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2019年06月19日 (水) 22:55:00

4か月ぶりの赤字を計上した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲7.8%減の5兆8351億円、輸入額も▲1.5%減の6兆8022億円、差引き貿易収支は▲9671億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の貿易収支、4カ月ぶり赤字 中国や韓国向け輸出落ち込む
財務省が19日発表した5月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9671億円の赤字だった。赤字は4カ月ぶり。中国や韓国向けの半導体等製造装置の輸出が落ち込んだ。米中貿易摩擦の激化などで、低迷する中国経済の影響を受けたようだ。世界全体の輸出額も6カ月連続の減少となった。
全体の輸出額は前年同月比7.8%減の5兆8351億円だった。中国向けの輸出額が9.7%減の1兆1485億円と、3カ月連続で減少したことなどが響いた。全体の輸入額は1.5%減の6兆8022億円。アラブ首長国連邦(UAE)からの液化天然ガスの輸入などが減った。
対欧州連合(EU)の貿易収支は過去最大となる2515億円の赤字となった。英国向けの医薬品の輸出が減った一方、金額の大きいフランスからの航空機類の輸入増が影響した。
対米国の貿易収支は3950億円の黒字で、黒字額は14.8%増加した。自動車や半導体等製造装置の輸出が増え、3カ月連続の増加となった。
5月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=111円07銭。前年同月に比べ1.8%の円安・ドル高に振れた。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、5月の貿易収支は▲1兆290億円の赤字でしたので、丸めて▲1兆円の貿易赤字という意味でほぼジャストミートしたと私は受け止めています。このブログのタイトルもそうなんですが、引用した記事は季節調整していない原系列の統計で論評していますので、「4か月ぶりの貿易赤字」ということになっていますが、上のグラフのうちの下のパネルに見られる通り、トレンドを見る季節調整済みの系列による統計では昨年2018年7月から貿易赤字に転じており、今年2019年5月の直近で利用可能な統計まで、ほぼほぼ1年近い期間ずっと貿易赤字が続いているといっても大きな間違いではありません。もちろん、引用した記事にもある通り、最近時点のトピックとしは5月以降の米中間の貿易摩擦の激化ということになるんでしょうが、季節調整済みの系列でも、季節調整していない原系列でも、輸出入ともに昨年2018年年央過ぎくらいから減少局面に入っているように見え、これは世界経済が全体として景気減速に入っていることの現れと考えるべきです。我が国の景気の減速も明らかであり、1~3月期のGDP統計を振り返って、輸入の減少がGDP成長率に寄与するという形で、ややトリッキーなプラス成長を記録したことは記憶に新しいところではないでしょうか。

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その輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、これも引用した記事にある通り、季節調整していない原系列の統計で見て、我が国の輸出額は5月統計で前年同月比▲7.8%減を記録したところ、そのうち中国向けの輸出額が▲9.7%減となっています。もちろん、今年のゴールデンウィークが10連休であったことに起因して、4月に前倒しするなどの動きがあって5月の輸出に影響が出た可能性はあるものの、改めて中国向け輸出の大きさを実感した気がします。すなわち、中国向け輸出額は我が国の輸出額合計のほぼ20パーセントを占めますから、中国向け輸出額が2桁近い減少を示すと、それだけで▲2%ほどの寄与となります。また、上のグラフの一番下のパネルから、OECD先行指数に見る中国経済はそろそろ底を打って反転上昇する局面に入りつつあるように見えますが、HUAWEIに対する個別的な通商措置はすでに効き始めている可能性あるものの、米中間の貿易摩擦の影響が本格的に現れるのはこれからですから、この反転しそうに見えるOECD先行指数がどこまで実現されるかは疑問です。

最後に、私が従来から主張している通り、先行き最大のリスクは為替です。米国連邦準備制度理事会(FED)の連邦公開市場委員会(FOMC)が米国東部海岸時刻(EST)の今日6月19日まで開催されていますから、利下げなどの金融緩和に踏み切るのかどうかが注目されます。
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