2022年03月04日 (金) 23:30:00
大きな雇用増を記録した米国雇用統計から米国金融政策を考える!!!
日本時間の今夜、米国労働省から2月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は昨年2021年から着実にプラスを記録していましたが、本日公表の1月統計では+678千人増と大幅増を記録し、失業率は前月の4.0%から2月には3.8%に低下しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を6パラだけ引用すると以下の通りです。
よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+400千人程度の雇用増が予想されていたため、実績の+678千人増は大きく上振れた印象です。先日3月2~3日の議会証言で米国連邦準備制度理事会(FED)のパウエル議長は雇用の現状について "The labor market is extremely tight." と表現しています。失業率も3.8%ですし、これはFEDが長期的な均衡水準と見ている失業率の4.0%を下回っています。ですから、総合的に考えると、米国雇用は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大もあって、人手不足が続いていると考えるべきです。そして、この人手不足による賃金上昇が国際商品市況における石油などの資源価格の上昇と相まって、米国の消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は、昨年2021年12月に+7%に達していて、今年202年1月には+7.5%を記録しています。ですから、3月に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利が引き上げられる運びとなっており、量的緩和政策によって膨らんだバランスシートの縮小も進むのではないかと見られています。いずれにせよ、米国金融政策は明らかに景気回復よりもインフレ抑制を重視する引締めモードに入っており、日銀との金融政策スタンスの差が大きくなる可能性があります。
私のような高圧経済支持者からすれば、COVID-19パンデミック前には失業率は3%台半ばだったわけですから、現状ではまだCOVID-19の影響を脱したとはいえまず、多少のインフレを許容してでも今少し需要拡大を図るのも一案だと考えていますが、インフレ動向からすれば金融政策が引き締め方向に進むのは当然と考えるエコノミストも多いのかもしれません。オミクロン型変異株の感染拡大が終息したとはとても思えない段階ながら、金融政策はポストコロナの新たな段階に入りつつあるようです。
Economy added 678,000 jobs in February as omicron faded, dining, travel picked up, unemployment fell to 3.8%
Employers added a roaring 678,000 jobs in February as COVID-19’s omicron variant faded, spurring idled employees to return to work and reviving dining, travel and other activities.
The unemployment rate fell from 4% to 3.8%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated that 400,000 jobs were added last month.
The 678,000 gains marks the strongest showing since July.
The drop in unemployment came even as the number of people working or looking for jobs grew by 304,000, pushing the labor force participation rate to 62.3% from 62.2%. That means more people caring for children and others on the sidelines are returning to a favorable labor market with rising wages.
Also encouraging: Job additions for December and January were revised up by a total 92,000.
よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは今年2020年2月を米国景気の山と認定しています。ともかく、2020年4月の雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたんですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

引用した記事にもあるように、Bloombergによる市場の事前コンセンサスでは+400千人程度の雇用増が予想されていたため、実績の+678千人増は大きく上振れた印象です。先日3月2~3日の議会証言で米国連邦準備制度理事会(FED)のパウエル議長は雇用の現状について "The labor market is extremely tight." と表現しています。失業率も3.8%ですし、これはFEDが長期的な均衡水準と見ている失業率の4.0%を下回っています。ですから、総合的に考えると、米国雇用は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のオミクロン型変異株の感染拡大もあって、人手不足が続いていると考えるべきです。そして、この人手不足による賃金上昇が国際商品市況における石油などの資源価格の上昇と相まって、米国の消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率は、昨年2021年12月に+7%に達していて、今年202年1月には+7.5%を記録しています。ですから、3月に開催される連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利が引き上げられる運びとなっており、量的緩和政策によって膨らんだバランスシートの縮小も進むのではないかと見られています。いずれにせよ、米国金融政策は明らかに景気回復よりもインフレ抑制を重視する引締めモードに入っており、日銀との金融政策スタンスの差が大きくなる可能性があります。
私のような高圧経済支持者からすれば、COVID-19パンデミック前には失業率は3%台半ばだったわけですから、現状ではまだCOVID-19の影響を脱したとはいえまず、多少のインフレを許容してでも今少し需要拡大を図るのも一案だと考えていますが、インフレ動向からすれば金融政策が引き締め方向に進むのは当然と考えるエコノミストも多いのかもしれません。オミクロン型変異株の感染拡大が終息したとはとても思えない段階ながら、金融政策はポストコロナの新たな段階に入りつつあるようです。
2022年03月04日 (金) 14:00:00
まずまず底堅い1月雇用統計に賃上げを期待する!!!
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも1月の統計です。失業率は前月から+0.1%ポイント上昇して2.8%を記録し、有効求人倍率は前月から+0.3ポイント上昇して1.20倍に達しています。全体として、雇用は緩やかな改善が続いている印象です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。ただし、どうしても12月データが利用可能になりましたので、年次統計の着目していて、もう少し頻度の高いデータで景気動向を探ろうという私の視点からはズレているような気もします。続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスについては、失業率が2.7%と、また、有効求人倍率は1.16倍と、ともに、前月統計から横ばいが予想されていた一方で、実績としては失業率がわずかながら悪化し、有効求人倍率は大きく改善を示しています。通常はそれほど注目されませんが、雇用の先行指標として新規求人は重要な指標だと私は考えており、上のグラフでも1月統計で大きく跳ねているのが見て取れます。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしていますが、厚生労働省のサイトによれば、季節調整していない原系列の統計ながら、1月の新規求人は前年同月と比較すると+14.6%増となり、産業別では、宿泊業・飲食サービス業が+38.8%増、製造業が+38.5%増、情報通信業が+24.7%増などとなっています。私が調べた範囲でも、宿泊業・飲食サービス業の雇用が回復しているだけに、正規よりも非正規雇用の増加が大きいのですが、足元での新型コロナウィルス感染症(COVID-19)、特にオミクロン型変異株の感染拡大を考えれば、こういった人的接触の多い産業での新規雇用増がどこまで続くかについては疑問が残ります。例えば、総務省統計局の労働力調査の追加参考表によれば、これも季節調整していない原系列の統計ながら、例えば、宿泊業・飲食サービス業の休業者は2021年10月12万人、11月13万人、12月10万人の水準でしたが、2022年1月には22万人と倍増していたりします。ただ、繰り返しになりますが統計に表れるマクロの雇用は底堅い印象です。いずれにせよ、先行きはコロナ次第、というのは私のエコノミストとしての限界です。
上のグラフは、昨日3月4日に開催された経済財政諮問会議に内閣府から提出された「我が国の所得・就業構造について」と題する資料から引用しており、全世帯の所得分布を総務省統計局の「全国消費実態調査」の個票を基に集計したものです。見れば明らかですが、直近の2019年調査と25年前の1994年調査を比較していて、再分配前でも後でも、年収400万円あたりを境にして、最近25年間で低所得層が増加し、高所得層が減少しています。加えて、所得の中央値も大きく下がっています。ですから、雇用は底堅くはあるものの、春闘の時期を迎えて、あらゆる意味で、賃金が上がることを私は願っています。
1月の失業率0.1ポイント悪化 求人倍率は1.20倍に上昇
総務省が4日発表した1月の完全失業率(季節調整値)は2.8%と前月から0.1ポイント上昇した。失業率の悪化は2カ月ぶり。厚生労働省が同日発表した1月の有効求人倍率(同)は1.20倍と、前月から0.03ポイント上がった。
完全失業者数は185万人と前年同月から14万人減り、7カ月連続のマイナスとなった。就業者数は前年同月に比べ32万人減の6646万人で4カ月連続で減少した。
休業者は前月から59万人増えて249万人となった。コロナ感染が拡大した「第5波」の時期にあたる2021年8月(250万人)以来の水準だった。新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の感染拡大やまん延防止等重点措置の適用が影響した。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対して何件の求人があるかを示す。コロナ感染が本格的に拡大する前にあたる19年後半や20年初めの1.5倍前後の水準には届いていない。
1月の有効求人(季節調整値)は前月比2.6%増え、有効求職者(同)は0.7%増だった。新規求人は前年からの反動もあり前年同月比で14.6%増えた。産業別にみると宿泊・飲食サービス業(38.8%増)や製造業(38.5%増)などが大きかった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。ただし、どうしても12月データが利用可能になりましたので、年次統計の着目していて、もう少し頻度の高いデータで景気動向を探ろうという私の視点からはズレているような気もします。続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスについては、失業率が2.7%と、また、有効求人倍率は1.16倍と、ともに、前月統計から横ばいが予想されていた一方で、実績としては失業率がわずかながら悪化し、有効求人倍率は大きく改善を示しています。通常はそれほど注目されませんが、雇用の先行指標として新規求人は重要な指標だと私は考えており、上のグラフでも1月統計で大きく跳ねているのが見て取れます。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしていますが、厚生労働省のサイトによれば、季節調整していない原系列の統計ながら、1月の新規求人は前年同月と比較すると+14.6%増となり、産業別では、宿泊業・飲食サービス業が+38.8%増、製造業が+38.5%増、情報通信業が+24.7%増などとなっています。私が調べた範囲でも、宿泊業・飲食サービス業の雇用が回復しているだけに、正規よりも非正規雇用の増加が大きいのですが、足元での新型コロナウィルス感染症(COVID-19)、特にオミクロン型変異株の感染拡大を考えれば、こういった人的接触の多い産業での新規雇用増がどこまで続くかについては疑問が残ります。例えば、総務省統計局の労働力調査の追加参考表によれば、これも季節調整していない原系列の統計ながら、例えば、宿泊業・飲食サービス業の休業者は2021年10月12万人、11月13万人、12月10万人の水準でしたが、2022年1月には22万人と倍増していたりします。ただ、繰り返しになりますが統計に表れるマクロの雇用は底堅い印象です。いずれにせよ、先行きはコロナ次第、というのは私のエコノミストとしての限界です。
上のグラフは、昨日3月4日に開催された経済財政諮問会議に内閣府から提出された「我が国の所得・就業構造について」と題する資料から引用しており、全世帯の所得分布を総務省統計局の「全国消費実態調査」の個票を基に集計したものです。見れば明らかですが、直近の2019年調査と25年前の1994年調査を比較していて、再分配前でも後でも、年収400万円あたりを境にして、最近25年間で低所得層が増加し、高所得層が減少しています。加えて、所得の中央値も大きく下がっています。ですから、雇用は底堅くはあるものの、春闘の時期を迎えて、あらゆる意味で、賃金が上がることを私は願っています。
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