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2022年05月31日 (火) 16:00:00

減産に転じた鉱工業生産指数(IIP)と横ばいから持ち直しに転じた商業販売統計と堅調な雇用統計と消費者態度指数をいっぺんに見る!!!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、さらに、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも4月の統計です。IIPのヘッドラインとなる生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.3%の減産でした。商業販売統計のうちの小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+2.9%増の12兆5510億円、季節調整済み指数でも前月から+0.8%増を記録しています。失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.5%を記録し、有効求人倍率は前月を+0.01ポイント上回って1.23倍に達しています。まず、とても長くなりますが、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じた記事を手短かに引用すると以下の通りです。

4月の鉱工業生産指数1.3%低下 上海など都市封鎖影響
経済産業省が31日に発表した4月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整済み)は95.2となり、前月比1.3%下がった。電子部品・デバイス工業、生産用機械工業、自動車工業などが低下し、3カ月ぶりのマイナスになった。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた中国の上海市をはじめとする都市封鎖(ロックダウン)などに伴い、生産や物流が停滞した影響が出た。
2月以降は新型コロナに伴う供給制約の影響が和らいで回復していたが下落に転じた。経産省は生産の基調判断を前月までの「持ち直しの動きがみられる」から「足踏みをしている」に引き下げた。
全15業種のうち7業種が低下、8業種は上昇した。電子部品・デバイス工業はモス型半導体集積回路(メモリ)や液晶パネルの生産が減り、6.6%下落した。新型コロナを受けたパソコンやゲームなどの「巣ごもり需要」が一服した影響が出たもようだ。
生産用機械工業は2.7%、自動車工業は0.6%の低下だった。上海市などのロックダウンで部品の調達や物流が滞ったことが響いた。
電気・情報通信機械工業は4.7%、汎用・業務用機械工業は3.5%、無機・有機化学工業、医薬品を除く化学工業は4.3%上昇した。
主要企業の生産計画から算出する生産予測指数は5月が4.8%、6月は8.9%の上昇を見込む。5月はロックダウンの影響が続くものの部品などの調達の制約が一定程度緩和される見通しだ。中国・上海市が6月1日にロックダウンを解除するため6月はさらなる回復が進みそうだ。ただ新型コロナの変異型などが再び拡大するリスクは残り、先行きは見通せない状況が続く。
小売販売額、4月2.9%増 基調判断「持ち直しの動き」
経済産業省が31日発表した4月の商業動態統計速報によると、小売業販売額は前年同月比2.9%増の12兆5510億円だった。外出が増えたことなどが影響し、2カ月連続で増加した。百貨店などで前年同月を上回り、経産省は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に引き上げた。
百貨店は前年同月比18.2%増の4181億円となった。経産省は「2021年までの時短営業や休業の反動に加え、外出の機会が増加した」と分析した。
スーパーは0.6%増の1兆2058億円、コンビニエンスストアは2.7%増の9873億円、家電大型専門店は1.4%増の3578億円だった。ホームセンターは1.5%減の2986億円だった。
小売業販売額を季節調整済みの前月比で見ると0.8%増加した。
失業率3カ月連続改善 4月2.5%、まん延防止解除が影響
総務省が31日発表した4月の完全失業率(季節調整値)は、前月から0.1ポイント下がり2.5%となった。改善は3カ月連続となる。厚生労働省が同日公表した4月の有効求人倍率も0.01ポイント上昇の1.23倍と4カ月連続で改善した。
新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置による行動制限が3月に解除され、経済活動が活発になった影響がみられる。一方、ロシアのウクライナ侵攻による原材料不足や円安などの不安材料もある。
有効求人倍率は仕事を探す1人に対して求人が何件あるかを指す。4月の有効求人数は前月に比べ0.9%増えた一方、有効求職者数は0.1%減ったため倍率は上がった。
新規求人数(原数値)は前年同月比12.3%増だった。特に宿泊業、飲食サービス業での改善が著しく、49.6%増となった。低調だった前年からの反動もある。製造業は21.9%増、サービス業は15.3%増だった。
就業地別の有効求人倍率は、最高が福井県の1.99倍、最低が沖縄県の0.92倍だった。


まあ、どうしても、数多くの統計を取り上げていますので長くなってしまいます。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月と比べて▲0.2%のわずかな減産という予想でしたが、実績の▲1.3%減は予想レンジの下限である▲1.5%減に近いと私は受け止めています。減産の主因は海外需要の減少、特に、上海のロックダウンに起因すると考えられています。また、先行きに関しては、引用した記事にもある通り、製造工業生産予測指数によれば5月の増産は+4.8%なのですが、経済産業省では上方バイアスを除去すると補正値では▲0.5%の減産との試算を出しています。そんなこんなで、これも引用した記事にあるように、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断を前月までの「持ち直しの動きがみられる」から「足踏みをしている」に引き下げています。ただ、今月の減産の主因がホントに海外需要の減少、特に、上海のロックダウンであるのなら、広く報道されているように、明日の6月1日からロックダウンが解除されれば、5月はともかく、6月の生産は増産に転じる可能性が十分あります。加えて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の新規感染拡大も抑制されていますから期待は大きいものがあります。生産は減産を記録したものの、出荷は前月から横ばいですし、在庫率は低下して在庫の解消は進んでいますから、ますます期待は膨らみます。ただ、自動車の半導体不足などについては、ウクライナ情勢とともに、先行きは不透明です。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。ということで、上海のロックダウンなど、海外需要の減退を受けて生産が足踏みしている一方で、小売販売は3月21日にまん延防止等重点措置が終了したことに伴って、内需にサポートされた回復を示していると私は受け止めています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均で判断している経済産業省のリポートでは、4月統計では、この3か月後方移動平均が+0.5%の上昇となり、基調判断を「横ばい傾向」から「持ち直しの動き」に上方改定しています。ただし、いつもの注意点ですが、2点指摘しておきたいと思います。すなわち、第1に、商業販売統計は物販が主であり、サービスは含まれていません。第2に、商業販売統計は名目値で計測されていますので、価格上昇があれば販売数量の増加なしでも販売額の上昇という結果になります。ですから、サービス業へのダメージの大きな新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の影響、さらに、足元での物価上昇の影響は、ともに過小評価されている可能性が十分あります。すなわち、物販よりも飲食や宿泊のような対人接触型のサービスがCOVID-19の感染拡大で受けるネガティブな影響が大きいのですが、商業販売統計には十分には現れていない、と考えるべきです。加えて、燃料小売業の販売額は前年同月比で+13.9%増なのですが、かなりの部分は物価上昇による水増しが占めると考えられ、売上数量が伸びているというよりも、販売単価、すなわちインフレ部分が大きいのではないかと私は想像しています。この2点を考え合わせると、実際の日本経済の現状についてはこの統計よりもさらに現実的に見る必要が十分あります。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。失業率も有効求人倍率もともにわずかながら改善しましたので、やや鈍い動きながらも雇用は底堅いと私は評価しています。他方で、3月21日になって全面的にまん延防止等重点措置が解除されたとはいえ、コロナ禍が続く中で景気回復の足取りは鈍く、1月から3月にかけては、季節調整していない原系列の休業者数の前年同月差が、3か月連続で増加していましたが、4月には前年から10万人の減少となりました。正規の職員・従業員はまだ4月統計でも前年から+5万人休業者が増加しているのですが、パートは▲5万人、アルバイトも▲8万人、非正規の職員・従業員合わせて▲13万人の休業者が増加しています。非正規雇用の増加に関しては、いろいろな見方があるでしょうが、ジワジワと雇用の裾野が広がっていることが実感できます。

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最後に、本日、内閣府から5月の消費者態度指数が公表されています。前月から+1.1ポイント上昇し34.1を記録しています。指数を構成する指標のうち、「雇用環境」が2.9ポイント上昇し39.0と、特に大きく前月から上昇しています。ということで、消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。
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