2023年03月01日 (水) 16:00:00
日本の賃金について考えるニッセイ基礎研究所のリポート「生産性向上が先か、賃上げが先か」やいかに?
一昨日、今週月曜日の2月27日に、日本の生産性と賃金に関してニッセイ基礎研究所から「生産性向上が先か、賃上げが先か」と題するリポートが明らかにされています。まあ、何と申しましょうかで、シンクタンクの数ページのリポートで日本の賃金を語り尽くせるわけもないのですが、少なくとも途中までの分析は秀逸であり、ほぼほぼ私も合意できる内容ですので、簡単に見ておきたいと思います。
まず、上のグラフはリポートから 名目賃金の国際比較 を引用しています。いわゆるバブル経済崩壊の1990年を起点としていますので、特に差が際立っているとはいえ、国際比較すると我が国の賃金がほとんど伸びていない、というより、やや減少すら示している点が確認できると思います。このあたりは、同様の指摘が相次いでいて、「韓国にも抜かれた」といった論調があるのは広く知られているとおりかと思います。もっとも、リポートでも指摘していますが、この間、我が国はデフレでもありましたので、実質賃金で見ると、2倍を超えるような大きな差なはない、とはいうものの、数十パーセントの開きが生じていることは確かです。
そして、経営サイドからは「生産性が伸びないから賃金が伸びない」と言った反論がなされる場合が多いのですが、それを否定するのが上のグラフであり、リポートから 労働生産性(時間当たり)の国際比較 を引用しています。国際比較をすると、時間当たりの労働生産性は名目賃金ほどの乖離がない点は明らかです。米国には及びませんが、我が国の時間当たり労働生産性は欧州先進各国と大差ないと感じるのは私だけではないと思います。イタリアを上回ってすらいます。そして、ここまでの分析は、リクルートワークス研究所のサイトでも同様の結論となっています。
そして、時間当たりの労働生産性がそれほど差がないにもかかわらず、賃金では大きな差を生じている原因として、上のグラフの通り、リポートでは 労働生産性(時間当たり)の要因分解 を示して、労働時間減少の寄与が大きいからである、と指摘しています。まったくその通りです。そして、別の表現をすれば、上のグラフでは黄色っぽい労働投入量の削減による生産性向上となっていて、緑のGDP=付加価値の拡大を伴わないからである、との指摘です。特に、家計消費と設備投資の停滞を考慮し、家計消費の拡大のためには賃上げが必要、との結論です。生産性向上と賃上げの「ニワトリとタマゴ」の関係では、我が国の生産性の伸びは先進諸国と比較しても遜色ないのであるから、賃上げが欠けている、という結論は十分に受入れられるものです。ただ、1点だけ忘れるべきでないのは。労働投入の削減、すなわち、労働時間の減少がいわゆる「働き方改革」などによってもたらされているわけではない、という事実です。下のグラフは、やや古いんですが、2013年に開催された厚生労働省の雇用政策研究会の資料「正規雇用労働者の働き方について」から引用しています。左のパネルが 年間総実労働時間の推移(パートタイム労働者を含む)、右が 就業形態別年間総実労働時間及びパートタイム労働者比率の推移 となっています。横軸の始点である平成6年はバブル経済崩壊後の1994年、最終データのある平成24年は2012年です。このグラフに収録された20年近くの間に、左のパネルに示されているように、正規と非正規を合わせた年間の総実労働時間は1900時間超から1800時間弱に▲100時間あまり減少しましたが、右のパネルから正規=一般労働者の総実労働期間がまったく減少していないのが見て取れます。他方で、パートタイム労働者の比率は10%強から25%近くに上昇しています。すなわち、賃金が上がらないのは、労働時間が減少しているからであり、労働時間が減少しているのはパートタイム労働者などの非正規雇用が拡大しているからである、と結論されるべきです。ですから、ニッセイ基礎研究所のリポートは、前段の 労働時間の減少 → 賃金が上がらない、は十分に分析されているのですが、後段の 非正規雇用の拡大 → 労働時間の減少、にまで分析が及んでいません。私は、ニッセイ基礎研究所のリポートにあるように、特に現在のような高インフレ下では、需要サイドで 賃上げ → 付加価値拡大、もとても重要だと思いますが、供給サイドで 非正規雇用の拡大 → 労働時間の減少、にも目を向けるべきであり、賃上げほかの手段による需要拡大とともに、何らかの非正規雇用への歯止めが必要だと考えています。ただ、こういった「非正規雇用歯止め」論は支持がないのだろうということは自覚しています。でも、同じように長期のトレンドに抗している反グローバリズムも一定の支持を得ているわけですし、非正規雇用歯止め論も主張し続けるべきだと私は考えています。
まず、上のグラフはリポートから 名目賃金の国際比較 を引用しています。いわゆるバブル経済崩壊の1990年を起点としていますので、特に差が際立っているとはいえ、国際比較すると我が国の賃金がほとんど伸びていない、というより、やや減少すら示している点が確認できると思います。このあたりは、同様の指摘が相次いでいて、「韓国にも抜かれた」といった論調があるのは広く知られているとおりかと思います。もっとも、リポートでも指摘していますが、この間、我が国はデフレでもありましたので、実質賃金で見ると、2倍を超えるような大きな差なはない、とはいうものの、数十パーセントの開きが生じていることは確かです。
そして、経営サイドからは「生産性が伸びないから賃金が伸びない」と言った反論がなされる場合が多いのですが、それを否定するのが上のグラフであり、リポートから 労働生産性(時間当たり)の国際比較 を引用しています。国際比較をすると、時間当たりの労働生産性は名目賃金ほどの乖離がない点は明らかです。米国には及びませんが、我が国の時間当たり労働生産性は欧州先進各国と大差ないと感じるのは私だけではないと思います。イタリアを上回ってすらいます。そして、ここまでの分析は、リクルートワークス研究所のサイトでも同様の結論となっています。
そして、時間当たりの労働生産性がそれほど差がないにもかかわらず、賃金では大きな差を生じている原因として、上のグラフの通り、リポートでは 労働生産性(時間当たり)の要因分解 を示して、労働時間減少の寄与が大きいからである、と指摘しています。まったくその通りです。そして、別の表現をすれば、上のグラフでは黄色っぽい労働投入量の削減による生産性向上となっていて、緑のGDP=付加価値の拡大を伴わないからである、との指摘です。特に、家計消費と設備投資の停滞を考慮し、家計消費の拡大のためには賃上げが必要、との結論です。生産性向上と賃上げの「ニワトリとタマゴ」の関係では、我が国の生産性の伸びは先進諸国と比較しても遜色ないのであるから、賃上げが欠けている、という結論は十分に受入れられるものです。ただ、1点だけ忘れるべきでないのは。労働投入の削減、すなわち、労働時間の減少がいわゆる「働き方改革」などによってもたらされているわけではない、という事実です。下のグラフは、やや古いんですが、2013年に開催された厚生労働省の雇用政策研究会の資料「正規雇用労働者の働き方について」から引用しています。左のパネルが 年間総実労働時間の推移(パートタイム労働者を含む)、右が 就業形態別年間総実労働時間及びパートタイム労働者比率の推移 となっています。横軸の始点である平成6年はバブル経済崩壊後の1994年、最終データのある平成24年は2012年です。このグラフに収録された20年近くの間に、左のパネルに示されているように、正規と非正規を合わせた年間の総実労働時間は1900時間超から1800時間弱に▲100時間あまり減少しましたが、右のパネルから正規=一般労働者の総実労働期間がまったく減少していないのが見て取れます。他方で、パートタイム労働者の比率は10%強から25%近くに上昇しています。すなわち、賃金が上がらないのは、労働時間が減少しているからであり、労働時間が減少しているのはパートタイム労働者などの非正規雇用が拡大しているからである、と結論されるべきです。ですから、ニッセイ基礎研究所のリポートは、前段の 労働時間の減少 → 賃金が上がらない、は十分に分析されているのですが、後段の 非正規雇用の拡大 → 労働時間の減少、にまで分析が及んでいません。私は、ニッセイ基礎研究所のリポートにあるように、特に現在のような高インフレ下では、需要サイドで 賃上げ → 付加価値拡大、もとても重要だと思いますが、供給サイドで 非正規雇用の拡大 → 労働時間の減少、にも目を向けるべきであり、賃上げほかの手段による需要拡大とともに、何らかの非正規雇用への歯止めが必要だと考えています。ただ、こういった「非正規雇用歯止め」論は支持がないのだろうということは自覚しています。でも、同じように長期のトレンドに抗している反グローバリズムも一定の支持を得ているわけですし、非正規雇用歯止め論も主張し続けるべきだと私は考えています。
2023年03月01日 (水) 10:00:00
今日はカミさんの誕生日

今日は、カミさんの誕生日です。
私も9月には65歳になります。まだ先は長い気がしますが、いつ何時なにがあってもいいように考えておくべきタイミングかも知れません。
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