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2020年03月20日 (金) 10:00:00

東京最後の読書感想文!!!

3月第1週で読書は終わりと考えていましたが、いろいろな分野の予約してあった本が次々と利用可能となり、先週も今週も割合とまとまった数の本を読んでしまいました。おそらく、来週に京都に引越しすれば、公共図書館サービスは東京都区部と比較してものすごく貧弱になることが容易に想像されますので、私の読書もかなり影響を受けることと思います。ということで、今週こそ最後の読書感想文になるかもしれません。かなり話題を集めた経済書を中心に以下の4冊です。

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まず、ジョナサン・ハスケル + スティアン・ウェストレイク『無形資産が経済を支配する』(東洋経済) です。著者は、英国インペリアル・カレッジの研究者と英国イノベーション財団ネスタのやっぱり研究者なんだろうと思います。英語の原題は Capitalism without Capital であり、2018年の出版です。タイトル通りに、有形の資本、典型的には工場の建屋や機械設備、あるいは、政府が整備する道路や港湾などのインフラから、無形の資本の重要性が高まって来ていて、まあ、邦訳タイトルをそのまま引用すると「経済を支配する」ということを論証しようと試みています。そして、そういった無形資産が支配する無形経済になれば、格差の拡大などを招いたり、長期停滞につながったり、経営や政策運営の変更が必要となる可能性を議論しています。確かに、本書で展開しているのは極めてごもっともなところですが、逆に、かなりありきたりな印象です。特に新しい視点が提示されているようには見えません。おそらく、1970年代における2度の石油危機を経て、1980年代から指摘されていたような点をなぞっているだけで、4つのSとして、スケーラビリティ、サンク性、スピルオーバー、相互のシナジーを上げていますが、本書でまったく用いられていない用語でいえば、無形資産はたとえ私的財であっても公共財の性格を併せ持つ、ということで一気に説明がつきます。この点について、とても最新の研究成果とも思えない「スーパースター経済」などを援用しつつ議論しているだけで、もちろん、それなりに新しい研究成果も取り入れているんですが、特に新しい視点が入っているようには見受けられません。今までの無形資産に関する議論を整理するという点では、とても有益な読書でしたが、それだけ、という気もします。

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次に、ダロン・アセモグル & ジェイムズ A. ロビンソン『自由の命運』上下(早川書房) です。著者は、マサチューセッツ工科大学とシカゴ大学の研究者で、というよりも、前著の『国家はなぜ衰退するのか』のコンビです。英語の原題は The Narrow Corridor: State, Societies, and the Fate of Liberty であり、邦訳タイトルは原著のサブタイトルの3つめを取っているようです。2019年の出版です。冒頭で、ソ連東欧の共産諸国が崩壊した後、すべての国の政治経済体制が米国のような自由と民主主義に収れんするという意味のフランシス・フクヤマの「歴史の終わり」と、その5年後のロバート・カプランの「迫りくるアナーキー」を対比させ、実は現在の世界はアナーキーに満ちているのではないか、という視点から本書は始まります。そして、著者の結論を先取りすれば、自由を実現し国民が自由を享受するためには法律とそれを強制する権力を持った国家が必要である、というものです。

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そして、上の画像のように、縦軸に国家の力、横軸に社会の力のカーテシアン座標に、その両者のバランスの取れた回廊がある、ということになっています。そこは国家が専横に陥ることなく、逆に、国家の力がなさ過ぎてアナーキーに陥ることもない、という意味で、ホントの自由が実現される回廊である、ということを議論しています。国家というリヴァイアサンに足かせを付ける、という表現も多用されていますし、国家が強力になったら同時に社会もパワーアップする必要がある、という意味での赤の女王の法則もしばしば言及されます。ただし、私は本書には2点ほど誤解があるように思います。第1に、自由と民主主義の混同、というか、取り違えです。本書では「自由」に力点を置いていますが私は「民主主義」ではなかろうかという気がしています。第2に、社会ではなく市民の力だと思います。まず、アナーキーと対比すべきで、本書で論じているのは、自由ではなく民主主義です。すなわち、アナーキーというのはある意味ではカギカッコ付きの「自由」であり、個々人が異なるウェイトを持った弱肉強食の世界といえます。資本主義下の株主総会の世界であり、単純に貨幣といってもいいのかもしれませんが、購買力によってウェイト付けされた社会です。格差を認めた上での不平等であり、民主的な1人1票の世界とは異なります。私はむしろウェイト付けのない民主主義の実現こそが本書で目指している世界ではないか、という気がします。そして、そういった社会における市民あるいは国民の資質を問うべきです。俗な表現に「民度」という言葉があり、少し保留が必要かもしれませんが、かなり近い概念です。例えば、識字率がある程度高まらないと民主的な投票行動も自由にできない、という側面は見逃すべきではありません。ですから、社会のパワーを考える基礎として市民の問題も考えないと、社会が市民なくしてポッカリと空中に浮かんでいるわけではありません。その意味で、もう少し教育の重視を指摘して欲しかった気がします。いずれにせよ、読めば判るんだろうと思いますが、前著の『国家はなぜ衰退するのか』に比べると、かなり見劣りします。その点は覚悟の上で読み始めた方がいいと私は考えます。

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次に、というか、最後に、デヴィッド・ウォルシュ『ポール・ローマーと経済成長の謎』(日経BP社) です。著者は、米国のジャーナリストであり、ボストン・グローブ紙の経済学コラムを担当しています。念のためですが、経済学コラムであって、経済コラムではないようです。英語の原題は Knowledge and the Wealth of Nations であり、邦訳タイトルに含まれているローマー教授だけではなく、むしろ、スミスの『国富論』になぞらえており、2019年の出版です。ということで、650ページを超える大著で、邦訳タイトルのローマー教授だけでなく、ノーベル経済学賞受賞者クラスのキラ星のような経済学者がいっぱい登場します。そして、誠に申し訳ないながら、この読書感想文をアップする現時点で、実は、まだ読み終えていません。これは15年近くのこのブログの歴史で初めてかもしれません。60歳を過ぎて、極めて異例な状況に置かれており、ご寛恕を乞う次第です。また、読み終えましたら、然るべき読書感想文をアップしたいと思いますが、これまた誠に申し訳ないながら、しばらくの間、このブログの更新は途絶えるかもしれません。

ということで、この3連休は引越し準備の荷造りに明け暮れる予定です。連休明けの3月25日に東京から荷物を搬出して、その翌26日に京都の新しい住まいで荷物を受け取る予定となっています。ただ、かなり早くから手配したつもりなんですが、インターネット回線の開通は3月31日です。それまで、新しい勤務先である私大の研究室に行って勤務を始めるつもりですが、3月31日ないし4月1日までブログの更新がストップしますので、悪しからずご了承下さい。
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