、AI導入に伴う雇用の喪失についての結果は、極端であると結論しています。また、第Ⅱ部のAIに関する法的課題といったタイトルながら、選択理論においてはゲーム理論のナシュ均衡をはじめとして経済学の思考パターンが応用されており、タイトル通りの狭義AIだけでなく、AIをはじめとする幅広いICT技術の経済学と考えた方がよさそうです。

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次に、ジョナサン・マクミラン『銀行の終わりと金融の未来』(かんき出版) です。著者にクレジットされているジョナサン・マクミランとは架空の存在であり、実は2人の人物、すなわち、マクロ経済学者と投資銀行家という意外な組み合わせと種明かしされていますが、誰かは明記されていません。英語の原題は The End of Banking であり、2014年の出版です。ということで、本書の定義する「バンキング」とは、信用からマネーを作り出すこと、と定義し、産業経済時代には小口の短期的な流動性高い預金から大口の貸付を行って資本蓄積を進める必要あったものの、デジタル経済時代には、本書でいうソーシャルレンディング、我が国では一般にクラウド・ファンディングと呼ばれる手法により、金融機関に小口の預金を集中させることなく資金調達が可能となっており、本書で定義するバンキングなしの金融活動は可能であるし、望ましい、と結論しています。そして、そのひとつの方法としてナローバンキング、すなわち、投資行為なしに決済だけを業務とする銀行・金融機関などを提唱しています。私はなかなか理解がはかどらなかったんですが、現時点の金融システムは、ある程度は、政府や中央銀行がデザインしたものも含まれるとはいえ、それなりに資本制下で歴史的な発展を遂げてきたものであり、政府や中銀の強力な規制により著者の目論むようなバンキングのない金融システムを構築する合理性が、単に、金融危機の回避だけで説明でき、国民の納得を得られるのか、という疑問は残りました。さらに、その上で、金融機関による決済業務の重要性について、キチンとした分析ないし説明がなされるべきではないか、と思いますし、自己資本比率の引き上げによりマネーの創造の上限を抑制できるわけですから、自己資本比率の引き上げとの違いについてももう少し詳しい議論の展開が求められるような気がします。とても良い目の付け所なんですが、少し、そういった点で、手抜きではないにしても、説明不足あるいは不十分な考察結果のような気がします。

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次に、スティーブン・レビツキー & ダニエル・ジブラット『民主主義の死に方』(新潮社) です。著者は2人とも米国ハーバード大学の研究者であり、英語の原題は How Democracies Die となっていて、2018年の出版です。タイトルからも明らかな通り、最近におけるポピュリズムの台頭を民主主義の危機と受け止め、特に米国トランプ政権が多様性を認め寛容な米国民主主義に対する大きな挑戦をしている点を、いかに米国の伝統的な民主主義を守るか、という観点から考察を進めています。そして、ひとつのゲートキーパーとして、以前は政党やその指導者が過激勢力を分離・無効化、ディスタンシングし、インサイダーが査読していたのが、シチズンズ・ユナイテッド判決以降に少額寄付も含めて外部からの政治資金が膨大に利用可能となり、その昔の大手新聞やメジャーなテレビなどの伝統的なメディア以外のCATVやSNSなどの代替的なメディアで知名度を上げる道が開かれた点をあげています。トランプ政権の戦略について考察を進め、司法権などの審判を抱き込み、主要なプレーヤーを欠場に追い込み、対立勢力に不利になるようなルール変更を行う、の3点の戦略で典型的な独裁政権と同じと結論しています。さすがに、あまりに刺激的と著者が考えたのか、授権法によるナチスの独裁体制の確立やイタリアにおけるファシスト政権などを引き合いに出すことはためらっているように見えますが、戦後のマッカーシーズムはいくつかの点で参照されており、米国的な寛容な民主主義を取り戻すための一考にすべきような気がします。

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次に、氏家幹人『大名家の秘密』(草思社) です。著者は我が国近世史を専門とする歴史学者だそうですが、国立公文書館勤務とも聞いたことがあります。私は詳細を知りません。本書は上の表紙画像に見られる通り、江戸期の大名家、特に、水戸藩と高松藩の藩主について記した小神野与兵衛『盛衰記』を中心に、その後年に『盛衰記』について徹底的に検討を加えて削除と加筆をほどこした、というか、主君に対するやや冒涜的な内容を徹底的に批判した中村十竹『消暑漫筆』、加えて、『高松藩 盛衰記』などの類書を読み解いた結果を取りまとめています。私は、フィクションの時代小説ながら、かつて冲方丁の『光圀伝』を読んだことがありますので、光圀とその兄の間で子供を交換した、などの水戸藩と高松藩の歴史については、それなりに把握しているつもりでしたが、なかなか、高松藩の名君藩主の動向など、興味深いものがありました。基本的に、戦国期を終えて3代徳川家光くらいからの文治政治下では、武士は戦闘要員たる役割を終えて役人化している中で、さすがに、大名=藩主だけは役人が成り上がるのではなく、代々家柄で決まるものであり、圧倒的に家臣団から超越した存在ですから、現在の公務員の事務次官とは大きく異なるわけで、もっと大胆、というか、当時の時代背景もあって独善的に決断を下していたものだと私は想像していたんですが、名君とはこういう思考パターン、行動様式を持つのかと感心してしまいました。そして、部下たる侍も武士道や忠義一筋、といったステレオ・パターンと異なり、かなり実務的、実益本位の面があったというのも、薄々知識としては持っていたものの、歴史書に触れて感慨を新たにした気がします。第3章の子流しと子殺しについては、必ずしも大名家をフォーカスしたものではなく、ややおどろおどろしい世界ですので、読み飛ばすのも一案か、という気がします。

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次に、鹿島茂・井上章一『京都、パリ』(プレジデント社) です。著者は明治大学の仏文学者と京都の建築史の専門家で『京都ぎらい』がベストセラーになった井上先生です。共著というよりは、対談を収録しています。タイトル通りに、パリと京都だけでなく、フランスと日本を対照させた文化論なども展開しています。私が印象的だったのは第5章の食文化で、食べ物、というか、食文化については京都ではなく大阪、パリではなくローマ、というのがおふたりの共通認識で、なかなか参考になりました。また、鹿島先生が最近のフランス語の変化について判りやすく、ガス入りの水がかつての eau gazeuse から eau pétillante が主流になった、とのことで、私が大昔に読んだスタンダールの『赤と黒』にムッシュ95という人が登場し、どうしてこんなあだ名かというと、95をquatre-vingt-quinze(4x20+15)というその時点、というか、今現在そうである表現ではなく、nonante-cinq(90+5)という昔ふうの表現をするそうで、フランス語とは数の数え方という基礎的な表現ですらかなり短期間に変化する言語である、という印象を受けた記憶があり、それを思い起こしてしまいました。もっとも、ベルギーではまだ90をnonante-cinqで表現する、ということはEU勤務の経験ある友人から聞いたことがあります。といったことを早くも始まった忘年会でおしゃべりしていると、日本でも100年ほど前に「ひい、ふう、みい」から「いち、に、さん」に変更されたんではないのか、と反論されてしまいました。それはともかく、第2章から第3章にかけては、フェミニストにはそれほど愉快ではない論点かもしれませんし、かなり「下ネタ」的な内容もあったりするという意味で、品位に欠けると見なす読者もいるかも知れませんが、私が読んだ範囲でも、井上先生の『京都ぎらい』はかなり斜に構えた本でしたので、そういった観点で文化論とかいうのではなく半分冗談のつもりで軽く読み飛ばすべき本なのかもしれません。

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最後に、A.J.フィン『ウーマン・イン・ザ・ウィンドウ』上下(早川書房) です。著者はエディタから本作品で作家デビューを果たしています。英語の原題は日本語訳そのままに、2018年の出版です。ということで、主人公のアナ・フォックスはアラフォーの精神分析医であるものの、夫と娘の生活と離れて暮らし、広場恐怖症のためにニューヨークはハーレムの高級住宅街の屋敷に1年近くも閉じこもって暮し、古いモノクロ映画のDVDを見て、ワインを浴びるほど飲み、そして、隣近所を覗き見して場合により一眼レフのデジカメに収める、という生活を送っています。そして、そのご近所で1人の女性が刺殺されるのを偶然にも見てしまいます。いろんな物的証拠が主人公の精神異常性を指し示していながら、実は、最後にとても意外な殺人犯が明らかになる、というストーリーです。決して、本格推理小説のような謎解きではありませんが、ミステリの範疇には入りそうな気がします。私は精神状態の不安定な主人公の動きの中で、デニス・ルヘインの『シャッター・アイランド』と同じプロットではなかろうか、と考えながら読み進んだんですが、最後の解説ではギリアン・フリンによる『ゴーン・ガール』との比較をしていたりしました。『ゴーン・ガール』では妻が夫を殺人犯に仕立てようとする中で、最後のどんでん返しは、何と、この夫婦が仲睦まじく夫婦生活を再開する、というところにオチがあったんですが、本書はそういったオチはありません。ただひたすら意外などんでん返しが待っていて、サイコパスの犯人が明らかになるだけです。その分、やや『ゴーン・ガール』から見劣りすると受け止める読者もいそうな気がします。実は、私もそうです。出版社の謳い文句ながら、ニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストに初登場で1位に入る快挙を成し遂げ、その後も29週にわたりランクインした、とか、英米で100万部以上の売り上げを記録した、とか、早くも映画化されて来年2009年の封切り、とか、宣伝文句に大いに引かれて借りて読んでみたんですが、少し、私の期待するミステリ小説とは違っているかもしれません。なお、どうでもいいことながら、上巻巻末に主人公などが見ているモノクロの古いフィルム・ノワールのリストが収録されていますが、加えて、本書で言及されている処方薬の効能書きなんぞも必要ではないか、と私は感じてしまいました。
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2018年12月08日 (土) 09:12:00

11月米国雇用統計は完全雇用に近い水準を示しFEDの利上げをサポートするか?

日本時間の昨夜、米国労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+155千人増と、市場の事前コンセンサスだった+190千人程度の増加という予想をやや下回って伸びが原則したものの、失業率は前月と同じ3.7%を示し、約半世紀ぶりの低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を10パラ引用すると以下の通りです。

Economy added disappointing 155,000 jobs in November
U.S. employers added a disappointing 155,000 jobs in November as hiring slowed amid worker shortages, the country's trade fight with China and wild stock market swings.
The unemployment rate was unchanged at a near half-century low of 3.7 percent, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 199,000 jobs were added last month. Also, employment additions for September and October were revised down by a modest 12,000.
Many analysts expected hiring to slow in November after robust job gains of well over 200,000 the prior month. That total was likely inflated by a rebound in the Carolinas after Hurricane Florence idled workers and curtailed payrolls in September.
Other crosscurrents were also at work last month. Winter storms in the Northeast and Midwest likely reduced employment by about 20,000, Goldman Sachs estimated. Meanwhile, Capital Economics expected a modest bounce-back in job growth in the Florida panhandle after Hurricane Michael tempered October advances but the research firm reckoned the bump would be offset by the effects of the California wildfires.
More broadly, monthly job increases have been surprisingly strong this year, averaging more than 200,000, despite a historically low unemployment rate that's leading to widespread worker shortages.
Some economists expect the brisk pace to slow. The 10 percent tariff the Trump administration slapped on $250 billion in Chinese imports has dinged business confidence and the recent truce between the two nations came after Labor's November jobs survey.
Business optimism also may have been dampened by the stock market's mid-November sell-off and the sputtering global economy. Initial jobless claims, which largely reflect layoffs, have drifted higher in recent months.
Average hourly earnings rose 6 cents to $27.35, leaving the annual gain unchanged at a nine-year high of 3.1 percent.
Employers are likely to continue to bump up wages as they increasingly struggle to find qualified workers. That could lead the Federal Reserve to raise interest rates faster to head off a run-up in inflation. The Fed is expected to raise its key short-term interest rate later this month for the fourth time this year.


とても長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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まず、非農業部門雇用者の伸びですが、10月実績の237千人から減速し、市場予想の190千人程度も下回って、155千人にとどまりましたが、それでも労働市場がほぼ完全雇用にあるわけですから、労働の供給サイドでは人手不足で、雇用者の伸びが鈍化するのは当然、との受け止めもありますので、USA Today のように失望感を示すエコノミストは少ないように私は受け止めています。また、失業率も3か月連続で3.7%を記録し、1969年以来ほぼ半世紀ぶりの低い水準にあります。米国連邦準備制度理事会(FED)の連邦公開市場委員会(FOMC)のカレンダーでは今月12月の17~18にFOMCが開催される予定となっているところ、今年2018年内4回目の利上げが決定されるとの見方が有力となっており、先物市場では75%近い折り込みとなっています。ですから、注目はむしろ来年2019年以降の利上げペースとなっており、従来は、FEDでは2020年まで金融引き締めを続けて、政策金利であるFFレートを3.5%くらいまで引き上げるシナリオを描いてきたわけなんですが、金利上昇によるドル高が貿易摩擦の激化の中で、想定以上に輸出の伸びを鈍化させる可能性もあり、トランプ政権の圧力も勘案して、FEDがどのような判断を示すかに注目が集まっています。ただ、クリスマス商戦を見る限り、米国景気はまだまだ拡大を続ける方向にあることも確かですので、金融政策の舵取りが難しくなってきていることも事実です。

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最後に、その物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、9月は前年同月比で+2.8%の上昇と、このところ2か月連続で+3%超の上昇率が続いています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いていて、10年振りに近い+3%超の賃金上昇ですから、12月FOMCでの追加利上げは賃金上昇からも十分に正当化されると私は考えています。他方で、繰り返しになりますが、トランプ政権からの風圧もかなり強く、FEDによる金融政策の舵取りも難しそうです。
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2018年12月07日 (金) 23:12:00

自然災害による供給制約を脱して上昇した景気動向指数と名目賃金上昇続く毎月勤労統計!

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも10月の統計です。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月差+0.9ポイント上昇の100.5を、CI一致指数も+2.9ポイント上昇の104.5を、それぞれ記録しています。ともに2か月振りの上昇ですまた、毎月勤労統計のうち、名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+1.5%増の27万1333円に上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の景気動向指数 2カ月ぶり上昇 基調判断は据え置き
内閣府が7日発表した10月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が104.5と2カ月ぶりに上昇した。前月からの上昇幅は2.9ポイントで、1989年3月以来の大きさだった。9月に相次いだ自然災害の制約が解消され、消費や生産、輸出など幅広い分野で数値が上向いた。
景気の基調判断は「足踏みを示している」と前月から据え置いた。「改善」に上方修正されるには、指数の月々の変動をならした「3カ月後方移動平均」が3カ月以上連続して上昇する必要がある。9月には「改善」から「足踏み」に24カ月ぶりに判断が変更された。
一致指数の算出に使う9つの統計のうち、速報段階で公表されている7つのなかで6つがプラスに寄与した。寄与度が大きかったのは生産関連で、自動車やスマートフォン部品などの生産が増えた。数カ月後の景気を示す先行指数は2カ月ぶりに上昇に転じた。
10月の名目賃金、前年比1.5%増 増加は15カ月連続、毎月勤労統計
厚生労働省が7日発表した10月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、10月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比1.5%増の27万1333円だった。増加は15カ月連続。基本給の増加が続いた。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.3%増の24万4509円だった。残業代など所定外給与は1.9%増。ボーナスなど特別に支払われた給与は6.8%増だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は0.1%減だった。名目賃金は増加したが、消費者物価指数が上昇し、実質賃金を押し下げた。
パートタイム労働者の時間あたり給与は2.0%増の1136円。パートタイム労働者比率は0.05ポイント上昇の30.98%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べると長くなってしまいました。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は、毎月勤労統計のグラフとも共通して、景気後退期を示しています。

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まず、中身に入る前に、今日の公表から景気動向指数は、内閣府のお知らせ通り、2015年=100に基準年を改定されています。従って、上のグラフも従来のものに比べて、少し印象が異なるかもしれません。ということで、9月の自然災害に起因する供給制約や物流の停滞から復旧が見られ10月のCI一致指数は大きくジャンプしました。引用した記事にもある通り、前月差上昇幅+2.9ポイントは1989年3月以来の大きさを記録しています。プラスの寄与度で見て大きい順に、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、投資財出荷額(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、耐久消費財出荷指数となっています。これまた、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府の基調判断は2か月連続で「足踏み」となっているんですが、上方改定されると仮定すれば1ノッチ上の景気判断は「拡大」ですから、3か月連続で3か月後方移動平均がプラスに転じなければならず、10月統計はまだ1と月目なもので最短で12月統計を待って「拡大」に戻るかどうかが基調判断変更の基準となると私は受け止めています。いままでも、何回か、このブログでお示ししたように、現在の景気拡大局面が来年2019年1月まで継続すれば、米国のサブプライム・バブルに対応する戦後最長の景気拡大期間72か月を超える計算です。もちろん、単純に景気が拡張しているか後退しているかどうかの2項判断ですから、景気拡大の実感乏しいのは広く認識されている通りであり、私自身は主として賃金上昇が鈍いことが大きな要因のひとつを考えています。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。ということで、景気に敏感な製造業の所定外時間指数は自然災害による供給制約からの復旧ととともに鉱工業生産指数(IIP)に連動して10月は上昇しており、賃金もそれなりに上向きと私は見ています。2番目のパネルの季節調整していない原系列の賃金指数の前年同月比のプラス幅も、3番目の季節調整済みの系列の賃金指数も、ともに上向きです。季節調整していない名目賃金指数の前年同月比上昇率が+1.5%ですから、消費者物価(CPI)上昇率とほぼ均衡しています。さすがに、世上いわれているように人手不足がここまで進んでいますので、正規雇用の増加とともに、それなりに賃金上昇の圧力は大きいと私は受け止めています。
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2018年12月06日 (木) 19:52:00

来週月曜日に公表予定の7-9月期2次QE予想は下方修正か?

月曜日に公表された法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日の12月10日に今年2018年7~9月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期以降の景気動向を重視して拾おうとしています。もっとも、2次QEですので法人企業統計のオマケの扱いも少なくなく、明示的に先行き経済を取り上げているシンクタンクは決して多くありませんでした。その中で、みずほ総研と第一生命経済研と伊藤忠経済研は長めに、ほかのシンクタンクもそれなりに、それぞれ引用してあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.3%
(▲1.2%)
n.a.
日本総研▲0.5%
(▲2.1%)
7~9月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資と公共投資が下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率▲2.1%(前期比▲0.5%)と1次QE(前期比年率▲1.2%、前期比▲0.3%)から下方修正される見込み。
大和総研▲0.4%
(▲1.8%)
2018年7-9月期GDP二次速報(12月10日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲1.8%と、2四半期ぶりのマイナス成長となった一次速報(同▲1.2%)から下方修正されると予想する。
みずほ総研▲0.5%
(▲1.9%)
今後の日本経済については、良好な雇用環境を背景に消費が底堅く推移するほか、省人化投資ニーズの顕在化により、設備投資も堅調な推移を見込んでいる。ただし、中国経済の減速やIT需要のピークアウトを受けて、輸出の伸びは減速し、景気回復のテンポは鈍化する見通しだ。
また、当面のリスクとして、貿易摩擦の激化に注意が必要だ。現時点では、日本経済への影響は限定的なものにとどまっているが、米中間の貿易摩擦が更に高まった場合、日本に間接的ながら景気下押し圧力として働く可能性がある。また、米国が自動車への追加関税を強行した場合、自動車の輸出低下に留まらず、関連産業への波及、雇用を通じた消費への影響がでる恐れも十分にある。そのほか、不確実性の高まりが企業の投資マインドの下押し材料になる懸念もあり、その点でも留意が必要だろう。
ニッセイ基礎研▲0.4%
(▲1.5%)
12/10公表予定の18年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.4%(前期比年率▲1.5%)となり、1次速報の前期比▲0.3%(前期比年率▲1.2%)から下方修正されると予測する。
設備投資は前期比▲0.2%から同▲1.5%へと下方修正されるだろう。
第一生命経済研▲0.5%
(▲2.1%)
設備投資が足元で変調をきたしているという評価は妥当ではないだろう。人手不足に対応した合理化・省力化投資の拡大、インバウンド対応等による建設投資需要の増加、根強い研究開発投資需要など設備投資を取り巻く環境は良好である。日銀短観等の各種アンケート調査でも18年度の設備投資計画は非常に強く、企業の設備投資意欲の強さが示されている。7-9月期の減少は一時的で、10-12月期は再び増加する可能性が高い。設備投資は先行きも景気の下支え役として貢献するだろう。
伊藤忠経済研▲0.4%
(▲1.7%)
7~9月期のGDPが本予測の通り修正されたとしても、自然災害による一時的なマイナス成長という評価は変わらず、10~12月期には個人消費や輸出の持ち直しによりプラス成長に転じよう。実際に10月の小売販売や輸出数量指数、訪日外国人数など、個人消費や輸出の関連指標は復調している1。前期比マイナスに転じた設備投資は循環的なピークが近づいている可能性が高いものの、今年度補正予算での追加を受けて公共投資は増加に転じるとみられるほか、前回より小規模ながらも年明け後は消費増税を控えた駆け込み需要が出始めよう。そのため、今後の景気は、消費増税までは緩やかな拡大が続くと見込まれる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.5%
(▲2.1%)
12月10日に内閣府から公表される2018年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比▲0.5%(年率換算▲2.1%)と1次速報値の同▲0.3%(同▲1.2%)から下方修正される見込みである。
三菱総研▲0.4%
(▲1.6%)
2018年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.4%(年率▲1.6%)と、1次速報値(同▲0.3%(年率▲1.2%))から下方修正を予測する。


上のテーブルを見れば明らかな通り、各シンクタンク軒並み1次QEの前期比年率▲1.2%から下方修正の予想で足並みがそろっています。その要因は、今週月曜日に公表された法人企業統計、特に設備投資ではなかろうかと私は想像しています。おおむね、上のテーブルの線はいいところで、私は▲2%に達するまで下方修正されることはないだろうと直観的にみていますが、web上にオープンな情報ではなくニューズレターでちょうだいしている某証券会社のエコノミストの中には、▲3%を超える大幅な下方修正を示唆している予想もありました。ひょっとしたら、証券会社の予想は何の営業かによってポジション・トークをしている場合があったりするんでしょうか。私にはよく判りませんが、債券営業のサポートをしているエコノミストは経済見通しを悪い方向で出して金利は上がらず債券価格は上昇との方向を示唆するのに対し、株式営業サポートのエコノミストは景気上向きの予想を出して株価上昇の方向を示唆する、というジョークを聞いた記憶もあります。あまり上品なジョークではないんですが、当たっているのかいないのか、何ともビミョーなところです。
ということで、最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。

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2018年12月05日 (水) 21:12:00

来年2019年後半に景気後退の可能性はあるか?

昨日、12月4日付けで第一生命経済研から「2019年の経済展望」と題するリポートが明らかにされています。

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そのリポートの中の pp.5-6 で、2019年秋以降の景気後退局面入りの可能性を示唆しています。10月1日からの消費税率引き上げは、引き上げ幅が+2%ポイントで、家計負担も年2.2兆円にとどまる上に、私が報道で接する限りでも、(1)キャッシュレス決済によるポイント還元、(2)プレミアム付商品券、(3)住宅購入支援、(4)自動車購入支援、などの増税対策も実施されることから、全体としての家計負担はさらに小さくなる一方で、東京オリンピックの建設需要のピークは大会開催の1年前の2019年夏ころになる可能性があり、加えて、米中貿易摩擦やその結果としての中国をはじめとする新興国経済の減速などにより、我が国経済も下振れリスクとして影響を受ける可能性を示唆しています。なお、上のグラフはリポートから消費増税前後の家計の負担額と東京五輪前後の経済成長率を引用しています。
何度もこのブログでも主張している通り、景気拡大局面は後半戦に入っている可能性が高く、もっとも早ければこのリポートが示唆するくらいのタイミングで景気転換点を迎える可能性は無視できないと私も考えています。そして、早期の景気後退局面入りを回避するためには、適切な政策対応もさることながら、我が国企業の賃上げがもっとも効果的な気がします。ひいては、賃上げはデフレ脱却や国民にとっても実感ある景気拡大に多いに資するんではないか、と私は期待しています。
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2018年12月04日 (火) 23:54:00

ユーキャン新語・流行語大賞2018はカーリング女子の「そだねー」が大賞受賞!

昨日、ユーキャン新語・流行語大賞2018 が発表され、カーリング女子の「そだねー」が大賞を受賞しました。下の画像は、ユーキャン新語・流行語大賞2018のサイトをキャプチャしているんですが、大賞受賞のカーリング女子ロコ・ソラーレを代表してマリリン本橋麻里さんが登壇しているようです。私自身は、どちらかといえば、同じカーリング女子でノミネート30語に入っている「もぐもぐタイム」にも親しみを覚えるんですが、人口に膾炙したのは「そだねー」かもしれません。一昨日に取り上げたヒット商品番付でも指摘した通り、「チコちゃんに叱られる!」の決め台詞の「ボーッと生きてんじゃねーよ!」がいいセン行ったみたいです。今夜は遅くなったので適当に切り上げておきます。

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2018年12月03日 (月) 23:41:00

内部留保は積み上がるものの労働分配率が高まらない法人企業統計!!

本日、財務省から7~9月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は8四半期連続の増収で前年同期比+6.0%増の358兆8846億円、経常利益も9四半期連続の増益で+2.2%増の18兆2847億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで製造業が+5.1%増、非製造業が+4.2%増となり、製造業と非製造業がともに伸びを示し、全産業では+4.5%増の11兆2784億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資は前期比▲4.0%減となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月期の設備投資、8四半期連続増 生産能力増強などで 法人企業統計
財務省が3日発表した2018年7~9月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比4.5%増の11兆2784億円だった。増加は8四半期連続。製造業で自動車向け素材の生産能力増強や建設機械向け投資が堅調だった。全産業ベースの経常利益は前年同期比2.2%増の18兆2847億円で、9四半期連続の増益だった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で4.0%減と5四半期ぶりに減少した。
設備投資の前年同期比の動向を産業別にみると、製造業は5.1%増加した。化学産業で自動車向け素材の生産能力を増強したほか、建設機械向け投資も寄与した。非製造業は4.2%増加した。オフィスビルの再開発や通信設備投資などの分野が増加した。
「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額の内訳は、製造業が季節調整済み前期比5.3%減、非製造業が3.3%減だった。
全産業ベースの経常利益は、製造業が1.6%減と2期ぶりにマイナスとなった。情報通信機械業で研究開発費が増加したほか、金属製品業で原材料や燃料などのコスト増が響いた。非製造業は4.6%増だった。情報通信業で端末の販売価格が上昇した。
売上高は6.0%増の358兆8846億円と8四半期連続で増収となった。製造業は4.3%増だった。車載向け半導体部品や半導体製造装置、建設機械の販売が増加した。非製造業は6.6%増だった。販売価格が上昇した卸売業や小売業、大型工事が増えた建設業などが増加した。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計した。今回の18年7~9月期の結果は、内閣府が10日発表する同期間のGDP改定値に反映される。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルで季節調整済みの系列の売上げと経常利益を見て、やや私も戸惑ったんですが、この7~9月期は広く認識されているように、豪雨、台風、地震など相次ぐ自然災害が経済活動を阻害して、先月公表された7~9月期1次QEでもGDPはマイナス成長を記録し、そのほか鉱工業生産指数などの経済統計も同様の傾向にあったんですが、法人企業統計では経常利益こそ前期から低下したものの、売上げは伸びており、売上げと経常利益で乖離が生じています。同様に、下のパネルに見られる通り、設備投資は経常利益と同じ方向、つまり、前期から減少を記録しています。基本的に、統計に表れていないながら、売上げについては原油高などの価格転嫁が進み、実質ベースでは売り上げも低下している可能性があるのではないか、と想像しています。繰り返しになりますが、価格の統計からはこの事実は読み取れませんので、単なる私の想像です。いずれにせよ、季節調整済みの統計を見ている限りでは、売上げが伸びたのは謎として除外すると、経常利益と設備投資は前期からマイナスを示しているんですが、基本的に、7~9月期は自然災害による停滞が見られただけであり、緩やかな回復基調が継続していることは企業活動についても同じであると、私は受け止めています。ただ、このブログで何度も繰り返しましたが、景気循環の拡大局面が後半に入っていることも事実ですので、それなりに注意する必要はいうまでもありません。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下し上向く気配すらなくまだ下落の気配を見せていますし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞し底ばっており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけは、グングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善の重要なポイントである賃上げ、あるいは、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。ですから、経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

最後に、本日の法人企業統計を基に、いわゆる2次QEが来週月曜日の12月10日に内閣府から公表される予定となっています。1次QEでは季節調整済みの系列の前期比▲0.3%、前期比年率▲1.2%の成長率が、私の直感的な印象ながら、設備投資を中心に2次QEで下方修正される、と予想しています。これまた、直観的に何の根拠もなく、下方改定幅はかなり大きく、▲2%近くか、ひょっとしたら、▲3%を下回るかもしれないという気がします。
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2018年12月02日 (日) 21:14:00

SMBCコンサルティングによる2018年ヒット商品番付やいかに?

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一昨日の11月30日、SMBCコンサルティングから年末恒例の2018年ヒット商品番付が明らかにされています。上のテーブルはSMBCコンサルティングのサイトから引用しています。世間の流行に疎い私ですので、すべてをよく知っているわけではありませんが、私自身の率直な感想としては、今年の番付は全体としてかなり小粒な印象です。新語・流行語大賞と照らし合わせると、『君たちはどう生きるか』が番付に入っていません。これは私にはよく理解できないところです。また、高刺激食品は強炭酸とか、辛い食べ物のたぐいなんでしょが、私はは苦手です。今年のヒットで私の目についたのは、「ボーッと生きてんじゃねーよ!」の決め台詞の「チコちゃんに叱られる!」がいいセン行くんではないかと期待しています。私は土曜日朝の再放送で見ることが多いです。
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2018年12月01日 (土) 11:28:00

今週の読書は何と経済書と経営書ばかり計8冊!!

先週末にアップした先週と先々週の読書感想文は、めずらしくも、ほとんど経済書らしい経済書がなかったんですが、今週の読書はその反動で10冊近く経済書・経営書ばかりでした。日銀関連の話題の本を含めて、以下の通り計8冊です。

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まず、白川方明『中央銀行』(東洋経済) です。著者はご存じの通り白い日銀のころの総裁であり、私の実体験から知る限り、今世紀初頭の速水元総裁に次いで、日銀総裁として2番めに無能だった人物です。もちろん、上から目線バッチリで、ほとんどのトピックについて自分が正しかった旨を主張しています。しかし、私が見ていた限りでは、リーマン証券が破綻した後の Great Recession の際、金融政策が後手に回り、市場はもちろん政府・国会などからの要求が激しくなると金融緩和策を繰り出し、「追い込まれ緩和」といわれたのは記憶に残っています。デフレを人口動態に起因する事態と「発見」しながら、藻谷浩介『デフレの正体』の著作を引用するでもなく、2012年の民主党から自民党への政権交代の直前から円安が急速に進んだのは、アベノミクスの金融緩和策への期待ではなく、ギリシアなどにおける欧州債務危機の後退から、円の安全資産としての安全性が低下したからである、といった主張には唖然としてしまいました。民主党政権下で当時の菅総理の辞任を受けての代表選で、野田候補以外はリフレ的な主張をしていて、暗澹樽気持ちになったというのは正直でいいとしても、市場や政府や国会から日銀無能説の大攻勢を受けていた中で、共産党の参議院議員だけが日銀の理解者だった、なんてことは、思っても著書に書くべきかどうか迷わなかったんでしょうか。唯一、中央銀行の独立性とは目標の独立ではなく、手段の独立、すなわち、オペレーショナルな独立性である、と記している点はやや意外でした。ただ、最後の方の p.672 で著者ご自身も認めているようで、日銀白川総裁の5年間の任期中に何と2度の政権交代があり、総理大臣が6名交代した、と記していますが、そのもっとも大きな原因を作った人物を1人だけ上げようとしたら、それは当時の日銀白川総裁その人であった、という事実にはご本人はまったく気づいていないようです。さらに、付け加えるとすれば、2012年12月の第2時安倍内閣成立から国政選挙で与党が連戦連勝なのは、これもその最大の功労者は現在の日銀黒田総裁である、という点は忘れるべきではありません。米国クリントン大統領の選挙キャンペーンのスローガンであった "It's the economy, stupid!" はかなりの程度に普遍的に成り立つわけです。

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次に、大村敬一ほか『黒田日銀』(日本経済新聞出版社) です。上の表紙画像に見えるように、7人のマクロ経済学や金融の専門家が、6年余りに及ぶ黒田日銀を評価しています。7人の中には翁教授のように日銀出身で旧日銀理論に立脚する著者も含まれていますが、1人を除いて、6人は黒田日銀に好意的な評価を下しているように私は読みました。典型的なのは第1章と第2章であり、典型的に評価するポイントは為替の円安誘導であり、逆に、量的緩和が物価目標を2年程度では達成できずに、金融緩和が長期化している点には懸念あるものの、実は、その昔の西村清彦『日本経済見えざる構造転換』でいつの間にか構造改革が進んでいたと主張されていたように、量的緩和は出口に向かい、ステルスでテイパリングが進められている可能性も指摘されています。その点を評価しているのは翁教授などの旧日銀理論の信奉者だという気もします。そして、いまだに物価目標2%が達成されていない原因は根強いデフレマインドである、ということになります。そして、本書で何人かの論者が指摘している黒田日銀への批判のうち、私も同意するのは、黒田日銀の市場との対話がコンセンサス形成ではなく、サプライズによる政策効果を狙っている可能性であり、その方向性が間違っている可能性が強い、という点です。もう1点、ETFを通じた日銀の株式買い入れやJ-REIT購入による株価や不動産価格に対する歪みを懸念する意見もありますが、私はこの方は大きな心配はしていません。パッシブに購入している限りは株価形成などに歪みをもたらすことはありませんし、サイレントな株主になって、ガバナンスに悪影響を及ぼす可能性は否定しませんが、リスク資産購入による政策効果のベネフィットの方が大きいものと考えるべきです。6年経過しても物価目標を達成できないながら、少なくともデフレ状態からは脱却していますし、それなりの景気拡大効果のある金融政策運営ですから、本書のような黒田日銀の評価は極めて正当なものと私は考えています。

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次に、奥村綱雄『部分識別入門』(日本評論社) です。著者は横浜国立大学の研究者であり、専門は数理経済学です。本書で詳しく解説されていますが、部分識別とは、私の知る限りでは、モデルの組み方ではなく、あくまで、モデルのパラメータの推計に関する新しい方法論であり、従来のパラメータ推計が標本を基に何らかの分布を前提とするのに対して、部分識別とは標本ではなく全母集団情報を対象にして何らの分布を前提とせずにパラメータ推計を行います。というと、ノンパラメトリック推計なのか、という疑問が出るんですが、従来のパラメータ推計が確率変数に対して何らかの信頼区間は置くとしても、ほぼほぼ決定論的な数値を得るのに対して、部分識別ではパラメータの値そのものでなか卯、その存在するバウンドを求めるという作業になります。別の角度から、従来のパラメータ推計では前提となる仮定を緩めることにより一般化を図るのに対して、部分識別では弱い前提から強い前提を加えることでバウンドの範囲を狭めようとします。ただ、本書の著者が少し説明不足であるのは、操作変数法を用いたりする場合は別として、一般にパラメータを推計するなり、パラメータのバウンドを推計するなりは、因果関係ではなく相関関係の有無や強さの測定になります。この点はやや説明不足を感じました。基本的に、本書では教育の効果の例を出しての解説を進めているんですが、私が強い興味を感じたのは第5章の政策効果の測定です。単純に、フードスタンプを用いる家庭の子供の栄養状態は、フードスタンプに頼る必要のない家庭の子供より悪くなるのは当然ですが、単純なOLSに頼ると、フードスタンプを用いるとかえって子供の栄養状態が悪化するように見えかねません。この問題が部分識別では見事にクリアされています。また、家庭内暴力(DV)被疑者逮捕の効果の比較に関して、ランダム化比較実験(RTC)、操作変数法、部分識別の3つの手法による政策効果の把握が試みられており、単純なオツムの私なんぞから見れば、かなり説得的です。ただし、最後に、完全な学術書ですから、グラフによる直観的な説明は優れている印象はあるものの、数式はバンバン登場しますし、とても難易度は高いと考えるべきです。その意味で、一般的なビジネスパーソン向きとはいえません。その意味で、著者の講演スライドが大阪大学のサイトにあるのを発見しましたので、それを見てから読むかどうかを決めるのも一案かという気がします。

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次に、木内登英『トランプ貿易戦争』(日本経済新聞出版社) です。著者は、ご存じ、最近まで日銀政策委員をしていた野村総研のエコノミストです。私は、チーフエコノミストやシニアエコノミストという肩書は知っていましたが、エグゼクティブエコノミストという肩書はこの著者で初めて知りました。ということで、本書のタイトル通りに、米中間の貿易戦争について取り上げています。基本的に、自由貿易を外れる貿易戦争、関税率引上げや輸入制限などに対しては、通常、エコノミストは批判的であり、本書も同様です。ただ、本書の米中貿易戦争に対する分析は、かなり多くのエコノミストの緩やかなコンセンサスの通り、というか、ハッキリいえば、特段の新しい発見のないありきたりな内容ともいえます。すなわち、米中間の貿易戦争に突入したのは、おおむね米国サイドの要因であり、2017年中は特段のアクションなかった米国トランプ政権が、2018年になって急に中国の貿易不均衡にセンシティブになり、関税率引上げなどの行動に出た背景は、核ミサイルをはじめとする北朝鮮問題で米朝間の直接対話に道が開かれ、中国の北朝鮮に対する影響力への期待が薄れ、それだけ強気に出ることが可能になった、という点が強調されています。そして、製造業の復権に強い期待をかけるトランプ大統領が、最先端技術分野で中国が米国を凌駕する恐れも中国への強硬姿勢の背景とされています。同時に、かなりバブリーな中国経済の現状に対しても、米国の関税引き上げに伴って経済にショックを生じて、景気が下り坂となれば、実体経済に加えて金融面からも大きなマイナスの影響を生じる可能性が指摘されています。そして、その対中強硬姿勢の理論的な支柱として、『米中もし戦わば』の著者であるナバーロ教授の存在を重視しています。本書でも指摘されている通り、かつて、日本に対しては口先介入を含めて「円高カード」を切って、かなり高圧的に経済交渉を持たざるを得なかった時期があり、私個人も1990年代半ばの日米包括経済協議の外交交渉に巻き込まれた経験があります。その日本の果たすべき役割について、自由貿易の利益を粘り強く米国に訴える、というのはやや寂しい気もしますが、そういった対応策は別にして、背景を含めた現在の米中貿易戦争、そして、それに伴って生じ得る中国経済の何らかの困難、などについて、コンパクトに理解するには役立つ読書だった気がします。

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次に、バーリ・ゴードン『古代・中世経済学史』(晃洋書房) です。著者はオーストラリアのニューカッスル大学教授であり、専門はキリスト教経済思想や古典経済学だそうです。英語の原題は Wconomic Analysis before Adam Smith であり、もっとも最初の出版は1975年だそうです。原題からも理解できる通り、アダム・スミスが経済学の創始者であるという、我々エコノミストの常識を真っ向から否定していて、古典古代から経済学の歴史を説き起こしています。よく間違われるんですが、私は大学のころは経済史のゼミにいて、経済史は経済の歴史ですので、かなり大昔にさかのぼっても何らかの経済活動がある以上は経済史は成り立ちます。一般には、マルクス主義的な経済史では古典古代の奴隷制から始まって、中世の封建制ないし農奴制、近代の資本制、さらに、革命を経て社会主義や共産主義が来る、ということになっていたわけです。他方、経済学史は経済学の歴史ですから、アダム・スミス以前は経済学が近代的な科学として成り立っていなかったので、本書のようなアダム・スミス以前の経済学史については、意味がないと考えられているわけです。しかし、私の暴行の京都大学経済学部の経済学史の口座を持っていた出口先生の言葉を訳者あとがきで引いていて、「経済生活の知的反省」と考えれば、スミス以前の経済学も考えることは出来るのかもしれません。私は、たぶん、古典古代からの経済学のテーマとしては、勤労はほぼほぼ一致した重要性が与えられるとして、貨幣と利子に関する考察、さらに、狭い範囲ながら交易の考察が含まれるべきと考えますが、本書ではそれぞれの時代の知識人の経済学的な活動を編年体で構成しています。もちろん、価値と価格の問題など、とても興味深いテーマも含まれています。全般的には、私のような不勉強な人間には、かなり判りにくい内容です。

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次に、小島寛之『宇沢弘文の数学』(青土社) です。著者は大学の学部で数学を修めた後、大学院では経済学に転向して宇沢教授に師事した経済学者です。専門は数理経済学のようです。ということで、タイトルは数学となっているんですが、私は宇沢先生の経済学の方がいいように感じました。唯一、数学的な理解が深まったのは、数学の言語性と数学能力が人類の innate と宇沢先生が表現したような先天的な形質かもしれない、という点かと思います。演繹的な数学と帰納的な統計の対比もなかなか興味深いと感じました。その一方で、数学ではなく宇沢先生の経済学は、典型的に、倫理感を重視し、本書にもある通り、その昔のシカゴ学派のベッカー教授のような合理性は、必ずしも肯定されません。合理的に薬物の乱用に走るのはあくまで非合理、という考えです。ですから、いつも称しているように、官庁エコノミストにして左派、という私の考え方にはとても親和性があります。著者は、冒頭に、経済学は数学の応用分野ながら、現実の説明力に乏しい、と記していて、まあ、多くの人が感じているところではないかという気がします。そして、宇沢先生の力点は市場が完結しているわけでも、市場化が効率化を意味するわけでもない、という点にあるんですが、その市場の解決策として宇沢先生は社会的共通資本を持ち出すわけですが、そこにおける政府の役割が私にはハッキリしません。単に、人間関係や流行りの絆とか、単なる文化的な共通認識で市場の不完全性を正すことができるとは私にはとても思えません。最近の日産・ルノーのカルロス・ゴーンの事件も、人間としての欲望丸出しで、ベッカー的な合理性ある犯罪なのかもしれませんが、こういった資本主義、というか、現代経済の歪みを正すのが社会的共通資本であるというのは、マルクス主義に対する空想的社会主義のように私には見えます。理想論は大いに共鳴するところがあるものの、もう少し地に足つけた議論も必要ではないでしょうか。

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次に、山本勲『労働経済学で考える人工知能と雇用』(三菱経済研究所) です。著者は、日銀から慶應義塾大学の研究者に転じた経済学者です。私も面識ありますが、労働経済学が専門だったりします。タイトルにあるような人工知能という狭い範囲ではなく、技術革新というもう少し広い視野から雇用を考えています。すなわち、技術と雇用が代替的であって、新技術の採用とともに雇用が減少するケースもあれば、保管的であって雇用が謳歌する場合もある、ということになります。そして、1980年台の英国サッチャー政権や米国レーガン政権の発足などとともに、格差が拡大した事実については、スキル偏向型技術革新仮説について、スキルに対するプレミアムの見方を、中間層の没落と貧困層と高所得層の増加という二極化を説明できない、などの理由から否定し、routinization 仮説=定型化仮説に基づく非定形化した業務への高報酬とする説を支持しています。そして、英国オックスフォード大学の研究者の成果も取り上げられており、AIに代替される雇用についても、Autor ほかによる AML タスクモデルの観点から疑問を提示しています。100ページ足らずのボリュームで、本というよりもパンフレットのような出版物ですが、それなりの内容を含んでいる気がします。

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最後に、服部泰宏・矢寺顕行『日本企業の採用革新』(中央経済社) です。著者2人は神戸大学大学院の同級生らしく、阪神方面で経営学の研究者をしています。タイトル通りの内容なんですが、もう少し詳しく展開すると、2016年卒業生の採用から、人手不足が顕著になり、いわゆる売り手市場が現出したことから、いくつかの企業で採用に関する革新が生まれ、その革新の謎解きをしています。ただ、「革新」は経済学では通常シュンペーター的な新機軸を指していて、英語では inovetion であるのに対して、上の表紙画像に見られる通り、本書では regeneration を使っています。経済学を大学時代に専攻していて、官庁エコノミストを自称する私には見慣れない「革新」だという気がします。本書の著者もそれには気付いているようで、第3章では、経営課題としては新規顧客の獲得や顧客との関係強化が上げられる場合が多く、採用が経営課題として認識されているのでなければ、何らかの確信をもって採用活動を変革しようとするインセンティブは小さい、と指摘してます。それはともかく、本書では採用の革新を募集活動の革新、選抜の革新、募集と選抜の革新、革新の対外発信、他企業との協力の5カテゴリーに分類しています。その上で、採用活動の従来系について、入学偏差値の高い大学の卒業生であって、頭脳明晰かつ明朗闊達な人材を採用する、そのために、早い時期から時間をかけて多くの志願学生から選抜する、という点が重視されてきたところ、このパターンから外れるユニークな採用を2016年スつ行政に対して実施した3社のケーススタディを実施しています。ただ、私が疑問に感じているのは、いつもながらの経営学のケーススタディですから、取り上げられたサクセス・ストーリーの裏側に死屍累々たる失敗例がいっぱいあるんではないか、という点です。そして、いつもの通り、その疑問には答えてくれていません。加えて、採用の革新例として、広く報じられた2社の採用革新、すなわち、ドワンゴの受験料徴収と岩波書店のコネ限定を冒頭に取り上げていますが、人手不足下の売り手市場に対応したものではないんではないか、という気もします。
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