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2018年11月29日 (木) 20:12:00

燃料価格の上昇により10月商業販売統計の小売販売額は増加!!

本日、経済産業省から10月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.5%増の11兆9280億円、季節調整済み指数の前月比は+1.2%増を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の小売販売額、前年比3.5%増 石油製品の価格上昇で
経済産業省が29日発表した商業動態統計(速報)によると、10月の小売販売額は前年同月比3.5%増の11兆9280億円だった。前年実績を上回るのは12カ月連続。経産省は小売業の基調判断を「緩やかに持ち直している」に据え置いた。
業種別では燃料小売業が14.7%増と伸びが目立った。原油高による石油製品の価格上昇が続いた。自動車小売業は6.6%増。新型普通車の販売が好調だった。医薬品・化粧品小売業は6.2%増となった。一方、織物・衣服・身の回り品小売業は0.4%減。気温が高く冬物衣料が振るわなかった。
大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計で0.2%減の1兆5862億円だった。既存店ベースは0.8%減だった。コンビニエンスストアの販売額は横ばいの9986億円だった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

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ということで、引用した記事もある通り、昨年11月から12か月連続で小売販売額は前値同月比プラスを続けており、その12か月の中でも直近2018年10月統計の+3.5%増は、昨年2017年12月の3.6%に次いで大きな伸びを示しています。加えて、上のグラフを見ても理解できる通り、季節調整していない系列の前年同月比で見ても、季節調整済みの指数で見ても、今年2018年5月から伸びがグングンと高まっています。ただ、商業販売統計は名目ですから最近の消費者物価(CPI)の動向にも左右される部分があり、実は、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率が、今年2018年5月の+0.7%を直近の底として、上昇幅を拡大させているのにも、ある程度は、相関していると考えるべきであり、引用した記事の石油製品価格の上昇にシンクロして小売販売額が伸びている、という見方も成り立ちます。燃料小売業の販売額を季節調整していない原系列の統計で見ると、昨年2017年11月から1兆円の大台に乗せ、今年2018年3月の+7.1%増を唯一の例外として、昨年2017年11月から、これまた、12か月のうちの11か月で前年同月比2ケタ増を記録しています。来週公表される総務省統計局の家計調査の結果も気がかりなんですが、物価上昇を考慮した実質の消費の伸びは、少なくとも、CPI上昇率がプラスなわけですから、名目消費の伸びよりも小さいと考えるべきです。国際的にも、例えば、本日2018年11月29日付けの日経新聞経済教室で主張されている通り、アベノミクスの下で日本経済は好調に推移している一方で、家計消費が伸び悩んでいるのはパズルである、という結論になりそうな気がします。日経新聞経済教室では、アベノミクスにより円安が進んで輸出企業が利益が増えた一方で、輸入価格の上昇に消費者がが直面し、家計から輸出企業に所得が移転した一方で、企業部門が賃金や投資に資金を回さないため、賃上げが進まず労働分配率が低下する、という流れを提示しています。輸出企業の利益が賃金上昇の形で家計に還元されないわけです。従って、私を含む多くのエコノミストの考えでは、日本では賃上げとそれに伴う消費の拡大が喫緊の課題であり、景気の観点からも、デフレ脱却のためにも、賃上げの必要性は大きいといわざるを得ません。

最後に、今年の米国のクリスマス商戦 Holiday Shopping 最近5日間の売上げが全米小売業協会 (NRF) から明らかにされているようです。NRF のサイトにはプレスリリースを発見できなかったので、参照したニュースメディアのサイトだけ、以下に示しておきます。今年の米国年末商戦の序盤戦はやや期待外れ、という印象かもしれません。

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2018年11月28日 (水) 21:28:00

リクルートジョブズによる9月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

明日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる非正規雇用の時給調査、すなわち、アルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の10月の調査結果を見ておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%前後の伸びで堅調に推移していて、三大都市圏の10月度平均時給は前年同月より+2.6%、26円増加の1,047円となり、2006年1月の統計開始以来の最高値を記録しています。職種別では「製造・物流・清掃系」前年同月比+3.0%、「事務系」+2.9%、「販売・サービス系」+2.7%、「フード系」+2.3%など、全職種で前年同月比プラスとなり、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアでプラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、最近では2017年9月から12か月連続でプラスを続けた後、9月が▲4円、▲0.2%減の1,640円の後、直近の10月は▲13円、▲0.8%減の1,639円と続落しています。ただし、職種別に詳しく見ると、「オフィスワーク系」、「営業・販売・サービス系」、「IT・技術系」、「クリエイティブ系」、「医療介護・教育系」の5職種のうち、「IT・技術系」と「クリエイティブ系」が前年同月比でマイナスと落ち込み、地域別では東海、関西はプラスなのに対して、首都圏がマイナスを記録しています。マイナスとなった「IT・技術系」をさらに詳しく見ると、運用管理・保守が▲3.4%減と特に低下が大きく、また、カテゴリ全体では初任給アップの「医療介護・教育系」でも看護師・准看護師は▲11.4%減と大きな低下を見せています。全体としてはパート・アルバイトや派遣の非正規職員の雇用も堅調と私は受け止めていますが、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規から雇用に陰りが見え始めた、と受け止めるエコノミストもいそうな気がします。
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2018年11月27日 (火) 23:12:00

テレビ広告の価格上昇により企業向けサービス物価(SPPI)は+1.3%の上昇!!

本日、日銀から10月の企業向けサービス物価指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て前月からややプラス幅を拡大して+1.3%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業向けサービス価格、前年比1.3%上昇 テレビ広告が伸びる
日銀が27日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は105.3で、前年同月比で1.3%上昇した。伸び率は9月確報と比べて0.2ポイント拡大した。自然災害の影響で先延ばしされていたテレビのスポット広告が伸びた。人手不足による人件費の上昇も価格を押し上げた。
前年同月比での上昇は64カ月連続となる。テレビ広告は9月に前年同月比でマイナスだったが10月はプラスに転じた。人件費上昇の影響で労働者派遣サービスや警備、土木建築サービスなどの価格も上昇した。冬場のエネルギー需要の増加に備えた動きから、外航タンカーなど外航貨物輸送も値上がりした。
ただテレビのスポット広告は振れが大きいため、日銀は「来月以降も今月程度の伸びが持続するかは明かではない」(調査統計局)との見方を示した。
同指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の147品目のうち前年比で価格が上昇したのは79品目、下落したのは30品目だった。上昇から下落を引いた差は49品目。差し引きでのプラスは23カ月連続となった。


いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ここ半年ほどのヘッドラインSPPIの前年同月比で見て、4月+1.0%、5月+0.9%、6月+1.1%、7月も+1.1%、8月に+1.3%に高まった後、9月は自然災害などもあって+1.1%、そして、10月も+1.3%を記録しています。10月直近の上昇率については、引用した記事にもある通り、自然災害の影響で先送りされていたテレビ広告が9月の▲3.6%の下落から10月には+0.9%に盛り返し、広告全体でも9月の▲0.4%の下落から10月には+1.6%の上昇となっています。そして、相変わらず、人手不足の影響は、土木建築サービス+3.3%、警備+4.3%、労働者派遣サービス+2.4%などに現れています。
直接、SPPIに関係するものではなく、むしろ、消費者物価指数(CPI)の方の話題かもしれませんが、昨日、総務省の有識者会議、正式名称は「モバイル市場の競争環境に関する研究会」に置かれた「ICTサービス安心・安全研究会」と「消費者保護ルールの検証に関するWG」の合同会合が開催され、「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」案が示されています。通信料金の適正化に向けた提言なんですが、2年縛りや4年縛りといった長期契約で端末代を割り引くといった手法が通信料の高止まりを招いているとし、通信料と端末代の完全分離を要請しつつ、シンプルで分かりやすい料金プランの実現を目指すとしており、通信料金の動向が注目されるところです。以下に、「緊急提言」案のリンクを置いておきます。ご参考まで。
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2018年11月26日 (月) 23:12:00

大阪万博EXPO25の経済効果は約2兆円?

広く報じられている通り、2025年に大阪夢洲にて万博EXPO25の開催が決定されました。「経済効果2兆円!」と報じているメディアが多いように見受けられるんですが、私の知る限り、万博だけでなくカジノなどの統合型リゾート(IR)も含めての試算で、しかも、1年近くも前に明らかにされた結果ながら、日本総研の2.6兆円がもっとも大きい万博の経済効果試算のような気がします。ということで、下の画像は、日本総研のリポート「夢洲における万博・IR (カジノを含む統合型リゾート) の概要と課題について」 p.9 から (図表7) 政府・大阪市見通しをベースとした経済効果試算 のテーブルを引用しています。今夜は遅くなったので簡単に済ませておきます。

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2018年11月25日 (日) 17:29:00

今年は大学祭には出向かず!!

この3連休は、我が家の上の倅の大学祭をやっていました。来春は、私の定年退官とともに、上の倅も大学を卒業する予定の最終学年で、当然ながら、最後の大学祭ですから、私も行こうかと考えていたんですが、今年はガンプラ作品の出展もなく、本人も今日明日と暗くなってからしか出かけませんので、私も出向くのをヤメにしました。実は、キャンパスにはイチョウ並木があり、この季節ですので昨年行った折には色づきも美しかった記憶があります。イチョウは大学のシンボルマークにも入っています。
ということで、特に何の関係もなく、11月6日に日本気象株式会社から明らかにされた「2018年紅葉見頃予想 (第3回)」のサイトから、紅葉見頃予想マップ と紅葉見頃予想時期を引用すると以下の通りです。関東の平野部でも、まだ、もう少し紅葉が楽しめるのかもしれません。

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2018年11月24日 (土) 11:54:00

先週と今週の読書は合わせて11冊!!!

先週は土曜日11月17日まで北京出張のイレギュラーな週でしたので、本日、先週と今週の読書11冊を合わせてレビューしておきたいと思います。経済所がとても少なく、中にはごく短めの読書感想文もあります。

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まず、根井雅弘『英語原典で読む経済学史』(白水社) です。著者は我が母校である京都大学経済学部の経済学史を担当している研究者です。経済学の父と呼ばれるアダム・スミスから始まって、20世紀の巨人ケインズまで、一部にマルクス主義経済学の文献も織り込みつつ、加えて、タイトルからは少し離れて英語以外のフランス語やドイツ語の原典も引きつつ、さまざまな経済書を取り上げています。タイトルの順番通りに、経済学史の勉強は後回しで、「英語原典で読む」の方に重点が置かれています。別の言い方をすれば、、スミスをはじめとして経済学史的に重要というよりも、有名で人口に膾炙した表現を多く拾っている印象があります。何かの折に、経済学の名著の英語原典を引用するには便利そうな気がします。

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次に、ローレンス・フリードマン『戦略の世界史』上下(日本経済新聞出版社) です。著者は、英国ロンドン大学キングス・カレッジ戦争研究学部に在籍した研究者です。意地悪な解釈をすれば、シンギュラリティが訪れてAIに取って代わられる前に、人類が築き上げた戦略の要諦について取りまとめた労作といえます。戦争や戦闘行為の戦略から始まって、個人の選択の問題、さらに、現代ビジネスマンの興味分野である企業経営の戦略などに至るまで、幅広い「戦略」に関しての歴史を集大成しています。第1部では、戦略の起源を、聖書、古代ギリシャ、孫子、マキャベリ、ミルトンに探り、ナポレオン、ジョミニ、クラウゼヴィッツ、モルトケ、マハン、リデルハート、マクナマラ、カーン、シェリング、ロレンス、毛沢東などの軍事戦略をひも解こうとしています。このあたりはまだ、私のような専門外のエコノミストにも馴染みがあるといえます。でも、下巻に入ると企業経営戦略も含まれているとはいえ、私なんぞには難しく感じられ始めます。すなわち、「下からの戦略」として、ガンジーらの非暴力運動、キング牧師らの公民権運動、クーンの科学革命論、フーコーの哲学、アメリカ大統領選挙戦など、多様な話題を通じて戦略思想の変容をとらえる一方で、「上からの戦略」として、テイラー、スローン、フォードら経営者、ドラッカーなどの経営理論家の思想、さらには、ゲーム理論などの経済学の隆盛、社会学的な取り組みを明らかにし、合理的選択理論の限界、ナラティブ、ストーリーとスクリプトの有効性を取り上げています。まあ、何かの記念に読んでおくのも一案かという気がします。

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次に、イワン・クラステフ『アフター・ヨーロッパ』(岩波書店) です。著者はブルガリア出身の政治学研究者です。欧州における極右・ポピュリズムの台頭、米国優先政治を掲げる米国トランプ政権、これらは、リベラリズム、民主主義、寛容といったキリスト教と啓蒙主義の遺産ともいえる西欧的な価値観を根底から覆しつつあるとの危機感を出発点として、従来の欧米価値観について論じています。すなわち、一般大衆がコスモポリタン的なエリートとトライバルな志向の移民の両方にNOを突きつけた結果としてのポピュリズムの台頭と捉え、その原因として、難民・移民危機はどのように欧州社会を変化させたか、支配階層にあるエリートへの有権者の反乱はなぜ起こっているのか.EU諸国のリベラル・デモクラシー体制がポピュリズムの台頭で内部的危機に直面する現在、その原因を解き明かし,どのように対応すべきかを論じています。ただ、その結論は私には説得的ではありません。といって、私自身が解決策を持っているわけでもなく、解がない問題なのかもしれません。私の偏見かもしれませんが、著者の出身から、どうしても視点が中欧ないし東欧に置かれている気がしてしまい、自由と民主主義の本流である西欧的な価値観に著者がやや理解が浅い気もしなくはありません。もちろん、専門外の私の理解が浅いだけかもしれません。

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次に、吉田忠則『農業崩壊』(日経BP社) です。著者はジャーナリストであり、現在の肩書は日本経済新聞社編集委員となっています。本書では我が国の農業について、小泉進次郎、植物工場、企業の農業参入の3つをキーワードに、問題点のあぶり出しとその解決策を模索しています。私は農業問題にはそれほど詳しくないんですが、中学や高校のころから、日本農業の問題点として上げられて来た経営規模の問題だけでなく、最新技術の応用や作物育成から流通問題まで、幅広い視野で農業を見ています。ただ、私の直観ながら、農業政策の本流の視点ではないような気もします。というのも、農政問題については、先の経営規模の問題と関係して、農地所有のあり方や補助金の問題などを議論して来たと思うんですが、本書ではこの2点はまったくといっていいほど触れられています。本書でスポットを当てられている植物工場に至っては、失敗例ばかりが並んでいる印象すらあります。植物工場は、企業の農業参入とともに、うまく立ち行かない我が国農業に経営効率の視点から、上から目線で農業に取り組んだ企業の失敗談とも読めます。将来の総理候補とまでいわれる小泉代議士についてもまだまだ未知数の部分が大きいのも事実です。やや眉に唾つけて読むべき本なのかもしれませんが、それなりに示唆に富む内容と受け取る向きもありそうです。

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次に、鈴木董『文字と組織の世界史』(山川出版社) です。著者は長らく東京大学東洋文化研究所をホームグラウンドとしていた研究者であり、オスマン・トルコ帝国の歴史が専門とあとがきにあります。本書は、いわゆるグローバル・ヒストリーを基礎としており、一国史やせいぜい地域史の範囲を超えて、ネットワークとして世界史を俯瞰する試みのひとつといえます。そのネットワークやリンケージのキーワードとして、タイトルにある言語と組織を基礎的な視点にして議論を展開しています。なお、小耳にはさんだウワサなんですが、東大東洋文化研究所では新しい世界史とタイトルされたサイトを解説しています。また、東大生協駒場書籍部における2018年9月度の人文書部門で『ホモ・デウス』につぐ第2位だったそうです。ということで、元に戻ると、タイトルにある文字と組織については、私の読み方が悪かったのかもしれませんが、圧倒的に文字に重点が置かれている気がします。むしろ、組織よりも文字にあわせた宗教の方がキーワードになっている気がします。我が国は、もちろん、文字や言語の点からは中国を拠点とする漢字圏なんですが、宗教的にはインドを拠点として東南アジアに広がっている梵語圏の中心をなす仏教の影響も大きいですし、経済的には少なくともアジアの中では西欧から米州大陸に広がるラテン語圏の影響も小さくありません。もちろん、グローバル化の進展の中で、東欧からロシアに広がるキリル語圏や中東からアフリカ北部のアラビア語圏とも決して関係が浅いわけでもないといえます。歴史書でいつも私が注目しているポイントのひとつに、欧米が現時点までで世界的な覇権を握っているのは英国を期限とする産業革命をいち早く成功裏に開始したからであり、どうして産業革命が西欧で始まったかは歴史家の間でもコンセンサスがないことから、この産業革命の視点がありますが、本書では極めてアッサリと、ウェーバー的な『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』で済ませていて、やや物足りないと感じましたが、400ページ近い本書にしても、1冊ですべての世界史を十分な深さで取り上げられるわけではないと考えるべきなのかもしれません。いずれにせよ、グローバル・ヒストリーの見方に触れ、それなりの世界の歴史観を感じ取れる読書だった気がします。

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次に、野村進『どこにでも神様』(新潮社) です。著者は大学の研究者であるとともに、ノンフィクション・ライターとしても活躍していて、何冊かノンフィクションの書籍を出版しているようです。本書では、副題にもある通り、出雲と神様をキーワードとして、出雲から少し広い範囲のや山陰地方の伝統文化や精神構造などを解き明かそうと試みています。すなわち、出雲ならざる鳥取の水木しげるの視点から、神様ならざる妖怪を取り上げたり、今では同じ島根県とはいいつつも、石見地方の神楽に注目しています。本書の後半で詳しく論じられますが、専門家ならざる私の見方でいえば、国譲りの伝説にもある通り、古典古代の我が国に置いては出雲政権は大和政権に敗れた、と考えているんですが、本書の著者は少し違った視点も盛り込んでいます。もちろん、古典古代においては極東に位置する我が国からして、中国という隣国はあらゆる意味において地域どころか世界の超大国であり、漢字を文字として受け入れたことに典型的に現れているように、中国やその文化の経由地である朝鮮半島に近い出雲の方が大和よりも先進地域であったことは想像に難くありません。もちろん、大和政権も九州かどこかはともかく、西から大和に攻め上ったんでしょうが、中国や朝鮮の直接の窓口をなる位置にある出雲の方が先進地域であった可能性の方が高いと私は考えています。しかし、21世紀の今、というよりももう少し前の20世紀半ばの戦後においては、本書でも「裏日本」とか、今でも山陰という表現があるように、決して、文化や政治経済の中心とはいえないのが現状であるという気がします。でも、神様や妖怪をキーワードに出雲周辺の歴史を振り返り、文化に着目するのはいい試みかもしれません。

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次に、東野圭吾『沈黙のパレード』(文藝春秋) です。著者は、ご存じの通り、売れっ子のミステリ作家であり、本書は人気のガリレオ・シリーズ最新刊です。湯川は米国留学を経て教授に昇進し、草薙も警視庁捜査一課で係長に昇進しています。本書では、グレーから極めてクロに近い犯罪容疑がありながら、かつては「証拠の王様」であった自白を避けて黙秘を通すことにより、「疑わしきは罰せず」の刑法の原則に従って無罪となった男が、いかにも、ということで、事件の犯罪被害者とその友人から殺害されたようなシチュエーションから始まります。そして、私もこのブログで何度か、例えば、同じ著者の『夢幻花』を5年前の2013年6月15日に取り上げた際に明記したように、この著者の遵法精神以外に何も感じられない正義感に疑問を感じていたんですが、ガリレオこと湯川教授に独白させ、『容疑者Xの献身』における一般的な善悪の感覚や広く受け入れられた道徳よりも、単なる遵法精神をあまりに優先させ倫理観にやや欠ける解決に対する反省の弁が見られます。私なんぞには理解できないガリレオ・シリーズ特有の殺害方法も首尾よく解決され、私も湯川教授の犯罪被害者とその友人に対する態度や考え方に深く納得しましたので、いい読書だった気がします。直木賞を授賞された『容疑者Xの献身』よりも、私は個人的に高く評価します。

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次に、池井戸潤『下町ロケット ゴースト』及び『下町ロケット ヤタガラス』(小学館) です。このシリーズの第3作と第4作だと思います。当然ながら、大田区の町工場地域にある佃製作所が舞台であり、第1作では、まさに、ロケットのエンジンに使うバルブそのもの、そして第2作の『ガウディ計画』では人工心臓向けのバルブを諦めての心臓の人工弁、そして、この最近2作のでは前2作のハイテク路線からグッとローテクに回帰して、農業機械、トラクタなどのエンジンとトランスミッションに挑戦します。『ゴースト』ではトラクタのトランスミッションに挑戦し、『ヤタガラス』ではトラクタのエンジンとトランスミッションを帝国重工に供給しつつ、その自動運転化技術にも挑みます。相変わらず、この作者の作品らしく、善悪が明瞭に分岐していて、悪いヤツはトコトン悪く、いい人はどこまでも勝ち続けます。経済学や物理学などのモデル分析を主流にする科学に親しもあればともかく、善悪をあいまいなままでコトが進む日本的な風土で、ここまでこの作者の作品が支持され、テレビでもドラマとして成功を収めているのはやや不思議な気がしますが、私が読んでも面白いんですから、かなり完成度は高いといえます。この2作と前の『沈黙のパレード』の3冊の小説は買って読みました。3冊も買うのは久し振りかもしれません。

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最後に、森本公誠『東大寺のなりたち』(岩波新書) です。著者は我が母校の京都大学のイスラム史の専門家であり、東大寺の長老としても名高い僧侶です。「東大寺」の懐かしい響きを感じ、ついつい借りてしまいました。聖武天皇の勅から始まったと考えられがちな東大寺の造営につき、その前の段階からていねいに歴史をひも解きつつ、東大寺や国分寺のなりたちや役割について解き明かしています。私は中学高校と6年間ずっと奈良に通っていたんですが、まさに南大門を入って大仏殿の前に校舎がありました。今はかなり離れたところに移転し、私が通ったころの2クラス100人足らずの生徒数から、倍くらいに大規模化したように聞き及んでいますが、男ばかりのムサイ6年間ながら、京都大学の学生時だよりも青春そのものの想い出深い時代でした。いまだに Facebook でつながっている仲間もいますし、逆に、顔も見たくないイヤなヤツもいます。それも合わせて、貴重な青春の6年間だった気がします。その中学高校は東大寺からのいくばくかの補助があったと聞いたことがあり、京都の名門である洛星高校などよりは、それなりに学費負担も大きくなく、決して恵まれた所得があったとはいえない我が家でも私を通わすことが出来たのかもしれない、と思い起こしています。約10年前に100歳超で亡くなった祖母が、私の学校との関係で東大寺のお水取りに加わって喜んでいたのは、もう40年以上も前のこととなりました。改めて、東大寺への感謝の気持ちを込めて拝読しました。
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2018年11月23日 (金) 21:00:00

阪神タイガースの2019年シーズンのチームスローガン!!

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本日、我が阪神タイガースの2019年シーズンのチームスローガン「ぶち破れ! オレがヤル」が明らかにされています。何といっても、今年は最下位でしたから、来年は浮上しかないわけで、ぶち破って欲しいものです。

来季こそ、
がんばれタイガース!
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2018年11月23日 (金) 08:22:00

今年の米国のクリスマス商戦やいかに?

昨日は米国では Thanksgiving Day の休日であり、今日11月23日はいわゆる Black Friday です。米国小売業協会では、すでに、10月3日の時点で「クリスマス商戦は4.3~4.8%の伸び」"NRF forecasts holiday sales will increase between 4.3 and 4.8 percent" で、売上げは $717.45 billion to $720.89 billion に達するとの予測を明らかにしています。そして、先週11月16日には Thanksgiving Day から Cyber Monday までの5日間の日次の売上を以下のグラフのように予想しています。休暇明けの売上げ速報は11月27日に明らかにされるようです。果たして、今年の米国のクリスマス商戦やいかに?

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2018年11月22日 (木) 20:28:00

OECD「経済見通し」は米中貿易摩擦で経済成長率を下方修正!

日本時間の昨夜、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し 2018年11月」OECD Economic Outlook November 2018 が公表されています。このブログでは、こういった国際機関のリポートを取り上げるのをひとつの特徴としていますので、プレスリリース資料からグラフなどをいくつか引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います

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まず、上の画像はプレスリリース資料から p.25 Key messages を引用しています。見れば明らかなんですが、世界経済の成長が減速しており、米中の貿易摩擦に伴う関税率の引き上げが先行きリスクを高めていることから、自由貿易の維持強化を図る必要を主張しています。まあ、各種のメディア報道もそうですし、多くのビジネスマン・エコノミストの共通認識ではないかと私は思います。

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次に、上の画像はプレスリリース資料から p.4 Real GDP growth revised down のグラフを引用しています。要するに、世界経済の成長率が下方修正されているわけです。今年2018年の世界経済の成長率は5月の前回の「経済見通し」では+3.8%、9月の「中間経済見通し」では+3.7%に下方修正された後、昨日公表の「経済見通し」では+3.5%にさらに下方修正されました。来年2019年についてもご同様で、5月の前回の「経済見通し」では+3.9%、9月の「中間経済見通し」では+3.7%に下方修正された後、昨日公表の「経済見通し」では+3.5%にさらに下方修正されています。我が国の成長率についてもまったく同じような傾向を示しており、今年2018年は5月の前回の「経済見通し」と9月の「中間経済見通し」ではともに+1.2%と見込まれていましたが、昨日公表の「経済見通し」では+0.9%に下方修正されています。少なくとも我が国の成長率については、先週公表されたGDP統計1次QEで自然災害などの影響により7~9月期の成長率がマイナスとなった発射台の成長率の低下が大きな要因なんでしょうが、来年2019年についても、5月の前回の「経済見通し」と9月の「中間経済見通し」ではともに+1.2%と見込まれていましたが、昨日公表の「経済見通し」では+1.0%に下方修正されています。ただし、東京オリンピック・パラリンピックの開催されるさ来年2020年の成長率は+1.9%と高まると見込まれています。

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次に、上の画像はプレスリリース資料から p.13 Tariff hikes act as a brake on GDP growth のグラフを引用しています。世界経済の成長率の下方修正を招いた最大の要因のひとつである米中間の貿易摩擦に起因する関税率の引き上げが成長率に及ぼす影響を試算した結果がプロットされています。凡例にあるように、第1段階の青の部分は2018年9月までの追加関税引き上げの影響、第2段階の紫の部分が、米国が中国からの2,000億ドルの輸入に対して追加関税を現行の10%から25%に引き上げ、加えて、中国が米国からの600億ドルの輸入に対して報復措置を取った場合、第3段階のオレンジの部分が、加えて、一次産品を除くすべての米中二国間貿易に対し、2019年7月以降に25%の追加関税が課された場合、さらに、第4段階として、投資リスクプレミアムが不確実性の高まりに応じて上昇する場合、などを前提した試算結果です。ただし、この分析では、関税引上げによる負担の大部分は物価上昇を通じ米国の消費者に転嫁されると想定されているようなんですが、中国側の価格設定行動次第で中国の輸出業者及び生産者が負担をこうむる結果になる場合もある、と指摘されています。我が国への影響は明示されていないんですが、私のこのブログでは、今年2018年7月24日付けの記事で大和総研のリポート2本、「米中通商戦争はそんなに悪い話なのか?」「続・米中通商戦争のインパクト試算」を引用して、結論としては、日本経済へのマイナスの影響は決して大きくない、との見方も紹介しています。

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次に、上の画像はプレスリリース資料から p.15 A slowdown in China would weigh on growth across the world のグラフを引用しています。関税率の引き上げの影響に関しては、我が国は明示的にグラフに取り込まれていなかったんですが、さすがに上のグラフに見る通り、中国経済の減速の影響については、米欧よりも我が国成長率へのマイナスの影響が方が大きい、すなわち、2%ポイントの中国の需要減少のショックに対して、我が国の成長率は▲0.2%を超える影響を受ける、と分析されています。

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最後に、目を国内経済に転じると、本日、総務省統計局から10月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月と同じ+1.0%を示しています。国際商品市況における石油価格などのエネルギーの値上がりに起因する物価上昇と私は受け止めています。いつものグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。
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2018年11月21日 (水) 19:49:00

結婚指輪はつけるか、つけないか?

先日、職場の女性と結婚指輪に関する雑談をしていたんですが、一昨日の11月19日にGMOリサーチの運営するネット調査 for Real? から、あなたは結婚指輪をつける派? つけない派? を大調査! の結果が明らかにされています。

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上のグラフは、for Real? のサイトから、男女別年代別に結婚指輪を毎日つけるかどうかの質問に対する回答結果を引用しています。20代と30代では男女ともに結婚指輪を毎日つける人が過半なんですが、40代では半数以下に割合が下がり、しかも、つけない人の方が多くなってしまいます。そして、50代ではこの傾向がさらに強く現れます。まあ、判る気がします。
そして、グラフは引用しませんが、男性について結婚指輪をつけない理由としては、「仕事上つけることができないため」26.6%、「つけるのが面倒なため」24.4%、「特に理由はない」20.3%がトップスリーとなっています。グラフから見て選択肢にはないようなんですが、「太って結婚指輪が入らないから」という選択肢があれば構な割合を占める可能性があるような気がします。というのも、上のグラフを見る限り、40代では男性よりも女性の方が結婚指輪をする比率が高い一方で、50代になると女性の方が比率が低くなります。まあ、50代くらいから未亡人になる可能性があるとはいえ、女性の方が年齢を重ねて太るのではないか、という気がしないでもありません。単なる私の憶測です。
ということで、私についてはビミョーなところです。というのは、カミさんと私がおそろいで持っている指輪としては2組あり、結婚式で交換した結婚指輪とハネムーンで買ったカルティエの三連があります。前者の結婚指輪は、実は、長崎大学に出向して単身赴任していた折になくした経験があり、新たに買わざるを得なかった私の指輪は、なくさないように大事に仕舞い込んであります。ですから、カルティエの三連は週に1日くらいつける一方で、狭義の結婚指輪はほとんどつけず、代替の何らかのリングを左手薬指にしています。その意味では、左手薬指には毎日指輪をつけてオフィスに通っています。かなり、取っかけ引っかけ、ほぼほぼ毎日のように違う指輪をしていたりしますので、左手薬指にする指輪だけで1ダースでは利かないくらい大量に持っていたりします。男性ではめずらしいんではないかと勝手に自負しています。
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