FC2ブログ

2020年06月17日 (水) 17:30:00

ダダ下がりの貿易統計もそろそろ底を打つか?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲28.3%減の4兆1847億円、輸入額も▲26.2%減の5兆181億円、差引き貿易収支は▲8334億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

5月の輸出28.3%減 リーマン危機後以来の落ち込み
財務省が17日発表した5月の貿易統計(速報)によると、輸出額は4兆1847億円と前年同月比28.3%減った。新型コロナウイルスの感染拡大が響き、下げ幅はリーマン・ショックの影響が残る2009年9月以来の大きさとなった。米国向けは50.6%減り、対米貿易黒字は過去最少の102億円まで縮んだ。
輸出の減少幅は3月の11.7%、4月の21.9%からさらに拡大した。コロナ禍で世界的に経済活動が停滞し、特に自動車は64.1%減と大きく落ち込んだ。
輸出はほぼ全ての地域向けで低迷した。米国向けは50.6%減の5884億円で、09年3月以来の落ち込みになった。自動車が78.9%減り、自動車部品も73.2%減った。欧州連合(EU)向けは33.8%減の3638億円。自動車が47.6%減と大きく減った。
経済活動の再開が一足早く進む中国向けは1兆1262億円で1.9%減にとどまった。下げ幅は4月の4.0%より縮小した。非鉄金属が増えるなど持ち直しの動きがみられる。化学品原料や自動車、半導体製造装置の輸出は減った。対アジア全体は2兆7449億円と12%減少した。
輸入額は全体で26.2%減の5兆181億円。減少率は4月の7.1%から拡大した。原油が78.9%減った。輸出から輸入を差し引いた貿易収支はマイナス8333億円で2カ月連続の赤字だった。
輸入を地域別にみると米国からは27.5%減の5781億円、EUからは29.6%減の5751億円だった。中国からは2.0%減の1兆5112億円。マスクなどが増えた一方、自動車部品が落ち込んだ。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo


まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは▲1兆円を超える貿易赤字が予想されていましたし、前年同月の2019年5月も▲9654億円の赤字を計上していましたので、▲8334億円の赤字は、ある意味で、いかなる角度から見てもマイナスはマイナスながら、輸出がそれなりに踏み止まった、といえるのかもしれません。もちろん、国際商品市況で石油価格が大きく下落して、我が国の輸入原油への支払いが減っているのも一因です。例えば、原油及び粗油の5月の輸入はキロリットル単位の数量ベースでは前年同月比で▲36.0%減ですが、価格とかけ合わせた金額ベースでは▲78.9%減と、何とも⅕まで減少しています。なお、今日のブログのタイトルに「ダダ下がり」と付しましたが、貿易に限らず、生産も消費も全部ダダ下がりなのではないか、との反論あるかもしれません。しかし、何度か書いたように、今回の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の経済的影響については、交易の利益が失われるというのが最大のマイナスであると私は考えています。例えば、私自身については、経済を分析して政府のお仕事を進めたり、大学生に教えたりしてお給料をもらって、それを基に食品や衣類を買ったり、各種のサービスを受けたりしているわけで、国内でも得手不得手=比較優位に従った交易の利益が生まれますが、いうまでもなく、交易の最大の利益は天候や天然資源をはじめとして生産要素賦存やスキルが大きく異なる外国との交易で生み出されることは当然です。その意味で、COVID-19の経済的な影響の最大のものは貿易で生じる可能性が高い、と私は考えています。

photo


続いて、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数(CLI)の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。なお、一番下の中国のパネルのOECD先行指数について、2月は前年同月比で▲15%近い落ち込みなんですが、それにスケールを合わせると、米国雇用統計のように、別の部分でわけが判らなくなるような気がして、意図的に下限を突き抜けるスケールのままにとどめています。今のところ、私自身も直観的に感じていますが、第1次パンデミックに応じたロックダウンなどによる世界経済の最大のネガティブな影響は5月であった、と多くのエコノミストは考えています。ですから、我が国貿易統計のように、季節調整しない原系列の統計の前年同月比で見れば、まだまだマイナスは続きますが、大きなトレンドで見て季節調整済みの系列の前月比では、いくつかの重要な経済指標は6月からプラスに転じる可能性が高い、といえます。我が国と多くの先進国の輸出もそうではないかと考えられます。もちろん、第2次パンデミックが生じて、第1次を上回る経済的影響をもたらす可能性もなくはないのでしょうが、この先は方向性としては経済は改善の方向に向かうのではないかと期待されます。ただ、問題はそのスピードです。多くの国では政府が財政赤字を積み上げましたし、金融政策でも大きく緩和が進められました。そういった政策手段の制約も含めて、この先、経済の方向はプラスながら、回復スピードはかなり緩やかなものとなる可能性が高い、と覚悟すべきです。貿易も例外とはなり得ません。
Entry No.6632  |  経済評論の日記  |  コメント(0)  |  トラックバック(0)  |  to page top ↑

コメント

コメントを投稿する

URL
コメント
パスワード  編集・削除するのに必要
非公開  管理者だけにコメントを表示
 

トラックバック

この記事のトラックバックURL



この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック

 | BLOG TOP |