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2019年08月19日 (月) 22:50:00

貿易収支が赤字に転じた7月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から7月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲1.6%減の6兆6432億円、輸入額も▲1.2%減の6兆8928億円、差引き貿易収支は▲2496億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の貿易収支、2カ月ぶり赤字 中国向け輸出は5カ月連続減
財務省が19日発表した7月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2496億円の赤字だった。赤字は2カ月ぶり。中国向けの半導体等製造装置や自動車部品の輸出が大幅に落ち込んだ。
全体の輸出額は前年同月比1.6%減の6兆6432億円だった。輸入額は1.2%減の6兆8928億円で、イランからの原粗油などの輸入が減った。
中国向けの輸出額は9.3%減の1兆2288億円と、5カ月連続で減少した。財務省は「中国経済が減速している影響を受けた可能性がある」との見方を示した。一方、中国からの輸入額は2.8%増の1兆6126億円と3カ月ぶりに増加した。パソコンなど電算機類(含む周辺機器)の輸入が増えた。
韓国向けの輸出額は6.9%減の4363億円と、9カ月連続で減少した。半導体等製造装置などの輸出が大幅に減少した。日本政府による韓国向けの半導体材料などの輸出管理の強化について、財務省は「(対象となった)3品目は、貨物の形態などによって様々な統計品目番号に分類される可能性がある」と、貿易統計への具体的な影響を示すことは困難と説明している。
対米国の貿易収支は5794億円の黒字だった。半導体等製造装置や建設用・鉱山用機械の輸出が増えた。対欧州連合(EU)の貿易収支は679億円の赤字だった。
7月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=108円00銭で、前年同月に比べ円高・ドル安に振れた。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、貿易収支は▲2000億円の赤字とのことでしたので、実績はこれをやや上回る貿易赤字となりました。ただし、輸出入ともに前年同月から数パーセント減少した上での差し引きの貿易赤字ですから、まあ、縮小均衡と捉える向きもあるかもしれません。もちろん、我が国を含めて世界経済の減速が大きな要因となった輸出入額の減少と考えるべきです。やや別の観点ながら、先月の貿易統計公表時の論評で、韓国との6月統計での貿易額が2桁減となっている点を指摘しましたが、7月統計では引き続き前年同月比マイナスながら下げ幅は縮小しています。ただ、制度的な要因で管理が強化される直前の駆込みがあったとの指摘もあり、日韓貿易の減少に歯止めがかかったようには見受けられません。ですから、米中間の貿易摩擦とともに、マクロの世界経済の減速に加えて、東アジアにおける通商政策による貿易制限的な効果も我が国輸出入の低迷の一因となっていることは確かです。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、まず着目すべきは、先月6月統計まではここ数か月の輸出額の減少はほぼほ数量が減少に寄与していたんですが、ようやく輸出に底入れの兆しが見えます。これは中国向け輸出の回復に依存するわけですが、もちろん、今後、5月に米国が発動した中国製品2000億ドルに対する25%の追加関税の影響が、中国経済に現れることが考えられます。マクロの中国経済はそろそろ底入れしたと考えるエコノミストは少なくないんですが、それほど単純なパスで中国経済が回復に向かうかどうかはまだ不確実性が高いと私は考えています。ただ、私がちょうだいしているシンクタンクのリポートのうちのいくつかで、財務省の公式発表ではなく各機関独自に季節調整を実施している例があり、繰り返しになりますが、輸出数量の季節調整値からは、そろそろ底入れの兆しがうかがえる、とするリポートも複数ありました。

我が国景気との関係で、もっとも避けたいシナリオは10月からの消費税率引き上げによる国内経済のダメージに加えて、同時に世界経済、特に、中国経済が米国の関税率の追加引き上げの影響により低迷し、我が国の中国向け輸出が減速して、内外需要が同時に低迷することです。しかし、米国の関税率引き上げはすでに発動されており、我が国の消費税率引き上げもほぼほぼスケジュールされていますので、このタイミングの問題はなかなかに悩ましいところかもしれません。
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