FC2ブログ

2020年02月22日 (土) 11:00:00

今週の読書はややペースダウンしつつも計5冊!!!

今週の読書は話題の現代貨幣理論(MMT)に関する経済書をはじめ、以下の計5冊です。既に、今日のうちに図書館回りを終えていて、そろそろ読書のペースはダウンさせつつあります。引っ越しまでそろそろ1か月くらいになりました。図書館環境が文句なしに日本一の東京から関西へ引っ越しますので、それなりにペースダウンする上に、10年近く前に経験あるとはいえ、大学教員に復帰するんですから、少なくとも1年目は大忙しだろうと思います。読書の時間は取らねばなりませんが、お仕事に必要な読書の割合が飛躍的に高まるのは当然だろうと予想しています。

photo


まず、藤井聡『MMTによる令和「新」経済論』(晶文社) です。著者は、京都大学の工学分野の研究者で、防災などの内閣官房参与を務めたこともあります。本書タイトルのMMTとは、もちろん、Modern Monetary Theory であり、現代貨幣理論についてレイ教授の入門書に即して平易に解説しています。要するに、MMTの肝は、インフレ率を目標関数にするのは財政政策の役割であって、世界のエコノミストの多くが思い描いているように、金融政策が物価水準を決める主要な政策ではない、という点に尽きます。MMTの理論に沿って、貨幣は国家=統合政府たる狭義の政府と中央銀行の統合体の債務であって、逆から見て民間部門の資産であり、貨幣が流通するのは国家が税金の支払いを貨幣でもって行う強制力を持っているためである、ということになります。そこから敷衍して、通貨発行権を独占する国家が債務超過に陥ったり、破綻することはあり得ない、ということになります。私はこの点までは、MMTの考えるモデルの説明であって、ここまではとても整合性あるモデルである点は認めるべきだと思います。理論的なモデルとしては十分なんですが、問題は操作性、というか、政策への応用だと私は受け止めています。すなわち、金融政策がインフレ率の決定要因となる場合、古典派的な貨幣数量説を応用すれば、極めて直感的かつ直接的な把握が可能である一方で、財政政策から物価への波及経路は極めて複雑です。基本は、需給ギャップを通じたルートなんでしょうが、波及ラグを考慮すれば、財政政策オペレーションは金融政策の公開市場操作に比べて決して単純ではありません。もっとも、私は需給ギャップだと思っていますが、本書では財政政策を通じた貨幣流通量を重視しているようです。財政赤字が大きいほどマネーストックも増加するというMMTモデルの基礎となる部分です。ただ、本書でも指摘されているように、金融政策が経済主体の経済合理的な行動を前提として、かなりの程度に間接的な政策であるのに対して、財政政策は国家としての強制力のある直接的な政策であることも確かです。ですから、ここから先は本書にはありませんが、金融政策では期待の役割を重視し、デフレマインドが払拭しきれないために、我が国でインフレ目標の達成ができない一方で、財政政策は強制力を持って税金として民間からマネーを徴収したり、逆に、国民のポケットにマネーを供給したり、といった直接的な政策手段を持ちます。特に、MMTでは歳出政策と歳入政策がほぼほぼ完全に切り離されますので、政策の自由度は大きくなりそうな気がします。いずれにせよ、MMTは本書で指摘するように、何ら理論的な裏付けない「トンデモ理論」では決してないことは、かなり多くのエコノミストに理解されて来たと思いますが、金融政策による貨幣数量説的な単純なモデルに比べて、財政政策による需給ギャップを通じた複雑な経路を経るように見えるモデルのどちらが物価への影響が大きいかは、理論的な帰結ではなく、大いに実証的な問題と私は考えます。本書で示されたMMT理論について、多くのエコノミストが理解を進めて、理論的なモデルの解説からさらに実証的な検証に進む段階に達したように私は感じています。かつてのような「非ケインズ効果」のように実証的なエビデンスが得られれば、それが、実際のデータであれ、モデルのシミュレーションであれ、その段階に達したらMMTはさらに説得力を増すと考えるべきです。

photo


次に、馬文彦『14億人のデジタル・エコノミー』(早川書房) です。著者は、世界最大級の中国政府系ファンド「中国投資有限責任公司(CIC)」で長らく投資を行ってきた実務家のようですが、私はよく知りません。副題は「中国AIビッグバン」となっているんですが、ほとんどAIのトピックは出て来なかったように記憶しています。まあ、私が読み飛ばしただけかもしれません。私の読書結果としては、要するに、米国のGAFAに対して中国でBATと称されるバイドゥ、アリババ、テンセント、あるいは、そのさらに先を走る次世代企業のTMD,すなわち、トウティアオ、メイトゥアン、ディディチューシンをはじめとして、企業活動を中心に据えつつ、中国のデジタル企業の現状を紹介したものです。逆に、利用者サイドの情報はそれほど充実しているとはいえません。まあ、投資活動が長かった著者のようですから、ある意味で、当然です。なお、最近私が目にしたところでは、先のBATにフアウェイを加えてBATHと語呂のいい4文字にしている例も見かけましたが、米国に制裁対象にされてやや陰りが見えるのかもしれません。ということで、、私は1年と少し前の2018年11月に国連統計委員会の会議で北京を訪問したのが中国メインランドに旅行した唯一の経験なんですが、その時点で、知り合いの大使館書記官から「タクシーは現金では乗れない」といわれたくらいに、キャッシュレス決済が普及していて、まあ、これは日本でもそうですが、あらゆる人がスマホをいじっている気がしました。私の見方からすれば、アテンション経済と称される奏、自分のデータを気軽にお安く売って、アテンションの値打ちが低い気がしないでもありません。ただ、それだけに、その裏側では、アテンションやデータを収集する企業の方は極めて高収益を上げているのは間違いありません。本書でも紹介されている通りです。GAFAと同じように、デジタル企業ではデータを収集して分析し、いろんな経済活動に活かしているわけですが、本書の明らかなスコープ外ながら、私がついつい思い浮かべてしまったのは、現在の新型コロナウィルスのデジタル経済への影響です。例えば、インターネット通販に関していえば、店舗での接触を避けられるという意味でOKそうな気もします。ただ、そもそも、「世界の工場」である中国で製造業の稼働率がかなり低下し、流通する財が品薄になれば小売りはどうしようもありません。もちろん、小売りに限らず、現在の中国はそれなりに世界の分業体制の中で、というか、流行りの用語でいえば、サプライチェーンの中で重要な位置を占め、小売りはもちろん川下産業への影響も大きくなっています。また、かえる跳びのリープフロッグ経済のデジタル分野における利点を並べていますが、逆に、別のリープフロッグに追い抜かれるリスクもあるわけで、そのあたりはイノベーション次第という気もします。最後に、第8章ではプライバシーを取り上げていて、フェイスブックのザッカーバーグCEOはプライバシー重視に路線転換を図っているようですが、中国でこそプライバシー意識が希薄、というか、プライバシーよりも天下国家の安寧秩序の方に大きな重点を置くんではないか、という気がしてなりませんでした。

photo


次に、青木理『暗黒のスキャンダル国家』(河出書房新社) です。著者は、共同通信ご出身のジャーナリストであり、特に、ジャーナリストとして権力の監視に熱心であり、その意味で、反権力的なバイアスを持っているように見られがちな気もします。私は、本書の著者が取りまとめたノンフィクションでは新書版の『日本会議の正体』を読んだ記憶があります。ということで、毎日新聞に著者が掲載している「理の目」と題するコラムなどから、著者のコメンタリーを収録しています。タイトルこそかなり激しい調子の印象を受けますが、中身の主張についてはかなり抑制のきいた文体で時論を展開しています。冒頭から、「ジャーナリストは反骨で当然」という趣旨の議論が展開され、権力に対するチェック・アンド・バランスという意味で、ジャーナリズムが権力を監視する意気込みを強く感じさせます。2012年年末の総選挙で政権交代があり、その後、現在の安倍政権が継続しているわけですが、その総選挙後だけでも、特定秘密保護法・安全保障法制・テロ等準備罪法の強行姿勢から始まって、本書のタイトルとなっているスキャンダルについては、森友・加計学園の問題を筆頭に沖縄県辺野古への米軍基地移設、東北地方などへのイージス・アショア配置問題、改元に伴う元号のあり方への疑問、現在の国会論戦で展開されている桜を見る会の招待客問題、あるいは、高検検事長の定年延長問題などなど、あれやこれやとにわかには信じられない政権の暴挙が一強政権下で連続しています。もちろん、現政権の目指すところは憲法改正であることは明確です。こういった流れの中で、私のようなエコノミストの目から見て、本書でも安倍政権が経済政策を全面に押し出して選挙で勝利したような表現が見受けられましたが、やっぱり、現政権の横暴を許さないためには選挙でのプレッシャーが必要ではないかという気がします。決して、本書が「上から目線」とは思いませんが、国民生活に密着してお給料が上がって豊かな消費が楽しめるような政策を打ち出せないと、左派リベラルは選挙で負け続けて、経済を全面に打ち出して選挙に強い現政権が、経済政策だけでなく安全保障などをひっくるめてすべての政策を支配しかねません。正面から言論で政権批判を展開するのも結構ですが、国民目線で豊かな生活につながって、それが現政権への監視に役立つような政策の提示も、同時に必要ではないでしょうか。本書では、現政権の究極の目標であろうと推察される憲法改正について何も取り上げていないに等しいのも気がかりですし、何を差し置いても、選挙で負け続けては改憲を防げないという点は強調しておきたいと思います。

photo


次に、ジョナサン・シルバータウン『美味しい進化』(インターシフト) です。著者は、英国エディンバラ大学の進化生態学の研究者です。本書の英語の原題は Dinner with Darwin であり、2017年の出版です。ヒトや動物の進化とともに、また、調理の発展とともに、ヒトと食べ物の関係がどのように変化して来たのかを歴史的にひも解こうと試みています。すなわち、150万年前に初めて料理したとされるヒトの進化の方向付けには食習慣が大きく作用していたことは明らかとしても、同時に、ヒトの食べ物になった品種も進化してきたわけで、身近な食べ物を材料に食べる方と食べられる方の両方の生物学的な進化を読み解こうと試みています。私にははなはだ専門外なんですが、進化や生物学の見方からすれば、わずかの数の遺伝子の並びがホンの少し違うだけで味覚が異なるのはあり得ることなのでしょうし、また、ヒトやほかの動物の味覚に合わせて、食べられる方の主として植物がその繁栄を目的として進化を遂げたりする様子が、とてもリアルかつ判りやすく活写されています。動物はともかく、ヒトは狩猟生活から、あるいは、生肉を食べる狩猟生活から熱を加えて調理する狩猟生活に移り、さらに、農耕生活に発展するわけですが、そのあたりの料理や調理とヒトの共進化が、私のような専門外のシロートでも「なるほど」と思わせるように描き出されています。私は関西の出身で、よく「何か食べられないものはあるか?」と問われて、辛いものが苦手である旨を伝えることがしばしばあるんですが、鳥は辛さを感じないなんて、まったく知りませんでした。ただ、やっぱり、というか、私なんぞから見てもっとも興味深かったのは、第10章 デザート から始まって、第11章 チーズ と第12章 ワインとビール だった気がします。やや順番を入れ替えて、チーズはマイクロバイオーム、すなわち、膨大な数の最近の塊であるといい切り、よく乳糖不耐症は人類の過半を占めるといわれますが、乳糖を分解できる酵素を持たなくても、牛乳の有益な成分を体内に取り込むことのできる食物と指摘しています。そして、何といっても醸造酒の代表であるビールとワインについては、アルコール中毒になる人、ならない人についての解説も詳しかったですし、人類がアルコール飲料からいかに多くの示唆を得てきたかが実感されます。でも、やっぱり、ある意味で最高のエネルギー源である糖類について、デザートを取り上げた10章も深みを感じさせました。エネルギー源としての魅力を増すため、別の表現をすれば、ヒトを引き付けるために甘くなったのか、それとも、エネルギー源として望ましい故に甘く感じつようにヒトの方が進化したのか、たぶん、後者だろうと思うんですが、甘いものを求めるヒトの欲求というのは、私にもよく理解できます。本書では現れませんが、ヒトの両性の中でも男性よりも女性の方が甘いものを好むのは、ひょっとしたら、子供を産むという役割にそれだけ重要性を置いているのかもしれない、と感じたりしました。

photo


最後に、田村秀『データ・リテラシーの鍛え方』(イースト新書) です。著者は、旧自治省の公務員から学界に転じた研究者のようです。ただし、データ分析、というか、統計や計量の専門家なのかどうかはやや疑問です。ネット・アンケートやランキングについて疑問を呈しつつ、さらに、データを用いた表現振りから真実を見抜く方法、最後に、データ・リテラシーの鍛錬まで、データや情報に関する幅広い話題を取り上げています。ただ、データの信憑性については、「無作為抽出ではない」という点に最大の力点が置かれており、無作為抽出ではないデータや情報を否定するばかりで、そういったバイアスのかかったデータをどう理解すべきか、という踏み込んだ論考はなされていません。もちろん、新書ですから、そのあたりは限界かという気もします。後半の投資案件の表現振りへの批判もご同様で、章タイトル通りに、「うまい話」には裏があるというのは、それなりの教養ある常識人には判っていることですから、さらに踏み込んで、そういったカラクリを見抜くだけでなく、どういったデータや情報が役立つのかを解き起こして欲しい気がします。データや情報の選択や解釈に関する書物は巷に溢れていますが、本書についてはややレベルが低い、という気がしました。逆に、入門編として手に取る向きにはいいのかもしれません。その意味で、高校生レベルにはオススメかもしれません。
Entry No.6525  |  読書感想文の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

コメント

コメントを投稿する

URL
コメント
パスワード  編集・削除するのに必要
非公開  管理者だけにコメントを表示
 

トラックバック

この記事のトラックバックURL



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |