2014年07月06日 (日) 10:37:00
今週の読書はイアン・モリス『人類5万年 文明の興亡』ほか歴史の教養書
先週の読書は上下巻のセットで2セット合わせて4冊、少し少ないように見えますが、歴史に関する教養書です。
まず、イアン・モリス『人類5万年 文明の興亡』上下 (筑摩書房) です。著者は英国出身でケンブリッジ大学で学位を取得し、現在は米国のスタンフォード大学の教授です。原題は Why the West Rules - For Now です。著者独自の「社会発展指数」を基に、古代は西洋がリードし、中性では東洋が逆転し、産業革命以降の近代は西洋が支配している、という事実を明らかにしています。私はかなり単純な歴史認識を持っており、現時点で西洋が世界を支配しているのは世界に先駆けて産業革命を経験したからであり、どうして18世紀英国やその後の西洋で産業革命が起こったかといえば、人口が少ないために人間に取って代わる機械が発明される必然があったからだと考えています。私は基本的に歴史の流れは微分方程式に添っていると考えていますが、この産業革命だけは特異点でありこの時期は微分可能ではありません。おそらく、この本の著者と私は同じ考えであり、現時点で西洋が世界を支配しているのは産業革命を世界で最初に起こしたからであり、そうはいっても、西洋が世界を支配しているのはあくまで for now のことであり、将来的に東洋が再逆転する可能性も十分ありえる、というのは著者と私の共通認識ではないかという気がします。大きく異なるのは、産業革命の原因についてであり、私が産業革命を人手不足解消のための機械化の進行が原因と考えているのに対して、著者は地理的な要因を重視している点です。でも、非常に興味深い論考です。歴史にそれなりの興味を持っている教養人・読書子は、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』などの一連のシリーズやアセモグル&ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』などとともに、何とかして読んでおくべき本だと言えます。一応、参考までに日経新聞と朝日新聞の書評へのリンクを張っておきます。
そして、マーティン・ジェイクス『中国が世界をリードするとき』上下 (NTT出版) です。著者はジャーナリストで、イギリス共産党の機関紙である Marxism Today の編集長を務めたようですから、共産主義者なんだろうと思います。ユーロ・コミュニズムでは大陸系のフランス、イタリア、スペインなどが有名なんですが、英国はよく分かりません。なお、本書の原題は When China Rules the World となっており、まさに、上で取り上げた『人類5万年 文明の興亡』の続きのような本と言えます。でも、歴史書・教養書としてはかなりレベルは落ちます。それは覚悟して読むべきでしょう。でも、指摘しているポイントはかなり的確であり、中国は国民国家ではなく文明的な存在である分析したり、米国のマニフェスト・デスティニーと中華思想を対応させたり、マルクス主義よりも儒教的な見方の方が中国は理解しやすいと指摘したり、なかなかのもんだと思います。でも、中国の経済規模が米国を上回ることは近い将来にあり得ると私も同意しますが、パクス・アメリカーナの次に世界的なレベルでパクス・シニカが来ると思っている人は少なそうな気がします。この本についても、参考までに日経新聞の書評へのリンクを張っておきます。
今週は先週の続きで、ウォルター・ラッセル・ミード『神と黄金』上下を読みたいと考えています。でも、まだ下巻が届いていません。間に合うんでしょうか?
まず、イアン・モリス『人類5万年 文明の興亡』上下 (筑摩書房) です。著者は英国出身でケンブリッジ大学で学位を取得し、現在は米国のスタンフォード大学の教授です。原題は Why the West Rules - For Now です。著者独自の「社会発展指数」を基に、古代は西洋がリードし、中性では東洋が逆転し、産業革命以降の近代は西洋が支配している、という事実を明らかにしています。私はかなり単純な歴史認識を持っており、現時点で西洋が世界を支配しているのは世界に先駆けて産業革命を経験したからであり、どうして18世紀英国やその後の西洋で産業革命が起こったかといえば、人口が少ないために人間に取って代わる機械が発明される必然があったからだと考えています。私は基本的に歴史の流れは微分方程式に添っていると考えていますが、この産業革命だけは特異点でありこの時期は微分可能ではありません。おそらく、この本の著者と私は同じ考えであり、現時点で西洋が世界を支配しているのは産業革命を世界で最初に起こしたからであり、そうはいっても、西洋が世界を支配しているのはあくまで for now のことであり、将来的に東洋が再逆転する可能性も十分ありえる、というのは著者と私の共通認識ではないかという気がします。大きく異なるのは、産業革命の原因についてであり、私が産業革命を人手不足解消のための機械化の進行が原因と考えているのに対して、著者は地理的な要因を重視している点です。でも、非常に興味深い論考です。歴史にそれなりの興味を持っている教養人・読書子は、ジャレド・ダイアモンドの『銃・病原菌・鉄』などの一連のシリーズやアセモグル&ロビンソン『国家はなぜ衰退するのか』などとともに、何とかして読んでおくべき本だと言えます。一応、参考までに日経新聞と朝日新聞の書評へのリンクを張っておきます。
そして、マーティン・ジェイクス『中国が世界をリードするとき』上下 (NTT出版) です。著者はジャーナリストで、イギリス共産党の機関紙である Marxism Today の編集長を務めたようですから、共産主義者なんだろうと思います。ユーロ・コミュニズムでは大陸系のフランス、イタリア、スペインなどが有名なんですが、英国はよく分かりません。なお、本書の原題は When China Rules the World となっており、まさに、上で取り上げた『人類5万年 文明の興亡』の続きのような本と言えます。でも、歴史書・教養書としてはかなりレベルは落ちます。それは覚悟して読むべきでしょう。でも、指摘しているポイントはかなり的確であり、中国は国民国家ではなく文明的な存在である分析したり、米国のマニフェスト・デスティニーと中華思想を対応させたり、マルクス主義よりも儒教的な見方の方が中国は理解しやすいと指摘したり、なかなかのもんだと思います。でも、中国の経済規模が米国を上回ることは近い将来にあり得ると私も同意しますが、パクス・アメリカーナの次に世界的なレベルでパクス・シニカが来ると思っている人は少なそうな気がします。この本についても、参考までに日経新聞の書評へのリンクを張っておきます。
今週は先週の続きで、ウォルター・ラッセル・ミード『神と黄金』上下を読みたいと考えています。でも、まだ下巻が届いていません。間に合うんでしょうか?
| BLOG TOP |