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2018年07月18日 (水) 20:12:00

OECD "The Long View: Scenarios for the World Economy to 2060" に見る超長期世界経済シナリオやいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、7月12日に経済協力開発機構(OECD)から "The Long View: Scenarios for the World Economy to 2060" (OECD Economic Policy Papers No.22) と題する超長期世界経済シナリオが公表されています。キチンとした参照文献としての表示は以下の通りです。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。



現時点での3%台半ばの成長率は徐々に低下して、特に、中国の世界経済の成長への寄与が縮小し、2060年には2%強に達する見込みですが、先進国とインド+中国といった新興国の成長への寄与のバランスが、ある意味で、よくなる、というか、イーブンに近づいたりもします。図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポート p.8 から Figure 1. The baseline scenario in a snapshot のうちの地域別と生産要素別のそれぞれの寄与度をプロットしています。すべてベースライン・シナリオなんですが、上のパネルから明らかな通り、世界経済の成長率は現在の+3%台半ばから2060年ころには+2%強にゆっくりと低下して行きますが、先進国の集まりであるOECD加盟国やインドの寄与度は、それほど大きく低下しない一方で、中国の寄与度が大きく低下するのが読み取れます。加えて、下のパネルからは、労働者1人当たりの資本装備率や労働の効率性については大きな変化ないものの、インプット側の労働投入の寄与が2040年ころからマイナスに転じるのが見て取れます。

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次に、上のグラフはリポート p.14 から Figure 3. Trend real GDP per capita growth, per cent のうちのOECDとBRICSのそれぞれの寄与度をプロットしています。縦軸のスケールが異なるので注意が必要で、すべてベースライン・シナリオなんですが、基本は世界経済の成長率と同じで、インプット側の労働の寄与が小さくなってマイナス化する一方で、資本装備率と労働の効率性による成長が続くんですが、後者の寄与の方が大きくなっています。テーブルの引用はしませんが、国別で潜在的な1人当たりGDPの伸び率は p.15 Table 1. The sources of potential real GDP per capita growth in the baseline scenario で示されています。2018~30年と2030~60年の2期間という極めて大雑把な括りながら、日本に着目すると、両方の期間で日本の潜在的な1人当たりGDPの伸び率はそれぞれ+1.4%と+1.8%であり、そのうちの労働の効率性の寄与が+1.1%と+1.4%、資本装備率の寄与は+0.2%と+0.7%、労働の効率性と資本装備率を足すと1人当たりGDPの伸び率を超えますので、人口減少、というか、労働投入の減少がマイナス寄与しているわけです。

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第1章の導入部と第2章でのベースライン・シナリオの提示を受けて、第3章から第6章の4章をかけて代替シナリオが分析されていて、第6章では自由貿易の重要性を論じているんですが、 上のグラフはリポート p.45 Figure 26. Impact of rising trade protectionism on world trend real GDP per capita を引用しています。いずれもベースライン・シナリオと比較していて、上のパネルが成長率の差、下がGDP水準の差です。貿易自由化が逆戻りして1990年の平均的な輸入関税に戻ると、世界全体の平均で長期的な1人当たりGDPが▲14%押し下げられ、もっとも大きな影響を受ける国々では▲15~20%下がる、と試算されています。また、第6章以外については、第3章では新興国の組織改革をはじめとする構造改革、第4章では先進国の生活水準と構造改革、第5章ではOECD加盟国における財政のサステイナビリティ、がそれぞれ取り上げられています。グラフは引用しませんが、第3章 p.23 Figure 6. Impact of governance reform, convergence in educational attainment and import tariff reductions on real GDP per capita in the BRIICS - decomposition by component では、こういったグラフのタイトルに当たる改革がなされれば、2060年時点でBRICS各国の1人当たりGDPがベースライン・シナリオに比べて+30~50%の上振れとなる、なんて結果が示されていたりします。

2060年をひとつのターゲットにした超長期シナリオの分析ということで、2060年といえば、もしも私が生きていると仮定すれば100歳を超えており、個人としてはこれらの結果を目にすることはかなり困難なところなんですが、それでも、エコノミストとしては興味あるところです。
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