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2020年06月13日 (土) 11:00:00

今週の読書は経済書なしで計3冊!

今週の読書は経済書はなく、地政学の専門書・教養書のほかに新書が2冊です。大学の対面授業がなく、オンライン授業の資料作成に追われていて、私の実感では、おそらく、対面授業よりも準備に時間がかかっているような気もして、なかなか読書が進みません。それでも、学生がほとんど大学に来ないためなのか、大学の図書館に所蔵されている新書がほとんど借り出されていません。普通は手軽に読める新書は一般の公立図書館では人気があり、私はもともと新書は「借りにくい」という観点から読んでこなかったのですが、ここまで借りやすいとなればせっせと読むことに方針転換しています。

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まず、ペドロ・バーニョス『国際社会を支配する地政学の思考法』(講談社) です。著者は、軍人です。スペイン軍の予備役大佐であり、フランスに本部を置く欧州合同軍の防諜・治安部隊の長官を歴任し、地政学、国家戦略、防衛政策、安全保障、テロリズム、諜報活動、国際関係の第一人者でもある、とのことです。スペイン語の原題は Aí se domina el mundo であり、受動態を能動態にしつつ英訳すると、上の表紙画像に見えるように、How They Rule the World となります。邦訳者がスペイン語の専門家らしい経歴ですので、本書には明記されていないながら、スペイン語からの邦訳なのであろうと私は想像しています。原書は2017年の出版です。ということで、全25章から構成され、冒頭の5章と最後の4章を別にした残りの16章が16の地政学的な戦略として省タイトルになっています。出版社のサイトからコピペでお手軽に羅列すると、ハシゴを蹴り倒す戦略、隣人を弱らせる戦略、上手にあざむく演技派の戦略、ブレイキング・ポイントの戦略、分裂させる戦略、間接的に支配する戦略、法を歪曲する戦略、権利と権力の戦略、敵をつくり出す戦略、大衆を操る戦略、フェイクニュースの戦略、貧者の名のもとの戦略、不和の種をまく戦略、宗教を使った戦略、善人主義という戦略、マッドマン戦略、ということになります。何らかの政府が組織されていて、それなりの制度的な統治機構のある国では、国内的に何らかのルールがあると考えられますが、国際社会におけるせめぎあいではルールはなく、弱肉強食というか、強いものがあからさまに弱い国を支配する、という構図が出来上がっていると本書は主張します。場合によっては、敵対国をおとしめる権謀術数も利用されます。そして、ひとつの行動原理として、広い意味で、経済的な利益を求める背景も指摘されています。私もそう思います。かなり原理的な地政学の考えを展開していて、それはとてもあからさまだったりするんですが、根底にはスペイン人が米国の戦略をどう見ているのか、という点も忘れるべきではありません。日本のように対米従属一辺倒ではなく、本書の著者は日本と同じように米国の同盟国であるスペイン出身ながら、米国とその昔のソ連、今のロシアを等距離で見ているような冷めた視点がところどころに。垣間見えます。なかなかに面白い読書でした。

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次に、中川右介『阪神タイガース1985-2003』(ちくま新書) です。この著者には、角川新書による『阪神タイガース 1965-1978』という著書があり、私は読んでいませんが、本書と同じことなんだろうと思います。その前著が1978年で終わっていて、本書が1985年から始まっていますので、少し隙間があったりするんですが、大きなイベントはなかったという判断なんだろうと思います。前著は阪神がリーグ優勝した1964年の直後から始まっている一方で、本書は日本シリーズにも勝って初めての日本一になった、まさにその年から始まっています。基本的には、バックグラウンド情報が含まれているとはいえ、各シーズンの試合経過を収録していると考えていいと私は受け止めています。もちろん、阪神タイガースのことですから、ストーブリーグ期間中に限らずお家騒動は年中行事となっており、特に、本書の期間はいわゆる「暗黒時代」を長々と含みますので、シーズン途中に監督交代があった年もめずらしくなく、助っ人外国人が退団したあとで他球団で活躍したり、バースもそうでしたが、シーズン途中で帰国したりするのはもっとありふれた時代だった気がします。ただ、本書のスコープとなっている20年近くについては、私は3年ずつ2回の海外勤務をしています。すなわち、1991-94年の在チリ大使館勤務と2000-03年のジャカルタです。本書でも詳細が取り上げられていますが、1992年のスワローズとの優勝争いは、父親がビデオを送ってくれてサンティアゴで見た記憶があります。実に、淡々とジャーナリストらしく事実に基づく記述が続くんですが、それなりの読み応えがあり、私のような阪神ファンには読んでいて引き込まれるものがあります。

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3冊めですぐに最後になってしまい、松本亘正『超難関中学のおもしろすぎる入試問題』(平凡社新書) です。著者は、中学受験専門学習塾を創設した経営者です。私も中学受験をして私立の中高一貫性の中学・高校に進学しましたし、我が家の2人の倅どもも同じです。もちろん、3人とも違う学校です。著者がどうしても首都圏で事業展開をしている学習塾経営者ですので、のっけの灘以外は、開成や麻布などの東京の私立中学入試問題が中心になっていて、実に不愉快(?)なことに、私の出身中学の試験問題は取り上げられていないように見受けます。まあ、それはともかく、なかなかに興味深く読めました。私は大学教員として、1回生の初っ端の演習を担当していて、アカデミック・ライティングを学習しているのですが、なかなか題材が得られにくいので、本書の中に取り上げられている有名私立中学の試験問題のうち、経済的なテーマのものを大学1回生に材料として提示してみようかと考えているところです。
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