2023年01月14日 (土) 09:00:00
今週の読書は経済書なしで小説を中心に計5冊
今週の読書感想文は以下の通りです。
まず、千早茜『しろがねの葉』(新潮社)は織豊政権末期から徳川初期にかけての石見銀山での女性の生き様を描き出しています。直木賞候補作であり、私は『光のとこにいてね』とともに、受賞を期待しています。なお、作者は私の勤務校である立命館大学文学部のOGです。続いて、石井幸孝『国鉄』(中公新書)は、国鉄に技術者として務め、国鉄の分割民営化後はJR九州の初代社長を務めた著者の国鉄に関する歴史や企業体としての記録です。そして、佐伯泰英『異変ありや』、『風に訊け』、『名乗らじ』(文春文庫)は、「居眠り磐音 江戸草紙」のシリーズを引き継ぐ「空也十番勝負」のシリーズです。九州での武者修行を終えた坂崎空也が東に向かいます。
ということで、今年の新刊書読書は、先週の6冊と合わせて11冊となります。
まず、千早茜『しろがねの葉』(新潮社)です。著者は、もちろん、小説家なのですが、私の勤務校である立命館大学文学部のOGです。この作品『しろがねの葉』のほか、『あとかた』と『男ともだち』が直木賞候補作としてノミネートされています。ということで、時代背景は織豊政権末期から徳川期初期にかけて、地理的には石見銀山、ということになります。主人公はウメという女性であり、農村に生まれますが、逃散の途中で父母と生き別れになって山師の喜兵衛により、石見銀山で育てられます。時代が徳川の世になり、徳川御料地となっても石見銀山の活動に大きな変化はありません。ウメの育ての親である喜兵衛は石見銀山から佐渡に去りますが、ウメは石見銀山に残り、夫婦となって子をなします。しかし、銀山の鉱毒で夫は亡くなり、さまざまな試練に直面しながらも強い生き方が印象に残ります。ウメの生きざまが凛として美しい、と感じました。
次に、石井幸孝『国鉄』(中公新書)です。著者は、技術者として国鉄に勤務し、分割民営化後はJR九州の初代社長も務めています。戦後の国鉄の公営企業としての社史を跡付けるとともに、技術上の革新や進歩、あるいは、経営上の問題点などを極めてコンパクトに取りまとめています。ただ、「コンパクト」とはいっても、そもそも国鉄は超巨大企業体でしたので、新書としては異例の400ページ近いボリュームとなっています。経済学的にいえば、電力などの多くのインフラ企業と同じで、大規模な鉄道はいわゆる限界費用低減産業であり、規模の経済が働きます。ですから、ある程度の規模を持たないと経営は成り立ちません。でも、国鉄の場合は巨大であっただけに経営も困難となった面があります。一般的には、鉄道から輸送手段がモータリゼーションによって自動車に転換したのが輸送量減少の一因とされますが、必ずしも輸送量が減少したからといって、あそこまでの赤字を計上するとは限らないわけで、どこかに非効率があったといわざるをえません。でも、「親方日の丸」の非効率だけですべての国鉄赤字を説明できるわけでもなく、さまざまな複合的な要因があるわけです。それを経営だけでなく技術や歴史も含めた新書くらいのボリュームで取りまとめた本書は、ある面では、ムリがある一方で、それなりにコンパクトで有り難い、という気もします。
最後に、佐伯泰英『異変ありや』と『風に訊け』と『名乗らじ』(文春文庫)です。著者は、時代小説家です。というか、最初はスペインを舞台にした小説を書いていたようなのですが、サッパリ売れずに渋々時代小説に転じた、といったところのような気がします。この「空也十番勝負」のシリーズの主人公は坂崎空也なのですが、その父親の坂崎磐音を主人公にした「居眠り磐音 江戸草紙」シリーズが51巻に渡って続いていました。私はすべて読んでいます。親子で剣術家であり、時代は江戸期の田沼時代から少し下がったあたりです。「居眠り磐音」のシリーズは、双葉文庫で出版されていた後、文春文庫に移行しています。「空也十番勝負」のシリーズは最初から文春文庫だったのかもしれません。ということで、坂崎磐音の郷里である関前から武者修行に出た坂崎空也が、長崎での修行を終える際に、薩摩藩の刺客に襲われて、ほぼほぼ相討ちとなって大怪我を負い、長崎らしく蘭方医の手当を受けたところからこの第6巻が始まります。そして、、空也は東に向かい、萩藩城下、さらに、東に向かいます。武者修行の終わりは姥捨の里と決めているようです。「居眠り磐音」のシリーズと違って、この「空也十番勝負」のシリーズは剣劇ばっかりで、やや私は退屈しました。「居眠り磐音」のシリーズでは江戸を中心に侍だけでなく、町民の暮らしや政治向きのトピックなども豊富に取り上げられていましたので、退屈しませんでしたが、この「空也十番勝負」シリーズは剣術ばっかりです。なお、すでに第9巻の『荒ぶるや』が1月に出版されていて、3月に出版される第10巻で終結、というスケジュールのようですが、私はまだ第9巻は読んでいません。集結する第10巻と合わせて読みたいと予定しています。
まず、千早茜『しろがねの葉』(新潮社)は織豊政権末期から徳川初期にかけての石見銀山での女性の生き様を描き出しています。直木賞候補作であり、私は『光のとこにいてね』とともに、受賞を期待しています。なお、作者は私の勤務校である立命館大学文学部のOGです。続いて、石井幸孝『国鉄』(中公新書)は、国鉄に技術者として務め、国鉄の分割民営化後はJR九州の初代社長を務めた著者の国鉄に関する歴史や企業体としての記録です。そして、佐伯泰英『異変ありや』、『風に訊け』、『名乗らじ』(文春文庫)は、「居眠り磐音 江戸草紙」のシリーズを引き継ぐ「空也十番勝負」のシリーズです。九州での武者修行を終えた坂崎空也が東に向かいます。
ということで、今年の新刊書読書は、先週の6冊と合わせて11冊となります。
まず、千早茜『しろがねの葉』(新潮社)です。著者は、もちろん、小説家なのですが、私の勤務校である立命館大学文学部のOGです。この作品『しろがねの葉』のほか、『あとかた』と『男ともだち』が直木賞候補作としてノミネートされています。ということで、時代背景は織豊政権末期から徳川期初期にかけて、地理的には石見銀山、ということになります。主人公はウメという女性であり、農村に生まれますが、逃散の途中で父母と生き別れになって山師の喜兵衛により、石見銀山で育てられます。時代が徳川の世になり、徳川御料地となっても石見銀山の活動に大きな変化はありません。ウメの育ての親である喜兵衛は石見銀山から佐渡に去りますが、ウメは石見銀山に残り、夫婦となって子をなします。しかし、銀山の鉱毒で夫は亡くなり、さまざまな試練に直面しながらも強い生き方が印象に残ります。ウメの生きざまが凛として美しい、と感じました。
次に、石井幸孝『国鉄』(中公新書)です。著者は、技術者として国鉄に勤務し、分割民営化後はJR九州の初代社長も務めています。戦後の国鉄の公営企業としての社史を跡付けるとともに、技術上の革新や進歩、あるいは、経営上の問題点などを極めてコンパクトに取りまとめています。ただ、「コンパクト」とはいっても、そもそも国鉄は超巨大企業体でしたので、新書としては異例の400ページ近いボリュームとなっています。経済学的にいえば、電力などの多くのインフラ企業と同じで、大規模な鉄道はいわゆる限界費用低減産業であり、規模の経済が働きます。ですから、ある程度の規模を持たないと経営は成り立ちません。でも、国鉄の場合は巨大であっただけに経営も困難となった面があります。一般的には、鉄道から輸送手段がモータリゼーションによって自動車に転換したのが輸送量減少の一因とされますが、必ずしも輸送量が減少したからといって、あそこまでの赤字を計上するとは限らないわけで、どこかに非効率があったといわざるをえません。でも、「親方日の丸」の非効率だけですべての国鉄赤字を説明できるわけでもなく、さまざまな複合的な要因があるわけです。それを経営だけでなく技術や歴史も含めた新書くらいのボリュームで取りまとめた本書は、ある面では、ムリがある一方で、それなりにコンパクトで有り難い、という気もします。
最後に、佐伯泰英『異変ありや』と『風に訊け』と『名乗らじ』(文春文庫)です。著者は、時代小説家です。というか、最初はスペインを舞台にした小説を書いていたようなのですが、サッパリ売れずに渋々時代小説に転じた、といったところのような気がします。この「空也十番勝負」のシリーズの主人公は坂崎空也なのですが、その父親の坂崎磐音を主人公にした「居眠り磐音 江戸草紙」シリーズが51巻に渡って続いていました。私はすべて読んでいます。親子で剣術家であり、時代は江戸期の田沼時代から少し下がったあたりです。「居眠り磐音」のシリーズは、双葉文庫で出版されていた後、文春文庫に移行しています。「空也十番勝負」のシリーズは最初から文春文庫だったのかもしれません。ということで、坂崎磐音の郷里である関前から武者修行に出た坂崎空也が、長崎での修行を終える際に、薩摩藩の刺客に襲われて、ほぼほぼ相討ちとなって大怪我を負い、長崎らしく蘭方医の手当を受けたところからこの第6巻が始まります。そして、、空也は東に向かい、萩藩城下、さらに、東に向かいます。武者修行の終わりは姥捨の里と決めているようです。「居眠り磐音」のシリーズと違って、この「空也十番勝負」のシリーズは剣劇ばっかりで、やや私は退屈しました。「居眠り磐音」のシリーズでは江戸を中心に侍だけでなく、町民の暮らしや政治向きのトピックなども豊富に取り上げられていましたので、退屈しませんでしたが、この「空也十番勝負」シリーズは剣術ばっかりです。なお、すでに第9巻の『荒ぶるや』が1月に出版されていて、3月に出版される第10巻で終結、というスケジュールのようですが、私はまだ第9巻は読んでいません。集結する第10巻と合わせて読みたいと予定しています。
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