2018年03月28日 (水) 19:26:00

来週4月2日に公表予定の日銀短観予想やいかに?

来週4月2日の公表を前に、シンクタンクや金融機関などから3月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2018年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、今年度2018年度の設備投資計画に着目しています。ただし、第一生命経済研は2017年度の設備投資計画の予想しか示さず、また、三菱総研はいつもの通り設備投資計画の予想を出していませんので、この2機関は適当です。それ以外は一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
12月調査 (最近)+25
+23
<n.a.>
n.a.
日本総研+24
+24
<▲3.8%>
2018年度の設備投資計画では、全規模・全産業ベースで前年度比▲3.8%と、2017年度の同期調査(▲1.3%)に比べやや慎重な出だしとなると予想。もっとも、2017年度の設備投資が比較的高水準で着地すると見込まれることを勘案すれば、2018年度の設備投資動向も堅調と判断可能な水準。2018年入り後の金融市場の不安定化、米国トランプ政権の保護主義色の強い通商政策などが設備投資意欲の下押しに作用する一方、既存設備の維持・更新投資、人手不足を背景とした合理化・省力化投資を中心に、設備投資需要は引き続き堅調。内外経済の底堅い拡大や、TPP11の署名を受けた輸出環境の改善期待なども下支えとなり、先行き、例年の足取りに沿って、上方修正されていく見通し。
大和総研+25
+25
<▲5.1>
2018年度の設備投資計画(全規模全産業)は前年度比▲5.1%とマイナス成長を予想する。ただし、これは、3月調査において企業が翌年度の設備投資計画を控えめに回答するという「統計上のクセ」があることを反映したものにすぎず、マイナス幅自体は概ね例年並みになると想定した。また、日本では3月決算の企業が多く、年度決算発表前に公表される3月日銀短観において来年度見通しの数字を回答することが難しいという実情があるため、2018年度の数字自体にはあまり意味がない点に留意したい。
みずほ総研+27
+25
<▲0.3%>
2018年度の設備投資計画(全規模・全産業)は、前年比▲0.3%と予想する。例年通り、3月調査時点で設備投資計画が定まっていない中小企業がマイナスの伸びとなり、全体を押し下げるだろう。とくに中小企業・非製造業が人件費の上昇が重石となり、資金繰りの面からも設備投資に慎重姿勢をとる可能性がある。一方、大企業は、製造業、非製造業ともに、例年と比べても高い伸びを予想する。製造業は、需要が堅調な半導体関連を中心に高めの設備投資計画が策定されるとみている。非製造業は、人手不足を背景とした省力化投資やインバウンド対応、五輪関連投資の継続に加え、通信業の5G(第5世代移動通信システム)投資が本格化することから、前年比プラスの伸びを予想する。
ニッセイ基礎研+24
+24
<▲5.0%>
2018年度の設備投資計画(全規模全産業)は、2017年度計画比で5.0%減を予想している。例年3月調査の段階ではまだ計画が固まっていないことから前年割れでスタートする傾向が極めて強いため、マイナス自体にあまり意味はなく、近年の3月調査との比較が重要になる。今回は、円高の進行や米保護主義への警戒等を受けて、近年の3月調査での伸び率をやや下回る慎重な計画が示されると見ている。
第一生命経済研+24
+23
<n.a.>
日銀短観2018年3月調査では、大企業・製造業の業況判断DIが24と前回(12月調査25)に比べて△1ポイント悪化する見通しである
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+26
+26
<大企業全産業▲0.4%>
2018年度の計画については、大企業では例年通りゼロ近傍からのスタートとなるだろう。需要が緩やかに増加する一方で、人手不足感は引き続き非常に強く、加えて人件費は上昇している。機械への投資の重要度は一層高まっており、6月以降の調査では上方修正されていくと考えられる。中小企業については、3月時点では多くの企業で来年度の計画が定まっていないと考えられ、例年通り大幅なマイナスからのスタートとなるだろう。
三菱総研+27
+25
<n.a.>
製造業の業況判断DI(大企業)は、+27%ポイント(2017年12月調査から1%ポイント上昇)と予測する。
富士通総研+26
+24
<▲4.4%>
2018年度の設備投資計画は、2017年度の同じ時期よりはやや弱い計画になると考えられる。


まず、設備投資計画に入る前に、上のテーブルに取りまとめられている業況判断DIについて概観しておくと、小幅に改善・悪化が見受けられるんですが、極めて大雑把には横ばい圏内と見ることが出来ようかと思います。ただ、回収基準日は3月半ばではないかと想像するんですが、今月後半に噴出した攪乱的な情報、米国トランプ政権の保護主義的な措置の公表とそれに伴う株価の下落、あるいは、我が国における公文書管理問題などの政治的な混乱がどの程度盛り込まれているかは不明です。ひょっとしたら、景況感の実感はさらに低下している可能性があります。ただ、米国の保護主義の高まりやそれに対応した関係各国における貿易戦争じみた応酬措置が中長期的な影響を及ぼすことは確実ながら、株価変動などを別にすれば、足元の経済実態がにわかに悪化するわけでもないような気もします。もちろん、短観はマインド調査ですので、そういった先行きの変動に対する見通しは重要な役割を果たします。さらに、目を設備投資計画に転じると、昨年のこの時期の設備投資計画が全規模全産業で▲1.4%減で始まり、一昨年は▲4.8%で始まったことを考え合わせると、私は昨年の出だしがかなり高かったと考えており、一昨年の通常パターン周辺に戻る可能性が高いと考えています。すなわち、設備投資計画は▲5%近辺がいい見当ではないかと思います。
下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから設備投資計画の動向を引用しています。

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2018年03月27日 (火) 19:51:00

企業向けサービス物価(SPPI)はやや上昇率を縮小させつつも56か月連続のプラス!

本日、日銀から2月の企業向けサービス物価指数 (SPPI)が公表されています。前月からやや上昇幅を縮小しつつも+0.6%を記録しています。プラスの上昇は56か月、すなわち、4年8か月連続です。まず、朝日新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格指数が上昇 4年8カ月連続
日本銀行が27日に発表した2月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100、速報)は、前年同月より0.6%高い103.9だった。前年を上回るのは4年8カ月連続だが、上げ幅は2カ月連続で縮んだ。
人手不足で「土木建築サービス」など人件費が上がり、全体の上昇は続いている。一方で、1月にあった大型の自動車広告がなくなり、「新聞広告」が前年より2.6%下がるなど、「広告」の下落で上げ幅が縮んだ。


簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、SPPIは引き続き堅調な推移を見せています。SPPIのうち、私は景気とかなり密接な関係を持つ広告について注目していて、前年同月比で見て1月は+1.4%の上昇を示した後、2月は前月の大きな上昇の反動もあって▲0.4%と下落しました。引用した記事にある通り、1月の大型の自動車広告の反動のようです。ただ、新聞広告▲2.6%、雑誌広告▲1.0%は下落したものの、インターネット広告は逆に+1.8%の上昇を記録しています。また、人手不足の影響が強いといわれている運輸・郵便は昨年2017年半ばから継続的に+1%を上回る上昇率を示しており、最近でも1月+1.4%、2月+1.2%を記録しています。同様に、いくつか他の項目でも人手不足の影響が見られ、諸サービスのうちの労働者派遣サービスも1月+1.8%、2月+1.4%の、また、土木建築サービスも1月+2.9%、2月+1.1%のそれぞれ上昇となっています。
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2018年03月26日 (月) 19:56:00

クルートジョブズによるアルバイト・パートと派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる非正規雇用の時給調査、すなわち、アルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の1月の調査結を見ておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%の伸びで堅調に推移していて、三大都市圏の2月度平均時給は前年同月より20円増加の1,021円となり、特に、人で不足の影響からか、「フード系」では過去最高額を更新しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、一昨年2016年9月から昨年2017年8月までの12か月ではマイナスを記録する月の方が多かったくらいですが、昨年2017年9月からはふたたびそれなりのプラス幅を記録するように回帰しており、2月は前年同月比で+1.8%上昇し、1,643円に達しています。引き続き、非正規雇用の求人は堅調と考えてよさそうです。
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2018年03月25日 (日) 19:14:00

オープン戦最終戦は相変わらずの貧打で終わり、いよいよ東京ドームの開幕戦へ!!

  RHE
阪  神000000010 120
オリックス000001000 170


オープン戦最終戦のオリックス戦は相変わらずの貧打で終わりました。実は、8回までしか見ていないんですが、まあ、結果は同じようなもんだったんでしょう。
いよいよ今週金曜日は東京ドームの巨人戦でペナントレースの開幕です。

今季は優勝目指して、
がんばれタイガース!
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2018年03月24日 (土) 18:42:00

今週の読書はいろいろ読んで計8冊!

先週はややセーブしたんですが、今週の読書は文庫本も含めて、とはいうものの、結局、計8冊に上りました。今日はすでに図書館を回り終え、来週はもう少しペースダウンして、5~6冊になりそうな予感です。

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まず、ムハマド・ユヌス『3つのゼロの世界』(早川書房) です。著者はバングラデシュの経済学者・実業家であり、グラミン銀行の創業者、また、グラミン銀行の業務であるマイクロクレジットの創始者として知られ、その功績により2006年にノーベル平和賞を受賞しています。英語の原題は A World of Three Zeros であり、邦訳タイトルはそのままで、2017年の出版です。上の表紙画像に見える通り、3つのゼロとは貧困ゼロ、失業ゼロ、CO2排出ゼロを示しています。そして、著者の従来からの主張の通り、ソーシャル・ビジネスの促進、雇われるばかりではなく自ら事業を立ち上げる起業家精神の発揚、そして、マイクロクレジットをはじめとする金融システムの再構築の3つのポイントからこの目標を目指すべきとしています。定義はあいまいながら、著者は資本主義はもう機能しなくなり始めているという認識です。経済学的には分配と配分は大きく違うと区別するんですが、資源配分に市場システムを用いるというのは社会主義の実験からしても妥当な結論と考えられる一方で、著者の指摘の通り、所得分配に資本主義的なシステムを適用するのは、もはや理由がないというべきです。そして、ここは私の理解と異なりますが、著者はやや敗北主義的に現在の先進国の政府では事実上リッチ層が支配的な役割を果たしており、政府による再分配機能は期待すべきではないと結論しています。「見えざる手は大金持ちをえこ贔屓する」ということです。ただ、政府に勤務していることもあって、私はまだ期待できる部分はたくさん残されていると考えています。そして、雇用されることではなく、自ら起業することによる所得の増加については、資本形成がかなりの程度に進んでしまった先進国ではそれほど一般的ではなく、途上国のごく一部の国にしか当てはまらない可能性があります。特に、私の専門分野である開発経済学においては、途上国経済における二重構造の解消こそが経済発展や成長の原動力となる可能性を明らかにしているんですが、マイクロクレジットによる小規模な企業では二重構造を固定化しかねず、農漁村などの生存部門から製造業や近代的な商業などの資本家部門への労働力のシフトがないならば、日本の1950~60年代の高度成長による形でのビッグ・プッシュが発生せず、途上国から抜け出せない可能性もありますし、いわゆる中所得の罠に陥る可能性も高くなるような気がします。ただ、マイクロクレジットとは関係なく、本書で指摘している論点のひとつであるソーシャル・ビジネス、すなわち、利己利益に基づく強欲の資本主義ではなく、隣人などへの思いやりの心に基づく非営利活動が経済の主体となれば、人類は資本主義の次の段階に進めるかもしれません。そして、本書が指摘するように、貧困と失業を最大限削減し、地球環境の保護に役立つことになるかもしれません。

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次に、北都光『英語の経済指標・情報の読み方』(アルク) です。著者はジャーナリストで、金融市場の情報に詳しいようです。出版社は英辞郎で有名なところです。ということで、本書では投資のプロがチェックしている海外の経済指標・経済情報の中で、いくつか金融市場に与える影響が特に大きいものをピックアップして、着目ポイント、読み解き方などをわかりやすく解説しています。基本的に、データの解説なんですが、中央銀行の金融政策決定会合の後の総裁の発言なども取り上げています。具体的には、第2章の基礎編にて、米国雇用統計、米国ISM製造業景況指数、CMEグループFedウオッチ、ボラティリティー・インデックス(VIX)、経済政策不確実性指数、米国商品先物取引委員会(CFTC)建玉明細報告、のほかに、一般的なデータのありかとして、米国エネルギー情報局(EIA)統計、国際通貨基金(IMF)の各種データ、経済協力開発機構(OECD)景気先行指数(CLI)、欧州連合(EU)統計局のデータを取り上げています。エネルギー関係のデータなどについては私も詳しくなく、なかなかの充実ぶりだと受け止めています。さらに、第3章の応用編では投資に役立つ英語情報の活用法として、要人発言を含めて、データだけでない英語情報の活用を解説しています。最終章では英語の関連する単語リストを収録しています。誠にお恥ずかしいお話しながら、commercialが実需であるとは、私は知りませんでした。これは英辞郎を見ても出て来ません。なお、私が数年前に大学教員として出向していた際にも、実際の経済指標に触れるために2年生対象の小規模授業、基礎ゼミといった記憶がありますが、その小規模授業にて日本の経済指標を関連嘲笑や日銀などのサイトからダウンロードしてエクセルでグラフを書くという授業を実施していました。日本ですから、GDP統計や鉱工業生産指数や失業率などの雇用統計、貿易統計に消費者物価にソフトデータの代表として日銀短観などが対象です。20人ほどの授業だったんですが、理由は不明ながらデータのダウンロードにものすごく時間がかかるケースがあって往生した記憶があります。

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次に、中村吉明『AIが変えるクルマの未来』(NTT出版) です。著者は工学関係専門の経済産業省出身ながら、現在は専修大学経済学部の研究者をしています。本書のテーマであるAIによる自動運転で自動車産業が、あるいは、ひいては、日本の産業構造がどのように変化するかについて論じた本はかなり出ているんですtが、本書の特徴は、自動運転車で人や物を運ぶ方法のひとつとして、乗り物をシェアするUberなどのシェアリング・エコノミーを視野に入れている点です。もっとも、だからといって、特に何がどうだというわけではありません。今週、米国でUberの自動運転中に死亡事故があったと報じられていましたが、自動車の運行については、私もそう遠くない将来に自動運転が実用化されることはほぼほぼ間違いないと考えていて、ただ、自分で自動車を運転したい、まあ、スポーツ運転のようなことが好きな向きにはどうすればいいのだろうかと思わないでもなかったんですが、本書の著者は乗馬の現状についてと同じ理解をしており、日本の現時点での公道で乗馬をしていないのと同じ理由で、自動運転時代になれば自動車の運転をするスポーツ運転は行動ではなく、まあ、現時点でいうところの乗馬場のようなところでやるようになる、と指摘しており、なるほどと思ってしまいました。また、将来の時点で自動運転される自動車は、現時点での自家用車のような使い方をされるのではなく、鉄道化すると本書では主張していますが、まあ、バスなんでしょうね。決まったところを回るかどうかはともかく、外国では乗り合いタクシーはめずらしくないので、私にはそれなりの経験があったりします。また、政府の役割として、規制緩和はいうまでもなく、妙に重複投資を避けるような調整努力はするべきではなく、むしろ、重複投資を恐れずにバンバン開発研究を各社で進めるべし、というのも、かつての通産官僚や経産官僚にはない視点だという気がしました。最後に、特に目新しい点がてんこ盛りとも思いませんので、自動運転の論考は読み飽きたという向きにはパスするのも一案かと思います。

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次に、マイケル・ファベイ『米中海戦はもう始まっている』(文藝春秋) です。著者は長らく米軍や米国国防総省を取材してきたベテランのジャーナリストであり、特に上の表紙画像に示された中国軍との接近事件などを経験した米軍関係者らにインタビューを基に本書を構成しています。英語の原題は Crashback であり、「全力後進」を意味する海洋船舶用語から取っており、米国のミサイル巡洋艦カウペンスが中国の空母・遼寧に接近した際に、間を割って入った中国海軍の軍艦との衝突を避けるためにとった回避行動を指しています。原書は2017年の出版です。ということで、上の表紙画像にも見られるように、中国海軍の戦力の拡充に対し、米国のオバマ政権期の対中国融和策について批判的な視点から本書は書かれています。本書冒頭では、かつての米ソの冷戦に対して、現在の米中は「温かい戦争」と呼び、米ソ間の冷戦よりも「熱い戦争」に近い、との認識を示しているかのようです。ただし、オバマ政権期であっても米国海軍の中にハリス大将のような対中強硬派もいましたし、それほどコトは単純ではないような気がします。中国が経済力をはじめとする総合的な国力の伸長を背景に、南シナ海などの島しょ部の占有占領を開始し、中には小規模ながら東南アジア諸国軍隊と武力衝突を生じた例もありますし、その結果、中国軍の基地が建設されたものもあります。もちろん、米国政府や米軍も黙って見ていたわけでもなく、カウペンスの作戦行動をはじめとして、中国海軍へのけん制を超えるような作戦行動を取っているようです。ただ、私は専門外なのでよく判らないながら、日米両国は中国に対して国際法を遵守して武力でなく対話による紛争解決など、自由と民主主義に基づく先進国では当たり前の常識的な対応を期待しているわけですが、平気で虚偽を申し立てて、あくまで自国の勝手な行動をダブル・スタンダードで世界に認めさせようとする中国の軍事力が巨大なものとなるのは恐怖としか言いようがありません。加えて、戦力的には現時点での伸び率を単純に将来に向かって延ばすと、陸軍では言うに及ばず、海軍であっても米軍の戦力を中国が超える可能性があります。そして、この観点、すなわち、覇権国の交代に際してのツキディデスの罠の観点がスッポリと本書では抜け落ちているような気がします。単純に狭い視野でハードの軍事力とソフトの政権の姿勢だけを米中2国で並べているだけでは見落とす可能性があって怖い気がします。加えて、日本の自衛隊にはホンのチョッピリにしても言及があるんですが、北朝鮮はほとんど無視されており、まあ、海軍力という観点では仕方ないのかもしれませんが、日本や韓国を含めた周辺国への影響についてはとても軽視されているような気がします。

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次に、森正人『「親米」日本の誕生』(角川選書) です。著者は地理学研究者であり、同じ角川選書から出ている『戦争と広告』は私も読んだ記憶があります。本書では、終戦とともにいわゆる「鬼畜米英」から、「マッカーサー万歳」に大きく転換した日本の米国観について論じているものだと期待して読み始めたですが、やや期待外れ、というか、ほとんど戦後日本のサブカルチャーの解説、特に、いかに米国のサブカルチャーを受け入れて来たか、の歴史的な論考に終わっています。ですから、対米従属的な視点もまったくなく、講座派的な二段階革命論とも無関係です。要は、終戦時に圧倒的な物量、経済力も含めた米国の戦争遂行力の前に、まったく無力だった我が国の精神論を放擲して、その物質的な豊かさを国民が求めた、という歴史的事実が重要であり、進駐軍兵士から子どもたちがもらうチョコレートやガムなどの物質的な豊かさに加えて、社会のシステムとして自由と民主主義や人権尊重などを基礎とした日本社会の再構築が行われた過程を、それなりに跡付けています。ただし、繰り返しになりますが、音楽はともかく、美術や文学やといったハイカルチャーではなく、広く消費文化と呼ばれる視点です。すなわち、洋装の普及に象徴されるようなファッション、高度成長期に三種の神器とか、そののちに3Cと称された耐久消費財の購入と利用、そして、特に家事家電の普及や住宅の変化、米国化とまではいわないとしても、旧来の日本的な家屋からの変化による女性の家庭からの解放、などに焦点が当てられています。ただ、私の理解がはかどらなかったのは、米国化や米国文化の受容の裏側に、著者が日本人のひそかな反発、すなわち、米国に対する愛憎半ばするような複雑な感情を見出している点です。それは戦争に負けたから、というよりは、米国的なものと日本的なものとを対比させ、例えば、自動車大国だった米国を超えるような自動車を作り出す日本の原動力のように評価しているのは、私にはまったく理解できませんでした。そこに、戦前的な精神性を見出すのは本書の趣旨として矛盾しているような気がするのは私だけでしょうか。

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次に、佐藤彰宣『スポーツ雑誌のメディア史』(勉誠出版) です。著者は立命館大学の社会学の研究者です。そして、本書は著者の博士論文であり、ベースボール・マガジン社とその社長であった池田恒雄に焦点を当てて、その教養主義を戦後の雑誌の歴史からひも解いています。ほぼほぼ学術書と考えるべきです。なお、雑誌としての『ベースボール・マガジン』は1946年の創刊であり、まさに終戦直後の発行といえます。その前段階として、野球という競技・スポーツが、戦時中においては米国発祥の敵性スポーツとして極めて冷遇された反動で、戦後の米軍進駐の下で、価値観が大転換して、米国の自由と民主主義を象徴するスポーツとして脚光を浴びた歴史的な背景があります。他方、メディアとしての雑誌媒体は、新聞がその代表となる日刊紙に比べて発行頻度は低く、週刊誌か月刊誌になるわけですが、戦後、ラジオに次いでテレビが普及し、リアルタイムのメディアに事実としての速報性にはかなわないわけですから、キチンとした取材に基づく解説記事などの付加価値で勝負せざるを得ないわけで、その取材のあり方にまで本書では目が届いておらず、単に誌面だけを見た後付けの解釈となっているきらいは否めません。でも、スポーツを勝ち負けに還元した競技として捉えるのではなく、その精神性などは戦時中と同じ地平にたった解釈ではなかろうかと私は考えるんですが、著者はよりポジティブに教養主義の観点から雑誌文化を位置づけています。スポーツは、究極のところ、いわゆるサブカルチャーであり、美術・文学・音楽といったハイカルチャーではないと考えるべきですが、競技である限り、スター選手の存在は無視できず、相撲でいえば大鵬、野球でいえば長島、らがそれぞれ本書では取り上げられて注目されていますが、他方で、マイナーなスポーツとして位置づけられているサッカーでは釜本の存在が本書では無視されています。少し疑問に感じます。でも、ひとつの戦後史として野球雑誌に着目した視点は秀逸であり、サッカーなんぞよりは断然野球に関心高い私のような古きパターンのスポーツファンには見逃せない論考ではないかと思います。

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最後に、アンディ・ウィアー『アルテミス』上下(ハヤカワ文庫) です。著者は新々のSF作家であり、本書は何とまだ第2作です。そして、第1作は『火星の人』Martian です。といっても判りにくいんですが、数年前に映画化され、アカデミー賞で7部門にノミネートされた「オデッセイ」の原作であり、本書もすでに20世紀フォックスが映画化の権利を取得しています。実は、私はそれなりの読書家であり、原作を読んだ後に映画を見る、という順番のパターンが圧倒的に多いんですが、原作『火星の人』と映画「オデッセイ」については逆になりました。私の記憶が正しければ、ロードショーの映画館で見たのではなく、「オデッセイ」は飛行機の機内で見たんですが、とても面白かったので文庫本で読みました。そして、最近、本屋さんで見かけたんですが、『火星の人』の文庫本の表紙は映画主演のマット・デイモンの宇宙服を着た顔のアップに差し替えられています。大昔、私が中学生だか高校生だったころ、『グレート・ギャッツビー』が映画化により映画のタイトルである『華麗なるギャッツビー』に差し替えられ、主演のロバート・レッドフォードとミア・ファローの写真の表紙に差し替えられたのを思い出してしまいました。それはともかく、本書の舞台はケニアが開発した月面コミュニティです。その名をアルテミスといい、それが本書のタイトルになっています。直径500メートルのスペースに建造された5つのドームに2000人の住民が生活しており、主として観光業で収入を得ています。もちろん、本書冒頭にありますが、超リッチな人が移住したりもしていて、例えば、足が不自由な人が重力が地球の⅙の月面で、地球より自由な行動を取れることをメリットに感じる、などの場合もあるようです。ただ、この月面都市でもリッチな観光客やさらに超リッチな住民だけでなく、そういった人々をお世話する労働者階級は必要なわけで、主人公は合法・非合法の品物を運ぶポーターとして暮らす20代半ばの女性です。本人称するところのケチな犯罪者まがいの女性なんですが、月面で観光以外に活動している数少ない大企業のひとつであるアルミ精錬会社の破壊工作を行うことを請け負います。でも、月面の資源を基にアルミと副産物である酸素とガラス原料のケイ素を産するプラントの爆破を実行するんですが、実は、この破壊工作にはウラがあって、前作の『火星の人』と同じように、月面都市や天下国家を巻き込んだ大きなお話し、というか、陰謀論に展開して行きます。相変わらず、というか、前作の『火星の人』と同じように、少なくとも私のようなシロートには大いなる説得力ある綿密な化学的バックグラウンドが示され、キャラの設定も自然で共感でき、クライム・サスペンスとしてのスピード感も十分です。映画化されたら、私は見に行きそうな気がします。
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2018年03月23日 (金) 22:57:00

とうとう前年同月比上昇率が+1%に達したコア消費者物価(CPI)をどう見るか?

本日、総務省統計局から2月の消費者物価指数 (CPI)が公表されています。前年同月比上昇率でみて、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は前月からわずかながら上昇幅を高めて+1.0%に達しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の全国消費者物価1.0%上昇 電気代やガソリンが押し上げ
総務省が23日発表した2月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が100.6と前年同月比1.0%上昇した。プラスは14カ月連続で、消費増税の影響を除いたベースで、2014年8月(1.1%上昇)以来3年6カ月ぶりの上昇率となる。QUICKがまとめた市場予想の中央値は1.0%上昇だった。電気代やガソリンなどエネルギー品目が引き続き押し上げた。
生鮮食品を除く総合では、全体の57.6%にあたる301品目が上昇し、169品目が下落した。横ばいは53品目だった。生鮮食品を除く総合指数を季節調整して前月と比べると0.1%上昇だった。
生鮮食品を含む総合は101.3と1.5%上昇した。キャベツやミカン、マグロなどの高騰が背景で、消費増税の影響を除いたベースで14年6月(1.6%上昇)以来3年8カ月ぶりの高水準だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.8と前年同月比0.5%上昇した。中国の春節(旧正月)が2月にずれ込んだ影響で宿泊料が上昇した。平昌冬季五輪の開催に伴い、外国パック旅行費も上昇した。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、やや長くなってしまいました。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

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昨年2017年年央くらいからエネルギー価格の上昇に伴って、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの上昇率もジリジリと上昇幅を拡大し、昨年11月から今年2018年1月まで3か月連続で+0.9%を記録した後、とうとう2月には+1.0%に達しました。ただ、上のグラフに見られる通り、私の雑な計算による寄与度でみる限り、+1%のコアCPI上昇率のうち、半分強の+0.53%の寄与がエネルギー価格から出ています。加えるに、+0.28%の寄与が生鮮食品を除く食料から、サービスから+0.16%、最後にコア財から+0.04%となります。なお、サービス以外の消費財のうち、電機製品などの耐久消費財と衣類などの半耐久消費財はともに、前年同月比上昇率が+0.3%であるのに対して、食料などの非耐久消費財が突出して上昇率が高く、+3.6%を示しています。前月に書いた購入頻度別とか、基礎的・選択的支出別とかのグラフは示しませんが、先月から傾向は変わらず、購入頻度が高い財サービス、また、基礎的な消費支出にかかる物価上昇が大きくなっていますから、全体の+1%の上昇率よりも、国民生活の中でより大きな物価上昇の実感がある可能性があります。加えて、もっとも重要なポイントと私が考えるのは、賃金上昇が小幅にとどまる中で、今年の賃上げが伸び悩むなら、2018年は実質賃金の上昇率がマイナスを記録する恐れもあります。

先週3月16日の「月例経済報告」では「消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。」と久し振りに判断を引き上げましたし、単純に+1%の物価上昇だけを見ると、デフレ脱却宣言もあるいは可能な物価上昇に達した気もします。ただ、まだまだ未達の日銀の物価目標に加えて、実質賃金の動向などを考え合せると、デフレ脱却宣言を政府が出すことが可能かどうか、なかなか難しい判断になるような気がします。
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2018年03月22日 (木) 19:22:00

三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2030年までの労働力人口・労働投入量の予測」やいかに?

足元から将来に向けて中長期的な経済活動への制約として労働力不足が上げられていますが、やや旧聞に属する話題ながら、先週3月12日付けで三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「2030年までの労働力人口・労働投入量の予測」と題するリポートが明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。10年余り先の2030年くらいまでの期間では、労働力人口が減少に向かう中で、女性や高齢者の労働参加率が上昇することから就業者や雇用者数は大きな減少を示さず、その裏側で失業率が3%を大きく割り込んで2030年には2.1%まで低下するものの、非正規比率の上昇などにより1人当たり労働時間が減少することから、総労働投入量としては2029年にはリーマン・ショック後に落ち込んだ水準を下回るまで減少する、と見込まれています。供給サイドにおける重要なトピックを定量的にかなり先まで見通しています。リポートから大量にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 図表5 労働力人口の見通し を引用すると上の通りです。15~64歳の労働力人口は減少を続け、2017年から2030年にかけて▲237万人減少する一方で、中年層を中心とする女性や男女を問わず65歳以上の高齢層の労働参加率の上昇により相殺されるという背景で、労働力人口は現状の2017年まで増加基調が続いた上に、2023年まではグラフに見られる通り、ほぼほぼ横ばいが続き、さすがに2024年から減少に転じ、それでも、2030年の労働力人口は6693万人と2017年の6720万人をわずか▲27万人下回る水準にとどまる、と見込まれています。もちろん、

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次に、リポートから 図表6 就業者数の見通し を引用すると上の通りです。見れば明らかな通り、先ほど示した労働力人口よりもさらに減少幅が小さく、というか、ほとんど減少を示さず、2017年から2030年にかけて就業者数はほぼ横ばいと見込まれています。すなわち、繰り返しになりますが、労働力人口が2017年から2030年にかけて▲27万人減少するのに対し、就業者数は同期間で逆に+23万人増加すると予想されていたりします。そのカラクリは次の失業率見通しで明らかにされます。

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ということで、次に、リポートから 図表7 失業率の見通し を引用すると上の通りです。足元で失業率は3%を下回り、予測最終年にかけてさらに低下を続け、2030年に失業率は2.1%にまで低下すると見込まれています。この背景は、それなりのイノベーションが想定されており、すなわち、「労働条件の改善やテレワークの普及、人材派遣・マッチングシステムの高度化、技術革新による職業の垣根の撤廃・ハードルの低下などによってミスマッチによる失業が減少」する、という前提になっています。おそらく、経済合理性などの観点から、こういったイノベーションが進むのは確かであろうと私も同意しますが、逆に、こういったイノベーションが進まなければ、失業率は低下せず就業者も増加せずに、人手不足がさらに悪化する可能性も否定できない、ということなのかもしれません。

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次に、リポートから 図表12 非正規雇用者比率の見通し (全体) を引用すると上の通りです。労働投入量の算出は極めて単純に就業者数に1人当たりの労働時間を乗じて求められますから、ここからは1人当たりの労働時間の方向を考えることとなり、まず、ここ20~30年くらいでじわじわと進んだ非正規化の流れを見通したのが上のグラフです。もちろん、女性や65歳以上の高齢層の労働力化が進みますので非正規比率が高まる分も考え合わせると、非正規比率はさらに上昇することは容易に想像され、リポートでは2017年の37.3%から、2020年には38.2%、2030年には42.9%まで上昇すると見込んでいます。

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次に、リポートから 図表13 1人当たりの年間労働時間の見通し を引用すると上の通りです。先ほどの非正規雇用者比率の上昇もあり、グラフから明らかな通り、先行きはほぼほぼ一貫して1人当たり労働時間の減少が続き、それでも、2022年までは緩やかな減少にとどまります。しかし、その後は非正規雇用者比率の上昇とともに加速するため、2030年の平均労働時間は1689.4時間と、2016年の1742.0時間から▲52.6時間の減少を示すと見込まれています。

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最後に、リポートから 図表14 総労働投入量の見通し を引用すると上の通りです。リポートに従えば、2022年くらいまでの期間は女性と高齢者の活躍によって労働力不足をそれほど心配しなくてもよいという見通しになっていますが、こういった仮定や前提の下であっても、労働投入量が減少していくことは避けられず、2029年にはリーマン・ショック後に落ち込んだ水準を下回るまで減少すると見込まれています。

いっぱいグラフを引用して長くなってしまいましたが、最後に、女性や高齢者の労働参加を進めても、また、リポートで前提しているようなミスマッチによる失業が減少したとしても、2023年以降には労働投入量の減少が本格化する可能性が示されています。まあ、当たり前の結論ながら、生産性のさらなる上昇などにより、自然単位での労働投入の減少を効率単位でどこまで抑制するか、が重要な論点になるだろうと考えられます。
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2018年03月21日 (水) 19:23:00

映画「空海 KU-KAI」を見に行く!

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前々から、今日の春分の日は寒い上に雨模様という天気予報でしたので室内競技を志向し、近くのシネコンに映画「空海 KU-KAI」を見に行きました。実は、昨日のうちに一番早い回の座席を予約しておいたのですが、何と、当日の今日になって寝坊してしまい、予告編が流れていて本編が始まる直前ギリギリに滑り込みました。日本から遣唐使として入唐した若き僧侶の空海と官僚であり詩人でもある白居易とともに、唐の都である長安を駆け回って、楊貴妃の死の謎を追います。空海は染谷将太が演じ、なかなかにピッタリでした。常に微笑みを絶やさないところは弘法大師の人柄によくマッチしている気がします。日本語のサブタイトルは「美しき王妃の謎」であり、それはそれでいいような気もするんですが、実は、映画を見ている限り、中国でのタイトルは「妖猫伝」らしく、人語をしゃべる黒猫が主人公のように振る舞います。ただし、この黒猫の動きがとても不自然でぎこちなく、やや映画としての完成度の高さに疑問を投げかけそうな気もします。原作を読んでいないので何とも言えませんが、ストーリーそのものは可もなく不可もなくで、ハッキリ言えば平凡な気もします。でも、流石に日中合作映画らしく映画としては豪華絢爛で、唐の最盛期の長安を舞台にした映像は見ただけでリッチな気分に浸れる人も少なくなさそうです。私は少なくともそうでした。
原作は夢枕獏の『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』であり、私は読書家のつもりですので原作を読んでから映画を見るという順番が圧倒的なんですが、ひょっとしたら、この映画については映画を見た後に原作を読むかもしれません。3~4年前に、映画「オデッセイ」を見た後に、アンディ・ウィアーの原作『火星の人』を読んだ記憶がありますが、それ以来の映画先行かもしれません。
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2018年03月20日 (火) 20:12:00

帝国データバンクによる「2018年度の雇用動向に関する企業の意識調査」の結果やいかに?

賃金上昇は見られないものの、失業率や有効求人倍率に現れた人手不足の状況が一段と深刻化を増す中、先週3月14日付けで帝国データバンクから「2018年度の雇用動向に関する企業の意識調査」の結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、長くなりますが、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を4点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 2018年度に正社員の採用予定があると回答した企業の割合は65.9%と、4年連続で6割を超え、リーマン・ショック前の2008年度(2008年3月調査)を上回った。特に「大企業」(84.0%)の採用意欲が高く、調査開始以降で最高を更新。「中小企業」(61.3%)の採用予定も2年連続で増加し、11年ぶりに6割を超えた。正社員の採用意欲は上向いており、中小企業にも広がりを見せている
  2. 非正社員の採用予定があると回答した企業の割合は52.4%と3年ぶりに増加、非正社員に対する採用意欲は強まってきた。特に、非正社員が人手不足の状態にある「飲食店」は9割、「娯楽サービス」「飲食料品小売」は8割を超える企業で採用を予定している
  3. 2018年度の正社員比率は企業の20.7%が2017年度より上昇すると見込む。その要因では、「業容拡大への対応」(51.5%)をあげる割合が最も高く、「退職による欠員の補充」「技術承継などを目的とした正社員雇用の増加」が3割台で続く
  4. 従業員の働き方に対する取り組みでは、「長時間労働の是正」が46.3%でトップ。次いで、「賃金の引き上げ」「有給休暇の取得促進」がいずれも4割台で続いた。本調査から、従業員の働き方を変えるための6つのポイントが浮上した(1.心身の健康維持に向けた取り組み、2.仕事と家庭の両立に向けた取り組み、3.多様な人材を生かす取り組み、4.人材育成への取り組み、5.柔軟な働き方を支える環境整備への取り組み、6.公正な賃金制度構築への取り組み


もう少し手短に要約して欲しい気もしますが、以下では、リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから 正社員の採用予定の有無 について問うた結果を時系列で並べたのが上のグラフです。調査結果概要では、2018年度はリーマン・ショック前の水準超えとなっていますが、あくまで2008年調査結果の62.2%を超えたわけであって、リーマン・ショック直前の2007年調査結果の水準である67.4%にはまだ達しないわけで、2018年調査結果はその間に落ちる65.9%となります。でも、ひょっとしたて、現在の景気拡大がもう1年継続すると仮定すれば、来年の調査結果ではホントの正真正銘でリーマン・ショック前の水準を上回りそうな気もします。ただし、逆から見て、正社員最異様予定がないと回答したのはわずかに23.5%であり、これは、正真正銘リーマン・ショック前を下回ります。いずれにせよ、正社員採用の意欲は極めて高い事実が浮き彫りになっています。もっとも、グラフは引用しませんが、非正社員採用の意欲も極めて高くなっているのも忘れるべきではありません。

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ということで、次に、リポートから 正社員比率の動向 について問うた結果が上のグラフです。まあ、正社員比率は上昇すると見込む企業が多くなっているわけです。その要因については、業容拡大への対応が 1番目の理由として上げられており51.5%と半数を超えました。次いで、退職による欠員の補充が37.3%、技術承継などを目的とした正社員雇用の増加が31.3%で続いたほか、非正社員から正社員への雇用形態の転換も28.3%の企業が要因に上げていました。

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最後に、政府の働き方改革に対応して、リポートから 従業員の働き方に対する取り組み状況 について問うた結果が上のテーブルです。複数回答の結果上位10位までですが、長時間労働の是正(時間外労働の上限規制など)、賃金の引き上げ(賃金規定の整備・改定など)、有給休暇の取得促進、人材育成の強化(研修、OJTなど)などが上げられています。1位の労働時間とともに、2位に賃金が入っているとは思いませんでした。
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2018年03月19日 (月) 22:44:00

輸出数量が減少した貿易統計について考える!

本日、財務省から12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+1.8%増の6兆4630億円、輸入額も+16.5%増の6兆4596億円、差引き貿易収支は;34億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の貿易黒字34億円 2カ月ぶり黒字も春節要因で前年比大幅減
財務省が19日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は34億円の黒字だった。ハイブリッド(HV)車の輸出が大きく伸び、2カ月ぶりに貿易黒字に転じた。ただ資源高に春節(旧正月)要因が加わったことで黒字幅は前年同月(8045億円)から大幅に縮小した。
輸出額は前年同月比1.8%増の6兆4630億円だった。15カ月連続で増加した。米国向けのHV車のほか、南米の仏領ギアナ向けの人工衛星、中国向けの金属加工機械がけん引した。地域別に見ると、米国向けは1兆2762億円と4.3%増加。欧州連合(EU)向けも11.5%増えたが、中国を含むアジア向けは3.2%減少した。
輸入額は16.5%増の6兆4596億円だった。14カ月連続で前年実績を上回った。中国から衣類の輸入が伸びたほか、資源価格の上昇を受けてオーストラリアからの液化天然ガス(LNG)や韓国からの灯油の輸入も増加した。アジアからの輸入額は26.5%、米国からは5.2%ぞれぞれ増えた。
対中国でみると輸出は9.7%減少したが、輸入は39.2%増と大幅に伸びた。毎年、春節のある月は中国向けの輸出が控えられる一方で中国からの輸入が増える傾向にある。今年の春節は2月16日で、前年は1月末だった。財務省は「春節が(黒字幅の縮小に)影響した」とみている。
税関長公示レートは1ドル=109.26円だった。


いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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ということで、先月の貿易統計を取り上げた記事でも書いたところですが、引用した記事にもある通り、毎年1~2月は中華圏の春節効果で大きなスイングが見られますので、何とも評価が下しがたいところ、2月の貿易統計では季節調整していない原系列の統計では小幅に貿易黒字を記録したものの、季節調整済みの系列では貿易収支は赤字を計上しています。上のグラフの通りです。2011年3月の震災に伴う原発停止に起因してエネルギー輸入が急増したために貿易収支が赤字化し、季節調整済み系列で見る限り、大雑把に2015年10月まで赤字が継続し、2015年11月から直近の2018年1月まで貿易黒字が計上されていたんですが、2月統計では季節調整済みの系列で見て久々の貿易赤字でした。米国のセンサス局法による季節調整ですから、中華圏の春節をどこまで季節調整し切れているかは不明ですが、私の想像によれば、季節調整もかなり攪乱されている可能性が高いと受け止めています。季節調整済みの系列では、1月が+3523億円の貿易黒字、2月が▲2015億円の赤字ですから、今年に入ってからの2か月をならして見れば各月で数百億円の黒字、という形になります。現状での日本企業の国際競争力の実情という気もします。というのは、次のパラでもう少し詳しく展開しますが、資源高で燃料輸入の金額がかさんでいることに加えて、為替で円高が進んでいるからです。

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ということで、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。グラフを見る限り、先進国の経済動向は真ん中のパネルで見るOECD加盟国の先行指標の前年同月比がやや右下がりに転じていて、2月の我が国からの輸出数量が前年同月比で▲2.1%の減少を記録しています。もちろん、春節効果により中国に対する輸出数量が大きく攪乱され、前年同月比で見て今年2018年1月の中国向け輸出数量は+27.6%と大きく伸びた後、2月は▲13.6%と落ち込んでいたりします。ただ、輸入サイドの燃料価格の高騰とともに、上のグラフを見ても、輸出の増勢が鈍化しているのは明らかですし、特にその主因は輸出数量の伸びの鈍化にあります。輸出数量の伸び鈍化の要因のひとつとして、為替の円高進行が輸出の伸びを抑制している点は忘れるべきではありません。税関長公示の2月末から3月初めの円ドル為替を見ると、昨年2017年2月26日~3月4日の期間で113.84円だったのが、今年2018年2月25日~3月3日では107.03円に、5%超の円高となっています。為替の動向については相場モノですので、基本的にランダム・ウォークすると私は考えており、何とも見通しがたいところですが、もうすぐ、米国の公開市場委員会(FOMC)も始まりますし、金融政策の動向が注目されることはいうまでもありません。ただ、2月統計については為替要因もあって輸出数量がやや減少を示しましたが、先進国をはじめとする世界経済の回復・拡大の足取りはしっかりしており、所得要因から見れば、我が国の輸出も緩やかに増加を続けるものと私は期待しています。
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