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2021年09月30日 (木) 14:30:00

8月の鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計はともに大きなマイナスを記録!!!

本日、経済産業省から8月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、それぞれ公表されています。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲3.2%の減産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比▲3.2%減の12兆180億円、季節調整済み指数でも前月から▲4.1%の減少を記録しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を手短かに引用すると以下の通りです。

8月の鉱工業生産、前月比3.2%低下 9月予測は0.2%上昇
経済産業省が30日発表した8月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み)速報値は、前月比3.2%低下の95.0だった。低下は2カ月連続。生産の基調判断は「持ち直している」から「足踏みをしている」に変更した。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比0.5%低下だった。
出荷指数は3.8%低下の92.7で、在庫指数は0.3%低下の94.7。在庫率指数は3.4%上昇の113.3だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では9月が0.2%上昇、10月は6.8%上昇を見込んでいる。
8月の小売販売額、3.2%減
経済産業省が30日発表した8月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比3.2%減の12兆180億円だった。減少は6カ月ぶり。季節調整済みの前月比は4.1%減だった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が4.8%減の1兆6079億円だった。既存店ベースでは4.7%減だった。
コンビニエンスストアの販売額は1.2%減の1兆191億円だった。


やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期なんですが、2020年5月を直近の景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれギリギリ下限近くという結果でした。加えて、足元の9月については、製造工業生産予測指数で見て+0.2%の増産を予測していますが、バイアスを補正すると▲1.3%の減産ですから、3か月連続の減産はかなり確度が高いと覚悟すべきです。このため、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である経済産業省では基調判断を「持ち直している」から「足踏みをしている」に明確に1ノッチ引き下げています。ただし、10月は+6.8%の増産が見込まれています。基本的に、広く報じられているように、9月の減産は半導体の供給制約などによる自動車の減産に起因しています。ですから、自動車工業は前月比で▲15.2%の減産とマイナス寄与がもっとも大きくなっています。これに次ぐのが電気・情報通信機械工業の▲10.6%減です。我が国のリーディング・インダストリーといえます。今後の生産の行方は半導体の供給制約次第という面はありますが、大雑把には、内需に依存する部分の大きい非製造業とは違って、世界経済の回復とともに製造業の生産は緩やかに回復方向にあるのは間違いないと私も考えていますが、半導体の供給制約に加えて、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック次第で、それほど単純な道のりではない、と考えるべきです。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。前のIIPのグラフと同じで、影を付けた部分は景気後退期であり、直近の2020年5月を景気の谷として暫定的にこのブログのローカルルールで同定しています。繰り返しになりますが、通常、この統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で見ていて、そ前年同月比も、ついでに、季節調整済み指数の前月比も、かなり大きなマイナスなのですが、経済産業省のリポートでは、季節調整済み指数の後方3か月移動平均で基調判断を示しているようで、8月の移動平均指数は前月から0.0%の横ばいとなっており、基調判断は「横ばい傾向」で据え置いています。ただし、いつもの注意点ですが、商用販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていないことから、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響は過小評価されている可能性が高い、と考えるべきです。すなわち、飲食や宿泊のような対人接触型のサービスが緊急事態宣言で受けるネガティブな影響は、商業販売統計には十分には現れないことが予想され、実際の日本経済の先行きについてはこの統計よりも悲観的に見るべきであると私は考えています。

明日は、注目ながら方向感に欠ける日銀短観に加えて、失業率や有効求人倍率などの雇用統計も公表される予定です。それなりに、注目かもしれません。
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